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光を利用した魚群制御技術

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光を利用した魚群制御技術
71
水産工学 Ftsheries Engineering
V o 1 2 8 N o l p p 7 1 ∼7 6 1 9 9 1
報 文 】
【
光 を利 用 した魚 群 制 御 技 術
有
死
貴
文
t
Fish Behaviour COntrol by Use of Light
TakaFumi ARIMOTO'
1
は じめ に
人類の開発 してきた生物生産の技術の なかで,動 物 の
行動 を制御す ることで達成 されて きたものは多 い。 それ
は狩猟技術 としての猟犬の利用や鷹狩 りであ り,あ るい
は牧畜業 のなかでの牧羊大の役割 である。 また,農 業 に
おいても牛 Fvを使 った耕作作業 はか っては日本でも当た
り前の風景 であった。 この ように人間の活動を補助する
目的で動物 を利用す るもの としては,漁 業 の分野 でも鵜
飼 い 1)のような例があ り,イ ヌや カワウソを訓 練 して魚
を獲 らせていた地方 もあるか。
これ とは別に対象生物 に直接働 きかけて,そ の行動 を
制御 しようとする手法もある。狩猟の例を挙げれば,勢
子 による鳥や獣の追込みや追出 し,観 を使 って誘 き寄せ
た り,通 り道 に員や霞み組を仕掛 けた り, といったさま
ざまな技術があ り,こ れ らは漁獲技術のなかでもそのま
いての基礎 をもとに,視 覚 による行動制御,光 による行
動制御 の実験例,そ して現在実際に漁獲技術 として利用
されて い る集魚灯漁業 に見 られ る制御技術 と論 を進め,
その上で今後の可能性追求のための問題点 を考えてみ た
い。
I 動 物 の 行 動 とは何 か ?
動物 の行動 とは外環境 を刺激 として認知する感覚作用
であり,さ らにその刺激に対する反応 としての外環境 へ
の働 きかけであると定義 され る。刺激 に対する反応 とし
て行動が観察 され るが,そ の場 合,い わゆる動 きを伴 う
反応 だけでな く,体 色 の変化や ホルモン分泌 といった体
内で起 こる反応 も含 めて考えるべ きである。刺激 を受け
入れ る感覚器官 としては視覚,聴 覚,嗅 覚,味 覚,触 覚
(皮膚感覚,側 線感覚)力 S挙げられ,そ の機能 として光
まに,あ るいはやや形 を変えて見 られ る行動制御の手法
受容体,音 受容体,化 学受容体,熱 受容体,平 衡受容体
といった分類1 あるいは遠隔受容器,近 接受容器 とい う
である。
ここで漁業 とは水日の生物生産 を人間が利用する唯一
分類がある。
次 に,動 物 の行動を分類する際の考えか たとして,そ
の具体的 な手段であ り,植 物採取 や狩猟 と並んで人類の
歴史 と同 じだけの古 くか らの技術であった。 しか し,植
物採取 が農業 へ,そ して狩猟業が今 は産業 としての牧菩
生まれてからの経験 によって身 に付 けた行動 (後天的行
動,獲 得的行動)の 2つ に分 けることができる。Fiど1
業 に取 って代 られたように,漁 業生産技術 も次の段階 に
進 む可能性Dが あ り,そ の一 つの方向として増養殖技術
の動物が生れながらに もっている行動 (生得的行動)と
に示す ように生得的行動 として は反射 (Renex),走性
を包合 した海洋牧場の構想があげられている。 それは広
い海洋の生産力を局地的に増大させるだけの ものでは あ
3通 り,獲 得的行動 としては
(Taxヽ
),本 能 (Inshnct)の
2通 りに分類 され
知能 (Intdttence)の
学習 (Learttng)と
「
の回遊,あ る
ここで
とは
の渡
水能
りや魚類
る。
鳥類
」
