...

(Alnus trabeculosa Hand.-Mazz.)の保全に関する

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(Alnus trabeculosa Hand.-Mazz.)の保全に関する
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e
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n
t
e
rNo.20 , 2
0
0
4
林育研報
2- 19""8
サクラバハンノキ (Alnus t
r
a
b
e
c
u
l
o
s
aHand.-Mazz.)
保
全
に
関
す
る
遺
伝
・
生
態
学
的
研
究
*
の
宮
本
尚
子
(
1
)
NaokoMiyamoto(
1
)
GeneticandE
c
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g
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c
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i
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o
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h
eConservationo
fAlnust
r
a
b
e
c
u
l
o
s
aHand.-Mazz.
目
次
第 l 章
序
論
第 l 節
は
じ
め
に
1)研究の背景
……...・ H ・..……...・ H ・..…...・ H ・ H ・ H ・..………………………...・ H ・..……
2)サクラバハンノキの現状
2
3
...・ H ・..………………...・ H ・.....・ H ・.....・ H ・..………………
2
5
…………...・ H ・.....・ H ・.....・ H ・..…………………………...・ H ・..…
2
5
第2節
ハ
ン
ノ
キ
属
の
概
要
1)ハンノキ属の分類
2)サクラバハンノキの種特性
………………...・ H ・..……...・ H ・.....・ H ・.....・ H ・..………
2
7
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2
9
第3節
本
研
究
の
目
的
と
論
文
の
構
成
1)本研究の意義
2)萌芽および集団の動態に関する研究の目的
……………...・ H ・.....・ H ・..……………
2
9
……...・ H ・.....・ H ・..…………...・ H ・.....・ H ・..……
3
0
……...・ H ・..……...・ H ・..……...・ H ・..…………
3
1
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
3
2
3)遺伝的多様性に関する研究の目的
4)集団内遺伝構造に関する研究の目的
5)本論文の構成
第 2 章
サ
ク
ラ
バ
ハ
ン
ノ
キ
の
生
態
的
特
徴
第 l 節
は
じ
め
に
…
…
…
.
.
.
・
H・
.
.
…
…
…
…
…
…
…
…
…
…
…
…
…
…
.
.
.
・
H・
.
.
…
…
…
…
…
…
…
32
第 2 節
材
料
お
よ
び
方
法
1)調査地
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(
1
)
林
木
育
種
セ
ン
タ
ー
北
海
道
育
種
場
干 069-0836
北
海
道
江
別
市
文
京
台
緑
町
561
HokkaidoR
e
g
i
o
n
a
lBreedingOffice , F
o
r
e
s
tTreeBreedingCenter
5
6
1Bunkyo
・ dai ,
Midori-machi, Ebetsu, Hokkaido0
6
9
0
8
3
6Japan
*本論文は京都大学博士号(農学)請求論文である。
3
2
林木育種センター研究報告
-20-
第 20 号
2)調査および解析方法
(1)サクラバハンノキとハンノキの萌芽性の比較
000 ・ H ・ 00 ………… 000 ・ H ・ 00 …………
(2)
サ
ク
ラ
バ
ハ
ン
ノ
キ
個
体
内
の
幹
構
造
000 ・ H ・ 00 …
…
…
(3)
サ
ク
ラ
バ
ハ
ン
ノ
キ
局
所
集
団
の
動
態
…
…
…
000 ・ H ・.....・
3
3
3
4
H ・ 00 …
…
…
…
…
…
…
3
4
000 ・ H ・ 00 …
… 000 ・ H ・ 00 …
…
…
…
…
…
…
…
第3節
結
果
I)サクラバハンノキとハンノキの萌芽性の比較
………… 000 ・ H ・ 00 … 000 ・ H ・ 00 …………
3
4
2)サクラバハンノキ個体内の幹構造
… 000 ・ H ・ 00 ……………… 000 ・ H ・ 00 ………… 000 ・ H ・ 00
3
7
3)サクラバハンノキ局所集団の動態
………… 000 ・ H ・ 00 ………… 000 ・ H ・.....・ H ・ 00 ………
3
7
第 4 節
ま
と
め
…
…
…
…
…
…
第3章
000 ・ H ・ 00 …
…
…
000 ・ H ・ 00 …
…
…
…
…
000 ・ H ・ 00 …
…
…
…
…
000 ・ H ・ 00
3
9
サ
ク
ラ
バ
ハ
ン
ノ
キ
に
お
け
る
ア
ロ
ザ
イ
ム
マ
ー
カ
ー
の
開
発
第 1 節
は
じ
め
に
…
000 ・ H ・ 00 …
…
…
…
…
…
000 ・ H ・ 00 …
…
…
000 ・ H ・ 00 …
…
…
…
…
000 ・ H ・.....・
H ・ 00
3
9
第2節
材
料
お
よ
び
方
法
I)材料…………… 000 ・ H ・ 00 …………… 000 ・ H ・ 00 ……… 000 ・ H ・ 00 ……………… 000 ・ H ・ 00 …
39
2)アロザイムの分析方法
4
0
(
1
)
酵
素
の
抽
出
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
…
…
…
…
…
…
…
…
…
(
2
)電
気
泳
動
000 ・ H ・ 00 …
…
…
…
…
4
0
000 ・ H ・ 00 …
…
…
…
…
…
…
…
…
4
0
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(3)
染
色
お
よ
び
固
定
(4)
ザ
イ
モ
グ
ラ
ム
の
観
察
… 000 ・ H ・ 00 …
… 000 ・ H ・.....・
000 ・ H ・ H ・ H ・ 00 …
…
…
4
0
H ・ 00 …
… 000 ・ H ・ 00 …
…
…
…
…
…
…
…
…
…
000 ・ H ・.....・
H ・ 00 …
… 000 ・ H ・.....・
H ・ 00 …
…
…
4
1
第3節
結
果
I)アロザイム遺伝子座と対立遺伝子の推定
000 ・ H ・ 00 ……… 000 ・ H ・.....・ H ・ 00 …… 000 ・ H ・ 00
4
1
2) シキミ酸脱水素酵素 (ShDH) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
4
1
3)グルコース -6- リン酸脱水素酵素 (G6PD) ……… H ・ H ・-……・…… 000 ・ H ・-…… 00
4
1
4)ジアホラーゼ
4
3
(DIA)
000 ・ H ・ 00 ………………… 000 ・ H ・ 00 …………………………………
…………………… 000 ・ H ・-……....・ H ・ 00
4
3
… 000 ・ H ・ 00 … 000 ・ H ・.....・ H ・ H ・ H ・ 00 … 000 ・ H ・.....・ H ・.....・ H ・ H ・ H ・ 00
4
3
5)アスパラギン酸アミノ基転移酵素 (GOT)
6)アミラーゼ
(AMY)
7)アラニンアミノペプチターゼ (AAP)
… 000 ・ H ・.....・ H ・ H ・ H ・ 00 …… 000 ・ H ・.....・ H ・ 00 …
4
3
8)ロイシンアミノぺプチターゼ (LAP)
…… 000 ・ H ・ 00 … 000 ・ H ・ 00 ………………………
4
3
………………………… 000 ・ H ・ 00 … 000 ・ H ・ 00 …………… 000 ・ H ・ 00
4
3
9)アコニターゼ
10)
(ACO)
ホ
ス
ホ
グ
ル
コ
ー
ス
イ
ソ
メ
ラ
ー
ゼ
(PG I
)
…
…
…
…
…
…
…
…
…
…
…
…
…
第4節
ま
と
め
…
…
…
…
…
…
…
…
…
…
…
…
…
…
…
…
…
…
…
…
…
…
第4章
000 ・ H ・ 00 …
…
000 ・ H ・ 0 …
…
…
…
…
…
4
6
46
サ
ク
ラ
バ
ハ
ン
ノ
キ
の
ア
ロ
ザ
イ
ム
に
よ
る
集
団
遺
伝
学
的
解
析
第 l 節
は
じ
め
に
…
…
…
000 ・ H ・ 00 …
…
…
…
…
…
…
000 ・ H ・ 00 … 000 ・ H ・ 00 …
…
000 ・ H ・ H ・ H ・ 00 …
…
…
46
第2節
材
料
お
よ
び
方
法
I)材
料
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
4
6
つ〆】
サクラバハンノキの保全に関する遺伝・生態学的研究
2)方法
(1)集団レベルの解析
a.
多型的遺伝子座の割合
b
.
1 遺
伝
子
座
当
た
り
の
対
立
遺
伝
子
数
c
.
1 遺
伝
子
座
当
た
り
の
有
効
な
対
立
遺
伝
子
数
d.
平
均
ヘ
テ
ロ
接
合
度
e.
近
交
係
数
…………...・ H ・..………...・ H ・..…………...・ H ・..………
…...・
…
…
…
…
…
…
…
…
…
…
.
.
.
・
…
…
…
…
…
…
.
.
.
・
種
レ
ベ
ル
の
解
析
a.
…
…
.
.
.
・
H ・..…...・
1 遺
伝
子
座
当
た
り
の
対
立
遺
伝
子
数
c
.
1 遺
伝
子
座
当
た
り
の
有
効
な
対
立
遺
伝
子
数
……...・
…...・
H ・.....・
5
1
5
2
5
2
H・
.
.
…
…
…
…
…
…
…
…
…
H・
.
.
…
…
…
…
…
.
.
.
・
5
0
5
2
H・
.
.
…
…
…
…
…
…
H・
.
.
…
…
…
…
…
…
…
…
…
…
…
…
…
………...・
5
0
5
2
H・
.
.
…
…
…
…
…
…
…
…
…
H ・..…...・
5
0
5
1
H・
.
.
…
…
…
…
…………………………...・ H ・..………………………
…
…
…
…
…
…
…
…
…
…
.
.
.
・
b
.
H・
.
.
…
…
H・
.
.
…
…
…
…
…
…
…
.
.
.
・
H・
.
.
…
…
…
…
…
…
.
.
.
・
平
均
ヘ
テ
ロ
接
合
度
H ・..…
H・
.
.
…
…
…
…
…
…
…
.
.
.
・
H・
.
.
…
…
…
.
.
.
・
多
型
的
遺
伝
子
座
の
割
合
d.
H ・..…………...・
………………………………………
f.遺伝的分化を表す統計量
(2)
H ・ H ・ H ・..…...・
5
0
5
2
H・H・H・
.
.
…
…
…
…
…
…
…
…
第3節
結
果
1)集団レベルの解析
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
5
4
H・
.
.
…
…
…
…
…
…
…
…
…
…
…
…
…
…
…
…
…
…
5
4
(
1
)検
出
さ
れ
た
対
立
遺
伝
子
と
そ
の
頻
度
(2)
集
同
レ
ベ
ル
の
遺
伝
的
変
異
(3)
近
交
係
数
(4)
遺
伝
的
分
化
を
表
す
指
標
5
4
...・ H ・..………...・
2)種レベルの解析
第 4 節
ま
と
め
…
.
.
.
・
第5 章
……...・
H ・.....・
H ・..………...・
H ・..……...・
H ・..…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
H・
.
.
…
…
…
…
…
…
.
.
.
・
H ・.....・
H ・..…...・
H・
.
.
…
…
…
…
…
.
.
.
・
H・
.
.
…
…
…
5
4
5
4
55
サ
ク
ラ
バ
ハ
ン
ノ
キ
の
集
団
内
遺
伝
構
造
第 I 節
は
じ
め
に
.
.
.
・
H ・.....・
H ・ H ・ H ・..……...・
H ・.....・
H・
.
.
…
…
…
…
…
…
…
…
…
…
…
…
…
…
56
第2節
材
料
お
よ
び
方
法
...・ H ・..……...・ H ・..……………………………………………
5
6
(
1
)
岩
手
県
湯
田
町
の
集
団
…...・
5
6
(
2
)茨
城
県
十
王
町
の
集
団
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
5
6
(
3
)栃
木
県
今
市
市
の
集
団
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
5
7
1)解析の対象とした集団
H ・.....・
H ・ H ・ H ・.....・
2)林齢の異なる局所集団聞の遺伝構造の比較
H ・.....・
H ・.....・
H ・.....・
H ・..…
………...・ H ・..…………………………
5
9
……………………………………
5
9
………...・ H ・......・ H ・....・ H ・....・ H ・...
5
9
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
5
9
3)同一局所集団の遺伝構造に関する時系列の比較
4)伐採歴の異なる局所集団聞の遺伝構造の比較
5)解析方法
H ・.....・
(
1
)M
o
r
a
n
'
sI
…...・
H・
.
.
…
…
…
…
…
…
…
…
…
…
…
…
…
.
.
.
・
(
2
) SND
...・ H ・ H ・ H ・..……………………...・
(
3
) NAC
...・ H ・..………...・
H ・ H ・ H ・..………...・
H ・..…………………...・
H ・.....・ H ・ H ・ H ・.....・ H ・..……...・
H ・..……
H ・.....・ H ・.....・ H ・..
H ・..…………...・
H ・..………
60
6
0
60
η/
】
つ臼
林木育種センター研究報告第 20 号
第 3 節結果
1)林齢の異なる局所集団関の遺伝構造の比較
……...・ H ・..……………...・ H ・.....・ H ・..
2)同一局所集団の遺伝構造に関する時系列の比較
3)伐採歴の異なる局所集団聞の遺伝構造の比較
第 4 節
ま
と
め
…
.
.
.
・
H ・..………...・
H ・..………...・
6
4
……………...・ H ・..………………
6
5
………...・ H ・..…………...・ H ・..……
7
1
H・
.
.
…
…
…
…
.
.
.
・
H ・..…………...・
H ・..…
72
第6章
総
合
考
察
第 l 節
生
態
学
的
に
み
た
サ
ク
ラ
バ
ハ
ン
ノ
キ
の
保
全
の
方
法
...・ H ・
.
.
…
…
…
…
…
…
…
…
…
…
第2 節
遺
伝
学
的
に
み
た
サ
ク
ラ
バ
ハ
ン
ノ
キ
の
保
全
の
方
法
...・ H ・.....・
第3節
本
研
究
に
基
づ
い
た
サ
ク
ラ
バ
ハ
ン
ノ
キ
お
よ
び
生
物
多
様
性
保
全
へ
の
提
言
H ・.....・
7
2
H・
.
.
…
…
…
…
7
4
………… 7
5
摘要.........................................................................................................
7
6
謝辞.........................................................................................................
7
7
引
用
文
献
...・ H ・..……………...・
H ・ H ・ H ・..……………………...・
H ・ H ・ H ・..………...・
H ・..………
7
7
ワ】
qJ
サクラパハンノキの保全に関する遺伝・生態学的研究
第 1 章序論
第 l 節はじめに
1)研究の背景
人類は日常生活の中で,生物体やその生産物を利用しつづけてきた。急増する世界人口をささえつつ,より豊
かな生活を目指すためには,生物体の改良,すなわち育種がますます重要になると思われる。近年の目覚しいバ
イオテクノロジーの発展,
とくに遺伝子組み換え技術の発展は,生物の改良に新たな道を切り拓いた。しかし,
いかにバイオテクノロジーが進歩しでも,新しい有用遺伝子を人工的に創出することは,現在のところ不可能と
考えられている。一方,農林水産業の分野で行われている育種では,生物種がもっ膨大な遺伝変異の中から,有
益な伺体を選抜し,それを育種素材として利用するという方法が用いられている。しかし,育種技術が高度に発
展して優秀な品種が育成されると,その品種の遺伝的侵食により,その種全体の遺伝変異が失われていく傾向が
ある。このことは,将来の育種に利用可能な遺伝変異が急速に減少しつつあることを意味しており,したがって,
遺伝変異の保存は育種のみならず人類の生存にとってもきわめて重要な課題である。
地球は,現在,かつてなかった大絶滅時代を迎えている。少し前までふつうに見ていた数多くの生物が絶滅の
危機にさらされている(鷲谷・矢原,
1996) 。生態系はそれを構成する種が様々な種とつながりを保ちつつ形成さ
れているが,そのつながりは微妙なバランスの上に成立しており,実際,たった一種の絶滅により,その種を含
んでいた生態系全体が崩壊してしまった例が多く見られる。多くの種が地球上から失われることは,人類が生き
ていく上で欠かせない食料・エネルギー資源等の基盤を危うくするだけでなく
地球上の全生物に影響を与える
可能性が高い(環境省自然環境局生物多様性センター, 2002) 。したがって生態系を構成するそれぞれの種が失わ
れないようにすること,すなわち種の保存もまたきわめて重要な課題である。
このような危機感に立って,近年,生物の遺伝変異を資源とみなし,これを保存していこうとする考えが広く
浸透してきた。植物の場合,その保存法には,①自然の生育状態のまま保存する生息域内保全と,②本来の生息
地から収集してきて,圃場,植物園,温室,施設などで保存する生息域外保全とがある。生息域外保全には,種
子保存,栄養体保存,試験管内保存および凍結保存などがあるが,林木の保存は,農作物,果樹などに比べると,
①対象植物の種数・系統が著しく多いこと,②長命の植物であるため,種子繁殖に長年月を要すること,③施設
による保存では樹体が大きいため膨大なコストを要すること,④組織培養の実験系が確立されていない種が多い
ため,試験管内保存が困難で、あること,⑤長期間にわたる種子の保存方法が確立されていないことなど,不利な
点、が多く,生息域内保全が望ましい。現在,独立行政法人林木育種センターと森林管理局,都道府県が連携して,
林木育種センタ一等の構内に成体で約 2 万点,貯蔵施設に種子・花粉を約 6 千点保存するとともに,人工林242 ヶ
所990ha を造成して生息域外保全を図っているが,上記理由により,国有林内の 399 ヶ所,計45 , 600ha の天然林を
生息域内保全地として登録している。とくに絶滅に瀕している樹種については,生息域外保全地において種苗を
生産し,これを再び生息地に戻すという努力もなされている(林木育種センター, 2002) 。
また林木の場合,保存種内の遺伝変異の大きさや繁殖様式など,遺伝・生殖・生態的特徴についての情報が一
部を除いてほとんどない。さらに,林木の多くは風媒もしくは虫媒の他殖性植物であることから,自殖もしくは
近親交配を行うと,近交弱勢が起きやすいとされている(大庭・勝田,
199 1)。実際,現在までにスギやヒノキの
造林樹種を中心に遺伝マーカーの開発や連鎖地図の作成などが行われているが,自殖を行うとある特定の遺伝子
η〆じ】
AU寸
林木下害額センター研究報台
当~
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)
αin
J
a
p
a
n
.Autheraddedt
h
el
a
t
e
s
t
型の発芽率および活力の低下にともなって,遺伝マーカーの分離が歪むことが知られている(河崎,
Mukaie
tal. , 1
9
9
5
;Kuramotoe
tαl. , 2000
F円U
ワ]
サクラバハンノキの保全に関する遺伝・生態学的研究
1
9
9
0
;
な
ど
)
。
し
た
が
っ
て
,
特
定
の
地
域
・
家
系
・
系
統
の
み
を
保
全
す
る
こ
と
は
,
近
親
交
配
を
招
来
す
る
た
め
,
種
の
も
つ
全
遺
伝
変
異
を
保
全
す
る
こ
と
に
は
な
ら
な
い
こ
と
に
な
る
。
本
研
究
で
で
、
取
り
扱
う
サ
ク
ラ
バ
ハ
ン
ノ
キ
(
は
Al 仇
nuωs tra刀
ab舵ecαωuιlお
os抑
aHandι.
の
種
を
絶
滅
さ
せ
な
い
た
め
に
は
,
サ
ク
ラ
バ
ハ
ン
ノ
キ
の
生
態
的
状
況
や
遺
伝
的
多
様
度
等
の
現
況
を
十
分
把
握
し
た
上
で
,
保
全
を
行
っ
て
い
く
こ
と
が
望
ま
れ
る
。
2)サクラパハンノキの現状
サクラバハンノキは,カバノキ科ノ、ンノキ属に属する落葉性小高木で、ある。その分布域は中国大陸東南部と日
本であり,中国では河南,安微,江蘇,
f折江,江西,福建,広東,湖北,湖南,貴州の各省の標高200"-' I , O
OOm
の山谷,河岸,低湿地に分布している(中国科学院植物研究所・深ガ"仙湖植物園,
1987)
本における現在の分布域は,倉田(1
I (茨城県,栃木県,新潟県以
971)
の原色日本林業樹木図鑑に準じて,本外
西
)
お
よ
び
九
州
(
宮
崎
県
)
と
し
て
い
る
文
献
が
多
い
が
,
最
北
限
は
(
F
i
g
.1-1)
。サクラバハンノキの日
1996 年
に
確
認
さ
れ
た
岩
手
県
湯
田
町
の
群
落
で
あ
る
。
な
お
,
サ
ク
ラ
バ
ハ
ン
ノ
キ
の
日
本
で
の
生
育
地
は
,
日
当
た
り
の
良
い
湧
水
湿
地
で
あ
る
こ
と
が
多
く
,
ま
た
,
F
i
g
.I-I に
示
し
た
よ
う
に
,
各
地
に
隔
離
さ
れ
た
小
集
団
を
形
成
し
て
い
る
。
現
在
日
本
に
お
い
て
,
サ
ク
ラ
バ
ハ
ン
ノ
キ
は
13 県
で
確
認
さ
れ
て
い
る
も
の
の
,
生
息
に
適
し
た
土
地
の
開
発
や
水
田
化
な
ど
に
よ
っ
て
集
団
数
が
減
少
し
て
き
て
い
る
。
こ
の
た
め
環
境
省
に
よ
っ
て
準
絶
滅
危
倶
種
に
指
定
さ
れ
て
お
り
,
ま
た
,
群
落
レ
ッ
ド
デ
ー
タ
ブ
ッ
ク
で
は
緊
急
に
保
護
対
策
を
要
す
る
群
落
と
し
て
5 ヶ
所
を
あ
げ
て
い
る
(
日
本
自
然
保
護
協
会
,
1996)
。
こ
の
よ
う
に
,
現
在
サ
ク
ラ
バ
ハ
ン
ノ
キ
は
絶
滅
す
る
恐
れ
が
あ
り
,
今
後
何
ら
か
の
保
全
の
方
策
を
と
ら
ね
ば
な
ら
な
い
と
い
う
状
況
に
あ
る
。
な
お
,
日
本
で
は
存
在
す
る
集
団
が
少
な
く
資
源
量
が
少
な
い
こ
と
か
ら
,
現
在
の
と
こ
ろ
木
材
,
そ
の
他
の
林
業
上
の
利
用
は
な
い
。
中
国
で
は
,
建
築
用
材
,
家
具
や
水
桶
に
,
ま
た
低
湿
地
の
重
要
造
林
樹
種
と
な
っ
て
お
り
,
さ
ら
に
樹
体
の
形
状
が
風
趣
で
あ
る
こ
と
か
ら
,
庭
園
木
と
し
て
利
用
さ
れ
て
い
る
(
倉
田
,
中
国
樹
木
誌
編
纂
委
員
会
,
1971;
1985)
中
国
科
学
院
植
物
研
究
所
・
深
ガ
"
仙
湖
植
物
園
,
1
9
8
7
;
。
第2節
ハ
ン
ノ
キ
属
の
概
要
1)ハンノキ属の分類
サクラパハンノキが属するカバノキ科ノ、ンノキ属は,北半球の温帯から暖帯および南米に約30種が生息し,そ
のうち日本は 2 亜属 5 節約 10種が生息している(北村・岡本,
1959; 初島,
1964) は,形態学的観点、から,世界のハンノキ属全種の再分類を行って,
のうち,日本には 2 亜属 5 節 II 種が生息するとした
1976) 。しかし,村井(1 962 ,
1963 ,
1 属 2 亜属 7 節 29種に整理統合し,こ
(Table 1-1) 。
村井の分類 (1962 , 1963 , 1964) によると,サクラバハンノキはハンノキ (Aln山 japonica Steud.)
