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学生さん向けの薬剤部業務紹介パンフレットです

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学生さん向けの薬剤部業務紹介パンフレットです
病院薬剤師像をイ メージし よう
山梨大学大学院教授
医学部附属病院薬剤部長
小口敏夫
皆さんの多くは、大学卒業後に薬剤師として日本の医療を支えていくことを志し、薬
学部に入学されたことと思います。皆さんは薬学教育6年制最初の入学生であり、折
に触れて社会の期待の大きさを感じていることでしょう。まずは医療人となる心構えをし
っかりと持っていただきたいと思います。そして、将来にわたって今の情熱を忘れること
がないようにと願っております。
さて、病院薬剤師の業務の中で、「調剤」が最も重要なものの一つであることは、皆さ
んもご存知だと思います。それでは、「調剤」とはいったいどういう業務でしょうか? 調
剤風景を覗いてみると、医師の処方箋に基づいて医薬品を取り揃え、鑑査者が取り違
いや数え間違えがないように再確認している様子が見えます。でも、考えてみてくださ
い。それだけの業務であれば、今の皆さんにもできるのではないでしょうか。
実は、このさりげない調剤業務には、医薬品に関しての薬剤師一人ひとりに身につ
いた幅の広い学識や技術が活かされているのです。薬剤師は、調剤の他にも多岐に
わたる業務に携わっていますが、どの業務においても、薬理作用・体内での動き・化学
的あるいは物理化学的な性質などを、すべての医薬品に関して理解した上で科学的
な洞察力を働かせ、処方が適正であるか、医薬品が患者さんの状態に合った使われ
方がされているか、あるいは医療の安全性は保たれているかなどの確認に神経を集
中しています。すなわち、薬剤師は単なる「テクニシャン」ではなく、常に科学的が思考
できる「サイエンティスト」でなくてはなりません。それでなくては、患者さんや社会、他
の医療スタッフの期待に応える活躍はできません。
これから皆さんは、6年間をかけて薬の専門家になるために必要な多くのことを学ん
でいきます。今回の早期体験実習は時間も限られていますが、この実習を通じて、『こ
れから薬学を学ぶ』ということをもう一度強く決意してください。薬剤師のきびきびと働
いている姿を見てください。医療の現場の緊張した空気を感じ取ってください。そして、
まずはこの実習から「病院薬剤師像」というものをイメージしてみて下さい。本実習が少
しでも皆さんのお役に立つことを心から願っています。
処方せん調剤室
河田 圭司
処方せん調剤室は、医師(歯科医師)が発行した処方せんに基づき経口製剤(錠剤、
散剤、水剤など)、外用製剤(貼付剤、点眼剤、軟膏剤、坐剤、吸入剤など)、注射製
剤(インスリン製剤、成長ホルモン製剤など)の調剤を行い患者さんに提供していま
す。
調剤は、薬剤師に与えられた特権であり、医師の発行した処方せん内容を「お薬の
選択、量、飲み方が適正かどうか」、「他のお薬との相互作用はないか」、「食べ物や嗜
好品などとの相互作用はないか」など的確に分析、判断して疑わしき点がないことの
確認を行い、より患者さんにとって有益になるようなアドバイスをした上で行います。患
者さんには、お薬のことを理解して戴くために文書などを作製して情報提供も行ってい
ます。調剤を行うにあたって私達は、それぞれのお薬の特徴や特性を理解し、学会、
勉強会や文献などから多くの情報を入手し、「薬のスペシャリスト」としてプライドをもっ
て日々業務を行っています。また、調剤は薬剤師業務の基礎であり製剤業務、医薬品
情報、TDM 業務、治験業務、試験業務、薬品管理業務の全ての業務につながり、決
して疎かにしては行けない業務であります。
当院では、外来及び入院患者さんの調剤を同じ場所で行っています。現在、医薬分
業(外来患者さんにかかりつけ薬局をつくってもらい、お薬の管理を行ってもらう)が進
み、院外処方せん発行率が約 95%であり、外来処方せん 1 日平均発行枚数は約
650 枚(院外処方せん約 620 枚、院内処方せん約 30 枚)、入院処方せんは約 400 枚
となっています。院外処方せんの発行が進んだことで、今は病棟へ赴き入院患者さん
