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文献からみた国内におけるカンガルーケアの方法
NAOSITE: Nagasaki University's Academic Output SITE Title 文献からみた国内におけるカンガルーケアの方法 Author(s) 大石, 美寿々; 浅田, 祥子; 黒木, 恵美; 伊達, 香菜子; 三山, 智世; 中尾, 優子 Citation 保健学研究. 2006, 19(1), p. 21-26 Issue Date 2006 URL http://hdl.handle.net/10069/9773 Right This document is downloaded at: 2017-03-31T11:01:33Z http://naosite.lb.nagasaki-u.ac.jp 保健学研究 文献 か らみた国内 にお けるカ ンガルーケアの方法 大石美寿々 1 ・浅 田 祥子 2 ・黒木 伊達香菓子 4 ・三山 智世 5 ・中尾 要 恵美 3 優子 6 医学 中央雑誌で検索 した原著論文 6 4 編 を用い,各施設で行 われているカンガルーケアの方法及び 旨 効果の実態 を調査 した結果,以下のことが明 らか になった. 1.カンガルーケアの定義 として,「 児 と親の肌 と肌が直接接触す るように抱 く」がいえる. 2.低 出生体重児 ・成熟児双方 において,「 呼吸の安定」 はカンガルーケア実施の必須項 目といえる. 3.実施時間,持続時間,抱 き方 に一定の基準 はない. 4.カンガルーケアの発祥地ボゴタで行 われた当初 に比較 し,多方面での効果が明 らか になっている. 日本 では特 に,愛着形成 において効果的であることが示唆 される. 保健学研究 1 9( 1 ) :2 ト2 6 ,2 0 0 6 Ke yWor ds Ⅰ 緒 カンガルーケア,愛着形成,低出生体重児 看 そ こで,各施設で実施 されているカンガルーケアの方 カンガルーケアは低 出生体重児 を裸 のまま,母親が乳 房 の間に直接肌 と肌 を触 れ合 わせ抱 っこするとい う比較 法及 び効果 について文献的に検討 した. これによ り若干 の知見 を得 たので報告す る. 的単純 な晴育方法で,1 9 7 9 年 に保育器 などの設備が充分 yとMa r t i ne z でないコロンビアのボゴタで始め られ, Re Ⅱ 対象および方法 によって報告 された.このケアにより児の体温 は保 たれ, 1.研究方法 体重 は増加 し,死亡率の減少がみ られた.同時 に養育遺 医学中央雑誌でカンガルーケアをキーワー ドに検索後, 棄が減 り,母子の愛着形成 に効果的であるとの報告 もみ 原著論文のみ を使用 し,カンガルーケアの定義,方法, られた 1).そのため ,1 9 8 0 年代 よ り欧米 な どの先進国の 及び効果 について記載 されている部分 を抽 出 して各 々に NI CUで も取 り入れ られるようにな り,ハ イ リス クの母 ついての比較 を行 った. 子 の関係性の発達促進 に効果 をあげている. 近年,わが国において も新生児医療 の場 で タッチケア 2.研究対象 や カンガルーケアが取 り入れ られるようにな り,多 くの 医学 中央雑誌 にて,1 9 9 5 年 4月か ら2 0 0 5 年 9月 までに 文献で児 の情緒の安定,静睡眠の増加,良好 な体重増加 掲載 され,カンガルーケアをキーワー ドに抽出 される原 な どに効果があ り,母児 の愛着形成 に有効 であることが 著論文 は6 4 件であ り, この うちカンガルーケアの定義, 報告 されてい る2). また,子 どもは出生直後か らの母子 方法,効果のいずれ も掲載 されていない 1件 を除 き,6 3 相互作用 によって人間 としての基本的な信頼 関係 を確立 件 を研究対象 とした. してい くといわれてお り, この ような身体 的接触 は正常 新生児 の場合 で も同 じように効果があることが知 られて 3.研究対象の背景 カンガルーケアが どの地域で行 われているか 日本地図 いる. これ らの報告 を受 け,正常新生児 とその母親 に対 に書 き出 していった ところ,神奈川県の聖マ リアンナ医 して もカンガルーケアが実施 され始めている2). 