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平成27年5月
流山市監査委員告示第9号 地方自治法(昭和22年法律第67号)第199条第4項の規定によ る定期監査(工事監査)を実施したので、同条第9項の規定によりその 結果を別添のとおり公表する。 平成27年5月28日 流 山 市 監 査 委 員 淺 井 昌 之 流山市監査委員職務執行者 秋 間 髙 義 平成26年度 定期監査(工事監査)報告書 流 山 市 監 査 委 員 目 第1 監査を実施した監査委員名 第2 監査の種別 第3 監査対象部局 第4 監査の期間 第5 監査対象工事名 第6 次 ・・・・・・・・・・・・ 1 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 監査の方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 第7 工事の概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 第8 監査の結果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2 第1 監査を実施した監査委員名 淺井 昌之 秋間 髙義 第2 監査の種別 地方自治法 (昭和22年法律第67号(以下「法」という。)第199条第4 項の規定による定期監査(工事監査) 第3 監査対象部局 都市整備部みどりの課 第4 監査の期間 自 平成26年11月27日 至 平成27年3月23日 本監査実施日 第5 平成27年2月10日 監査対象工事名 市民総合体育館建設工事 第6 監査の方法 工事監査は技術的観点からの監査を主眼としているため、特定非営利活動法 人建設技術監査センターに工事技術調査業務を委託し、技術士の派遣を得て平 成27年1月8日に事務局職員による予備調査を行い、その調査中間報告書を 参考に関係職員から説明を聴取し、設計図書等の審査及び現地調査を実施した。 第7 1 工事の概要 工事場所 流山市野々下1丁目40番地の1 ほか (2)工期 平成25年11月29日~平成27年11月18日 (3)契約金額 5,042,952,000円(消費税含む) - 1 - (4)施工業者 株式会社 フジタ 東関東支店 (5)工事監理業者 株式会社 INA新建築研究所 (6)工事進捗率(平成27年1月31日現在) 35% (7)工事内容 市民総合体育館 鉄筋コンクリート造、鉄骨造、地上3階建て 建築面積7,862.29㎡、延床面積10,648.04㎡ 給排水衛生空気調和設備工事、電気設備工事を含む建築一式工事 第8 1 監査の結果 総合意見 市民総合体育館建設工事に対する工事監査を実施した結果、計画、設 計、 積算、契約、工事監理、施工、環境保全をとおして概ね適正に執行されてい ると認められた。 当建設工事は、昭和51年に開設した施設の老朽化、耐震性不足、規模の 狭隘などにより、改修ではなく、建替えをすることとなったものである。市 民がスポーツをするための施設を提供するという目的だけではなく、スポー ツ大会の会場として、スポーツを観る場として、スポーツを支える場として、 文化行事等の会場として、災害時避難所としての機能を持つ複合的な施設と いう基本コンセプトを掲げ、市内の既存のスポーツ施設を視野に、新たな体 育施設のビジョンを事前に構築し、具体化していくプロセスを進めた今回の プロジェクトの進め方を評価する。また、景観、将来の維持管理の容易さ、 温熱環境等にも十分な配慮がなされており、災害時の拠点としての機能を考 慮したことについて評価する。一方、公園再整備工事については、 体育館の 完成後、平成27年から7段階で整備を進める予定となっており、流山セン トラルパーク駅からの動線については、 区画整理事業の遅れに伴い、暫定整 備を行うとのことである。区画整理施行者との綿密な協議を行うとともに、 安全はもちろんのこと、利便性についても十分な配慮をされるよう要望する。 なお、特定非営利活動法人建設技術監査センター からの工事技術調査業務 報告書は、別添のとおりである。 - 2 - 2 個別意見 監査の結果、事務事業の一部について、「指摘事項一覧」のとお り、指摘事項(重要な事項)が認められた。 指摘事項については、監査の結果に基づき講じた措置について、 流山市監査指摘事項等事務処理要領により通知を求めるものとする。 なお、指摘事項を除く事務事業は、調査した範囲において、適正 に執行されていた。 【指摘事項一覧】 指 摘 事 項 部 局 名 ア イ ウ エ オ カ キ 計 1 2 み ど り の 課 1 施 者 1 1 工事監理業者 1 1 合 3 工 業 計 検討・要望 軽易な事項 重要な事項 1 ア イ 計 事項等 4 (注)指摘事項 重要な事項 ア 法律、条例、規則等に違反している事項 イ 不正な行為がなされた事項 ウ 事故が発生する恐れがある事項 エ 不経済となっている事項や行政効果が期待できない 事項 オ 今後の事務又は他の部署に悪影響を及ぼす恐れのあ る事項 カ 過去に指摘されていたものであって、改善への取り 組みが行われていない又は不十分な事項 キ その他監査委員が合議のうえ、重要と認める事項 軽易な事項 ア 事務上の軽易な誤りである事項 イ その他監査委員が合議のうえ、軽易と認める事項 検討・要望事項等 改善の検討を要する事項や要望等を、監査委員意見と - 3 - 1 1 して集約し、監査結果報告に反映させるもの。 (1)指摘事項(重要な事項) ウ 事故が発生する恐れがある事項 掘削残土の管理について、一部伝票類の整理に不備があった もの。施工業者・工事監理業者・みどりの課の三者による、適 切な処分残土の管理体制の整備に努められたい。 (㈱フジタ東関東支店、㈱INA新建築研究所、都市整備部み どりの課) キ その他監査委員が合議のうえ、重要と認める事項 グリーン調達について、具体的な調達品目の洗い出しを行っ ていたものの、担当者による把握が不十分であったため、予備 審査時にその確認をすることができなかった。今後は調達品目 の全般的なリストを作成する等の工夫を行うとともに、定めら れた調達品目の検査・検収を徹底されたい。 (都市整備部みどりの課) (2)検討・要望事項等 ア ライフサイクルコストについて、最終的にはファシリティ マネジメント担当課である財産活用課へ引き継ぐとしても、全 体としてのライフサイクルコストを算定しておくべきと考える。 イニシャルコスト、ランニングコスト、除却費用をトータルに 把握することで、維持管理も含めた適切なフォローを行うこと を要望する。 (都市整備部みどりの課) - 4 - 平成27年2月9日 工事技術調査業務報告書 調査対象工事 市民総合体育館建設工事 監査実施日:平成27年1月8日(木) 特定非営利活動法人 代表理事 建設技術監査センター 五艘 章 目 次 ページ はじめに…………………………………………………………………………… 1 Ⅰ.工事技術調査業務の概要…………………………………………………… 1.対象工事名称……………………………………………………………… 2.調査実施日………………………………………………………………… 3.調査場所…………………………………………………………………… 1 1 1 1 4.調査立会者………………………………………………………………… 5.業務実施技術士…………………………………………………………… 6.出席者……………………………………………………………………… 7.工事概要…………………………………………………………………… 1 1 2 3 Ⅱ.工事技術調査業務の実施要領……………………………………………… 1.調査基本方針……………………………………………………………… 2.調査内容…………………………………………………………………… 3.主な調査資料名…………………………………………………………… 4 4 4 5 4.技術調査進行状況………………………………………………………… 5 Ⅲ.工事技術調査業務の実施結果……………………………………………… 6 1.