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Page 1 ハロン等抑制対策に関する報告書

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Page 1 ハロン等抑制対策に関する報告書
ハロン等抑制対策に関する報告書
(平成24年度)
ハロン等抑制対策連絡会
目
次
第1章 総論 ................................................................. 1
1 本連絡会の趣旨 ........................................................... 1
2 連絡調整等の対象 ......................................................... 1
3 連絡調整等の体制 ......................................................... 2
第2章 沿革 ................................................................. 4
1 国際的な沿革 ............................................................. 4
2 国内における沿革 ......................................................... 4
第3章 現状 ................................................................. 9
1 国際的な取組みの現状 ..................................................... 9
( 1 ) モン ト リオ ー ル議 定 書 締約 国 会合 の 概要 .............................. 9
( 2)モントリオール議定書によるハロン等の規制の概要 ......................... 9
(3)海外のハロンバンクの状況 .............................................. 11
2 我 が国 に おけ る 取組 み の 現状 ......................................... 14
① 国家ハロンマネジメント戦略の骨子 .................................... 14
② 戦略に基づく運用状況 ................................................ 15
ア ハロンの設置状況等 .................................................. 15
イ 関係者等による実施体制 .............................................. 16
(ア)特定非営利活動法人消防環境ネットワーク ............................ 16
a ハロンの適正管理について ........................................ 16
b 消防環境ネットワークの運用フローについて ........................ 19
c ハロンのみだりな放出防止 ........................................ 20
d リサイクルハロンの活用について .................................. 20
e 特定非営利活動法人消防環境ネットワーク(旧ハロンバンク推進協議会)
への表彰 ........................................................20
(イ)一般社団法人日本消火装置工業会の実施体制 .......................... 20
ウ ハロン消火設備の使用抑制 ............................................ 21
エ ハロン代替消火剤の使用状況等 ........................................ 21
(ア)ハロン代替消火剤 .................................................. 21
(イ)ハロン代替消火剤を用いる消火設備の基準化等 ........................ 21
(ウ)地球温暖化対策に係るハロン代替消火剤の排出抑制 .................... 21
オ ハロン等の破壊について .............................................. 23
(ア)ハロンの破壊技術について .......................................... 23
(イ)フ ロ ン の 破 壊 技術 ............................................. 24
第4章 最近の動向 ..........................................................25
1 国際的な動向について .................................................... 25
(1)公開作業部会(締約国会合(総会)準備会議:OEWG32)の概要 ........ 25
(2)締約国会合(MOP24)の概要 ........................................ 26
(3)HTOC会議 ..........................................................26
2 国内の動向について ...................................................... 27
第5章
今後の対応の考え方 .................................................. 27
第1章
1
総論
本連絡会の趣旨
ハロン(ハロン2402、ハロン1211及びハロン1301をいう。以下同じ。)
は、高絶縁性、低毒性、高浸透性、低汚損性等の利点を有する消火剤であり、コンピ
ュータ室、通信機器室、駐車場等の防火対象物の消火システム、消火器、厨房等の自
動消火システム、エアゾール式簡易消火具の消火剤として、一般家庭を含め幅広く使
用されてきた。
しかしながら、ハロンはオゾン層を破壊する性質を有することから、オゾン層保護
のためのウィーン条約に基づき、モントリオール議定書においてオゾン層破壊物質と
して指定され、生産全廃等の措置が講じられている。また、我が国においても、モン
トリオール議定書を受けた国内法の整備のほか、ハロンの回収・再利用を円滑に行う
ためのハロンバンク制度の運用、ハロン代替消火剤の開発・普及等が行われている。
本連絡会では、これらの情勢を踏まえ、ハロン抑制対策、ハロン代替消火剤への対
応等について連絡調整及び調査検討(以下「連絡調整等」という。)を行うものであ
る。
2
連絡調整等の対象事項
本連絡会において連絡調整等を行う事項は、次のとおりである。
(1)ハロンの使用実態の把握
ハロンの抑制の検討を進めていくうえで必要となるハロンの使用実態について、
ハロンデータベースの活用等により適宜把握に努める。
(2)ハロン消火設備・機器の使用抑制の具体的な手法の連絡調整等
ハロン消火設備・機器の使用抑制の具体化のため、次の事項について連絡調整等
を行う。
ア 使用抑制を行う対象の設定
(ア)クリティカルユースに該当する用途及びその量についての考え方
(イ)既存消火設備・機器の補充についての考え方
(ウ)対象となる消火設備・機器の選定
(エ)対象となる使用用途の優先順位の考え方
イ 規制の方法
(3)ハロンの回収・再利用等の推進
1992年11月に開催された第4回モントリオール議定書締約国会合の決定に
沿って、ハロンの回収・再利用等を的確に行うためのハロンバンクマネジメントに
ついて、国際動向等を踏まえながら連絡調整等を行う。
(4)ハロン消火設備・機器の代替となりうる設備・機器の連絡調整等
前記(2)によりハロン使用抑制の対象となった消火設備・機器を中心に、その
代替となり得る設備・機器(消防法令による消火設備等)の連絡調整等を行う。
(5)ハロン代替物質の出現への対応
ハロンに代わる消火剤としての代替物質が開発されていることから代替物質の消
火性能、毒性等の性状を把握し、その導入方法について検討するとともに、代替物
質を使用した消火設備等の設置状況を把握する。
(6)ハロン等の破壊方法の研究
再利用される見込みのないハロン等について、分解して無害化するための破壊法
の連絡調整等を行う。
(7)その他
その他、ハロン等抑制対策の必要な事項について連絡調整等を行う。
1
3
連絡調整等の体制
ハロン等抑制対策検討会を1990年7月から開催し調査検討を行っており、20
09年4月からは、ハロン等抑制対策連絡会と名称を改め、引き続き連絡調整等を行
っている。
連絡会開催要綱及び連絡会構成委員は、次のとおりである。
ハロン等抑制対策連絡会開催要綱
(趣旨)
第1条 地球環境保護の観点から国際条約上の規制物質となっているハロン等の消火剤
について、その適正管理や使用抑制等に係る連絡調整、調査、検討等を行うため、ハ
ロン等抑制対策連絡会を設置するものである。
(連絡調整等に係る事項)
第2条 連絡会は、次の事項について連絡調整、調査、検討等を行うものとする。
(1)ハロン消火設備機器等の使用抑制に係る具体的な手法
(2)ハロン消火設備機器等の代替となりうる設備機器
(3)ハロン消火設備機器等の試験、点検等の放出抑制を考慮した見直し
(4)その他
(連絡会)
第3条 連絡会は、20名以内の委員及び協力委員をもって構成する。
2 委員は、関係省庁職員、消防機関職員及び関係団体を代表する者のうちから消防庁
予防課長が委嘱する者をもって充てる。
3 連絡会には委員長を置く。
4 委員長は、委員の互選により選出する。
5 委員長は、連絡会を主宰する。
6 連絡会には幹事会を置くことができる。
(協力委員)
第4条 協力委員は、消防庁予防課長が任命する。
2 協力委員は、連絡会の調査審議が終了したときは、解任されるものとする。
(庶務)
第5条 連絡会の庶務は、消防庁予防課において処理する。
(補足)
第6条 この要綱に定めるほか、連絡会の運営に関し必要な事項は、委員長が定める。
附 則
この要綱は、平成23年11月22日から実施する。
2
平成24年度 ハロン等抑制対策連絡会委員名簿
(50 音順敬称略)
荒井
伸幸
東京消防庁予防部長
安藤
勝
千葉市消防局予防部長
石山
松男
HTOC(ハロン技術選択委員会)委員
岩松
宏樹
経済産業省製造産業局化学物質管理課オゾン層保護等推進室長
齋藤
隆雄
財団法人日本消防設備安全センター常務理事
高澤
哲也
環境省地球環境局環境保全対策課フロン等対策推進室長
田村
昌三
東京大学名誉教授
野口
貴文
東京大学大学院工学研究科建築学専攻准教授
細川
春幸
日本消防検定協会消火・消防設備部長
宮崎
勝美
社団法人日本消火器工業会常務理事兼事務局長
八木
充
山田
信夫
一般社団法人日本消火装置工業会理事
横田
明典
名古屋市消防局予防部長
HTOC(ハロン技術選択委員会)委員
(計13名)
<事務局>
消防庁予防課:渡邉洋己予防課長、守谷謙一設備専門官、竹本吉利設備係長
辰川龍二事務官
消防庁危険物保安室:鈴木康幸危険物保安室長、三浦宏課長補佐、
七條勇佑危険物施設係長
消防環境ネットワーク:高松秀樹常務理事、柴田弘幸業務主幹
3
第2章
沿革
1 国際的な沿革
(1)フロン類の規制は、1974年米国カリフォルニア大学の F.S.Rowland 教授、
M.J.Molina 博士が、フロン類によるオゾン層破壊の可能性及びこれによる人体への
悪影響について発表したことに始まり、これを受けて国連環境計画(UNEP)に
おいてフロン類による環境問題について検討が進められることとなった。
( 2 )1 98 5 年に オゾン層の保護を目的とする国際協力のための基本的枠組みを設定
する「 オ ゾ ン 層 保 護 のた め の ウィ ー ン条 約 」(参考資料1)が 採 択 さ れ 、1 98
7 年 に 同条 約 のも と 、オゾン層を破壊するおそれのある物質を特定し、当該物質
の生産、消費及び貿易を規制して人の健康及び環境を保護するための「 オ ゾ ン 層 を