一方で,方法や効果は未 だ研究段 階であるため,カ ン ガルーケアの定義や方法 は各施設で異 な り,国内 におけ 科大学横浜市西部病院か らは じまったカンガルーケアは 2 0 0 5 年 まで に全国に普及 していた. また,NI CUにおけるカンガルーケアと正常分娩後のカ る一般的な効果的方法 としてマニュアル化 されていない とい う現状がある. ンガルーケアにおいてはその方法 ・効果が異なることから, 1 花 みず きレデ ィースクリニ ック 2 淀川キ リス ト教病院 3 熊本赤十字病院 4 国立病院機構小倉病院 5 長崎大学医学部 ・歯学部病院 6 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 -2 1- 保健学研究 保健学研究 対象文献 NI C U 対象文献を二分 を二分し,別 し,別々 々に比較 に比較 した.その際, した.その際 ,N I C Uに に おける児 を低出生体重児 出生体重児,正常分娩 における児を成熟児 を成熟児 お ける児 を低 ,正常分娩 における児 とした.低 とした.低出生体重児及 出生体重児及び成熟児 び成熟児に対す に対するカンガルーケ るカンガルーケ 2 2. .カ カンガルーケアの方法 ンガルーケアの方法 2 . 1カンガルーケア実施条件 カンガルーケア実施条件 2 . 1 実施条件 る文献 は,低 の カン 実施条件を記載 を記載 してい している文献 は,低出生体重児 出生体重児のカ ン 1) ) .文献の の アの文献数の推移 の推移は以下 は以下の通 の通 りであ りである る ( ( 図1 アの文献数 図 .文献 1 件,成熟児 ガルーケアに関す 2 1 件,成熟児の のものが ものが6 6件 件で で ガルーケアに関する るものが ものが2 研究対象が看護師や助 研究対象が看護師や助産師の 産師のもの, もの,カンガルーケアの対 カンガルーケアの対 あった. あった. , 5 8 件の文献 のうち,低 うち,低出生 出生 象が明確でない ものを除いた 象が明確 でない もの を除いた5 8 件 の文献 の 低 修正在胎週数」 「 修正在胎週数」の の 低出生体重児 出生体重児に関す に関する文献 る文献で では, は 「 体重児 ンガルーケアに関す る 1 件 4 1 件,成熟児 ,成熟児の の 体重児のカ のカンガルーケアに関す るものが ものが4 条件 1 件 9 件 9 0 . 5 % ) であ 2 1 件中 中1 1 9 件 ( ( 9 0 . 5 %) であり, り, 条件を示 を示していた していたものは ものは2 カ ンガルーケアに関す る 7 件 1 7 件である.低 である.低出生体重 出生体重 カンガルーケアに関す るものが ものが1 そのうち うち 「 「 3 2 週以 降」が 1 7 件 ( ( 修正在胎週数の条件 の条件を提 を提 3 2 週以降 」が 1 7 件 修正在胎週数 その 児 る ものは 0 0 0 年 i o - クに減少 2 0 0 0 年をI をピー クに減少してい している一方, る一方, 児に関す に関する ものは2 8 9 . 5 %) ,「 3 3 週以降」が 2件 件 ( ( 修正在胎週 示した文献 した文献の の8 示 9 . 5 %) ,「 3 3 週以降 」が 2 修正在胎週 成熟児 ,2 0 0 5 年は は 成熟児に関す に関する るものは増加 ものは増加 している.ただ している.ただし し,2 0 0 5 年 1 0 . 5 %)で であ あった. った.また, また, 数の条件 の条件を提 を提示 示 した文献 した文献の の1 0 . 5 %) 数 1-9 - 9月のみであ 月のみであり,比較対象 り,比較対象としない. としない. 1 1 件 体 5 件 「 呼 安定 2 1 件全 全て て, ,「 「 体温 温の の安 安定 定」 」は は1 1 5 件 「 呼吸 吸の の安 定」 」は は2 ( 7 1 . 4 %) 表 . ( 7 1 . 4 0 / .)