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薬学管理上必要な情報 入院

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薬学管理上必要な情報 入院
第 210 号
平成 20 年 5 月 20 日
医薬品の適正使用に向けた薬剤師の役割
薬学管理上必要な情報─入院
救命救急センターにおける
薬剤師の役割
東邦大学薬学部医療薬学教育センター臨床薬学研究室 松尾
和廣先生
「医薬品の適正使用」の推進は薬剤師の重要な役割です。今回はシリーズ番組の第5回目―薬学管
理上必要な情報―<入院>について、救命救急やICUに的を絞って東邦大学医療センター大森病
院救命救急センターの事例にもとづいたお話をいただきます。
はじめに
近年、医療安全の面から救急領域
害、頭部外傷、交通外傷、中毒など、 もち、医療チームの一員として患者様
救急医療の現場は先にも述べましたよ
における薬剤師関与の認識が高まって
その他各疾患の状態の悪化など様々
の治療に関与する必要性があると思わ
うに、疾患が多岐に渡り、患者様は心
います。救命救急医療では意識障害
です。救命救急センターでは迅速かつ
れます。しかし、救命救急センターに
機能、呼吸器機能、肝機能、腎機能、
を伴う重篤な患者様が多く、その疾患
高度な医療の提供を要求され、様々
おける薬剤師配置施設は、昨年の第
血液凝固系など様々な臓器機能が低
は、急性心筋梗塞、心不全、急性大
な職種が専門家の立場から患者様の
17 回日本医療薬学会年会において西
下している場合が多くあります。また、
動脈解離等の循環器系、クモ膜下出
問題点を抽出していきます。その問題
澤健司先生らの日本臨床救急医学会
個々の重症度も様々であり、使用され
血等の脳卒中を引き起こす脳血管障
点解決に薬剤師は薬物療法に責任を
他職種連携委員会小委員会、薬剤師
る医薬品の種類が多く、さらに、その
ワーキンググループからの発表 1)により
使用方法および投与量も広範囲に渡っ
ますと、10 年前の 24 施設から 53 施
ています。従って、医薬品の適正使用
設へと施設数は増加傾向にあると思わ
に向けた薬剤師の役割が大きく、救急
れますが、薬剤師が関与している施設
医療の現場は薬剤師の力を大いに発
はまだ少ないと思われます。その実施
揮できる場所の 1 つであると考えます。
施設の少ない理由として、救命救急セ
東 邦 大 学 医 療センター大 森 病 院
■ 写真1 薬物、毒物の定性分析用薄層クロマトグラフィー(TOXI-LABⓇ AB)
ンター認定に必要な人的要件に医師、 (以下、当院と略します。)薬剤部で
TOXI-LAB® A
アルカリ性、中性の薬物
興奮剤、鎮痛剤、精神安定剤系
TOXI-LAB® B
酸性、中性の薬物
バルビツール系、
ベンゾジアゼピン系
看護師、検査技師の記載はありますが、
は、後でも述 べますが、昭 和 59 年
薬剤師の記載はなく、さらに平成 20 年
度よりTDM 委員会が発足し、病院
4 月までは薬剤管理指導料の算定、つ
全体のシステムで TDM を実施しまし
まり、薬剤師業務に診療報酬が認めら
た。また、翌 年の昭 和 60 年 度から
れていないこともあり、救急医療の現
は薬物中毒時における起因物質の分
場に積極的に薬剤師を配置することが
析に薄層クロマトグラフィーを利用した
困難であったと思われます 2)。しかし、
Toxi-Lab Ⓡ(写真 1)を使用し、さら
平成 20 年 5 月 20 日
第 210 号
に平成 11 年度以降、本分析業務の
線装置(写真 2)
、次いで乱用薬物
より救命救急センターと薬剤部との関係
