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参考資料 - 経済産業省 九州経済産業局
参考資料 九州地域の創業事例に掲載の PDF 原稿 http://www.kyushu.meti.go.jp/seisaku/sogyo/shinki/sogyou-jirei/jirei.html 九州地域の創業事例 九州経済産業局 >> 政策紹介 >> 新産業戦略 >> 創業・ベンチャー >> 九州地域の創業事例 創業を志す方や創業をサポートされる方々の参考としていただき、創業意識を喚起し地域経済の活性化に繋がる起業 家の輩出や新たなビジネス形態の創出を促すことを目的として、九州地域における様々な形態の創業事例を当局ホーム ページで紹介いたします。 本企業リストは、中小企業・ベンチャー企業の支援機関や金融機関、行政機関から提供された情報を元に掲載してい ます。 今後、地域に密着した、あるいは地域の特性を活かしたもの等、元気でユニークな取り組みを行っている個別事例に ついては、本企業リストにある事業者を中心に当局が個別にヒアリングを行い、創業のきっかけや事業の特徴、今後の 取り組み、起業家からのメッセージ等を取りまとめ、順次掲載していく予定です。 なお、紹介機関の名称の公表をご遠慮された機関については、「行政・支援機関」で統一しています。 創業事例☆掲載起業 掲載日 企業・団体名 平成 25 年 3 月 22 日 ( 株 ) ホスピタブル New 平成 25 年 3 月 1 日 Comodo arts project 平成 25 年 2 月 21 日 アグリエージェント ( 株 )・( 株 ) ロスフィー 平成 25 年 2 月 4 日 美緑こふれ(株)・グリーンサイエンスマテリアル(株) ・ユナイテッドシェアー・ (株)イーコンセプト 平成 24 年 11 月 20 日 ( 株 ) ナカムラ消防化学 平成 24 年 10 月 2 日 ( 株 ) サムライト 平成 24 年 8 月 27 日 インプレス福岡 ( 株 ) 平成 24 年 7 月 6 日 熊本ネクストソサエティ ( 株 ) 平成 24 年 5 月 18 日 株)西日本冷食・(株)にんじんネット・空想科学(株) ・NPO法人ディ!・ (株)アマミファッション研究所 平成 24 年 5 月 8 日 ( 株 ) ディカーナ・( 株 ) スピーチソリューションズ 平成 24 年 5 月 2 日 ( 株 ) えたーなるしっぷ 平成 24 年 1 月 12 日 ( 株 ) 福山物産 平成 23 年 12 月 12 日 ( 有 ) シュシュ 平成 23 年 12 月 8 日 ( 株 ) オキス 平成 23 年 11 月 18 日 雲仙エコロ塩 ( 株 ) 平成 23 年 11 月 14 日 佐賀県先進IT技術有限責任事業組合 平成 23 年 10 月 31 日 ( 株 ) コミュニティメディア 平成 23 年 9 月 8 日 MAHALOぷあぷあウクレレ族・キリシマ精工 ( 株 ) 平成 23 年 5 月 13 日 PicoCELA( 株 )・クイックウォッシュ ( 株 )・( 株 ) しくみデザイン 平成 23 年 4 月 8 日 ( 株 ) ファーストソリューション・九州ナノテック光学 ( 株 ) 平成 23 年 3 月 31 日 株)ウィズアルファ、 (株)ネローラ花香房、 (株)ワイズ・リーディング、 (株)くまもと健康支援研究所、 ( 有 ) タラチネケミカル 平成 20 年 12 月 九州地域 創業・支援事例集2008 13 1.株式会社西日本冷食 取材日:2012年2月 事業内容で分類 創業形態で分類 地域資源活用 環境・リサイクル・新エネルギー スピンオフ・独立 女性起業 新商品・新サービス開発 ソーシャルビジネス・コミュニティビジネス 大学発ベンチャー シニア起業 食品添加物を使わない安心・安全な商品を提供する 『水産ベンチャー』企業 株式会社 西日本冷食 代表取締役社長 日野美貴さん 住所:福岡県福岡市東区香椎照葉 3-2-1 電話番号:092-674-3521 FAX 番号:092-674-3516 E-mail:hino@nishinihonreisyoku,.jp HP http://www.nisinihonreisyoku.jp/ 設立:2009 年 9 月 資本金:3,500万円 従業員数:15名 主要事業:冷凍水産物製造・販売 ■創業のきっかけ ~体に良いものを消費者へ提供したい 英語の教師を目指していたが、バブルがはじけた時期で採用枠も少なかったため、父の知り合いの紹介で、 福岡市の長浜鮮魚市場にある倉庫会社に入社した。 そこは、24 時間鮮魚を冷凍庫で管理する男ばかりの職場であったが、本来のさっぱりした性格を活かして、 周りのおじさん達ともうまくやっていきながら、朝早くから夜遅くまで働いた。 10 年ほど勤めるうちに、いずれ何かの商売でもしようかと思うようになり、仕事を辞め、専門学校で経理 を学んだり、商売の実務を知るため、市場の中の仲卸会社に勤めるなどの準備をしていた。 一方、親元を離れ、福岡市内でアパート暮らしを続けるうちに、水道水が合わずに手が荒れたり、食べる野 菜や魚の味の違いが分かるようになり、添加物の入った食品や薬漬けで養殖された魚が出荷されるのを目の当 たりにすることで、体に良いものを消費者へ提供したいと思うようになっていた。 ある日、中国で水産物を輸出している会社の中国人女性から相談を持ちかけられた。 その女性は、ある日本人(水産物の加工や衛生管理技術を中国の企業に教えていた)の中国語通訳をしてい たが、水産関係の仕事も学んだという人物であり、その女性が仕事で日本に来た際に、同年代の女性というこ とで相手をさせられたのがきっかけで、プライベートでも仲良くなっていた。 相談内容は、その師匠である日本人が亡くなり、中国の水産物を日本に輸出する事業の 継続が難しくなったということで、日本での信頼できる輸入受入れ先を探しており、出来 れば受け入れ先になって貰いたい、というものであった。そのことを職場の人や市場の関 係者に相談したところ、 「それなら自分でやったら」と言われ、周りからの後押しもあり、 市場関係で働いていた若者4名が賛同して一緒に手伝うということで、会社の作り方につ いては知り合いに聞いたり、ネットで調べたりして、それまでに貯めていた自己資金 500 万円で会社を設立した。 事業内容は、冷凍水産物の輸入・製造・販売業であり、自前の工 は持たずに、中国の現地法人の工場に生産委託(しゃこ、あん肝) ている。言い換えれば、メーカー兼商社兼卸小売業として、製造か 小売りまですべて自社で管理し、間に商社を入れずに直輸入してい る。その中国人女性は、現在、会社の中国事務所の部長として活躍 ている。 ■事業のあらまし ~お客様の望む、安心・安全なこだわりの水産物を届けたい 主要商品のしゃこは、中国では主に出汁として利用されており、日本のように 生食するものではなかった。また、日本で取れるしゃこは、小さく、寿司ネタと して使用されるサイズでも量でもない。 現在、国内シェアの約 60%を占める寿司ネタ用の「ボイルしゃこ」は、最新 の冷凍技術を備えた中国山東省の工場(HACCP 対応)で生産している。天然し ゃこは、水質が良くプランクトンが豊富な渤海湾で水揚げ後、活きた物だけを浜 茹でして、一匹一匹丹念に手作業で殻剥きを行い、トンネルフリーザーで凍結し真空パックにしている。それ により、水っぽくなく身がしっかりとしていて、しゃこ本来の甘みがそのまま残っている。 14 取材日:2012年2月 会社の強みは、中国での人脈を活かし、現地工場との協力環境が整ってい ること。さらに、ユーザーのニーズを製造・加工に反映させ、微妙な塩分の 調整や小ロットの注文にも迅速に対応できることである。 「水産ベンチャー」として、創業2年目で取引銀行からLC(貿易商品代金 の支払いを確約する信用状)を得られたことで、直輸入がスムーズになった。 しゃこ以外では、船内で活きたまま急速冷凍したベトナム産ヤリイカや、 台湾産車エビなどを取り扱っている。