破 壊 す る物 質 に関 す るモ ン ト リオ ー ル議 定 書」 (参考資料11)が 採 択 さ れ た 。
そ れ に より 、 消火 剤 とし て 用 いら れ てい る ハロ ン ( フロ ン の一 種 で臭 素 を 含有
す る も の。 ) につ い ても 、 モ ント リ オー ル 議定 書 に 基づ き 規制 さ れる こ と とな
った。
(3)ハロンの生産量 及び消費量の規制については、当初1986年を基準として、
1992年1月1日以降100%以下、1995年1月1日以降50%以下及び
2000年1月1日以降全廃とされていたが、1992年11月23日から25日
にかけてコペンハーゲンで開催された第4回モントリオール議定書締約国会合にお
いて、1994年1月1日以降の生産等(必要不可欠な分野における使用(クリテ
ィカルユース)のための生産等を除く)の全廃が決議され、表2-1に示すスケジ
ュールで規制が行われることとされた。
2 国内における沿革
(1)ハロンは、1990年(平成2年)6月に開催された第2回モントリオール議
定書締約国会合で、1986年(昭和61年)の実績を基準とし段階的に削減する
こととされ、国内でもこれを受けて「特定物質の規制等によるオゾン層の保護に関
する法律」(昭和63年法律第53号。以下「オゾン層保護法」という。)におい
て、1992年(平成4年)1月1日より、特定ハロンの生産等の規制が行われて
いる(参考資料92)。
(2)1992年(平成4年)11月に開催された第4回モントリオール議定書締約国
会合において、ハロンについては1994年(平成6年)1月1日以降、議定書第
5条非適用国(いわゆる先進国)においては、クリティカルユース(必要不可欠な
分野における使用)を除き、生産等を全廃すること、ハロンの回収・再利用を推進
すること等が決定され、これを受けて、1993年(平成5年)7月にハロンバン
ク推進協議会が設立された。これにより、1994年(平成6年)1月1日以降、
ハロンの生産等が全廃された今日においても、消火剤としてのハロン1301は、
人体への影響の面で安全性が高く、消火効率がよいことから、貯蔵容器の設置面積
が小さく、設備費も安価である等の優れたものであることもあり、我が国において
は、継続的にハロンの回収・再利用が行われている。また、代替ハロン消火設備に
関する調査研究を継続的に行っている。
(3)第10回モントリオール議定書締約国会合1998年(平成10年)の決議Ⅹ/
7(参考資料35)を受け、2000年(平成12年)7月に我が国における取り
組みの現状や基本方針などを示した国家ハロンマネジメント戦略を策定し、国連環
境計画(UNEP)オゾン事務局に提出した。(参考資料109)
(4)さらに、2001年(平成13年)4月からのハロン代替消火剤を用いるガス系
消火設備の消防法令における基準化を踏まえ、クリティカルユースの明確化を含む
ハロン消火剤の抑制対策等について、「ハロン消火剤を用いるハロゲン化物消火設
4
備・機器の使用抑制等について」(平成13年5月16日 消防予第155号・消
防危第61号)により通知した(参考資料268)。
なお、ハロン以外のオゾン層破壊物質についても国内で規制されている。それら
の動向については参考資料117参照。
( 5 ) 消防 庁 は以 下 の通 知 を 発出 し 、対 応 して い る 。
年月日
文書番号
H3.8.16
消防予第 161 号
消防危第 88 号
H3.9.20
消防予第 190 号
消防危第 99 号
H3.12.16
消防予第 246 号
H5.7.22
消防予第 215 号
消防危第 56 号
H5.11.5
消防予第 296 号
H6.2.20
消防予第 32 号
消防危第 9 号
H7.2.21
消防予第 26 号
H10.7.17
消防予第 116 号
H11.10.5
消防予第 266 号
消防危第 94 号
H13.5.16
消防予第 155 号
消防危第 61 号
H14.5.22
消防予第 153 号
H15.12.5
消防予第 301 号
消防危第 125 号
H17.4.28
消防予第 87 号
消防危第 84 号
タイトル
概要
ハロゲン化物消火設備
・機器の使用抑制等につ
いて
ハロゲン化物消火設備
・機器の使用抑制等に係
る質疑応答について
ハロゲン化物消火機器
に対する表示について
(通知)
ハロンの回収、再利用等
の促進に係る調査につ
いて(通知)
モントリオール議定書を受けて
のハロンの使用抑制方法等につ
いて
使用抑制の対象となる用途他に
ついて
ハロゲン化物消火設備
・機器の使用抑制等に係
る質疑について
ハロンバンクの運用等
について(通知)
ハロゲン化物消火器、エアゾー
ル式簡易消火具の表示について
ハロンバンクの主旨及び今後の
ハロン使用抑制等、ハロン消火
設備等の設置状況等の調査につ
いて
「ハロン消費量の全廃」の定義
ハロンバンクの運用内容、これ
に係る消防機関の対応等につい
て
消防用設備等に係る執
ハロゲン化物消火設備の設置に
務資料の送付について
ついて(人が出入りし、又は常
駐する場所他)
ガス系消火設備等の設
ガス系消火設備(代替ハロン)
置および維持に係る留
の設置場所、設置方法、維持管
意事項について(通知) 理、温室効果ガスの排出抑制に
ついて
ハロン消火剤・機器の
平成 5 年 7 月の調査後、年数の
設置状況に係る調査に
経過に伴いハロンデータベース
ついて(依頼)
のデータ更新のため
ハロン消火剤を用いる
ハロン消火剤の使用抑制(クリ
ハロゲン化物消火設備
ティカルユースの判断、明確化、
・機器の使用抑制等につ 代替消火設備・機器)、ハロン
いて(通知)
バンクの運用について
自走式駐車場、研究試験室等又
ハロン消火剤を用いる
はクリティカルユースに附属し
ハロゲン化物消火設備
・機器の使用抑制等の運 ている用途への設置について
用について(通知)
ハロン消火剤の過剰在庫量の増
「クリティカルユース
(必要不可欠用途)にお 大に伴う大気へのみだりな放出
を防止するため、余剰消火剤の
けるリサイクルハロン
活用ガイド」の送付及び 適正な再利用について
活用について
155 号通知の改正
ハロン消火剤を用いる
「機械式駐車場(防護区画内に
ハロゲン化物消火設備
・機器の使用抑制等の一 人が乗り入れるものに限る)」
の追加
部改正について
5
H17.12.26
消防予第 411 号
消防危第 312 号
H18.3.27
消防予第 121 号
消防危第 87 号
H19.12.27
消防予第 394 号
消防危第 270 号
特定非営利活動法人消
防環境ネットワークの
設立に伴うハロンバン
ク推進協議会の業務の
移行について
ガス系消火剤のデータ
ベース登録に関する消
防機関の対応について
ハロン消火設備・機器
の設置状況に係る調査
について(依頼)
これらの通知については、「参考資料
6
設立の経緯、ハロンバンク推進
協議会の業務継承について
ハロンを除くガス系消火剤を使
用する消火設備等の設置状況の
把握及びデータベースへの登録
について
ハロンデータベースのデータの
2回目のフォローアップ
通知編」を参照。
ハロン等に係るオゾン層保護、地球温暖化防止の主な沿革
世
界
日
◆フルオロカーボンによるオゾン層破壊説
(カリフォルニア大ローランド教授)
◆「オゾン層保護のためのウィーン条約」
採択
<1985/3>
本
1970
1970
1980
◆「特定物質の規制等によるオゾン層の保護に
関する法律」(オゾン層保護法)制定
<1988/5>
◆「オゾン層を破壊する物質に関するモント
リオール議定書」採択
<1987/9>
1990 ◆クリティカルユースの明確化 ~
「ハロゲン化物消火設備・機器の使用抑制等につ
いて」(消防予第 161 号、消防危第 88 号)
<1991/8>
◆「ハロンバンク推進協議会」設立<1993/7>
◆気候変動枠組み条約第3回会合
(京都議定書の採択)
<1997/12>
◆「ハロンの回収・再利用等の促進に係る調査に
ついて」(消防予第 215 号、消防危第 56 号)
《ハロンデータベースを作成》
<1993/7>
★ハロンの国内生産全廃
◆第 10 回モントリオール議定書締約国会合に
おいて、全ての締約国がハロンの排出の削減
及び使用の全廃を含む「国家ハロンマネジメ
ント戦略」を策定し、先進国は 2000 年 7 月ま
でに国連環境計画(UNEP)オゾン事務局に提
出を求める決議案が採択された
<1998/11>
<1994/1>
◆「ハロンバンクの運用等について」
(消防予第 32 号、消防危第 9 号)
<1994/2>
◆ハロンバンク推進協議会業務開始
<1994/3>
2000 ◆「国家ハロンマネジメント戦略」を UNEP オゾン
事務局に提出
<2000/7>
2005
◆「京都議定書」発効
<2005/2>
◆特定非営利活動法人「消防環境ネットワーク」
設立
<2005/11>
◆「消防環境ネットワーク」が、「ハロンバンク
推進協議会」の全業務を継承
<2006/1>
◆第 19 回モントリオール議定書締約国会合に
おいて TEAP・HTOC に「2006HTOC アセスメン
ト報告書」の提言―各国のハロン保有量、必
要量等の調査及びクリティカルユース必要国
へのリサイクルハロン供給対策の検討立案並
びに報告―の実施を求める決議案が採択され
た
<2007/9>
◆ハロンの生産全廃
<2010/1>
◆「日本国のハロン保有量及び将来の必要量等」
が UNEP オゾン事務局に提出された
<2008/4>
2010
7
8
第3章
1
現状
国際的な取組みの現状
( 1 ) モ ン トリ オ ー ル議 定 書 締 約 国会 合 の 概要
モ ン ト リオ ー ル議 定 書締 約 国 会合 は 、1 9 88 年 以 降、 毎 年1 回 開催 さ れ て
い る 。モ ント リ オー ル議 定 書 締約 国 会合 の 組織 図 は 次頁 の とお り とな っ て いる。
( 2)モントリオール議定書によるハロン等の規制の概要
ハロンの生産等については、全廃が第4回モントリオール議定書締約国会合にお
いて決議された。これにより、ハロンの生産等は、議定書第5条非適用国(いわゆ
る先進国)においては1994年1月1日以降、議定書第5条国(開発途上国)に
おいては、2010年1月1日以降全廃されている。
生
産
量
及
び
消
費
量
※2
(%)
100
改正前のハロン規制
50
※1 改正後のハロン規制
0
1986
90
91
92
93
94
95
96
97
98
99
2000 (年)
図 2-1 ハロン規制チャート
※1
クリティカルユースのものを除く。なお、クリティカルユースの具体的内
容については、1995年以降、毎年行われる締約国会合で決議することと
された。
※2
生産量=(実際の生産量)-(破壊量)-(他の化学製品に使用された量)
消費量=(生産量)+(輸入量)-(輸出量)
9
モントリオール議定書締約国会合関連の組織図
United Nations (UN)
国際連合(国連)
United Nations Environment Programme (UNEP)
国連環境計画 1972年(昭和47年)設立
(環境問題に関する諸活動を調整する国連専門機関の一つ)
Vienna Convention for the Protection of the Ozone Layer
オゾン層保護のためのウィーン条約 1985年(昭和60年) 3月採択
(オゾン層保護を目的とする国際協力のための基本的枠組み)
Montreal Protocol on Substances that Deplete the Ozone Layer
オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書 1987年(昭和62年) 9月採択
(ウィーン条約の下でオゾン層を破壊する恐れのある物質を特定し、当該物質の生産・消費及び貿易
を規制して人の健康及び環境を保護)
The Meeting of the Parties to the Montreal Protocol (MOP)
決議案等を検討し決議するための政府間決議の場
モントリオール議定書締約国会合(総会)
○第1部 Preparatory Segment 総会準備会
○第2部 High-level Segment ハイレベル協議会
Open-Ended Working Group (OEWG)
モントリオール議定書締約国公開作業部会
締約国会合に提出される決議案等を検討するための政府間協議の場
Assessment Panels 評価委員会(3分野)
Technology and Economic A.P.