に対し、薬剤管理指導業務を広く行っています。今後は、病棟薬局が開設され、もっと
大きく発展した調剤業務を展開して行くことになります。
従って、「正確・迅速・安全」な調剤を心がけ、患者さん一人一人に「満足できる医
療」を提供できるように日々努力をしていきたいと思います。
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注射調剤室
寺松 剛
注射調剤室の歴史
1983 年(開院時)に手書き個人注射指示せんによる払出からスタートしました。当時
より注射払出業務の電算化を進め、開院時より注射薬払出全データが保管されていま
す。その後、1995 年 5 月に注射薬オーダリングシステム 1)を導入し、同時に病棟ごと
のカートを利用した 3
4 日分の複数日個人単位払出 2)を開始しました。注射薬オー
ダリングシステムは、休日・祝祭日・年末年始を含め 24 時間、365 日稼働することとし
たため、薬剤部の業務もそれに応じて変化しています。1996 年には複数日払出を 1
日分個人単位払出に変更し、1998 年には注射薬自動払出システムを導入し、1 日分
個人毎をさらに細分化し手技・施用時刻 3)単位の袋詰めカート払出を開始しました。こ
の払出方法は、薬剤師が手技・施用時刻単位毎に注射指示せんを鑑査することとなり、
配合変化の有無、施用手技・投与速度の適否等、従来よりいっそう踏み込んだ鑑査が
要求されるようになり、注射指示せんに対する薬剤師の責任がより重くなっています。
一方、払出単位の細分化は新たな問題を生み出しています。注射薬の 1 日分払出で
は、注射指示せんから患者さん個人の長期的な注射薬鑑査 4)が困難となってきていま
す。現在は電子カルテシステム
5) が稼働しており、端末から内服・外用薬を含めた薬
歴、病名、検査結果等が参照可能となっています。これらを利用し、注射薬が正しく使
用されるよう努めています。業務量としては 2006 年 4 月現在、1 日平均注射指示せん
は 460 枚・1151 施用手技単位数、返品注射指示せんは 67 枚・148 施用手技単位で
す。
1)・・・・注射薬オーダリングシステムとは、必要な注射薬を電算機に入力し、そのデータを元に注射薬を
払い出す仕組みのことです。入力されたデータは、注射指示せん、ラベル、集計表などの作
成に利用したり、蓄積して統計データとして利用されます。オーダリングシステム導入前は、
手書きの注射指示せんを電算機に入力し、集計表を作成して注射薬を取りそろえていまし
た。
2)・・・・1995 年以前では、個人毎の伝票に基づき病棟単位で払出を行っていました。
3)・・・・手技とは注射薬の施用方法のことです。血管内に一度に注入したり、ゆっくりと点滴したり、筋肉
内に注入したりと様々な方法があります。注射薬によって使用方法が決められており、筋肉
内に注入する薬を血管内に使用したり、ゆっくり時間をかけて使用する薬を短時間で注入し
たり、使用方法を間違えると患者さんを死に至らしめることがあります。
4)・・・・薬によっては 1 週間に 1 回だけ使用する方法、1 カ月に 1 回だけ使用する方法等があり、1 日
分のみを見ていると、その薬が毎日指示されていても気が付かない危険性があります。
5)・・・・薬のオーダーデータ(請求情報)だけではなく、様々な検査結果、治療方針等、従来紙やフィル
ムを用いて記録していた情報を電子的に記録するシステムのことです。
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TPN 調製室
代田 奈緒美
栄養補給の方法は、経腸栄養と経静脈栄養の二つに大別され、更に経静脈栄養は
末梢静脈栄養と中心静脈栄養に分けられます。中心静脈栄養法(IVH または TPN)
は、上大静脈(中心静脈)内に留置したカテーテルを介して必要なエネルギーや各種
栄養素を投与する栄養法です。中心静脈は血流量が多いため、上腕などの末梢静脈
に比べて高濃度の栄養輸液を投与することが可能です。原則的には経口摂取が不可
能か不十分な場合(短腸症候群、イレウス、食欲不振等)や、経口摂取が好ましくない
場合(重度の下痢、広範囲の熱傷等)で、静脈栄養法による管理が長期にわたる時に
