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実施レポート
平成27年度アドバイザー事業報告書
研究テーマ「保育に生かす音楽療法」
《参加園及び実施年月日》
・社会福祉法人さとに会湖山保育園
平成27年10月13日(火)
・鳥取市立ひかり保育園
平成27年11月11日(水)
《はじめに》
同じ講師によるアドバイザー事業の取り組みは、一園は5年目、一園は2年目となる。
それぞれの園には発達の気になる子どもや愛着状況の気になる子ども、自分の気持ちを激し
く出す子ども、逆にうまく表出できない子ども等、いろいろある。そんな子どもたちの音の
表現はまさに気持ちの有り方そのもので、安定感と共に穏やかな音を出したり自信を持って
力強く音を出したりする子どもが増えている。日々の音遊びの実践の中で子どもの成長を実
感し、職員が保育の中にごく自然に音遊びを取り入れられるようになったことは同じ講師の
もとでの継続の結果であると思う。
今年度は両園ともに、例年行っている公私立保育園保育士の研修の場として提供せず、2
園職員参加のもと(ひかり保育園実施日は園児の胃腸炎発症者が多く、該当園の職員のみ参
加)
、しっかりと自園の子どもの実技研修及び職員研修の場とした。10月下旬、鳥取市保育
園会保育士部会実技研修会で同講師を招き、多くの保育士が研修の機会を得た為である。今
回の事業では日頃、取り組んでいることの振り返りとなり、更に新しい手法や知識を得て保
育に生かすことができるという意味でも大切な研修となった。特に講師より、子どもや職員
の育ちを認められたことは両園共に大きな励みとなった。
◇平成27年度アドバイザー事業報告書
研究テーマ「保育に生かす音楽療法」
社会福祉法人さとに会
湖山保育園
・研修日時
平成27年10月13日(火)
・場 所
湖山保育園
○子どもの姿と保育目標
本園は、近郊に幼稚園、小中学校や大学、公共の公園等がある。年々田畑が宅地になり新
興住宅地として広がりつつあるが自然は豊かである。
保護者の通勤途上で利用されることもあり、校区外から登園している子どもも多く、核家族
が大半を示し保育園で長時間過ごす子も多い。
子どもの実態として、明るく活溌でのびのびとしているが、近年、ネット社会の普及にと
もない子どもたちを取り巻く環境も以前と随分変わり、自分で考えて行動ができにくく、指
示待ちの傾向が見られる。また、人と話す、自分の気持ちを言葉や体で表現することが弱い。
また、お互いに話しが聞き合えず意見の食い違いや、上手く相手の話を聞き入れ伝えること
ができにくい姿も見られる。
体を動かして遊ぶことは好きだが、足腰や筋力の弱さが気になる。子どもの姿に、何か自信
がなく、消極的な姿も見られる。
このような実態を踏まえ、
「仲間とともに生きいきと活動する子ども」をテーマに、友だちと
様々な体験活動を通して苦手なことにも挑戦しようとする力、
「やればできる」といった達成
感、満足感を自信につなげ、「自分でもできる」「できた」といった自己肯定感が味わえられ
るよう日々努めている。
自分の気持ちを言葉や態度で表現することが弱く、コミュニケーションが取りにくい子ど
もの実態が見られる本園において、
「保育に生かす音楽療法」はとても適切な取り組みである
と考える。音楽の持つ様々な機能を用いながら、身体を動かしたり、楽器で自分の思いを表
現したり、楽器で友だちとやり取りをし、一緒に音を出す楽しさ、音に合わせて止まったり
コントロールする、楽器の順番や演奏の順番を待つ等、「自己表現」「コミュニケーション」
「共感」
「社会性」等、子どもたちの育ちの中で大切な要素を捉えながら、職員も音あそびの
主旨を再確認し実践していきたい。
事業報告内容
1.子どもの実技指導
【集団セッション】
〈
0歳児 〉
・マラカス 〜どんぐりころころ、おつかいアリさん 〜
・果物マラカス