(TEAP)
技術・経済評価委員会
Scientific A.P.
(SAP)
科学評価委員会
Environmental Effects A.P.
(EEAP)
環境影響評価委員会
Technical Options Committees 技術選択委員会 (専門家会議)(6分野)
Halons Technical Options Committee (HTOC:ハロン技術選択委員会)
対象物質:防火用ハロン1301, 1211, 2402 および ハロン代替消火剤
ハロン
ハロンおよびハロン代替消火剤に関する技術的・経済的な調査・勧告・評価等を行う。
具体的には、ハロンの現況の把握、ハロン代替消火剤の開発状況の把握、ハロン代替技術の検討、締約国からの要求事項
(決議)への対応、HTOCの活動結果の締約国への定期的報告(毎年、4年毎)、必要不可欠用途生産申請に関する評価、な
どを行う。
Refrigeration, Air Conditioning and Heat Pumps TOC (RTOC)
冷 媒
対象物質:冷凍システム/エアコン等の各種冷媒用ガスとして使用されるフロン類およびその代替物質
Flexible and Rigid Foams TOC (FTOC)
フォーム
対象物質:ウレタンフォーム等の発泡用ガスとして使用されるフロン類およびその代替物質
Medical TOC (MTOC)
医 療
対象物質:定量噴霧吸入喘息薬の噴射用ガスとして使用されるフロン類(CFC MDIなど)およびその代替物質
Chemicals TOC(CTOC)
化 学
対象物質:主に溶剤/洗浄剤/原料として使用されるフロン類(CTC:四塩化炭素など)およびその代替物質
Methyl Bromide TOC (MBTOC)
臭化メチル
対象物質:土壌燻蒸(消毒)/食物検疫用として使用(MB:臭化メチル)およびその代替物質
10
(3)海外のハロンバンクの状況
① アメリカ合衆国
ハロンバンクとしてUNEPに登録されているものは、ハロンリサイクル
コーポレーション(HRC)のみであるが、この他に、国防省が行っている
特定オゾン破壊物質バンクなどバンク的なことを行っているものが1300
程度あるといわれている。
ア HRCは、消火装置業者の任意団体であり、ハロンを保有するのではな
く、情報の提供を通じて仲介斡旋を行うタイプのハロンバンクである。業
務としては、①再生ハロン1301の情報提供、仲介斡旋等 ②クリティ
カルユース及びハロン使用の許容範囲に関する指針の作成、頒布 ③審査
機関による用途審査及び適格用途証明書の発行などがある。
イ 特 定 オ ゾ ン 破 壊 物 質 バ ン ク は 、国 防 省 等 の ハ ロ ン 、冷 媒 等 の 再 生 、保 管 、
供給等業務を行っている。
ウ 2002年のTEAPレポートによれば、1990年の大気浄化法改正
で放出の基準が決められ、産業界はこれを受けて、放出を最小限に抑制す
ることを定めた自主行動規範を策定した。これらのルールでは、ハロン排
出制限及び機器の整備・補修技術者の資格認定等の法規制も整備されてい
る。
※ また、平成19年度に、米国のHTOC委員でもある、ウィッカム・
アソシェイツ社の防災コンサルタント、ロバート・T・ウィッカム氏に
次の項目について調査を依頼した。
調査結果の概要は下表のとおり。
№
調査事項
調査結果
1
ハロンの回収、再生、再利用
(供給)を行っている主体
2
クリティカルユースの範囲
3
クリティカルユースの判定
の方法及び実施主体
4
ハロンの供給・補給の方法
ハ ロ ン の 回 収 、リ サ イ ク ル 及 び 再 販 等 は 代 表 的 な 3 社
の民間業者が行っている。
米 国 の 法 令 等 で は 、ハ ロ ン の 生 産 に 関 し て は 言 及 し て
いるが、ハロンの用途に関しては言及してない。
ク リ テ ィ カ ル ユ ー ス か ど う か の 判 断 に つ い て 、ア メ リ
カの法令等ではまったく関与していない。
ハ ロ ン の 設 置 基 盤 が 完 全 な 自 由 市 場 に あ り 、設 置 、撤
去 ま た は リ サ イ ク ル 利 用 等 に つ い て の 問 題 は 、経 済 の
基 本 原 則 に よ っ て 解 決 さ れ る 。す な わ ち 、ア メ リ カ で
の ハ ロ ン 管 理 は 、自 由 貿 易 と そ の 市 場 で の 価 格 に よ っ
て管理がなされていると言える。
5
ハロンの取扱い業者等に対
する法令等による規制につ
いて(管理責任及び報告の義
務等)
アメリカの環境保護庁は、リサイクル業者に対して、
リサイクル用として外国で調達したハロンについて
は、四半期ごとの報告を要求している。
6
実際のハロン管理業務の実
施主体及び管理方法
基 本 的 に は 民 間 ベ ー ス に な る が 、国 外 で 調 達 し た ハ ロ
ン に つ い て は 、ア メ リ カ の 環 境 保 護 庁 が 四 半 期 ご と の
報告を要求している。
7
近い将来、米国政府は非クリ
ティカルユースに使用され
ているハロンの使用を法令
等 に よ り 禁 止 し 、強 制 的 に 回
収するなどの措置を講じる
可能性
ハロンの使用をクリティカルユースへ限定する必要
性 は な く 、強 制 的 に 法 令 等 で 規 制 す る こ と は 全 く 考 え
ていない。
調査結果は(参考資料72)による。
11
②
カナダ
UNEPには、ハロン円卓会議がハロンバンクとして登録されている。こ
れは、ハロンに関わる問題を協議するために、環境、消防、関連企業などの
ハロンの関係者により結成されたフォーラム形式の会議体であり、これ自体
が ハ ロ ン バ ン ク と し て 機 能 し て い る も の で は な い 。こ の 会 議 の 検 討 に 基 づ き 、
ULカナダ(損保試験所)が情報管理型のハロンバンク業務を行っている。
ULカナダのハロンバンクは、再生ハロン情報、関係規格・基準の作成、事
業者の認定などのほか、内外のハロンに関する情報の収集、提供を行ってい
る。
③
イギリス
環境省の補助のもとに設立された英国ハロン使用者協会(HUNC)の傘
下に英国ハロンバンクが置かれている。この両団体は、一体として運営され
ているようである。
このハロンバンクも、ハロンを保有しない、情報センター方式のハロンバ
ンクである。①会員への再生ハロンの需給情報の提供、仲介斡旋 ②内外の
ハロン関係情報の提供 ③UNEP、海外のバンクとの連携等などを行って
いる。
④
オーストラリア
オーストラリアは、南極に近いこともありオゾン層の破壊には、特に敏感
で国民の関心も高く、オゾン層破壊物質の規制や排除に積極的である。
ハロンについては、ハロン委員会(NHEUP)が定める特定用途以外の
使用の禁止、国営ハロンバンクの創設、既設のハロン設備・機器の撤去、回
収を行うこととされた。
これをうけて、政府事務管理センターに環境管理部(DASCEM)が設
けられ、この中で、ハロンバンク業務が行われている。当該バンクにおいて
は、特定用途以外のハロンの回収、保管、再生、充填、特定用途へのハロン
の供給、破壊処理等の業務を遂行している。
また、1998年9月に行われたHTOCトロント会議では、不可欠な用
途のハロン使用設備・機器の完全な廃棄時期の設定の検討を含むハロンマネ
ジメント戦略の策定決議案を提出した。
⑤
インドネシア及びフィリピン
インドネシア及びフィリピンにおいてもODSの削減に取り組んでいると
ころであり、日本におけるハロンの管理状況等に関心をもっている。このこ
とからオゾン層・気候保護産業協議会(JICOP)の依頼によりハロンバ
ンクの業務状況の指導、助言を行うこと等を目的として、平成8年11月に
ジャカルタ及びマニラにおいて、日本の経済産業省及び米国環境保護庁(E
PA)支援による3極オゾン層保護対策会議が開催されている。
また、インドネシアはハロンバンク設立を目指し、日本のハロンバンクの
システム調査のため平成17年1月に来日し、ハロンバンク推進協議会と会
合を行った。
⑥
台湾
平成17年9月の台湾国際大気保護会(行政院環保署主催)にて日本のハ
ロンバンクシステムの資料を基に講演を行った。
12
⑦
欧州連合(EU)
2002年4月のTEAPレポートによると、欧州連合では2001年ま
では加盟国各国の規制に依っていた。各国はそれぞれ、政府の法令と産業界
の自主規制を組み合わせた方法で規制をおこなっていた。
新EU基準は、2001年10月1日付けで、非クリティカルユースの設
備 機 器 は 全 て 2 0 0 3 年 末 に 使 用 を 廃 止 し 、撤 去 す る こ と と さ れ た 。そ し て 、
余剰ハロンは破壊処分することとしている(参考資料51)。
13
2 我が国における取組みの現状
(1)ハロンは、建築物、危険物施設、船舶、航空機等に設置される消火設備・機
器等の消火剤として使用されている。国内の現状としては、下のとおりとなっ
ている。
○ 日本においては、消防法により、防火対象物の用途、規模、構造、収容人
員等に応じて、消火設備その他の消防用設備等の設置・維持が義務づけられ
ている。また、その設置・維持方法についても、消防法において技術基準、
点検基準、施工・点検に係る資格制度が定められている。
○ ハロン消火設備は、水による消火の適性が低い対象について、設置が認め
られている消火設備の一つで、設置者等が当該防火対象物に適用可能なもの
の中から選択して、設置するものである。
○ 任意設置のハロン消火設備・機器についても、義務設置のものと同様の利
用形態となっていることが一般的である。
○ 日本のハロン消火設備・機器の90%以上については、ハロン1301が
用いられており、そのほとんどが防護区画外に設置された貯蔵容器から固定
配管を敷設した設備になっている。
(2)1990年6月の第2回モントリオール議定書締約国会合の決議を踏まえ、
国内法(特定物質の規制等によるオゾン層の保護に関する法律)により、19
92年1月1日から、特定ハロンの製造等の規制が実施されている。
(3)また、2000年(平成12年)にとりまとめられた「国家ハロンマネジメ
ン ト 戦 略 」( 参 考 資 料 1 0 9 )に 基 づ き 、ハ ロ ン の 適 正 な 管 理 、回 収・再 利 用 、
リサイクルハロンの活用による必要量の供給が、関係者の自主的な取組みのも
と行われている。
① 国家ハロンマネジメント戦略の骨子
我が国においては、消防法により、ハロン消火設備・機器の適正な設置・
維持が確保され、不用意な放出防止、排出抑制に効果をあげている。
さらに、関係者の自主的な取組により、特定非営利活動法人消防環境ネッ
トワーク(従前のハロンバンク推進協議会)を中心として、ハロンの管理、