で条件 で条件とされていた とされていた ( ( 表 2) 2) . , ( 件 ( 悼) ) 成熟児 アプガールス 以下 成熟児に関す に関する文献 る文献で では, は 「 「 アプガールスコア コア ( ( 以下 Ap と略) 8 8点以上」 点以上」が が6 6件全 件全て てに提示 されてお り, り, 「 経 A pと略) に提示 されてお 「 経 9 腰分娩」は 4件 件 ( ( 6 6 . 7 %) ,「 「 児のバイタルサイ ンの正常」 膿分娩」 は4 6 6 . 7 %) , 児のバ イタルサ イ ンの正常 」 8 2件 件 ( ( 3 3 . 3 %)で条件 で条件 とされていた. とされていた. が2 が 3 3 . 3 %) 7 表2. 2.低 低出生体重児 出生体重児のカ のカンガルーケア実施条件 ンガルーケア実施条件 表 6 n-2 2 1 n 1 5 項 項 4 3 2 件数 ( ( %) 件薮 %) 目 目 「 修正在胎週数」 「 修正在胎週数」 ( その うち, 3 2 週以降 ( そのうち ,3 2 週以降 3 3 週以降) 3 3 週以降) 1 9 ( 9 0 . 5 ) 1 9 ( 9 0 . 5 ) 1 7 1 7 「 呼吸の安定」 「 呼吸の安定」 2 1 ( 1 0 0 . 0 ) 2 1 ( 1 0 0 . 0 ) 2 2 1 0 耳 ♂ ぜ ♂ ♂ 2 . 2 2 . 2カ カンガルーケアの方法 ンガルーケアの方法 実施条件を記載 を記載してい している文献 る文献は,低 は,低出生体重児 出生体重児のカ のカン ン 実施条件 2 9 件,成熟児 ,成熟児の のものが ものが1 1 2 件で で ガルーケアに関する るものが ガルーケアに関す ものが2 9 件 2 件 1. .カンガルーケア文献数の推移 カンガルーケア文献数の推移 図1 図 あった. あった. ( ヨカ ( ヨカンガルーケア実施時期 ンガルーケア実施時期と持続時 と持続時間 間 Ⅲ Ⅲ 結 結 果 果 低 時期 に関す 低出生体 出生体重児 重児の場合 の場合, ,実施 実施時期 に関する具体 る具体的 的な な日 日 1 .カ ンガルーケア定義 1.カンガルーケア定義 数の記載 の記載はなか はなかった. った.実施 実施時 時間 間は,初 は,初回の実施 回の実施につ につい い 数 6 3 件中 中3 3 0 カンガルーケアの定義を記載 を記載 していた文献 していた文献は は6 3 件 0 カンガルーケアの定義 2 9 件中 中5 5件 件 ( ( 1 7 . 2 %) に記載があ り, 5 5-3 0 分でば ら て て2 9 件 1 7 . 2 % ) に記載が あ り, -3 0 分で ばら 2回 回 目以 目以降 降の の実 実施 施は は2 2 9 件中 中1 1 5 件 つ きが きがみ み られ られた た. .2 つ 9 件 5 件 件 であ った. 件であった. 3 0 件 9 件 3 0 件の文献 の文献の のうち定義が明確 うち定義が明確に記載 に記載された された2 2 9 件を対象 を対象 , , 抱っこ」 っこ」 「 児と と とし,キーワー キーワー ドを抽 ドを抽出 出した したところ,「 ところ 「 とし, 抱 ,「 児 , 親 ,「 母親が行 」の 「 母親が行う う」 の3 3つが挙 つが挙 親の肌 の肌 と肌が直接接触す と肌が直接接触する」 る」 ( 5 1 . 7 %)に記載が に記載 があ あり, り,2 0 分∼ ∼2 2時 時間以 間以内 内とば とばらつ らつき き ( 5 1 . 7 %) 2 0 分 がみられた. られた. がみ 1 2 件中 中 成熟児の場合,実施時期 の場合 ,実施時期を記載 を記載 していた していたものは ものは1 成熟児 2 件 げ 抱 び 「 児 の肌 と肌が げられた. られた.この このうち うち 「 「 抱っこ」及 っこ」及び 「 児と親 と親の肌 と肌が 8件 件 ( ( 6 6 . 7 %)あ あり,分娩直後 り,分娩直後の児 の児の処置 の処置 ・ ・ 諸計測の前 8 6 6 . 7 %) 諸計測 の前 直接接触 す る」 9 件 母 2 9 件に共通 に共通 してみ してみられ, られ ,「 「 母 直接接触す る」に関 に関しては しては2 後 処置 諸計測前」 が3 実 「 処置 ・ ・ 諸計測前」が 3件 件 ( ( 実 後に分 に分ける けるこ ことがで とができ, き 「 親が行 9 件 4 件 8 2 . 