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Ⅳ 地域住民と関係者との連携した障がい者の支援体制の確保 (地域

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Ⅳ 地域住民と関係者との連携した障がい者の支援体制の確保 (地域
Ⅳ
地域住民と関係者との連携した障がい者の支援体制の確保
(地域コミュニティづくりの推進)
1
障がい及び障がい者に対する地域住民の理解を促進する取組みが行われている。
①
高齢者、障がい者、児童などが自由に交流できる「場」を確保するな
ど、住民と障がい者が日常的に接する機会をつくっている。
② 学校教育の場、講演会、学習会、対話集会、広報誌など、あらゆる機会
を活用して、障がいや障がい者についての住民理解が促進されるような機
会をつくっている。
○
○
暮らしやすい地域づくりのため、障がいや障がい者に対する住民の理解の
促進を図ることは、欠かすことのできない重要な取組みです。障がい者と住
民の交流、理解を深める交流の拠点づくり、効果的な情報の管理・発信等、
地域でいろいろな取組みが行われています。
伊達市の取組
・人口の約1%に当たる知的障がい者が地域で暮らしている伊達市では、長年、障がい
者の福祉に携わってきた社会福祉法人北海道社会福祉事業団の太陽の園の元総合施設
長は、たくさんの障がい者が住めるようになった理由について、以下のように述べて
います。
・「 本人が、頑張って、頑張って障がいを克服できたとか、支援者が寝ないで努力した
というのではありません。伊達市民の方々が、障がいのある人たちと日々触れ合う中
で差別意識や偏見が薄らいでいった、あまり障がいを意識することなく付き合えるよ
うになった、障がいのある人も町に住んで当たり前という雰囲気が生まれた、つま
り、障がいのある人たちの関わりが上手になったからです。」
○
当別町の取組
・平成19年度から先進的事業支援特例交付金を活用し、高齢者、障がい者、子ども、
学生など、あらゆる地域住民が集い、交流を深める拠点づくりを進めてきました。
・そこでは、例えば、障がい者がカフェの店員として就労し、高齢者が障がい者の就労
をサポートしたり、施設内の駄菓子屋の店番をしながら子ども達の放課後を見守るな
ど 、「住民同士がつながり相互に理解し合い、共に生きていることが実感できる地域
づくり」を目指した取組みが行われています。
【取組のポイント】
○ 当別町の取組みでは、福祉を「相互支援」として位置づけ、参加する高齢
者も障がい者も、支援する人、支援される人という固定した関係ではなく、
誰もが「あるときは支援され、あるときは支援する。」という、分け隔てな
- 63 -
く、全ての人が相互支援に参加できる環境づくりを大切にしながら進められ
ています。こうした「相互支援」の関係が、交流を生き生きさせ、長続きさ
せる上で重要な役割を果しています 。「誰かの役に立っている 。」、「必要と
されている。」という意識は、人のやる気を引き出し、楽しくさせてくれる
ものです。みんなが楽しく、生き生きするような取組みとすることが大切で
す。
○
障がいに対する理解を促進するためには、幼児期からその年代に即した方
法で、障がいや人権について学ぶことが有効です。普及啓発のための市町村
の取組み例としては、学校教育の場であれば、障がい者から障がいの特性や
障がい者との接し方などについて話しを聞いたり、DVDを用い学習をするな
どの方法があります。また、一般向けとしては、広報誌やリーフレットによ
る啓発だけでなく、講演会や学習会、対話集会の開催、企業や商店が職員を
対象に実施する接遇や理解促進のための取組みを支援することなどが考えら
れます。
【事例の紹介】
○タイトル 「地域サロンPoco a Poco(ポコアポコ)の活動」
○実施主体 だて地域生活支援センター家族の会、
社会福祉法人タラプ、ミネルバ病院
○協力機関
伊達市障がい者総合相談支援センター
相談室あい、だて地域生活支援センター、
社会福祉法人タラプⅰ・box、伊達赤十字病院
【注目ポイント】
・関係機関が協力して、障がいのある方が集える場の提供と運営を行っている。
【背景・きっかけ】
・個人経営の医院だった空き物件の福祉的な活用について自立支援協議会の精神部会で検討
した結果、サロンとして利用する案が採用され、家賃、当番など関係機関で役割を分担し
て運営することになった。
【取組の内容】
・障がいのある方が仲間と共に楽しく、いきいきと地域の中で暮らしていけるように仲間づ
くりや、誰もが自由に使える場所として開設した。
・誰かと話したくなった時、パソコンを使って調べ物をしたい時、友達の交流の場として、