行われます。
TPN を行う際の問題点の一つとして、
カテーテル刺入部や注入ラインの接続
部、または高カロリー輸液等からの汚染
によるカテーテル感染症(カテーテル敗
血症)がありますが、これを防止するた
めに高カロリー輸液の調製は無菌環境
下で行うことが重要です。
薬剤部では 1994 年 6 月に外科、皮膚
科、小児科病棟の TPN 調製を開始し、
1997 年 4 月以降は ICU を除く全病棟
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の TPN を調製しています。
近年栄養補給の方法が見直され、鼻腔から消化管にチューブを挿入する経鼻法や
胃瘻・空腸瘻といった経瘻孔法などの経管栄養が増加傾向にあります。このような背
景もあって以前に比べると TPN を行う患者さんは減少傾向にあり、現在は 1 日平均
20 人程度の TPN を薬剤師 2 名(調製者 1 名、鑑査者 1 名)で調製しています。平日
はその日の午後から使用する TPN を、午前中のうちに調製して病棟に払い出してい
ますが、休日は使用日当日の調製が出来ないため、安定性や配合変化を考慮した上
で休前日に混合可能な薬品のみを調製して払い出すようにしています。
数年前までは、糖・電解質液(基本輸液)にアミノ酸液や総合ビタミン製剤を加えて
高カロリー輸液を調製していましたが、現在では基本輸液とアミノ酸液が一体化したダ
ブルバッグ製品や、更にそこへ総合ビタミン剤を加えたトリプルバッグ製品等の高カロ
リー輸液用キット製品も採用され、調
製時間の短縮や輸液の細菌汚染減
少等の面で有効です。
現在 ICU の TPN は内容変更が多
い、他病棟と交換時間が異なる、入院
期間が短い等の点から看護師が調製
を行っていますが、薬剤部での調製
依頼も多くあるため今後の検討課題と
なっています。
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薬剤管理指導業務
荒井 千春
薬剤管理指導業務の目的は、薬剤師が患者さんを中心とした医療チームの一員と
して医薬品の適正使用を推進し、安全でより効果的な薬物療法の実現に寄与すること
で、患者さんにより良い医療サービスを提供することにあります。具体的には、直接患
者さんと面談して適切な指導・助言を行う服薬指導と、得られた情報とそれから考察さ
れる薬物療法の問題点を検討し、適正使用のための情報を医療チームに還元・提案
していくことです。
本院は、平成6年8月に入院薬剤管理指導業務算定施設として承認を受けました。
入院薬剤管理指導業務は7階の糖尿病患者さんを対象として開始し、平成8年7月に
7階東病棟(消化器内科、循環器・呼吸器内科)、7階西病棟(内分泌内科、循環器・
呼吸器内科、血液内科)に拡大し、その後6階東西病棟(消化器内科、耳鼻咽喉科、
内分泌内科、神経内科、眼科)、5階東西病棟(整形外科、眼科、泌尿器科、放射線
科、神経内科)と徐々に実施病棟を増やし、平成 13 年7月から4階東病棟(第一外科、
第二外科)および4階西病棟(第一外科、皮膚科)が加わり、現在8病棟・13 診療科を
対象として実施しています。指導する薬剤師の人数は、各病棟2名ずつの一週間延
べ 16 名で行っていますが、全員が調剤業務など、他の業務との兼任です。
薬剤管理指導のクリニカルパスへの組み込みについては、平成 12 年 10 月に白内
障手術の眼科患者さんを対象として開始し、その後心臓カテーテル検査(循環器内
科)、人工膝関節置換術・人工股関節置換術(整形外科)を対象に実施しています。
平成 15 年1月には、薬剤管理指導記録の電算化、さらに平成 16 年1月に電子カル
テ導入により医療情報が共有化され、能率的な業務を推進しています。
薬剤師の病棟常駐などにより薬剤管理指導業務の質的な向上が求められ、現在の時
間の割り振りの中でどの様に対応していくかが今後の課題となっています。
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薬務室
志村恵美
薬務室では、薬品の発注・入庫、薬品管理及び処置薬品の払出業務を行っていま
す。