者様の治療に関与する必要性を考え、
充実を図る目的で薬毒物 LC 分析シス
スクリーニングキットトライエージⓇ(写
は密でありました。そこで、薬剤部は
平成 16 年 6 月の新 3 号館開設に伴っ
テム(HPLC)
、ヒ素のような重金属の
真 3)
が導入されました。以上のように、
救急医療の現場で薬剤師が医療チー
て、同年 7 月 1 日より救命救急センター
分析を目的にエネルギー分散型蛍光 X
TDMと薬物中毒分析において、以前
ムの一員として薬物療法を中心に患
での病棟業務を開始しました。
■ 写真2 薬剤部中毒分析機器
■ 写真3 乱用薬物スクリーニング検査キットトライエージDOAⓇ
薬毒物LC分析システム(HPLC)
金コロイド粒子を用いた競合免疫法により、フェンシクリンジン(PCP)、ベンゾジアゼピン
(BZO)、コカイン系麻薬(COC)、覚せい剤(AMP)、大麻(THC)、モルヒネ系麻薬(OPI)、バル
ビツール酸類(BAR)、三環系抗うつ剤(TCA)の8種類の尿中薬物群を同時に検出
エネルギー分散型蛍光X線装置
東邦大学医療センター大森病院救命救急センター(以下、当センター)の概略
当 院は許 可 病 床 1021 床、うち一
関は 1 次から 3 次まで 3 種に大別され
機関が 3 次となっています。救命救急
HCU14 床は 1 階で、合計 20 床で運
般 985、精神 36 床です。平成 18 年
ています。平日夜間や休日に自分で病
センターは 3 次で、消防庁から直接受
用されています。また、当センターは東
度の外来患者様は 1 日平均 2308 人、
院に来る軽症患者様を診察する休日夜
け入れ要請の電話、いわゆるホットライ
京消防庁からのホットライン要請の他、
入院 1 日平均 857 人、平均在院日数
間急患センターや在宅当番医制等が 1
ンにより、直接救急専門医へ依頼され、
救急外来、地域近隣診療施設からの 3
16.8 日です。当院は 1 次から 3 次まで
次、手術や入院などが必要とされ救急
患者様が受け入れられます。
次救急医療施設であり、CCU は 2 階
を備え、救急外来の患者様は平日夜
車を呼んで来る患者様を扱う病院群輪
間が約 100 人、日曜日は約 200 人に
番制等が 2 次、2 次以上で重篤な患
平成 16 年 6 月に新病棟に移動しまし
のぼります。参考までに、救急医療機
者様を扱う高度な医療を確保する医療
た。3 次対応の ICU ベッド 6 床は 2 階、
当センターは昭和 53 年に開設され、
特定集中治療室に4床併設しています。
救命救急センターにおける薬剤師業務
て17:30 頃まで救命救急センターにおい
られるのか、何ができるのか、何を求
物中毒分析および解析③中心静脈栄
45 名と非常勤 1 名の計 46 名の薬剤
て薬剤師業務を行っています(図 1)
。
められているのかと一生懸命考えてい
養の調製④医薬品管理の 4 点を中心
師が勤務しています。そのうち当セン
平成 16 年 7 月より薬剤師が救命救急
ました。結局答えが出せず、とにかく
に業務を行っていくこととしました。以
ターには専任 1 名、兼任 1 名を配置
センターに配置されましたが、配置され
薬の専門家として①本日のテーマであ
下に 4 つの業務を簡単に説明したいと
し、朝 8:00 のカンファランスを初めとし
る直前まで、薬剤師は現場で受け入れ
ります薬剤の適正使用をはじめ②薬毒
思います(図 2)
。
平成 19 年度、当院薬剤部は常勤
■ 図2 救命救急センターにおける薬剤師の役割
■ 図1 救急救命センターにおける薬剤師のタイムスケジュール
8:00
カンファランス参加
9:00
処方チェック
① 薬剤の適正使用