回 収・再 利 用 、無 害 化 等 に つ い て 的 確 か つ 円 滑 な 運 用・取 組 が 行 わ れ て お り 、
オゾン層保護の観点から十分かつ最適なハロン排出抑制が図られている。
ア 消防環境ネットワークにおけるハロンデータベースの信頼性を引き続き
確保していくとともに、適正かつ一元的な管理の推進を図る。
イ 施工、維持管理、回収等に伴う不用意な放出を防止する。
ウ ハ ロ ン 消 火 設 備・機 器 の 新 設 は 、防 火 安 全 上 必 要 な 用 途 に つ い て 認 め る 。
エ 既存のハロン消火設備・機器については、建物ライフサイクルと整合を
図りつつ、ハロンの補充を継続する。
オ 既存のハロン消火設備・機器が廃止・撤去される場合には、ハロンを的
確に回収する。
カ 防火安全及びハロン排出抑制の観点から、再利用することが必要な回収
ハロンは、品質を確認のうえ、供給用として管理する。
キ 不要、余剰となったハロンは、無害化(破壊)のうえ廃棄する。この場
合において、技術的・制度的観点から、有効な回収・破壊技術の確立につ
いて整備を図る。
ク 防火安全を確保しつつ、環境保護、実用性の観点から、ハロン代替に向
けた有効な取組みを促進する。
②
戦略に基づく運用状況
14
ア
ハロンの設置状況等
ハロン(ハロン1211、ハロン1301及びハロン2402)は、高
絶縁性、低毒性、高浸透性、低汚損性等の利点を有する消火剤で、コンピ
ュータ室、通信機器室、駐車場等の防火対象物や危険物施設、船舶や航空
機等の移動体の消火設備・機器等に使用されている。
なお、2012年12月31日現在におけるハロン量は、次のとおりで
ある。
件数
消火剤名
件数
容 器 本 数 消 火 剤 量( kg)
ハ ロ ン 1211
33
329
13,858
消火設備
30,498
ハ ロ ン 2402
340
680
169,287
ハ ロ ン 1301
30,125
281,151
15,313,931
ハ ロ ン 1211
6
12
360
消火装置
9,401
ハ ロ ン 2402
65
211
9,811
ハ ロ ン 1301
9,330
22,408
675,984
ハ ロ ン 1211
492
5,614
24,744
消火器
7,291
ハ ロ ン 2402
100
1,251
2,550
ハ ロ ン 1301
6,699
50,304
131,608
ハ ロ ン 1211
531
5,955
38,962
合
計
47,190
ハ ロ ン 2402
505
2,142
181,648
ハ ロ ン 1301
46,154
353,863
16,121,523
用途区分
通信機室等
放送室等
制御室等
フィルム保管室等
危険物施設の計器室等
美術品展示室等
加工・作業室(輪転機)
塗装等取扱所等
自動車等修理場
自走式駐車場、機械式駐車場
研究試験室等
倉庫等
書庫等
貴重品等
その他
不明
合計
用途別
件数
11,615
229
5,531
93
490
694
801
1,925
151
8,609
1,586
170
601
22
5,526
9,147
47,190
容器本数
57,929
923
37,621
471
2,419
7,384
10,995
19,194
1,102
82,538
12,448
1,385
4,729
97
43,425
79,300
361,960
消 火 剤 量 ( kg)
2,061,985
29,796
1,605,062
15,843
93,107
370,904
320,153
809,634
60,919
4,713,601
364,045
80,271
238,056
4,665
1,796,947
3,777,145
16,342,133
また、消防庁と環境省が共同で移動体に設置されているハロンに関する
実態調査を平成 1 9年 2月 に行 った 。設置 量と 予備 貯蔵 量を含 めた ハロ
ン 量( 平 成 1 8 年 度 末 )は 、4 9 4 .0 tで あ っ た 。対 象 物 別 で は 、航 空
機及びヘリコプターが64.3t(約13%)、船舶が423.6t(約
86%)、車両が6.1t(約1%)であった。(参考資料119)
イ 関係者等による実施体制
15
(ア)特定非営利活動法人消防環境ネットワーク
第4回モントリオール議定書締約国会合の決定を踏まえ、ハロンの回
収、リサイクル及び再生を的確に実施し、大気中へのハロンのみだりな
放出を防止するとともに、既存のハロンを有効に活用するため、関係団
体によりハロンバンク推進協議会が1993年7月19日に設立され、
平成6年3月より運用が開始された。ハロンバンク推進協議会の業務内
容は、次のとおりである。
○ ハロンに関するデータベースの作成及び管理
○ ハロンの回収、保管の調整
○ ハロンの供給の調整
○ 行政機関との連絡及び調整
○ 関係者に対する広報
○ その他必要な業務
近年、地球温暖化の抑制対策が必要になったことや、資源の有効活用
など資源循環社会に貢献する必要が生じたことから、ハロンバンク推進
協議会が行っていた業務を引き継ぎ、ハロンを含めた全てのガス系消火
設備のデータベースを作成し、管理する団体として、特定非営利活動法
人消防環境ネットワークが平成17年11月に発足している。また、消
防環境ネットワークにおいては、新消火剤についても、今後地球温暖化
の観点から排出量削減が予定されていることからデータベースを作成
している。(特定非営利活動法人消防環境ネットワークについては参考
資料207)
a ハロンの適正管理について
消防環境ネットワークにおいて管理を行っているハロンの回収・供
給等の最近5年の実績は次表のとおりとなっている。
年度
2007
2008
2009
2010
2011
種別
回
収
供
給
*
1
補
充
備
蓄
*
2
*1
*2
ハ ロ ン 1211
392kg
387kg
262kg
727kg
48 ㎏
ハ ロ ン 2402
20t
1t
3t
6t
7t
ハ ロ ン 1301
145t
146t
99t
161t
159t
ハ ロ ン 1211
0
0
0
0
0
ハ ロ ン 2402
0
0
0
0
0
ハ ロ ン 1301
193t
145t
79t
47t
33t
ハ ロ ン 1211
0
0
0
0
0
ハ ロ ン 2402
531kg
2t
420kg
300kg
416 ㎏
ハ ロ ン 1301
15t
11t
10t
11t
13t
ハ ロ ン 1211
2,595kg
4,217kg
5,199kg
6,153kg
6,973 ㎏
ハ ロ ン 2402
26t
21t
18t
12t
12t
ハ ロ ン 1301
338t
305t
314t
387t
436t
供給については、新規設置分
2007年度の備蓄については、2008年2月末日集計値
16
17
18
b
消防環境ネットワークの運用フローについて
消防環境ネットワークの運用フローについては、次図のとおりとなっている。
消 防 環 境ハロンバンクの運用フロー
ネットワークの運用フロー
①ハロン供給の申請
②ハロン供給の承認
④ハロン供給の連絡
③ハロンの供給
設置業者等
防火対象物の
関係者
⑦廃棄予定ハロンの回収
⑥廃棄予定ハロン回収の指示
消防環境
ネットワーク
⑧廃棄予定ハロン回収の連絡
又は
⑤ハロン廃棄予定の連絡
危険物施設の
所有者
⑤ハロン廃棄予定の連絡
⑤ハロン廃棄予定の連絡
⑩データベース変更時の連絡
消防機関
消防庁
⑨立入検査
⑪データベー
スの作成管理
⑫データベースの送付
ハロン供給関係
① ハロン供給の申請・・・ハロンの新設、移動又は補充に対する承認を申請する。
② ハロン供給の承認・・・ハロンの供給量、需要量等必要事項を審査して、供給の承認を行う。
③ ハロンの供給・・・ハロンの供給を行う。
④ ハロン供給の連絡・・・ハロンの供給を行った旨を消防環境ネットワークに連絡する。
ハロン回収関係
⑤ ハロン廃棄予定の連絡・・・ハロンの廃棄予定を直接又は消防機関を通じて連絡する
⑥ 廃棄予定ハロン回収の指示・・・設置業者等にハロンの回収を行うように指示する。
⑦ 廃棄予定ハロンの回収・・・廃棄予定ハロンの回収を実施する。
⑧ 廃棄予定ハロン回収の連絡・・・廃棄予定のハロンを回収した旨を連絡する。
⑨ 立入検査・・・立入検査を行い、データベースどおりのハロン設置状況か確認する。
データベース関係
⑩ データベース変更等の連絡・・・立入検査の結果、データベースとハロンの設置状況が相違している
場合に連絡する。
⑪ データベースの作成・管理・・・④⑧⑩をもとに、データベースを作成し、管理を行う。
⑫ データベースの送付・・・ハロンの設置状況をデータベースから作成し、各消防機関へ送付する。
19
c
ハロンのみだりな放出防止
ハ ロ ン の 注 意 書 き シ ー ル を 貼 付 す る こ と や 、消 火 設 備 の 点 検 、改
修 及 び 撤 去 時 に は 、消 火 剤 の 放 出 防 止 を 考 慮 し て 設 備 に 熟 知 し た 消 防
設 備 士 、消 防 設 備 点 検 資 格 者 等 に 立 ち 会 わ せ 万 一 の 作 動 が な い よ う 指
導することでハロンのみだりな放出を防止している。
ま た 、平 成 2 1 年 3 月 、消 防 用 設 備 等 の 容 器 弁 に 係 る 点 検 要 領 の 一
部 改 正 が 行 わ れ 、設 置 か ら 1 5 年 を 経 過 し た 容 器 弁 に つ い て 追 加 的 な
点 検( 外 観 点 検 、構 造・形 状・寸 法 点 検 、耐 圧 点 検 等 )を 行 う こ と を
推 奨 す る 点 検 方 法 の 指 針 が 示 さ れ 、容 器 弁 の 経 年 劣 化 や 腐 食 に 起 因 す
る誤放出等を未然に防止するための取組が行われている。
今 後 と も 、ハ ロ ン 消 火 設 備・機 器 の 廃 止 、ハ ロ ン の 放 出 等 に と も な
う 補 充 、ハ ロ ン 消 火 設 備・機 器 の 変 更・新 設 等 の 状 況 を 把 握 し 、ハ ロ
ン管理を確実に行うこととしている。
d リサイクルハロンの活用について
消防環境ネットワークは、ハロンの回収、再生、再利用の活動にお
いて、ハロン1301の再利用を行っている。優れた消火剤を有効に
活用することもハロン管理の重要な業務であることから、消防環境ネ
ットワークは、「リサイクルハロン活用ガイド」をハロンのユーザ、
設置業者等に広く配布し、ハロンの回収、再生、再利用の活性化を計
っている(参考資料233)。
なお、在庫量となるハロンは400トン前後を推移し、ここ数年間
減少ぎみであったが、平成24年3月調査時では約455トンでやや
増加傾向である。
e 特定非営利活動法人消防環境ネットワーク(旧ハロンバンク推進協
議会)への表彰