サークル活動等の拠点として、会議や打合せの場所として、勉強会や研修の場として、イ
ベント会場として様々な方法で活用されている。
・平日の夜間や土・日曜日は午後の時間帯に開設し、関係機関が協力しスタッフ1名を配置
しサポートしている。
- 64 -
【事例の紹介】
○タイトル 「おくしりささえあい いきいき福祉フェア~みんなで福祉にふれる2日間」
○実施主体
奥尻町
○協力機関
地域づくりコーディネーター、発達障害者支援センター、檜山地域づくり委
員会、その他福祉施設や作業所等
【注目ポイント】
・役場の担当課全体で、それぞれができることを横断的に取組んでいる。
・小学生が授業の一環で参加し疑似体験をしたり、高校生が妊婦体験・子育て体験をするこ
とを通して、楽しみながら気軽に福祉に触れる機会となっている。
・町外の施設や関係団体等にも参加を呼びかけている。
【背景・きっかけ】
・個別の相談支援を目的に地域づくりコーディネーターによる巡回相談を開催していたが、
地域柄『障がい』の看板が掲げられている場所への抵抗がある住民が多いため、イベント
を同時開催することにより、本人・家族が相談に出向きやすくすることを目的として始
まった。
【取組の内容】
・福祉をより身近なものとして考えてもらうよう、住民が福祉に気軽に触れる機会として、
様々な催しを実施し、住民の福祉に対する意識と理解の向上及び町の福祉の充実を図るこ
とを目的として実施している。
・一例として、発達障害者支援センターと発達障がい当事者による住民向け講演会、発達支
援センターを利用する保護者の懇談会、障がい当事者のランチ交流会をはじめ、ホールに
て福祉用具の展示や子育て・高齢者・障がい者疑似体験等を開催した。
車いす疑似体験
視力障がいの疑似体験
アイマスクで折り紙づくり
子ども発達支援センター
の紹介
- 65 -
【事例の紹介】
○タイトル
「みんなの学びの場(あたらしい芽)」
○実施主体
「あたらしい芽」有志
○協力機関
更別村保育所、診療所、小中高校、更別村社会福祉協議会、福祉サービス事
業所、更別村保健福祉課など
【注目ポイント】
・年代や分野を越えた有機的な連携が続いており、地域力の底上げとなっている。
【背景・きっかけ】
・村内に不登校の子がおり、その子をどう支えていこうかと保育所と診療所のスタッフが子
育て機関に声をかけたことから始まり、現在もその輪を広げている。
【取組の内容】
・更別村の子どもたちのために、保育・幼稚園・小学校・中学校・高等学校・保健・福祉・
医療の連携と、子どもの共通理解を深めようと開催されている勉強会である。
・子どもたちへの関わりから保育所と診療所のスタッフが声をかけ始まった会だが、最近で
は子どもたちの将来を見据え、地域の様々な機関、人とつながる場となっている。
【事例の紹介】
○タイトル
「ひきこもり予防を目的とした活動」
○実施主体
白老町
○協力機関
白老町精神障害者家族会はまなす会
【注目ポイント】
・町が地域の精神障害者家族会の協力を得て、引きこもりで苦しんでいる人や家族の気持ち
を十分に受け止めることや気軽に集える場づくりを行った。
【背景・きっかけ】
・「引きこもり」の状態で苦しんでいる人を抱える家族の相談が増えてきた。
・地域自立支援協議会で「引きこもりの人が安心してくつろげる憩いの場があったら良
い。」という声が出たことから、協議し集う場ができた。
【取組の内容】
・平成20年度に事業を施行的に開始し、精神障害者家族会に業務を委託し実施している。
・事業内容は、「共感・尊敬・傾聴のある安心できる場の提供」を目的に、町保健福祉センター
を会場に月2回開催し、対象者は障がい手帳の有無を問わないこととしている。
・運営は、家族会メンバーが中心となり、参加者に対しては、聞き手に徹している。
・相手を受容することから始まるため、参加者が「また来たい。」と開設当初より利用する者
が増加している。
・全町的に周知し、
「行ってみようか。」いう心の後押しができる取組を継続していく。
- 66 -
【事例の紹介】
○タイトル
「居場所づくりを通しての社会参加+地域住民への啓発」
○実施主体
中標津町ボランティア団体
○協力機関
中標津町、保護者、地域住民、町内の障がい団体、社会福祉協議会、
根室圏域障がい者総合相談支援センターあくせす根室
他
【注目ポイント】
・ボランティア団体が行っている活動のため、自然な形で地域の方々が集まり、居場所と
なっている。
【背景・きっかけ】
・当事者の親は 、「地域の中で共に育ち、遊び、学び、生活し、当たり前に幸せになってほ
しい。」と思っていたが、地域の居場所については不安がいっぱいであった。
また 、「地域の多くの人に障がいのことを知ってほしい 。」「自然にふれ合える居場所がほ