・マラカスならそう 〜お腹のすいたうさちゃん〜
・太鼓をたたこう 〜おもちゃのチャチャチャ〜
・オーシャンドラム
〈
1歳児・低月齢 〉
・マラカスならそう 〜どんぐりころころ、お腹のすいたうさちゃん〜
・太鼓であそぼう 〜太鼓をたたこう〜(歌に合わせてたたく。太鼓でおはなし)
・オーシャンドラム
・ツリーチャイム
〈
1歳児・高月齢 〉
・マラカスならそう 〜どんぐりころころ、お腹のすいたうさちゃん〜
・太鼓であそぼう 〜太鼓をたたこう〜(歌に合わせてたたく。太鼓でおはなし)
・とべとべシンバル
・オーシャンドラム
・ゴム鈴
〈
2歳児 〉
・タンバリン
・マラカス
・太鼓であそぼう〜太鼓をたたこう〜(太鼓でおはなし)
〈
3歳児 〉
・ゴム鈴をならそう〜上下振り、ぐるぐるまわそう、ゴーストップ、大きな輪小さな輪
・太鼓をたたこう
・とべとべシンバル
・ハンドベル 〜2グループに分かれて交代で打つ〜
〈
5歳児と参加職員の実技指導 〉
・カスタネット 〜友だちさがし〜
・太鼓をたたこう
・とべとべシンバル
・グループごとに曲に合わせて合奏をする(好きな楽器、好きな鳴らし方)
・トーンチャイム
2.講話
「今日の活動の振り返り」 下川先生より
0歳児
・太鼓は少したたいて休みの繰り返しでする。
・たたくテンポも速い。犬のおまわりさん8分音符でする。
・バチの扱いについて
乳児9カ月でバチを1本持ってたたくことができる。
バチの取り扱いで口の中にいれる、なめる姿がある。
バチが横振りになってしまう。これは筋力の関係である。
・オーシャンドラムは見る活動としてはいい。中の動くキラキラがいい材料である。
・0歳児から身体を揺らすことが好き。
振る、こっつんこ、コミュニケーションをとることで、子どもの世界が広がっていく。
1歳児
・1個のタンバリンで遊べる。
・意外性のある動きをとると子どもは好きである。
ウサギが食べる。
(色分け、果物を種類別に)
●子どもを主にして活動を進めていくことが大切である。
自分たちでどうするのかを見守っていくことが大事である。
・楽器はいろいろな使い方があることも体験する。
・ゴーストップも子どもの様子を見ることが大切である。
2歳児
・子どものテンポに合わせるのは難しいので、アカペラでも十分。
・太鼓でやりとりが出来た子どももいた。
・相手の模倣をまずしていく。
(相手に気付くことが大切である)
言語指示が十分入っていない子もある。(周囲の様子を見て気づき分かってくる)
・オーシャンドラムはゆっくりしていくのは、難しいので少し保育士が手を添えてしてい
く。
・マラカスでいろんな表現を楽しむことができた。自分の動きがあっていい。
●独創的な表現が乏しい。
子どもの時から個性を楽しみに認めていく。
小さい時から○○ちゃんの動きおもしろいね。と認めていく。
3歳児
・自分の番がくることが待つことができた。
・ハンドベルは2グループに分かれて交代して打つ。
・音が同じだと思っている。違いが分かるのは4歳ぐらいからである。
・太鼓でお話しもできる。
・個々の違いを認め合うことも大切にしていく。認めてもらうことにより自分の表現がで
てくる。
(恥ずかしいと止めてしまう)
3.今後に向けて
当園において5年目の研修になり、下川先生の実技指導と講義を重ねるごとに、下川先
生が大切にされている音あそびを通して、一人ひとりの表現の違いを認め、音を介してコ
ミュニケーションを図っていくことの技法を学ぶ機会をあたえていただいた。
研修を受ける度に音の持つ力は不思議だと子どもの表情を見て感じることができる。嬉し
そうな表情、音に自然に引き込まれる姿、自己表現する嬉しさ、一緒に味わう楽しさ等、
「音
楽」
「楽器」の持つ大きな力を職員も感じることができている。だからこそ、音あそび
の楽しさ、一人ひとりの表現の違いを生かす、その視点を保育の中に取り入れていくことの
大切さが分かり、日々の保育の中で実践できるようになってきている。