消防環境ネットワークは、世界でも例のない高い精度でハロンの管
理を行っており、次のような表彰を受けている。
(a)オゾン層保護賞
米国の環境保護庁(EPA)では、世界各国においてオゾン層を
破壊する物質の削減にリーダーシップを発揮した団体、個人及び企
業 に 対 し 「 オ ゾ ン 層 保 護 賞 ( EPA Stratospheric Ozone Protection
Award)」の 授 与 を 行 っ て い る が 、ハ ロ ン バ ン ク 推 進 協 議 会 は 、1 9
96年(平成8年)のオゾン層保護賞を受賞している(日本の団体
としては4番目)。
(b)第3回オゾン層保護大賞環境庁長官賞受賞
国内でオゾン層保護の推進に不断の努力を重ね、顕著な功績を上
げた団体に対して表彰されるオゾン層保護大賞(主催日刊工業新聞
社 、後 援 通 商 産 業 省 / 環 境 庁 )の「 環 境 庁 長 官 賞 」を 2 0 0 0 年( 平
成12年)9月に受賞している。
(イ)一般社団法人日本消火装置工業会の実施体制
一般社団法人日本消火装置工業会は、国家ハロンマネジメント戦略に
基づき、一般社団法人日本消火装置工業会の自主的な取組みとして、「
ハロンの適切な管理のための自主行動計画」(参考資料198)を策定
した。
これに基づき、一般社団法人日本消火装置工業会ではハロンの適切な
管理を行い、その実施状況については、一般社団法人日本消火装置工業
会に「ハロンの適切な管理のための自主行動計画評価委員会」において
20
評価が行われている(参考資料202)。
ウ
ハロン消火設備の使用抑制
オゾン層保護のためのウィーン条約に基づき、その具体的方法を定めた
オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書において、オゾン
層を破壊する特定物質として、ハロン1211、ハロン1301及びハロ
ン2402が指定され、クリティカルユース(必要不可欠用途な分野にお
ける使用)を除き、平成6年以降、生産等が全廃されている。
消防庁として、「ハロン消火剤を用いるハロゲン化物消火設備・機器の
使用抑制等について(通知)」(平成13年5月16日付け消防予第15
5号・消防危第61号)(参考資料268)等によりクリティカルユース
の明確化等が行われ、ハロン消火設備の使用抑制方法等について示されて
いる。
エ ハロン代替消火剤の使用状況等
(ア)ハロン代替消火剤
ハロン代替消火剤については、種々のものの開発が行われている。ハ
ロン代替消火剤を大別すると、ハロゲン化合物系(ハロカーボン系)と
不活性ガス系(イナート系)の2種類がある。
国 内 で 設 置 さ れ て い る も の と し て 、ハ ロ ゲ ン 化 合 物 系 消 火 剤 と し て は 、
「 H F C - 2 2 7 ea」 「 H F C - 2 3 」 「 F K - 5 - 1 - 1 2 」 の 3 種
類があり、不活性ガス系消火剤としては、「IG-541」「IG-5
5」「窒素」の3種類がある。(それぞれの化学式や物理的特性等につ
いては参考資料139参照)
こ れ ら の ガ ス に つ い て は 、消 火 性 能 、毒 性 等 の 研 究 が 国 内 外 で 行 わ れ 、
実用化されているが、オゾン層破壊係数(ODP)値が0で、かつ、ハ
ロンと同等の消火性能等を有する新消火剤は、現在開発されていない状
況にある。
(イ)ハロン代替消火剤を用いる消火設備の基準化等
ハロン代替消火剤の設置・維持に係る知見が十分に集積されたものに
あっては、順次、基準化することとされており、平成13年に消防法施
行令等の改正(平成13年4月1日施行)が行われ、「HFC-227
ea」 、 「 H F C - 2 3 」 、 「 I G - 5 4 1 」 、 「 I G - 5 5 」 及 び 「 窒
素」に係る技術上の基準が整備されるとともに、平成22年には、消防
法施行規則等の改正(平成22年8月26日施行)が行われ、「FK-
5-1-12」に係る技術上の基準が整備された。
一方、既に基準化されているハロン代替消火剤を用いる消火設備を、
規定されている規模等の範囲を超えて設置しようとする場合には、当該
消火剤の消火性能及び毒性評価はもちろんのこと、実際に設置する場所
の 用 途 、 使 用 形 態 、 容 積 、 消 火 剤 の 放 出 方 法 等 を 含 め た 総 合 的 な 評 価を
行うことが必要である。
また、危険物施設に設置されるガス系消火設備についても、平成23
年12月21日に総務省告示が公布され、ハロン代替消火剤のうち、「
H F C - 2 2 7 ea」 、 「 H F C - 2 3 」 、 「 I G - 5 4 1 」 、 「 I G -
55」及び「窒素」を用いる消火設備に係る技術上の基準が整備された
(平成24年4月1日施行)。基準化されたハロン代替消火剤を用いる
消火設備を、規定されている規模等の範囲を超えて危険物施設に設置し
21
ようとする場合等にあっては、当該消火剤の消火性能及び毒性評価はも
ちろんのこと、当該施設において貯蔵し、又は取り扱う危険物の品名、
数量、危険物の貯蔵又は取扱いの形態及び当該消火設備の危険物火災へ
の適用性等を含めた総合的な評価を行うことが必要である。
なお、これらの評価については、申請者の任意により、財団法人日本
消防設備安全センター及び危険物保安技術協会において行われている。
(ウ)地球温暖化対策に係るハロン代替消火剤の排出抑制
平成9年12月に、気候変動枠組条約京都議定書において、ハロン代
替消火剤として用いられている二酸化炭素及びHFCの排出量削減の
目標が盛り込まれた。(先進国及び市場経済移行国全体として5%、日
本として6%の削減率)
第7回気候変動枠組条約締約国会議(COP7)において京都議定書
の運用細目が決定されたことを受け、政府は「地球温暖化対策推進大綱
(平成10年6月地球温暖化対策推進本部決定)を見直し、平成14年
3月に新しい「地球温暖化対策推進大綱」を決定した。
さらに、平成14年5月31日に「地球温暖化対策の推進に関する法
律」の改正、平成14年6月4日には日本国として「気候変動に関する
国際連合枠組条約の京都議定書」の締結がされ、代替フロン等3ガスを
含む温室効果ガスの排出抑制に引き続き取り組むこととされた。
また、代替フロン等3ガス(HFC・PFC・SF6)の排出抑制対
策の推進として、①産業界の計画的な取組の推進、②代替物質等の技術
開発等、③代替物質を使用した製品等の使用の促進、④法律に基づく冷
媒として機器に充てんされたHFCの回収等を行っていくこととなっ
ている。
平成17年2月16日京都議定書発効、改正温暖化対策法施行、「地
球温暖化対策推進大綱」の見直し作業は「京都議定書目標達成計画」の
策定作業に移行、法に基づく地球温暖化対策推進本部が発足した。
「京都議定書目標達成計画」については、平成17年4月28日に閣
議 決 定 さ れ 、 代 替 フ ロ ン 等 3 ガ ス に つ い て は 、 基 準 年 (1 9 9 5 年 )の 水
準 か ら 基 準 年 総 排 出 量 比 で + 0 .1 % の 水 準 に す る こ と を 目 標 と し た 。
その後、平成20年3月に全面改定され、代替フロン等3ガスの20
10年の排出量目標について、基準年総排出量比で-1.6%とするこ
ととした。
経済産業省では、平成10年1月に化学品審議会地球温暖化防止対策
部 会( 現 産 業 構 造 審 議 会 化 学・バ イ オ 部 会 地 球 温 暖 化 防 止 対 策 小 委 員 会 )
を設置し、同部会から中間報告を受けたことを踏まえて、同2月に「産
業界によるHFC等の排出抑制対策に係る指針」を策定し、HFC等の
排出抑制対策に係る行動計画の策定及び実施について、各産業界等に協
力要請を行った。その結果、平成10年5月末に各産業界の行動計画の
ポイントとして、具体的対策と数値目標が提出され、これら対策を推進
していくにあたっての関係者(産業界、地方自治体、消費者等)の役割
等についてとりまとめが行われた。その後、毎年、地球温暖化防止対策
小委員会において、フォローアップが行われた。
平成17年6月の改正地球温暖化対策推進法の成立に伴い、温室効果
ガスの排出者自らが排出量を算定することにより国民各層にわたる自
主的な温暖化対策へ取組みの基礎づくりを進めるとともに、排出量情報
の公表・可視化による国民・事業者全般の自主的取組みの促進へのイン
22
センティブ・機運を高める観点から、温室効果ガスを一定量以上排出す
る者に排出量を国に報告することを義務付け、国が報告された情報を集
計して公表する制度(温室効果ガス排出量の算定・報告・公表制度)が
導 入 さ れ る こ と に な り 、平 成 1 8 年 4 月 1 日 か ら 施 行 さ れ た 。消 火 剤 と
してHFCを使用(ボンベ充填等)する消火設備メーカーが全事業所
で 年 間 3 ,0 0 0 ト ン ( 二 酸 化 炭 素 換 算 ) 以 上 の H F C を 排 出 す る 場 合
に は 、 本 制 度 の 対 象 と な る 。 [平 成 2 0 年 6 月 の 法 改 正 に よ り 、 事 業 所
単位の報告から事業者・フランチャイズチェーン単位への報告へと変更
され、平成22年度の報告(平成21年度排出量)から適用される。]
温室効果ガスの排出量を二酸化炭素にあっては1990年レベルから、
HFCガスにあっては1995年レベルから一定量削減するいう目標
を達成するという京都議定書が2005年2月に発効されたことを踏
まえ、消火剤を消火以外にみだりに大気中に放出されないように適切に
管理することが求められていることから、管理の基本となるデータベー
スの構築・整備が必要となる。
データベースの対象としては、温室効果ガスである二酸化炭素及びH
FCのほか消火設備の維持管理、将来の再資源化等に寄与する資料にな
ることを期するものとしてガス系消火剤全般とすることが適当と考え
られた。
ガス系消火剤のデータの管理組織としては、ハロンバンク推進協議会
を母体として発足した消防環境ネットワークが適当と考えられ、消防環
境ネットワークにより、管理されている。(管理等については参考資料
207)
○ ハロン代替消火剤のデータベースについて
消防環境ネットワークは、データベースを維持管理する。登録され
ているデータについては次のとおりとなっている。
登録データ(平成18年4月~平成24年12月)
消火剤の種別
件数
容器本数
消火剤量
HFC-227ea
325
2,043
197,477kg
ハ ロ ゲ ン 化 物 系 HFC-23
359
1,075
50,423kg
FK-5-1-12
46
319
13,469kg
二酸化炭素
2,102
58,182
3,158,226kg
IG-541
177