2010 年3月に、中国から食品コンテ ナを輸入開始して以来、現在は、月に2回のペースでコンテナ輸入しており、全国の魚市場、問屋、外食産業 等150社と取引している。 創業時は、テナントに入っていたが、福岡県産のブランドうなぎを作るという企画が通り、2010 年5月、 福岡ビジネス創造センターに入居した。さらに、中小機構に農商工連携の申請を勧められた。 この企画の発端は、会社のスタッフが、たまたま、あるTV番組を見ていて、天然うなぎはしゃこを主食と していると言っていたということで、それからみんなで調べてみたというもの。 (岡山県児島湾の天然うなぎ『天然アオ鰻』は、シャコエビを食べて育ち、1匹 400gで1万円という高値がつく。 ) 「ボイルしゃこ」の中国工場では、年間生産量 600 トンのうち 30%がむき 殻として排出され、殻はすべて安価な肥料になるだけで、ほとんど未利用資源の 状態であった。そのうち処理の方法を考えなければと思っていたタイミングでも あり、うなぎの餌に使えないかと考えた。 柳川市のうなぎも、河口付近でシャコを食べているので美味しいのだと分かり、うなぎの事を知るために福 岡ビジネス創造センターのコーディネーターさんのアドバイスで、福岡県内水面研究所に相談したところ、紹 介してもらった日野養鰻場は、朝倉の実家の近くにあり、しかも子供の頃食べていたうなぎの生産地であった。 筑後川流域の朝倉地区では、昔は、減反政策でうなぎの養殖場が 15 軒ほどあったが、現在、唯一残ってい るのが日野養鰻場であり、天然に近い形で養殖しているということが分かった。一般的な養殖うなぎの飼料は、 速成飼育のために本来食べていない青魚のミンチを使っていることから肉質が悪いが、しゃこの殻を餌として 使用すれば、より天然に近い肉質になるのではないかと考え、共同研究が始まった。 株)西日本冷食は、福岡県内水面研究所等のサポートを受けて、しゃこの残渣を活用したうなぎの養殖に最 適な飼料の開発を行い、日野養鰻場は、ボイラーで水を加温しない等の自然環境に近づけた養殖技術によって、 うなぎの餌食いを助け、天然うなぎに近い肉質のうなぎを養殖するという事業内容で 2010 年、農商工等連 携事業計画「シャコを飼料に活用した高付加価値うなぎの生産と加工製品等の開発及び販路開拓」の認定を受 けた。 ■今後の取組 ~福岡発の「水産ベンチャー」として、ブランド鰻の開発を! 「ふくおかのシャコうなぎ」として、新たな県産ブランドうなぎの確 立を目指したい。2013 年には商品化して売りたいと思っている。ま た、本物の味を消費者に届けるためにアンテナショップを作りたい。 添加物、酸化防止剤等を一切使用しない安心、安全な商品を提供して いくことを理念として、日本での中国産の食品に対するイメージを変えたい。近々、韓国との本格的な取引も 始め、逆に、国産の良いものや福岡の特産物を「ふくおかコンテナ」として海外の市場へ輸出したい。 ■活用した施策 ・2010 年5月福岡ビジネス創造センター入居 ・平成22年度ビジネス連携支援事業(水産庁) ・2010 年 11 月経営革新認定(福岡県) ・2011 年2月農商工等連携事業計画認定 ■その他特記事項 ・2010 年7月東京シーフードショー出展 ・2011 年2月シーフードショー大阪出展 ・2012 年3月 FOODEXJAPAN2012 出展 ・2011 年度福岡市ステップアップ助成事業、奨励賞 ■創業予定者に対するメッセージ ■紹介機関からのコメント “一期一会、人のご縁は大切に!” 本当に良いもの美味しいものを提供したいという、日野社長の強 い思いが、着実に事業成果に繋がっていると思います。ウナギをは じめとする新しい商品開発にも積極的に取り組んでおり、今後九州 を代表する水産ベンチャーとなる会社だと期待しています。 (福岡ビジネス創造センター) 15 2.株式会社えたーなるしっぷ 取材日:2012年3月 事業内容で分類 創業形態で分類 地域資源活用 環境・リサイクル・新エネルギー スピンオフ・独立 女性起業 新商品・新サービス開発 ソーシャルビジネス・コミュニティビジネス 大学発ベンチャー シニア起業 住む人にとって快適でストレスの少ない、住むことで元気 になれる「健康空間の創造」を目指す! 株式会社えたーなるしっぷ 代表取締役 工藤武範さん 住所:大分県大分市大字市 616 番地の 38 電話番号:097-560-1672 FAX 番号:050-6621-0657 E-mail:[email protected] HP:http://www.eternalship.com/index.html 設立:2008年5月 資本金:50万円 従業員数:1名 主要事業:建築・住宅資材 輸入販売 ■創業のきっかけ ~建築士だから感じる住まいづくりへの不満 幼少の頃から絵を描くのが好きで、大分県立大分工業高等学校 建築科を 卒業後は建築設計の道を選んだ。大分市内の幾つかの設計事務所に勤め、 2002 年に 30 歳で独立し、建築事務所を開業後、一級建築士の資格を得て 住和設計一級建築士事務所に事業所名を変更、2007 年 11 月に自社アトリ エの建築を機に地元に根ざす思いを込めてアトリエの所在地の「市」を入れ て住和設計 市一級建築士事務所と改名。 35 歳ぐらいからハウスダストによるアレルギーを発症し、本格的にエコを考えるようになった。身体にい いとされる土壁用の土を百何十種類も探求し、研究していたところ、米国で 100%天然素材の土塗壁材(商 品名: 「アメリカンクレイ」 )がヒットし、2004 年頃から日本に入って来ている事が分かった。その土壁(ア メリカンクレイ)を使って自分の家の壁に塗ったところ、咳が治まり始めたのを実感した。 それ以前は、仕事で人に優しい天然素材の建築資材を用いるように設計図面を描いても、施工する建築会社 が使ってくれなかった。なぜなら、建築会社は取引のない会社から物を買うことはしないので、材料を指定し た設計図を渡されても、その材料が手に入らないと出来ないと断る。その結果、お客様が希望されている施工 がされないという状況が続いていた。しかし、自分の家でアメリカンクレイを取り寄せて自身で工事も出来る ようになったことから、諦めなくて良いのだと確信した。 ターニングポイントは、3年前に友人から誘われて、鹿児島の築 150 年程の古民家 再生に取り組んだ事である。昔ながらの日本式の土壁ではなく、施主の「お金ではなく、 家族の健康を大事にしたい」という思いを受けて、 「アメリカンクレイ」で施工した。 プロの職人だけでなく子供たちと一緒に楽しみながらアメリカンクレイを塗った。 当時、 「アメリカンクレイ」を取り扱う輸入販売者が北海道と東京だけで、西日本に は無かった。それで、自分が材料を保管しておき、施工会社や施主に直接、材料供給し ようと考え、2008 年5月、家造りに必要な自然素材を専門に扱う商社「(株)えたーな るしっぷ(Eternalship) 」が誕生した。 ■事業のあらまし ~より快適な生活のために 「アメリカンクレイ」は、米国ニューメキシコ州アルバカーキ産の天然の粘土 原材料にした、化学物質を一切使用しない 100%天然素材の土壁商品である。 2004 年度全米環境エコプロダクト賞を受賞しており、その特長は、収縮率がほ ぼゼロという日本の土にはない成分で、乾燥したときに割れない、水が付いても ミにならない、さわってもキズになりにくい、仮にキズがついても特別な技術を 要とせずに直せ、再生が出来るというもの。湿度が高くなると部屋の中の湿気を い、逆に冬場の乾燥時など湿度が低くなると、含んでいる湿気を放つという、吸湿、放湿を繰り返しながら、 部屋の湿度を調整する機能がある。さらに、防カビ効果や家具などから揮発した化学物質を吸着する働きもあ るとのこと。メキシコ辺りでは、この土を使って昔から家の壁に塗っていたもので、米国で大ヒットした商品。 素材は、オフホワイトの粉末で、天然の鉱物顔料を混ぜることによって着色でき、様々な色の塗り壁材とな るが、漆喰の様な白色と黒色がなかった。