とともに
ハンノキ亜属ノ、ンノキ節に属している。カバノキ科の進化順序について,村井(1 963) は雌・雄花の出現時期,
種子成熟期,形態などに基づき,シラカンバ属→ミヤマハンノキ亜属→ハンノキ亜属の順に進化したと考えた。
さらに,ハンノキ属ノ、ンノキ節に属する 2 種 l 変種(ハンノキ,サクラバハンノキ,エゾノ、ンノキ)の進化順序
について,サクラバハンノキが最も古く,ついでハンノキ,エゾハンノキという順で発生したのではないかと推
林木育種センター研究報告第
- 26-
20 号
Table1-1 C
l
a
s
s
i
f
i
c
a
t
i
o
no
fgenusAlnushabitinginJapan.
genus
subgenus
s
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i
o
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species
Alnus
Alnuster
Bifurcatus
A
.pendulaMatsum.
"Himeashabushi"i
nJapanese
S
i
e
b
.e
tZucco
"Yashabushi"i
nJapanese
A 汗rma
A
.s
i
e
b
o
l
d
i
a
n
aMatsum.
"Oobayashabushi"i
nJapanese
Aわobetula
A
.maximowicziiC
a
l
.
l
"Miyamahannoki"i
nJapanese
Fauriae
A
.s
e
r
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u
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l
.
l
"Kawarahannoki"i
nJapanese
Gymonothyrsus
A
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iL
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.
"Miyamal
Japonica
i
nJapanese
く awarahannoki"
A
.japonicaSteud.
"Hannoki"i
nJapanese
θ
A
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αu/lわ
osa
トHand.-
"Sak く urabahannok
Glutinosae
く i"
i
nJapanese
A
.
置 mη7at お
s
u
m 円7urae
C
a
l
.
l
"Yahazuhannoki"i
nJapanese
A
.inokumaeM.e
tK
.
"Kobanoyamahannoki"i
nJapanese
A.h かsta
T
u
r
c
z
.
"I くeyamahannoki"
i
nJapanese
Reference;Somegou (
1
9
8
5
)
TableI
-2 SuccessfulinterspecificcrossingingenusAlnus.
No.of
chromosomes
Crosscombination
A
.g
l
u
t
i
n
o
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a
x A
.inokumaeM.e
tK
.
x
A
.inokuma
θ
M
.
e
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1
9
6
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)
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c
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r
i
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K
. x A
.h
i
r
s
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u
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c
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.
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x
)
x A
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l
u
t
i
n
o
s
a
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3
x
)
ノノ
2n=21 (
3
x
)
ノ/
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4
x
)
ノ/
A
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i
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c
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.
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.inokuma
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z
.
A
.japonicav
a
r
.
arguta
Reference
x A
.inokuma
θ
M
.
e
t
K
.
Chiba (
1
9
6
6
)
2n=21 (
3
x
)
ノ/
2n=28 (
4
x
)
ノ/
2n=21 (
3
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)
ノ/
x A
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i
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s
t
aT
u
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c
z
.
2n=28 (
4
x
)
ノ/
x A
.glut.
2n=28 (
4
x
)
ノ/
的osa
Reference;Somegou (
I985)
サクラパハンノキの保全に関する遺伝・と長態学的研究
2
7-
定している。これに対して,菊沢(1 978, 1980) およびKikuzawa (1 978) は, mu 芽の芽鱗がミヤマハンノキ亜属
では発達しているが,ハンノキ盛属では未発達であること,および、それによって変季の落葉数がハンノキ麗属で
は多く,
ミヤマハンノキ盛属では少ないことを認め,村井とは逆にハンノキ亜属→ミヤマハンノキ頚属サシラカ
ンパ属という願に進化したと報告している。
ハンノキ属に関する縮賠遺伝学的研究は 1920年代より行われており
Z 除 =28 の染色体数を示す種が多いことが確認されている
(Wetzel,
(Darlington
1929 など) ,
andWylie , 1
9
5
5;Dobzhansky , 1970) 。
また,これまでの報告によると,様々な諮問で雑種の作 Iii が可能で、ある(染郷,
積の中には,成長の旺盛なものも合まれている c
1
9
2
7
;Woodworth ,
1
9
8
5
;T
a
b
l
e1-2)。それら雑
したがって,ハンノキ属櫨績の種間交雑育種が成功する可能性
は高い。
2)サクラパハンノキの種特性
サクラパハンノキは,形態的・生態、的近縁種であるハンノキによく叡ており,ハンノキと現在して生息するこ
とが多い。しかし,サクラパハンノキは,①葉身の基部がハンノキのように尖っていないこと,争鱒脈が数多く,
下回によく隣起していること,また,③種子に翼がないことなどから,ハンノキと容易に区部できる。さらに,
サクラパハンノキはハンノキに比して樹幹が特徴的である。すなわち,ハンノキは胸高直筏がlOeill を超えるよう
になると樹幹の表面に亀裂が生じ,色も茶褐色になるのに対し,サクラパハンノキは樹皮に亀裂がなく,灰白色
である(倉出,
1968 , 1971; 半出,投稿準備中)。また,サクラパハンノキはハンノキに比べて萌芽力が強く,中
心の幹が枯れても}諮問の萌芽枝が幹に成長すること,さらに隣接する樹体と根で、つながっていていること
(Fig.
1 2; 平山氏提供)から明らかなように,栄護繁殖をすることが知られている(半 E ら, 1996) 。さらに,幹の太
い鱈体では,気取が発生する場合もある
(Fig.
1-3)
(半間,
2002;
飯塚,私信)。
サ
ク
ラ
パ
ハ
ン
ノ
キ
の
開
花
・
結
実
特
性
は
,
他
の
ハ
ン
ノ
キ
属
樹
橋
と
向
様
,
雌
雄
陪
株
で
\
開
花
は
開
葉
蔀
で
あ
る
。
雄
花
に
は
舗
が
あ
り
,
枝
先
か
ら
4"'-'
5~毘垂れドがり,雌花淳は雄詑序のドに上向きにつく。茨城県卜王町の加半沢上
流にあるハンノキとサクラパハンノキの混在自生群落を観察した半田によると,ハンノキの花粉は 2 月初旬
(1 997年)から飛散し拾めたのに対して,サクラパハンノキの花粉は 2 月中旬(1 997 年)から飛散し始めた。この
F
i
g
.
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研
究
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8
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キ
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.
よ
う
に
サ
ク
ラ
パ
ハ
ン
ノ
キ
の
花
粉
の
飛
散
最
盛
期
と
ハ
ン
ノ
キ
の
花
粉
の
そ
れ
と
は
若
干
の
ず
れ
が
あ
る
が
,
両
種
の
花
粉
飛
散
時
期
に
は
重
な
る
時
期
が
あ
る
。
し
か
し
両
種
が
混
生
し
て
い
る
群
落
に
お
い
て
も
雑
種
と
推
定
さ
れ
る
中
間
的
個
体
が
布
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ム
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な
い
こ
と
か
ら
,
両
穣
向
に
は
何
ら
か
の
生
殖
的
弱
離
が
あ
る
と
考
え
ら
れ
る
(
半
田
,
投
稿
準
鍛
中
)
。
サ
ク
ラ
パ
ハ
ン
ノ
キ
の
果
実
(Fig.
で
形
は
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円
形
~
卵
状
橋
円
形
,
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柄
が
あ
り
,
は
縦
1
8
.
3
m
縦
横
比
1
.
る
が
,
イ
訟
の
ハ
ン
ノ
キ
属
樹
積
と
隠
様
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年
ま
で
つ
づ
く
1
- り
は
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10 片
に
成
熟
し
て
緑
か
ら
黒
に
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色
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る
。
成
熟
期
の
長
径
は
上
向
き
に
つ
く
(
食
器
,
,
横
1
3
.
5
m
,
縦
横
比
が
1
.
1
5
""
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0
m
1971)
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る
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て
,
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ハ
ン
ノ
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に
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る
と
,
ハ
ン
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キ
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果
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2
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.
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m
7で
あ
り
,
サ
ク
ラ
パ
ハ
ン
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キ
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方
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若
子
縮
長
い
形
の
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突
を
も
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。
乾
燥
に
と
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な
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て
嶺
子
(
堅
果
)
は
飛
散
す
(
半
田
,
投
稿
準
結
中
)
。
,
横
1
2
.
4
m
,
サクラバハンノキの保全に関する遺伝・生態学的研究
-29-
第 3 節本研究の目的と論文の構成
1)本研究の意義
一般 lこノ、ンノキ属の樹種は,地力の乏しい場所においても生息できることから,落葉広葉樹の先駆樹種として
いち早く荒廃地に侵入することが知られている。そのためハンノキ属には,緑化や地力回復に使用されている樹
種が多く,その一部は,砂防工事,のり面緑化,荒廃地緑化に使用されている。このため,その遺伝資源収集と
保存が行われてきている。また,ハンノキ属樹種では種間雑種を作出しうること,サクラバハンノキが現生のハ
ンノキの祖先種ではないかという報告もあることから,サクラバハンノキの遺伝的多様性の解明および保全法の
確立は,今後のハンノキ属樹種の育種ならびに遺伝資源の保全に非常に有用な情報を提供すると考えられる。
サクラバハンノキは日本においてはもともと集団数が少なく,混地の乾性化や埋め立てにより集団の数が減少
してきており,環境省によって「準絶滅危倶」にランクされている。今後のハンノキ属樹種の育種的な観点ばか
りでなく,生物多様性保全のための研究にも,サクラバハンノキの生態学的特徴や集団の動態に関する研究,遺
伝的多様度の評価および集同内家系構造の評価は重要で、ある。
2)萌芽および集団の動態に関する研究の目的
保全しようとする種の生活史や自生地の生育環境など生態的特性に関するデータを蓄積することは,対象とす
る種の最適環境を明らかにする上で有効で、あり,その解明によって当該種の保全計画の立案や,実際の保全活動
がスムーズに行われるものと期待される。このことは,生息域内保全の場合にも,生息域外保全の場合にも共通
である。とくに希少種に関しては,個体数や集団数が少ないことから,保全の失敗が許されない。このため生息域
調査をより精密に行う必要がある(森本・亀山, 200 1)。
樹木の更新様式には,種子散布による有性繁殖の実生更新と無性繁殖の萌芽更新がある。渡遺(1 994) ,大庭
(1 996) は高木の萌芽更新として,根頚萌芽,伏条萌芽,根萌芽や倒木幹萌芽によるものなどがあるとしている。サ
クラバハンノキについては,実生更新の他に,根頚部から萌芽することが知られている(半田ら, 1996) 。また,サ
クラバハンノキにおいて,隣接個体どうしが根でつながっている事例(半田ら,
1996) や,複数の遺伝子座にお
いて全く同じ遺伝子型をもっ個体が近接して存在していたという報告(宮本ら, 2000) がある。これらのことか
らサクラバハンノキは,実生更新とともに萌芽更新を行っており,その方法としては根頚萌芽に加え,根萌芽や
倒木幹萌芽のような方法もとっている可能性が考えられる。しかし実生および萌芽更新をど、の程度行っているの
かについては明らかになっていない。また,茨城県十王町におけるサクラバハンノキの自生地域では,同種が,
同属であり絶滅に関する情報についてとくに指定のない「普通種」であるハンノキ(倉田,
1968)
と混在している
箇所と,両樹種が棲み分けをして生育している箇所の存在が報告されている(半田ら, 1996) 。近縁な 2 種で,一
方は広く分布する普通種であるが,他方は分布の限られた希少種で絶滅が危倶されているという例がしばしばあ
る(矢原, 1994) 。同様の関係にあるサクラバハンノキとハンノキの生態的な特徴を比較することにより,サクラ
バハンノキの保全に向けた情報が得られる可能性があると考えられる。
さらにサクラバハンノキの集団の動態に関してはほとんどデータがないが,このような情報を集積することは
集団の維持にとって重要な要因を明らかにすることになり,保全方針を立てる際に必要で、あると考えられる。
そこで第 2 章ではサクラバハンノキの萌芽特性および集団の動態など保全のための基礎情報となる生態的特性
を生息地調査によって解析した。
つd
ハU
林木育種センター研究報告第 20 号
3)遺伝的多様性に関する研究の目的
遺伝的多様性に関する解析は,その種がもっ遺伝変異を減少させることなく保全を行う上で重要な判断基準と
なる。生物の自然集団の遺伝的多様性に関する研究は,これまで形態マーカー,アイソザイムマーカーおよび
DNAマーカーなどを用いて行われてきた。近年, DNA解析技術の進歩により,林木でも共優性マーカーである SSR
(
S
i
m
p
l
eSequenceRepeat;
あるし
等
の
利
用
が
可
能
に
な
り
つ
つ
あ
る
。
h は Microsatelite
DNA)
や CAPS
SSR は
非
常
に
変
異
性
が
高
く
,
ま
た
,
CAPS
カ
ー
で
あ
る
こ
と
か
ら
保
存
性
が
高
く
,
遺
伝
解
析
に
き
わ
め
て
有
効
な
ら
,
こ
れ
ら
の
DNA
(
CleavedAmplifiedPolymorphicSequences)
DNA
は
遺
伝
子
発
現
領
域
を
対
象
と
し
た
マ
ー
マ
ー
カ
ー
と
し
て
評
価
さ
れ
て
い
る
。
し
か
し
な
が
マ
ー
カ
ー
は
,
費
用
が
か
さ
む
こ
と
,
あ
る
い
は
デ
ザ
イ
ン
し
た
プ
ラ
イ
マ
ー
と
相
補
性
を
示
さ
な
い
場
合
が
あ
る
こ
と
か
ら
誤
っ
て
遺
伝
的
多
様
度
を
推
定
し
て
し
ま
う
場
合
が
あ
る
こ
と
な
ど
,
現
段
階
で
は
使
用
し
に
く
い
状
況
に
あ
る
。
一
方
,
「
ア
イ
ソ
ザ
イ
ム
」
は
,
同
じ
基
質
特
異
性
を
示
し
な
が
ら
,
異
な
っ
た
分
子
構
造
を
持
つ
同
一
種
内
の
酵
素
タ
ン
パ
ク
質
に
与
え
ら
れ
た
名
称
で
あ
る
andMoller , 1959) 。このうち,同一遺伝子座の複対立遺伝子によって支配
(Markert
されているものをアロザイム (allozyme)
と呼び,集団遺伝学的な研究の解析の対象となるのは,このアロザイ
ム変異である。アイソザイムマーカーは,形態等の遺伝的指標に比べ,①遺伝子 (DNA) の一次産物であるため
環境の影響を受けにくい,②自然選択に対して中立である,③高頻度で分布しているものから低頻度で分布して
いるものまで様々である,④対立遺伝子聞に優劣性がなく共優性で、あるため,多くの場合,バンドパターンから
遺伝子型を直接判定することができる,などの特長をもつことから,集団遺伝学的研究に汎用されている。
林木においても,スギ (Tsumura andOhba , 1992 , 1
9
9
3
;Tomarue
tal. , 1994) ,ヒノキ (Shiraishi
e
tal. , 1
9
8
7
;
ta l., 199 1),オオシラビソ (Suyama e
ta l., 1992 , 1997) ,クロマツ (Miyata andUbukata , 1993; 宮
Uchidae
田・生方,
1994) ,アカマツ
(Na'iem
e
tal. , 1
9
8
9
;Na'ieme
tal. , 199 1),ポンデローザマツ (Mitton e
tal. , 1
9
8
0
;
Woodset α1. , 1983) , ヨーロッパアカマツ
ハイマツ
(Goncharenko
e
tal. , 1985) ,ダグラスモミ (Moran andAdams , 1989) ,
(Gullberg
e
tal. , 1993; Tanie
ta l., 1996) など多くの樹種の天然林集同に関してアイソザイム変
異が調べられている。ハンノキ属樹種については,種内の遺伝的多様性を評価するため,アイソザイムマーカー
が用いられており,
DusanandL
a
d
i
s
l
a
v (2002)
Alnus
crisp α22 集
同
,
同
じ
く
は
ス
ロ
パ
キ
ア
の
e
ta
l
. (1988)
g
l
u
t
i
n
o
s
aGaer ・tn.