るが,少 な くとも可能性 を広げるもの として近年注 目を
いう
Fid Capturing)と
集 めている。 また,漁 獲 (Flshingぅ
い
う他の生物
が21世紀に向けて収穫
(Harvesting)と
技術
いは営 業行動や繁殖行動 といった複雑 な行動 をさす。 し
かし 「
水能Jと い う用語については単に説明概念 として
刺激一 反応系」 から明
使 うのではなく,そ の仕組みを 「
生産産業 と同 じ段階 に進 む道でもあろう。その ための技
光に
術発展の要 ともなる魚類の行動制御技術 について 「
a車
らかに し,生 得的解発機構(Innate Rcに
旺 MechaⅢsm)
として解明する姿勢が大事である。 また1動 物 の系統分
類の なかで進化 の低次の存在か ら高次 へ と進む過程で行
よる制御技術」 として話題提供 し,魚 類の行動研究 につ
動様式 も発達 し,例 えば原生動物で は反射 と走性 だけが
平 成 3年 7月 5日 受理
見 られ ,魚 類や爬虫類 ではこれに本能や学習 による行動
'東
京 水産大学 〒 108東 京都港 区港 南 457(Toと yo
られ る行動 と
University of Fisheries Konan 4-5-7, Minatol
yo Toとも現われ るが,知 能行動 は哺乳類のみに見
一
される。 方,学 習行動 についてはさまざまな概念が包
108 Japan)
水
産
工
V
学
o
1
2
8
N
o
l
生得的 ( 先天的) 行 動
t
[:景
1暑
魯
言
を
者
畳
岳
魯
青髄反射 、定位 反射
走化性 、走 触性 … …
獲得的 ( 後天的) 行 動
ヒ
試 行錯 誤 、慣 れ 、模倣 、 刷 り込 み
露雇 ! 矯 獲「鑓≧
F i g
刺 激 ‐受
容 体
l 動
物 の 行 動 分 類
―伝達系‐匠
重
亘
至
垂
茎
∃一□
光
:光 受容体(眼,綱膜,視細胞)
音
:音
受容体 (耳)
化学物質 :化 学受容体 (鼻,舌 )
圧力 Ⅲ 微受容体(皮膚,掘線感覚)
温度 :熱 受容体
重力 :平 衡受容体
体内刺激 :自 己受容体
感 覚神経
大
一回
一回
脳
間脳
運 動神経
中脳
小脳
延髄
脊髄
筋
:運
動
頼毛,繊 毛 :運動
腺
:分
泌
発光器 :発 光
発電器 :発 電
色素胞 :体 色変化
Fig 2 行 動 の機構と しての刺激 ―反応系
含 されているために定義 も複雑であるが, 現 在では条件
反射, 試 行錯謀, 慣 れ, 模 は, 刷 り込みの 5 つ の行動様
式 に分類するのが一般的である。 これ らの動物行動 の全
体 は F i g l のようにまとめらる。
1 行 動 の 機 構 とそ の 制 御
行動 を 「
刺激一 反応系」 として とらえる考え方のなか
で, 生 体の内部で起 こってい る事象について, か っては
まとめる ことがで きる4ヽ
、 これ を方法論 として考 える
とき,以 下のような他の技術分野 への応用が期待できる。
資源管理 への応用 :魚 種 魚 体の選択漁獲技術
養殖技術 への応用 :代 謝,繁 殖の制御,及 び沖合生け
賛養殖
・増殖技術 への応用 :種 苗育成,放 流の管理
品質管理 への応用 :漁獲物鮮度保持,蓄 養,活 魚の技
術
ブラ ックボ ックスとして隠 された状態 にあった。言葉 を
さらに,こ れ らを総合 した新分野 として,海 洋牧場 に
換 えれば, そ の ブラ ックボックスに近付かないように避
よる資源の育成,管 理,収 穫 といった統合 システム技術
へ の応用 も考えられ つつ ある。
けて通 ってきたと言 っても良い。 しか し, 現 在の動物行
動学の研究の主流 はその内部の仕組みを解明す ることに
向 けられてきている。 それは, 刺 激 を受け取 る感覚器官
W 視
覚 に よる行 動 制 御
( 受容器) の 生理学であ り, 神 経系 による果者の伝達過