そこで、日本人が好む真っ白な色を創り出すために、 「アメリカン 16 取材日:2012年3月 クレイ」に混ぜる材料を探した。ホタテ貝の殻が産業廃棄物として環境問題になっている と聞けば、粉末化したものを買い付け実験するものの、高価なうえに効能がない。そこで、 大分県産業科学技術センターの助言を元に探し当てたのが、津久見産の消石灰であった。 そこで生産される塩焼消石灰を使用し配合比率を工夫して「真っ白なECO壁」を創り出 した。さらに、黒色の材料として、木炭よりも竹炭のほうが多孔性に富み調湿・消臭効果 に優れているので、大分県産の竹を燃焼温度管理された釜で焼成したものを使い「真っ黒 なECO壁」を創り出した。 2010 年には別のアイデアで応募した「大分県ビジネスプラングランプリ」 (落選)を きっかけに、他の人がどういう経営をしているのか、経営者としての新しい刺激や価値観 を求め参加した大分商工会議所主催の「創業塾」や、その後の「経営革新塾」を通じて出会った中小企業診断 士、大分県信用組合、商工会議所などの多くの方々の支援を受けて、 『真っ白な ECO 壁』と『真っ黒な ECO 壁』の開発計画で、同年 12 月、大分県の経営革新計画の承認を得ることができた。さらに、大分商工会議所 の「ビジネス何でも応援隊」による専門家の派遣を受けて、大分県出身の有名なデザイナーを紹介され、次年 度には経営革新計画の助成金を元に、新商品のPR用に個性的なリーフレットも作成した。 また、創業塾の同期であった不動産会社の社長㈱マイスペースさん(インテリ コーディネーター)から、事務所を移転するので、新しい事務所兼ショールーム 壁を白く塗って欲しいと頼まれ、 『真っ白な ECO 壁』を使って施工すると共に、 その時に注文のあった壁画も「アメリカンクレイ」で制作した。現在その事務所 「アメリカンクレイショールーム」にもなっている。 現在、土壁の施工は、自社(自分)で行っており、施工スタッフを養成中である。 『ECO壁』は、誰でも塗ることが出来るので、レクチャー付きでも販売している。 『ECO 壁』は、高い蓄熱性や優れた調湿性、消臭・防かび効果があることで、加湿器や除湿器が不要とな り、自然素材でもあるために身体にもやさしい。最期は自然のサイクルで土に帰るというエコ商品である。 ■今後の取組 ~温もりのある住まいづくりを 今の生活や暮らしの中で、視点の角度を少し変えて、もっと芸術的なものを家の 中に取り込むことで心豊かな生活が送れるのではないだろうか。より快適な生活の ために土壁を調度品と考えて、土壁アート(壁画、クレイアート)を施してみるこ とを提案していきたい。色柄も多いので誰でも簡単にステンシル画(切り絵)や筆 を使ってフレスコ画も描ける。 一方、県内の3~4人の画家や作家に、エコ壁の施工方法を学んで貰っている。 「アメリカンクレイ」と「ECO 壁」更にはウォールアートが広まり、大分県内で昔から盛んな「鏝絵」の現代版のようになれば面白くなる。 これからは、単に土壁を塗るだけでなく、アート性も高めて、住居内の快適性も求めるという「心から癒され る空間を創ろう」というコンセプトで開発を進め、大分の「ECO 壁」を文化として 広めていきたい。 また、 「建築することは木を切り、土を掘り起こし、輸送等で大気を汚している。 次の世代のために、森と海を少しでも自然に戻すことに貢献したい」との思いで、海 にサンゴを植えるという珊瑚の移植活動団体に売上げの一部を寄付している。 ■活用した施策 ・平成 22 年度創業塾(大分商工会議所) ・平成 22 年度経営革新塾(同) ・ 「ビジネス何でも応援隊」の専門家派遣(同) ・2010 年 12 月「経営革新計画承認」 (大分県) ■その他特記事項 ・大分県信用組合中小企業支援センターの支援 ・大分県産業科学技術センターの助言 ■創業予定者に対するメッセージ ■紹介機関からのコメント 工藤さんは創業塾の取りまとめ役的存在で、優しく、社交的で行 “自分だけの世界ではなく、もう 動力がある方です。 「ビジネス何でも応援隊」でサポートさせていた 少し広い視野で、自分の業種以外 だいた際は、工藤さんの商品に対する強い思いを感じました。その でも積極的にコミュニケーショ ような思いの詰まった『ECO壁』は大変すばらしい自然素材の商 ンを図ってほしい。 ” 品で、今後も商品PR等でお手伝いできればと考えています。 (大分商工会議所) 17 3.株式会社コミニュティメディア 取材日:2011年7月 事業内容で分類 創業形態で分類 地域資源活用 環境・リサイクル・新エネルギー スピンオフ・独立 女性起業 新商品・新サービス開発 ソーシャルビジネス・コミュニティビジネス 大学発ベンチャー シニア起業 通信と放送が融合した地域情報ネットワークにより 地域を活性化する! 株式会社コミュニティメディア 代表取締役 米田利己さん 住所:長崎県長崎市出島町 1-43 ながさき出島インキュベータ 307 号室 設立:2007 年 10 月 電話番号:095-829-5525 資本金:1,000 万円 FAX 番号:095-829-5535 従業員数:31 名 E-mail:[email protected] HP:http://www.communitymedia.jp/ 主要事業:地域情報化システムの 企画・開発コンサルティング ■創業のきっかけ ~身につけた技術を活かして、地域の情報化に貢献したい 社長は、長崎県の離島・対馬で生まれ育ち、自然に恵まれた環境で、アマチュア無線により世界各国の人々 と交信し、無線でのパケット通信や映像通信を行っていたという。 高校を卒業し長崎市で大学生活を送り、市内で勤務できるということで、大手企業に就職。会社ではソフト ウエア部門に従事し、自衛隊イージス艦の艦内ネットワークの開発に携わった。 船の中の電話や放送をはじめ、伝送・電気・水・空調・警報等さまざまな情報通信システムの構築であり、 従来のようなカスタマイズではなく、光ファイバーや CATV-LAN といった民間の技術を持ち込み、汎用の OSを使ったシステムを作った。これを元に、全ての造船メーカーの船内の情報システムを構築するとともに、 ひとつの街のような船全体の情報化・ネットワーク化の経験・ノウハウを得て、地域情報化という現在のフィ ールドの基盤を築いてきた。 会社の事業方針は、システムを売るだけではなく地域の企業と一緒に作り上げていくことであり、大分県姫 島や島原の防災システム事業、波佐見町の防災放送のIP化事業など、自治体向けの地域情報化も事業として 進めていた。 そういった中で、新規事業を起こすためのマネジメントを学ぶ目的で、商工会議所主催の第1回目の創業支 援セミナーに参加した。さらに、平成10年、九州経済産業局の「マルチメディア懇話会」に会社を代表して 参加し、ネットワーク部会の副部長を務め、岡山や富山といった地域情報化の取り組みの先進地の視察をした ことが、良い経験になったという。 一方、当時はインターネット普及初期であり、自ら草の根プロバイダーを設立し、中心市街地の活性化によ るまちづくりへの参画、さらにNPOの理事として地域貢献活動など、地域におけるIT活用を推進する活動 も行ってきた。また、母校の先生の要請を受けて、平成 14 年から大学の非常勤講師として「地域の情報化」 について講義をしている。そういった活動をしていくうちに、独立して事業としてやろうという気持ちになり、 45歳の時、20年以上勤めていた会社を辞め独立した。 ちょうど、 (独)中小企業基盤整備機構の「ながさき出島インキュベータ」 (D-FLAG)の開設・入居募 集の時期であり、2007年10月1日、 (株)コミュニティメディアを設立して入居した。 ■事業のあらまし ~通信と放送の一体化サービスを提供 地域情報化システムの企画・開発コンサルティング事 業として、放送事業、広告事業、ITソリューション事 業、コンテンツ事業、IP電話事業、インターネット事 業等様々な事業展開をしており、特に、通信と放送を一 体化したサービスの提供により地域情報のネットワーク 化を目指している。 会社は2名で創業し、1年目は延岡の道路管理者から 情報システムの開発を受託した。 