(1987)
は
カ
ナ
ダ
の
(1 999)
は韓国のハンノキ
hirst α)
15 集団についてそれぞれ解析しているが,サクラバハンノキに関しては解析がなされていない。針葉樹
(Alnus
jαponic α)
Bousquet
Alnus
17 集同,
は
カ
ナ
ダ
の
HuhandHuh (1 999)
Alnus
3 集団,
Bousquet
r
u
g
o
s
a14 集団,
は韓国のケヤマハンノキ
Huh
(Alnus
におけるアロザイムの遺伝子解析の多くは,種子の半数体組織(匹乳)を用いて行われている。これは交配を経
ずして遺伝子型の決定が可能で、あるからである。一方,広葉樹では,交配によって種子を獲得し,その後代にお
ける表現型の分離から,関与する遺伝子座および遺伝子型を決定すべきであるが,樹木は一般に交配可能になる
までに長年月を要するため,交配を経ずにこれらを推定することが多い。分子生物学の発展にともない,近年,
酵素の細胞内分布とアロザイム数の関連
(Gottlieb
,
1981 , 1982) や酵素の高次元構造が明らかにされ,いくつ
かの酵素種については遺伝子の重複が起きていない場合に期待される最小遺伝子座数と遺伝様式を推定すること
が可能になった。したがって,アロザイムについては交配実験を行わなくても,関与する遺伝子座数を推定する
ことができるようになった(矢原, 1988) 。ただし,この場合,①抽出と泳動の条件が適当で、なかったことに起凶
する酵素の失活,②組織特異性,③調査個体の生理的状態などの要因により,遺伝子座の一部が検出されないこ
と,さらに④アイソザイムコンブオーマー(化学的修飾を受けたアイソザイム)がないという前提条件を考慮す
qJ
サクラバハンノキの保全に関する遺伝・生態学的研究
る必要がある。
第 3 章では,サクラバハンノキの遺伝マーカーとして使用しうるアロザイム遺伝子座の検出を目的とした。第
4 章ではそれらのマーカーを用いて保全の判断基準を得ることを目的として,日本のサクラバハンノキの種・集
団がもっ遺伝的多様II生について集団遺伝学的解析を行った。
4) 集団内遺伝構造に関する研究の目的
集団内遺伝構造 (within-populationg
e
n
e
t
i
cstructure)
空
間
遺
伝
構
造
と
は
,
集
団
内
の
遺
伝
変
異
の
空
間
分
布
構
造
の
こ
と
を
指
し
,
g
e
n
e
t
i
cs
t
r
u
c
t
u
r
e
),
微
細
空
間
遺
伝
構
造
(spatial
s
p
a
t
i
a
lg
e
n
e
t
i
cstructure)
(fine-scale
な
ど
と
呼
ば
れ
て
い
る
。
天
然
林
集
団
内
に
お
け
る
遺
伝
構
造
に
つ
い
て
の
解
析
は
,
元
来
地
理
学
や
保
健
衛
生
学
的
な
研
究
分
野
で
用
い
ら
れ
て
い
た
空
間
的
自
己
相
関
解
析
a
u
t
o
c
o
r
r
e
l
a
t
i
o
nanalysis)
(spatial
の応用したことを契機として,
andOden (
1
9
8
7a , b) が生物集団へ
を Sokal
1980年代前半から盛んに行われるようになった。空間的自己相関解析とは
Moran's1や SND といった一連の統計量を用いた解析法の総称であり,集団内の任意の個体間距離とその個体ど
う
し
の
も
つ
遺
伝
変
異
の
情
報
を
解
析
す
る
も
の
で
あ
る
。
遺
伝
的
類
似
度
が
高
い
個
体
ど
う
し
が
統
計
的
に
有
意
に
近
距
離
に
位
置
し
て
い
る
状
態
の
こ
と
を
,
空
間
的
自
己
相
関
が
あ
る
(
強
い
)
,
ま
た
は
遺
伝
構
造
が
あ
る
(
強
い
)
, と表現する。
遺伝構造の解析には,何らかの遺伝マーカーに基づく遺伝変異の分析情報と測量による個体の位置情報が必要
である。遺伝変異のデータには,対立遺伝子 (allele)
子型 (multilocus)
レベル,遺伝子型 (genotype)
レベルおよび複数の遺伝
レベルがあり,これらの解析は質的に異なった情報を提供する。
集同の遺伝変異の空間構造は,花粉流動や種子散布による遺伝子流動の影響を強く受ける。遺伝子流動の解析
には,対立遺伝子レベルの解析が必要で、ある。また,ある時点、における集団内各個体の遺伝情報は遺伝子型に基
づく。このため,その集団内の遺伝変異の空間構造を把握するためには遺伝子型レベルでの解析も重要で、ある。
Turnere
ta
l
. (1982)
は
,
コ
ン
ビ
ュ
ー
タ
シ
ミ
ュ
レ
ー
シ
ョ
ン
に
よ
り
,
距
離
に
よ
る
隔
離
(
i
bydistance)
solation
は世代数を経るとともにホモ接合体の遺伝的なパッチ
(patch)
下で
が形成されていくとしている。このため,遺伝
子型レベルでの解析によっても遺伝子流動の制約にともなう遺伝構造の形成を検出できると考えられる。
multilocus
レベルで、の解析で、は,
haplotype
レベルで、の遺伝子流動を検討することになる。また,無性繁殖による
クローンの存在が考えられる集団での解析にきわめて有効なアプローチ法である。これ以外にも集団の有効サイ
ズの減少を経たのち遺伝的浮動の影響を受けた集団では,染色体上では実際には連鎖していない遺伝子座間で連
鎖不平衡(l
inkage
disequilibrium)
生じることを意味している(高橋,
が生じる。これは,異なる遺伝子座で保有されている変異に,座間で連関が
2002)
。
以上 3 つのレベルに対応する代表的な統計量として,対立遺伝子レベルでは
SND ,
Moran's
I,
遺伝子型レベルでは
multilocus レベルでは NAC がある。
集団内遺伝構造は主に花粉流動や種子散布によって形成されるが (Epperson,
1
9
9
0
;S
o
c
a
landWartenberg ,
1
9
8
3
),
他
に
も
さ
ま
ざ
ま
な
要
因
が
関
与
し
て
お
り
,
中
で
も
生
育
場
所
の
分
断
・
孤
立
,
制
限
さ
れ
た
種
子
や
花
粉
の
散
布
,
選
択
,
人
為
的
な
撹
乱
な
ど
の
影
響
が
大
き
い
と
考
え
ら
れ
て
い
る
(Sokal
andMenozzi , 1982) 。空間的自己相関解析を用
いて進化の過程で起こった微妙な差異を検出しようとするのは現実的で、はないと考えられるが,集団に与える進
化上の大まかな要因を考える際にはこの手法は有効であると考えられる
(Sokal
andMenozzi , 1982) 。さらに,
これらの統計量の利用によって,生息域内保全集団や育種集団を自然集団から選抜する際に有効な基本情報が得
林木育種センター研究報告第
-32-
20 号
られるものと考えられる。また,集団内遺伝構造は集団の遺伝変異を保持し,また集団の遺伝変異を正確に評価
するためにも考慮、に入れなければならない
(Epperson
, 1989) 。
s
p
a
t
i
a
lautocorrelation
現在までに,多くの樹種において,
を
用
い
た
遺
伝
構
造
の
解
析
が
行
わ
れ
る
よ
う
に
な
り
,
デ
ー
タ
が
蓄
積
さ
れ
つ
つ
あ
る
。
た
と
え
ば
,
こ
の
手
法
を
用
い
て
林
齢
の
異
な
る
集
凶
聞
の
遺
伝
構
造
の
違
い
を
解
析
し
た
報
告
が
多
数
あ
る
(Hamrick
e
tal. , 1
9
9
3
;EppersonandAlvarez-Buylla , 1
9
9
7
;Parkeret
αl. , 200 1) 。
そ
れ
ら
は
,
若
齢
の
集
団
で
顕
著
に
み
ら
れ
た
集
同
内
遺
伝
構
造
が
,
集
団
の
齢
が
大
き
く
な
り
,
間
引
き
が
起
こ
る
に
つ
れ
て
減
少
し
て
い
く
と
報
告
し
て
い
る
。
ま
た
人
為
的
な
撹
乱
履
歴
の
あ
る
集
団
で
は
著
し
い
空
間
的
自
己
相
関
が
認
め
ら
れ
た
と
い
う
報
告
も
あ
る
(Knowlese
tal. , 1
9
9
2
;Takahashiet αl. , 2000)
。
さ
ら
に
,
栄
養
繁
殖
や
制
限
さ
れ
た
種
子
や
花
粉
の
散
布
の
あ
っ
た
集
団
で
も
顕
著
な
空
間
的
自
己
相
関
を
も
っ
遺
伝
構
造
が
検
出
さ
れ
て
い
る
(Shapcott
, 1995)
。
サ
ク
ラ
バ
ハ
ン
ノ
キ
に
関
し
で
も
,
集
団
の
遺
伝
構
造
を
考
慮
す
る
こ
と
は
,
生
息
域
内
保
全
す
る
集
団
の
選
定
お
よ
び
生
息
域
外
保
全
の
た
め
の
サ
ン
プ
リ
ン
グ
を
適
切
か
っ
効
率
的
に
行
う
際
の
基
礎
的
な
情
報
を
与
え
る
も
の
と
考
え
ら
れ
る
。
そ
こ
で
第
5
章
で
は
遺
伝
的
多
様
度
お
よ
び
、
集
団
内
遺
伝
構
造
の
解
析
を
行
っ
た
。
5)本論文の構成
本研究では,まず第 2 章で,サクラバハンノキの萌芽特性や集団の動態など,生態的側面からの特徴について
議論する。第 3 章では,遺伝的分析に使用するアロザイムマーカーの開発について,第 4 章ではアロザイムマー
カーを用いてサクラバハンノキ 7 集団の集団遺伝学的解析の結果をそれぞれ議論する。第 5 章では集団内遺伝構
造を樹齢や伐採歴の異なる集団間で比較し最後に第 6 章で総合考察として,サクラバハンノキの遺伝資源保全
の方法について言及する。
第2章
サクラパハンノキの生態的特徴
第 1 節はじめに
サクラバハンノキの種および、集団の適切かっ効率的な保全に関する知見を得るため
本章では
茨城県十王町
におけるサクラバハンノキとハンノキ自生地域において,両種の萌芽特性およびそれに関連するサクラバハンノ
キ複幹個体内の幹構造を調査した。次にサクラバハンノキ局所集団の動態を検討するため,最近 6 年間の枯死個
体と新規加入個体を調査し,加えて果穂の着果量,実生更新の状況についても調査した。
第 2 節材料および方法
1)調査地
今回の調査では外観を基準に,単幹で生育しているものについてはそれを,株立ち状に生育しているものにつ
いては株をまとめて l 個体とした。また萌芽シュートと幹を樹高 2m で、区分した。萌芽シュートは伸長高0.2m 以
上の開葉しているものとした。
茨城県十王町加幸沢の沢筋と周辺域の湿地(北緯36度42分,東経 140度42分,標高 50m) に成立しているサクラ
バハンノキおよび、ハンノキ集同(以下,十王集団とする) (半田ら, 1996) は,道路や水路などによって分断され
て,局所的に生育し,小集団を構成している
(Fig. 2-1; 半田氏提供)。ここではそれらの小集団を局所集団と呼
一一一
qd
qd
サクラパハンノキの保全に関する遺伝・生態学的研究
Juo 一 九
¥.
.
.
.
.
.
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r\ミコ
P
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醐
醐
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fA.tr αbeculos αand A.jαiponic αin Juop
o
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e
dbyHandaT
ぶことにする。今 l口l はト王集団に属する謝高(量一直高)
2m以上のサクラパハンノキ全個体とハンノキ全個体,
およびそれらのうち 146個体が属するサクラパハンノキの]局所集団を調査の対象としたぽig. 2 1 の矢印)。本
局所集問は,十ま集団中で最も大きなものの一つで,その上流にはサクラパハンノキは生育しておらず\また,
他の局所集団とは異なる沢沿いに成立している。
2)寵査および解析方法
CD サクラパハンノキとハンノキの璃芽性の比較
十去集団の調査対象個体(サクラパハンノキ: 446個体,ハンノキ: 338僧体)について,
1995年間"-'12 月に倍
体ごとに測定した全ての幹の欝高および、胸尚 l白菜のデータ(半田氏提供)をもとに,幹数を基準として樹形を:単
幹タイプ,複幹タイプの 2 タイプに区分した。さらに萌芽特性を検討するため,If固体内の最大径をもっ幹を主
幹とし,主幹以外の幹はすべて萌芽幹とした。また河穣とも,捜幹{国体率および 1 捜幹髄体当たりの幹数は,つ
ぎの式により算出した。
複幹{閥体率(%)ヱヱ(捜幹タイプの健体数/全娼体数)
1 複
幹
儒
体
当
た
り
の
幹
数
さ
ら
に
ハ
ン
ノ
キ
に
つ
い
て
し
た
。
X
1
0
0
(7 料
品
複
幹
タ
イ
プ
の
幹
数
/
強
幹
の
銅
体
数
20 例
年
5 月
に
,
十
王
集
関
内
の
任
意
の
60 個
体
に
つ
い
て
薦
芽
シ
ュ
ー
ト
の
有
無
と
本
数
を
調
査
A斗A
つd
林木育種センター研究報告第 20 号
(2) サクラパハンノキ個体内の幹構造
つぎに,局所集団に属するサクラバハンノキ全個体の全ての幹の胸高部(地上1.
6.5cm
で、あった)について,内径
2m) (胸高直径が最小の幹は
5mm の
成
長
錘
を
用
い
て
樹
皮
か
ら
髄
に
至
る
コ
ア
を
採
取
し
た
。
そ
の
コ
ア
の
木
口
面
を
鋭
利
な
刃
物
で
平
滑
に
調
整
し
,
年
輪
数
(
胸
高
部
の
年
輪
数
を
以
下
,
「
樹
齢
」
と
す
る
)
お
よ
び
定
し
た
。
さ
ら
に
5年
輪
単
位
の
年
輪
幅
を
測
複
幹
個
体
を
構
成
し
て
い
る
幹
に
つ
い
て
,
髄
か
ら
6 ~15 年
輪
聞
の
10 年
輪
の
部
位
に
つ
い
て
材
密
度
を
測
定
し
た
。
な
お
,
偏
心
お
よ
び
芯
腐
れ
が
観
察
さ
れ
た
幹
に
つ
い
て
は
,
直
径
お
よ
び
採
取
し
た
数
本
の
コ
ア
の
年
輪
数
と
幅
か
ら
髄
の
位
置
ま
で
の
樹
齢
を
推
定
し
た
。
材
密
度
(Bd)
は
つ
ぎ
の
式
に
よ
り
算
出
し
た
。
な
お
,
生
材
体
積
は
水
中
浮
力
法
で
測
定
した。
Bd (kg/m3) =Wo/VgX 1
0
0
0
Wo (
g
):
全
乾
重
量
,
3
Vg (cm
)
:生材体積
(3) サクラパハンノキ局所集団の動態
春から秋を l 成長期と考え, F
i
g
.2-1
化
を
調
査
し
た
。
本
局
所
集
団
に
は
前
述
し
た
2001
年
の
4~5
に
矢
印
で
示
し
た
局
所
集
団
に
つ
い
て
個
体
数
な
ら
び
に
幹
数
の
1995 年
の
調
査
時
点
で
146 個体,
5成
長
期
間
の
変
241 本
の
幹
が
存
在
し
て
い
た
。
5成
長
期
後
の
月
に
枯
死
伺
体
を
確
認
し
,
局
所
集
団
の
全
て
の
生
存
個
体
を
対
象
に
個
体
ご
と
の
幹
数
,
全
て
の
幹
の
胸
高
直
径
,
萌
芽
シ
ュ
ー
ト
の
有
無
お
よ
び
根
元
付
近
に
あ
る
枯
死
し
た
幹
・
萌
穿
シ
ュ
ー
ト
の
有
無
を
調
べ
た
。
ま
た
前
年
(2000
に
着
果
し
た
果
穂
の
量
(
以
下
,
着
果
量
と
す
る
)
に
つ
い
て
も
調
査
し
た
。
着
果
性
に
よ
っ
て
集
団
内
の
個
体
を
次
の
4群
;
着
果
が
樹
冠
の
全
体
に
み
ら
れ
,
そ
の
量
が
果穂、の量が
20 を
こ
す
も
の
,
着
果
が
樹
冠
の
一
部
に
偏
っ
て
い
る
が
,
着
果
量
が
年)
20 を
こ
す
も
の
,
20 個
以
下
,
お
よ
び
観
察
さ
れ
な
い
も
の
,
に
区
分
し
た
。
さ
ら
に
局
所
集
団
内
お
よ
び
隣
接
地
に
お
い
て
,
実
生
更
新
に
よ
る
稚
樹
の
発
生
が
あ
る
か
ど
う
か
を
観
察
し
た
。
な
お
,
こ
の
局
所
集
団
内
で
は
,
前
回
調
査
か
ら
最
近
6年
間
に
人
為
的
な
伐
採
行
為
は
行
わ
れ
て
い
な
い
。
第3節
結
果
1)サクラパハンノキとハンノキの萌芽性の比較
サクラバハンノキとハンノキの樹形タイプ別の個体数および幹数,主幹の胸高直径および樹高の平均値±標準
偏差を Table 2-1 に示した。調査個体数は
サクラバハンノキが446個体,ハンノキが338個体であった。両樹種
Table21 Numberofindividualsandstemsofeachtreetype , percentageofmultiple-stemmed
individuals , number o
f stems per multiple-stemmed individual , average and
1
.2m) and t
r
e
e height i
n
standard d
e
v
i
a
t
i
o
n
so
f diameter o
f breast height (
A
.tr α beculos
αandA.jα
'P onic α (1 995) .
Treetype
T
o
t
a
l
S
i
n
g
l
e
stemmed
N
o
.o
f
N
o
.o
f
i
n
d
i
v
i
d
u
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l
s steπ1S
A
.trab
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A
.
j
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P
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g
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numbero
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T1r
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w
i
t
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u
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p
l
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- (
m
a
i
ns
t
e
m
)
(m)
s
t
e
m
s
(em)
stemmed
(
%
)
i
n
d
i
v
i
d
u
a
l
4
E
L
Multiple
目stemmed
N
o
.o
f
N
o
.o
f
N
o
.o
f
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n
d
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i
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u
a
l
si
n
d
i
v
i
d
u
a
l
s ste 円1S
4
4
6
8
1
9
2
7
5
1
7
1
5
4
4
3
8
3
3
8
3
7
9
3
0
3
3
5
7
6
1
0
n4EL
3
.2
1
2
.8ア7.1
8
.7ア3
.6
2
.2
1
3
.0ア6.1
9
.6ア3
.2
(p<
0
.0
5
)
サクラパハンノキの保全に隠する遺伝・生態ヤ的研究
35-
4
0
口 A.
t
r
a
b
e
c
u
f
o
s
a(
n
=
4
4
6
)
(
n
=
3
3
8
)
調 A.j 旨'P onica
3
0
説委
)
〉、
g20
<
l
)
3
c"
也
、輸
l
.
L
.
.
10
。
10
1
5
20
2
5
3
0
35
4
0
D
i
a
m
e
t
e
ra
tb
r
e
a
s
th
e
i
g
h
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e
m
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F
i
g
.2-2 Frequencyd
i
s
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i
b
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t
i
o
no
fst 邑m diametera
tb
r
e
a
s
th
e
i
g
h
t(
1
.2m) i
nA
. tr α beculos
A. jαiponic
αand
.
α (1 995)
1
8
1
4
1
2
MC一
F
コ
一O」止問
KA勺
A由
ELD
干U
的広
ω制
』的
H
←
OLωS
とF
コ之
•
•.
•
•
•
•
.
•
•
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
•.
.
..•
u山励。cu/osa
1
6
10
8
6
坐型H
・・.
・.
4
2
・
附
・
・
・
・
・
・
欄
鯛
冊
側
似
鵬
・
・
。
。
10
4
0
3
0
20
D
i
a
m
e
t
e
ra
tb
r
e
a
s
th
e
i
g
h
to
ft
h
em
a
i
nstem(
e
m
)
1
8
hABE3
1
6
(
n
=
35
)
l
(
b
)A.j~ponica
1
4
凶広3
』ご DLEC
」コ之
出C一
F一
39的
La
1
2
10
8
8
•
4
-・.
・・・ω・・.......
2
0
0
10
20
•
3
0
4
0
D
i
a
m
e
t
e
ra
tb
r
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a
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ft
h
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a
i
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e
m
)
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r
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a
s
th
e
i
g
h
t(
1
.2m)o
ft
h
emainstemsandthenumber
F
i
g
.2-3 R
e
l
a
t
i
o
nbetweent
h
ediam 抗告 r a
o
fstemsformedbys
p
r
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i
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gi
n(
a
)A
.tr αbeculos αand
(
b
)A
.jαpomc α
p
o
qJ
林木育種センター研究報告
第 20 号
35
(
a
)
30
。
00
0
000
00
00
00
000
00
00
0000
000
80
06
00
00
000
06
00
。。
。
。
向U
1
5
OQU
。
00
00
00
000
00
00
0
向U
20
0
0
00
0
00
( E パ
O 豆
)ω工
一 判
回
ω 一
m』
wv
一
Em 一
wE
石
Lm
一
ωw
口
80
25
g
e
。
。
10
。
5
0
o1234 56 7891011121314151617181920212223242526272829303132333435363738
7
0
(
b
)
60
。
。
50
n
o
ハ門匂
000
OO
QUU0
00
00
0
00
00
20
8
n
u
。
。
0
n匂
00
0
0
。
0o
o
0
nり
30
00
00
。
8
0
0
0
0
0
0o
( L〉m
)w
ω
凶m
ωw E
一
Fω
ω
40
00
8
。
0
8
0
0
00
0
10
0
o1234 567891011121314151617181920212223242526272829303132333435363738
I
d
e
n
t
i
f
i
c
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t
i
o
nn
o
.o
fm
u
l
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m
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n
d
i
v
i
d
u
a
l
s
F
i
g
.2-4 (
a
) Diametera
tb
r
e
a
s
theight (
1
.2m) and (
b
) stemageo
fmultiple-stemmedi
n
d
i
v
i
d
u
a
l
s
.tr αbeculos
αin t
hesub-population (
2
0
01
)
.
o
fA
サクラバハンノキの保全に関する遺伝・生態学的研究
の胸高直径の頻度分布を
"
'
3
9
.gem
Fig.2-2
に示した。両樹種ともに胸高直径階は,最頻値が
で
、
あ
っ
た
。
四
分
位
偏
差
は
サ
ク
ラ
バ
ハ
ン
ノ
キ
で
ハ
ン
ノ
キ
は
,
胸
高
直
径
階
9.7em
5em
-37-
10.
,
ハ
ン
ノ
キ
で
6.gem
0
"
'1
4
.gem
,
最
大
値
が
0
35.
で
、
あ
っ
た
。
ま
た
と
く
に
サ
ク
ラ
バ
未
満
の
個
体
の
比
率
が
ハ
ン
ノ
キ
に
比
べ
て
大
き
か
っ
た
。
サ
ク
ラ
バ
ハ
ン
ノ
キ
と
ハ
ン
ノ
キ
の
複
幹
個
体
率
お
よ
び
l 複
幹
個
体
当
た
り
の
幹
数
を
サ
ク
ラ
バ
ハ
ン
ノ
キ
の
方
が
ハ
ン
ノ
キ
よ
り
も
大
き
い
値
を
示
し
た
。
Table
2-1
に
示
し
た
。
両
指
標
と
も
1 複
幹
個
体
当
た
り
の
幹
数
に
つ
い
て
,
サ
ク
ラ
バ
ハ
ン
ノ
キ
と
ハ
ン
ノ
キ
の
平
均
値
に
は
,
5%水準で有意差があった。
t- 検
定
の
結
果
,
萌芽シュートに関しては,サクラパハンノキでは調査個体(局所集団中の生存個体)の 61 %に相当する 76個体
で観察され,その数は個体当たり l から 12本(平均 4.0本)であった。一方,十王集団内の任意のハンノキ 60個体
については 15% に相当する 9 個体で萌芽シュートが観察され,その数は個体当たり l から 5 本(平均 3.2本)で
あった。以上のように,サクラバハンノキはハンノキに比べて,萌芽シュートを保有している個体の比率が 4 倍
高く,個体当たりの萌芽シュート数も多かった。
つぎに,複幹タイプにおける主幹の胸高直径と萌芽幹数の関係を Fig.2-3 に示した。サクラバハンノキは 171 個
体で萌芽幹カ ~544本,ハンノキは 35個体で萌芽幹が76本であった。サクラバハンノキについて l 個体の幹数は最大
17本で,
5 本以上の個体が26{固体と,全体の 15% を占めたが,ハンノキの l 個体の幹数は全て 4 本以下であり,
サクラバハンノキの方が多数の幹を保持していた。また , t- 検定の結果,ハンノキでは主幹の胸高直径と萌芽幹
の本数との聞に有意な正の相関 (p<O.0 1) が見られたが,サクラバハンノキではみられなかった。
2)サクラパ J\ ンノキ個体内の幹構造
調査したサクラパハンノキ局所集団に属する 38複幹個体に関して,個体間および個体内で胸高直径,樹齢,髄
から 6"-'15年輪部位の材密度および年輪幅の比較を行った。個体単位で求めた胸高直径,樹齢,材密度および年
輪幅の平均値±標準偏差はそれぞれ 14.
2-4 に 38 個
体
に
属
す
る
全
幹
0ア3.7em ,
30±6年,
4
3
4ア20kg/m3 および
2.
6ア0.5mm
で、あった。
Fig.