しかし、まだまだ子どもは様々な気持ちや思いを外に表出する力を持っているが、私たち大
人が型にはめがちになり、上手くその力を表出しきれていない課題もある。
型にはめないで、普段の遊びの中で楽器
音に触れる機会をつくり、楽しみながらリズムを
とり、自分の気持ち、思いが言葉や身体で表現していく嬉しさを音あそびの中から引き出し、
一人ひとりの違いを認め、子ども同士、子どもと保育士がつながっていく心地良さを感じら
れることを引き続き目標としていきたい。
◇平成27年度アドバイザー事業報告書
研究テーマ「保育にいかす音楽療法」
鳥取市立ひかり保育園
・研修日時
平成27年11月11日(水)
・場 所
鳥取市立ひかり保育園
○子どもの姿と保育目標
本園は静かな農村地帯に位置するが、近くに工業団地があることから校区外より登園し
ている子どももある。卒園すると複数の小学校へ進み、過疎化の進む地域にあって一学年
あたりの子どもの数は少ない。子どもの実態としてはいろいろな活動に意欲的に取り組む
姿や思いがあっても自らは踏み出せない姿、自分の思いをうまく表現できない姿や強く出
し過ぎて友だちとのコミュニケーションが取りにくい姿等、いろいろな姿が見られる。保
育園・小学校と限られた少数の友だち関係の中で過ごす子どもたちが、日々、自信を持っ
て自分らしく生活できるよう、又、友だちのそれぞれの違いを大切に受け止められるよう
「えがおかがやく
取り組んでいる。
ひかりっこ」のテーマのもと、以下のような保育目標をあげ、保育に
①基本的生活習慣を身につけ、健康でしなやかな心と体を育てる。
②友だちや様々な人とのかかわりを通して、遊ぶ楽しさや思いやりの心を育てる。
③考えたことや思っていることを話したり人の話を最後まで聞いたりする態度を育てる。
④飼育栽培活動などを通して命の大切さを知らせる。
「子どもが音楽に合わせるのではなく、音楽が子どもに合わせていくことから始まる」と
いう音楽療法を取り入れて 2 年目。その活動の中で子どもたちは自分らしい音の出し方や身
体表現、相手の呼吸を感じながらの音遊びが少しずつではあるができるようになり、生活の
中でも安心して自己表出できる場面が見られるようになった。
「一人ひとりの表現はみんな違
ってみんな素晴らしい。
」
・・講師の音遊びの際の持論は日々の保育の中でも大切なことで、
職員が子どもにかかわる中で、指標となっている。
事業報告内容
1.子どもの実技指導
【集団セッション】
<0 歳児>
・果物マラカス ~たまごのうた、おつかいありさん、こんこんくしゃん~
・オーシャンドラム
・太鼓 ~いぬのおまわりさん~
<1 歳児>
・果物マラカス ~こんこんくしゃん、マラカスこっつんこ、~
=助言=
*先生はピッチャー、子どもはキャッチャーです。子どもの正面でしましょう。
*子どもの前にマラカスを出し、子どもからこっつんこしてくるか見ていきましょう。
・太鼓 ~おもちゃのチャチャチャ~
=助言=
*輪になり、椅子に座ると安定します。
*先生が次の子どもの前へ太鼓を移動させず、子どもが満足するまで打たせましょう。
*複数の子どもが一度に太鼓をたたきたくなるので、一人でたたけるように。
・おなかのすいたうさちゃん (一人ひとりのマラカスをたべさせていく)
・シンバル ~バスごっこ~
・ツリーチャイム ~キラキラ星~
<2 歳児>
・果物マラカス
音楽にあわせて振る、止まる、振る、止まる、マラカスこっつんこ
~マラカスならそう、とんでったバナナ~
・おなかのすいたうさちゃん (一人ひとりのマラカスを食べさせていく)
=助言=
*子どもが振る姿を見ていろいろな動きを引き出していきましょう。
・太鼓 ~太鼓をたたこう、さんぽ、おもちゃのチャチャチャ~
・シンバル ~とべとべシンバル~
・絵本を使って 「かえるがぴょーん」の絵本の登場する動物にシンバルで音をつける。
子どもの身体表現もあわせて。
・ツリーチャイム ~きらきら星~