光 による成長や成熟 の制御 は,農 業,園 芸,そ して畜
程, そ して情報処理機構 としての神経中枢 の生理学, さ
産に始ま り,今 は魚類養殖 でも一般的 な技術 となって い
らに反応出力系 としての作動体 の生理学 である ( F i g 2 ) 。 る"。一方,行 動の制御 とい う点では長 い研究 の歴史に
行動の制御 も, こ れ らの基礎 を踏 まえて, 人 為的な各
もかかわらず実験的な レベ ルに あるものが多 く,漁 獲技
種刺激 を与えることで どうい う反応を解発するか, あ る
いは, よ り大 きな反応 を解発できるか とい う問題に帰結
術 としての集魚灯 の利用が 日本で過度 なまで に発達 じ
ている現状 のなかで,ギ ャップrよ
大 きい。 そこで,ま ず
され なければならない。
視覚 による行動制御,光 による行動制御の実験例,そ し
て集魚灯漁業 に見 られ る制御技術 と論を展開 し,そ の上
l l l 行動制 御 の 目的
それでは行動 の制御 とは何を意味 し, そ の 目的 とす る
で今後の可能性追求 のための問題点を考察することとす
る。
ところはどこにあるのだろう。漁獲技術 としての行動制
御 について言えば, 希望する水域 に, 希望する状態で魚群
空気中 と比べて水中では視覚情報の質,量 は劣るとい
われ る。 それで も餌 を取 り,仲 間を見つ け,ま た外敵 か
を導 き, そ の行動特性や行動範囲を掌握 しなが ら漁具の
ら逃れ るといつた生存 のための活動を主 に視覚機能 に依
存する魚種 は多 い。 もちろんあらゆる場面 で他の感覚器
漁獲条件 に適合 させることである。各種漁具の漁獲過程
を漁呉刺激による対象生物の行動制御 と考 えるとき, そ
の手法 としては威嚇, 誘 導, 遮 断, 陥 奔の 4 つ の要素 に
官 も併用 されてお り,そ の意味では視覚 だけによる行動
を分離 して取 り上げるのが難 しいのは確かである。
光を利用 した魚群 制御技術
しか し,網 漁具や集魚灯。そ して人工 魚礁 といった装
置や施設が遮断,威 嚇,駆 集,誘 導,誘 引 といった行動
制御に実際に成功 し,漁 獲技術 として採用 されてい る。
これ らの手法の多 くが視 覚刺激 としての機能 に多かれ少
なかれ依存 していると考えるのは妥当 なところで あろう。
例 えば,障 害物 に対する反応 として魚 は当然それ を回
避する。 その際にUタ ー ンをするのか,抜 け道を探すの
か,そ れ とも障害物 に添 って移動するのか とい う問題が
ある。 これは定置網の垣網に対する行動の モデル といえ
るが,最 初に障害物の存在を探知するのは聴覚 によるも
の と考 えられている。視覚 が機能す るのは,水 中では好
条件下であっても 100mを 越えない筈であ り,逆 に言え
ばかな り接近 した状態で始めて視 覚 による反応が見 られ
る。定置網 の垣網について,実 際 に垣網で述断 し,そ し
て身縛方向 に誘導で きるのは来遊群 の うち数割 とされ る
が,そ れで も漁獲手段 としては有効 な行動制御技術であ
り続 けてきた。 これが刺 し組の場合であれば,障 害物 に
気づかず に刺 き り,あ るいは絡んで しまうことで民 にか
けていることなる。
気泡幕について,聴 覚,側 線感覚 といった機械的感覚
と視覚 を同時 に刺激 し,行 動 の遮断や威嚇 による駆集効
果が認められてい る。視党 の機能 しない夜間の実験や,
cl●ctric poWer
的urce(A C 100V)
。n shore
'ゆ
Fig 3 集 魚灯配列 による定回網 へ の魚群誘導 。
盲 目魚でも気泡幕に反応す ることか ら機械的感覚が主 に
働 くとされるが,そ れで も視覚の重要性 を否定すること
はで きない。
視覚 による行動制御の なかで最 も研究の進んで い る分
野 として視 覚運動反応 (OPtonoto,reachぃ