4,907
109,856m 3
不活性ガス系
IG-55
61
1,815
41,405m 3
窒素
1,308
57,493
1,209,268m 3
○
不活性ガス消火設備・ハロゲン化物消火設備・ハロン代替消火設備
の撤去の把握について
現在は、着工届及び設置届は義務付けられているが、設備の撤去に
ついての届出は義務付けられていない。
そのため、消防環境ネットワークを中心に、不活性ガス消火設備・
ハロゲン化物消火設備・ハロン代替消火設備が撤去されたことを把握
するように努めていくことが必要だと考えられる。
オ ハロン等の破壊について
(ア)ハロンの破壊技術について
経済産業省では、高周波プラズマ法を用いた特定フロン破壊処理実証
23
プラントでフロン破壊の実用化を行った。
ハロンについては、平成11年度より高周波プラズマ法にて、ハロ
ン 2 4 0 2 、 及 び 1 3 0 1 を 分 解 率 9 9 .9 9 % 以 上 で 破 壊 処 理 す る 技
術開発を開始している。具体的な技術開発の内容は、①ハロン破壊処理
技 術 の 開 発 と し て 、高 周 波 プ ラ ズ マ 破 壊 法 に よ り 、約 1 万 ℃ の 温 度 域 で 、
安全かつ着実にハロンを確実に破壊する。②フッ化水素、臭化水素等の
処理技術の開発として、プラズマによるハロン分解後、水による急冷反
応で生じるフッ化水素、臭化水素等を水酸化カルシウム等のアルカリ中
和し廃棄する。これら一連の設備を設計するに際し、耐蝕耐摩耗性に優
れた最適な材質、構造を検討し、ハロン破壊に最適運転条件を探索する
こととしている。
環境省においては、オゾン層保護法に基づきハロンの排出抑制に資す
る設備の開発及び利用を促進するため、平成10年度~平成12年度お
よび平成15年度に廃棄物混焼法、セメント・石灰焼成炉混入法および
液中燃焼方法式によるハロン破壊処理実験を実施し、ハロン破壊処理技
術の実用可能性について検討した。平成18年5月には、これらの実験
結果をもとに、廃棄物混焼法方式(ロータリーキルン方式)、セメント
・石灰焼成炉混入法方式(セメントキルン方式)、液中燃焼方法式(炉
内分解型液中燃焼方法式)及び過熱蒸気反応方法式の4つの技術につい
て、適切なハロンの破壊処理を実施するために必要な事項をとりまとめ、
「ハロン破壊処理ガイドライン」を作成した(参考資料166)。
一 方 、国 外 の 状 況 と し て は 、オ ー ス ト ラ リ ア に お い て 、プ ラ ズ マ 方
式 に よ る ハ ロ ン 1 21 1 の 破 壊 が 実 用 化 さ れ 、国 レ ベ ル で の ハ ロ ン 回 収 、
破壊が行われている。
ハロンについては、国際的にも、回収・再生して有効に再利用するこ
とにより、不用意な放出を防止することとされているが、再生が困難な
もの、再利用することができないものについては、回収したものを保管
しておくだけではなく、適切な方法により破壊していく必要がある。こ
のため、国内におけるハロンの適切な破壊のための仕組みを構築するこ
とが必要となる。
(イ)フロンの破壊技術
フロン破壊技術については、今までに数多くの手法について実証
試験等が行われている。現在、我国において実用化されているフロ
ン破壊技術の主な方法は「廃棄物混焼法」「セメント・石灰焼成炉
混入法」「過熱蒸気反応法」「液中燃焼法」「プラズマ法」等があ
る。
24
第4章
1
最近の動向
国際的な動向について
平成19(2007)年9月に開催された第19回モントリオール議定書締
約国会合(MOP19)において、ハロン技術選択委員会(HTOC)が発行
した『2006年版 ハロン技術選択委員会 評価報告書』の提案(「将来予想
されるハロン入手可能性の地域的不均衡の更なる調査・予測とその緩和策の策
定」)を受け、オーストラリアが提案した決議案が「決議XIX/16:ハロ
ン技術選択委員会の2006年版評価報告書のフォローアップ」として採択さ
れた(参考資料44)。決議XIX/16の具体的な内容は以下のとおりであ
る。
○「 技 術 ・経 済 評 価 委 員 会( T E A P )/ H T O C 」に 対 し 、① ハ ロ ン の 入 手 可
能性について将来予想される地域的不均衡に関し、将来の不均衡を予測・緩
和するためのメカニズムを調査・提案すること、②多数国間基金事務局が実
施している世界のハロンバンクの運営に関する調査結果を考慮すること、③
M O P 2 0 に お い て 今 回 の 調 査 結 果 を 検 討 で き る よ う に 、期 限 内 (M O P 2 0
開催8週間前まで) に調査結果を提出すること。
○「ハロンを必要とする締約国」に対し、TEAP/HTOCの調査実施を支
援するため、2008年4月1日までに国連環境計画(UNEP)オゾン事
務局へ、①必要不可欠用途向けの将来のハロン必要量、②十分なハロンを入
手 す る 上 で 現 在 ま で に 経 験 し た ま た は 将 来 予 想 さ れ る 課 題 、を 報 告 す る こ と 。
○「UNEPオゾン事務局」に対し、2004、2005、2006年のハロ
ンの種類別の消費量を、TEAP/HTOCの調査のために提供すること。
この決議を受け我が国は、平成20(2008)年3月に、我が国のハロン
の現況等をUNEPオゾン事務局に報告した(参考資料121)。
またその後、平成21(2009)年11月に開催されたMOP21におい
て、決議XIX/16に対する完全な形での結論とはなっていないが、「決議
XXI/7:ハロンの継続使用の管理と削減」が採択された。決議XXI/7
の具体的な内容は以下のとおりである。
○①国際民間航空機関(ICAO)のハロン代替化推進を支持すること、②ハ
ロンの自由な流通に対する障害の除去を検討すること、③ハロン破壊の停止
とリサイクル可能なハロンを保存すること、④各国のハロン必要量を評価し
オゾン事務局へ報告すること、⑤今後ハロンが入手困難になることを各国ハ
ロンユーザーに定期的に通知すること。
なお、平成24年度に開催された主な国際会議の概要は以下のとおりである。
(1)公開作業部会(締約国会合(総会)準備会議:OEWG32)の概要
平 成 2 4( 2 0 1 2 )年 7 月 2 3 日 か ら 2 7 日 ま で タ イ の バ ン コ ク に お い て 、
第24回モントリオール議定書締約国会合(MOP24)の準備会議として、
第32回同議定書締約国公開作業部会(OEWG32)が開催された。
今 回 の 公 開 作 業 部 会 で は T E A P / H T O C よ り 、下 記 の 項 目 が 報 告 さ れ た 。
「HTOC2012年版進捗報告書」について
1)現在進められているハロン代替消火剤および消火技術の開発状況
2 ) 殺 虫 剤 の 原 料 と し て の ハ ロ ン 1 3 0 1 の 中 国 ・フ ラ ン ス で の 生 産 継 続
25
3)インドでのハロン調達の状況とハロン2402不足の解消
4)中国でのハロン回収・リサイクルと余剰ハロン1211の扱い
5)中東地域でのハロンバンク制度の問題点と今後の課題
6)国際民間航空機関(ICAO)のハロン代替化に向けてのHTOCの支
援
「オゾン層破壊物質(ODS)の代替物質に関する追加的情報」について
1)防火分野全体でのODSの使用状況と市場規模
2)全域放出方式用途でのODSの使用状況
3)局所または直流放出方式用途でのODSの使用状況
4)今後の防火分野でのODS代替化の可能性
(2)締約国会合(MOP24)の概要
平成24(2012)年11月12日から16日までスイスのジュネーブに
おいて、第24回モントリオール議定書締約国会合(MOP24)が開催され
た。
今回の会合ではTEAP/HTOCより、
「 H T O C の 国 際 民 間 航 空 機 関( I
CAO)との協力に関する最新情報」として下記の報告がなされた。
ICAOはモントリオール議定書で定められたハロン生産の段階的全廃に伴
う下記の2つの質問をICAO加盟国に公式文書として送付した。
質問1.貴国の民間航空機分野で必要となるハロンが将来にわたって十分
に存在すると思うか。
質問2.貴国の民間航空機分野が将来にわたって事業を継続するために入
手可能なハロンの備蓄量を把握しているか。“YES”の場合、そ
の量をトン単位で回答してください。
質問状を送付したICAO加盟国191カ国のうち、回答を得られたのは5
5カ国からであった。この調査により民間航空機分野におけるハロン管理は不
確実であること、また回答のあった加盟国でも自国のハロン備蓄量を正確に把
握できておらず、さらに多くの国で航空機に補給するハロンは自国の備蓄ハロ
ンではなく、航空機分野にハロンを供給している他国に依存していることが分
かった。
ICAOはさらに正確な情報を得るために、民間航空機分野だけではなく加
盟国のオゾン層保護関係者の協力も得るため再度公式文書を発送することとし
た。
(3)HTOC会議
平成24(2012)年3月5日から7日までイギリスのマンチェスターに
おいて、HTOC会議が開催された。 主な議題は下記のとおりであった。
1)第23回モントリオール議定書締約国会合(MOP23)で決議された
「 決 議 X X III/9 : オ ゾ ン 層 破 壊 物 質 の 代 替 物 質 に 関 す る 追 加 情 報 」 お よ
び「 決 議 X X III/1 0 : 技 術 ・ 経 済 評 価 委 員 会( T E A P )お よ び そ の 下
部組織委員の推薦および任命プロセスの更新」への対応検討
2)各国・地域・分野でのハロンおよびハロン代替消火剤に関する情報提供
3)2014年版HTOC評価報告書(4年毎発行)、2012年版HTO
C進捗報告書(毎年発行)の報告内容検討
なお2)において、日本からは「日本におけるハロンおよびハロン代替消火
剤の状況」として、①日本のハロン消火剤の管理体制と基本方針、②各種ハロ
26
ン(ハロン1301、1211、2402)の使用状況、③各種ハロン代替消
火 剤 〔 ハ ロ ゲ ン 化 合 物 ( H F C - 2 2 7 ea、 H F C - 2 3 、 F K - 5 - 1 - 1
2 ) お よ び 不 活 性 ガ ス ( I G - 5 4 1 、 I G - 5 5 、 I G - 1 0 0 、 C O 2) 〕
の使用状況およびハロンを除くガス系消火剤の登録制度、について報告した。
2
国内の動向について
ハロン消火設備や不活性ガス消火設備等における消火剤貯蔵容器等の容器
弁の安全性点検については、「消防用設備等の試験基準及び点検要領の一部改
正について」(平成21年3月31日付け消防予第132号)により、原則と
して設置後15年を経過した容器弁にあっては20年までに行うこと等とさ