8 %) 表 . 2 9 件中 中2 2 4 件 ( ( 8 2 . 8 %)であった であった ( ( 表1 1) ) . 親が行う」 う」は は2 施時期 7 . 5 %) ,「 処置 諸計測後」 3 7 . 5 %) ,「 処置 ・ ・ 諸計測後」が が 施時期を記載 を記載 した文献 した文献の の3 , 5 実施時期 2 . 5 %) 5件 件 ( ( 実施時期を記載 を記載 した文献 した文献の の6 6 2 . 5 %)であ であった.実 った.実 表 表 1. 1.カンガルーケア定義 カンガルーケア定義キーワー キーワー ド ド 項 項 目 目 「 抱っこ」 「 抱 っこ」 「 児と 親の肌と 肌が直接接触する」 」 「 児 と親の肌 と肌が直接接触する 施時 間は1 2 件 4 1 . 7 %) 1 2 件中 中5 5件 件 ( ( 4 1 . 7 %)に記載があ に記載があり, り, 5 5件全 件全て て 施時間は n-2 9 が「 「 最長2 2時間 時間」 であった. った. 」 であ が 最長 件数 ( ( %) 件数 %) 2 9 ( l o o . 0 ) 2 9 ( 1 0 0 . 0 ) 2 9 ( 1 0 0 . 0 ) 2 9 ( 1 0 0 . 0 ) ②カンガルーケアの抱 カンガルーケアの抱 き方 き方 ② ,2 9 件中 中1 1 5 件 ( ( 5 1 . 7 %)に記載が に記載が 低出生体重児 出生体重児の場合 の場合,2 低 9 件 5 件 5 1 . 7 %) 1 2 件 ( ( 8 0 , 0 %) , あ り, り,「 「 立て抱 て抱 きで きでもたれか もたれかけ ける る」 が1 」が 2 件 8 0 . 0 %) , あ 立 「 立て抱 て抱き」が き」が3 3件 件 ( ( 2 0 . 0 %) であった. 2 0 . 0 % )であった. 「 立 2 -2 2 2- 第1 9巻 第 1号 2006年 成熟児 の場合 ,1 2 件 中 6件 ( 5 0. 0%) に記載があ り, 表 4. カンガルーケアの心理的効果 ( 複数掲載) 4件が 「 腹臥位」 であった. 項 3.カンガルーケアの効果 効果 は大 き く,生理学的効果 と心理学的効果の 2つが 目 「 親子の良好な関係 .愛着の形成」 低出( 生 件) 体重児 2 4 あった.低 出生体重児 のカ ンガルーケアに関す る文献 は 「 親が満足 を得 る」 1 41 件,成熟児 のカ ンガルーケアに関す る もの文献 は1 7 件 「 親 としての実感」 8 「 親の不安の軽減」 6 「 早期産体験の癒 し」 5 「 育児意欲向上」 4 「 辛 さの捕 らわれか らの解放」 1 である.以下 は文献 の重複 もある. 3. 1生理学 的効果 児 の生理学 的効 果 として,「 体温維持 」 の効 果 を記 載 成熟児 ( 件) 4 0 0 0 0 0 4 してい た もの は,低 出生体 重児 に関す る文献 で 4件 , 成熟児 に関す る文献 で 5件 で あ った. 「 呼吸安定」 は, 低 出生体 重児 で 3件 , 成 熟児 で 3件 で あ った. 「 循環 系安定 」 は低 出生体 重児 で 3件 ,成熟児 で 2件 であ っ た. Ⅳ 考 察 今 回の研 究では,原著論文 を使用 し,国内 にお けるカ ンガルーケアの定義,方法,効果 を比較 した. 「リラ ックス状 態 ・静 睡眠増加 」は低 出生体重児 の文 感染症 をお こさない」 献 にのみあ り, 5件 であ った. 「 も低 出生体重児 のみで 1件 であった ( 表 3) . 1. カ ンガルーケア定義 定義 については, 「 抱 っこ」 及 び 「 児 と親 の肌 と肌 が また,母親 の生理学 的効 果 と して, 「 母乳分泌促進 」 , 直接接触す る」 のキー ワ-ズが対象全件 に共通 してみ ら が低 出生体重児で 2件,それ に付随 し 「 母乳育児推進」 れ, カ ンガルーケアの定義 として 「 児 と親 の肌 と肌 が直 が低 出生体重児で 1件 ,成熟児 で 3件 み られた ( 表 3) . 