1998年までは薬剤師2名、事務官1名で構成されていましたが、薬剤部業務の拡大
等にともない、現在では薬剤師1人、事務官1人の2人体制となっています。
輸液剤の購入や処置薬の払出など力仕事が多い薬務業務ですが、鍛えられながら女
性2人でがんばっています。
発注に関しては、コンピュータが過去の消費動向より自動的に予定数量を算出する
発注システムを稼働していますが、季節変動がある薬品及び新規薬品の消費量、また
新規薬品が採用になった事による同効薬の消費量減少は、コンピュータでは予測でき
ないため薬剤師による変更・追加が必要であり経験が求められます。
また、薬品倉庫が注射薬払出機の導入によって、開院当初の3分の2ほどとなり、補
液・輸液等を保管する場所が非常に狭い状態です。薬品の発注・入庫は、フロッピー
を用いた定期発注を週2回行っていますが、欠品、不良品の入庫、薬品の期限切れ
などにより院内への安定
供給が途切れないように、
また過剰在庫を来さない
ように毎日奮闘していま
す。
取引卸業者も、スズケン、
東邦薬品、鍋林、やまひ
ろクラヤ三星堂、アルフ
レッサ、岡野薬品と多く、
コミュニケーションの重要
性を感じています。
現在でも、検品時の有
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効期限やロット番号管理を、血液製剤払出時のロット管理などに利用していますが、さ
らにデータの共有化・相互利用を進め薬剤部の業務の質向上をすすめたいと考えて
います。
製剤室
花輪 和己
院内製剤とは、「薬剤師により病院内で調製され、その病院で使用される薬剤」のこ
とで、製薬会社が販売している医薬品とは異なり、調製した病院の入院患者さん、また
は外来患者さんに限定されて使用している薬剤のことです。医師が治療を行ううえで、
市販されている薬剤では「効果が得られない場合」や、市販されている薬剤であっても、
場合によっては「剤形を変えないと使用できない」ことがあります。このようなときに製剤
室では、個々の患者さんに合う形で、薬剤を調製しています。
病院における院内製剤は、調剤予備行為としての一般製剤と特定の患者を対象とし
ている特殊製剤に区分されます。一般製剤は、調剤業務・診療業務の効率化、合理
化を目的として、比較的大量に調製するものです。一方、特殊製剤は特定な患者さん
の治療に限定して調製する製剤であり、「特殊疾患、難治性疾患の患者さんを治療す
る場合」、あるいは「新しい治療法を開発する場合」により調製します。
山梨大学医学部附属病院の一般製剤および特殊製剤の数は、約 100 種類に及び
ます。製剤室の調製室は、乾性製剤室(散剤、カプセル剤など)と湿性製剤室(内用・
外用液剤、軟膏剤、坐剤など)があり、さら
に無菌室があります。無菌室では、注射剤
や手術中の止血剤および膀胱注入剤など
を調製しています。
院内製剤は、使用した患者さんに治療効
果および副作用が直接影響を及ぼすので、
調製は細心の注意が必要です。随時医師
や看護師、または患者さんと話し合いをし
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ながら、常に製剤品の安全性や質の確保、
さらなる発展を意識して業務を行っていま
す。
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試験研究室
土屋 千佳子
大学病院薬剤部は「実務・教育・研究」の 3 つを大きな役割として担っています。その
うち「研究」に携わる試験研究室では、患者さんのために医薬品の安全性、有効性、
適切な使用法を確保するための基礎試験を行うとともに、さらに興味を持ったテーマ
については、詳細な研究を行うことで病院外にも研究成果を発表することを目標とし、
業務に取り組んでいます。
薬剤の服用回数・用量が多い、服用方法が煩雑である、副作用が発現し易い等の
原因により、患者さんの状態によってはコンプライアンスが低下したり、服用が難しくな
ることがあります。近年では、そのような薬剤を口腔内添付フィルム状製剤、ゼリー状製
剤、局所注入製剤等に改良することで、患者さんおよび医療従事者が使用し易い薬
剤を調製できるよう、院内製剤の開発研究を行っています。また、新規院内製剤を調