)が挙 げ られ
る。 これは網膜上に移動する視覚 目標 を保 とうとする反
応 で,流 れのなかでの定位 ,あ るいは移動 目裸に対する
追従反応 として水槽 のなかでも簡単に観察で きる。 その
ため,群 れ行動 ,遊 泳行動の研究 といった分野で利用 さ
れ,ま た紹内での行動 として トロール漁獲過程の解析や,
さらにこの反応 をもっと積極的に応用 して魚群誘導の手
段 とする研究が行 なわれた。。
V 光
に よ る行 動 制 御 の 実 験 例
Flg 4 移 動照射模様による魚群行動 の制御 H)
光 によって魚群を集めることを目的 とした実験 は数多
く行なわれて いる。 また, どのように して光 に集 まるの
か,そ して どの ような明るさの条件に集 まるのかを解明
するための実験 はそれにもまして多い。 これ らは光の集
魚過程を問題 とするものではあったが,実 際 には漁獲技
術の方が先行 してお り,新 しい光源が導入 され るときの
効果判定 としての研究が多か った。 それ とは別の観点 の
研究 としては,光 による魚群誘導の問題がある。 それは
Fig 3の ように定置網 の垣網 に光源を配置 して,そ れを
順次点灯,消 灯 して魚群 を身網方向へ誘導 しようとする
'10。これは集魚 と誘導の 2つ の行動制御
考えであった。
を組合せたもので,実 際の漁業での例 としては旋縄や敷
き網に対 して複数の灯船の集魚結果を条約するためにゆ
っくりと移動す る方法が取 られ る1い
。 ここで検討 しなけ
ればならないのは静止光 と移動光の刺激 としての違い,
そしてある間隔 を置 いて設置 された光源間で点灯。消灯
によって群れの移動 を行なわせるこ との意味 であろう。
この考えで水槽内で光源の移動 レ│あ るいは光の点滅に
よるみかけの移動 噂)を刺激 として魚の反応 を調 べ た実
験 もある。 また,同 じく水樽実験 で,Fig 4の ようにあ
るパ ター ンの模様 を底面 に照射 し,そ れ を移動 させるこ
とで視覚運動反応による追従遊泳を解発するこ とが可能
であ り,遊 泳能力や群れ行動 の研究 を目的 として利用 さ
水
産
工
学
V
d
2
8
N
o
l
れているいL
これ らの集魚,誘 導 のための実験 とは異な り,威 麻刺
激 によ り遮断,あ るいは駆集 を試みた研究も多 い。 これ
らは振 り回 し光束 い),移 動光幕 巧'W),断 続光 姫│ ス ト
師 し,よ り船体近 くに,長 時間滞留 させるための調光装
置が普及 しつつ ある。 このよ うに現状の技術について将
ロポ光 "'21な ど短い同期での明暗の差 を刺激 として与
に対する魚類 の反応,特 に視覚生理学 か ら見た網膜順応
えるものであ り,詳 細 な実験的検討 が行なわれている。
この応用性 としては水域の遮断や,発 電所等の用水ロヘ
状態や神経興奮の過程 といった基礎を確立 し,そ の上で
の接近防止 といった分野で期待 されている。 この他に,
実際 の漁業現場での実験 として, トロールの網日に光源
を付け,漁 獲組成 の変化 をもとに魚種別の反応 を調 べた
実験 も行なわれている加七
この ような光を刺激 として用いた行動 実験 の際にもっ
イカ釣 りや旋網で操業過程 に応 じて集魚灯 の明るさを調
来 の質的転換 を図るためには,水 中での光の特性 とそれ
集魚灯 を副漁具 として考えて配置や操作方法を主漁具 と
の関連で検討する必要性 は大 きい25お)。
Vll 行 動 制 御 の 方 法論 と応 用
行動制御の基本 は「
刺激 ―反応系Jの解明にあ り,魚 類
の行動 について 「
魚 はどうして…… ?Jの 問題提起が不可
とも問題 となるのは,光 条件 による水中の明るさの把握
欠である。 これは現象把握 に対する基本的 な問いかけで