しい。」「このような場は、全ての方々にとっても暖かく豊かな日々を過ごせるのではない
か。」という想いを持っていた。
・そのような時に、町の総合福祉センター内に空きスペースがあり、利用することができる
ようになったことから、出来ることからやってみようと町内の関係機関が連携し行動を開
始する。
【取組の内容】
・平成23年4月から、町中心部に建てられた共生型交流センターに拠点を移し、気軽に立ち
寄れる居場所機能を確保している。
・保護者が中心となり、障がいのあるなしや年齢にかかわらない地域交流の場として、喫茶
サロンをボランティアのみで運営している。
・広くボランティアを呼び掛け、たくさんの地域住民が手伝いをして活動を支えてくれる。
障がい福祉に関係ない方や一般主婦も参加してくれることから障がいへの理解を促進して
いる面もある。就労ができない方や通所系の事業所では合わない方もボランティアとして
参加でき地域住民や関係機関と自然な交流を持っている。一般就労後もボランティアとし
て参加し、居場所として活用している方もいる。
・多くの関係機関、保護者、当事者のインフォーマルな情報交換の場ともなっている。
・年に数回行われるイベント(そば打ちや交流会)にも、高齢者から児童まで「集まり」、
「つながり」、「関わり」を持つことができる自然な連携を実現している。
絵手紙づくりの様子
- 67 -
2
身近な協力者を増やし、障がい者の地域生活を見守る協力体制を確保するとと
もに、障がい者が主体的に地域づくりに参画する取組が行われている。
①
町内会活動、老人クラブ、文化活動サークル等、地域住民の様々な自主
的な活動への参加や、障がい当事者による自主的な活動への参加により、
相互交流が図られ、また、こうした場などで障がい者が自ら進んで活躍で
きる環境を整備するなど、地域のコミュニティの形成や活用に積極的な支
援を行っている。
② 障がい者の地域での生活を見守り支援するため、医療機関、障害福祉
サービス事業所、雇用先などのほか、コンビニ、新聞配達所等、民間企業
との協力体制や警察、消防などとの緊急時の連携体制が構築できている。
○
町内会活動、老人クラブ、文化活動サークル等、地域住民の様々な自主的
な活動において、同じ地域に暮らす住民として、障がい者が一緒に参加し、
活躍できる役割や出番があり、相互に交流を図ることは、障がい者に対する
理解の促進や互助意識を育むことにつながり、地域で暮らす障がい者の身近
な理解者や協力者を増やす大切な取組みとなります。
○
障がい者自らが、障がい当事者による自主的な活動に参加することで、当
事者による相互交流の輪が大きく広がります。こうした活動への支援や周知、
紹介も大切な取組です。
○
障がい者の生活に密接に関わっている機関や普段出かけて行く機会の多い
お店、定期的に障がい者のお宅を訪問する事業者や新聞配達所などとの協力
体制は、見守りが必要な障がい者の生活上の変化や支援の必要性の把握など
にも役立ち、相談支援事業所にとっても大きな助けとなります。
○
また、災害や事故など、緊急事態が発生した時には、警察や消防の協力を
得ることが欠かせません。そのような事態も想定し、普段から地域の連携体
制を確保しておくことが重要です。
- 68 -
【事例の紹介】
「当事者団体の活動」
○タイトル 「DPI北海道ブロック会議・障害者権利擁護センター」
○協力機関
PASネット
【注目ポイント】
・ピアカウンセラーが相談に応じる。
・様々な手段により相談ができる。
【取組の内容】
・平成18年12月、国連で障害者権利条約が採択された。DPI北海道ブロック会議でも関
心が高まり、様々な機会に勉強会を重ねてきた。日本でも署名はしたものの、国内法の
整備が不可欠なため、批准に向け内閣府において議論している。
・平成22年6月、DPI北海道ブロック会議主催の権利擁護セミナー[講師:上田氏(PAS
ネット)]を受け、北海道でもやりたいという思いから、障害者自立生活センター・IL-is
mの花田代表を中心にDPI北海道ブロック会議所属の有識者で障害者権利擁護センター
プロジェクトチームを結成、毎月障害者権利擁護センター設置に向け協議を行なった。
・平成24年5月より、身体障がい(4団体・6名 )、精神障がい(1団体・1名 )、相談支
援(2団体・2名)計8名で障害者権利擁護センターを設置・組織している。
・センターでは、あらゆる方向からの相談を受け付け、障がい当事者の視点に立ち相談に
応じている。現在は権利擁護センターのPR活動を実施し、学習会等のイベント時に虐待
防止ワークショップのパンフレットを配布している。また、施設訪問を通じて入所者に
手渡し、入所者との交流をはかる。