製する際には、安定性試験等を行うことで、製剤の有効期限・保存条件を設定してい
ます。
病院で行う研究業務は大学や企業と比較し、通常業務との時間的・人員的制約があ
ることや、実験機器の確保などで苦労する点もありますが、身近で実際に製剤を使用
している医師・患者さんの声を聞きながら研究を行うことができるという利点があります。
また、日々の実務の中から病院薬剤師の視点により研究テーマを見出すことが必要と
なるため、実務中に疑問に感じたことをそのままにしないことを心がけています。
医薬品情報室(D I 室)
河内 麻利
薬はそのもの自体では価値をもたず、有効性、安全性に関する情報が付加されて、
はじめて医薬品としての価値を持つことができます。
医薬品の情報には、安定性、有効性など
の開発時の動物実験・臨床試験の段階
で得られる基本的な情報のほかに、相互
作用、副作用、治療薬を組み合わせた併
用療法に関する情報など、市販後の使用
経験の蓄積の中から得られる情報もあり
ます。さらに、国内、海外の区別なく収集
され、日々追加・変更されるため、その情
報量は膨大です。
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DI室の業務は、これらの情報を医師・看護師をはじめとする医療スタッフおよび患者さ
んに、必要時に適切な形で提供することにより、高度かつ適正な薬物療法に貢献する
ことを目的としています。
業務の内容は、医薬品情報の収集・整
理・提供のほかに、薬剤部内外からの問
い合わせの対応、医薬品集の作成、入
院患者の持参薬の薬剤識別、緊急安全
性情報(イエローレター)・副作用情報・
DI 室ニュースなどの情報誌の発行、病
院情報システムおよび薬剤部門システム
のマスタメンテナンスなど多岐にわたっ
ています。
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DI室の担当者は、医薬品に関わる情報を必要時に引用・加工して発信できるように、
コンピュータによる情報処理能力とインターネット等による情報検索能力が求められま
す。また、製薬企業のMR、医師、看護師など、それを受け渡しする相手が何を提供し
ようとしているのか、何を求めているか、会話の中から瞬時に判断して対応するコミュニ
ケーション能力が必要です。さらに、常に
情報をサーチし、取捨選択し、膨大な情
報の中から将来患者さんに有害な事象が
発生する可能性を予見させる情報を見つ
けだすインスピレーションも必要です。
学生の皆さんには、これから学生時代に
多くの文献・雑誌を読み、多くの情報に接
し、これらの能力を培われることを希望し
ます。
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TDM 管理室
寺松 剛
TDM とは Therapeutic Drug Monitoring の略です。薬の投与量と、血液等の生
体試料中の薬物濃度・薬の効果を検討して治療に役立てることを業務としています。
従来、「さじ加減」で行われてきた薬物療法は、経験に基づいて、それぞれ個々の患
者さんの症状や体格等により投与量が決定されてきました。同じような体格の人に同じ
投与量を用いた時の効果の差は個人の薬に対する「感受性」の違いと考えられてきま
した。しかし、近年様々な分析機器の進歩により、血液、や尿などの体液中の薬物濃
度や、薬の効果を数値化できるバイオマーカー1)の測定が可能となり、個々の人に対
しても薬物の効果の差をモニターしながら薬物治療を行うことが可能となってきました。
そこで、投与量は同じでも、血液中の薬の濃度が異なったり、効果が異なる場合など
にちょうど良く効果が得られるように投与量を補正する手助けを行います。このように、
患者さん個人毎に副作用が出ない投与量で、なおかつ効果もしっかり得られるような
投与量を設定していく事を TDM と言います。
1)・・・・従来、患者さんの自覚症状(具合が良くなってきた等)で判断されていた薬の効果を、その疾病
の状態と良く相関する血液検査等の客観的指標のことです。例えば血糖(血液中のブドウ糖
の量)は糖尿病のバイオマーカーです。しかし、「疲労」、「痛み」など現在でも客観的なバイ
オマーカーがほとんど判明していないものもあります。