93 本
の
胸
高
直
径
お
よ
び
樹
齢
の
分
布
を
示
し
た
。
胸
高
直
径
お
よ
び
樹
齢
の
値
が
個
体
内
の
幹
の
間
で
大
き
く
異
な
る
個
体
は
ほ
と
ん
ど
な
か
っ
た
。
さ
ら
に
そ
れ
ぞ
れ
の
形
質
に
つ
い
て
,
分
散
分
析
を
行
っ
た
と
こ
ろ
,
胸
高
直
径
,
樹
齢
お
よ
び
材
密
度
に
は
個
体
問
に
有
意
差
(p<O.0
1)
が認められたが,年輪幅には個体聞に有意差が認、められ
な
か
っ
た
。
こ
の
こ
と
か
ら
,
個
体
を
形
成
す
る
幹
の
胸
高
直
径
,
樹
齢
お
よ
び
材
密
度
に
関
す
る
ぱ
ら
つ
き
は
,
個
体
内
よ
り
個
体
聞
の
方
が
大
き
い
こ
と
が
明
ら
か
に
な
っ
た
。
F
i
g
.2-4 中
の
特
徴
的
な
2-2
に
示
し
た
。
個
体
2 個
体
(
個
体
番
号
9 で
は
主
幹
が
他
の
幹
と
ほ
ぼ
一
斉
に
発
生
し
た
も
の
と
考
え
ら
れ
た
。
個
体
9 お
よ
び
29)
に
つ
い
て
,
す
べ
て
の
幹
の
胸
高
直
径
と
樹
齢
の
値
を
35 年
以
上
年
輪
数
が
異
な
る
た
め
29 は
,
個
体
主
幹
が
あ
る
程
度
成
長
し
て
か
ら
萌
芽
幹
が
9 と
同
様
に
主
幹
が
あ
る
程
度
成
長
し
て
か
ら
萌
芽
幹
が
ほ
ぼ
一
斉
に
発
生
し
た
と
考
え
ら
れ
る
が
,
そ
の
後
主
幹
が
枯
損
し
て
,
萌
芽
幹
が
主
幹
の
形
で
残
存
し
た
も
の
と
考
え
ら
れ
た
。
個
体
に
お
け
る
萌
芽
幹
と
,
個
体
29 の
す
べ
て
の
幹
の
樹
齢
は
,
ほ
ぼ
同
様
で
Table
9
21"-'25
年
で
あ
っ
た
。
3)サクラパハンノキ局所集団の動態
本局所集団における枯死個体と新規加入個体に関する 5 成長期間の動態を Table 2-3 に示した。実生および萌
芽からの新規加入は観察されなかった。個体数は幹の枯損により 21 個体が枯死し,
146個体から 125個体に減少し
た。 125個体のうち 4 個体については幹が枯損していたが,萌芽シュートが発生しており個体が維持されていた。
。δ
つδ
林木育種センター研究報告第 20 号
Table2-2 Diametera
tb
r
e
a
s
theight(
1
.2m) andstemagef
o
rtwoi
n
d
i
v
i
d
u
a
l
so
fA
.tr α beculos
Stem
I
n
d
i
v
i
d
u
a
lN
o
.
Diameter (em)
9
Stemage (
y
e
a
r
s
)
Diameter (em)
29
α.
Stemage (
y
e
a
r
s
)
5
2
3
4
3
0
.3
1
4
.
4
1
2
.
6
7
.6
5
9
2
2
2
3
2
2
1
3
.
5
1
.9
1
1
0
.
4
1
0
.
4
9
.5
2
5
2
3
2
4
2
1
2
1
f
Table2-3 Changesi
nthenumbero
fi
n
d
i
v
i
d
u
a
l
sandstemso
feacht
r
e
etype , percentageo
fstemspermultiple-stemmedindividual ,
multiple-stemmedindividuals , numbero
averageandstandardd
e
v
i
a
t
i
o
n
so
fdiametero
fb
r
e
a
s
theight(
I
.2m) andt
r
e
eheight
overs
i
xyears (October1
9
9
5-A
p
r
i
l200l
)
.
Mean
P
e
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c
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n
t
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g
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Multiple-stemmed
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multiple
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T
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l
S
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stemmed
N
o
.o
f
N
o
.o
f
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n
d
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v
i
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u
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l
s ste 昨1S
D
i
a
m
e
t
e
ra
t
αs
th
ρしelg仏H 品目L
T
r
e
e仏H ρし》 門gh 品目L 仏or ρu a
(
m
a
i
ns
t
e
m
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( m ) m an
(em)
October
1
9
9
5
1
4
6
2
4
1
8
7
5
9
1
5
4
4
0
2
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8
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1
.0ア4.7
1
A
p
r
i
l2
0
0
1
1
2
5
*
1
7
6
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3
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3
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4
9
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1
3
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ア
4
.2
ホ including
f
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rm
a
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t
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e
dbynewsprouts
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i
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i
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h
T
o
t
a
l
1
5
Mean (em)
2
.
2
2
.7
2
.
7
2
.3
1
.9
1
.
7
1
.
6
1
.5
1
.
9
1
.7
1
.
4
1
.
2
1
.2
Standardd
e
v
i
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t
i
o
n
O
.5
O
.8
O
.9
O
.8
O
.7
O
.6
O
.6
O
.6
O
.7
O
.9
O
.8
O
.4
O
.2
Numbero
fstems
1
7
6
1
7
6
1
7
6
1
7
6
1
7
4
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1
1
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1
5
6
4
3
2
6
1
0 1
1
1
5 1
6
2
0 2
1
2
5 2
6
3
0 3
1
3
5 3
6
4
0 4
1
4
5 4
6
5
0 5
1
5
5
1995年 10 月の調査時では,複幹個体率が40% ,
1 複幹{固体当たりの幹数が2.6本であったが,
5
6
-
5 成長期後には,
それぞれ30% ,および 2.4本に減少していた。
5 成長期の聞に単幹個体は 20個体(1 4%) が枯死したが,一部の幹が枯損した 16複幹個体(1 1%) が単幹個体
になったことにともなって,全体では 4 個体が減少し単幹個体の数は 83 になった。複幹個体は,
が枯死し,また一部の幹の枯損により単幹個体になった個体が
38 個体となった。複幹個体は
16 (1 1%)
幹の枯損によって単幹個体になるものの
あったため,全体では
5 個体 (3 %)
21 個体が減少し
既存の単幹個体と比べて低い減少率を
示した。
1995 年および 2001 年調査時の主幹の胸高直径および、樹高の平均値土標準偏差を
査時に生存していた個体の,
Table
2-3 に示した。
1995 年における主幹の胸高直径および樹高の平均値±標準偏差は,それぞれ
2001 年調
13.5 土
つd
GJ
サクラバハンノキの保全に関する遺伝・生態学的研究
4 . 2 eお
m よ び
9 . 8 ± 2 0でm 、 あ り , 同 調 査 時 に お け る 枯 死 個 体 の そ れ
8.ら
6ア2
は
.8em
そ れ, ぞ
7
.6
れ
ア2.4m で、あっ
た。形状比(樹高/胸高直径)に関しては,生存個体の平均値が
77 であるのに対して枯死個体の平均値は
た。このように,枯死個体は胸高直径,樹高ともに生存個体よりも小さく,
2001 年の調査時に幹が生存していた
準
偏
差
は
そ
れ
ぞ
れ
13.
しかも細長い樹形を示していた。
121 個体の全ての幹(1
76 本)の胸高直径,年輪幅および樹齢の平均値土標
8ア4.lem , 2
.2ア0.5mm および 30±7 年であった。また,樹齢の最大値は
年
で
あ
っ
た
。
中
心
部
か
ら
樹
皮
に
至
る
半
径
方
向
の
年
輪
幅
の
推
移
は
良好で、あった。樹齢に関しては
"'35
年
の
幹
が
全
体
の
92 であっ
Table
20 年
以
下
の
幹
が
82%
17 本,
を
占
め
た
。
ま
た
最
小
樹
齢
が
21 年から
59 年,最小値は
2-4 に示したとおり
35 年
の
幹
が
144 本,
15
中
心
部
で
直
径
成
長
が
36 年
以
上
の
幹
が
15 本であり,
15 年
で
、
あ
っ
た
こ
と
か
ら
,
こ
の
局
所
集
団
で
は
少
な
く
と
も
最
近
2
1
15
年
間
,
新
規
加
入
に
よ
る
現
存
個
体
は
な
い
と
考
え
ら
れ
た
。
ま
た
,
前
述
の
よ
う
に
萌
芽
シ
ュ
ー
ト
に
よ
る
新
規
加
入
個
体
も
み
ら
れ
な
か
っ
た
。
ま
た
,
前
年
持
さ
れ
て
い
た
(2000
年
)
の
着
果
状
況
の
調
査
の
結
果
,
果
穂
が
観
察
さ
れ
た
サ
ク
ラ
バ
ハ
ン
ノ
キ
の
個
体
数
は
121 個
体
の
う
ち
に
着
果
し
て
い
た
個
体
が
52%
23
63 で
,
幹
が
維
で
あ
っ
た
。
し
か
し
,
樹
冠
全
体
に
着
果
し
て
い
た
個
体
が
(1 9%) ,
果
穂
が
6
20 個
以
下
で
あ
っ
た
個
体
が
34
(28%)
(5%)と少なく,部分的
であった。
第4節
ま
と
め
サ
ク
ラ
バ
ハ
ン
ノ
キ
と
ハ
ン
ノ
キ
の
複
幹
個
体
率
お
よ
び
l 複
幹
個
体
当
た
り
の
幹
数
は
,
と
も
に
ハ
ン
ノ
キ
よ
り
も
サ
ク
ラ
バ
ハ
ン
ノ
キ
で
大
き
か
っ
た
。
さ
ら
に
,
萌
芽
シ
ュ
ー
ト
を
保
有
し
て
い
る
個
体
の
比
率
,
お
よ
び
個
体
当
た
り
の
萌
芽
シ
ュ
ー
ト
数
に
関
し
で
も
,
サ
ク
ラ
バ
ハ
ン
ノ
キ
は
ハ
ン
ノ
キ
よ
り
大
き
な
値
を
示
し
た
。
サ
ク
ラ
バ
ハ
ン
ノ
キ
の
個
体
を
形
成
す
る
幹
の
胸
高
直
径
,
樹
齢
お
よ
び
材
密
度
に
関
す
る
個
体
間
変
異
は
,
個
体
内
変
異
よ
り
大きかった。
個
体
の
消
長
を
調
査
し
た
十
王
町
の
サ
ク
ラ
バ
ハ
ン
ノ
キ
局
所
集
団
に
は
規
加
入
は
観
察
さ
れ
な
か
っ
た
。
個
体
数
は
幹
の
枯
損
に
よ
り
のうち
5成
長
期
間
を
通
し
て
,
実
生
お
よ
び
萌
芽
か
ら
の
新
21 個体が枯死し,
146 個
体
か
ら
125 個体に減少した。
125 個
体
4個
体
に
つ
い
て
は
幹
が
枯
損
し
て
い
た
が
,
萌
芽
シ
ュ
ー
ト
が
発
生
し
て
お
り
個
体
が
維
持
さ
れ
て
い
た
。
第3章
サ
ク
ラ
パ
ハ
ン
ノ
キ
に
お
け
る
ア
口
ザ
イ
ム
マ
ー
カ
ー
の
開
発
第 1 節
は
じ
め
に
遺
伝
的
多
様
性
や
集
団
内
遺
伝
構
造
に
関
す
る
解
析
は
,
そ
の
種
が
も
っ
遺
伝
変
異
を
減
少
さ
せ
る
こ
と
な
く
保
全
す
る
上
で
重
要
な
判
断
基
準
と
な
る
。
本
章
で
は
,
サ
ク
ラ
バ
ハ
ン
ノ
キ
に
つ
い
て
こ
れ
ら
の
解
析
を
行
う
た
め
の
遺
伝
マ
ー
カ
ー
と
し
て
使
用
し
う
る
ア
ロ
ザ
イ
ム
遺
伝
子
座
の
検
出
を
目
的
と
す
る
。
な
お
,
本
研
究
で
は
厳
密
な
意
味
で
の
ア
ロ
ザ
イ
ム
分
析
は
行
っ
て
い
な
い
が
,
ア
ロ
ザ
イ
ム
遺
伝
子
座
と
い
う
用
語
は
推
定
ア
ロ
ザ
イ
ム
遺
伝
子
座
を
指
す
も
の
と
し
た
。
第2節
材
料
お
よ
び
方
法
1)材料
サクラバハンノキでアロザイム分析が可能かどうかを,茨城県十王町集凶から 100個体静岡県浜北市集団から
50個体,山口県阿東町集団から 100個体,宮崎県木城町集団から 100個体サンプリングを行い,これらの個体を対
林木育種センター研究報告
-40-
第 20 号
象に調査した。分析材料には冬芽を用いた。冬芽の採取は 1997年から 2000年の冬季に行った。採取した試料は -80
℃で保存し,適宜実験に用いた。
2) ア口ザイムの分析方法
アロザイムの分析方法は津村ら(1 990) の方法に基づき,以下の方法で千子った。
(1)酵素の抽出
採取後冷凍保存しておいた冬芽を 30mg秤量し,予め -4°C に冷やしておいた乳鉢に入れ液体窒素を注ぎパウ
ダー状になるまですりつぶした。これに抽出用緩衝液 1 ml(
Table3-1)
と
ポ
リ
ビ
ニ
ー
ル
ポ
リ
ピ
ロ
リ
ド
ン
30mg
4°C , 12 , OOOrpm で、 50分間遠心分離した。
を
加
え
ホ
モ
ジ
ネ
ー
ト
し
た
。
こ
の
粗
抽
出
液
を
遠
沈
チ
ュ
ー
ブ
に
と
り
,
(Pvpp)
得られた上澄み液を電気泳動用試料として用いた。一連の作業は酵素が失活しないよう低温下で、行った。
(2) 電気泳動
電気泳動は,ポリアクリルアミドゲ、ルを支持体とする垂直平板法を用い, D
avis (1 964) , Ornstein (1 964)
方
法
に
ほ
ぼ
従
っ
た
。
分
離
ゲ
ル
お
よ
び
、
濃
縮
ゲ
ル
の
濃
度
と
ら
に
濃
縮
ゲ
ル
に
つ
い
て
は
板
に
1
0
%
25 サ
ン
プ
ル
と
し
,
試
料
添
加
量
は
電
流
条
件
と
し
,
約
(3)
pH を
そ
れ
ぞ
れ
(w/v)
の
ポ
リ
ビ
ニ
ー
ル
ピ
ロ
リ
ド
ン
7.5%
(pvp)
l サ
ン
ブ
。
ル
子
し
あ
た
り
12μl
, 3
.75%
・ pH8.9
・ p
H
6
.
7
と
し
た
。
さ
を
添
加
し
た
。
試
料
添
加
数
は
と
し
た
。
電
気
泳
動
は
l 枚
の
ゲ
ル
4
°
C
,
9.5
m
A /
c
m
2
の
定
温
,
定
180 分
間
行
っ
た
。
染
色
お
よ
び
固
定
ゲ
、
ル
の
染
色
を
行
っ
た
と
こ
ろ
,
明
瞭
な
ザ
イ
モ
グ
ラ
ム
が
得
ら
れ
た
の
は
,
シ
キ
ミ
酸
脱
水
素
酵
素
6
-
ゼ (
A
M
Y
)
リ
ン
酸
脱
水
素
酵
素
(
G
6
P
D
)
(
S
h
D
H
)
,
ジ
ア
ホ
ラ
ー
ゼ
,
ア
ラ
ニ
ン
ア
ミ
ノ
ペ
プ
チ
タ
ー
ゼ
お
よ
び
ホ
ス
ホ
グ
ル
コ
ー
ス
イ
ソ
メ
ラ
ー
ゼ
(DIA)
(AAP)
(PG
I
)
の
,
ア
ス
パ
ラ
ギ
ン
酸
ア
ミ
ノ
基
転
移
酵
素
(
G
O
T
)
,
ロ
イ
シ
ン
ア
ミ
ノ
ぺ
プ
チ
タ
ー
ゼ
9酵
素
種
で
あ
っ
た
(LAP)
(Table
3-2)
。
染
色
液
の
組
成
,
染
色
温
度
を
T
a
b
l
e3-1 Compositiono
fe
x
t
r
a
c
t
i
o
nb
u
f
f
e
r
.
(
B
u
f
f
e
r
)
93mMT
r
i
s
H
C
Ip
H
7
.5
(
A
d
d
i
t
i
v
e
)
G
l
y
c
e
r
o
l
Tween80
D
i
t
h
i
o
t
h
r
e
i
t
o
l
EDTA-2Na*
NAD*
NADP*
2
M
e
r
c
a
p
t
o
e
t
h
a
n
o
l
B
o
v
i
n
eseruma
l
b
u
m
i
n
,
グ
ル
コ
ー
ス
2
3
.4% (WjV)
0.6% (WjV)
llmM
2.8mM
2.3mM
1.6mM
0.5% (WjV)
0.05% (WjV)
*E
t
h
y
l
e
n
e
d
i
a
m
i
n
e
t
e
t
r
a
a
c
e
t
i
ca
c
i
d
*β-Nicotinamide
a
d
e
n
i
n
ed
i
n
u
c
l
e
o
t
i
d
e
*β-Nicotinamide
a
d
e
n
i
n
ed
i
n
u
c
l
e
o
t
i
d
ephosphate
,
ア
コ
ニ
タ
ー
ゼ
,
ア
ミ
ラ
ー
(ACO)
Table
の
サクラバハンノキの保全に関する遺伝・生態学的研究
3-3 と Table
3-4 に示した。染色後,
-41-
Table3-4 に示す固定液に一晩浸し,その後ゲ、ル板をセロハン紙に挟み,ガ
ラ
ス
板
に
張
り
付
け
乾
燥
さ
せ
た
。
(4)
ザ
イ
モ
グ
ラ
ム
の
観
察
ゲ
、
ル
板
の
乾
燥
後
,
各
酵
素
種
に
つ
い
て
ザ
、
イ
モ
グ
ラ
ム
を
読
み
取
り
,
各
推
定
遺
伝
子
座
の
遺
伝
子
型
を
調
査
し
た
。
同
一
遺
伝
子
座
に
属
す
る
対
立
遺
伝
子
に
関
し
て
は
ザ
イ
モ
グ
ラ
ム
の
泳
動
度
の
遅
い
も
の
か
ら
順
に
ア
ル
フ
ァ
ベ
ッ
ト
(a , b, c ……)
を付した。
第 3 節結果
1)ア口ザイム遺伝子座と対立遺伝子の推定
合計350個体のサクラバハンノキの冬芽に対して,アロザイム 22酵素種の検出を試みた。そのうち安定したバン
ドパターンが得られた酵素は,
9 酵素種目推定遺伝子座であった。以下に,その酵素種の各ノすンドパターンにつ
いて述べる。なお,観察されたバンドパターンとそれに対応する遺伝子型を Fig.3-1 に示した。
2)シキミ酸脱水素酵素
(ShDH)
ShDH を染色したゲ、ル板で、は l つのゾーンが検出され,
10種類の表現型を観察した。バンドパターンから対立
遺伝子は 5 種類と推定された。またヘテロ接合体のバンドパターンからこの遺伝子座はモノマー型の遺伝様式を
もつことが推定された。この推定遺伝子座を Shd とした。
3) グルコース -6 ーリン酸脱水素酵素 (G6PD)
G6PD を染色したゲ、ル板で、は l つのゾーンが検出され,
3 種類の表現型を観察した。バンドパターンから対立
T
a
b
l
e3-2 I
n
v
e
s
t
i
g
a
t
e
d enzymes andt
h
e
i
ra
b
b
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v
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i
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n and enzyme commissionr
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f
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r
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.C
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o
.
).
number (
Enzyme
A
b
b
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e
v
i
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t
i
o
n
E
.C
.No.
Locus
S
h
i
k
i
m
a
t
edehydrogenase
G
l
u
c
o
s
e
6
p
h
o
s
p
h
a
t
edehydrogenase
ShDH
G6PD
1
.1
.1
.2
5
Shd
1
.1
.1
.4
9
G6p
D
i
a
p
h
o
r
a
s
e
DIA
1
.
6
.
4
.
3
D
i
a
l
D
i
a
2
D
i
a
3
G
l
u
t
a
m
a
t
eo
x
a
l
o
a
c
e
t
a
t
et
r
a
n
s
a
m
i
n
a
s
e
Y P
コ
O
L
e
u
c
i
n
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m
i
n
o
p
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p
t
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d
a
s
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A
c
o
n
i
t
a
s
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M A M c ω
A
l
a
n
i
n
ea
m
i
n
o
p
e
p
t
i
d
a
s
e
AALAP
Amylase
GOT
Phosphoglucoisomerase
2
.
6
.
1
.
1
Got-l
Got-2
3
.
2
.
1
.
1
Amy-2
3
.4
.1
1
.1
Aap
1
.1
3
.
4
.1
Lap
4
.
2
.
1
.
3
Aco
5
.3
.1
.
9
P
g
i
7
P
g
i
2
T
o
t
a
l
9enzymes
1
3
1
0
c
i
林木育種センター研究報告第 20 号
斗
4 。/
>
Table3-3 Compositiono
fstainings
o
l
u
t
i
o
n
.
Substrate
Others
。
S
h
i
k
i
m
i
ca
c
i
d6
.OmM
NADP*
MTT*
PMS*
0.14mM
0.21mM
0.057mM
。
D-Glucose-6-phosphate
5.1mM
NADP*
MTT*
PMS*
MgCI2
0.14mM
0.21mM
0.057mM
8.8mM
47mMTris-HCI , p
H
8
.0
2, 6
D
i
c
h
l
o
r
o
p
h
e
n
o
l
indophenolO
.065mM
NADH*
MTT*
0.62mM
0.23mM
H
7
.0
93mMPhosphate , p
L
A
s
p
a
r
t
i
ca
c
i
d8
.7mM
α-Ketoglutaric
a
c
i
d8
.OmM
Pridoxal ー
0.79mM
Enzyme
Buffer
ShDH
44mMTris-HCI , pH8.
G6PD
44mMTris-HCI , pH8.
DIA
GOT
AMY
'
5
-phosphate
FastBlueBBs
a
l
t
0.12% (W/V)
I
o
d
i
n
e
PotassiumI
o
d
i
d
e
19mM
14mM
FastBlackKs
a
l
t
D
i
m
e
t
i
l
e
s
u
l
f
o
x
i
d
e
0.06%
0.47mM
FastBlackKs
a
l
t
0.056%
A
:100mMPhosphate , pH6.0
B
:
StarchO
.30% (W
IV)
AAP
182mMTris-malate , pH6.0
L
A
l
a
n
i
n
eβ-naphtylamide8
.5mM
LAP
182mMMaleate , pH6.0
L-Leucineβ-naphthy
amide1
.2mM
ACO
46mMTris-HCI , pH8.