接接触 す る ように抱 く」 とい えるこ とが示唆 された3 3 2 ) 「 母親が行 う」 が高率 にみ られたの は, カ ンガルーケ ア の発祥 となったボ ゴタのサ ンジュア ン ・デ ・デ イオス病 表 3. カンガルーケアの生理学的効果 ( 複数掲載) 院での取 り組 みが母親 か ら始 まった ことに由来す る と考 え られ る1 ) . しか し, その後 カ ンガルーケアが 日本 を含 低出( 生体重 件) 児 成熟児 ( 件) め世界 中に普及 してい く際 に,父親 のカ ンガルーケアを 「 体温維持」 ( 児) 4 5 行 う施設が 出て きた8).その ため,現在 「 母親が行 う」 「 呼吸安定」 ( 児) 3 2 「リラックス状態 .静睡眠増加」 ( 児) 3 3 5 「 感染症 をお こさない」 ( 児) 1 「 母乳分泌促進」 ( 母親) 2 0 0 0 「 母乳育児推進」 ( 母親) 1 3 項 目 「 循環系安定」 ( 児) とい う内容 は定義の中に位置づけ られないか もしれない. 2.カ ンガルーケアの方法 低 出生体 重 児 の実施 条件 で高 率 にみ られ た ものが , 「 修正在胎週数 3 2 週以 降」,「 呼吸 の安定」,「 体温の安定」 の 3つであった.発祥地 ボ ゴタにおいては,在宅 カンガ ルーケアを行 った児 の うち元気 に育 った児 の最低修正在 2 週 であ り,在宅 カ ンガルーケアは体重増加 を 胎週数 は3 3 . 2心理学的効果 待 たず に状態 が安定すれ ば行 うとい う条件 が あったl ) . 「 親子 の良好 な関係 ・愛着 の形成」 は低 出生体重児 に それ を受 け, 日本 で初 めてカ ンガルーケテを実施 した聖 関する文献で2 4 件,成熟児 に関する文献で 4件 であった. マ リア ンナ医科大学横 浜市西部病 院 は, 「 受胎 してか ら 「 親が満足 を得 る」 は低 出生体重児 で 1件 ,成熟児 で 4 3 2 週 以上 た ってい る」「呼吸 ・体温 の安定」 を実施条件 件 であった. として挙 げている33).そのため,上記が条件 に高率 にみ また,低出生体重児 に関す る文献で 「 親 としての実感」 が 8件 ,「親の不安の軽減」が 6件 ,「早期産体験の癒 し」 られ た と考 え られ る. また, 「 呼吸 の安定 」は全 てに記 載 されてお り,実施基準 として必須項 目である といえる. が 5件 ,「 育児意欲 の向上」が 4件 ,「 辛 さの捕 らわれか らの解放 」が 1件 であ った. 加 えて,成熟児 に関す る文献 で 「 母性の発現 ・発達 」 が 1件 であった ( 表 4). 一方 ,成熟児 の実施条件 で は, 「 Ap8点以上」 が全 て 点以上 は正常 であ り, これ に満 たない にみ られた.Ap8 と呼吸 の確 立促 進が必要 となる.その ため, 「 Ap8点以 上」 を条件 と してい る と考 え られ , 呼吸 の安定 とい う 点で低 出生体重児 の条件 に通ず る ものである.低 出生体 重児 が 「 呼吸 の安 定 」 と してい るの に対 し,成熟 児が 「 Ap8点以上」 と表現 してい るの は,成熟児 は分娩直後 -2 3- 保健学研究 にカンガルーケアを実施する とい う実施時期の違いによ 文 る と考 え られる.その他 の条件 の うち,「 経腫分娩」 は 1)Andr e wW,Kat har i neS:Myt hoft hemar s upi al mot he r:Homec ar eofv e r yl owbi r t hwe ghtbai やや高率 にみ られた ものの,成熟児 は条件が一定 してお らず,施設独 自の もの も多かった. これは,カンガルー 献 bi e si nBogot a,Co l ombi a.THELANCET,May, 2 5:1 2 0 6 1 2 0 8,1 9 8 5. ケアは元来低 出生体重児のための ものであったが,カン ガルーケアの普及 に伴い成熟児 にも広が りを見せ ている 2)嶋良子,庭川英子,平野 由紀子 ,田沼公子,池 田申 ため,現在模索の段 階であることによると考 え られる. 