れている。一般社団法人日本消火装置工業会及び特定非営利活動法人消防環境
ネットワークが主催する「ハロン回収量に対する供給量のバランス適正化検討
委員会」において、これまでのハロン適正管理及び点検実績から得られた知見
に基づき、ハロンの需給バランスの適正化に関する検討が行われ、容器弁の安
全性点検については、容器弁の経年劣化状況調査において、消火剤の種別に応
じて最大でも設置から40年までは誤放出が発生するおそれが低いこと、また、
点検実施可能業者数に限りがあるため、十分な点検が行われていない実態があ
ること等から、安全性を確保しつつ適切な点検が実施されるよう点検期間の見
直しや消防機関による強力な指導等の提言がとりまとめられた。
この提言を踏まえ、消防庁では、容器弁の安全性点検に係る点検期間につい
て、点検実績等から明らかとなった容器弁の経年劣化状況等を考慮し、ハロン
消 火 設 備 に あ っ て は 、 設 置 後 20 年 を 経 過 し た も の に つ い て 20 年 以 内 に 容 器 弁
の安全性点検を実施する等の所要の整備を図ることとされた。
第5章
今後の対応の考え方
<総論>
○ 我 が 国 で は 、 第 10 回 モ ン ト リ オ ー ル 議 定 書 締 約 国 会 合 に お け る 決 議 を 踏 ま え 、
国家ハロンマネジメント戦略に基づき、クリティカルユースのハロン消火剤を十
分 な 管 理 の 下 に 使 用 し て い く と と も に 、回 収・リ サ イ ク ル を 推 進 す る こ と に よ り 、
建築物等の防火安全性を確保しつつ、不要な放出を抑えていく所存である。
これまで、消防環境ネットワークを中心として、事業団体や消防機関等の国内
関係者における継続的な取組により、世界的にも例のない厳格な管理体制が整備
されるに至っており、火災等に伴うものを含めその放出量は極めて低いレベルに
抑制されている。すなわち、リサイクル等の量的なバランスを保ちながら不要の
放出を効果的に抑制しているところであり、他国に提供できるほどの余剰のハロ
ンはない。
○ 以 上 の こ と か ら 、 第 19 回 モ ン ト リ オ ー ル 議 定 書 締 約 国 会 合 決 議 XIX/16 を 踏 ま
えた検討を行うに当たっては、我が国におけるハロンの回収・供給に支障を生じ
ないようにすることが必要である。
特に、他国へのハロン提供に関する割当てなど、我が国における回収・供給の
バランスに悪影響を生じ、ひいては国家ハロンマネジメント戦略に基づき構築し
て き た 管 理 体 制 を 崩 壊 さ せ 、み だ り な 放 出 を 招 く お そ れ の あ る 提 案 に は 反 対 す る 。
○ なお、ハロンの国際的な需給調整の仕組みを検討するに当たっては、各国でハ
ロンに関する現状を明らかにするとともに、将来的に不足が見込まれる国にあっ
ては、その原因を究明のうえ自国内での供給継続に向けた最善の努力を行うこと
がまず第一に必要である。
<ハロン1301>
27
○
我が国では、ハロン1301は建物・民間船舶・民間航空機・政府機関に設置
されているが、その大部分は消防法に基づき設置が義務付けられている建物関係
のものであり、その安全確保に必要不可欠なものとなっている。
また、これまで、消防環境ネットワークを中心として、事業団体や消防機関等
の国内関係者における継続的な取組により、世界的にも例のない厳格な管理体制
が整備されるに至っている。具体的には、約 1 万6千トンのハロン1301のう
ち 、年 間 100~ 200 ト ン( 0.6~ 1.2% )程 度 が 既 設 の 消 火 設 備・機 器 か ら 回 収 さ れ 、
リサイクルにより新設のものに供給され、火災等に伴い放出されるものについて
も 、年 間 10~ 20 ト ン( 0.06~ 0.1% )程 度 の 極 め て 低 い レ ベ ル に 抑 制 さ れ て い る 。
なお、我が国では今後とも、リサイクルしながら量的なバランスを保ちつつ、
不要の放出を抑制していくこととしているところであり、今後とも他国に提供で
きるほどの余剰は見込まれず、我が国から他国へハロン1301を提供すること
はできない。
<ハロン2402>
○ ハロン2402が用いられている消火設備が設置された石油タンクの安全確保
にハロン2402は引き続き必要であり、他国に提供できるほどの余剰も当面見
込まれず、現状においては、我が国から他国へハロン2402を提供することは
困難である。
○ なお、ハロン2402の国際的な需給調整の仕組みを検討するに当たっては、
ハロン2402の提供を受けた側の受益者負担を原則とする。少なくとも、これ
までハロン2402を保有し適正に管理してきた国や、個々の企業等が不利益を
被ることのないようにすることが必要である。
<ハロン1211>
○ ハロン1211が用いられている消火器等が設置された建物の安全確保にハロ
ン1211は引き続き必要であり、他国に提供できるほどの余剰も当面見込まれ
ず、現状においては、我が国から他国へハロン1211を提供することは困難で
ある。
28
ハロンの適切な管理のための自主行動計画
平成24年度フォローアップ報告書
平成24年9月
一般社団法人
日本消火装置工業会
1 フォローアップの体制及び実施状況
ハロンの適切な管理のための自主行動計画(以下「自主行動計画」という。)については、一
般社団法人日本消火装置工業会(以下「工業会」という。)に「自主行動計画フォローアップ委
員会」を設け、取組の実施状況について、前年同様フォローアップを実施した。
平成23年9月16日開催の第6回のレビューにおいて、
・データベースの信頼性 ・自主行動計画の具体的な取組状況 ・ハロンの需給見直し
の3点にわたる主要事項について、第三者機関である「ハロンの適切な管理のための自主行動計
画評価委員会」の評価を受け、計画自体の見直し等を要する問題も無いとの結果であったことか
ら、前年同様のフォローアップを実施した。
なお、ハロンの回収・再利用の状況などデータベースに関する事項については、前年同様、特
定非営利活動法人消防環境ネットワーク(以下「ネットワーク」という。)から関係資料の提供
を受けた。
2 具体的な取組(行動計画)の実施状況
自主行動計画
(1) ハロンデータベースの信頼性の確保を図る。
実 施 状 況
(1) 平成24年3月31日現在のネットワーク
におけるデータベース構築状況は、資料№4
‐1「データベース構築状況」のとおりであ
る。
前年報告同様、管理が開始された平成6年度
以降に行われた回収及び供給のデータにつ
いては、ネットワークがリアルタイムで更新
を行っている。
(2) ハロン消火設備の設置・維持管理・撤去に伴う (2) 啓発用リーフレット等を前年同様(財)日本
消防設備安全センターが行っている「消防設
不用意なハロンの放出を防止する。
備点検資格者再講習」等の資料とし、更に(
社)全国解体工事業団体連合会へ解体工事業
者向けに、及び都道府県消防設備協会に講習
会資料として配付を行い、啓発活動を継続し
ている。
23年度各資料配付状況
【リーフレット等:参考資料1】
・注意書きシール ‥‥‥‥‥‥‥ 22,471枚
・「不要となったガス系消火剤の回収にご協
力下さい」リーフレット‥‥‥‥ 24,000部
・「ガス系消火剤のみだりな放出を抑制する
ために」リーフレット ‥‥‥‥‥‥ 100部
・ネットワークガイドブック ‥‥‥‥ 100部
(3) ハロン消火設備の新設は、防火安全上必要な用 (3) 前年同様ハロン消火設備の新設にあたっては
、消防庁通知に基づいたクリティカルユース
途(クリティカルユース)に限定して行う。
であるか否かの判断を行い、疑義が生じた場
合には事前にネットワーク又は所轄消防署
と協議を行った上で決定しており、適切な処
理が行われている。
平成23年度の設置実績は、資料№4‐2「ハ
ロン供給ガス実績・回収ガス集計」のとおり
である。
- 1 -
自主行動計画
(4) 既存のハロン消火設備の適切な維持管理及び
ハロンの補充について
実 施 状 況
(4) 平成21年3月31日付けで消防庁より通知
(消防予第132号「消防用設備等の試験基準
及び点検要領の一部改正について」)が発出
されたことにより、貯蔵容器容器弁の劣化防
止が図られ、容器弁の経年劣化や腐食による
誤放出が低減されるものと期待される。
なお、「容器弁の安全性」点検の実施状況は
工業会会員各社でデータベースを構築し管
理することとなっている。
平成23年度の補充実績は、資料№4‐2「ハ
ロン供給ガス実績・回収ガス集計」のとおり
である。
補充については、平成23年度の放出後処置
報告書(資料№4-3)にあるように、約半分
の量が震災及び台風等による補充となって
おり、火災による放出は約20%となってい
る。
(5) 既存のハロン消火設備が撤去・廃棄される場合 (5) ハロンの引き取りを求められた時に引き取り
業者が不明であるときは、ネットワークのデ
には、ハロンを確実に回収する。
ータベースを参考に引き取り業者の紹介、斡
旋を行っている。
平成23年度の回収量は、約165トン(内
ハロン1301は159トン)であり、前年
度とほぼ同量である。
また、撤去された消火剤が産業廃棄物処理業
者等に保管されているという事例は報告さ
れておらず、ほぼ確実に回収されている。
(6) 新設又は補充に供するハロンは、品質を確認の (6) 供給するハロンの品質の確認については前
上、供給用として適切に保管する。
年度報告のとおりで、ハロン1301の在庫
量は資料№4‐4「ハロン供給・回収・在庫量
」、また、備蓄可能量は資料№4‐5「ハロン
1301備蓄可能量」のとおりである。
また、近年、「容器弁の安全性」点検に伴い
ハロンの再生量が増加したことで、再生時の
ロス(3~5%)が集計に大きな誤差として
表れてきている。この点を改善すべく、消防
環境ネットワークにて、回収・再充てんプラ
ントの再生率を99%以上(再生時のロス1
%未満)とする品質基準が新たに設けられ、
ハロン再生事業者に対して通知された。(資
料№4-6)。
工業会と消防環境ネットワークでは、再生事
業者から実行再生率を提出させ、監視するこ
とにしている。平成25年春以降の改善が期
待される。
- 2 -
自主行動計画
実 施 状 況
(7) 再利用が見込めず余剰となったハロンは、技術 (7) ハロン1301については、前(3)及び(5)に
記述したように、回収量が供給量を大幅に上
的、制度的及び経済的な整備を図りつつ、適切
回る状況である。これは前(4)で述べた「容
な処理を行う。
器弁の安全性」点検に際し、これを円滑に推
進するためのある意味「備え」とも言われて
いる。したがって、再利用が見込めず余剰と
なったハロンが増加しているものではない。
また、ハロン1301は既存設備の必要量が