○タイトル 「DPI北海道ブロック会議・障害者権利擁護センター・定例会 」
○協力機関 IL-ism、CILさっぽろ、BAKU、すみれ会、歩笑夢、全国重度障害者相談支援協会
【注目ポイント】
・定例会は、毎月開催している。事例検討は、毎回実施し、個人情報保護を徹底している。
【取組の内容から】
・定例会では、組織運営や実際に権利擁護センターに寄せられた相談についての対応方針
等について協議をする。またエバリュエーションを実施し、事例の検証をしている。
また、相談がなくても、相談員のスキルアップを目的に各団体で経験をした失敗や凝り
固まっている事例などを持ち寄り、それぞれが持っている知識、経験を集結させ参加者
全員で協議し解決策を考えている。
研修会の様子
連絡先
TEL・FAX
011-598-7233
- 69 -
【事例の紹介】
「当事者団体の活動」
○タイトル
「ピアカウンセリング講座」
○実施主体
札幌みんなの会、わかば会、トゥモロウ編集委員会、旭川働く仲間の会
○協力機関
北海道、北海道手をつなぐ育成会
【取組の内容】
・道内の知的障がいのある本人の会が研修会を実施し、グループカウンセリング、ピアカウ
ンセリングを実施している。
・この数年で、入所施設の訪問で利用者とピアカウンセリングの学習やグループカウンセリ
ングを行い交流活動を続けている。
・育成会主催の全道大会の分科会の運営もピアカウンセリングの手法で実施している。
・このグループは、独自なピアカウンセリングの研修も実施し交流を深めている。
ピアカウンセリング講座の様子
○タイトル
「会の活動の様子」
○実施主体
札幌みんなの会、札幌市内・近郊の知的障がいのある本人会
【注目ポイント】
・本人活動の他、行政の委員会等に委員として参加している。
【取組の内容】
・21年前に発足し、レクレーション、学習会、忘年会、新年会の他、学習会、ピアカウンセ
リング等を実施している。人権セミナー、育成会全道大会本人大会の実行委員会に参加し
ている。
・また、北海道、札幌市等の各種委員会、協議会等に参加している。
・事務局長は現在、国の障害者政策委員会委員を務めている。
札幌みんなの会20周年記念
交流会・講演会の様子
- 70 -
○タイトル
○実施主体
○協力機関
「人権セミナー」
人権セミナー実行委員会
札幌市社会福祉協議会、協力員として障害福祉事業所職員、養護学校教員等
【取組の内容】
・21年前に道社会福祉協議会のノーマライゼーション研究センターの研究助成を受けて知
的障がい者の権利擁護の実態調査を実施した。
あまりにもひどい実態が報告され以後、知的障がい者の人権セミナーが始まり、平成24
年2月までに21回実施した。
・スタート時は、行政関係者、施設関係者、親の会、学校の教員など関係者で実行委員会を
組織して実施していたが、第3回目から知的障がいのある当事者も実行委員会に加わり、
その後は当事者が主体になって実行委員会を組織して当事者主体の人権セミナーを開催し
ている。
・今は、障がい名をはずし、誰でも参加できる人権セミナーとなり全道各地からの参加がある。
人権セミナーの助言
人権セミナー分科会の様子
人権セミナー全体会の様子
- 71 -
【事例の紹介】
○タイトル
○実施主体
「見守り通報システム(暮らしのネットワーク)」
南富良野町
見守り通報システム「暮らしのネットワーク」
障がい者や要援護高齢者を支援するためのきっかけとして 、「通報」が大きな役割をもって
いる。自ら助けを求めてくるということは非常に少なく、何か問題が生じた場合、生活サポー
トセンターに通報が入り、支援が開始されることが多い。
問題を発見した人が、どこの誰に連絡をすべきか分かっていることが、大切なことであり、
その状況に応じた対応先にいち早く連絡が入ることが、早期に適切な支援につながることにな
る。
地域に住む障がい者や高齢者が普段生活している中で、生活状態の変化や閉じこもりなどの
状況を把握するのは、近隣の地域住民や当事者の生活に関わりのある関係機関から情報が伝達
されるしくみがあると、要援護者を支える中核の機関として役割を持つ、生活サポートセン
ターとしての機能を十分発揮することができるものと考えられる。
そこで本町は、日常生活上に関わりのある人達、例えばガスや電気、水道事業者、新聞販売
店、宅急便などから通報してもらう「暮らしのネットワーク」を構築して、通報する側と受け
る側の連携と信頼関係を築き、料金の支払い状況や家庭内における生活状況の変化などをリア
ルタイムに情報が流れ込むシステムを確立している。
【ネットワークの概要】
暮らしのネットワーク
宅急便
修繕会社
ガス会社
通報・情報提供
電気会社
水道会社
商 店
ガ ソリンスタンド
銀 行
- 72 -