計画………………………………………………………………………… 6 2.設計………………………………………………………………………… 9 3.積算…………………………………………………………………………17 4.入札・契約…………………………………………………………………18 5.工事監理……………………………………………………………………20 6.施工…………………………………………………………………………22 7.環境管理……………………………………………………………………24 Ⅳ.総合評価と提言・推奨事項…………………………………………………26 1.工事技術調査の総合評価…………………………………………………26 2.提言事項……………………………………………………………………29 3.推奨事項……………………………………………………………………30 おわりに……………………………………………………………………………31 はじめに 本報告書は、平成27年1月8日に行われた「市民総合体育館建設工事」に 係る工事技術調査業務の結果について取りまとめたものである。 以下、本工事の概要と調査実施要領について述べた後、調査結果と所見を述 べる。調査は建築、設備を専門とする審査員(技術士)が専門技術者の立場と 市民の目線を重視して実施した。 Ⅰ.工事技術調査業務の概要 1.対象工事名称 市民総合体育館建設工事 2.調査実施日 平成27年1月8日(木) 3.調査場所 午前 午後 流山市第2庁3階305会議室 市民総合体育館建設工事現場 4.調査立会者 監査委員事務局 次 長 次長補佐 主 査 仲田 秋谷 櫻井 道弘 孝 千香子 5.業務実施技術士 特定非営利活動法人 建設技術監査センター 主調査員 成岡 茂 技術士 (建設部門)、一級建築士、 建築基準適合判定資格者 調 査 員 大槻 桂三 技術士 (機械部門)、環境マネジ メントシステム審査員補 調 査 員 和田 保久 技術士(電気電子部門・総合技術 監理部門)、建築設備士、一級電 気工事施工監理技士 1 6.出席者 【担当部課及び工事関係者】 所 属 役職等 氏 名 都市整備部長 部長 齋藤 一男 みどりの課 課長 天川 一典 みどりの課総合体育館建設推進室 室長 石川 東一 みどりの課総合体育館建設推進室 次長 井上 雅之 みどりの課総合体育館建設推進室 主事 高橋 和行 株式会社フジタ 作業所長 大木 宏幸 株式会社フジタ 工務担当 村野 国人 株式会社フジタ 工事長 花和 篤 株式会社フジタ 設備担当 佐藤 和正 森下 陽介 株式会社 INA新建築研究所 設計部 株式会社 INA新建築研究所 構造設計部 主任 石橋 孝司 株式会社 INA新建築研究所 監理部 主任 神山 芳隆 株式会社 蒼設備設計 設備設計部 部長 猪狩 雅彦 株式会社 蒼設備設計 電気設計部 次長 横山 敏章 株式会社 蒼設備設計 設備設計部 杉野 憲一 ※1 挨拶のみ ※2 午後の現場技術調査に出席 【契約担当】 所 属 役職等 財産活用課 課長補佐 2 氏 名 深津 博樹 ※1 ※2 7.工事概要 工事名称 市民総合体育館建設工事 工事場所 流山市野々下 1 丁目 40 番の 1 他 113 筆 工 期 平成 25 年 11 月 29 日~平成 27 年 11 月 18 日 発 注 者 流山市長 井崎 義治 担 当 課 都市整備部みどりの課 受 注 者 株式会社 フジタ 東関東支店 契 約 額 当 初 4,989,600,000 円 変更後 5,042,952,000 円 工事概要 市民総合体育館規模 敷地面積 82,966.50 ㎡ 構造規模 鉄筋コンクリート造、一部鉄骨造 地上3階建 建築面積 7,862.29 ㎡ 延べ面積 10,648.04 ㎡ 主要用途 体育館、観覧場 主な施設 ・メインアリーナ:2,100 ㎡ ・観覧席:2階固定席 1,488 席 ・サブアリーナ:985 ㎡ ・武道場:480 ㎡ ・弓道場:和弓洋弓(6 人立ち) ・その他:会議室、フィットネス用スタジオ、防災備蓄倉庫等 全館空調冷暖房設備、非常用発電設備 3 Ⅱ.工事技術調査業務の実施要領 工事技術調査は、流山市監査委員事務局の立会いの下、審査員(技術士) と工事関係者(発注者及び受注者)との面談・質疑応答及び工事現場の施工 状況の確認により行った。 調査内容は下記の2項目である。 ○計画、設計、積算、契約、施工等が適正かつ効率的に行われているか否 か、及び工事の監理状況の確認 ○工事関係者との面談、工事関係書類及び工事施工状況の確認 1.調査基本方針 (1)流山市の「業務委託仕様書」の業務内容を踏まえ、技術面における調査 を行い、設計・施工に関する調査結果及び意見具申についての報告を行う。 (2)調査に際して、工事関係者との面談や工事関係書類及び工事施工状況を 確認し、工事における計画、設計、積算、契約、施工等が適切であるか否 かを調査する。また、最近、社会的問題になっている防災・安全・環境保 全についても調査を行う。 (3)事前に示された資料を基に審査員(技術士)が質問書を作成し、工事関 係者からの回答を確認しながら工事技術調査を進める。 2.調査内容 工事技術調査の具体的内容は以下のとおりである。 (1)計 画 基本計画、工事概要、計画留意事項、工期の設定、関係者・ 地元との説明・協議、バリアフリーの対応等 (2)設 計 適用する設計基準の書類名、特記仕様書及び設計図書、構 造計算、地質調査報告等 (3)積 算 適用積算基準の書類名、工事の積算・見積、VE提案 (4)契 約 工事・設計の請負契約、業者選定資料、落札率等 (5)施工・監理 諸官庁への届出、施工計画、作業手順、施工体制台帳、施 工図、下請通知、安全衛生管理体制書類、関連工事との連 絡調整、工事監理記録、記録写真、日報等 (6)検査・試験 材料検査・試験等 (7)環 境 保 全 設計・施工時の環境保全対策(騒音・振動、廃棄物処理、 有害物質等) 4 3.主な調査資料名 (1)基本方針・基本計画 (2)基本設計 (3)設計図書一式(設計図、特記仕様書) (4)構造計算書 (5)地質調査報告書 (6)契約関係書類 (7)積算関係書類 (8)工事工程表 (9)施工計画書(総合施工、仮設、工種別) (10)施工体制台帳(施工体系図) (11)定例打合せ会議記録 (12)安全管理書類(統括安全衛生管理組織表、安全管理計画書、安全協議 会記録、安全巡回点検表等) (13)品質管理簿 (14)試験・検査記録 (15)産業廃棄物関係書類 (16)月報、日報、工事記録写真等 4.技術調査進行状況 場所:流山市第2庁舎3階305会議室及び当該工事現場 日時:平成27年1月8日(木) 9:00~12:00 出席者紹介、工事概要説明、書類審査等 13:30~15:30 書類審査、現場備付書類等調査、現場調査 15:45~16:00 所見・講評 5 Ⅲ.工事技術調査業務の実施結果 (凡例)共 通:建築工事及び電気・給排水・空気調和の各設備工事に 共通した事項 建 築:建築工事 電 気:電気設備工事 機 械:給排水工事、空気調和設備工事 1.計画(共 通) (1) 市民総合体育館の建替えに至った経緯について 昭和51年に開設し市民利用がされているが、施設の老朽化、耐震性不 足、規模が狭隘であることから、改修ではなく建て替えすることとした。 耐震性能は、Is 値 0.23 で基準の 0.6 に対して低い状況となっている。 (2) 各種事業採択に際しての優先性を評価・判断するシステムについて 流山市総合計画基本構想(H12~H31)に基づく流山市後期基本計画の 実施計画において、目的・効果等を評価し事業採択している。本事業は、 中 期実施計画(H25~H27)において、優先度の高いリーディング事業とし て位置付けている。 (3) 「流山市市民総合体育館建替え事業基本方針・基本計画」について 平成 23 年 11 月、生涯学習部生涯学習課が担当した。日頃のスポーツ活 動の場、スポーツ大会の場、スポーツを観る場、スポーツを支える場、文 化行事等の会場、災害時避難所、人や地球にやさしい体育館を基本コンセ プトとしている。 (4) 事業用地の位置、土地の状況等について つくばエクスプレス流山セントラルパーク駅から北北東に約 0.6 キロメ ートルの位置で、都市公園法の運動公園に位置付けられている市有地。 下総台地に位置するが、一部は谷地を埋土した土地の性状である。 (5) 当該地の都市計画規制及び都市公園における建築規模制限について 1)都市計画 第二種住居地域 第一種高度地区 土地区画整理事業施行地区 法第 22 条指定区域 2)都市公園における建築規模制限 6 都市公園法施行令第8条により運動施設の敷地面積の合計は、敷地面 積の100分の50を超えてはならない。 現況は 15ha であるが、区画整理事業後は 17.9ha となる。 敷地面積 8.3ha<17.9/2=8.95ha 流山市都市公園及び公園施設の設置の基準を定める条例第5条第2項 により、都市公園面積に対する運動施設の建築面積の限度は100分の 12とする。 建築面積/敷地面積=11,085.27 ㎡/17.9ha=6/100<12/100 (6) 本事業を独立行政法人都市再生機構に委託した経緯について 「民間活力を導入した体育館建替事業」として上期実施計画に位置付けた が、景気動向により断念した。中期実施計画において、市が自ら行う「市 民総合体育館建替事業」へ方針を変更した。市には、この規模の体育館を 設計・建築するにあたってのノウハウがなく、人的にも急な増員で対応す ることが困難なため、国庫補助事業に関しても精通している独立行政法人 都市再生機構(以下「UR」という。)にアウトソーシングすることとした。 当時の担当は、生涯学習課だった。 (7) 基本設計及び実施設計の委託業者の選定方法について 市からURへ委託していたが、URの選定方法は次のとおり。 基本設計:簡易公募型プロポーザル方式 実施設計:随意契約 (8) 基本設計のコンセプト、基本的な考え方について コンセプトは次のとおり。 ・市街地整備、公園再整備計画との一体化 ・森と調和する「森のアリーナ」 ・市民の様々なニーズに応える施設づくり これをもとに、明快なゾーニングと動線計画により平面計画を行っている。 (9) 事業予算の内訳及び補助金等について 補助金については、社会資本総合整備交付金(国土交通省)を受けてい る。 その申請書の社会資本総合整備計画(市街地整備)では次の位置づけと している。 計画の名称 流山市の安心安全な市街地整備の推進 計画の期間 H24~H28(5 年間) 7 計画の目標 ・安心安全な市街地の整備を推進するため、一時避難場所の確保を拡 充するとともに、公園緑地の整備を推進する。 ・人口増加に対応した防災施設、暮らし、コミュニティ、環境に配慮 した施設整備等により、安心安全で快適な市街地整備を推進する。 交付対象事業 公園施設の再整備、都市緑地、小中併設校・地域交流 センター整備等及び用地取得 区 分 体育館建設工事費 施工監理委託費 体育館解体工事・設計 合計 総事業費 財源内訳(単位:百万円) 国費 地方債 一般財源 5,049.9 1,639.9 2,670.1 739.9 74.7 9.0 50.7 15.0 110.0 5,234.6 110.0 1,648.9 2,720.8 864.9 この他、設計費、周辺整備工事費等がある。 (10)本事業の発注時期、工期設定の考え方、妥当性について 平成 25 年度発注については、当初計画のとおりである。耐震診断の結 果及び市有建築物の耐震改修進捗からも本計画の施工時期は、適切であ ると考える。工期設定については、経済的で標準的なものとし、720 日間 としたが同規模他事例から見ても必要な期間である。 (11)ライフサイクルコストについて 建設費、光熱水費、維持管理費用、修繕・更新費用、さらには解体費 用であると考えるが、設備方式の選定、管理者選定などについてはあら かじめ設計段階でコスト低減を検討し計画している。また、公共施設保 全計画を策定し、これに基づき適期に修繕・更新を行うこととしている。 今回の事業では策定していないが、建物の完成までにはファシリティ マネジメント担当課である財産活用課に引き継ぐとしている。 (12)供用後の指定管理者制度の適用について 多様化する市民のニーズに、より効果的かつ効率的に対応するため、 既存体育館では指定管理者制度の導入を図っている。新・体育館において も導入を決定し、現在、事業者選定に向けた準備を進めている。 8 2.設 計 (1) 設計全般(共 通) 1)周囲環境に適合した設計とするために配慮した事柄について 建物をコンパクトに計画し、出来るだけ既存樹を残し、緑に囲まれた体 育館づくりを目指した。建物をメインアリーナ、サブアリーナ、武道場棟、 多目的運動室棟と4つの分棟配置とし、特に武道場棟は武道場と弓道場を 積層としている。立地環境は緑豊かな総合運動公園内にあることからみど りとマッチし、かつ、つくばエクスプレスの車窓からも見えることについ ても配慮した。 2)建築確認等の法的手続きについて 建築許可:平成 25 年 3 月 26 日付け千葉県建指令第 1844 号(法第 48 条 第 6 項ただし書) 建築確認:平成 26 年 1 月 10 日付け第 HPA-13-07960-1 号 省エネ法:平成 25 年 12 月 18 日受付 建設リサイクル法:平成 25 年 12 月 26 日通知 同日受付 通知-14 福祉のまちづくり条例:平成 25 年 11 月 12 日第通 12 号 収受 平成 26 年 3 月 13 日 景観条例:平成 25 年 3 月 22 日 計画通知 流み第 180 号 バリアフリー法:平成 26 年 3 月 27 日 認定 建第 1738 号 3)設計に際し適用した法令、設計基準書等について ア.設計に際し適用した法令 建築基準法、千葉県条例、消防法、千葉県福祉のまちづくり条例、バ リアフリー法 イ.設計基準書等 ・公共建築工事標準仕様書〔建築工事編(平成 22 年版)・機械設備工事 編(平成 25 年版)・電気設備工事編(平成 25 年版)、国交省大臣官房 官庁営繕部〕 ・建築工事標準詳細図(国交省大臣官房官庁営繕部整備課) ・公共建築設備工事標準図(機械設備工事編・電気設備工事編、国交省 大臣官房官庁営繕部整備課) ウ.構造に関する準拠基準 ・建築構造設計基準(平成 22 年度版、国交省大臣官房官庁営繕部整備課) ・建築鉄骨設計基準及び同解説(平成 10 年度版、国交省大臣官房官庁営 繕部整備課) ・官庁施設の総合耐震計画基準及び同解説(平成 8 年度版、国交省大臣 官房官庁営繕部整備課) ・建築物の構造関係技術基準解説書(2007 年版、国交省住宅局建築指導 課ほか) エ.その他 9 センター・学会諸基(規)準による。 4)将来の維持管理の容易さ等について 天井が高くなるアリーナ・エントランスにはキャットウォーク、高所作 業車を設置し、清掃・点検・メンテナンスのし易い計画とした。また、ア リーナハイサイド窓の清掃にはメンテナンスラダーを設置し、清掃可能な 計画とした。 5)防災拠点としての整備内容について 不特定多数の利用する施設としてわかりやすいプラン、耐震性の高い施 設、災害時に対応できる施設(備蓄倉庫、救護医療スペース、非常用発電 機(72h)、中水利用、災害用トイレ)を整備した。特に、中水利用として 雨水をトイレの洗浄や散水に日常も含め活用している。 6)本工事の耐震の考え方及び重要度係数の設定について 官庁施設の総合耐震計画基準に規定される「避難所」として位置付けら れている。耐震安全性の分類は、構造体では「Ⅱ類」、非構造材は「A 類」、 建築設備は「乙類」とした。重要度係数は 1.25 とした。 7)外構計画について 総合運動公園としての機能と景観に配慮し、本工事の市民総合体育館の 動線を考慮した計画とした。今回工事は、元設計がURで取りまとめたも のであることから、建物から概ね2mの範囲までを本工事としている。外 構計画としては、基本設計の中で方向付けはできているので、これをベー スに公園の再整備として別途工事として整備を行う。 (2)建 築 1)建築計画において特に配慮した事項について ア.動線計画 駅からの動線、車からの動線を配慮し東西をつなぐ通り抜けのエント ランスを設けた。