・オーシャンドラム ~うみ、あめふりくまのこ~
<3 歳児>
・カスタネットでともだちさがし(相手の違う二人組み→円) ~ともだち賛歌~
・太鼓 ~太鼓をたたこう~
・いろいろな楽器で遊ぼう
グループ発表(マラカス、ツリーチャイム、太鼓、ウッド
ブロック、レインスティック) ~きらきら星~
<4 才児>
・カスタネットでともだちさがし(2 人→4 人→8 人→全員で輪に)
・太鼓(リーダー 職員から子どもへ) ~さんぽ、線路は続くよ~
・お話に音をつけよう
グループ発表
(小太鼓、ウッドブロック、シンバル、太鼓、マラカス)
「ぞうくんのさんぽ」の話を曲にあわせて
・ハンドベル 和音に別れてグループ発表(職員も楽器で参加) ~赤鼻のトナカイ~
・リボン (音楽にあわせ、新体操用リボンを自由に回す)
<5 歳児>
・太鼓(リーダー 職員から子どもへ)~太鼓をたたこう、夢をかなえてドラえもん~
・お話に音をつけよう グループ発表
(鉄琴、ウッドブロック、トライアングル、太鼓、ツリーチャイム、オーシャンドラム、
レインスティック、マラカス)
「大きなかぶ」の話
・トーンチャイム
2.ふりかえり
○年齢にかかわらず、お話を音で表現する事ができる。
・
「ぴょーん」「ぞうくんのさんぽ」「大きなかぶ」を実践したが、楽しい表現ができた。
一人一人の表現を大切にして欲しい。
○年齢の低い子どもが太鼓やシンバルを鳴らす活動では椅子に座って円になると周りの人
が見えたり順番がわかることで見通しがついたりして、安心できる。
○ハンドベルを和音で分けると楽しいグループ発表ができる。
○質疑応答
Q:太鼓をたたく力が強すぎる子に対しては?
A:太鼓はたたく為に作られているので少々の力では破れない。シンバルはそうではな
いので、予め薄さを見せておき、強く鳴らすと壊れることを知らせておくと良い。
Q:
「太鼓でお話」でずっとたたき続けている子どもにはどうすれば良いか?
A:職員が見本を見せると良い。二人が同時に終わる・ずらして終わる・音が徐々に小
さくなって終わる等。
○楽器について
・いろいろな楽器を使っての効果的な鳴らし方や子どもへの提示の仕方の指導を受ける。
・職員手作りのオーシャンドラムやゴム鈴を紹介する。マスク用ゴムを使ってのゴム鈴
は握力の弱い子ども(脳性まひ、低年齢)には適切であるとのこと。
3.今後に向けて
本園で音楽療法を取り入れてから 2 年目になり、日々の保育の中で少しずつ経験してき
たことで、子どもにとって音遊びが身近なものとなっている。
「失敗は嫌、何でも上手にし
なければ・・。」といった思いの強い子には心を開放できる場に、又、自分本位の思いの強
い子には楽器を通して友だちを意識したり呼吸を合わせたりする場になり、改めて素晴ら
しい活動に取り組んでいることを実感する。子どもたちが更に伸びやかに表現できるよう
になる為には職員一人ひとりがもっと自由で柔軟な発想や気持ちを持ち、子どもたちを見
守ることが必要であると思う。今後も楽器や音楽の力を借りながら、子どもの内面から湧
き出た表現を大切にしていきたい。
《おわりに》
下川先生の実技指導・アドバイス・講義を受ける中で、子ども1人ひとりの表現を細やか
に見ること、受け入れること、個々にスポットライトを当て、自信へとつなげていくことの
大切さを再認識した。先生の声は決して大きくないが、子どもたちがスムーズに行動に移し、
素直に音遊びを楽しむ様子がうかがえるのはきっと、音楽により心が開放されると共に、ど
んな表現をも素晴らしいと受け止めてもらっている安心感、又、次の活動への期待感からだ
と思う。これは、日頃の保育の場面でも心していきたいことである。
今回は他園の職員は招かず、両園の職員のみの事業となったが、それぞれの園でしっかり
実技指導を受ける事ができた。今後の保育にいかしていきたい。
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