2年目の2008年10月、ふる里の対馬市が、市町 村合併後の取り組みの 1 つとして行っていた、光ファイ 18 取材日:2011年7月 バーを活用した情報インフラ整備「対馬市CATV事業」に、指定 管理者として参入することになり、その管理運営のため、対馬支店 「対馬メディアセンター」を開設し、地元を中心に22人の従業員 を採用した。 島内の全公共施設や企業、全ての家庭(15,000世帯)を光 ファイバーで結び、デジタル放送のTVサービス、データ放送、島 内無料のIP電話、ネットサービスなど様々なコンテンツや情報通 信サービスを提供している。 翌月からは、自主制作番組「つしまる通信」の放送を開始し、住 【対馬メディアセンター】 民に密着した番組で対馬の魅力を内外に発信している。 なお、廃校になる中学校の最後の文化祭のために、生徒が準備や練習をする様子を描いた同社制作の番組が、 2011年6月、第37回日本ケーブルテレビ大賞番組アワードで、全国134応募作品の中から最優秀の グランプリ(総務大臣賞)に選ばれた。 3年目の2009年9月、対馬市のCATVネットワークを活用した地域予防医療・介護支援事業が、経済 産業省の「地域見守り支援システム実証事業」に採択され、長崎大学等で構成する「長崎予防医療・介護支援 コンソーシアム」の一員として3年間の事業を行った。この事業は、対馬という離島の限られた医療・介護環 境の中で、情報技術(IT)や放送技術を活用し、人や情報のネットワークを構築して効率的なサービスを提 供するもの。具体的には、患者や要介護者、高齢者宅に医療・通信機器を設置して、在宅で見守る医療・介護 ネットワークである。今後、利用料収入を元に事業を継続していく仕組みをつくるなど、地域ビジネスモデル の確立を目指している。 ■今後の取組 ~長崎を、対馬を元気に! ・新しいサービスの創造とビジネスモデルの確立で、地域活性化に貢献したい。 ・将来的には、地元の若者が、ここで働きたいと思うような地域定着型の企業を目指したい。 ・地域のインフラの維持を、自治体からの支援なしで出来るビジネスモデルを構築し、それを他の地域にも展 開して、地方の市町村が繋がるようなネットワークを作りたい。 ■活用した施策 ■その他特記事項 ・平成21年度地域見守り支援システム実証事業 ・ 「第37回日本ケーブルテレビ大賞番組アワード」グラ (経済産業省) ンプリ受賞(日本ケーブルテレビ連盟) ■創業予定者に対するメッセージ ■紹介機関からのコメント “起業は、人生設計をしてい ・自治体のCATV指定管理者として実績もあり、また、産学官連携に よる地域見守り支援システム実証事業など、地域活性化等に寄与する事 く上で、大きな選択肢の 1 つ。 業を積極的に展開し、全国の自治体からも注目される企業として成長し パワーがあるうちに!” ている。 (長崎市商工部産業雇用支援課) 19 4.株式会社ウィズアルファ 取材日:2011年2月 事業内容で分類 創業形態で分類 地域資源活用 環境・リサイクル・新エネルギー スピンオフ・独立 女性起業 新商品・新サービス開発 ソーシャルビジネス・コミュニティビジネス 大学発ベンチャー シニア起業 オーダーメイドのかつらを低価格で提供 株式会社ウィズアルファ 代表取締役 宮﨑弥生さん 住所:福岡市南区向野 2-15-29 トーカン大橋 205 電話番号:092-557-1196 FAX 番号:092-557-1197 E-mail:[email protected] HP: http://www.katurawith.com/corporate/ その他のHP http://www.katurawith.com/(男性用) http://www.wigwith.com/(女性用) 設立:2002年1月 資本金:300万円 従業員数:7名 主要事業:カツラの製 造・販売 http://man.iryoukatura.com/(男性医療用) http://www.iryoukatura.com/(女性医療用) ■創業のきっかけ ~交流会での出会い 元々は東京で携帯電話の付加機能に係るサービス開発の仕事に携わっていた。しかし、事情により、福岡に Uターン。その後、インターネットプロバイダーの会社に勤務し、電話でのパソコンの接続サポート業務を行 っていた。そこでの業務はさほど忙しくなく、空いた時間でパソコンのスキルを磨き、簡単なホームページ作 成等はできるようになっていた。それからしばらくして、祖母の介護をするために1年で退職。実家が自営業 を営んでいたこともあり、元々独立志向があった宮﨑社長は、福岡市男女共同参画推進センター(アミカス) 主催の女性起業セミナーに参加した。当時はパソコンが普及し始めた頃で、一般の人よりも詳しかった宮﨑社 長は、交流会で出会った起業家育成の支援をしていた老齢の篤志家の方から「インターネットを教えてほしい」 と声をかけられた。その事が縁で親しくなり、インターネットを教える代わりに起業の仕方を教わることにな った。さらに、その人からホームページ制作の仕事を紹介され、当時としてはまだ珍しかった通信販売のネッ トショップの立ち上げに関わった。そこでは、自分のモチベーションを上げるため、契約内容を成功報酬とし たため、結果的には殆ど儲からず、3年で契約を打ち切られた。 その後、2000年にインキュベーション施設:ハッチェリー福岡に入居し、Web サイト制作などの仕事 を続ける傍ら、冠婚葬祭の際の引出物や香典返しなどの通販サイトの運営を企画した。しかし、なかなか軌道 に乗らず、経営はずっと苦しいままだった。そんな時に参加した異業種交流 会でかつらユーザーと出会い、 「かつらを事業としてやってみれば?」と言わ れた。が、そのまますぐに決めた訳ではない。しかし、そのことは、頭の片 隅に引っかかっており、たまたまかつらの話をした知人の妹さんがかつらユ ーザーだったため、話を聞かせてもらった。一つが80万円ぐらいでとても 高価なこと、しかも消耗品で3年ほどしか寿命がないこと・・・初めて聞いたか つらの話は驚くことばかりだった。それからも、自分で調べたり、紹介して もらったかつらユーザーにヒアリングをしてみたところ、どれもみな同じよ 【部分用かつら】 うな話であったが、だからこそ、そこにビジネスチャンスがあると思い、参 入を決めた。 ■事業のあらまし ~オーダーメイドの通信販売 業界の情報の入手はインターネットを活用し、関西の理容院で安価なかつらを取り扱っていることを知り、 話を聞いた。店長の父親がかつらユーザーで、中国で製造してもらっているという。その理容院の経営者は、 思い立ったらすぐ行動する性格で、銀行の調査部にお願いして、かつらを製造している中国の会社と連絡を取 ってもらい、すぐに出かけるような人だった。その関西の理容院と何とか共同で事業を始め、インターネット で申込みができるようにサイトを立ち上げた。販売価格は14万8千円。大手の1/5程度である。日本の大 手かつら業者と提携している工場では、最初はなかなか思うようには製品作りができなかったが、何とか販売 にこぎつけた。驚いたことに、1週間後に一つ売れた。大手のかつらが高額のため、 「ものは試しに・・・」とい う気持ちで購入されたお客様だったのではないかと思うが、品質にも納得してもらい、とても喜んでいただけ 20 取材日:2011年2月 た。それからしばらくは、困難にぶつかりながらも事業は順調に滑り出していた。 しかし、その後、共同事業主であった関西の理容院の経営者が重い病に罹ってしまい、 「残念だが事業の継 続はできない」と去って行った。申込み受付の窓口だけではなく、事業 自体を 1 人でしなければならなくなってしまった。また、取引工場とは 品質や納期遅れの問題も起こっていた。リピーターが増えるにつれ、お 客様の求める要求も細かくなり、工場側にオーダーの意図がなかなか伝 わらず、苦しむようなっていた。元々、かつらについての知識が全くな いままに事業を始め、問い合わせの度に苦慮しており、勉強しなければ いけないと思っていたこともあり、かつらについて改めて一から勉強を 始めた。とにかく必死だった。