駅からの歩道は幅3mあり、これとウエストコートを 繋げ、建物の完成までに道路全体の整備がなされなくとも人の流れがス ムーズに行くよう配慮する。通り抜けの動線と直交する施設利用動線か らそれぞれの諸室にアクセスする明快な動線計画とした。イベント時は 2 階観覧席へと直接アクセスできる屋外動線を確保した。 イ.立面計画 ボリューム感を抑える分棟配置、深い軒の出により森の木立に浮かぶ 10 屋根の表現など、緑との調和を図るファサードを目指した。 ウ.断面計画 各機能(スポーツの必要天井高さ)に沿った天井高さとし、無駄のな い階高設定とした。天井高さは、メインアリーナ 13m、サブアリーナ 10 m、武道場3m等としている。メイン、サブの両アリーナのハイサイド 窓は直射日光を遮り間接光を取り入れる目的と観覧席上部等の気積を減 らし空調効率を高めるため、くの字の断面とした。 エ.内外装計画 インテリアコンセプトを「森の木立をイメージした内装デザイン」と した。壁は木リブ・目地割り、天井は木ルーバーを配置し、縦のライン を連続させることで森の木立のイメージを表現している。 オ.環境配慮計画 省エネルギーと省電力に配慮し、維持管理が容易でパッシブメインな 環境建築づくりとした。高断熱、自然換気、太陽光発電、雨水利用、ク ールピットをクールチューブとして利用し多様な省エネルギー、エコロ ジカルな仕掛けを用意している。 カ.防災計画 不特定多数の利用する施設としてわかりやすいプラン、耐震性の高い 施設、災害時に対応できる施設(備蓄倉庫、救護医療スペース、非常用 発電機(72h)、中水利用、災害用トイレ)を整備した。 キ.外構計画 当該体育館周辺の外構計画については、西側エントランス、東側エン トランス、北側ポケットパークの4つの広場と既存の雑木林が一体とな るゾーニング計画とした。総合運動公園の再整備計画との整合も図りつ つ計画した。 西側は駅からのアプローチで道路の歩道からの受け皿となるスペース を整備する。東側は駐車場からのアプローチとして位置づけられる。こ れらを早期に整備し、道路との擦り合せ等は段階計画の中で検討してい く。 2)構造計画上の配慮事項について ・建物の長辺方向は約 130m と長大であり、一方にはアリーナ部分のような 建物荷重・建物剛性が小さい大スパン部分が存在し、他方には空調機械 室・設備機器置場といった荷重が大きく 3 階建てとなる部分が存在して いる。これらアリーナと武道場は建物性状が大きく異なるため、EXP.J を 設けることで構造計画上明快な形状になるように分割して計画した。 ・アリーナ屋根は RC 造の架構の上に載る置き屋根形式とした。 11 ・屋根曲面のライズが比較的小さく、屋根面の面内剛性が確保しやすいこ とから、地震などの水平力は屋根面の水平ブレースを介して外周部のブ レースに伝達し、アンカーボルトを通じて RC のフレームに伝達する構造 とした。 ・屋根架構の大スパン構造には鉄骨造の平行弦トラスを採用することで軽 量化をはかり、下部構造への負担を小さくした。 ・2.7m 毎に架け渡した平行弦トラス梁は、架構方向の支点をローラー支持 とし、大きな水平反力を生じさせないことにより、下部の RC 柱の変形を おさえた。 ・平行弦梁に直交する方向については、梁間を立体的につないだ斜材によ って立体トラス架構を構成している。また、妻面の支柱は柱頭柱脚共に ピン接合としており、屋根に生じた水平力を躯体に伝達しないため、下 部の独立した柱の変形をおさえている。水平力は立体トラス部の支点に 集中させ、下部構造へ伝達させる計画とした。 ・アリーナ棟のトラス屋根は一次設計用水平震度を 1.0 とし、さらに耐震 安全性の余裕度を考慮して、設計用地震力は 1.25 倍とした。 ・崩壊メカニズム時に塑性ヒンジを許容する部位は、大梁端部、最上階柱 頭、1 階柱脚及び引張柱とする。ただし、アリーナ屋根の屋根支持部の RC 柱については柱頭ヒンジを許容していない。 ・2.0m を超える片持ち部材は鉛直震度 1.0 を考慮して設計した。 ・メインアリーナの床の積載荷重は、施主が予定しているイベント利用時 の荷重の集中を考慮して、全面に渡って床荷重(床用・小梁用)を 15,000N/m2 とした。 ・ サ ブア リ ーナ の 床の 積 載荷 重 は、 体 育館 と して 一 般的 な 値で ある 5,000N/m2 を採用した。 3)基礎の設計内容について ・基礎工法の選定は、各種基礎工法の間で比較を行い、構造性能、施工性、 コスト等を総合して最も優れていると思われる工法を採用した。 杭の比較設計として、 ①鋼管巻き場所打ちコンクリート拡底杭(アースドリル拡底工法) ②場所打ちコンクリート拡底杭(アースドリル拡底工法) ③プレボーリング鋼管巻き既製コンクリート杭(α=400, Fc=105N/m㎡)、 ④中堀鋼管巻き拡大根固め既製コンクリート杭(α=250,Fc=85N/m㎡)、 ⑤プレボーリング鋼管巻き既製コンクリート杭(α=250,Fc=85N/m㎡) の5通りについて行った結果、費用対効果を考慮し③の工法を採用した。 ・杭基礎の支持層は GL-35.2m 以深の洪積砂質土層とした。 12 ・杭はプレボーリング鋼管巻き既成コンクリート杭とし、支持力算定用の定 数はα=400 とすることで、特定の工法に限定しないようにした。 ・アリーナ側地中部分はアリーナ床下、外周部、廊下、機械室など、床レベ ルが大きく異なっている。特に機械室とアリーナ床下の基礎を比較すると、 基礎底のレベルが 2.0m 以上の差が生じる。 ・モデル化に際して、機械室など床レベルが地中深くなる部分を地下1階と し、アリーナ床などピットが無く、ピットの床を設ける必要が無い部分は 1 階としている。 ・本建物は基礎を一体とし、上部構造をアリーナ棟、武道場棟に分割してい るが、計算上は基礎についてもアリーナ棟と武道場棟に分けて計算を行い、 両者の境界部分について各々に生じた応力を反対側のモデルに入力する ことで相互の影響を考慮した。 4)土量処理計画について 当初契約段階での設計内訳書では、土工事で次のように計上している。 根切 24,345 ㎥:① 埋戻 10,072 ㎥:② 盛土 516 ㎥:③ このほか、外構工事の項目として、盛土 1,058 ㎥:④を別途計上している。 このうち、杭残土については(発生数量 2,914 ㎥:⑤)を埋戻 10,072 ㎥の 内数として 2,914 ㎥を計上していることから、 差引き①+⑤-(②+③+④)=15,613 ㎥が敷地内に残土となる。 建物周り 2mが建物工事範囲としているが、残土の処理については建築本体 工事と一体で行うことが、適正であると判断し、周辺整備工事(平成 27 年 度予定)の範囲の盛土を含め設計変更した。 よってこの変更に伴い 建設発生土処分 9,176 ㎥ 外構盛土 6,437 ㎥ 合計 15,613 ㎥ を処分及び盛土利用することとした。 5)採光、換気についての配慮について 積極的に自然採光、自然通風を採り入れられる計画とした。直射日光を 遮る必要があるアリーナは、屋根先を出すことで直射日光を遮ることがで きる。また、外壁を斜めにし、直射日光を拡散させてやわらかい光をハイ サイド窓からアリーナ内に採り入れることができる。 (昼光利用による照明 電力の削減) 6)空調を行う居室についての温熱環境への配慮について 13 屋根、外壁の高断熱化を行った。エントランスロビーのガラスカーテン ウォールは Low-e ガラスを採用した。また、大空間となるアリーナは競技 上不要な空間を屋外化することで空調気積を減らし、空調負荷を極力抑え た。 7)メインアリーナに対する音響計画について メインアリーナは通常のスポーツ利用に加え、集会・講演会等の利用に おいても対応可能な室内音響となるように計画した。大空間となるため、 吸音は天井面にグラスウールボード(厚さ 25mm)を貼ることで行い、コ ンサートホールと講堂の中間値 0.25 よりやや響く、平均吸音率 0.20~0.23 を目標値とした。 8)バリアフリー・ユニヴァーサルデザインへの配慮について 千葉県福祉のまちづくり条例・バリアフリー法建築物移動円滑化誘導基 準を遵守し、全ての人に開かれた施設を目指している。 