通院治療センター
寺田 公紀
通院治療センターでは、悪性腫瘍の患者さんが、治療のために入院することなく家
から病院へと通院しながら、注射による治療を行っています。
平成 14 年4月の診療報酬改定により「外来化学療法加算」が新設されたのに伴い、
悪性腫瘍の外来治療を目的として部屋の設置が計画され、11月に稼働を開始しまし
た。
この「外来化学療法加算」とは、どこの医療施設でも加算できるのではなく、次のような
一定の施設基準、
1、 財団法人日本医療機能評価機構等が行う医療評価を受けている
2、 化学療法につき専任の常勤薬剤師が勤務している
3、 専用の病床を有する治療室において、専任の常勤看護師が勤務している
4、 緊急時の対応に対する体制が整備されている
以上のことを満たした保険診療機関で実施しなければ加算することができません。
次に、当院センターを運用していくにあたりそのコンセプトを示します。
1、外来化学療法を行う患者さんに安心感を与え、施行中のQOL向上を図る
2、外来診療室とセンターが離れていることから、医療スタッフ間の意思疎通を図る
3、薬剤師による注射処方鑑査の実施
4、スタッフ間の相互協力による過誤防止の徹底
5、同時にコスト削減を図ること
以上のことを実現するために、医療スタッフがお互いに協力し合い通院治療センター
を運営しています。
センターの施設内容としては、部屋の広
さ 90.9 ㎡、治療用ベット8床、リクライニング
シート3台、そして部屋には音楽が流れ、各
病床の上にはテレビを設置し、治療中リラッ
クスできるようになっています。そして、入り
口カウンター奥に薬剤調製室があり、そこ
で毎日薬剤師が注射剤の調製を行ってい
ます。
開設してから、センターを利用し治療を
受けた患者さんの延べ人数は、開設した平
成 14 年度、411 名(11 月開設)、平成 15 年度、1256 名、平成 16 年度、1494 名、
平成 17 年度、1722 名と年々増加の傾向にあります。また、利用診療科も内科・外科・
小児科・皮膚科・泌尿器科・耳鼻科・放射線
科・歯口科と多くの診療科が利用していま
す。
それに対して我々薬剤師は、日々患者さ
ん個々の注射処方鑑査を行い、当日の患
者さんの検査値からも点滴を実施してよい
か確認し、注射剤の調製を行っています。
今 後 も 通 院 し な がら の治 療 は、患 者 さ んの
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QOL(Quality of Life)向上のためにも大切なことと思われます。
治験センター
手塚 春樹
【治験とは】
化学合成された物質や、植物、土壌の菌、海洋生物などから発見された物質の
中から、試験管の中での実験や動物試験を経て、病気に効果があり、人に使用し
ても安全と予測されるものが「くすりの候補」として選ばれます。「くすり」の開発の最
終段階では、人での効果と安全性を調べる試験が必要とされていて、健康な人や
患者さんのご協力を得て行われます。こうして得られた試験の結果を国が審査して、
病気の治療に必要で、かつ安全に使っていけると承認されたものが「くすり」となりま
す。
人に対して行う試験を「臨床試験」といいますが、「くすりの候補」を用いて国から
承認を得るためにデータを集める臨床試験を、特に「治験」と呼んでいます。
【治験センター】
治験センターは山梨大学
病院で治験をスムーズに行
うために設置されており、治
験事務局、治験薬管理室及
び治験実施部より構成され
ています。
●治験事務局は GCP(医薬品の臨床試
験の実施の基準)により設置が義務づけ
られていて、主に治験に関する事務業務
を行っています。治験の申込や受入に関
する事務業務、治験依頼者(製薬企業)・
治験担当医師との連絡・打合せ、ヒアリン
グ(治験内容に関する質疑応答)やモニ
タリング(資料確認作業)等のスケジュー
ル調整、被験者(治験に参加する患者さ
ん)の来院日程や負担軽減費(交通費)支払い等の事務処理、治験審査委員会の
準備及び資料作成など多岐に渡ります。GCP では治験のあらゆる業務について手
順を定めたり記録を保管することが求められていますので、業務量は膨大なもので