品質向上を目指し、中国まで行って他の 工場を探したが、なかなか見つからなかった。そのため、インドネシア 【スタッフによる商品の確認】 にまで目を向けて探したところ、全世界向けかつらを供給している大手 の会社と提携することができ、そこをメインの提携先とした。理容院・美容院から届くオーダーシートには必 ず目を通してから工場へ発注し、できあがったかつらも必ずチェックしてからお店に納品するようにした。そ のため、クレーム率が低いのがウィズアルファの売りになった。さらに、取扱い店舗を増やすことにより新規 のお客様を増やし、少しずつ会社も大きくなってきた。もちろん、取 扱い店舗に対しては講習会を行い、カウンセリングや頭の型取りの方 法について、学んでもらう。また、お客様に配慮して、個室での対応 や閉店後・店休日に対応できることを取扱い店舗の条件とした。 次に取り組んだのは、 抗がん剤治療や円形脱毛症等の病気のために急 に髪が抜け、すぐにかつらが必要になった人たちのために、医療用の セミオーダーのかつらを開発することだった。ここで重要なのは、電 話でのカウンセリングである。髪の量・長さ・くせ等個人差があるた め、詳細に聞き取り、お客様の求めるものを把握しなければ、後でト 【講習会の模様】 ラブルになってしまう。クレーム率の低さの要因の一つに、セミオー ダーとはいえ髪型や髪の色が異なる2つのかつらから選べる仕組みがある。また、サイズ等に関しては交換も できる。試着してから選べるというのは、かつらの通販業界では初めての試みだが、一貫してお客様重視の姿 勢を心がけている表れである。 ■今後の取組 ~困っている人をサポートしたい 「自分がかつらの仕事をすることになるとは全く考えもしなかった。従業員も ホームページ制作等の Web 関係の仕事に就いたはずなのに・・・と思っているので はないか」と笑って話をされた。しかし、必要とされることにやりがいを感じて、 今では、 「乳ガン検診&健診ガイド」のサイトも立ち上げた。 今後は、取扱い店舗を現在の23店舗から20店舗増やして43店舗まで増や すことを目標に、多くのお客様に知ってもらう努力をしていきたい。 そして、困っている人をサポートすることで、笑顔や自信を取り戻してもらう ことを、これからも一番大事にしていきたいと考えている。 ■活用した施策 ・平成15年 4 月フクオカベンチャーマーケットプレゼン ・平成21年 1 月フクオカベンチャーマーケットプレゼン ・平成 21 年 9 月経営革新計画承認(福岡県) ・平成22年 3 月フクオカベンチャーマーケットプレゼン 【フィッティング】 ■その他特記事項 ・平成 19 年度九州IT経営力特別賞(九州経 済産業局) ■メッセージ ■紹介機関からのコメント かつらをお使いになられたガン患者500名を超える方々から感謝 “なるべくお金を使わずに、ア の声が寄せられており、社会的意義が大きいビジネスです。 ビジネスの新規性・優位性についての表現等を工夫すれば、アピー ンテナを張って情報を取る” ル力が増し、さらなる成長の可能性が期待できる企業です。 ((財)福岡県産業・科学技術振興財団) 21 5.株式会社ファーストソリューション 取材日:2011年2月 事業内容で分類 創業形態で分類 地域資源活用 環境・リサイクル・新エネルギー スピンオフ・独立 女性起業 新商品・新サービス開発 ソーシャルビジネス・コミュニティビジネス 大学発ベンチャー シニア起業 小規模な、事業場・建設現場に特化した 高速汚泥処理システム「MC工法」の開発 株式会社ファーストソリューション 代表取締役 髙田将文さん 住所:福岡県福岡市早良区百道浜2-1-22 電話番号:092-285-2631 設立:2005年6月 FAX 番号:092-285-2633 資本金:300万円 E-mail:[email protected] 従業員数:3 名 HP:http://www. 1st-solution.jp/ 主要事業:汚泥・濁水処理装置の製 造、販売業務 ■創業のきっかけ ~エンジニアとして感じた違和感 高田社長は、福岡大学の土木工学科を卒業後、(株)九電工に入り、水処理のエンジニアとして自治体の下水 処理場やハウステンボスの下水処理施設等の施工管理の業務を12~13年、当時は4億円ほどの工事現場を 担当していた。 しかし、経営者へのあこがれと「管理職ではなくエンジニアとして働きたい」という思いで、平成13年に 退職し、奥さんの実家が産業廃棄物処理業を行っていた関係で、福岡から大分に移り住み、義父の元で働くこ とになった。仕事は、市道・県道やトンネルの清掃と、清掃後に発生する道路側溝等に詰まった汚泥を処分場 まで運ぶ輸送業務であった。そこでの汚泥処理は、発生した場所の汚泥をそのまま積み込んで処理場まで持っ て行くだけだったので、 「現地で汚泥を固めて1/3に絞れば、輸送コストも1/3になることから、現場で 減量する装置を考えた。 」が、受け入れて貰えなかったという。当時、ヘドロ系の産業廃棄物処理における業 界では、 「建設・土木系では、こうしたもの」といった固定観念があり、 「仕事の効率化や改善といった発想が 足りなかった。 」と高田社長は振り返る。 その後、義父の跡を継いで社長になったのを機に従来のやり方を改め新技術の開発を始めたが、義父をはじ め周りから反対されたことから、平成17年に、同社の前身となる(有)ファーストソリューションを立ち上げ 独立した。だが、大分では販路が少なく、地元の水道局に採用される程度の実績しかなかったため、実父の他 界をきっかけに福岡に戻った。その際、福岡市のインキュベーション施設に入居することができ、平成20年 に株式会社に組織変更して、本格的に事業をスタートさせた。 ■事業のあらまし ~汚泥の脱水・浄化から搬出までをワンストップ処理 新たに開発した、汚泥処理システム「MC(メッシュカット)工法」は、自然沈殿では分離できない汚泥を、 高速汚泥反応装置(SR5000)と中性無機系凝集剤(フロックマン)で沈殿・分離させ、コンテナバック (エコポーチ)で沈殿物を濾過して輸送するといった画期的な工法で、従来工法に比べ大幅な処理コストの削 減が可能という。 22 取材日:2011年2月 そして、この「MC工法」が誕生した背景には、3つの要因があった。 ①溶けやすく反応が早い粉の凝集剤(ゼオライト+ポリマー)との出会い。 ②醸造プラントの技術者であった実父から「醤油の醸造と同じ様に、濾し袋で絞れ ばいい。 」というヒント。 ③輸送用のフレキシブルコンテナバック製造メーカーの日豊製袋工業(株)の協力。 脱水兼輸送袋である水切りコンテナバックの「エコポ ーチ」は、日豊製袋工業(株)の協力により、3年の歳月 をかけて開発したもので、素材は“カワリ織”という特殊 な織りの原反を使い、水はけを良くするため内部に排 水筒を設ける等、構造上の改良を行っている。 多孔質のゼオライトを主成分とした粉体凝集剤「フ ロックマン」は、 「エコポーチ」に合うように凝集剤の 製造メーカーにカスタマイズしてもらった。 【SR5000】 【エコポーチ】 これにより、小規模な建設現場での汚泥処理が可能になり、また、天日乾燥床 だけでは汚泥の乾きが遅く処理が追いつかないといった浄水場にも採用されて いる。さらに、この「MC工法」は、重金属等で汚染された有害な汚泥の浄化・ 脱水・輸送を簡単に行うことができる、新しい環境技術でもあるという。 【フロックマン】 ■今後の取組 ~今ある自然環境を後生に残すために 最近、環境産業がクローズアップされてきている中で、 「多くは技術の裏付けが弱く、海外での採用実績だ けでもてはやされている風潮があるが、当社はJIS規格やJFC規格のほか、国土交通省の NETIS の工法 認定も取得するなど、技術的な裏付けを取りながら進めている。その違いを見てほしい。 」と同氏は強調する。 「今後は、韓国や中国、台湾といった海外に向けて展開したい。 」そのため、今は、国内外の代理店や業務 提携先の構築に注力しているとのこと。 さらに、宮崎県都城市や高原町で新燃岳の噴火の被害が伝えられているが、 「雨が降ると降灰が固まり、道 路側溝に詰まった灰の除去が困難になってくる。