A
c
o
n
i
t
i
ca
c
i
d1
1m M
NADP*
PMS*
NBT*
MgCI2
iCDH*
0.15mM
0.22mM
0.059mM
9.1mM
2
0
u
n
i
t
s
PGI
45mMTris-HCI , p
h
8
.0
D-Fructose-6-phosphate
0.70mM
NADP*
MTT*
PMS*
MgCI2
G6PD*
0.14mM
0.22mM
0.059mM
9.1mM
2
0
u
n
i
t
s
。
ト
*NADP:β-Nicotinamide
adenined
i
n
u
c
l
e
o
t
i
d
ephosphate
*MTT: 3
- (4, 5-Dimethylthiazol-2-yl)ー2, 5
d
i
p
h
e
n
y
l
2
H
t
e
t
r
a
z
o
r
i
u
mbromide
*PMS: Phenazinemethosulfate
*NBT: N
i
t
r
ob
l
u
etetrazorium
*NADH:β-Nicotinamide
adeninedinucleotide,reduced form
*G6PD: Glucose-6-phosphatedehydrogenase
*iCDH: I
s
o
c
i
t
r
a
t
edehydrogenase
Table3-4 Incubation temperature f
o
r staining and f
i
x
a
t
i
o
n
s
o
l
u
t
i
o
nineachenzymesystem.
ShDH
G6PD
DIA
GOT
AMY
AAP
LAP
ACO
PGI
Temperature
3TC
3TC
3TC
roomtemp.
3TC
3TC
3TC
3TC
3TC
*A :50%Ethanol
B:50%Ethanol-5%Acetica
c
i
ds
o
l
u
t
i
o
n
F
i
x
a
t
i
o
ns
o
l
u
t
i
o
n
*
AAABAAAAA
Enzyme
サクラバハンノキの保全に関する遺伝・生態学的研究
-43-
遺伝子は 2 種類と推定された。また,ヘテロ接合体のバンドパターンからこの遺伝子座はダイマー型の遺伝様式
をもつことが推定された。この推定遺伝子座を 06p とした。
4)
ジアホラーゼ (OIA)
DIA を染色したゲ、ル板で、は 3 つのゾーンが検出された。移動度の最も小さなゾーンでは単一の表現型が観察さ
れたが,残りの 2 つのゾーンでは多型がみられた。このうち移動度の小さい方では 4 種類の表現型が,大きい方
では 6 種類の表現型が観察され,両者とも対立遺伝子は 3 種類と推定された。また,ヘテロ接合体のバンドパ
ターンから移動度の小さい方の遺伝子座はテトラマー型の遺伝様式を,移動度の大きいほうの遺伝子座はモノ
マーの型の遺伝様式をもっと推定された。これらの推定遺伝子座を移動度の小さいものから順に Diα-1 , Dia-2 お
よび、Dia ・ 3 とした。
5)アスパラギン酸アミノ基転移酵素 (GOT)
GOT を染色したゲル板で、は 2 つのゾーンが検出された。このうち移動度の小さい方では 2 種類の表現型が,大
きいほうでは 11 種類の表現型が観察され,前者の対立遺伝子は 2 種類,後者では 5 種類と推定できた。またヘテ
ロ接合体のバンドパターンから両者ともダイマー型の遺伝様式をもつことが推定された。これらの推定遺伝子座
を移動度の小さいものから順に 00t-1 および、 00t-2 とした。
6) アミラーゼ (AMY)
AMY を染色したゲ、ル板で、は 2 つのゾーンが検出された。しかし,このうち移動度の小さい方で、はバンドパター
ンが鮮明で、なかったため,移動度の大きいゾーンのみを解析に用いた。このゾーンでは 3 種類の表現型が観察さ
れ,対立遺伝子は 2 種類と推定された。また,ヘテロ接合体のバンドパターンからモノマー型の遺伝様式をもつ
ことが推定された。この推定遺伝子座を Amy・2 とした。
7) アラ二ンアミノペプチターゼ (AAP)
AAP を染色したゲル板で、は l つのゾーンが検出され, 12種類の表現型を観察した。バンドパターンから対立遺
伝子は 6 種類と推定された。また,ヘテロ接合体のバンドパターンからこの遺伝子座はモノマー型の遺伝様式を
もつことが推定された。この推定遺伝子座をAαp とした。
8)
口イシンアミノペプチターゼ (LAP)
LAP を染色したゲ、ル板で、は I つのゾーンが検出され,
7 種類の表現型が観察された。バンドパターンから対立
遺伝子は 4 種類と推定された。また,ヘテロ接合体のバンドパターンからこの遺伝子座はダイマー型の遺伝様式
をもつことが推定された。この推定遺伝子座を Lap とした。
9) アコニターゼ (ACO)
ACO を染色したゲ、ル板で、は l つのゾーンが検出され,表現型が単一で、あった。バンドパターンから対立遺伝子
は l 種類と推定できた。この推定遺伝子座を Aco とした。
林木育種センター研究報告第
-44-
1
5
Shd
20
25
20 号
35
30
a/ 包
40
45
I
I
a/c
/
a 色
a/e
c/ 包
II
I
I
b/c
b/d
b
/ 色
I
I
b
/ 後
e/e
G6p
a/ 包
ーーー
a/b
b/ 色
D
i
a
l
Dia-2
a/ 注
a/ 注
I
I
I
I
I
a/b
a/c
b/b
Dia-3
a/ 旨
a/b
a/c
a/c
b/c
c/ 匂
Got-l
a/ 旨
Got-2
a/ 冨
a/ 旨
a/ 色
a/d
c/c
b/c
b/ 色
b/d
b/ 旨
d/d
d/e
e/e
Amy-2
a/ 旨
a/ 告
ーーー
ーーー
ーーー
ーーー
I
I
b
/ 色
Fig.3-1 Zymogramso
fnineenzymes
y
s
t
e
m
s
.
50
55
60 Rf
Aap
20
25
30
40
45
50
55
a/ 旨
I
I
a/e
a/b
a/f
a/c
a/d
b/b
b/c
b/d
c/d
c/c
d/d
Lap
35
II
II
d/d
a/d
II
a/包
II
a/b
a/c
b/b
b/ 匂
Aco
a/ 匂
P
g
i
l
c/c
a/c
c/e
b/c
a/ 旨
a/ 後
I
I
a/b
a/d
e/e
b/b
d/d
P
g
i
2
a/ 冶
F
i
g
.
3
1 Zymogramso
fn
i
n
eenzymes
y
s
t
e
m
s(
C
o
n
t
i
n
u
e
d
)
.
60 Rf
Fhlu
15
A斗A
サクラバハンノキの保全に関する遺伝・生態学的研究
林木育種センター研究報告第 20 号
-46-
10) ホスホグルコースイソメラーゼ ePG!)
PGr を染色したゲ、ル板で、は 2 つのゾーンが検出された。このうち移動度の小さい方では II 種類の表現型が観察
されたが,大きい方では単型であった。前者の対立遺伝子は 5 種類,後者では 1 種類と推定された。また,ヘテ
ロ接合体のバンドパターンから前者の遺伝様式はモノマー型と推定された。これらの推定遺伝子座を移動度の小
さいものから }I頃に Pgi・ 1 および、Pgi・ 2 とした。
第 4 節まとめ
本研究では,最終的に Fig.3-1 に示すように 9 酵素種について 13 の推定遺伝子座と計42 の対立遺伝子を推定し
た。これにより,集団遺伝学的解析および集団内遺伝構造の解析が可能となった。しかしこれらのうち,
の Gφ 遺伝子座については一部の集団で明瞭なザイモグラムが得られなかったので,本遺伝子座は第
G6PD
5 章のサク
ラバハンノキの集団内遺伝構造の一部の解析でのみ使用し,その他の解析については
12 推定遺伝子座を用いて解
析することにした。
第4章
サクラパハンノキのアロザイムによる集団遺伝学的解析
第 1 節はじめに
サクラバハンノキは北は岩手県湯田町から南は九州の宮崎県木城町に至るまで隔離分布しているが,もともと
集団数が少なく,湿地の乾性化や埋め立てにより集団の数が減少してきており,環境省によって「準絶滅危倶」
にランクされている。今後の遺伝資源の保全を考えた場合,サクラバハンノキの遺伝的多様度を明らかにしてお
く必要がある。しかしながら,サクラバハンノキの遺伝的な多様性を評価した研究例はない。本章では,第
で推定した
3 章
12 推定遺伝子座を遺伝マーカーとしてサクラパハンノキの遺伝変異の解析を行う。
第 2 節材料および方法
1)材料
サクラバハンノキの遺伝的な多様性の評価を試みるため,日本各地に成立しているサクラバハンノキ集団のう
ち,岩手県湯田町 (Fig.
4-1),福島県西郷村
(Fig.4-2)
,茨城県十王町
(Fig.
4-3)
,栃木県今市市
(Fig.
4-4) ,
静岡県浜北市 (Fig. 4-5) ,山口県阿東町 (Fig. 4-6) および宮崎県木城町 (Fig. 4-7) の 7 集団を対象とした。
それぞれの集団の所在地を Fig.
採
取
し
た
。
サ
ン
プ
リ
ン
グ
は
1997 年
か
ら
か
っ
た
た
め
,
全
数
サ
ン
プ
リ
ン
グ
し
た
が
,
湯
田
・
十
王
・
木
城
の
よ
り
株
状
に
生
育
し
て
い
る
も
の
に
つ
い
て
は
,
そ
の
う
ち
の
適
宜
実
験
に
用
い
た
。
そ
し
て
,
そ
れ
ら
を
第
遺
伝
子
型
を
も
と
に
,
デ
ー
タ
解
析
を
行
っ
た
。
4-8 , T
a
b
l
e4-1
に
示
す
。
ア
ロ
ザ
イ
ム
を
検
出
す
る
た
め
に
そ
れ
ら
の
集
団
か
ら
冬
芽
を
2000 年
の
冬
に
行
っ
た
。
西
郷
・
今
市
・
浜
北
・
阿
東
の
4集
団
で
は
個
体
数
が
少
な
3 集
団
で
は
ラ
ン
ダ
ム
サ
ン
プ
リ
ン
グ
を
行
っ
た
。
萌
芽
に
l 本
か
ら
材
料
を
採
取
し
た
。
採
取
し
た
試
料
は
3 章
で
述
べ
た
ア
ロ
ザ
イ
ム
分
析
法
で
分
析
し
た
。
そ
こ
か
ら
得
ら
れ
た
各
個
体
の
80°C
で保存し,
α.
F
i
g
.4-2 Nishigop
o
p
u
l
a
t
i
o
no
fA
.tr α beculos
Fig.4-3 Juop
o
p
u
l
a
t
i
o
no
fA
.tr α beculos
α.
α.
円i
Fig.4-1 Yudap
o
p
u
l
a
t
i
o
no
fA
.tr α beculos
A守
サクラバハンノキの保全に関する遺伝・生態学的研究
A守
OO
林木育種センター研究報告
2 0第号
F
i
g
.4-4 Imaichip
o
p
u
l
a
t
i
o
no
fA
.trabeculos
F
i
g
.4-6 Atop
o
p
u
l
a
t
i
o
no
fA
.tr α beculos
α.
α.
F
i
g
.4-5 Hamakitap
o
p
u
l
a
t
i
o
no
fA
.tr α beculos
Fig.4-7 Ki
j
op
o
p
u
l
a
t
i
o
no
fA
.tr α beculos
α.
α.
サクラパハンノキの保全に関する遺伝・生態学的研究
-49
0
'
0
0
1
.4
5
。
1
.
Yu
d
a
2
.
N
i
s
h
i
g
o
.
m
a
i
c
h
i
4I
3
.
J
u
o
立
5
.
H
a
m
a
k
i
t
a
じ〉
7
.
K
j
[
o
Fig.
4-8 Locationo
fanalysedA
.tr α
, beculos
αpopulations.
一
林
水
予
言
極
セ
ン
タ
ー
研
究
報
告
-5
0
2)
第 20 号
方
法
(
l
)
集
団
レ
ベ
ル
の
解
析
a. 多
型
的
遺
伝
・
予
感
の
割
合
rf 隠
の
遺
伝
子
庄
の
う
ち
,
あ
る
集
団
に
お
い
て
最
も
頻
度
の
高
い
対
立
遺
伝
子
の
頼
度
が
伝
子
ー
庫
と
し
た
。
多
型
的
遺
伝
子
路
の
数
が
P
0.95
pf 凶
の
と
き
,
そ
の
集
匝
の
多
想
的
遺
伝
子
躍
の
割
合
よ
り
低
い
も
の
を
多
摩
!
的
遺
Pは
次
式
で
求
め
ら
れ
る
。
/r
l
J
b
.1遺伝子鹿当たりの対な遺伝子数
ある集同において j 醤目(j=し 2 ,
3,…… ,
r) の遺伝子臨の対立遺伝子の数がmjf図のとき,
1 遺伝子産当
たりの対校遺伝子数A は,次式で求められる。
A =2
:mj/r
c
.1
遺
伝
子
産
当
た
り
の
有
効
な
対
立
遺
伝
子
数
あ
る
集
団
に
お
い
て
j番
目
(
j
= 1,
2, 3,……, r) の遺伝子販のi 番目の対立遺結子の頻度をPij とすると, 1
遺伝子1'¥.当たりの有効な対立遺伝子数Ae~ま,次式で求められる(Kimura andCrow , 1964) 。
Ae=1/2
:2
:p
;
/
式
か
ら
明
ら
か
な
よ
う
に
, Aは
集
凶
の
大
き
さ
に
依
存
し
,
集
団
が
大
き
い
ほ
ど
値
が
大
き
く
な
る
傾
向
が
あ
る
が
, Ae~ ま
集
部
の
大
き
さ
と
は
無
関
係
で
、
あ
る
。
d.
平
均
ヘ
テ
ロ
接
合
度
(k=I ,
sf 閣
の
あ
る
部
分
集
問
の
う
ち
た
番
F
l
j昌信子座における i 番目
2,え…… , s) の部分集 l'!:lで , j 番訂(j = 1,
(i 二= 1, 2 ,丸…… ,
2, 3 ,……,r)の
m) の対立遺伝子の遺伝子頻度,ホモ接合体の遺伝\-=:子頻震を
それぞれ xりたと Xiルとすると,ヘテロ接合疫の期待値 (h令)と観察鮪 (hoρ は以下の式で求められる
1987) 。
:cxajh2
hejk
I
hO
j
k=
1- 2
:Xijk
…
Table4 I Locationandsamples
i
z
eof
A
.trabeculas
α.
P
o
p
u
l
a
t
i
o
n
1
.Yuda
2
.N
i
s
h
i
g
o
3
.Juo
4
.
l
m
a
i
c
h
i
5
.Hamakita
6
.Ato
7
.K
i
j
o
しatitude
(
N
o
r
t
h
)
3
9
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3ア 08'08"
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3
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品工 lalysed
sevenp
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l
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i
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Longitude
(
E
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1
4
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1
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1
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"
23
'1
8
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samplesize
1
8
2
1
5
1
7
4
1
2
4
6
3
1
0
1
1
4
9
本
(Nei,
サクラバハンノキの保全に関する遺伝・生態学的研究
hejk とは,ある集団の
の hejk'
l つの遺伝子座に関してハーディ・ワインベルグの平衡から期待されるヘテロ接合体の
, hO jk とはある集団の
割合であり
l つの遺伝子陸で実際に観察されたヘテロ接合体の割合である。各遺伝子座
hO jk を集団ごとに平均した平均ヘテロ接合度の期待値(民)と観察値
He= (
"
Lhejk)
/ r
Ho= (
"
Lh ojk)
/ r
そ
れ
ぞ
れ
の
集
団
の
遺
伝
的
変
異
の
レ
ベ
ル
を
表
す
H
e
' Ho は
多
型
的
遺
伝
子
座
の
割
合
数 (A e ) ,
-51-
(p) ,
O
I 遺
伝
子
座
当
た
り
の
対
立
遺
伝
子
数
(H o ) お
よ
び
期
待
値
ヘ
テ
ロ
接
合
度
の
観
察
値
(H o ) は以下の式で求められる。
(A) ,
(He)
I 遺
伝
子
座
当
た
り
の
有
効
な
対
立
遺
伝
子
は
い
ず
れ
も
遺
伝
的
変
異
の
重
要
な
尺
度
で
あ
る
。
こ
れ
ら
の
統
計
量
は
集
団
が
保
有
す
る
遺
伝
的
変
異
の
大
き
さ
を
表
す
統
計
量
で
,
値
が
大
き
い
ほ
ど
遺
伝
的
変
異
が
大
き
い
こ
と
を
意
味
す
る
。
さ
ら
に
P,
A , A e, Ho およびHe の集団ごとの値を合計し,集団数で割った平均値をそれぞれ, P p, A p, A ep ,
Hop および、Hep とし,集団レベルで、の遺伝的変異のレベルを表す指数として算出した。
e. 近交係数
近交係数 (FIs ) は Wright
(1 951 , 1965) によって提唱された統計量で,集団内に起こっている近親交配の
程度を推定するのに有効で、ある oFIS は集団内における近親交配によるヘテロ接合度の減少の程度を表し,以下
の式で求められる。
FIS= (
I- h ojk)
FIS は - I から+
/ hejk
I の聞の値をとり,
FIS が O もしくは
ワインベルグの平衡に従った分布をしていることを表す。また
O に近い値をとるときには,遺伝子型の分布がハーディ・
, FIS が+に偏ったときには,ホモ接合体の個体
がハーディ・ワインベルグの平衡から期待される割合より多いことを示し,ーに偏ったときには,逆にヘテロ
接合体の個体が多いことを示す。
FIS の O からの偏差に関する有意差検定は
, X 2 テストによって行った
(Li and
Horvitz , 1953) 。
f.遺伝的分化を表す統計量
ある集同が s 伺の部分集団に分かれ,各部分集団内で任意交配が行われている場合の
任意の遺伝子陸にお
ける平均ヘテロ接合度の期待値 (Hs) および全集団内で任意交配が行われている場合の同期待値 (HT) は次
式で表される
(N ei ,
1
9
8
7
)
0
HSj= I- "
L"
L(Xijk2)
HTj= I- "
L
(
"
LXijk)2
ただし
, Xijk は h 番目
の i 番目(i= I ,
かれる
(Nei,
(k=
I , 2, 3,……, s) の部分集団におけるj 番目 (j = I , 2, 3,……, r) の遺伝子座
2, 3,…… , m) の対立遺伝子の頻度を表す。 Hsj , HTj から Dsτ'jおよび、 G刊は以下のように導
1987) 。
DSTj=HTj- HSj
GSTj= DSTj/ HTj
林木育種センター研究報告第
-52-
G ST は G STj から以下のように導カ亙れる
(N ei ,
20 号
1
9
8
7
)
0
GST= LGSTj/ r
G ST は O から l の値をとり,各部分集団の遺伝的分化の程度を表す。 G ST の値が大きいほど,各集団が遺伝的に
分化していることを表す。集団間における遺伝変異の違いを評価するため,遺伝子分化係数 G ST
を
求
め
,
0 か
ら
の
偏
差
を
ど
テ
ス
ト
で
検
定
し
た
(Workman
と緯度との回帰を t-test およびノンパラメトリックテスト
(Nei , 1
9
7
3
)
andNiswander , 1970) 。また , P , A , A e およびHe
(Ordering t
e
s
t
;Quenouille , 1952) で検定した。
(2) 種レベルの解析
サクラバハンノキ 7 集団から採取した全個体のデータをすべてプールし
遺伝子型頻度および対立遺伝子頻度
を算出した。
a. 多型的遺伝子座の割合
本研究では,いずれかの集団で多型を示した遺伝子座はすべて多型的遺伝子座として扱った。 パ固の遺伝子
座のうち,多型的遺伝子座がp 個あるとき,その種の多型的遺伝子座の割合PS は次式で求められる。
Ps=p/r
b
.1
遺
伝
子
座
当
た
り
の
対
立
遺
伝
子
数
フ
。
ー
ル
し
た
デ
ー
タ
に
関
し
て
,
検
出
さ
れ
た
す
べ
て
の
対
立
遺
伝
子
の
数
を
l 遺
伝
子
座
当
た
り
の
対
立
遺
伝
子
数
m, 分
析
し
た
遺
伝
子
座
の
数
を
rと
す
る
と
,
As は
,
次
式
で
求
め
ら
れ
る
。
As=m/r
c
.1
遺
伝
子
座
当
た
り
の
有
効
な
対
立
遺
伝
子
数
l 遺
伝
子
座
当
た
り
の
有
効
な
対
立
遺
伝
子
数
Aest ま
集
団
レ
ベ
ル
で
の
解
析
と
同
様
に
,
次
の
式
で
求
め
ら
れ
る
(
K
i
mura
andCrow , 1964) 。
Ae
s= 1/LLp/
d. 平均ヘテロ接合度
j 番目。 =1 , 2, 3,…… , r) の遺伝子座における i 番目 (i =1, 2, 3,…… , m) の対立遺伝子の遺伝子頻
度,ホモ接合体の遺伝子型頻度をそれぞれXij およびXij とすると,ヘテロ接合度の期待値 (he) と観察値 (ho) ,
平均ヘテロ接合度の期待値 (HeJ と観察値 (Has) は集団レベルで、の解析と同様に以下の式で求められる (Nei,
1987) 。
hej=1- L
X
i
j
2
ho
= 1-LX
j
j
i
He
s= Lhej/r
Has=Lhoj/r
He
s'Hostまそれぞれ,種の遺伝的変異のレベルを表す。
サクラバハンノキの保全に関する遺伝・生態学的研究
l 遺伝子座当たりの有効な対立遺伝子数,
l 遺伝子座当たりの対立遺伝子数,
多型的遺伝子座の割合,
- 53-
これらの統計量は種が保有する遺伝的変異の大き
びヘテロ接合度はいずれも遺伝的変異の重要な尺度である。
さを表す統計量で,値が大きいほど遺伝的変異が大きいことを意味する。
Table4-2 Al
l
e
l
efrequenciesa
t1
2allozymel
o
c
ii
nA
.tr α beculos
Locus
ShDH
Shd
D
i
a
l
3
3bc abc
DIA
D
i
a
2
D
i
a
3
GOT
P
o
p
u
l
a
t
i
o
n
*
A
l
l
e
l
e
abcde
Enzyme
G
o
t
l
a
1
.