・TDM(Therapeutic Drug Monitoring;薬物血中濃度モニタリング)
高カロリー輸液調製
11:00
患者様情報収集 / 他職種との相談
・薬歴管理等
麻薬および筋弛緩薬を含む管理
・カンファランスの参加
簿記載薬品の管理向精神チェック
・医薬品情報提供
患者様情報収集 / 他職種との相談
15:30
救命注射セット
16:30
高カロリー輸液調製
17:30
薬品在庫チェック
人体制
14:00
2
② 薬毒物中毒分析および解析
③ 中心静脈栄養の調製
④ 医薬品管理
第 210 号
平成 20 年 5 月 20 日
①薬剤の適正使用
定を行い、薬剤部で 26 品目、検査
したが、もともと間質性肺炎の既往があ
度は有効血中濃度を推移し、10 日間
グ(以下、TDMと略します。
)
、薬歴
部で 8 品目を実施しています(図 3)。
り、手術後、一般病棟において、間
バンコマイシンを使用しましたが、副作
管理、カンファランスの参加、医薬品
当センターにおいて病棟業務を開始す
質性肺炎の悪化のため呼吸困難となり
用と思われる症状は特に現れず、感染
情報提供を考えました。
る前の薬物血中濃度の測定件数は平
ました。吸引喀痰培養よりMRSA お
症状は軽快いたしました(図 6)
。
成 13、14、15 年度はそれぞれ 160、
よび緑膿菌が検出され、バンコマイシ
次に薬歴管理についてです。一般
では、腎機能や肝機能等が低下して
204、272 件であったのに対し、開始
ン 1 回 500mg を 1 日 2 回投与されて
病棟と同様に薬歴を管理することによ
いる患者様が多く、また使用薬剤も多
後の平成 16、17、18 年度はそれぞれ
翌日救命救急センターに転棟してきまし
り、使用薬剤の重複、配合変化、相
いため薬物相互作用等も含めた投与
920、721、788 件と増加しました。特に、
た。朝のカンファランス時、担当医より
互作用のチェック、効果や副作用のモ
設計をする必要があります。さらに、
抗 MRSA 薬であるバンコマイシン、テ
バンコマイシンの投与量について相談
ニタリング等を行っています。平成 20
副作用の防止とともに薬物療法の効果
イコプラニン、アルベカシンの TDM が
を受け、体重および腎機能等から増
年度の診療報酬改定によりますと、ハイ
を早期に得るためにもTDM が有効で
増加し、全測定件数の 50% 以上が初
量を提案し、血中濃度確認後に維持
リスク薬等に関する薬学的管理の評価
あると考えています。先にも述べました
期投与設計を含む抗 MRSA 抗菌薬で
投与量を決定することとしました。血
等で、薬剤管理指導料について、対
が、当院では昭和 59 年に薬物治療
した。
中濃度測定後、早期に有効血中濃度
象患者様の違いにより3 つの区分に分
大きく分けて薬物血中濃度モニタリン
まず TDM です。救命救急センター
モニタリング推進のため院内システムと
以下に、バンコマイシンの TDM 症
に到達させる為に、確認時は 1 日トー
類して設定し、重篤な患者様及びハイ
して TDM 委員会を設置し、主に薬
例を示します。症例 1(図 4)は 69
タル 2500mg のバンコマイシンの投与
リスク薬を使用する患者様に対する評
物血中濃度の測定および薬物動態解
歳男性、体重 72.4kg、身長 161.2cm、
量を設定しました。また維持量は 1 回
価を引き上げ、それ以外の患者様に
析を開始し現在に至っています。現在
腎機能は特に問題なくS-Cr0.62mg/
1000mg を 1 日 2 回の投与量を提案い
対する評価を引き下げるとともに、現行
院内で 34 品目の薬物血中濃度の測
dL でした。肺癌手術目的で入院されま
たしました(図 5)