す。現在治験事務局は薬剤師1名、事務官1名で業務を行っています。
●治験薬管理室は治験薬(治験で使われ
る「くすりの候補」)の調剤、管理、被験者の
服薬状況の確認などを行っています。治験
薬を被験者に適切に投与し管理することは、
治験データの質を保証する上で非常に重
要な業務です。
治験薬を適切に調剤することにより、被験
者が正確・安全に治験薬を服用することが
できます。服薬状況を正確に把握すること
で、治験薬の効果や安全性を正確に調査することができます。また、温度管理や在
庫管理など、治験薬を適切に保管・管理することにより、治験薬の品質を保証して
います。
●治験実施部のうちの CRC(治験コーディ
ネーター)部門では、薬剤師3名及び看護
師1名が活動しています。治験責任医師の
業務を支援する専任スタッフとして、CRC の
業務は年々重要視されています。CRC の
主な業務は被験者のケアを中心としたもの
で、治験参加のための同意取得補助、治
験の来院日程管理、診察立ち会い、有害
事象の確認や発生時の迅速な対応、被験
者の不安や疑問に関する対応を行います。また検査データの収集及び整理、症例
報告書の作成補助、モニタリングなど治験依頼者への対応を行っています。
治験センターでは、患者さんに安心して治験に参加していただけるよう患者さん
の安全と、人権、プライバシーを守ることを最優先に専門の治験スタッフがサポート
しています。また、治験の倫理性・科学性の確保と、円滑な実施を目指して日々業
務を行っています。
糖尿病教室
志村 恵美
糖尿病教室は、火曜日と金曜日の午後に糖尿病の教育目的で入院されてきた患者
さんを中心に開かれています。
教室の内容は糖尿病の検査のお話、日常生活における注意事項など(医師)、食事
で糖尿病を治そう(栄養士)、運動療
法のお話(理学療法士)、糖尿病の薬
物療法のお話(薬剤師)です。薬剤部
では2人で担当しています。(第1週、
3週の金曜日)
糖尿病と付き合う方法や自己管理の
大切さなど基本的な話から、薬物療
法、シックデイ・ルール、薬による低血
糖などの話をわかりやすく学習しても
らえるようにいろいろ工夫しながら行っ
ています。
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病院感染対策チーム
北原克晃
病院感染は様々な易感染性要因を有する患者に発症することが多く、原疾患に悪
影響をもたらすばかりか、入院日数の長期化や医療費の増加など、医療の質の面から
も大きな問題となっています。
そのような病院感染防止対策を組織的、かつ効率的に遂行するために感染対策チ
ーム(Infection Control Team : ICT)が設置されています。ICT は医師、看護師、臨
床検査技師、事務担当者、そして薬剤
師で構成されており、年間計画の作成
と実行、アウトブレイクの予防/特定/制圧、
医療スタッフの教育、マニュアル作成、
毎週一回のラウンドによる監視/介入/情
報収集/情報伝達などを業務としていま
す。
当院薬剤部では薬剤耐性菌出現防
止のため、注意が必要な抗生剤の使用
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理由確認・使用報告・使用量調査を実
施しており、その使用動向から得られた結果を学会に発表しています。
また、薬剤師は薬学的見地から指導・啓発を行うことが期待されており、2006 年 1 月
か ら 感 染 制 御 専 門 薬 剤 師 (Pharmaceutical Specialist for Infection Control
Pharmacist : ICPha)認定制度が開始となりました。薬剤師の得意とする分野で職能を
発揮できる機会がそこにあり、積極的に関わっていくべきだと考えています。
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緩和ケアチー ム
丹澤 泉
一般的に緩和ケアとは、「治癒を目的とした治療に反応しなくなった疾患を持つ患
者に対して行われる積極的で全体的な医学的ケア」と定義されています。
この治癒を目的とした治療に反応しなくなった疾患とは、致死的な疾患のみを意味
するのではなく、治療に反応しなくな
ったまま長期間に渡って経過する慢