之,木下勝之 :分娩直後 のカ ンガルーケアに関す る 実施時期及び持続時間に関 しては,ボゴタで も具体 的 4:4 8 8 49 4,2 0 0 3. 研究.母性衛生 ,4 3)飯 田ゆみ子,横井 昌恵,泉洋子 :事例 にみる看護 の な 日数の条件 はな く,時 間は制限 を行 わなか った1 ) .し か し,聖マ リアンナ医科大学横浜市西部病院では業務 の 実際 都合上 2時間 としていた33).それを受 け,業務 の都合 や 杵 .小児看護 ,1 2:1 6 0 81 61 5,1 9 97. カンガルーケアによって促進 された親 と子 の 面会時間に関連 し,低出生体重児 におけるカンガルーケ 4) 片 山知子,美頭華子,飯沼里美,小 山真佐美,柴田 アは全 て2 時 間以内であ った. また,初 回は慣 れる とい 美知子 :カンガルーケアの愛着形成 に及ぼす有効性 う視点か ら,短 く設定 されている施設 もあ った.成熟児 母親の対児感情の変化 と意識調査 か ら.岐阜県母性 の実施時期及び持続時間においても,一定の基準 はな く, 衛生学会雑誌 ,2 2:7 1 7 4,1 9 9 8. 各々の施設独 自の基準である.そのため,低出生体重児 ・ 5)泉洋子,正木麻美,飯 田ゆみ子 :カンガルーケアに よって深 め られ た父子 の杵 .小 児看護 , 2 1:7 96 - 成熟児双方 において,効果的な実施時期及 び持続時間を 抱 き方 に関 しては,ボゴタでは立て抱 きとされて きた 8 01 ,1 9 9 8. 6)笹本優任,橋本洋子,正木宏,堀内勤 :カンガルー 立て抱 き」 のみな らず,「もたれかける」 と記載 し が ,「 ケアが早産の母子 の行動,関係性発達 に及 ぼす影響 調査 してい く必要があることが示唆 された. ている文献が高率 にみ られた.「もたれかける」 とい う について.小児保健研究 ,6:8 0 9 81 6,1 9 9 8. 動作が加わることで,親がゆった りと椅子 に座 って実施 7) 高塚美紀, 日下部哲子,大場恵,飯 田ゆみ子 :カン で きるためである と考 え られる.成熟児 は 「 腹臥位」 と ガルーケアを実施 した父親の気持 ちの変化 .神奈川 県母性衛生学会誌 ,1:2 8 3 0,1 9 9 9. す るものが多かったが,分娩直後であるため母親の体位 に応 じた腹 臥位が考 えられる. これは,母親の健康状態 8)前 田美樹子 :超低 出生体重児 を出産 した母親- のマ や分娩時の体位 に も影響 を受 けると考 えられる.抱 き方 ターナルアタッチメン トの形成,促進 に対す る援助 に関 して も一定の基準 はな く,低 出生体重児 ・成熟児双 カンガルーケアを試みて.神奈川県立看護教育大学 方 において各 々の効果的な抱 き方 を調査 ・考察 してい く 校事例研究集録,2 2:8 0 8 3,1 9 9 9. 9)与那覇美奈子,金城吏江,田本あゆみ,砂川奈津美 : 必要がある と考 え られる. 早い時期か らの母子接触 の援助 3.カンガルーケアの効果 カンガルーケアの 導入 を試みて.沖縄赤十字病院医学雑誌 ,1:6 5 6 8, 1 9 9 9 ボゴタで挙 げ られた効果は,低体温,栄養不足 ,交差 感染 による死亡及 び養育遺棄 の減少であった1 ) . 日本 に 1 0 )大池理恵,三輪百合子,菅沼明美 :カンガルーケア おいて もカンガルーケア導入以後同様 の効果が示 され, 実施 による母児の リラックス状態 と対児感情の変化 . 加 えて生理学的 ・心理学的効果が拡大 した. 日本助産学会誌 ,1 2:9 2 9 5,1 9 9 9 特 に, 「 親子の良好 な関係 ・愛着 の形成」 は多数の論 l l ) 中島登美子 :カンガルーケアを実施する母親の体験. 看護研究 ,3 2:40 3 41 1 ,1 9 9 9 文でその効果が認 め られている.救命 を主 として途上国 で始 まったカンガルーケアが, 日本 をは じめ先進国にお 1 2 )佐藤睦美,佐谷亜希子,吉 田光枝,杉 田かお り,佐 いてはハイテクノロジーゆえに妨 げ られる愛着形成過程 藤智美 :カンガルーケアの導入 と実際 を取 り戻す ことを主 としていることを示唆 していると考 ま りに私達がで きること.