。その後、血中濃
の薬剤管理指導料の設定基準を満た
■ 図3 東邦大学医療センター大森病院のTDM対象薬剤(院内測定分)
薬剤部
強心配糖体
抗てんかん剤
臨床検査部
ジゴキシン
β- メチルジゴキシン
ゾニサミド
気管支拡張剤
■ 図4 症例1 バンコマイシンの投与設計
フェノバルビタール
フェニトイン
カルバマゼピン
バルプロ酸
69歳 男性 体重:72.4kg 身長:161.2cm
主訴:
肺癌手術目的
・ H×-4年よりRAに合併した間質性肺炎で通院
現病歴:
・ H×年7月30日腹痛で入院時にCTにて右肺癌
・ LKの為、右下葉切除術施行
テオフィリン
■ 図5 症例1に対する薬剤師のカルテ
抗生物質
アルベカシン
バンコマイシン
テイコプラニン
抗不整脈剤
リドカイン
ジソピラミド
メキシレチン
アプリンジン
プロパフェノン
フレカイニド
シベンゾリン
アミオダロン
ピルメノール
プロカインアミド
ピルジカイニド
ベプリジル
ニフェカラント
免疫抑制剤
シクロスポリン
タクロリムス
精神科用剤
ハロペリドール
ブロムペリドール
三環系抗うつ薬
血中濃度が低い。早期に
有効血中濃度に到達させ
る為、15 : 00 に 1000 mg 、
22:00に1000mgの追加投
与をお願いします。
(イミプラミン、
アミトリプチリン、
■ 図6 症例1 バンコマイシンの投与設計
ノリトリプチリン)
その他
計
チオペンタール
メトプロロール
26品目
・バンコマイシンを10/5まで投与(10日間)
メトトレキサート
その後の経過
8品目
・血中濃度は予想血中濃度で推移
・CRPおよびWBC改善
・喀痰培養MRSA陰性
平成 20 年 5 月 20 日
第 210 号
す有床診療所においても、薬剤管理
他には、副作用と思われる症状が出
緊急安全性情報および医薬品・医療
法、溶解後の安定性、フィルターの透
指導料を算定できるようになりました(図
現した際は担当医と相談の上、医薬
機器等安全性情報についての情報提
過性等の問い合わせが多くあります。
7)。また、ここでかかれているハイリス
品安全性情報やプレアボイド等に積極
供、新規購入薬品や新薬の注意事項
救命救急センターに入院されている患
ク薬とは投与量の加減により重篤な副
的に報告しています。また、薬歴管理
の周知徹底を積極的に行っています。
者様の多くは、中心静脈や末梢静脈
作用が発現しやすいものなど、特に安
をすると伴に栄養管理と評価につきまし
次に医薬品情報提供ですが、医師
から多くの薬剤が同時に投与されてい
全管理が必要な医薬品とされ、具体的
ても担当医および NSTと連携を組んで
からは保険適用、使用方法、投与量、
るため、限られた投与ルートでの配合
には、抗悪性腫瘍剤、免疫抑制剤、
取り組んでいます。
透析性や副作用発生頻度等の問合せ
変化については、医師および看護師の
が多く、看護師からは薬剤の保管方
両者に特に重要な情報の 1 つです。
不整脈用剤、抗てんかん剤、血液凝
次にカンファランスの参加です。カン
固阻止剤、ジギタリス剤、テオフィリン
ファランスは、毎日朝 8:00 から約 1 時
製剤、カリウム製剤(注射薬に限る)
、
間、ホットラインで搬送された患者様、
精神神経用剤、糖尿病用剤、膵臓ホ
入院中および新規入院患者様につい
ルモン剤及び抗 HIV 薬となっています。
て、現在の状態、問題点、今後の治
救命救急センターにおいて、上記薬剤
療方針等が検討されています。薬剤
は必要不可欠な薬剤であり、薬剤師業
師は薬物療法について、投与量、投
務に診療報酬が認められたということも
与方法、注意すべき副作用、剤形選
あり、今後実施施設の増加にも繋がる
択を含め代替薬の選択等薬物療法全
と思われます。