生活サポート
センター
3
災害時における障がい者の支援体制が確保されている。
①
平常時から、災害時要援護者の把握に努めるとともに、地域住民が参加
し実施する防災訓練等において、住民の自助力向上のための取組みや災害
時要援護者への対応方法等の周知を図っている。
② 平常時から、地域住民と災害時要援護者とのコミュニケーションを図
り、地域住民同士の支援体制の整備、連絡・情報伝達や避難所における支
援、各種関係者・団体との協力体制の確立、さらには、災害時要援護者の
ための福祉避難所として社会福祉施設等の指定などの取組みを行ってい
る。
○
「非常時は、普段以上のことはできない。しかし、普段できていることは、
非常時にも活かせる」と言われるように、普段から、災害時を想定した十分
な取組みを進めることが重要です。
○
北海道では、平成18年3月に「災害時における高齢者・障がい者等に対
する支援マニュアル」を、平成20年6月に「福祉避難所設置・運営に関す
るガイドライン」が国から示されたことから、市町村において災害時要援護
者支援対策を進める際に活用しやすいものにするため、平成23年8月に
「災害時要援護者支援対策の手引き」を策定しました。こうしたマニュアル
や手引きを基に、平常時から災害時における支援体制を整備しておくことが
大変重要です。
【平常時における取組】
1 要援護者情報の共有等
○ 市町村において、「災害時要援護者避難支援プラン」の策定や支援体制の
整備を進めるためには、平常時からの要援護者情報の収集・共有が必要です。
○
内閣府が平成18年3月に取りまとめた「災害時要援護者の避難支援ガイ
ドライン」においては、災害時要援護者情報の福祉部局と防災部局の共有化
を進める方法として、関係機関共有方式、手上げ方式、同意方式の3つにつ
いて、次のとおり規定しています。
①
関係機関共有方式
・地方公共団体の個人情報保護条例において保有個人情報の目的外利用・第
三者提供が可能とされている規定を活用して、要援護者本人から同意を得
ずに、平常時から福祉関係部局等が保有する要援護者情報等を防災関係部
局、自主防災組織、民生委員などの関係機関等の間で共有する方式。
- 73 -
<個人情報保護条例において目的外利用・第三者提供が可能とされている規定例>
・ 「本人以外の者に保有個人情報を提供することが明らかに本人の利益になる
と認められるとき」
・ 「実施機関が所掌事務の遂行に必要な範囲内で記録情報を内部で利用し、か
つ、当該記録情報を利用することについて相当な理由があるとき」
・ 「保有個人情報を提供することについて個人情報保護審議会の意見を聴いて
特別の理由があると認められるとき」 等
②
手上げ方式
・要援護者登録制度の創設について広報・周知した後、自ら要援護者名簿等へ
の登録を希望した者の情報を収集する方式。
・実施主体の負担は少ないものの、要援護者への直接的な働きかけをせず、要
援護者本人の自発的な意思に委ねているため、支援を要することを自覚して
いない者や障がい等を有することを他人に知られたくない者も多く、十分に
情報収集できていない傾向にある。
③
同意方式
・防災関係部局、福祉関係部局、自主防災組織、福祉関係者等が要援護者本人
に直接的に働きかけ、必要な情報を収集する方式。
・要援護者一人ひとりと直接接することから、必要な支援内容等をきめ細かく
把握できる反面、対象者が多いため、効率的かつ迅速な情報収集が困難であ
る。このため、福祉関係部局や民生委員等が要援護者情報の収集共有等を福
祉施策の一環として位置付け、その保有情報を基に要援護者と接すること。
または、関係機関共有方式との組合せを積極的に活用することが望ましい。
<災害時要援護者の避難支援ガイドラインにおける国の考え>
「国の行政機関に適用される『行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律』で
は、本人以外の者に提供することが明らかに本人の利益になるときに、保有個人情報の
目的外利用・提供ができる場合があることを参考にしつつ(第8条第2項第4号・参考
条文を参照)
、積極的に取り組むこと。
その際、避難支援に直接携わる民生委員、自主防災組織等の第三者への要援護者情報
の提供については、情報提供の際、条例や契約、誓約書の提出等を活用して要援護者情
報を受ける側の守秘義務を確保すること。
個人情報の取扱制度への信頼も高まり、要援護者情報の共有も進んでいくことに留意
すること 。」として、積極的に関係機関共有方式についても検討するよう呼びかけてい
る。市町村は、地域の実情を踏まえ、情報把握の方法等について検討し取組を進める。
- 74 -
○