具体的には、車椅子利用者、視聴覚障害者への対応、オストメイト、乳 児・幼児への対応に配慮している。上足・下足については、特に2階観覧 席、ランニングコースは下足ゾーンとしている。 (3)電 気 1)電源の安定供給について 各種の引込方式を検討したが、経済の観点で単独引き込みとした。停電時 及び災害時の拠点機能のための電源として非常用発電機を設置している。非 常用発電機は、72 時間分の運転が可能な燃料を用意している。 2)太陽光発電設備の出力量について 自然エネルギーの有効活用として太陽光発電設備の設置を行う。10kW 相当の太陽電池モジュールを屋上に設置し、本建物の電力負荷低減に利用 する。設置可能な屋上面積が少なく、かつ補助金上の制約もあり、太陽電 池モジュールは 10kW 相当の設備となった。 太陽光発電設備で発電された電力は通常時、災害時でも特定回路(コン セント等)に電源を供給する。特定回路の用途として、照明、パソコン及 び携帯電話等の充電器の接続を考えている。 3)防災設備に関して所轄の消防署との協議について 所轄の消防署と協議の議事録の説明があり、十分な協議が行われている ことを確認した。 14 4)電気設備の省エネルギーについて 受変電設備の変圧器には、省エネルギー基準を満たしたトップランナー 変圧器を採用している。 照明に関しては、エネルギー消費量の少ない LED 器具を主体に照明計画 を行っている。また、トイレの照明の点滅に人感センサーを使用し、無駄 な点灯を防止している。 5)LED 照明設備の採用について 前項で説明したが、エネルギー消費量の少ない LED 器具を主体に照明計 画を行っている。アリーナの高天井部の周辺部に補助照明としての HID ラ ンプ(高輝度放電灯)、倉庫等バックヤードは高効率 Hf 蛍光灯を設置して いるが、その他は LED 器具となっている。 6)将来の変革や情報化の進展の対応について 将来、敷地内電源の供給増に対応できる電気室増設スペースを確保し、 高圧き電盤に予備スペースを設けている。 アリーナには、情報コンセントを用意し、競技会等でのパソコン等の持 込時の対応を可能としている。 7)電気設備機器の竣工後の維持管理について メイン、サブアリーナ共に保守が必要な機器はキャットウォーク近傍に 設置することで容易に保守できる配置としている。高天井部の保守機器と して高所作業車を配備する。 また、建物管理上、主要な機器は事務室内に総合盤を設け一元管理でき る設備としている。 (4)機 械 1)給排水設備工事 ア.上水設備システムの給水方式について 高架水槽方式、増圧方式等の給水システム検討のほか、災害時の上水 容量確保、通常運用時の死水対策の検討を行い、本計画のように低層で 平面的に大きな建物には有利な加圧給水ポンプ方式を採用した。 イ.雨水の利用について 雨水利用範囲の検討及び年間降雨量と雨水槽容量から最適集水面積 の検討を行った。また、公共施設として省資源化への取組としてはトイ レの洗浄水として活用し、雨水利用の“見える化”を採用して、市民に 15 分かり易くした。 ウ.節水法について 衛生器具は節水型を採用し、女子便所には擬音装置の設置を備品対応 で計画している。 エ.受水槽の容量設定について 給水器具数(建築設備設計基準を参照)より算定し、災害時の上水利 用分を確保できる容量とした。 オ.給湯システムの熱源方式について いろいろなシステム比較を行い、給湯量の変化にも対応可能なガス湯 沸器方式を採用した。 2)空調設備工事 ア.本設備の省エネ、効率向上など設計上の配慮について 熱源、パッケージ等は高効率機器を採用。アリーナ等の大空間につい ては置換空調方式を採用し居住域空調とした。クールピットは、スペー ス効率を考慮し採用した。 イ.空調熱源について今回のシステム採用の理由と適切性について アリーナ熱源はイニシャルコスト、ランニングコスト(利用率を考慮) よりガス吸収式冷温水発生器を採用し、その他諸室は、災害時の空調を 確保できる EHP 方式とした。 ウ.空調設備の容量選定の適切性について 基本的には建築設備設計基準(平成 21 年度)に準拠して計算されて いるのを計算書にて確認した。 エ.本設備機器の竣工後の維持管理・保守点検の容易さについて 高天井部分には出来るだけ機器の設置を避け、フロアーからのメンテ ナンスを可能とした。また、適正な位置への点検口の設置を建築に要望 した。 オ.室外機器の周辺への防音、防振対策について 騒音については、騒音計算を行い基準値以下であることを確認した。 振動についは、防振架台を設置して対応した。 3)昇降機設備 ア. 各設備の特徴について マシンレス方式の ELV を採用した。 定員:15人 速度:45m/min 制御方式:インバータ制御方式 かごは、弓道場へのアクセス性を考慮し、和弓が入る大きさで検討した。 イ.障害者対応の計画について 16 アリーナ観覧席が2階であることを考慮し、ELV は車椅子仕様とした。 3.積 算(共 通) (1)積算基準等について 積算ソフト(営繕積算システム RIBC 等)の使用はしていない。 ・積算要領…公共建築工事積算基準(平成 23 年度版) ・歩掛り…公共建築工事積算基準(平成 23 年度版) ・数量積算…公共建築工事積算基準(平成 23 年度版) ・千葉県公共建築工事積算基準(建築・電気・機械:平成 23 年度) ・千葉県公共建築工事共通費積算基準 (2)積算に使用した歩掛、労務単価、機械損料、材料単価等について ・基準類…公共建築工事積算基準(国土交通省) 公共工事標準単価積算基準(国土交通省) 公共工事設計労務単価(国土交通省) 公共建築工事共通費積算基準(国土交通省) ・採用単価…建築物価(H25/6 月号) 電気・機械:H25/7 月号 積算資料(H25/6 月号) 電気・機械:H25/7 月号 建築施工単価(‘13 春号) 電気・機械:‘13 夏号 建築コスト情報(‘13 春号) 電気・機械:‘13 夏号 ・共通費…公共建築工事積算基準(平成 23 年度版) 公共建築工事共通費積算基準(平成 23 年度版) 平成 24 年度 公共建築工事積算基準等の運用(10 月版) ・端数処理、経費の低減…公共建築工事積算基準(平成 23 年度版) ※見積もりは平成 24 年度に行ったが、平成 25 年度に労務単価の急激な上 昇があったことから、これを踏まえ単価の見直しを行った。 (3)見積りの取得方法等について 基本は3社以上のメーカー見積による。採用は機器種類、機材、部位ご との比較で最安値を採用している。査定率については、内部規定はないが、 近年の事例をもとに設定した。 (4)工事数量の算出及び工事費の積算方式について 数量書の構成及び数量は、 「公共建築工事内訳書標準様式」及び「公共建 築数量積算基準」により算出している。数量計算書を提出させ説明を求め た。積算基準の確認を求め、また説明を求めた。URから各設計者及び建 17 築積算業者に委託しており、第三者としてのURが全体を統括し、チェッ クしたうえで市に納品されている。 UR が委託した積算業者:技建工務㈱(建築)、㈱蒼設備設計(設備) (5)共通仮設費の中の安全対策費の計上について 警備要員及び交通誘導員は積み上げによる。建設副産物処理費は共通仮 設費で計上しているので、積み上げ計上していない。 (6)施工条件明示について 設計図書によるものとし、公園内における建築工事であることから、施 工条件明示書としては作成していない。 (7)設計時、施工時のVE提案などコスト縮減のために、検討・工夫した点に ついて 基本設計など早い段階から品質や材料選定にあたって比較検討をし、コ スト縮減に努めている。また、杭については比較設計を行った〔2.(2) 4)基礎の設計内容について参照〕。 (8)グリーン調達、再生材の利用について 再生材の利用については、資源有効利用促進法、千葉県建設リサイクル 推進計画などに基づき、再生材の利用を視野に入れている。なお、建築工 事特記仕様書では「グリーン購入法により、環境負荷を低減できる材料を 選定するように努める。」とされているが、具体的な調達品目の洗い出し等 は行っていない。 (9)諸経費算出根拠(共通仮設費・現場管理費・一般管理費等)について 千葉県公共建築工事積算基準により算出している。 4.入札契約(共 通) (1)入札・契約に関する市の基準及び電子入札システムの導入状況について 「流山市契約事務取扱要領」、「流山市建設工事等に係る入札等の執行に関 する規則」、 「流山市一般競争入札実施要領」等を基準とし入札を実施してい る。電子入札は、平成 19 年度から建設工事及び測量・コンサルに導入して いる。 18 (2)設計や各工事の契約の経緯について 区分 入札方式 入札者数 設計 簡易公募型プロポーザル 備 考 5者 方式に準じた手続 UR から委託した者に随意契約 監理 随意契約 工事 一般競争入札→随意契約 3者 不調(2者無効、1者辞退)に よる不落随契 (3)各工事の契約状況について 単位: (税込、円) 区分 設計(予定)金額 契約金額 設計 建築 (基本設計) 建築 (基本設計) 20,210,400 円 (実施設計) 42,667,800 円 19,950,000 円 (実施設計) 42,000,000 円 設備 (基本設計) 設備 (基本設計) 5,661,600 円 (実施設計) 12,623,100 円 3,360,000 円 (実施設計) 7,455,000 円 監理 工事 落札率 業者名 ㈱INA 新建築研究所 98.7% 98.4% ㈱蒼設備設計 59.3% 59.1% 57,639,600 (57,283,200) 57,240,000 99.92% 建築:㈱INA 新建築研究所 16,962,480 (16,956,000) 16,308,000 96.17% 設備:㈱蒼設備設計 4,996,080,000 (4,989,600,000) 4,989,600,000 不落 随契 ㈱フジタ (4)低入札価格の対応についての基準について 流山市低入札価格調査実施要領、流山市低入札価格調査委員会設置要領 により対応している。 (5)契約に関する必要書類の完備状況について 担当課で適正に管理しており、関係書類の原本を確認した。 19 (6)CORINS 登録について 登録を確認した。 (7)今回工事の前払い・部分払いの実施状況について 前払金は、契約金額の 40%以内(平成 25 年度までは前払い限度額を 6,000 万円としていた。)としている。部分払いは、出来形が 30%を超えた場合 に、当該出来形に係る出来高の 90%以内としている。 項目 前金払 出来高払 金額 支払日 60,000,000 円 平成 25 年 12 月 17 日 190,000,000 円 平成 26 年 4 月 25 日 (8)設計変更の内容について 当初契約 4,989,600,000 円 変更契約 5,042,952,000 円 (53,352,000 円増) 掘削残土処分及び盛土工事を追加・変更 5.工事監理(共 通) (1)工事監理上の重点事項について 全体は4つのブロックから形成されているが、建築面積が大きく、形状 が水平方向に広がっており、各工区で同時並行的に工事が進行していく状 況が発生する為、工区単位の位置づけと相互間の調整が大切になると考え ている。 (2)使用材料の品質・規格について ① 品質・規格の承認記録 施工計画書、材料承諾願いについて書類を確認した。 ② 使用材料の変更はない (3)工程管理について ① 平成 26 年 12 月末現在 予定出来高:32.4% 実施出来高:31.5% ② 工期変更や遅延対策等(クリティカルパスの検討) 鉄骨建方期間の縮小及び動線計画を配慮した工程管理を実施してい る。工程管理は、メインアリーナ、サブアリーナ、武道場棟、多目的運 動室棟の4つのブロックにより工程管理を行っている。特に、武道場等 は、他ブロックの根切土のストックのために、3月の杭工事以降 10 月の 20 掘削工事まで約 6 ヶ月間、ストック土の搬出が済むまで取り掛かれなか った。 なお、工程管理に関しては、「昨今の職人不足等の動向から、出面等に 注意し管理したい。」との報告があった。 (4)各工種の進捗に合わせた試験・検査について ① 試験・検査のチェック及び不合格があった場合の措置について 検査計画表及び施工計画書に基づき確認している。自主検査記録、 施工結果報告書、試験結果報告書等の確認。 不合格時の措置は流山市、監理者、施工者と協議の上、処置方法 を決定し対処する。是正後は確認、再検査を行う。 ② 試験及び検査の実施要領書の作成について 施工計画書に記載し、試験要領書を確認している。 ③ 試験・検査の結果照合のためのチェックリスト等について 総合施工計画書に記載、検査計画表にて確認している。 (5)施工計画書の主要な記載事項及び監督員の指示、承認記録について 主な記載内容は工程表、品質管理計画、施工要領等に区分され、材料、 仕上げ、性能、精度等の目標、品質管理及び体制等を明示し、設計図書と の整合性を確保している。例えば、仮設計画図では、総合仮設計画図、根 切、基礎工事、躯体工事、鉄骨建方、外部足場の各計画図により段階計画 としての仮設計画を作成している。 また、監督員の指示、承認記録について、施工計画書等への発注者のチ ェック及び承諾印を確認した。 (6)工事関係者間の調整及び関係者の業務分掌について 毎週の定例会議の開催と、電話、メール等により情報の共有化を図って いる。定例全体会は監理者が主催し市担当者も出席し、分科会は施工者の 主催で技術的な検討を行っている。協議内容は議事録にまとめ、関係者の 確認を得た後に提出する。 (7)施工業者の社内 ISO の品質管理、環境管理について ISO9001、ISO14001 の登録を受け、総合施工計画書内容がマネジメントシ ステムに合致している。また、安全管理も含め3種類の項目を管理してい る。上期と下期に分け社内サーべランスを行う現場をピックアップしてい る。昨年、この現場は選ばれなかったが、今年は選ばれる可能性がある。 21 6.施 工(共 通) (1)施工体制全般 1)工事全体(建設)の施工体系図とその掲示状況について 書類にて確認した。仮囲の掲示を確認した。 2)施工体制台帳・下請通知書等について 事前提出書類にて確認した。 3)配置した法定技術者について 資格確認の上、適正に配置している。監理技術者の資格者証については、 本人から資格証の提示を受け確認した。 (2)安全管理 1) 安全関係の主な申請・届出状況について ・特定元方事業者の事業開始届 平成 26 年 1 月 7 日届出 ・適用事業報告 平成 26 年 1 月 7 日届出 ・時間外労働休日労働に関する協定届 平成 26 年 1 月 7 日届出 有効期間が1年のため昨日(平成 27年 1 月 7 日)届出を提出した。 ・足場、型枠支保工設置届 平成 26 年 8 月 20 日届出 ・クレーン・移動式クレーン設置報告書 適用クレーン無し ・建設業許可証等の掲示等 仮囲の掲示を確認した。 2)安全管理組織表について説明してください。 ・組織表(図)を確認した。 ・変更があった場合は、随時変更時に修正している。 3)安全衛生に関する関係者協議について ・関係者間の協議体制 毎月第 4 木曜日に安全衛生協議会を実施している。 ・協議の実施状況を示す議事録を確認した。 4)緊急時の安全管理や連絡体制について ・周知方法や訓練等の実施方法 台風等の安全対策は朝礼時に作業中止や点検事項を周知させている。 ・緊急事態の連絡表を確認した。 5)工事現場で同時に何人働いているか等について ・現時点では 70~90 人であるが、最大時 200 人位と予想される。 ・関連工事との同時進行がある場合、新規入所者教育の実施及び朝礼、工 22 程打合せ参加を実施している。 ・作業員の健康管理は、新規入所者教育時、朝礼時の体調チェックを実施 している。KY(危険予知)ミーティングの中でも確認している。この 関係の書類の確認を行った。 ・外国人労働者は、非常に増えている。東京支店でビザや労働許可の有無 をチェックしている。その上で受け入れている。 6)今までに災害発生はあるか。墜落事故に対する対策について 災害はない。但し、軽度熱中症は2件発生した。 墜落事故対策とし、手摺先行足場(ミレニウム足場)を採用している。 