である。過 去 の 実験 の 多 くは Lux照 度 (lluminance)に あ り,刺 激の意味 と反応の意味 を考える こ とである2ゆ
。
よる測 定を行 っているが, これは ヒ トの 明所視 の視感度
現在注 目を集めて い る行動制御のアイデアはほ とんどが
特性 に対応 した測光量 であ り,波 長別に放射照度 (Irradト 戦後 の早 い段階で提唱 され,試 み られて きたもの といっ
て も過言ではない。 しか し,残 念 なことにその当時 は技
術がそれ らの アイデア を支えきれ なかった。 そ して21世
ance μ
W/cm2/nm)を 測定す るべ きであるとの指摘 もな
されている2″
。 しか し,実 際 には計測機器の問題,並 び
に現場での測定の困難 さ等 か ら分光放射照度の演!定を行
動 との関連 で実施 した例は少ない。 その意味 で,明 るさ
の 目安 としての しux照 度の測定 は依然 として人気がある
が,こ の場合にも 10 3Lux以下の暗 い条件 については
Lux単 位で測定す ることに実際的 な意味は認め られ ない。
WI 集 鳥灯 漁 業 の 魚 群制 御 技 術
の歴史は大変古 く,筆 火,松 明の時
集魚灯漁業 23,2つ
紀 に手の届 こ うとい う今 の時代に,手 近 に利用できる周
辺技術が花開いてい る。 しか し,単 にハ ー ド技術の発達
に乗 っただけの行動制御技術の展開は,「刺激 ―反応系」
の基礎が欠如 した形での発達 として,漁 獲技術がたどっ
たと同 じ袋小路に陥る可能性が高 い。 この方向を避ける
“
'か
ためには,い わゆる 魚の行動
らの卒業,す なわち,
行動生物学 を基礎 とした刺激についての理念 と,行 動の
代か ら現在 の電気照明までの道程は非常に長 く,先 端技
種特異性の科学的把握が必要 なことは言 うまで もない。
特 に漁獲技術 との対比で新 しい分野の行動制御技術を
術を導入 しようとす る先人達の音労が しのばれ る。戦後,
考 えるとき,漁 業のなかではさまざまな規模の漁法で,
漁船の動力化が進んでか らは光力増大競争 が進 み,そ の
過程で自黙灯か ら放電灯 への転換が見 られた。
さまざまな魚種を対象 として,毎 日の繰 り返 しのなかで
技術が確立 され,普 遍化 され,そ して洗練 されて きた こ
集魚灯 の 目的は漁具の作用範囲へ対象生物 を集める こ
とで,遠 方,あ るいは深層か ら船体近傍 へ短時間内にと
い う必須条件がある。各種 の集魚灯利用漁業 のなかでは
イカ釣 りや旋網,敷 き網では光の利用方式が比較的単純
であ り,船 上灯あるいは水中灯で船体周辺 に集 め,滞 留
させる。 これに対 してサバ慰Lね釣 りでは舷線lすぐ近 くに
集 めて釣 り上げるため に撒 き餌 も併用 してお り1 これが
進んで手縛抄 いや樺受縛による漁法が使われ る。光 の利
用 とい う意味 で最 も興味ある漁法 はサ ンマ棒受網で,そ
の集魚灯配置 の例 を Fig 5に示 した。このように探照灯,
集魚灯,誘 導灯,精 獲灯 (赤灯)と 機能分化 した光 源を
用 いて,Fig 6の ように集魚舷 に集 めた群れを投網舷に
誘導す るとい う行動制御をお こなっている2つ。
この ような集魚灯技術の発達 につい ては漁業者の努力
によるところが大 きく,そ の技術的要求 が照明装置の開
発 を推進 し,あ るいは新型光源の導入を促進 して きたと
の趣 も強 い。 しか し,現 在実用的であるといって もそ こ
に科学的な妻付 けが十分 にあるわけではない。例 えば,
7 k W
探 照 灯 3 ∼
③
色 灯 卸OW× 12灯
o 赤
を 11 500W×121T
L 皆
O
メ
―
す す らん灯 500W X18灯
“]H]― 放 電 灯 2kW× 2灯
F i g 5 6 4 トン級 サ ンマ 漁船 の集魚灯配置例
光 を利用 した魚群制御技 術
、イメ
3左 歓側へ誘導
0右 舷側で集魚
ン
!