函館 中央病院誌 ,4:57 - 母 と児 の始 え られる. 6 4,2 0 0 0. 1 3)笹本優佳 :カ ンガルーケアが早産母子の行動,関係 性発達 に及 ぼす影響 .チ ャイル ドヘルス, 3:1 31 - 終 わ りに 1 3 4,2 0 0 0. ローテクノロジーの代償 として途上国では じまったカ ンガルーケアは, 日本では特 に愛着形成 において効果的 1 4)松沢玲子,黒滝由江,鹿 内由美子,熊野則子 :超低 出生体重児 の母-の愛着形成支援 である こ とが示唆 される. カ ンガルーケ アの方法及 び カンガルーケア 効果 に関す る研究 は現在発展途上 にあ り,方法お よび効 5:4 0 4 3, を導入 して.青森県立 中央病院医誌 , 4 果 に関 して今後 も調査 ・考察 してい く余地がある といえ 2 0 0 0. る. 1 5 ) 中島登美子 ,及川郁子,飯 田ゆみ子 :カンガルーケ ア導入 と継続 に関わる要因.臨床看護研究の進歩, -2 4- 第1 9 巻 第 1号 20 0 6年 11:1 1 2 1 1 8,2 0 0 0. 2 5)吉井直美,高橋光子,渡部照子 :カンガルーケア時 の早期初 回吸畷が,母乳分泌 に与 える影響.県立会 1 6)佐藤智子,水 島磯子,林桂子,中村玉美,熊谷裕子 , 津総合病院雑誌 ,1 9:42 46,20 0 3. 熊木孝子,清水正樹 :カ ンガルーケアにおける児 の 身体 に及ぼす影響 について.埼玉小児医療 セ ンター 2 6)金津忠博 ,北 島博 之,小 瀬 良幸恵,中農浩子 ,山本 8:1 2 1 6,2 001. 医学誌 ,1 悦代 ,藤村 正哲,糸魚川直祐 :カンガルーケアの効 果 1 7)高橋深雪,中候 由美,斎藤美子 ,伊藤綾 :低 出生体 1 2:1 0 311 0,20 01. 27 ) 山本優子,阿部幸恵 :出生 より2時間経過後 に洗髪 1 8)小松・ 智子,薄井美智子,樋 口厚子,菊地幸子,佐川 を行 った正常新生児の体温の変動 について.仙台市 恵子 ,小針奈 々 :NI CUにおける母子相互作用 を早 期 に確立 させ るための援助 カンガルーケアの実施. 4:1 51 1 5 4,2 00 4. 立病院医学雑誌 ,2 2 8)寺坂多栄子,津久 間聖子 ,上垣 沙緒里 ,武藤圭子 , 福 島県農村医学会雑誌 ,4 4:6672,20 02. 竹 田緑,中川敏子 :正常分娩直後のカ ンガルーケア 1 9)西 岡久美子,河 田千枝,合 田千恵 :正常分娩直後 に おけるカンガルーケアの有効性 による早期愛着形成 を試みて.京都市立病院紀要, 産婦 と夫へのア ン ケー ト調査結果 より. 日本看護学会論文集3 2回母性 2 4:1 5 2 0,2 0 0 4. 2 9)森藤香奈子,宮原春美,宮下弘子 :低 出生体重児 と 看護 :7 37 5,2 0 02. 両親へ導入 したカンガルーケアの効果 .長崎大学医 CU入院患者家族の心 2 0)佐藤清二,前 山克博 :長期 NI のケア onat al 行 動 パ ター ンの研 究 か ら ( 予 報 ). Ne ,1 7:1 2 01 27,2 0 04. Car e 重児のカンガルーケア.鶴岡市立荘内病院医学雑誌, カンガルーケア保育の心拍変動 に対する自 療技術短期大学部紀要 ,1 7:5 357,2 0 0 4. 3 0)西山亜希子,湯野川智恵子,山野辺陽子,鹿嶋晴美 : 律神経効 果 の検討 .成長科学協 会研 究年報 , 2 5: カ ンガルーケア と母子 同室導入後の評価 30 9 31 3,2 002. 問紙調査 か ら. 日本看護学会論文集3 5回母性看護 : 2 07 20 9,2 0 04. 21 )西川薫,伊藤祐子,松 田佳子,櫛 田奈知子 :当院に おけるカンガルーケアの実際 母親の心理 に対す る 31 ) 山岡幸 恵 ,南恵子 ,村 中裕子 ,南多以子 ,松 山由 考察.全国自治体病院協議会雑誌 ,41 1:1 2 61 1 2 65, 20 02. 利子 , 面哲子 :カ ンガルーケ アにお ける腹帯使 用 の効果 の比較検討 2 2) 中田美智子 ,高松浩恵,中村為代 ,日戸友美 ,浅野 32 )吉井直美 ,高橋光子 ,渡部照子 :カンガルーケア時 1 3 1 6,20 0 2. の早期初 回吸畷が,母乳分泌 に与 える影響 2 3)西川薫,伊藤祐子,松 田佳子,櫛 田奈知子 :当院に おけるカンガルーケアの実際 カンガ ルーケア導入後の母乳分泌 の変化か ら. 