般について情報提供をします。また、
■ 図7 ハイリスク薬等に関する薬学的管理の評価等
【薬剤管理指導料】
1.救命救急入院料等を算定している患者様に対して行う場合 430 点
2.特に安全管理が必要な医薬品が投薬又は注射されている
患者様に対して行う場合(1 に該当する場合を除く)
380 点
3. 1 及び 2 以外の患者様に対して行う場合
325 点
②薬毒物中毒分析および解析
薬物中毒分析に関しましては、先に
など逐次医師へ情報を提供できるよう
も述べましたように、薬剤部では当セ
になりました。薬物分析が日常の医療
ンターからの要望により薬物中毒時に
に最大限機能するように、日本中毒学
おける起因薬物の分析を昭和 60 年か
会「分析委員会」では、
「薬毒物分析
ら開始しました。基本的な流れは初療
の指針に関する提言」 3)として 15 種
室で医師または薬剤師が尿試料をトラ
類の薬毒物の分析を推奨しています。
イエージにて起因薬物の 1 次スクリー
■ 図8 日本中毒学会「分析のあり方委員会」が提言した15品目と当院の状況
検査項目
定性検査
定量検査
ベンゾジアゼピン系薬物
○
○
3・4環系抗うつ剤
○
○
バルビツール系薬物
○
○
この 15 種類の薬毒物を分析可能にで
アセトアミノフェン
○
○
ニングを行います。その後、薬剤部に
きるよう、また、精度向上のため分析
サリチル酸
○
○
て分析を行い、推定薬物の定量が可
方法等も検討をしています(図 8)
。ま
テオフィリン
○
○
能である場合は原則として定量分析ま
た、厚生労働科学研究費補助金にて
ブロムワレリル尿素
○
○
で実施することとしています。病棟業
年 1 回行われる、薬毒物検査の精度
有機リン剤(MEP)
○
○
務を開始する前の薬物中毒分析件数
管理にも積極的に参加し薬物検査レベ
は平 成 13、14、15 年 度はそれぞれ
ルの維持・向上を目指しています。
カルバメート剤
○
○
ヒ素
○
△
7、21、14 件であったのに対し、開始
以下に、市販の総合感冒薬を大量
後の平成 16、17、18 年度はそれぞれ
服用した患者様の症例を示します。症
メタンフェタミン(覚醒剤)
○
×
57、45、51 件と増加しました。また、
例(
2 図 9)
は26 歳女性。
アセトアミノフェ
パラコート・ジクワット
○
○
薬剤師が救命救急センターで業務する
ンを含む総合感冒薬 180 錠を内服し、
メタノール
×
×
ことにより、推定服用薬や服用量およ
内服約 6 時間後に家族に連れられて
グルホシネート
×
×
び患者様の容態変化などが確認でき、
救急外来を受診しました。服用したと
分析結果にあわせた中毒時の対処法
思われるアセトアミノフェンは約 18gと予
青酸化合物
×
×
■ 図9 症例2 アセトアミノフェン
現病歴
平成 X 年●月▲日午後 7 時アセトアミノフェン を含む総合感冒薬
180 錠を内服。家族につれられて当院救急外来受診。
血中アセトアミノフェン濃度
26 歳 女性 主訴;大量服薬
■ 図10 アセトアミノフェン血中濃度と肝障害の危険性
(μg/mL)
1000
肝障害の危険性が高い
100
10
既往歴
摂食障害にて当院入院歴あり。今までに、リストカット、大量服薬
等自傷行為有り。
4
8
12
16
20
24
Rumack-Mattew nomogram
経過時間(hr)
救急・集中治療、13、867-875、2001 より改変
第 210 号
平成 20 年 5 月 20 日
想された為、医師に解毒薬である N-
アミノフェン濃度と肝障害との関係 4)よ
アセチルシステインの内服およびアセト
りN- アセチルシステイン内服の継続を
アミノフェン血中濃度の確認を依頼しま