消防庁が平成24年4月1日現在で、全国1、742市町村を対象に実施し
た、災害時要援護者の避難支援対策への取組み状況の調査結果、
・情報の収集・共有の方式を決めている市町村
・そのうち、同意方式と手上げ方式を併用
2
1,684市町村
422市町村(25.1%)
手上げ方式
269市町村(16.0%)
3方式を併用している市町村
254市町村(15.1%)
要援護者の避難支援計画(避難支援プラン)の具体化
○ 「避難支援プラン」は、市町村の災害時要援護者支援に係る「全体計画(全体
的な考え方)」と要援護者一人一人に対する「個別計画(名簿・台帳)」との構
成となっています。
「災害時要援護者の避難支援プラン」を策定し、災害時要援護者の避難支援対
策への取組を促進していくこととしております。
○
消防庁が平成24年4月1日現在で、全国1,742市区町村を対象に調査
した、災害時要援護者の避難支援対策への取組状況の結果は、
・ 全体計画を策定済みの市町村
・
〃
1,455市町村
策定中の市町村
249市町村
・ 災害時要援護者名簿を整備中の市町村
1,684市町村
・ 個別計画を策定中の市町村
1,527市町村
*国は「災害時要援護者の避難支援ガイドライン」(平成18年3月改訂)を参考に、
市町村において災害時要援護者の避難支援の取組方針等(全体計画、災害時要援護者
名簿、個別計画)が策定・整備されるよう促進している。
3
福祉避難所の指定などの準備
福祉避難所とは
身体等の状況が特別養護老人ホーム又は老人短期入所までには至らないが、一般的な
避難所での避難生活が困難な災害時要援護者のための特別な配慮がなされた避難所
○ 福祉避難所の指定等の準備としては、以下の項目となっています。
① 福祉避難所の対象となる者の把握
② 福祉避難所の指定
③ 福祉避難所の周知
④ 福祉避難所の施設整備
⑤ 福祉避難所に係る物資・器財、人材、移送手段の確保
⑥ 福祉避難所と社会福祉施設、医療機関等との連携
⑦ 運営体制の事前整備
⑧ 福祉避難所の運営訓練等の実施
- 75 -
4
平常時から地域住民などとの支援体制の準備
○ 平常時から災害時要援護者の状況把握、地域住民同士による支援体制づく
りを進める必要性とともに、災害時要援護者と地域住民とのコミュニケー
ションを密にし、防災意識や災害時の支援意識の醸成を図ることの重要です。
○
地域コミュニティと防災意識の醸成
災害発生直後の災害時要援護者への地域住民の支援については、平常時に
おける近隣との関係の差異が初期救援の明暗を分けると言われており、日頃
から災害時要援護者と地域住民とのコミニュケーションを密にし、災害時に
おける支援意識の醸成を図ることが重要です。また、市町村は、災害時要援
護者本人や家族、社会福祉施設等の管理者等に対し、防災知識の普及・啓発
に努めるとともに、防災訓練への積極的な参加を求め、災害時要援護者対策
を重視した防災訓練を実施することが必要です。
①
地域住民等に対する周知
・地域における防災対応力の向上を図るため、地域住民に対し、防災に関
する知識の普及・啓発を行うとともに、災害時要援護者への対応方法な
どについても周知します。
・さらに、日頃から災害時要援護者とのコミュニケーションを図り、室内
の家具の固定などが自力でできない災害時要援護者に対して、家具の点
検、固定を助力するなど互助意識を育み、地域住民同士の支援体制を整
備します。
② 社会福祉施設等との連携
・社会福祉施設等と地域住民とが、災害時において連携を図ることができ
るよう、地域の防災訓練に施設の職員等が参加して、災害時要援護者の
応急救助や介護方法の訓練を行ったり、施設の防災訓練に地域住民が参
加して、入所者の避難誘導を手伝うなど、平常時から連携を図り、相互
援助の体制整備を図ることが効果的です。
③ 災害時要援護者対策を含めた防災訓練
・災害時要援護者の避難行動等の特徴に配慮した訓練の実施
夜間や積雪時における災害発生を想定した訓練を行うことも重要です。
その際には、消防関係者からの助言やボランティア等の参加・協力を得
ることが不可欠です。
・避難場所までの避難訓練の実施
災害時要援護者と支援者が参加して防災訓練を行い、避難誘導等におけ
る留意点などを確認しておきます。
視覚障がい者の場合は、避難場所までの経路を歩いて確認すること、
- 76 -
車イスでの移動が必要な場合、避難場所までの間に通れない場所がない
かどうかなども確認しておきます。
・災害図上訓練〝DIG〝(Disaster Imagination Game)の実施
地域住民が参加して、地図を囲みながら、災害想定を条件設定し、図上
訓練を行います。図上訓練は比較的、手軽に実施することができ、また、
参加者が災害全体のイメージを共用できることから、住民の防災意識の