また、巾木、垂直ネットを設置している。 7)防火体制について ・防火上の危険物については、ガスボンベを使用している。 ・安全対策については、取扱責任者表示及び消火器か消火バケツを設置し 作業している。 8)関係者の教育や指導、保有資格確認等について ・新規入場者(現場内作業員)に対する教育記録 新規入所者教育を実施した記録簿を確認した。 ・工事車両の運転者に対する教育記録 降ろし作業がある場合、作業手順書の周知を実施している。 ・資格証携帯や有効期限の確認、現場への入所制限等の実施方法 資格者証携帯を実施し、有効期限は安全協議会時に各業者にも確認を 指導している。現場への入所、作業制限は、高齢者(65 歳以上)、年少者 (15 歳未満)、外国人について実施している。 ・有効期限切れ、不携帯等について指摘・指導した事例 特にない。 ・高所作業車使用に関して、資格者証を掲示させた状態で作業する指導を 実施している。 9)工事現場の点検・巡回状況について ① 工事現場の巡回について 統括安全衛生責任者か元方安全責任者が全体点検を実施している。 ② 巡回記録について 「安全衛生・品質・環境点検誌」を確認した。 23 (3)現場管理書類の整備状況の確認 1)工事記録 日報、月報、工事打合せ簿等を確認した。 2)工事記録写真 主に杭工事写真を確認した。 (4)現場での調査について 仮囲いの掲示状況、施工現場、盛土ストックの状況、廃棄物保管状況等 を確認した。 7.環境管理(共 通) (1)施工中の周辺環境への配慮について ・各種環境対策の内容 周辺住民及び通行人への災害防止対策としてゲート部にガードマン 配置及び仮囲歩道部に夜間照明設置を実施している。 ・工事中の騒音、振動などの対策 特定建設作業届 平成 26 年 1 月 20 日届出 ・巡視および確認等の状況 仮囲い外部を毎週巡回実施している。 ・粉塵、周辺道路対策 場内仮設道路上の清掃徹底を実施している。 ・周辺からの「苦情」や「意見」等とその対応 杭工事時に振動についての問合せが 1 件あり状況確認を行った。原 因は他の道路工事の振動を当該現場が原因ではないかと誤認したよう だ。その後の苦情はない。 (2)建設リサイクル(再生資源利用)に関する取組みについて ・資材の再資源化の対象と利用計画について 土砂及び砕石を再生資源利用している。 ・杭工事で発生するセメントミルク混じり土の処理について 埋め戻しに自ら利用している。 ・再資源化の実施記録について 再生資源利用計画書(計画書)を作成している。 ・発生土の工事間利用について 工事間利用はしていない。 24 ・建設副産物情報交換システムへの登録について COBRIS 登録済み。 (3)発生残土の搬出について 設計変更の対象となった発生残土(9,176 ㎥)の運搬・処分について確認 した。 ・7月~10 月に 10t車で 1,047 台(1台当たり 6~6.5 ㎥とすると、約 6,800 ㎥)を搬出した。 ・搬出先は、柏市手賀薬師下 1024 番地 2 他 10 筆(埋立事業許可決定通知 書確認、事業主;柏市泉 381 番地 2 聖建工業有限会社)ここが一杯にな ってきたので、野田市八津字双松 701 番ほか7筆(特定事業許可書確認、 事業主;埼玉県越谷市平方 1177 番 ㈱さいたま資材)に搬出したとの報 告を受けた。 (4)本工事の廃棄物処理計画について ・廃棄物処理計画の作成、届出 総合施工計画内に作成済み。施設等届出書類を確認実施している。 ・廃棄物処理の委託契約 廃棄物の種別毎に契約会社リスト一覧を確認した。 ・産業廃棄物の運搬業者及び処分業者からの報告・記録 電子マニフェスト及び紙マニフェストを確認した。 ・廃棄物運搬車両及び積載状況、処分地までの経路追跡写真等 廃棄物運搬車両登録の確認とマニフェストにて最終処分確認を実施 している。発生土処分は経路追跡記録を実施している。 ・杭工事で発生したセメントミルク混じり土を自ら利用で埋め戻し土に 使用した。 (5)場内における廃棄物保管について ・廃棄物の保管・分別に関する関係者への教育・指導 新規入所者教育時に実施している。 ・廃棄物運搬業者へ引き渡すまでの仮置き場の設置状況 運搬業者コンテナを設置し分別している。 (混合廃棄物、木材、ダン ボール、スクラップ等) (6)各室の化学物質測定計画について 設計特記により、居室 30 箇所を測定予定となっている。 25 Ⅳ.総合評価と提言・推奨事項 1.工事技術調査の総合評価 本調査は、市民総合体育館建設工事について、計画、設計基準、資料等の 整備状況やその運用、設計書、設計見積、工事施工計画及び工種ごとの工程、 各種検査、材料試験等の実施状況等について主として技術的観点から実施し た。全体的には書類及び現場の各調査項目とも良好であると評価する。 技術調査の結果は、以下のとおり。 (1)計画 ・本計画は、現体育館の老朽化、耐震性の不足、その規模が狭隘であるこ とから、改修ではなく建替えを選択した判断はやむを得ないものと判断 される。 ・本事業については、流山市の総合計画基本構想に基づく実施計画に位置 づけられている事業であり流山市にとって優先度の高い事業である。 ・本施設は、平成 23 年に策定した基本方針・基本計画に位置づけられたも ので、「スポーツをする、観る、支える」場であり、文化行事の場、災害 時の避難場所など複合的な目的を基本コンセプトとして掲げている。 ・本事業用地は、流山セントラルパーク駅から 600mの位置にあり、車利用 だけでなく、公共交通機関を利用したアクセスも可能である。 ・本事業は、そのノウハウと技術力に期待しURに委託し、基本設計及び 実施設計の業者選定を委ねている。流山市の技術者の現状を考えると適 切な選択であったと思われる。 ・基本設計では、区画整理による市街地整備及び公園整備との一体的計画、 森のアリーナとして森との調和、市民ニーズに対応した計画として景観に も配慮した計画となっている。 ・補助金としては、社会資本総合交付金として、本事業と小中併設校・地域 交流センター整備等及び用地取得を「安全安心の市街地整備の推進」とし て、30%を超える補助率を確保している。 ・ライフサイクルコストについては、特に算定していないが、公共施設保全 計画を策定し、ファシリティマネジメント担当課である財産活用課に引き 継ぐとしている。(提言事項参照) ・供用後には指定管理者制度を導入し、民間のノウハウを活用する予定であ る。 26 (2)設計 1)設計全般 ・既存樹を生かし、建物のデザインを緑とマッチさせ、つくばエクスプレ スの車窓からの視線も意識したデザインを志向している。 ・法的手続きは適切に行われている。 ・設計基準等については、適切に採用している。 ・将来の維持管理の容易さに配慮し、キャットウォーク、メンテナンスラ ダーなどを適正に配置している。 ・防災拠点として必要な対応をしており、災害時に対応可能な施設を整備 していることを評価する。 ・耐震安全性を考慮し、構造本体、非構造材、建築設備の耐震性に配慮し ている。 ・外構計画については、建物本体と外部動線に配慮した計画及び隣接道路 との整合、適切な段階整備計画が望まれる。 2)建築 ・車でのアプローチ、内部と外部を結ぶ利用及び避難動線が適切に行われ ている。駅からのアプローチについての整備に配慮が必要である。 ・立面計画、断面計画、内外装計画、環境配慮計画、防災計画、外構計画 について、創意工夫が見られる。 ・構造上の配慮事項としては、構造特性の異なる部分には、エキスパンジ ョイントを設け構造計画上明快に分割している。アリーナの屋根につい て構造上の創意工夫をしている。 ・基礎の設計については、杭基礎としているが比較設計を行い経済設計と していることを評価する。 ・採光、換気については、外壁の上部を斜めにし、直射日光を拡散させて やわらかい光をハイサイド窓に取り入れることでスポーツ施設としてふ さわしい空間としている。 ・空調を行う居室については、高断熱化、断熱ガラスの採用、観覧席上部 空間の気積を減らす工夫など温熱環境に配慮している。 ・メインアリーナについては、通常のスポーツに加え、集会、講演会につ いても良好な音響効果を発揮できるよう工夫している。 ・バリアフリー・ユニヴァーサルデザインについても配慮している。 3)電気 ・LED 照明器具、トップランナー変圧器等の高効率機器の採用、太陽光発 電設備の導入による電力負荷の低減等、省エネルギーには配慮されてい 27 ることを評価できる。 ・災害時の拠点として、電源確保の対応も考慮されており、非常用発電機 の燃料として 3 日分が確保されていることを評価する。 ・電気設備機器の保守費削減について配慮されており評価する。 4)機械 ・給湯の熱源方式について、用途に応じて各種の方式があるが、よく検討 して、最大給湯量を賄う容量が必要なため、給湯量の変化にも対応可能 な瞬間湯沸かし方式を採用したことは評価できる。 ・空調熱源について、電気方式・ガス方式・灯油方式をよく比較検討し、 アリーナ熱源はガス吸収式、その他諸室は電気方式を選定しているため 「最適の方式」と評価できる。 ・無駄なエネルギーを少なくするよう、積極的に自然採光、自然通風を取 り入れ、空調の必要なエリアだけを空調して、全体の空調効率を高くし ていることを評価する。 (3)積算 ・適用した積算基準については適切に運用されていた。 ・適用された基準類や歩掛・単価等は、適切に運用されていた。 ・数量の確認等については、今回はURの委託業者が行い、市の担当者が 確認している。 ・グリーン調達については、特記仕様書に示されていたが、具体的な取り 組みをされるよう提案する。(提言事項参照) (4)入札・契約 ・基本設計、実施設計の入札は、URが担当し、簡易公募型プロポーザル 方式に準じた手続きとしている。工事監理については、市が直接行って いるが、URが委託した業者と随意契約とした。 ・工事については3社が参加したが不落となり、結果随意契約となった。 ・設計変更については掘削残土処分及び盛土工事について追加・変更があ り増額変更となった。 ・必要書類は適正であり、適切に整備されていることを確認した。 (5)工事監理 ・工程計画は概ね工程計画どおりとなっている。 ・全体を4つのブロックに分けそれぞれ工程管理しブロック間の相互関係 を視野に調整を行っている。 28 ・施工図、施工計画書を事前に審査し、週1回の定例会議において指示、 承認を適切に行っている。 ・計画に合わせた立ち会い検査、各種試験結果の確認を適切に行っていた。 (6)施工 ・施工体制台帳等は、適切に作成されていた。 ・安全関係の主な申請手続きは適正に行われていた。 ・安全衛生に関する関係者協議は適切に行われていた。 ・緊急時の安全管理や連絡体制は適切に整備されていた。 ・関係者の教育・指導、保有資格者の確認は適切に行われていた。 ・工事現場の点検・巡回は責任者を決め適切に行われていた。 ・現場管理書類は適切に整備されていた。ただし、掘削残土の搬出に関し、 現場管理者においては、搬出場所の立会いと搬出台数の確認は行ってい るが、一部伝票類の整理に不備があり、工事監理者、市の担当者の把握 が十分とは言えない状況だった。 (7)環境管理 ・環境対策として周辺環境に配慮していた。 ・資材の再資源化に配慮していた。 ・杭工事で発生したセメントミルク混じり土を自ら利用で埋め戻し土に使 用することで廃棄物処分の減量を工夫していた。 ・発生残土の場外搬出について、さらに慎重に搬出管理を行うべきである。 (提言事項参照) ・化学物質の測定について配慮していた。 2.提言事項 (1)ライフサイクルコストの算定と活用 今回の施設は、その規模が1万平方メートルを超え、メインアリーナ、サ ブアリーナ、武道場棟、多目的運動室棟と 4 つのブロックが有機的に連携し、 その機能を果たすという複合的な建築である。温熱環境としてはパッシブな 方式を多く採用しアクティブな環境管理を抑えているものの、維持管理に要 する費用はかなりのものと予想される。 そのため、イニシャルコスト+ランニングコスト(設備エネルギー消費費 用+建築改修費)+除却費用をトータルに把握することで、建物の生涯コス トを把握し、市行政の費用管理の参考とすることができる。 29 流山市はファシリティマネジメント制度を取り入れ、公共施設の財産活用 を効果的に管理していると聞いている。その意味で、ライフサイクルコスト を算定し建物のトータルコストを把握することで維持管理も含めた適切な フォローをしていくことを提言する。 (2)掘削残土の適切な管理 設計変更の対象となった掘削残土を近隣市の処分場に搬出しているが、 その状況について、元請として、また市の担当者として十分把握できていな い面があった。建設廃棄物や発生土を現場外に処分する場合、対外的な影響 が大きく、特に公共事業では社会的に注目されている。その意味で、処分残 土の管理は、搬出台数の確認のみではなく、元請、市の担当者はしっかり管 理すべきである。毎週の定例会議時に、その進行管理を確認しあうなど、掘 削残土の適切な管理ができるよう体制を整備工夫されることを提言する。 (3)グリーン調達の推進 循環型社会の形成のためには、 「需要面からの取組が重要である」という 観点から、平成 12 年 5 月に循環型社会形成推進基本法の個別法のひとつと して「国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律(グリーン購入 法)」が制定された。 同法は、国等の公的機関が率先して環境物品等(環境 負荷低減に資する製品・サービス)の調達を推進することにより、需要の転 換を図り, 持続的発展が可能な社会の構築を推進することを目指している。 具体的には、「平成 25 年度特定調達品調達ガイドライン(案)」(国土交 通省)に資材等の一覧が示されている。 このことについて、国及びその関係機関や地方公共団体の役割は重要で ある。貴市においても積極的に採用されるよう提言する。 3.推奨事項 (1)新たな体育施設のビジョンの構築 市民体育館は、市民がスポーツをするための施設を提供する目的で建設す るものと考えていたが、今回の市民総合体育館は、日頃のスポーツ活動、ス ポーツ大会の場、スポーツを観る場、スポーツを支える場、文化行事等の会 場、災害時避難所としての機能を持つ複合的な施設という基本コンセプトを 掲げ施設の整備を図っている。市内の既存のスポーツ施設を視野に、新たに 整備する体育施設のビジョンを事前に構築し、それに向けて具体化していく プロセスを進めた今回のプロジェクトの進め方を評価する。 30 (2)パッシブな温熱環境を実現するための創意工夫 今回の市民体育館は、流山市総合運動公園の一角に位置する。既存樹木に 囲まれた場所に建築する今回の施設は自然環境を生かしたパッシブなデザ インとしている。太陽光発電、雨水利用、クールピット、高断熱、ハイサイ ド窓、LED 照明、空調負荷を考慮した気積を減らす断面形状など様々な創意 工夫を行っている。このことが建物の維持管理費用やランニングコストにつ ながるものと思われ、このような創造的な取組について評価する。 本市民体育館には、前述のような様々な創意工夫が行われているため、 省エネルギーのデータは、今後の建築技術の発展に大変、参考になると考 える。機会が有れば、省エネルギー等のデータを取纏め、公表されること をお願いしたい。 (3)施工計画書による工事監理 本現場では、施工計画書に品質管理計画として材料、仕上げ、性能、精 度等の目標、品質管理および体制、試験要領書、検査計画表が記載されてお り、これに基づいて現場監理がなされている。施工計画書には、施工から試 験・検査の全ての項目が記載されており、円滑な現場監理に役立っていると 思われる。この施工計画書の整理は、現場における、品質管理の向上に役立 つものなので、今後も採用いただきたい。 おわりに 市民総合体育館は、流山市にとって17万市民の健康増進及び防災拠点とし ての総合的な機能を持つ体育施設である。つくばエクスプレス関連の都市整備、 総合運動公園の整備と相俟って、この施設の完成によって緑豊かな総合運動公 園に新たなオアシスが加わることを期待する。 工事技術調査時はまだ30%程度の工事進捗率であったが、今後工事が適切 かつ安全に進められ、工事が無事に竣工し、流山市民にとって素晴しいスポー ツの殿堂となることを祈念いたします。 以 上 31