0
0
0
2
3
4
5
6
7
0
.
1
3
3
O
.8
6
7
O
.0
9
2
O
.9
0
8
O
.0
4
9
O
.9
3
5
O
.0
0
4
0
.
1
2
9
0
.
8
1
5
O
.2
2
5
O
.6
6
0
O
.0
3
0
0
.
1
3
4
O
.8
5
9
abcdeo abo abcdef abed
AMY
Amy-2
AAP
Aap
LAP
Lap
Aco
PGI
P
g
i
l
3
3bcde
ACO
a
P
g
i
2
,
O
.0
8
5
1
.
0
0
0
1
.
0
0
0
1
.
0
0
0
1
.
0
0
0
1
.
0
0
0
1
.
0
0
0
1
.
0
0
0
1
.
0
0
0
0
.
1
0
0
O
.9
0
0
0
.
1
1
8
O
.8
8
2
1
.
0
0
0
O
.2
7
8
O
.7
2
2
O
.0
9
0
0
.
9
1
0
O
.6
6
1
O
.3
3
6
O
.0
0
3
O
.0
0
5
0
.
8
9
3
0
.
1
0
2
0
.
1
3
3
0
.
8
6
7
O
.0
7
6
O
.7
5
0
0
.
1
7
4
0
.
2
1
9
O
.6
5
7
0
.
1
2
4
O
.0
9
7
O
.7
9
8
0
.
1
0
5
0
.
0
1
5
O
.7
9
0
0
.
1
9
5
O
.2
8
2
0
.
7
1
8
1
.
0
0
0
1
.
0
0
0
O
.9
9
3
O
.0
0
7
O
.9
8
4
0
.
0
1
6
1
.
0
0
0
1
.
0
0
0
1
.
0
0
0
O
.0
9
9
0
.
9
0
1
O
.2
3
3
O
.7
0
0
0
.
1
5
5
O
.8
4
5
O
.0
6
6
O
.9
3
4
O
.0
4
5
O
.4
6
4
0
.
4
9
1
0
.
0
1
2
O
.7
4
4
O
.2
4
4
O
.0
0
8
O
.5
4
5
O
.2
9
5
O
.0
9
8
O
.0
5
3
O
.0
8
8
0
.
9
1
2
O
.2
6
7
O
.7
3
3
0
.
1
7
2
O
.8
2
8
0
.
1
9
1
O
.8
0
9
0
.
1
3
5
O
.8
3
3
O
.0
3
2
0
.
1
1
4
O
.8
8
6
0
.
0
1
0
O
.9
9
0
O
.6
7
6
O
.6
6
7
O
.3
2
4
0
.
1
6
7
0
.
1
6
7
O
.8
3
8
O
.0
5
2
0
.
1
1
0
O
.3
0
3
O
.0
3
4
0
.
5
2
1
0
.
1
4
1
O
.6
0
3
O
.0
4
8
O
.2
7
8
0
.
0
7
1
O
.8
6
3
O
.0
2
6
O
.0
8
4
0
.
0
1
1
O
.7
7
4
O
.0
5
8
0
.
1
3
3
O
.0
2
7
O
.0
0
9
O
.3
8
5
0
.
5
1
9
O
.0
9
6
O
.8
6
7
0
.
1
3
3
O
.9
4
2
O
.0
4
0
0
.
0
1
2
O
.0
0
6
O
.8
3
7
0
.
1
6
3
O
.9
6
0
O
.0
2
4
O
.8
7
5
0
.
0
1
6
0
.
1
2
5
O
.0
6
7
0
.
0
1
6
O
.9
8
0
O
.0
2
0
1
.
0
0
0
1
.
0
0
0
1
.
0
0
0
1
.
0
0
0
1
.
0
0
0
1
.
0
0
0
1
.
0
0
0
1
.
0
0
0
O
.9
3
3
O
.8
8
5
0
.
1
1
2
0
.
0
0
3
O
.6
4
2
O
.0
4
9
O
.3
0
9
O
.6
6
7
O
.3
2
5
0
.
0
0
8
0
.
4
4
0
0
.
0
1
1
0
.
0
3
8
O
.0
2
7
0
.
4
8
4
O
.5
8
4
0
.
1
8
1
0
.
0
6
7
1
.
0
0
0
1
.
0
0
0
1
.
0
0
0
*
P
o
p
u
l
a
t
i
o
n
s
:1 Yuda;2 N
i
s
h
i
g
o
;3 J
u
o
;4 I
m
a
i
c
h
i
;5
,
O
.0
0
7
O
.0
5
6
0
.
0
1
2
b
Got-2
α.
,
,
1
.
0
0
0
1
.
0
0
0
, Hamalく ita; 6, A
t
o
;and7, K
i
j
o
1
.
0
0
0
O
.2
3
5
1
.
0
0
0
およ
A斗A
Fhd
林 木 育 種 セ ン タ ー 研 究 報
2 0告
号第
第 3節 結 果
1) 集団レベルの解析
(
1)
検
出
さ
れ
た
対
立
遺
伝
子
と
そ
の
頻
度
サ
ク
ラ
パ
ハ
ン
ノ
キ
7集
団
808
個
体
を
用
い
て
,
42 個
の
対
立
遺
伝
子
が
検
出
さ
れ
た
。
8酵
素
種
T
a
b
l
e
出
さ
れ
た
対
立
遺
伝
子
数
は
4
2
12 ア
ロ
ザ
イ
ム
遺
伝
子
座
に
つ
い
て
分
析
を
行
っ
た
と
こ
ろ
,
合
計
に
各
集
団
の
対
立
遺
伝
子
頻
度
を
示
す
。
各
遺
伝
子
座
に
お
い
て
,
集
団
内
で
検
1 ~ 6 で
あ
り
,
最
も
多
く
の
対
立
遺
伝
子
が
検
出
さ
れ
た
遺
伝
子
座
は
A
α
p
で
、
あ
っ
た
。
ま
た
D
i α­
1, Aco , Pgi・2の各遺伝子座はすべての集団で単型であった。すべての集団で検出された対立遺伝子は Shd b , Dia・
2 b , Dia-3 a , Dia・ 3 b , G
o
t
1a , Got-2 α, Got-2 b , Amy・ 2α, Amy-2 b , Aα'P a, Aα'P C, Lap α, Pgi α の 13 であった。また,特定の
集団にのみ検出された対立遺伝子も存在した(阿東集団における Aapfおよび、Pgi-1 e,木城集団における Dia-2 C ,
Got-2 d , Got-2 e および、Aape) 0 これら 2 集団はいずれも南西日本に位置する集団であった。
(2) 集団レベルの遺伝的変異
各集団の遺伝的多様度を示す統計量を Table 4-3 に示す。集団レベル平均値は Pp =58.3 ,
Hep =0.199 であった。木本植物の平均値は Pp =49.3 ,
Ap
=2.14 , Ae
.35 ,
p=1
Ap
= 1.76 , Ae
.20 , He
tal. , 1
9
9
2
)
p=1
p=0.148 (Hamricke
で
あ
る
の
で
,
サ
ク
ラ
バ
ハ
ン
ノ
キ
は
比
較
的
高
い
集
団
レ
ベ
ル
で
、
の
遺
伝
的
変
異
を
も
つ
こ
と
が
明
ら
か
に
な
っ
た
。
(3)
近
交
係
数
,
木
城
集
団
に
お
い
て
の
み
FIS は
O に
異
な
ら
な
か
っ
た
O と
異
な
っ
た
が
,
他
の
(Table
4-3)
6集
団
で
は
有
意
に
異
な
ら
な
か
っ
た
。
ま
た
7集
団
の
平
均
値
も
。
し
た
が
っ
て
,
ほ
と
ん
ど
の
サ
ク
ラ
バ
ハ
ン
ノ
キ
集
団
は
,
各
遺
伝
子
座
の
遺
伝
子
型
頻
度
に
関
し
て
ハ
ー
デ
ィ
・
ワ
イ
ン
ベ
ル
グ
平
衡
に
あ
る
と
考
え
ら
れ
た
。
(4)
遺
伝
的
分
化
を
表
す
指
標
多
型
を
示
し
た
こ
ろ ,
G ST 値
を
求
め
,
そ
の
値
の
9 遺
伝
子
座
に
つ
い
て
遺
伝
的
分
化
の
程
度
を
表
す
8遺
伝
子
座
で
有
志
で
あ
っ
た
(Table
4-4)
。
こ
の
こ
と
は
,
ほ
と
ん
ど
の
ア
ロ
ザ
イ
ム
遺
伝
子
陸
に
関
し
て
,
遺
伝
子
G ST 値
は O. 146 で
あ
っ
た
。
各
集
団
頻
度
に
集
団
間
差
異
が
あ
る
こ
と
を
示
し
て
い
る
。
サ
ク
ラ
バ
ハ
ン
ノ
キ
全
体
の
種
と
し
て
の
の
持
つ
遺
伝
変
異
を
表
す
統
計
量
と
緯
度
と
の
回
帰
検
定
を
行
っ
た
と
こ
ろ
メ
ト
リ
ッ
ク
テ
ス
ト
で
は
Ae お
よ
び
O か
ら
の
偏
差
を
検
定
し
た
と
, t-test
で
は A, A e お
よ
び
He に
お
い
て
,
ノ
ン
パ
ラ
He に
お
い
て
有
意
で
、
あ
っ
た
。
し
た
が
っ
て
,
サ
ク
ラ
バ
ハ
ン
ノ
キ
の
種
内
遺
伝
変
異
に
占
め
る
集
団
間
差
異
の
割
合
は
木
本
植
物
で
は
比
較
的
大
き
い
と
考
え
ら
れ
,
ま
た
,
日
本
の
南
部
の
集
団
は
北
の
集
団
に
比
べ
て
集
団
内
遺
伝
変
異
が
高
い
こ
と
が
明
ら
か
に
な
っ
た
。
2)
種
レ
ベ
ル
の
解
析
種
レ
ベ
ル
に
お
け
る
遺
伝
的
多
様
度
を
示
す
統
計
量
を
求
め
た
と
こ
ろ
,
0.222 であった。木本植物における平均値は Ps =65.0 ,
で
あ
る
の
で
,
サ
ク
ラ
バ
ハ
ン
ノ
キ
は
比
較
的
高
い
種
内
遺
伝
変
異
を
も
つ
こ
と
が
明
ら
か
に
な
っ
た
。
P s=75.0 , As ニ 3 .42 , Aes ニ 1. 35 およびHes =
A s=2.22 , Ae
.24 , He
tal. , 1
9
9
2
)
s=1
s=0.177 (Hamricke
サクラバハンノキの保全に関する遺伝・生態学的研究
円
55
U
Table4-3 Percentageo
fpolymorphicl
o
c
i(
p
;95%criterion) , n
o
.
f
f
e
c
t
i
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en
o
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l
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s(A) , e
(A e ) , o
bservedh
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o
z
y
g
o
s
i
t
y(H o ) , expectedh
e
t
e
r
o
z
y
>and the fixation index (FIS) in seven
e
g
o
s
i
t
y (H
populationso
fA. trα beculos α.
P
o
p
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l
a
t
i
o
n
1
.Yuda
2 ト~ishigo
3
.Juo
4
.
l
m
a
i
c
h
i
5
.Hamakita
6
.Ato
7
.K
i
j
o
Mean
P
A
41
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6
6
.7
6
6
.7
5
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.3
5
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6
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5
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1
.5
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1
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.
1
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.
1
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2
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.
1
4
Ae
1
.2
3
1
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1
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.
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He
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1
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1
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1
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.
1
9
9
F1S
O
.0
0
5
O
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3
7
O
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3
0
0
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3
4
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0
.
1
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.
1
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O
.0
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S
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a
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a
l
u
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sa
tpolymorphicl
o
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a
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sv
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2
.
Table4-4 Gened
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sf
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2allozymel
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.tr α beculos
α.
thesevenpopulationso
fA
Locus
Shd
D
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l
D
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2
D
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3
Got-l
Got-2
Amy-2
Aap
Lap
Aco
P
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P
g
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2
Mean
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Hs
GST
O
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4
3
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O
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9
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6
5
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O
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3
O
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O
.2
8
6
O
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0
0
0
.
4
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O
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0
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*
第4節
ま
と
め
サ
ク
ラ
バ
ハ
ン
ノ
キ
の
集
団
レ
ベ
ル
の
遺
伝
的
多
様
度
を
示
す
統
計
量
は
と
な
り
,
い
ず
れ
も
木
本
植
物
の
平
均
値
Pp =58.3
(P p =49.3
1992)
で
あ
り
,
こ
れ
ら
も
木
本
植
物
の
平
均
値
より高かった。
Ap= 2.14 , Aep=1.35 , Hep=0.199
, Ap=1
.76 , Aep=1
.20 , Hep=0.148) (Hamricket αl. , 1992)
Ps =75.0
りも高かった。また,種レベルにおける遺伝的多様度を示す統計量は
=
0
.
22
,
(
P s=
6
5
.
0
,
,
A s =3.42 , Aes=1
.35 お
よ
び
よ
Hes
A s =2.22 , Aes=1
.24 , Hes= 0.177) (Hamricke
tal. ,
林木育種センター研究報告第
-56-
20 号
FIS を算出した結果,ほとんどのサクラバハンノキ集団において,ほとんどのアロザイム遺伝子座に関して遺伝
G ST 値は O. 146 で
子頻度がハーディ・ワインベルグ平衡にあることが認められた。また,サクラバハンノキ全体の
G ST の平均値が,固有分布,狭分布,地域分布,広範
あった。木本植物について,分布範囲の広さ別に算出した
分布種でそれぞれ
,
0.141 , 0.124, 0.065 ,
0.033 である
(Hamrick
e
tal. ,
1992) 。したがって,サクラバハンノ
キの種内遺伝変異に占める集団間差異の割合は木本植物では比較的大きいと考えられた。また,各集団が持つ遺
伝変異を表す統計量と緯度との回帰解析を行ったところ,日本の南部の集団は北の集団に比べて集団内遺伝変異
が高いことが明らかになった。
第5章
サクラパハンノキの集団内遺伝構造
第 I 節はじめに
サクラバハンノキ集団の,林齢やその成立過程が集団内家系構造にどのような影響を与えるのかを検討するこ
とは,生息域内保全を行う集団の選定および生息域外保全のためのサンプリングを適切かっ効率的に行う際に重
要であると考えられる。そこで本章では,①若い 2 局所集団と比較的成熟した 2 局所集団の比較と②同ーの集団
を用いた時系列分析により林齢の効果,および③伐採歴のある局所集団と伐採歴を持たない局所集団の比較によ
り伐採による効果を検討した。
第 2 節材料および方法
1)解析の対象とした集団
集団内遺伝構造の解析の対象とした集団は岩手県湯田町,茨城県十王町および栃木県今市市に存在する集団で
ある。これらの集団の現況は以下のとおりである。
(
1)
岩
手
県
湯
田
町
の
集
団
岩
手
県
湯
田
町
越
中
畑
(
北
緯
39 度 17 分
,
東
経
140 度43 分
,
標
高
2
8
5
m
)
の
湿
地
に
成
立
し
て
い
る
集
団
は
日
本
に
お
け
る
サ
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ハ
ン
ノ
キ
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北
限
集
団
で
あ
る
。
こ
の
集
団
は
,
西
側
か
ら
東
側
に
向
か
つ
て
流
れ
る
沢
沿
い
に
成
立
し
て
お
り
,
北
側
を
水
田
,
南
側
の
斜
面
を
ス
ギ
人
工
林
,
丙
側
を
秋
田
自
動
車
道
建
設
時
の
土
捨
て
場
に
固
ま
れ
て
い
る
。
本
集
団
は
位
置
的
に
み
て
上
流
側
と
下
流
側
の
2 つ
の
局
所
集
団
に
大
き
く
分
け
る
こ
と
が
で
き
,
こ
の
2局
所
集
団
は
5
0
m
ほ
ど
離
れ
て
い
る
。
上
流
側
集
団
は
,
大
部
分
が
比
較
的
樹
体
の
小
さ
い
個
体
に
よ
っ
て
構
成
さ
れ
て
お
り
,
そ
の
一
部
は
水
田
に
す
ぐ
隣
接
し
て
い
る
。
一
方
下
流
側
集
団
は
,
上
流
側
に
比
べ
て
集
団
の
大
部
分
が
樹
体
の
大
き
い
個
体
に
よ
り
構
成
さ
れ
て
い
る
。
し
か
し
,
上
流
側
集
団
の
林
相
は
下
流
側
集
団
と
比
較
し
て
,
樹
高
・
胸
高
直
径
と
も
に
小
さ
く
,
未
成
熟
の
林
分
で
あ
る
と
推
測
さ
れ
た
。
土
地
の
所
有
者
(
私
信
)
に
よ
れ
ば
,
こ
の
上
流
域
で
は
30 年
ほ
ど
前
に
ス
ギ
人
工
林
の
造
成
の
た
め
に
そ
れ
ま
で
の
植
生
が
伐
採
さ
れ
た
と
い
う
こ
と
で
あ
る
。
そ
こ
で
,
本
研
究
で
は
,
伐
採
歴
が
あ
り
,
林
齢
が
若
い
と
考
え
ら
れ
る
上
流
部
を
Y
U
D
A
A
る
程
度
成
熟
し
て
い
る
と
考
え
ら
れ
る
下
流
部
を
Y
U
D
A
B
局
所
集
団
と
呼
ぶ
こ
と
と
す
る
(Fig.
株
立
ち
状
に
萌
芽
し
て
い
る
個
体
が
多
く
み
ら
れ
た
。
(2)
茨
城
県
十
王
町
の
集
団
茨
城
県
十
王
町
加
幸
沢
(
北
緯
36 度42 分
,
東
経
140 度42 分
,
標
高
5
0
m
)
の
湿
地
に
成
立
し
て
い
る
サ
ク
ラ
バ
ハ
ン
ノ
キ
集
団
局
所
集
団
と
し
,
あ
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。
な
お
,
本
集
団
で
は
サクラバハンノキの保全に関する遺伝・生態学的研究
-57-
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,
数
百
個
体
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集
団
で
あ
る
が
,
道
路
や
水
路
な
ど
に
よ
っ
て
分
断
さ
れ
て
,
局
所
的
に
小
集
団
を
構
成
し
て
い
る
。
の
う
ち
l 局
所
集
団
(
1
46 個
体
)
を
解
析
の
対
象
と
し
,
団
は
,
集
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内
で
最
も
大
き
な
も
の
の
一
つ
で
,
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」
ー
こ
の
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を
J
U
G
と
呼
ぶ
も
の
と
す
る
(Fig.5-2)
そ
の
上
流
に
は
サ
ク
ラ
バ
ハ
ン
ノ
キ
は
生
育
し
て
お
ら
ず
,
。
本
局
所
集
ま
た
,
他
の
局
所
集
凶
と
は
異
な
る
沢
沿
い
に
成
立
し
て
い
る
。
(3)
栃
木
県
今
市
市
の
集
団
栃
木
県
今
市
市
岩
崎
(
北
緯
百
数
十
個
体
か
ら
な
る
集
団
で
あ
り
,
水
路
,
道
路
,
36 度37 分
,
東
経
139 度44 分
,
標
高
175m)
出
な
ど
に
よ
っ
て
南
お
よ
び
北
の
の
湿
地
に
成
立
し
て
い
る
サ
ク
ラ
バ
ハ
ン
ノ
キ
集
団
は
2局
所
集
団
に
分
断
さ
れ
て
い
る
。
こ
れ
林木手事機センター研究報告
5
8
第 20 "'予
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Fig.5-4 Map o
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0mint 日rvals.