すぐにでも、現地の処理業者にMC工法を使って貰いたい。 」 と、力強く語る高田社長は、頼もしくみえた。 ■活用した施策 ・平成21年 経営革新計画認定(福岡県) ・平成21年 中小企業事業展開等雇用創出支援事業 (福岡県) ・平成21年 スッテプアップ助成事業(福岡市) ・平成21年 新連携事業計画認定(経済産業省) ・平成22 年 提案公募型販路開拓支援事業(九州地 域環境・リサイクル産業交流プラザ:K-RIP) ■創業予定者に対する メッセージ “起業するには、信頼できる 仲間やパートナーが必要” ■その他特記事項 ・平成20年8月「インキュベートプラザ百道浜」 (福 岡市が運営)に入居 ・平成21年12月 フクオカベンチャーマーケット 登壇 ・平成23年1月 アジアビッグマーケット出展 ・国内特許申請中(エコポーチ) ■紹介機関からのコメント MC(メッシュカット)工法を開発し、小規模事業場・建設現場・汚 れた池などの廃水処理問題を、安価かつ省スペースで解決している。 また、アジア地域への展開を模索するなど、今後の成長が期待される。 ( (財)福岡県産業・科学技術振興財団) 23 6.株式会社サムライト 取材日:2012年8月 事業内容で分類 創業形態で分類 地域資源活用 環境・リサイクル・新エネルギー スピンオフ・独立 女性起業 新商品・新サービス開発 ソーシャルビジネス・コミュニティビジネス 大学発ベンチャー シニア起業 タブレットPCを利用した「脳若トレーニング」で、元気で 長生きの明るい社会をつくる 株式会社サムライト 代表取締役 光岡眞里さん 住所:福岡県福岡市南区野間1-11-25 電話番号:092-980-2670 設立:2009 年12 月 FAX 番号:092-980-2670 従業員数:1名(契約社員 20 名) E-mail:[email protected] 主要事業:介護予防事業 シニア向 け PC 教室、web 自分史、他 HP:http://somelight.jp/ ■創業のきっかけ ~自宅近くで何か仕事が出来ないか 光岡社長は中学・高校・大学と 10 年間剣道一筋の生活で、特待生として活躍されたそうだ。小柄でかわい らしい雰囲気の姿からは想像出来ないが、女剣士である。そもそも剣道を始めたきっかけは、中学の同級生か ら誘われて部活に入ったことで、元々は美術部に入っていたという。剣道部に誘った友人は早々に辞めてしま ったそうだが、光岡社長は『いったん始めるとなかなか辞めない性格』で剣道の腕も上達し、卒業後の進路と して剣道の指導者を嘱望されたそうだ。 しかしながら、当時光岡社長の父親は病気で、長年寝たきりの生活を送っておられた。母親は家族を養うた めに働いており、その負担を少しでも減らすために、周りが勧める剣道指導者の道を断り、自宅から通える最 寄りの会社に入社。父親の入院している病院に毎日出向いて食事の世話を行うなど、介護中心の生活を送られ た。2 年弱のOL生活の後、24 歳で家庭に入られた。 当時、ITという言葉が世の中に広がってきて、市町村単位でパソ コン教室が開かれるなど、IT先駆けの時代であった。社長自身も子 供の手が少し離れ、社会復帰をしたいと考えていたため、派遣会社に 登録し、IT講座のお手伝いなどを始めた。ただ、メインインストラ クターになるには資格が必要で、毎年更新手続きも必要になり、その 都度費用もかかる。そういった資格更新制度に疑問を感じ、師範制度 でなくても自宅近くで出来ることはないだろうかと考え、パソコン教 室なら自宅近くでも出来るため、2004 年、近くの公民館に相談をし て教室を開講することとなった。これが「みつおかパソコン教室」のスタートである。 パソコン教室は現在まで9年間続けており、福岡と広島に拠点を置き、各地の公民館や市民センターで継続 的に行うとともに、利用者のニーズに応えて出張講座も行っている。社長と志を同じとするスタッフも徐々に 増えていき、契約社員が20名程度まで増えた。パソコン 5 台、生徒 7 人でスタートした事業が、今や延べ 5,000 名の参加者をほこる。当初パソコン教室のターゲットは特段絞ってはいなかったが、都会ではない福 岡市近郊の公民館で開く教室に集まるのは、自ずとシニア層だった。開 講 3 年でシニア向けのパソコン教室に特化した。社長曰く、 “シニアビ ジネスは本物でないといけない”という。長年の人生の経験を積まれた シニア層から見れば、社長を始めとする講師陣は息子や娘の世代であ る。一生懸命やっているかどうかはすぐ見抜かれる。 “人間性が求めら れる仕事であり、人生の先輩を教える難しさ、人としての大きさが問わ れる仕事でもあると同時に、お年寄りの笑顔や生きがいを再び取り戻 す、魅力ある仕事でもある。 ”とのこと。 ■事業のあらまし ~楽しみながら介護予防を パソコン教室をシニア向けに特化したことで、シニア層の抱える課題も自然と見えてきた。アミカス女性起 業家塾に参加し、少しずつ経営というものを意識し始める。そんな中、ある時受講者のひとりに物忘れの症状 が現れ、症状が進んでいく姿を目の当たりにし、 “何か介護予防となる取組ができないか”と考え、介護予防 の観点からお年寄りでも出来る、ITを使った楽しいトレーニング法を考案し始める。知り合いのコンサルタ 24 取材日:2012年8月 ントから紹介を受け、2009 年に福岡県中小企業振興センターに相談、そこで今後の事業展開を整理し、業 務目標を明確にするためにも、経営革新の認定を受けてみようということになり、 『パソコン教室』 、 『自分史 「あゆみ」 』 、 『介護予防事業』の 3 つの事業計画を立て認定を受けた。そして同年末に(株)サムライトを設立 し、介護予防事業部を立ち上げた。 3つの事業の中で一番力を入れる介護予防事業では、タブレットPCを使っ た「介護予防教室」を開催している。 「みつおか式脳若トレーニング」は、講師 (以下コミュニケータ)と生徒が、コミュニケーションを取りながらタブレッ トPCに触れ、楽しみながら介護予防をすることが出来るもので、最初は恐る 恐る触れていたお年寄りも、コミュニケータの誘導で継続して受講すると、徐々 に表情が豊かになり、指先の動きが素早くなっていく。アプリを利用し、体系化された講師向け教材を活用し ながら行うトレーニングであり、社内の認定制度のしくみによるコミュニケータの高い質が当社の強みでもあ る。人材への投資は惜しむことなく行っており、今後は、社外でのコミュニケータの認定制度を構築していく 予定だ。 2009 年にスタートした介護予防教室は、講座数350、4,500 人を超えるお年寄りが受講するなど、規 模も徐々に大きくなり、社長は多忙な毎日を送られている。 そういったなか、今年 2 月、日本政策投資銀行が主催する「第1回DBJ女性新ビジネスコンペティショ ン」が開催されることを知る。同時期に九州ニュービジネス協議会が主催する女性起業塾にも入塾し、ビジネ スのノウハウを一から学びなおしたこともあり、思い切ってコンペに参加してみようと考えた。昼間は現場と 雑務をしながら、ようやく夜中に一段落ついてからコンペの準備 に取り組んだそうだ。多くの方々の支援を受けながら、ようやく 応募まで漕ぎ着けると、何と全国643件の応募の中で、ファイ ナリストの10人に残った。東京での最終プレゼンの当日、 “これ まで自分を支えてくれた方々への感謝の気持ちを込めて、事業発 表を行った。 ”という。残念ながら、賞を受賞することは出来なか ったものの、たった一人で始めたパソコン教室が、今では、 『シニ ア層を元気にする会社』として注目を集め始めている。 「脳若トレ ーニング法」を世に広め、 “介護予防のパイオニア企業と呼ばれる ことを夢に描いている”という。 ■今後の取組 ~元気な高齢者で一杯の社会にしたい 「脳若トレーニング」の最大の課題は、 “科学的データを正確に取ることが非常に困難であること”だそう だ。現段階では『長谷川式』による効果測定を行っているが、今後は「みつおか式脳若トレーニング」の科学 的検証を行い、他サービスとの差別化を図れるよう、医療機関や大学との連携を行って行きたいという。 