醸成にも有効な手立てとなります。地域の住民が参加して、避難誘導や
関係機関との連絡などについて、ディスカッションを行うことにより、
地域の住民のネットワークづくりに役立つことが期待できます。
【災害時における取組】
○ 災害発生時における取組は、速やかに実施することが求められる重要な役
割として、次の3つが考えられます。
① 被災地における障がい者の安否及び被災生活状況の確認
② 被災した障がい者の緊急的なニーズの把握とその対応
③ 福祉避難所の開設
○
これらの役割が機能するためには、普段から、災害発生時に速やかに安否
確認等の行動が起こせる市町村、相談支援事業所及び関係機関との協力体制
づくりと、障がい者の生活実態に関する情報の把握、関係機関同士で共有化
するルールづくりなどが欠かせません。協力体制は、地域自立支援協議会等
の普段の活動を通して、電話1本で協力し合える関係を築くことが重要です。
また、情報の把握と共有化のルールづくりについては、個人情報保護法等と
の関係があり、なかなか難しい状況もありますが、市町村が中心となって、
住民の理解を広める積極的な取組みが大切です。
【雪害に対する地域の取組】
コラム:
美幌町
「たすけあいチームによる除雪活動」
・町では、平成4年以来、小地域ネットワーク活動を「たすけあいチーム」と
いう名称で、町内の32地区において結成し、高齢者、障がい者等の見守り
や安否確認、除雪活動、会食等を地域ごとに行っている。
・除雪活動では、町が所有している除雪機14台を12地区の自治会に貸し出
して、「除雪に困っている」地域に住む高齢者、障がい者等の要望により、
たすけあいチームが玄関前の通路や間口の除雪を行っている。
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【事例の紹介】
○タイトル 「湯沢雄勝圏域地域包括支援ネットワーク協議会災害対策部会」
○実施主体 秋田県湯沢市
【注目ポイント】
・圏域地域包括支援ネットワーク協議会災害対策部会において、災害が発生した時に地域全
体が迅速に対応できるシステムの共有を行っている。
湯沢雄勝地域包括
支援ネットワーク
協議会体制図
協議会の重要事項の決定及び協議会
の総合的な調整を行う。(必要に応じて
随時)
運営会議
事務局会議
部会
協議会のエンジン部分。事務局、部会
長等が横断的な協議を行い、協議事項
等の連絡調整を行う。(必要に応じて)
部会のカテゴリーに関係する
機関で構成し、地域全体の調
災害や虐待、障
害福祉計画な
ど、極めて専門
整を行う。(随時・
部会長が運
営管理)
相談支援部会
就労支援部会
地域移行支援部会
児童支援・
療育部会
研修部会
(随時)
的な事項につい
災害対策部会
虐待専門チーム
て対応する。
権利擁護部会
障害福祉計画専門部会
地域福祉計画専門部会
4
4
4
【取組の内容】
・災害時要援護者について、社会福祉協議会は独自に対象者名簿を把握し、民生委員協議会
でも把握していたが、市の責任で名簿を共有することができるようになった。
・避難所生活に様々な困難が想定される福祉避難所対象者対策
福祉避難所対象者の半年に1回調査と、避難所に避難した後に困難な状況が想定される場
合は追加で福祉避難所対象者と想定される者として確認し対応する。
・福祉避難所の対象者が福祉避難所へ定期的に出かけ避難所になれるような支援を行う。
・緊急入所者対策
在宅において寝たきり等で介護を受けている方々が、安心して避難生活ができるよう、事
前に入所施設単位に名簿を作成し、緊急避難入所できる施設を指定しておく。
対象者名簿作成
福祉避難所
在宅の対象者名簿作成は、「緊急入所の対象者基準」により、対象者に関わりのあ
る介護支援専門員等からの情報を基に名簿を作成し、避難支援プラン作成時に担当
介護支援専門員等が、「緊急避難施設」について説明を加えながら、プランの聴取と名
簿を関係機関に配布する同意を得る。
障害者相談支援専門員、介護支援専門員、家庭相談員
重度障がい者
障害者相談支援専門員、介護支援専門員、家庭相談員
難病疾患者
福祉センター
視覚障害者
Aさん
補助犬
A会議室
Dさん、父・母
B会議室
Aさん、補助犬
認知症Sさん
家族
雄勝地域振興局保健福祉部 難病担当
C会議室
Sさん、介護者
・3ヶ月ごとの名簿の確認を緊急入所者チームで行っていく
・緊急入所者名簿作成の同意書は、関係性のある方々による調査時の説明に併せて
いただく手法。
・メーリングリスト登録により、メールで情報更新
雄勝支所
《支所、地区センター
は、情報受入れ体制
を整えておく》
23
23
23
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避難