ら
は
約
200m
離
れ
て
お
り
,
北
の
局
所
集
団
を
AI !rii )W 集
団
,
南
の
!rii 所集fJIを
BI 局
所
集
i寸
と
呼
ぶ
も
の
と
す
る
。
局
所
集
団
の
北
西
部
の
エ
リ
ア
と
揮
東
部
の
エ
リ
ア
は
明
ら
か
に
樹
齢
が
異
な
る
摺
体
で
構
成
さ
れ
て
い
る
。
的
樹
齢
の
小
さ
い
{
同
体
で
構
成
さ
れ
て
い
る
エ
リ
ア
は
エ
リ
ア
に
い
局
所
集
団
を
1972 年
に
開
墾
さ
れ
た
2 つ
の
エ
リ
ア
か
ら
な
る
た
め
,
LAI 局
所
集
問
,
南
東
部
に
存
在
す
る
樹
齢
の
小
さ
い
局
所
集
団
を
AI
AI の
南
東
部
,
比
較
(名塚,
1
9
9
6
) と
し
寸
報
告
が
あ
り
,
現
イ
し
て
い
る
サ
ク
ラ
パ
ハ
ン
ノ
キ
は
龍
墾
後
定
着
し
た
実
生
集
凶
で
は
な
い
か
と
推
定
さ
れ
る
。
こ
の
よ
う
に
集
屈
は
暁
ら
か
に
樹
齢
や
経
歴
が
異
な
る
さ
ら
に
I: こ
の
A
U 'l 所
こ
れ
ら
を
区
別
し
,
北
西
部
に
存
在
す
る
極
齢
の
大
き
SAl 局
所
集
凶
と
呼
ぶ
も
の
と
し
た
(Fig.5-3)
。
サクラパハンノキの保全 lこ関する遺伝・生態学的研究
-5
9
2)林齢の異なる局所集団関の遺伝構造の比較
林齢の異なる局所集毘聞での集陣内遺伝構造を比較する目的から,樹体の大きさが異なる JUO , LAl, SAlおよ
びBIの 4 局月If集毘を調査対象集団とした。
3)同一崩所集躍の遺倍構造に関する時系列の比較
|斗所集同の遺伝構造に関する時系列の比較を行う§的で,十王局所集団の 1996年および、 2000年における選
結構造の比較を行った。 1996年の十王局所集団を JU01996 , 2000年の十王局所集団を JU02000 とする。 Fig.5-4
に JU02000 の{国体の位置,および 1996年調育時には生育していたが2000年調査時に枯死していた,つまり 1996年
から 2000年の罷に枯損した鋼体 (25個体)の位罷を示す。ここで枯鎮{肉体とした 25個体のうちには,幹が枯損し
たもののシュートが発生したことにより僧体が維持されていた 4 銅体も合まれている。この JUOl996 は,
2) で
用いた JUO と同ーのものである。
4
) f文謀置の異なる局所集団関の遺倍構造の比較
伐
採
涯
の
異
な
る
局
所
集
団
関
の
遺
伝
構
造
の
比
較
を
仔
う
日
的
で
,
伐
採
歴
の
あ
る
Y
U
D
A
B
て
い
る
個
体
Y
U
D
A
A
を
解
析
の
対
象
と
し
た
。
な
お
,
本
集
団
で
は
樹
高
が
(Fig.5-5)
お
よ
び
段
採
涯
を
も
た
な
い
1
m 以
上
の
全
儲
体
を
解
析
に
用
い
た
が
,
株
立
ち
状
に
生
育
し
が
多
く
み
ら
れ
た
の
で
,
そ
れ
ら
に
つ
い
て
は
,
そ
の
個
体
に
属
す
る
幹
の
分
析
に
悶
い
る
冬
芽
を
採
取
し
,
そ
の
個
体
に
属
す
る
幹
の
重
心
の
佼
躍
に
i 本
か
ら
ア
イ
ソ
ザ
イ
ム
l本
の
幹
が
生
育
し
て
い
る
と
仮
定
し
て
解
析
に
用
い
た
。
5)解析方法
解析対象としたそれぞれの局所集団内の斜体について,鶴量によりその位置を確定するとともに,樹高・胸高
富径を測定した。偶体の{立器情報とアロザイム分析型から f議所集関内のアロザイム選結子の分:ftjパターンについ
て, M
oran'sI (
S
a
k
a
landOden , 1978a,b) , SND (
S
a
k
a
landOden, 1978a,b) , NAC (Numbero
fAl
l
e
l
e
si
n
tat. , 1
9
9
0
;
B
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Common;S
u
r
l
e
se
1995) を用いて解析した。各指標の算出方法を以下に示す。
Fig.5 …5 I
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林木育種センター研究報告第
-60-
20 号
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Moran'sIの解析は次のように行った。
5m ご
と
に
満
の
対
立
遺
伝
子
の
み
を
解
析
の
対
象
と
し
た
。
テ
ロ
接
合
体
の
場
合
に
は
10 の
距
離
階
級
を
設
定
し
,
対
立
遺
伝
子
頻
度
が
0.05 以上,
i番
目
の
個
体
が
あ
る
対
立
遺
伝
子
に
関
し
て
ホ
モ
接
合
の
場
合
に
は
xi=0.5
, そ
れ
以
外
の
場
合
は
Xi=
0 として
, Zi=P-Xi
遺
伝
子
の
頻
度
で
あ
る
。
各
個
体
ど
う
し
の
組
み
合
わ
せ
を
個
体
間
距
離
に
応
じ
て
,
Xi=
を算出した。
0.95 未
1 ,ヘ
Pは
あ
る
集
団
に
お
け
る
対
立
10 の
距
離
階
級
に
分
け
た
。
Moran's
Iは
各
対
立
遺
伝
子
,
距
離
階
級
ご
と
に
I=n "L"L ωijZiZj/
(W"
LZ
i2)
から求めた。ここで、n は個体数,引は個体 i と j の重み付けの値で,個体 i と j が任意の距離階級に含まれる場合は
ωij- しそうでない場合は ωij= 0 とし ,
1/(n-1) から 5% 水準で
Wは ωu の総和とした。さらに Iが期待値-
有意差があった対立遺伝子の割合を求めた。
(
2
) SND
SND の解析についても,
5m ごとに 10 の距離階級を設定し,遺伝子型頻度が
みを対象とした。さらに期待される遺伝子型の組み合わせが
じ遺伝子型をもっ個体どうしの組み合わせ(l
(
u
n
l
i
k
ejoin)
の
そ
れ
ぞ
れ
に
つ
い
て
わ
せ
数
か
ら
の
SND
SND
ike join)
0.05 以上,
1 以下であるものについては解析から除外した。同
および,異なる遺伝子型をもっ個体どうしの組み合わせ
を
求
め
た
。
同
じ
遺
伝
子
型
の
組
み
合
わ
せ
(
l
ike join)
それぞれの距離階級において
SND を算出し,その絶対値が標準正規分布の
型は集中分布していることを示す。さらに,
の割合
の
,
期
待
さ
れ
る
組
み
合
は
次
式
で
表
さ
れ
る
。
SND= (観察された組み合わせ数一期待される組み合わせ数)/分散
join)
0.95 未満の遺伝子型の
(PLJ)
1/2
5% 点1. 96 より大きければその遺伝子
SND の値が正方向に有意で、あった同じ遺伝子型の組み合わせ(l
および負方向に有意で、あった異なる遺伝子型の組み合わせ
を両局所集団について計算した。有意な負の
(unlike join)
unlike join は l つまたは複数の正の
ike
の割合
(NUJ)
like join が累積した効果と考え
られている。
(
3
) NAC
NAC(Numbero
fAl
l
e
l
e
si
nCommon)
の
距
離
階
級
に
お
い
て
,
任
意
の
な
わ
ち
の
解
析
に
つ
い
て
も
,
5
m ご
と
に
10 の
距
離
階
級
を
設
定
し
た
。
NAC
は
任
意
2個
体
が
多
型
を
示
す
遺
伝
子
座
に
お
い
て
共
有
す
る
対
立
遺
伝
子
の
数
の
平
均
値
で
あ
る
。
す
, g(i , k) を i 番目の個体の h 番目の遺伝子座とし,
NAC (g (i, k
) , g(j ,
k))
を,
i 番目の個体と j 番目
の個体が共にもった座の対立遺伝子の数とすると,
個体 i と個体 j が両方の対立遺伝子を共有するとき;
NAC (g(i , k
) , g (j , k
)
) =2,
個体 i と個体 j が l つの対立遺伝子を共有するとき;
NAC (g(i, k
) , g (j , k
)
) = 1,
個体 i と個体 j が対立遺伝子を共有しないとき;
NAC (g(i, k
) , g (j , k
)
) =0
となる。これを調査したすべての遺伝子座について平均したものがNAC である。 NAC は 0"-'2 の値をとり,通常
は1. 25 から1. 75 の値をとる (Hamrick
e
tat. , 1993) 。遺伝的に近ければ, NAC は大きく,遺伝的に遠ければ小さ
い。任意の距離階級に含まれる個体について NAC を計算し,この数値をプロットして折れ線で結べば, NAC のコ
アリログラムが得られ,遺伝子のランダム分布性は randomization testで、検定で、きる。
サクラパハンノキの保全に関する遺言伝・生態子学的研究
-61-
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6
3-
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木
下
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研
究
報
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第 20
号
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の
3 つ
の
指
標
を
用
い
て
,
上
述
の
各
同
所
集
Takahashi (2000)
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て
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系
構
造
の
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析
を
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た
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所
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第
3 つ
の
指
標
の
算
出
に
は
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フ
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を
使
掃
し
た
。
4章
の
方
法
に
し
た
が
っ
て
遺
伝
的
多
様
度
(p , A , A e, H。およびHe) を算
出し, h百所集出聞の違いを検定した。
第 3 節結果
1)林齢の異なる局所集団関の遺結構造の比較
Fig.5-6 に LAI,
SAl, BI およびJUG の各局所集団に属する銅体の胸高臨径の頻度分布を示す。胸高痘結から判
断すると JUG と SAlの 2
所集 btl ,およびLA!と BI の 2 局所集毘はそれぞれ河程度の樹齢であると誰定され,
JUG と SAIl土若齢であるが, LAI と BI はそれより齢が進んでいる。 Fig.5-7 に LAI, SAl , BI およびJUG の各局
所集団における班oran's [のコアリログラム,および有意な正の偵を示した Moran's [の割合および有意な負の留
を示した Mor官l'S [,の割合を示した。 Fig.5-8 に有意な正の舘を示した like j
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の
割
合
を
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し
た
。
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に
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所
集
出
集
団
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は
剖
では,
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離
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級
で
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て
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所
集
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で
は
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て
の
霊
長
離
階
級
で
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離
階
級
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均
績
も
に NAC
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グ
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所
集
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平
均
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子
均
コ
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グ
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が
比
較
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近
距
離
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級
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所
集
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で
は
明
確
な
遺
転
構
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は
見
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と
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向
が
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め
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た
。
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低
い
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を
と
っ
た
の
に
対
し
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合
も
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に
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で
は
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所
集
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り
も
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な
り
高
い
植
を
JむO で
最
も
高
い
儀
と
な
っ
た
飽
,
近
距
離
の
階
級
で
は
有
意
に
期
待
値
よ
り
も
大
き
い
般
を
と
っ
た
。
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の
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に
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の
指
標
に
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て
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と
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x軸
と
交
差
し
て
い
る
。
ま
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有
意
な
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を
と
っ
た
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強
の
対
立
譲
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子
が
有
意
な
傾
と
な
っ
た
。
有
意
な
偵
を
と
っ
た
3局
所
集
出
で
は
ほ
ぼ
す
べ
て
の
距
離
階
級
に
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い
て
低
い
値
を
と
っ
た
が
,
示
し
た
。
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と
有
意
な
負
の
{
直
を
示
し
た
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所
集
凶
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も
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間
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岳
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椴
関
が
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著
で
、
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た
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所集団関に有意な差はみられなかった。
2)同一局所集団の遺伝構造に関する時系列の比較
Fig.5- 1Oに JU01996 およびJU02000 の両局所集問に属する個体の胸高誼径の頻度分布を示す。 Fig. 5-111こ
林水予言種センター研究報告
6
6-
第 20 号
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YUDA-A
0
.
8
0
.
4
0
.
2
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0
1
0
20
30
4
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YUDA-B
0
.
8
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4
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一
i休ヌ十三育鐙センター研究報告
-70
第 20 サ
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YUDA-A
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円i
サクラパハンノキの保全に関する遺伝・生態学的研究
T
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b
l
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と JU02000
6
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1
1
.6
ア
4
.1
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o
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1
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0
.2
)
0
.2
)
1
.6(
Moran's
Moran's
Ho
He
1
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0
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2
)
0
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2
)
1
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O
.1
2
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9
)
O
.1
4
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)
O
.1
2
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5
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)
O
.1
3
3(
0
.0
6
0
)
Iの
コ
ア
リ
ロ
グ
ラ
ム
,
有
意
な
正
の
値
を
示
し
た
F
i
g
.5-12
Iの
割
合
,
Ae
A
41
.7
41
.7
の
各
局
所
集
団
に
お
け
る
お
よ
び
有
意
な
負
の
値
を
示
し
た
値
を
示
し
た
PI(%)
(
e
m
)
3
4
9
1
8
3
YUDA-A
YUDA-B
JU01996
D
.B
.H
.
の
割
合
を
示
し
た
。
さ
ら
に
Moran's
に
有
意
な
正
の
値
を
示
し
た
Fig.5-13
に NAC
like
j
o
i
n (PLJ)
Iの
割
合
と
有
意
な
負
の
の
コ
ア
リ
ロ
グ
ラ
ム
お
よ
び
全
平
均
を
示
し
た
。
JU01996 , JU02000 ともにほぼ同様に顕著な空間的自己相関がみられ,有意な Moran's Iの値をとった割合,有意
な SND をとった遺伝子座の割合にはほとんど差異はみられなかった。しかし, M
oran'sIの平均コアリログラム
をみると,
JU01996
で
は 8番
目
の
距
離
階
級
で
初
め
て
級で、 x 軸
を
下
回
っ
た
他
,
X軸
を
下
回
っ
て
い
る
の
に
対
し
,
NAC の
全
平
均
の
値
は
JU01996
より JU02000
JU02000
で
は 7番
目
の
距
離
階
で
、
小
さ
く
な
っ
た
こ
と
な
ど
か
ら
,
JU02000
に
お
い
て
遺
伝
構
造
が
弱
く
な
っ
て
い
る
こ
と
が
示
唆
さ
れ
た
。
Table5-2 に JU01996
お
よ
び
JU02000
の
各
局
所
集
団
の
遺
伝
的
多
様
度
を
示
し
た
。
t- 検
定
の
結
果
,
2 つ
の
局
所
集
団
聞
の
数
値
に
有
意
な
差
は
み
ら
れ
な
か
っ
た
。
3)
伐
採
歴
の
異
な
る
局
所
集
団
聞
の
遺
伝
構
造
の
比
較
Fig.5-14
た
な
い
とった。
に YUDA-A
YUDA-B
~YUDA-B
の
両
局
所
集
団
に
属
す
る
個
体
の
胸
高
直
径
の
頻
度
分
布
を
示
す
。
伐
採
歴
を
も
の
方
は
,
伐
採
を
受
け
た
Fig.5-15
値
を
示
し
た
お
よ
び
に YUDA-A
Moran's
l
i
k
ej
o
i
n (PLJ)
YUDA-A
お
よ
び ~YUDA-B
と
有
意
な
負
の
値
を
示
し
た
Y
U
A
D
A
で、は Moran's
Moran's
Y
U
D
A
A
の
割
合
も
同
様
に
Iの割合,
で
は
第
Y
U
D
A
B
の
方
が
大
き
か
っ
た
他
,
最
初
の
Table5-3 に YUDA-A
団
間
に
有
意
な
差
は
み
ら
れ
な
か
っ
た
。
局
所
集
同
で
、
は
お
よ
び
Fig.5-17
YUDA-B
Y
U
D
A
A
に NAC
の
コ
ア
リ
O付
5 番
目
の
距
離
階
級
で
初
め
て
Y
U
D
A
B
X軸
で
は
ほ
と
ん
ど
す
べ
て
の
距
離
階
級
で
低
い
値
を
9 割
近
く
の
対
立
遺
伝
子
が
有
意
な
値
を
と
っ
て
い
た
。
有
意
な
値
Y
U
D
A
A
NAC
4距
離
階
級
で
Y
U
D
A
B
に
有
意
な
正
の
値
を
示
し
た
で
は
ほ
ぼ
す
べ
て
の
距
離
階
級
に
つ
い
て
低
い
値
を
と
っ
た
が
,
が
っ
て
こ
れ
ら
の
い
ず
れ
の
指
標
に
お
い
て
も
伐
採
の
あ
っ
た
が
,
伐
採
の
な
か
っ
た
F
i
g
.5-16
の
割
合
を
示
し
た
。
さ
ら
に
れ
ら
の
値
は
全
般
的
に
高
く
,
距
離
階
級
が
大
き
く
な
る
に
つ
れ
て
徐
々
に
低
下
し
た
。
Y
U
D
A
A
2 倍
の
値
を
Iの
平
均
コ
ア
リ
ロ
グ
ラ
ム
が
ほ
ぼ
す
べ
て
の
距
離
階
級
で
Iの
割
合
も
I 距
離
階
級
で
の
ほ
ぼ
Iの
コ
ア
リ
ロ
グ
ラ
ム
,
有
意
な
正
の
で
は
,
近
距
離
の
階
級
で
と
く
に
高
い
値
を
と
り
,
と
交
差
し
て
い
た
。
ま
た
有
意
な
値
を
と
っ
た
と
っ
て
い
る
の
に
対
し
,
j
o
i
n (NUJ)
YUDA-A
Moran's
Moran's
unlike
Y
U
D
A
B
近
の
値
で
あ
っ
た
の
に
対
し
,
SND
の
各
局
所
集
団
に
お
け
る
Iの
割
合
お
よ
び
有
意
な
負
の
値
を
示
し