性疾患も含んでいます。
当 院 の緩 和 ケア チー ム は、 AP S
(AcutePainService)と呼ばれる術後
疼痛管理を専門に行なうチームで
す。
このチームは、「APSを急性痛とい
うことだけでなく、迅速に痛みに対処
するコンサルテーションチームと位置
付けたい」という考えに基づき活動を
行っています。
そして、その活動内容を、
【1】身体的苦痛(痛みやその他の苦痛な症状)
【2】精神的苦痛(不安など)
【3】社会的苦痛(経済的や家庭内の問題など)
【4】スピリチュアルペイン(死への恐怖など)
などの緩和と定め、2003 年9月から活動を開始して現在に至っています。
メンバー構成は、専従医師(麻酔科
医)、精神科医、専従看護師、及び薬
一枚の写真
剤師で、活動は、月・水・金曜日の全
病棟の回診と、木曜日のケースカンフ
ァレンスを中心に行われています。
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褥瘡対策チーム
河田 圭司
褥瘡(じょくそう)とは、俗に言う「床ずれ」のことであり、長時間の圧迫により皮膚、皮
下脂肪組織、筋肉への血流が途絶え、これらの組織が死んでしまった状態(壊死状
態)を示します。褥瘡は、局所的要因(加齢による皮膚の変化、摩擦とずれ、失禁と浸
潤、局所の皮膚疾患など)、全身的要因(低栄養、やせ、基礎疾患など)、社会的要因
(経済力不足、人的不足など)が複雑に絡みあってできるものです。
一般的には、自分自身で体位変換(寝返りなどの自発運動)が出来ない「寝たきり状
態」(圧力がずっとかかった状態)の方、栄養不足による骨が突出した方(圧力が集中
する)などに高い確率で発生します。また、褥瘡は仙骨部、大転子部、踵部などにでき
ることが多いです。
褥瘡対策チームは、2002 年 4 月に病院長の直属機関として医師 2 名(形成外科医
1 名、外科医 1 名)、看護師 2 名、薬剤師 1 名、管理栄養士 1 名、理学療法士 1 名、
事務官 1 名で発足しました。チームの活動時間は、毎週木曜日午後 3 時から行ってい
ます。活動内容は褥瘡の治療だけではなく、褥瘡ができないようにアドバイスも行って
います。
薬剤師の関わりは、薬剤、栄養及び被覆保護剤などの情報提供を行うことはもちろ
んのこと、処置の助手など通常では経験できないことも行い、チーム活動に貢献して
います。今後もさらに患者さんに、「満足した医療」を提供できるように努力していきた
いと思います。
栄養サポートチ ーム(NST)
河田 圭司
栄養状態が不良であると、感染症を引き起こしやすくなったり、病気の回復
が遅れたりします。適切な栄養管理により栄養状態を良くすることによって、
病気の回復を早くすることができるので、栄養管理は全ての治療法の基礎であ
ると言えます。
当院では、平成 19 年 4 月より医療チームとして栄養サポートチーム(NST:
Nutrition Support Team)を本格稼働しました。チームの構成メンバーは、各
専門知識や技能を発揮できるように医師、看護師、薬剤師、管理栄養士、臨床
検査技師、事務官となっています。
活動内容は、週一回のミーティング、ラウンドを行い、患者さん個々の疾患
や病態に応じた必要な栄養や摂取経路などの提案を主治医にします。また、月
一回勉強会を開催して院内の栄養への認識を高めています。さらに、より充実
した医療を患者様に提供するために他の医療チーム(緩和、褥瘡、感染)と合
同ミーティングを月一回実施しています。
薬剤部では、薬理学的、物理化学的、栄養学的観点から患者様個々の疾患や
病態に応じた必要な栄養及び適正な摂取経路、摂取方法またはチューブを含め
た機材の選択などのアドバイスを行っています。
(ミーティング)
週 1 回月曜日にミーティングを行っています。ラウンド前に NST へ紹介され
た症例について検討を行います。
(ラウンド)
月曜日のミーティングの後、病棟回診を行います。
回診後は食事内容や点滴・経口栄養剤の変更等主治医へ提案します。
(勉強会)
NST メンバー以外でも参加できるようになっています。
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