会社名の“サムライト”は、some light と書く。女剣士のサムライでもあり、光を照らす「light」と光岡 の光で、人生の大先輩であるお年寄りを照らしたいという思いもある。 “寝たきり生活が長かった父親の分も、 シニアの方々には楽しい幸せな老後を送って欲しい”と願っている。 これからの日本は超高齢化社会を迎えるが、 「脳若トレーニング法」が発展して、認知機能の低下を防ぐ一 つのツールとして確立すれば、これまでの老後のイメージとは違う新たな老後の姿が見えてくるのではないだ ろうか。 ■活用した施策 2009 年9月 福岡県中小企業振興センターに相談 2009 年12月 経営革新認定、専門家派遣 2012 年 9 月 (株)シティアスコムから投資 ■その他特記事項 2012 年 6 月 日本政策投資銀行主催「第1回DBJ 女性新ビジネスコンペティション」のファイナリスト ■創業予定者に対するメッセージ 今出来ることを一つ一つやる。 机上の論ではなく、まずやってみよう! 25 7.株式会社ワイズ・リーディング 取材日:2011年2月 事業内容で分類 創業形態で分類 地域資源活用 環境・リサイクル・新エネルギー スピンオフ・独立 女性起業 新商品・新サービス開発 ソーシャルビジネス・コミュニティビジネス 大学発ベンチャー シニア起業 「遠隔画像診断サービス」で、地域医療をつなぐ、 ささえる、変革する 株式会社ワイズ・リーディング 代表取締役 中山善晴さん 住所:熊本市飛田3-10-21 電話番号:096-342-7878 FAX 番号:096-344-0202 E-mail:[email protected] HP:http://www.ysreading.co.jp 設立:2007年7月 資本金:2,050万円 従業員数:9名 主要事業:遠隔医療支援事業 ■創業のきっかけ ~地域医療の質の格差を改善 日本の医療機関におけるCTやMRI等の画像検査装置の普及率は世界一である。しかし、画像診断は難し く、一般の医者では診断に苦慮するケースも少なくないため、画像診断専門の医師が必要とされている。 ところが、全国的に放射線診断専門医は不足している。200~400床クラスの中核病院でも1~2名程 度であり、それ以下の個人病院では、CTやMRIの装置はあっても専門医は不在という現実。さらに、専門 医でも経験年数の差や勤務する病院の専門性によって得意、不得意分野が発生するなど、人によってスキルの 差が大きいという現状である。 ・社長は、熊本大学医学部卒業後13年間、各病院の画像診断の専門医として勤めるとともに、地域の病院か らの依頼で、 「週に1度出向いて1週間分の画像診断(読影)をしたり、画像データをCDで郵送してもらい、 読影結果のレポートを送るといった仕事をしていた。 」とのこと。しかし、この方法では、時間の無駄が多く、 肉体的負担も大きい。また緊急時に対応できず、患者への説明も遅くなる等の問題があった。そこで、 「遠隔 診断が地域医療の支援に繋がる。 」と考え、平成19年7月、遠隔読影支援サービスの会社を設立した。 ・さらに平成20年、読影医不足を補うための遠隔画像診断事業を模索していた熊本大学放射線医学教室との 産学官連携事業として、 『くまもと大学連携インキュベータ』の中に 『遠隔画像診断センター』を開設した。 ・インターネットを使った遠隔地の読影サービスは、10数年前か ら大手企業の事業として始まっていたが、読影の質的な問題点が大 きかったため、画像保存通信システム技術を有している富士フィル ムメディカル(株)との共同開発で、社長の遠隔読影ノウハウと大学の 人的資源を活用した独自の“遠隔読影システム”を構築して、新し い遠隔読影事業をスタートした。 【くまもと大学連携インキュベータ】 ■事業のあらまし ~地域密着型読影サービス 『遠隔画像診断センター』のサーバーに、23の提携病院から画像データが送られてくる。社長は、熊本大学 放射線医学教室との連携により、契約読影専門医18名に、各専門分野にあわせて担当振り分けを行う。専門 医は1次読影を行い、診断レポートを提出する。提出されたレポートを見て、専属専門医がダブルチェックの 2次読影を行ったあと、校正担当者が文章を校正して、依頼者の病院にレポートを送るというシステム。 ・ポイントは、1次読影の専門医は 主に自分の得意分野の読影を行うこ と、パソコンさえあれば自宅で仕事 ができるので、通勤時間などの無駄 がなく読影負荷が軽減されること、 振り分けで若い医者のトレーニング (経験)にも活用できること、更に は文章校正の結果、分かりやすい表 現となり、診断レポートの標準化が 26 取材日:2011年2月 なされることなど。 ・依頼する病院側にとっての利点は、人件費削減もさることながら、簡単な画像診断であれば病院側の医師が 行うが、難しい判断の場合、セカンドオピニオンとして読影を依頼することでリスクヘッジにもなる。また、 常勤の専門医がいる施設でも、急患などで読影業務に手が回らない場合、言わば残業処理をしてもらうといっ た業務支援にもなる。 ・毎日の業務をお聞きすると、 「1件あたり150~200枚の画像が ある。1日100件以上の依頼を受け、1次読影の専門医へ振り分け ている。結果は、翌日レポートとして報告をしている。5~10%が 緊急読影の依頼であり、その場合、3時間以内でレポート報告してい る。 」と、ご多忙の様子。 ・システムについてお聞きすると、 「病院側には、画像取り込み伝送設 備を導入してもらい、診断センターには受信設備を備えている。シス テムの維持・保守は、富士フィルムメディカル(株)に委託し、24時 【遠隔画像診断センター】 間トラブル対応をしている。 」とのこと。 ・社長は、創業にあたり、 「全くの素人で、日々の会計管理も分からなかったが、中小企業診断士のアドバイ スで、熊本県立図書館の無料経営相談会を利用した。また、会社経営や事業運営に関する情報は、図書館のレ ファレンスサービスを受けた。 」と言う。さらに、 「患者の個人情報の管理のためには、高いセキュリティ施設 への入居が必要であったが、くまもと大学連携インキュベータを紹介してもらい、インキュベーション・マネ ージャーから何かと指導をいただいた。 」と、感謝の意を込め、当時を振り返る。 ■今後の取組 ~地域の医療を地域の医者がささえる社会 今は医療崩壊の状況であり、地域に医師が適正に配分されてい ない。地域の医師のネットワークを構築し、それぞれ得意分野を 持った医師を地域で共有し、地域を守る事が大事と考えている。 もっと地域の医師の人的資産を有効に活用すべきであるという。 ・ 「ドクターの共有、電子カルテの共有を行い、僻地において専門 外の患者が来た場合、バーチャルで双方向性に診察ができるよう なシステムを作りたい。無医村や診療の専門が違う場合でも、バ ーチャルドクターやネットコンサルティングのような新しい診療 形態が行われるようになれば、医師不足も解消できるのでは。 」と、 今後の抱負を語る社長であった。 ■活用した施策 ・平成20年、くまもと大学連携インキュベータ入居 ・平成21年、(財)熊本県起業化支援センターの投資 【スタッフの皆さん】 ■その他特記事項 ・平成21年、(財)くまもとテクノ産業財団の事業 可能性評価「A」 ・平成22年度 九州ニュービジネス大賞 優秀賞 ■創業予定者に対する メッセージ ■紹介機関からのコメント 病気発見の手段である CT やMRIでの撮影画像を診断できる専門医が全国 的に不足しており、病気の見落とし等、医療の質の低下につながっている。この “地域に役に立つ、自 事業は、ネットワークを通して送られてくる撮影画像を、放射線科専門医が遠隔 で診断(二重にチェック)する画期的なシステムであり、画像診断医不足問題を 分にしか出来ないもの 解消する切り札とも言える、医療の質の向上に大いに寄与するものである。 を” また、このシステムが全国展開されることを期待したい。 ( (社)九州ニュービジネス協議会) 27 8.