た
ロ
グ
ラ
ム
お
よ
び
全
平
均
を
示
し
た
。
を
と
っ
た
よ
り
も
平
均
胸
高
直
径
が
大
き
く
,
の
平
均
値
も
Y
U
D
A
A
は
有
意
に
期
待
値
よ
り
も
大
き
い
値
を
と
っ
た
。
し
た
Y
U
D
A
A
局
所
集
団
で
は
顕
著
な
空
間
的
自
己
相
関
が
み
ら
れ
た
Y
U
D
A
B
の
こ
よ
り
も
に
比
べ
遺
伝
構
造
が
弱
か
っ
た
と
い
う
結
果
に
な
っ
た
。
の
各
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所
集
団
の
遺
伝
的
多
様
度
を
示
し
た
。
t- 検
定
の
結
果
,
2 つ
の
局
所
集
門i
ワ臼
林木育種センター研究報告
第 20 号
第 4 節まとめ
胸高直径から判断すると, JUO と SAl の 2 局所集団,およびLAl と Bl の 2 局所集団はそれぞれ同程度の樹齢を
もっ局所集団であると推定され, JUO と SAl は若齢であるがLAl と Bl は前者 2 集団に比べて齢が進行している。
今市の 3 局所集団 LAl , SAl および Bl では明確な遺伝構造がみられなかったのに対し,比較的若齢であると推定さ
れた JUO のみが顕著な空間的自己相関を示した。また JU02000 は JU01996 に比べ,わずかであるが遺伝構造が弱
まっていた。また伐採のあった YUDA-Aでは空間的自己相関が顕著で、あったが,伐採のなかった YUDA-B では
明らかな遺伝構造は観察されなかった。比較したそれぞれの局所集団問に遺伝的多様度に有意差はなかった。
第 6 章総合考察
第 1 節
生態学的にみたサクラパハンノキの保全方法
サクラバハンノキとハンノキとの間で根頚部からの萌芽性を比較したところ,前者の方が高い複幹個体率およ
び l 複幹個体当たり幹数を示した。その理由のひとつとしては,サクラバハンノキではある程度成長した幹が枯
死し,代わって若齢の萌芽幹が複数本形成されやすいことがあげられる。このように,サクラバハンノキは萌芽
更新を盛んに行う種であると考えられるが,調査した局所集団内において実生個体の新規参入が認められなかっ
たものの,樹形の 2 タイプ中,単幹タイプが最も多かったこと,および 2001 年に過半数の個体で着果が確認され
たこと,さらに局所集団に隣接する開放地の林道の縁や法面の裸地で稚幼樹が観察されたことから,実生更新も
同時に行っていることが明らかになった。一方,同じハンノキ属に属するハンノキは萌芽性が低い(谷本,
1
9
9
0
)
と
さ
れ
て
い
た
が
,
本
研
究
に
お
い
て
萌
芽
シ
ュ
ー
ト
の
発
生
お
よ
び
複
幹
を
形
成
す
る
個
体
が
少
な
か
っ
た
こ
と
か
ら
,
こ
の
種
で
は
萌
芽
更
新
に
よ
る
よ
り
も
,
実
生
更
新
が
主
と
し
て
行
わ
れ
て
い
る
と
推
察
さ
れ
た
。
酒
井
(
1
997)
は
,
萌
芽
を
生
態
学
的
に
み
て
以
下
の
パ
タ
ー
ン
に
分
類
し
て
い
る
。
①
伐
採
な
ど
の
撹
乱
を
受
け
た
際
の
修
復
・
再
生
の
た
め
の
萌
芽
,
②
地
上
部
の
更
新
の
た
め
の
萌
芽
,
③
栄
養
繁
殖
と
し
て
の
萌
芽
で
あ
る
。
①
の
萌
芽
は
そ
の
能
力
に
は
著
し
い
差
が
あ
る
も
の
の
,
大
部
分
の
樹
木
で
み
ら
れ
る
現
象
で
あ
る
(
酒
井
,
1997)
。
一
方
,
②
の
萌
芽
は
イ
ヌ
ブ
ナ
(Ohkubo
e
tal. , 1988; 大久保ら, 1989) ,カツラ(久保ら 2001) など,③の萌芽はアメリカブナ (Jones andRaynal , 1986) ,
モミジバフウ
(Kormanik
andBrown , 1967) ,シウリザクラ(小川・福嶋, 1996) などの特定の樹種において,
通常の生活史の一部としてみられる萌芽である。サクラバハンノキでは,幹が枯損しているにも関わらず根頚部
から萌芽シュートが発生して個体が維持されている例がみられたこと,根頚からの萌芽能力がハンノキより高
かったこと,隣接個体どうしが根でつながっている例があったこと,さらに複数の遺伝子座において同一の遺伝
子型をもっ個体が近接して存在する場合の多かったことから,サクラバハンノキには①,②および③すべての萌
芽パターンをもっ樹種であると考えられた。
ハンノキ類は,樹齢 10年前後の若齢期から結実を開始し,毎年かなり多量に結実する(林野庁研究普及課,
1981) 。本研究の調査集同においても 2001 年には過半数の個体で着果が確認され,集団に隣接する林道の縁や法面
の裸地では種子由来の稚幼樹が観察された。しかし,集団内では種子由来の稚幼樹がみられず,また少なくとも
最近 15年間は種子由来する個体の新規加入は認められなかった。一般に,林内に散布された種子は,陽光の不足
や発芽を阻害する菌類の影響を受ける(北海道営林局,
1985) ために,実生の定着は困難であると考えられてい
る。したがって,実生が定着するためには,撹乱によって林冠ギャップが発生し,陽光の不足が解消される必要
サクラパハンノキの保全に関する遺伝・生態学的研究
-73-
があると考えられる。
生存個体の根頚部に枯死した萌芽シュートが多数観察されたことから,サクラバハンノキは撹乱を受けない状
況下においても,根頚部から出る萌芽シュートが絶えず、新しいシュートに置き換えられながら樹幹の枯死および
林冠ギャップの修復に備えていると考えられる。サクラバハンノキの個体を形成している幹の樹齢は 15""'59年の
範囲であったが,樹齢21""'35年の幹が82% と際立つて多かった。カツラでは個体を形成する複数の萌芽幹の樹齢
が 100年以上にわたっている(渡漫, 1970) ことを考えると,サクラバハンノキの萌芽幹の成長は,比較的短い周
期で一斉に行われていることが明らかである。このため,サクラバハンノキの個体の維持には,このような特性
を考慮する必要がある。
台風などにより倒木や枯死木が大量に発生し,大型の林冠ギャップが形成された場合,根頚部からの萌芽
シュートの成長に加え,倒木した幹からの萌芽や根萌芽による栄養繁殖がおこる可能性がある。本研究で調査し
た集団において栄養繁殖による空間的な家系構造の存在が示唆されていたことから,栄養繁殖のための萌芽が集
団の遺伝的構造の形成に与える影響は大きいと考えられた。
以上のことから,サクラバハンノキは,根頚部に萌芽シュートを備えることによって個体を長寿命化し,また
偶発的な撹乱が発生した際には親個体から複数のクローンを分離,分散させることによって集団の維持を図って
いるものと推察される。
Grime (1977)
(
s
t
r
e
s
stolerator)
は淘汰圧に対する生活史戦略によって種の分類を試み,競争種
お
よ
び
撹
乱
依
存
種
(ruderal)
(competitor)
,ストレス耐性種
に
分
け
ら
れ
る
こ
と
を
提
唱
し
た
。
サ
ク
ラ
バ
ハ
ン
ノ
キ
は
湿
地
と
い
う
特
殊
な
土
壌
条
件
に
耐
性
を
も
っ
ス
ト
レ
ス
耐
性
種
に
分
類
さ
れ
る
の
で
,
湿
地
内
で
は
他
の
湿
地
土
壌
耐
性
種
と
の
競
争
に
な
る
。
し
か
し
本
研
究
で
調
査
し
た
局
所
集
団
が
成
立
し
て
い
る
水
路
沿
い
に
は
ほ
ぼ
サ
ク
ラ
バ
ハ
ン
ノ
キ
の
み
が
生
育
し
て
い
た
こ
と
か
ら
,
こ
こ
で
の
競
争
は
さ
ほ
ど
激
し
く
な
い
と
考
え
ら
れ
た
。
萌
芽
更
新
と
実
生
更
新
は
ト
レ
ー
ド
オ
フ
の
関
係
に
あ
り
,
ど
ち
ら
を
生
活
史
戦
略
と
し
て
と
る
か
は
,
種
の
進
化
お
よ
び
維
持
に
関
わ
る
重
要
な
点
、
で
あ
る
。
一
般
に
は
条
件
に
よ
っ
て
使
い
分
け
て
い
る
(Bellingham
andSparrow , 2000) が,その採
択比率には種内に連続変異があるようである。サクラバハンノキに関しては,本実験結果が示すように,実生更
新に加えて萌芽更新も主要な更新方法であり,この方向にサクラバハンノキは進化してきたと考えられる。
BellinghamandSparrow (2000)
は,
ど
ち
ら
の
更
新
方
法
が
撹
乱
に
よ
っ
て
失
っ
た
バ
イ
オ
マ
ス
を
取
り
戻
す
た
め
に
有
効
で
あ
る
か
に
つ
い
て
,
撹
乱
の
強
度
お
よ
び
頻
度
と
の
関
係
か
ら
考
察
し
て
い
る
。
今
回
調
査
し
た
局
所
集
団
は
,
2001 年
ま
で
の
観
察
に
よ
る
か
ぎ
り
,
撹
乱
の
強
度
・
頻
度
と
も
に
低
く
,
安
定
し
た
環
境
に
分
布
し
て
い
る
と
推
定
さ
れ
る
。
こ
れ
は
彼
ら
の
モ
デ
ル
に
よ
る
と
萌
芽
更
新
に
適
し
た
条
件
で
あ
る
。
す
な
わ
ち
,
サ
ク
ラ
バ
ハ
ン
ノ
キ
は
,
湿
地
を
生
育
環
境
と
し
て
選
ぶ
こ
と
に
よ
っ
て
,
他
種
と
の
競
合
を
避
け
,
さ
ら
に
生
育
場
所
に
大
き
な
撹
乱
が
な
け
れ
ば
,
萌
芽
更
新
に
よ
る
メ
リ
ッ
ト
を
生
か
し
て
場
所
の
確
保
・
個
体
の
長
寿
命
化
を
図
っ
て
い
る
と
推
察
さ
れ
る
。
撹
乱
が
起
こ
っ
た
場
合
に
も
,
そ
れ
が
大
き
く
な
け
れ
ば
,
こ
れ
を
実
生
に
よ
る
更
新
や
萌
芽
に
よ
る
栄
養
繁
殖
の
機
会
と
し
て
い
る
と
考
え
ら
れ
る
。
こ
の
よ
う
に
サ
ク
ラ
バ
ハ
ン
ノ
キ
は
,
湿
地
に
お
い
て
大
き
な
撹
乱
が
な
け
れ
ば
ダ
メ
ー
ジ
を
受
け
る
可
能
性
は
小
さ
い
。
し
か
し
,
近
年
湿
地
の
乾
性
化
や
埋
め
立
て
が
進
み
,
サ
ク
ラ
バ
ハ
ン
ノ
キ
の
生
育
環
境
の
劣
悪
化
し
て
お
り
,
こ
の
こ
と
が
サ
ク
ラ
バ
ハ
ン
ノ
キ
が
絶
滅
に
瀕
し
て
い
る
大
き
な
要
因
と
考
え
ら
れ
る
。
し
た
が
っ
て
,
本
種
の
保
護
に
は
本
種
の
生
育
地
で
あ
る
湿
地
の
保
護
が
最
も
意
義
が
あ
る
と
考
え
ら
れ
る
。
人
為
を
排
除
し
て
湿
地
が
保
護
で
き
る
状
態
で
あ
れ
ば
,
例
え
ば
天
然
記
念
物
と
し
て
指
定
す
る
こ
と
な
ど
に
よ
り
集
団
の
保
護
が
図
れ
る
で
あ
ろ
う
し
,
ま
た
積
極
的
な
人
為
的
介
入
が
な
く
て
も
湿
地
が
乾
性
化
に
向
か
っ
て
い
る
場
合
は
,
集
団
内
1996 年から
A斗A
ウi
林木育種センター研究報告第 20 号
外の水の通路を調査し,人為的に確保することが有効と思われる。また,保護という観点からは離れるが,局所
集団内では実生個体の生育が困難で、あることが推察されたことから,集団から採種して養苗した苗木を集団内に
植栽する方法も考えられる。
第2節
遺伝学的にみたサクラパハンノキの保全の方法
種および集団レベルにおける遺伝的多様度を示す統計量はともに,木本植物の平均値よりも大きかった。なお,
遺伝変異は繁殖様式や種子散布様式に強く影響され,サクラバハンノキのような風媒植物では,高い遺伝変異を
もっとされている。
また, FIS を算出したところ,木城集団においてのみ O からの有意差が観察されたが,他の 6 集団および木城集
団を含む 7 集団の平均値には有意差が検出されなかった。このことから,ほとんどのサクラバハンノキ集団では,
各遺伝子座の遺伝子型頻度がハーディ・ワインベルグ平衡にあることが示唆され,集団内に近親交配はほとんど
生じていないことが示された。しかし,集団聞における遺伝的分化の程度を表す CST値を求め,その値の O からの
偏差を検定したところ,
9 多型遺伝子座中 8 遺伝子座で有意で、あった。すなわち,ほとんどのアロザイム遺伝子
座で遺伝子頻度に関して有意な集団間差異のあることが認められた。また,サクラバハンノキ集団全体の CST値
を求めたところ o. 146 となり,サクラバハンノキが種としてもつ遺伝変異のうち, 14.6% が,集団聞の差に由来す
ることが明らかになった。この割合は他の木本植物より大きく,
したがって本実験に供したサクラパハンノキに
関しては集団聞の分化がかなり進んで、いると考えられた。
サクラパハンノキの地理的変異を明らかにするため,各集団が持つ遺伝変異を表す統計量と緯度との関係につ
いて回帰分析を行った。その結果,
t-test で、はA, A e および He において,ノンパラメトリックテストではA e およ
び旦において緯度との有意な回帰が検出された。このことから,南の集団の方が北の集団より高い集団内遺伝変
異を保持していることが明らかになった。また,特定の集団にのみ存在する対立遺伝子がいくつかあり,それら
は南西日本の 2 集団において検出された(阿東集団における Aαpfおよび、Pgi-1 e , 木城集団における Dia-2 C, Cot-2 d ,
Cot-2 e および、Aαpe) 0 花粉分析の研究からハンノキ属は氷河期以降,北ヘ分布域を拡大したという報告がある
(辻・鈴木,
1977; 塚同,
1981; 松岡ら,
1983; 大西,
1990) 。これらの報告では,ハンノキ属内の種を区別して
いないが,ハンノキ属の多くの種が湿地に生育する性質をもつため,サクラバハンノキについても同様の考察が
適用しうると考えられる。
以上のことから,サクラバハンノキは氷河期以降,創始者効果,遺伝的浮動に影響されながらその分布域を北
へと拡大していたと考えられる。
浜北,木城の 2 集団でとくに高い遺伝的多様性が認められたが,両集団の存在する地域は,特異的な土壌をも
つことが知られている。浜北集団が存在する付近地域は,丘陵・台地・段丘地形に特徴づけられ,貧栄養の低湿
地を多く抱え,ハナノキ,シデコブシ,ヒトツバタゴ等の東海丘陵要素と呼ばれる多くの固有種,絶滅危倶種,
隔離分布種等の自生地となっている。また,木城集同の存在する地域は九州において火山の影響を受けていない
実質上唯一の土地であり,この地域もヒュウガホシクサ(既に絶滅した) (環境庁自然保護局野生生物課,
2000) ,
絶滅危倶種のナガバノイシモチソウ(環境庁自然保護局野生生物課, 2000) を保持している。これらの地域には,
貧栄養状態、でも生育可能なこれらの種しか生育できなかったために,これら植物が遺存種として現在も生育して
いるのか,あるいは貧栄養の土地がこれらの種にとってレヒュージア(他地域では競争に負けた,または気候が
ウt
戸
hd
サクラバハンノキの保全に関する遺伝・生態学的研究
変化して生きていけなくなった生物が逃げ込む場所)として働いたために,これらの種が現在なお生息している
のかは明らかでないが,これら 2 集団で比較的高い遺伝変異が観察されたことは,特殊な土壌条件と関係がある
かもしれない。
生態特性が十分に知られていない種を保全する時,その現在の生育地の以外の場所で保全できるかどうかは疑
わしい。したがって保全に際し,まずとるべき方策は生息域内保全であり,生息域外保全はそれを補完するもの
であろう。サクラパハンノキのように集団聞の遺伝的分化の程度を表す G ST が高い値である種においては,その
種がもっ遺伝変異は多数の集団に分散されて保持されていることが示唆される。すなわち,個体数の小さい集団
にも重要な遺伝変異が含まれている可能性がある。日本のサクラバハンノキの保全の際には,個体数の大きな湯
田,十王,木城集団はもちろんのこと,個体数の少ない西郷集団や浜北集団も含め,まずは保全対象とする集同
数を多くする必要があると思われる。
本調査の結果,集団内の空間的自己相関は①若齢の集団で顕著であり,老齢の集団では弱いこと,②同一集団
においても 5 年間で若干弱まること,さらに②伐採があった集団では強くなること,が明らかになった。今市の
LAI, SAl , BI ,およびJUO各集団の遺伝的多様性を分散分析によって調べたところ,
4 つの集団聞に有意な差
はみられなかった。しかし,集団内遺伝構造には大きな差が存在した。すなわち, JUO と SAl はほぼ同じサイズ
の個体から構成されており,かつ遺伝的多様度はほぼ同様のレベルで、あったが, JUO集団は, SAl集団と異なり,
強い空間的自己相関が存在した。このような差が生じた理由として母樹集団の遺伝的組成の違い,微地形および
微気象等の空間の構造があげられる。とくに母集団の遺伝的組成がJUO と LAI,
SAl,
BI の 3 集団では大きく異
なっていた。今市の3 局所集団の周囲にはかなり広範囲にわたって,小さな集団が複数存在していることが報告
されている
(名塚, 1996) 。すなわち, JUO局所集団と異なり,今市の各集団は風による花粉の分散,あるいは
風または流水による種子の移住が他の集団からあることにより,遺伝的に均質化しているとも考えられる。また
JUO局所集団の集団内遺伝構造を5 年経て再度検証したところ,他の種で報告されているのと同様に
(Hamrick
e
taZ. , 1
9
9
3
;EppersonandA1varez-Buylla , 1
9
9
7
;Parkere
taZ. , 200 l),間引きが起こったことによる遺伝構造の
縮小がみられた。
さらに,湯同の 2 局所集団の遺伝的多様度を算出した結果,
2 つの局所集団聞の数値に有意な差はみられな
かったものの,集団内遺伝構造には大きな違いがあり,伐採のあった YUDA-Aでは, YUDA-B にはみられない
集団内遺伝構造が検出された。その理由として YUDA-Aでは過去の伐採によって一部の個体が残り,その個体
からの種子が更新に関わっていた可能性のあることがあげられる。以上のサクラバハンノキ生息域内保全集団の
選定の際には,若い集団よりも成熟した集団を,さらに人為的影響があった集団よりも影響を受けていない集団
を選ぶべきと考えられる。
第3節
本研究に基づいたサクラパハンノキおよび生物多様性保全への提言
本研究に基づき,サクラバハンノキにとっては①湿地の保全が有効で、あること,②個体数が大きい集団を含め
ることはもちろんのこと,保全の対象とすべき集団数は多いほどよいこと,③優先順位をつけるとすれば,集団
内遺伝構造があまり発達していない林分が適しており,そのような林分とは,成熟した林分,また人為的影響を
受けていない林分であること,④集団内遺伝構造を考慮した保全・サンプリングが必要で、あることがわかった。
今回調査したサクラバハンノキ調査地の概要について Table 6-1 にまとめた。個体数の少ない集団が 2 つ,ま
林木育種センター研究報告第 20 号
-76-
Table6-1 Outlineo
fsevenpopulations.
1
.Yuda
2
.Nishigo
3
.Juo
4
.
l
m
a
i
c
h
i
5
.H
a
m
a
l
く ita
6
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7
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i
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S
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v
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Seedlings
Owner
middle/small
l
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l
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m
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l
l
l
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l
l
middle
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Yes
No
Yes
No
Yes
Yes
Yes
p
r
i
v
a
t
e
v
i
l
l
a
g
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n
a
t
i
o
n
a
l
p
r
i
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p
r
e
f
e
c
t
u
r
a
l
p
r
i
v
a
t
e
n
a
t
i
o
n
a
l
た
一
見
し
た
と
こ
ろ
実
生
の
存
在
が
確
認
で
き
な
か
っ
た
集
団
が
村
有
地
以
外
の
,
民
有
地
の
も
の
が
n
a
t
u
r
a
lmonument
2 つ
あ
っ
た
。
土
地
の
所
有
形
態
に
関
し
て
は
,
国
・
県
・
市
町
3 ヶ
所
あ
っ
た
。
そ
の
他
,
湯
田
の
集
団
は
町
指
定
の
天
然
記
念
物
に
な
っ
て
お
り
,
そ
の
た
め
こ
の
集
団
内
の
サ
ク
ラ
パ
ハ
ン
ノ
キ
に
関
し
て
は
,
町
の
教
育
委
員
会
等
の
許
可
な
く
現
状
に
変
更
を
加
え
る
よ
う
な
行
為
は
禁
止
さ
れ
て
い
る
。
し
か
し
,
他
の
集
団
に
関
し
て
は
,
保
護
に
関
す
る
指
定
は
な
さ
れ
て
い
な
い
。
と
く
に
こ
れ
ら
民
有
地
の
サ
ク
ラ
バ
ハ
ン
ノ
キ
生
育
地
に
関
し
て
は
,
湯
田
の
集
団
を
除
き
,
現
在
の
状
況
で
は
伐
採
・
埋
め
立
て
等
,
土
地
や
そ
の
土
地
に
生
育
し
て
い
る
植
物
に
変
更
を
加
え
る
こ
と
に
関
し
て
所
有
者
の
裁
量
に
任
さ
れ
て
い
る
状
態
で
あ
る
。
し
た
が
っ
て
,
希
少
な
種
や
絶
滅
危
倶
種
等
を
含
む
土
地
が
政
策
や
経
済
状
況
に
よ
っ
て
変
化
し
な
い
と
も
限
ら
な
い
。
こ
の
よ
う
な
こ
と
を
踏
ま
え
て
現
在
民
有
地
で
あ
る
集
団
に
関
し
で
も
早
急
に
何
ら
か
の
保
全
上
の
指
定
を
し
,
な
お
か
つ
,
こ
の
指
定
を
受
け
た
こ
と
に
よ
っ
て
所
有
者
が
不
利
益
を
被
ら
な
い
よ
う
な
対
策
を
講
じ
る
必
要
が
あ
る
。
さ
ら
に
,
サ
ク
ラ
バ
ハ
ン
ノ
キ
が
湿
地
に
適
応
す
る
特
異
な
種
で
あ
る
こ
と
か
ら
,
湿
地
を
天
然
記
念
物
に
指
定
す
る
こ
と
に
よ
っ
て
人
為
の
介
入
を
排
除
し
で
も
,
放
置
し
て
お
く
だ
け
で
は
湿
地
の
乾
性
化
や
遷
移
な
ど
に
よ
り
現
状
が
維
持
で
き
な
く
な
る
と
予
想
さ
れ
る
。
そ
の
よ
う
な
場
合
に
は
,
人
為
的
に
水
路
を
確
保
す
る
こ
と
や
,
場
合
に
よ
っ
て
は
集
団
か
ら
採
取
し
て
得
た
種
子
を
養
苗
し
た
も
の
を
植
え
戻
す
と
い
う
作
業
も
必
要
と
な
る
。
摘
要
サ
ク
ラ
バ
ハ
ン
ノ
キ
の
保
全
に
つ
い
て
考
察
す
る
こ
と
は
,
ハ
ン
ノ
キ
属
樹
種
の
育
種
の
み
な
ら
ず
,
各
種
生
物
種
多
様
性
保
全
の
た
め
に
も
重
要
な
意
義
が
あ
る
。
本
研
究
は
,
こ
の
よ
う
な
観
点
か
ら
,
サ
ク
ラ
パ
ハ
ン
ノ
キ
の
遺
伝
お
よ
び
生
態
的
特
性
を
解
析
し
保
全
に
関
す
る
基
礎
的
知
見
を
得
ょ
う
と
し
た
も
の
で
あ
る
。
1.サクラバハンノキは,同属で同様のニッチをもっハンノキと比較して,萌芽能力が高いこと,また湿地が保
全されていればその高い萌芽能力により個体の維持が可能で、あること,つまり湿地の保全がサクラバハンノキ
の保全にきわめて重要で、あることが明らかになった。
2. 集団遺伝学的手法を用いて,サクラパハンノキのもつ遺伝的多様性を評価したところ,種レベルにおける遺
伝的多様度を示す統計量は Ps =75.0 ,
Ap
=
2
.14, Ae
.35 , H
e
p
=
O
.199
p=1
A s=3.42 , Ae
.35 お
よ
び
s=1
Hム =
0
.
2
2
2
と
な
っ
て
,
い
ず
れ
の
値
も
木
本
植
物
の
平
均
値
よ
り
高
い
こ
と
が
認
め
ら
れ
た
。
ま
た
,
と
な
り
,
集
団
レ
ベ
ル
で
、
は
Pp =
5
8
.
3
,
サクラバハンノキの保全に関する遺伝・生態学的研究
G ST値は o. 146 と高く,サクラバハンノキが種としてもつ遺伝変異のうち,
-77-
14.6% が集団聞の差に由来すること
が明らかになった。この値は木本植物の中では比較的大きししたがって保全の際には個体数が大きい集団を
選ぶのはもちろんのこと,保全の対象とすべき集団数も多くすることが望ましいことが明らかになった。
3. 集団内の空間的自己相関は若齢の集団で強く,老齢の集団では弱く,同一集団でも 5 年後に若干弱まった。
また伐採があった集団では遺伝構造が強まることが認められた。集団内遺伝構造が弱い集団は,遺伝的な組成
がよく似た個体どうしが集中分布していないことになる。したがってそのような集団を生息域内保全の対象と
して優先的に選抜することにより,効率的に遺伝的多様性が保全できると考えられた。また,集団内遺伝構造
が強い集団では保全やサンプリングの際にその存在に留意する必要があることが示された。
謝辞
本論文に懇篤なるご助言をいただき
校閲の労をお取りいただいた京都大学農学部教授谷坂隆俊博士に心から
感謝します。本論文をとりまとめるにあたり
終始ご指導とご助言をいただいた宇都宮大学農学部助教授飯塚和
也博士に厚くお礼申し上げます。北海道育種場の半田孝俊育種課長
津村義彦博士,名古屋大学農学部助教授戸丸信弘博士
星比呂志育種研究室長
龍谷大学理工学部宮浦富保博士
森林総合研究所の
九州育種場の倉本哲嗣
博士には本研究に懇切なご教示をいただきました。林木育種センターの高橋誠博士には集団遺伝学的解析および
空間的自己相関分析用のプログラムの使用を快諾していただき,懇切な助言をいただきました。また林木育種セ
ンター育種部長田島正啓博士ならびに同育種課長宮田増男博士には研究の遂行にあたってご指導と励ましをいた
だきました。材料採取・地図の作成には静岡県北遠農林事務所の山本徳子技師
宮崎大学農学部教授中尾登志雄
農学博士,林木育種センターの山田浩雄室長,長野増殖保存園の菊池正和係長,大塚次郎係員
田宣明係員に多大なるご協力をいただきました。実験・資料の整理には
関西育種場の竹
林木育種センタ一の宮同由美子氏・田
中きみ子氏・桑原政美氏および北海道育種場の千野裕美子氏・細川千津美氏・村木幸智子氏にお世話いただきま
した。また北海道育種場の職員のみなさまには本研究にご理解とご協力をいただきました。これらの方々に深く
感謝の意を表します。
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