満たされるまでは破壊すべきでないとの国
際合意もあり、当分の期間は消火剤の処理
(破壊)は実施されない状況が継続するもの
と予想される。
(8) 防火安全を確保しつつ、環境保全の観点から
ハロン代替に向けた有効な取組を促進する。
(8) 前年度に引き続き、消防法令に取り入れられ
たハロン代替消火設備については、客先に提
案して積極的に採用をお願いしている。
平成22年8月に消防法施行規則の一部改
正があり、環境に配慮した新たなハロン代替
消火剤が盛り込まれた。ようやく市場に認知
され始めたところであり、今後の更なる普及
に期待したい。
(9) 関係者の理解と協力を得るため、ハロンの回収 (9) 前述(2)で記述したパンフレット類の見直し
や配布をはじめ、ネットワークと連携して情
及び再利用等の取組に関する情報提供を進め
報提供ほかの広報活動を推進しており、ホー
る。
ムページにおいても前回のフォローアップ
評価委員会の評価結果をもとに、適切な管理
が実施されるよう、内容が更新されている。
(10) 本自主行動計画に基づく取組の実施状況につ (10)前年度のフォローアップは平成23年9月
に実施した。
いては、毎年度フォローアップしていくとと
今年度で7回目のフォローアップとなる。
もに、技術革新、社会・経済等の情勢変化に
今後とも需給バランスを保ちながら、地球環
応じて計画の見直しを図る。
境への影響を最小限に抑えることが可能で
あると考えられる。
- 3 -
3 まとめ
自主行動計画は、概ね順調に実施されているものと思料される。
平成21年3月31日付けで点検要領の一部が改正され、容器弁の経年劣化や腐食による誤
放出・不作動を防止すべく「容器弁の安全性点検」が加えられた。既存のハロン消火設備を適
切に維持管理するためには、「容器弁の安全性点検」を確実に推進することが肝要である。ま
た、「容器弁の安全性点検」に係わるデータベースをもとにネットワークにおけるデータベー
スの精度向上を図ることも期待される。
平成17年4月にクリティカルユースに機械式駐車場の一部が加えられ、これによって平成
17年度以降に原設計として組み入れられたハロン消火設備が、18年度及び19年度に具体
化してきたことから、供給量が回収量を上回る現象が続いた。しかしその後の経済状況を映し
出し、現在では供給量が減少する傾向にある。
「ハロン1301供給・回収・在庫量」のデータにおいて、当該年度の供給量と回収量の差
によって計算される当該年度末の在庫量が、前年に比べて相当量少なくなっている状況がこの
2年続いている。これは、容器弁の安全性点検により消火剤の貯蔵容器からの抜き取り、再生、
再充てんが行われており、この一連の作業工程における再生率が3~5%のロスを発生させて
いることが大きな要因となっていると考えられる。これについては、今般、消防環境ネットワ
ークより、回収・再充てんプラントの再生率を99%以上とする品質基準が新たに設けられ、
平成25年末までの稼働が指示されている。既に各充てん事業者のプラントにおいては、再生
率改善のためのプラント新設や改修工事が予定され、実施段階に入っているところもあり、平
成25年春以降の改善が期待される。
地球環境の保全という観点から考えれば、ハロン消火剤のリサイクルを効率的に進めていく
ことが最も有効な環境保護の施策である。従って、今後ともクリティカルユースへの適切な供
給を促進し、併せて回収作業を円滑に進めていくことが重要である。
以
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上
ハロンの適切な管理のための自主行動計画
平成24年度フォローアップ評価報告書
平成24年9月
ハロンの適切な管理のための自主行動計画評価委員会
「ハロンの適切な管理のための自主行動計画」フォローアップ評価報告書
1.ハロンの適切な管理のための自主行動計画について
社団法人日本消火装置工業会<現:一般社団法人日本消火装置工業会>(以下「工業会」
という。)が策定した「ハロンの適切な管理のための自主行動計画(以下「行動計画」と
いう。)」は、国家ハロンマネジメント戦略に基づいて工業会としての自主的な取組を定
めている。
前年同様、ハロンのデータベース管理や回収・再利用の啓発に工業会として取り組んで
おり、また、特定非営利活動法人消防環境ネットワーク(以下「ネットワーク」という。)
との連携も前年同様明確になっているので、総体的に的確なものであると評価される。
2.自主行動計画評価委員会設置要綱第2条に基づく評価事項について
今回は平成23年度に続く第7回の評価であり、概ね順調に実施されているとした工業
会の報告は妥当なものであると認められる。従って、計画自体の見直し等を要する問題は
前回と同様にないものと思料される。行動計画の具体的な取組の状況については、“具体
的な取組(自主行動計画)”の項目に従って次のような評価を行った。
(1)ハロンデータベースの信頼性の確保
平成6年3月1日からデータベースの管理、ハロンの回収・供給の調整等に係る業務
を開始しているので、同日以後のデータベースは回収等の報告に基づいてリアルタイム
で更新されている。
また、ハロン供給ガス実績・回収ガス集計に記されている「補充ガス」は、火災等
で放出された場合の補てん用である。ネットワークに提出する「放出後処理報告書」に
は放出要因(火災、点検など)を記載するようになっており、平成23年度は、東日本
大震災に起因するものが50%近くを占めている。ハロンの放出要因について、より正
確で詳細な届け出を要請しているところであり、データベースのさらなる信頼性向上が
期待されるところである。
(2)不用意なハロンの放出防止
啓発用リーフレット、注意書きシール、協力依頼パンフレットを関係先及び関係機関
等に配布。更にネットワークのホームページにも「不要となったガス系消火剤の回収に
ご協力下さい」を掲示しており、大きな効果が期待される。
(3)ハロン消火設備の新設用途
前年同様、クリティカルユースへの新設用途についての考え方がホームページ等を通
じ広く浸透しており、人への安全性が優先される部分等への需要が考えられる。一時期、
回収量を上回る需要の増加により供給が逼迫する状況が続いたが、中期、長期の視点に
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立った上での新設用途のクリティカルユースとしての適切な判断が求められる。
(4)適切な維持管理と補充の継続
工業会の自主的な行動として前年度までに纏め上げた「点検要領」の見直しに関し、
平成21年3月に消防庁より通知が発出された。これにより、貯蔵容器容器弁等の劣化
防止が図られ、むやみな放出が低減されることにより、適切な維持管理の向上が期待
される。
また、放出事故の再発防止を目的として「放出後処理報告書」において、放出の原
因を報告した上で当該設備への補充を行うようにしている。
(5)廃棄設備からの確実な回収
消火設備事業者、解体業者等へは前年同様リーフレット等が配布され、また、ホーム
ページを通じ広く浸透を図っており、周知が確実に実を結んできていると思料する。
また、撤去された消火剤が産廃棄物処理業業者等に保管されているという事例は報
告されておらず、ほぼ確実に回収されていると考える。
(6)供給ハロンの品質確認と保管
品質の確認については前年報告のとおりと思われる。
回収ハロンの保管については、事業者ごとに需給見通しを立て、これに対応した保管
量の調整と保管場所の確保が図られているものと思料する。
なお、「ハロン 1301・供給・回収・在庫量」のデータにおいて、在庫量は供給量と回
収量の差とは連動していない、と注書きされている。在庫量は会員企業からのアンケー
ト調査値であって、各企業における集計上の理由により差が生じると考えられるが、集
計における工夫を行う必要がある。加えて、従来3~5%程度であった再生時のロス分
を少なくする取り組みとして、ハロン再生事業者に対して再生率99%以上(再生時の
ロス1%未満)とする新たな品質基準が通知されたことで、従来に比べて再生時のロス
分が少なくなることが予想され平成25年以降は、さらに、精度の高いデータが得られ
ることが期待される。
(7)ハロンの適正な処理
回収量が供給量を大幅に上回る状況であるが、これは「容器弁の安全性」点検に際し
円滑に推進するためのものであり、再利用が見込めず余剰となったハロンが増加してい
るものではない。
ハロン 1301 は、当分の期間は消火剤の処理(破壊)は実施されない状況が継続するも
のと予想される。
(8)ハロン代替消火設備への取組
環境保全については、ますます注目されていることを踏まえ、業界、行政を含めてハ
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ロン代替消火設備(新製品)の取り組み推進が望まれる。なお、平成22年8月26日
付けで消防法施行規則の一部改正があり、環境に配慮した新たなハロン代替消火剤が盛
り込まれた。今後に期待したい。
(9)ハロンの回収、再利用等の取組に関する情報提供
ホームページ、リーフレット、パンフレット等を駆使し、工業会、ネットワークの連
携のもとに啓発活動に努めている。
3. まとめ
ハロンの適切な管理のための自主行動計画は、国家ハロンマネジメント戦略への具体的
な取組として策定されており、前年度同様実施状況は概ねこれに沿ったものになっている
ものと認められる。
今回の評価における主要事項は、次のようにまとめられる。
(1)データベースの信頼性
データベースは、回収等の報告に基づいてリアルタイムで更新されており、信頼性向
上に努力されていると評価できる。
ハロンの放出要因の調査が進むことによって、データベースの更なる信頼性向上を
期待したい。
(2)自主行動計画の具体的な取組の状況
前年同様、各項目については概ね順調に実施されている。特にネットワークのホーム
ぺージにより、広く世の中に情報提供ができ、消防設備業者、解体業者以外においても
ハロンの回収、再利用に対する意識高揚の効果が期待される。
(3)ハロンの需給見通し
平成20年度及び平成21年度は、回収量と供給量の均衡が比較的に取れた状況にあ
った。しかしその後の経済状況を反映し、現在では供給量が減少する傾向にある。容器
弁の安全性点検を実施する上で必要となる代替容器の確保のためであったと考えられる
が、概ねピークを過ぎたと考えられることから、新規の供給が回復することが予想され
ている。また、回収・再充てんの際の再生率の向上が企図されており、再生で失われる
消火剤の量を大幅に削減できる見込みである。
今後とも需要と供給のバランスに留意し、
適切な回収と保管、クリティカルユースの的確な判断がより一層重要と考える。
以
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