日本看護学 母親の心理 に対す る 考察.看護の研究 ,3 4:1 3 81 42,2 00 3. 会論文集3 5回母性看護 :3 5,2 0 0 4. 3 3)堀内勤,飯 田ゆみ子,橋本洋子 :カ ンガルーケア 2 4)神谷摂子,高橋弘子 :愛知県内における,分娩直後 の母子早期接触方法の実態 児 の安定 と裾婦 の安心感 を図 る. 日本看護学会論文集3 5回母性看護 :2 01 2 0 3, 2 00 4. 有美子,内堀 由美子 ,君 島清美 ,早 田一子 :カ ンガ 9: ルーケアの導入 と今後の課題 .栃木母性衛生 ,2 裾婦の質 カンガルーケアを中心 として.愛知母性衛生学会誌 ,2 1:29 37,20 0 3. -2 5- ぬ くもりの子育 て 小 さな赤 ちゃん と家族 のス ター ト,メデ イカ出版 ,1 9 99,3 3 38. 保健学研究 TheMe t hodandRe s ul t sofKangar ooCar ei nJapan; Se ar c hofLi t e r at ur e Mi s uz uOI SHIl,sac hi koASADA2,EmiKUROKI3, KanakoDATE4,Chi yoMI YAMA5, YukoNAKAO 6 1 Mat e r ni t yCl i ni cI Hanami z uki " 2 YodogawaChr i s t i anHos pi t a l 3 Japane s eRe dCr o s s,Kumamot oHo s pi t al 4 Kokur aNat i onalHos pi t al 5 Nagas akiUni v e r s i t yHos pi t a lofMe di c i neandDe nt i s t r y 6 Gr aduat eSc hoolofBi ome di c alSc i e nc e s ,Nagas akiUni v e r s i t y Abs t r ac t Thef ol l owi ngo bs e r vat i onswe r edr a wnf r om manyo r l gl na lpa pe r sont hes ubj e c tof Kangar ooCar e : 1 .Thede f i ni t i onofKangar ooCar ei sc ar et hati nvol ve r e c tpar e nLc hi sdi l ds ki nc ont ac t . 2.Br e at hi ngs t abi l i t yl Sani ndi s pe ns abl ee l e me ntoft heKangar ooCar eofnor malandl o w bi r t hwe i ghtbabi e s . 3.The r ear enos t andar dswi t hre gar dt oe nf o r c e me ntt i me , mai nt e nanc et i meo rho waba bys ho ul dbe he l d. 4.Thepur pos eofKangar ooCar ehasbe e ns l owl yc hangi ngs i nc ei t si nc e pt i oni nBogot a,Col umbi a. Thee f f e c tofKangar ooCar ehasbe e ns ugge s t e dasbe i ngl mpOr t anti npar e nt c hi l dat t ac hme ntf or mat i on,e s pe c i al l yi nJapan. 9( 1 ) :2 1 2 6 ,2 0 0 6 He al t hSc i e nc eRe s e ar c h1 Ke yWor ds Ka nga r ooCa i ghti nf a nt r e ,at t ac hme ntf or mat i on,l owbi r t hwe -2 6-