地域包括支援センター、在宅介護支援センター、
居宅介護支援事業所の介護支援専門員
重症心身障がい児
第1確認
ネットワーク協議会
寝たきり高齢者
福祉避難所へ定
期的に出かけ、
避難所に慣れる。
自閉症Dさん
父・母
支援者
福祉避難所支援員
報告
19
19
19
コラム:登別市「暴風雪に伴う大規模停電などの災害時の対応」
【災害の状況】
・暴風雪による送電鉄塔の倒壊などにより、平成24年11月27日の早朝から登別市、
室蘭市等で大規模な停電(最大5万6千世帯)が数日発生した。
・冬期間における長期の停電状態は、暖房が使用できず最悪の場合人命にかかわるため、
自主避難者に対する避難所の開設を行った。
【市の動き】
・登別市では、11月27日午後に災害対策本部を設置し、市民会館など避難所5ヵ所を開設
(停電復旧のためその日に1ヵ所を閉鎖)したほか、よりきめ細かな対応を図るため、11月
28日午後に老人憩の家など避難所3ヵ所を追加開設し7ヵ所を設置した。
・避難者が一斉に避難する可能性があるため、避難所開設時には職員5名を配置し、その後避難
者数の推移を見ながら職員の配置人員を2~8名体制で柔軟に対応した。
・健康管理の面から、市保健師を避難所に配置し、24時間体制で対応した。
・11月27日の夜に北海道電力の電源車を避難所に配置し電源を確保した。
・避難所運営については、東日本大震災時の避難所運営を教訓に、避難者が温かく避難所生活を
送ることができるよう、市の備蓄している毛布や災害協定を締結しているレンタル会社などか
ら暖房器具を調達し、避難所に相当数配置した。
・その他、自衛隊に災害派遣要請し、ポータブルストーブの設置や毛布を避難所に配布した。
【避難所の様子】
・在宅酸素療法を行っている方や肢体不自由児と保護者などから、避難所が利用できるか問合せ
があったが、避難所では特別な対応は困難で、診療が可能な病院等の情報提供をするにとど
まった。
・日常ではオムツを必要としていない高齢者等も、就寝スペースからトイレまでの距離が遠いな
どの理由から、大人用紙オムツの要望があり対応した。
・トイレ介助や異性には相談しづらいことなどに対応するため、夜間でも男女それぞれの職員配
置が必要であった。
【関係者の動き】
・居宅サービス事業所では、独自にサービスを利用している方に対し、電話や見守りによる安否
確認を行った。
・通所事業所においても、休止の連絡に併せ、安否確認を行った。
・グループホームなどでは、十分な暖房用具を確保できないため、札幌圏域までポータブルス
トーブの購入に出掛けたり、遠隔地の同業者からの貸し出しや差し入れなどにより、グループ
ホームの共有スペースなどでまとまって過した。また、帰宅可能な利用者は帰宅させた。
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・必要な情報の伝達については、行政と連合町内会が連携し、市連町事務局から各町内会長に依
頼し、各町内会では、地区の独居老人や障がい者への訪問や見守りなどの安否確認を行った。
また、地域の民生委員・児童委員なども見守り活動を行った。
・地元医師による避難所のボランティア巡回や日赤病院の医療班などの協力も得られた。
・社会福祉協議会や市民ボランティア団体、飲食店会など地元有志による炊き出しや、各種
企業からの飲食物の差し入れ、 北 海 道 赤 十 字 か ら の 毛 布 や 安 眠 セ ッ ト の 配 布 な ど が
あった。
【感じたこと】
・この災害を通して、町内会の活動が主体的に行われ、地域での共助など地域力を感じた。
・平常時から、市防災担当職員による防災研修会が継続されていたことから、町内会の防災に対
する意識が高かった。
【課
題】
・避難所開設の周知を広報車により行ったが、十分に伝わらなかった。音量や住宅の機密性など
も影響しているかもしれない。また、聴覚障がい者への周知方法も課題となっている。
・要援護者の把握について、市は、手上げ方式を取り入れているが、この方式だけでは、町内会
や障害福祉サービスなどにつながっていない障がいのある方を把握するのが難しいことから、
日頃から民生委員などを有効に活用した取組が必要である。
・障がいの種別による対応の難しさもあり、福祉避難所の指定について課題がある。
・要援護者の把握から支援については、胆振総合振興局や関係機関との連絡会議など情報共有の
場などを通して、平常時から協議し連携の強化を図る必要がある。
・今後、今回の経験を踏まえ、平常時からの災害時の要援護者対策を進める必要がある。
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