株式会社ホスピタブル 取材日:2013年2月 事業内容で分類 創業形態で分類 地域資源活用 環境・リサイクル・新エネルギー スピンオフ・独立 女性起業 新商品・新サービス開発 ソーシャルビジネス・コミュニティビジネス 大学発ベンチャー シニア起業 韓国人向けの日本情報の発信により 日本企業のビジネス支援をする 株式会社ホスピタブル 代表取締役 松清 一平さん 住所:福岡県福岡市博多区博多駅東 2-4-30 電話番号:092-432-1678 設立:2007 年 8 月 FAX 番号:092-516-4647 資本金:3,200 万円 E-mail:[email protected] 従業員数:5 名 主要事業:各種情報提供サービス等 HP:http://www.hospitable.co.jp/ ■創業のきっかけ ~日本全国の企業に喜ばれる、近所のニッチ市場の開拓を目指して 大学卒業後、地元の放送局に入社、テレビやラジオの制作・営業を経験した。 1998 年、JR九州が福岡市と韓国釜山市を結ぶ高速船ビートルを就航して7年でありながら、今ほど渡 航が頻繁でなかった当時、ビートルで行く韓国の紹介番組を作ることになった。日本から取材陣を組んで現地 では通訳を雇い、釜山の町の紹介番組を作ったものの、通訳を介したやりとりだけで、出来の悪いものになり、 言葉が分からないと駄目だと感じた。 その後、その時の失敗が心に残り、何とか挽回を図りたい、もう一度良い番組を作りたいと思うようになり、 韓国語を学び、事前のリサーチも行い、1年後、ちょうどブームになって来た石焼きビビンバの発祥の地の取 材をすることになった。普通、日本人の観光客が行かないような田舎を訪れ、韓国語で取材をしたところ、日 本のテレビ局が初めて来たといって歓迎を受け、話が盛り上がり次々と新しい情報を話してくれるようにな り、充実した番組を作ることができた.放送はローカル局に与えられた深夜帯であったものの、思わぬ反響が あり手応えを感じた。 しかし、その後仕事を続けていくうちに、ローカル放送局の限界を感じるようになり、自分の将来の先行き も見えてきて、仕事の魅力が失われていった。 何か変わらなければならないと、在職中に九州大学ビジネススクール(QBS 3期生)に入学し、ビジネス を一から勉強し直した。大学院での学習中に起業の準備を始め、何かアジア向けのビジネスをしようと考えた。 その時に考えたのが、現在のビジネスモデルの原点となる論文であり、最優秀賞を受賞し、QBSを次席修了 (MBA取得)した。 そのビジネスモデルのターゲットが韓国。メディアも国際化と言いながらアジアに向けたアプローチは何も していなく、日本の人口の半分の 5,000 万人の消費市場がある韓国をビジネスの対象の国として、もっと相 手のことを調べてみようと考えた。 すると、日本人が抱いているイメージほど、韓国の人は日本人が嫌 いでは無いこと。日本よりインターネット社会であり、ネットによる 口コミが重視されているなど、日本のように匿名性がなく、ネットに よる情報の信用力が高いことが分かった。またその特徴は、他の中国 など他のアジアの国とも異なっていた。 また、韓国の人からみれば、日本は好き嫌いよりも気になる国のナ ンバーワンであり、きちんとした日本の情報を求めていると感じた。 それで、韓国のブログサイトの記事に多くの読者を持ち、発言の影 響力のある「パワーブロガー」と呼ばれる人たちを九州に呼んで、温 泉などの観光地や名物料理、地元の商品などに触れて貰い、その感想 を自分のブログに載せて貰う事とした。 2007 年5月会社を辞め、8月に外国人向けの観光・物産等の各種 情報提供サービス業として、(株)ホスピタブルを自己資金 300 万円で 設立した。 28 取材日:2013年2月 ■事業のあらまし ~韓国人向けに日本の情報を韓国語のブログで発信する すべての社員が韓国語をしゃべることができる。しかし、ただの韓国好きや話せるだけの人間ではなく、ビ ジネス感覚を持った人間を採用しているとのこと。スタッフのほぼ全員がメディア事業を経験し、外国語が堪 能なため、通常の広告事業への対応ができ、韓国への折衝・事業展開を外注すること無く対応できる事が強み である。 会社設立に当たっては、将来の資金計画を十分に立て、資本金の増資の際も、出資して貰った個人株主に税 制優遇を受けられる「エンジェル税制」を活用するなど、金融機関からの融資やベンチャーキャピタルからの 投資を受け、着々と資金調達を図ってきている。特に、取引先の会社の社長にエンジェル投資をして貰ったこ とで、株主名簿に著名な取引先の代表者があることを見た金融機関の反応が変わるなど、会社の信用力が増し たという。 日本を訪れる韓国人観光客の9割 が個人であるが、旅行ガイドブックが 少なく、案内ガイドも居なく、主にイ ンターネットで情報を収集している ことが分かり、2009 年4月、日本 を旅行する韓国人のための情報ブロ グサイト「99s(キューキューズ) 」を開 設し、日本の情報をスタッフが韓国語 で紹介している。 2012 年1月には、博多駅そばの本社事務所の横に、拠点ショップ 「HAKATA101(ハカタ・イチマルイチ) 」を開業した。地域のこだわり商品をア ンテナショップ代わりに委託販売をすると共に、韓国語で対応する韓国人 旅行客の駆け込み寺となっている。 韓国、釜山市内の大学では、日本語を話せる学生が毎年 400 人以上育 っており、日本の企業への就職を希望していることから、2013 年1月、 韓国人大学生向けの日本企業の就職情報サイト「99s Job Japan」を 開設した。海外展開のため韓国人社員を希望する企業の代わりに、会社説 明会や書類選考、面接の代行等の業務も別料金で請け負っている。さらに、 「人材発掘ツアーin釜山」 (3泊4日)といった企画を作り、日本企業 の採用担当者のためのツアーも行っている。 ■今後の取組 ~「機会」と「結果」へ導く、 「交流の場」を創造する 会社の強みは、日本の商品・サービスを韓国語で伝える媒体をWeb・地図など複数保持し、日本好きな韓 国人の個人情報を所持していることと、リサーチにより、韓国人の 20~40 歳代の消費者の動向を把握して いることである。就職情報サイトに加えて、2013 年3月、経営革新計画を取得して、韓国の個人への日本 商材の販売ならびに、福岡の立地を生かした輸出業と輸出を希望する日本全国の企業を対象としたワンストッ プサービス・リテールサポートを開始した。 現在、代理店3社、会員数2万人だが、福岡だけで無く全国他の地区でもサービスの提供を行うと共に、 2014 年には、全国の代理店を20~30社、総会員数・読者数を20万人に増やしたい。また、通信販売 事業にも取りかかり、日本の商品の輸出を行い、近い将来に上場を目標としている。 ■活用した施策 ・2009 年 11 月エンジェル税制事前確認書交付 ・2013年2月経営革新計画承認 ■その他特記事項 ・2009 年 9 月福岡市ステップアップ助成事業奨励賞 ・2011 年 6 月九州ニュービジネス奨励賞 ■創業予定者に対するメッセージ スタートアップの資金調達にエンジェルは必須であり、1期目から営業 CF を獲得する術を別途に持つこと を推奨します。甘い期待は禁物です。理由1)日本の金融機関や VC、そして取引先にしたい大手企業は技術 革新・サービスイノベーションを評価してくれません。説明に軽く1年以上を要し費用対効果が合いません。 理由2)事業計画遂行中に起こる天災や社会情勢等の外部リスクには、金融機関は誰も救済や猶予への理解を 示しません。理由3)設備投資・開発は必ず内製化を。外部委託を行うと 100%トラブルを生みます。 29 創業支援の見える化 〜九州地域の創業事例から〜 平成25年3月 発行 発行 九州経済産業局 地域経済部 新産業戦略課 〒 812-8546 福岡市博多区博多駅東2-11-1 電話:092-482-5438 FAX:092-482-5390 http://www.kyushu.meti.go.jp/ 問い合わせ先:(同上) 編集協力・監修 九州産業大学 経営学部産業経営学科 准教授 小野瀬 拡 30