0網 の上に議車
0赤 色灯を点灯 揚 細
Fiど 6 サ ンマ神受組漁法における集魚灯による魚群 の誘導
とを忘れてはならない。 これに相当するだけの実験の繰
り返 しを実行す ることは実際 には不可能 といってよい。
ならばこそ,行 動学 を基礎 とした理論的 な詰めの必要性
は大 きい。
それでは,具 体的 な行動制御 の方法論 としてどのよう
なものが考 えられ るだろうか。 それは,行 動の 2つ の方
向性,す なわち, ス トロポ光や断続光 といった威嚇刺激
による発散性 の行動 と,集 魚灯 のような誘引刺激による
収束性の行動 をまず解発する ことで あ り,次 いで方向性
のある行動を述断す る技術,あ るいは罠にかける形の陥
算技術を組合 せて考 えることとなろう。特に行動遮断 に
ついては漁獲技術 を海域遮断技術 に発展 させる可能性 が
最 も高 く,縄 地のもつ物理的遮断作用 と感覚的遮断作 用
を刺激反応系か ら応用 し,無 定形 スクリー ンや パ リア ー
ヘの発展 を期待 したい。 そのためには,幾 つかの刺激 を
複合 させた方式で用いること,そ して威嚇,誘 導 といっ
た他の行動制御技術 との併用 を考える必要がある。
ここで,研 究の基礎 としての水槽実験 を実海域 での実
用化に結びつ けるためには,行 動 の種特異性,機 能集合
体 としての群れの行動特性 を考慮 し,さ らに時間 空 間
スケ ール についての普遍化 をめざす必要がある。 これ と
は逆 に魚極 による反応性 の違 い を魚種選択 へ,成 長段階
による違 い を魚体選択性 へ発展 させるこ とも夢ではない
だろう。 また,行 動制御 が しば しば実験室 レベルで しか
成立 しない多 くの理由は完全性を追求 しすぎるか らであ
り,漁 業のように粗放的 に, 1割 が期待 どお りに行動 し
て くれれば良 しとす る考えも必要で,そ れで満足 できる
システムの構 築をめざすべ きであろう。 このためにはハ
ー ドを開発するための技術力 に溺れず,漁 業の歴史に培
われ た行動制御技術 の方法 を理解 し,こ れ をどの よ う
に発展 させて行 くことがで きるかにかかって くるであろ
う。
文
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2 6 ) 有 元 景 文 : 魚類 の生態 か らみ た漁法 の検討 2 3
V
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魚 は どうして光 に集 まるの か ( 上) , 水 産 の研 究 ,
7(6), pp 33-36, 1988
有 元 景文 : 魚 類 の生懸 か らみ た漁 法の検討 2 3
魚 は どう して光 に集 まるのか ( 下) , 水 産の研 究,
8(1), pP 39-42, 1989
有 元 景文 : 魚 類 の生態 か らみた漁 法 の検討 2 0
魚群 行動学 研 究 事 始 め , 水 産 の研 究 , 6 ( 3 ) , p p
35-38, 1987
本報文 は,平 成 2年 11月6日 に開催 された平成 2年
水産増養殖 への新
度 日本水産工学会 シンポジウム 「
で
技術導入の現状 と問題点」 話題提供 された内容 を
取 りまとめた ものである。
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