提案いたしました。経過としましては入
した。分析の結果、服用約 6 時間後
院中のストレスに耐えきれず 3 日後に退
および 12 時間後の血中濃度はそれぞ
院されましたが、1 週間後の外来受診
れ 63μg/mL および 53μg/mLでした。
時の検査は特に問題はありませんでした
内服後経過時間よりみた血漿中アセト
■ 図11 症例2の経過
アセトアミノフェン血中濃度測定
内服 6 時間後;
内服 12 時間後;
半減期:
63μg/mL
53μg/mL
約 24hr(治療量では、1∼2 時間)
アセチルシステイン内服継続
入院のストレスがたまりつつあることを考慮し、第 3 病日退院。
外来にて肝機能フォローとなった。
(図 10・図 11)
。
③中心静脈栄養の調製
(compromised host) が多く、注射薬
時間は、午前中に調製する TPN は当
開始予定分と、調製回数を少なくとも1
は中心静脈栄養を行う場合が少なくあ
の混合を薬剤師が無菌的に行うことで、
日 12:00 ∼ 23:59 開始予定分、午後に
日 2 回とすることにより、ある程度変更
りません。TPN の調製は患者様の容
より品質の高い注射を提供できると考え
調 製 する TPN は翌日 00:00 ∼ 11:59
に対応できるようにしました(図 12)
。
態の変化により内容が変更されること
ます。また、TPN 調製開始の 1 番の
が多いため、他の病棟とは異なり、薬
理由として、TPN 調製は看護師から
剤部内での一括した調製が困難であ
の要望も強くあったこともあり、病棟業
り、病棟業務を開始する前は看護師が
務開始にあたり当センター内にクリーン
当センター内で調製していました。しか
ベンチを設置し、薬剤師が可能な限り
し、救命救急センターでは易感染宿主
病棟内で調製することとしました。調製
救命救急センターでは、入室当初
■ 図12 中心静脈栄養の調製
・薬剤師が可能な限り、クリーンベンチにて無菌的に調製する。
・変更を考慮にいれ調製する。
午前調製:当日 12:00∼23:59 開始予定
午後調製:翌日 00:00∼11:59 開始予定
④医薬品管理
当センターにおける在庫医薬品数
しています。また、麻薬として塩酸モ
使用する毎に管理簿に使用記録を記
は平成 19 年度注射薬 255 品目、外
ルヒネ注および塩酸ペチジン、酒石酸
載しており、麻薬と同様毎日確認をし
用薬 10 品目、内服薬 6 品目としてい
レバロルファン注が定数管理されてい
■ 図13 医薬品管理
ました。医薬品管理として有効期限
ますので毎日確認を行っています。さ
の確認は月 1 回以上行い、期限切れ
らに、筋弛緩薬の臭化パンクロニウム
に近い薬剤は汎用される他病棟や注
と臭 化ベクロニウム、向 精 神 薬 第 1
射の個人セット用にまわすなど、極力
種、第 2 種のペンタゾシン、塩酸ブプ
期限切れでの廃棄を少なくする努力を
レノルフィンおよびフルニトラゼパムは
ています(図 13)
。
・医薬品在庫管理:病棟常備薬の定数管理
・麻薬管理:麻薬の確認
・筋弛緩薬を含む管理簿記載薬品の管理
臭化パンクロニウム、臭化ベクロニウム
筋弛緩薬:
: ペンタゾシン、塩酸ブプレノルフィン、フルニトラゼパム
向精神薬(第1、2種)
まとめ
救命救急センターは、多くの職種が
剤師としての能力を十分に発揮できる
が望まれていましたが、平成 20 年度
か分からない、時間がない、人がい
横断的に働いており、チーム医療が必
場所です。平成 19 年、厚生労働省
診療報酬改定において、先にも述べま
ないなどの意見をよく聞くが、短時間で
須の部署の 1 つです。医師が患者様
が集中治療室(ICU)における安全
したようにハイリスク薬等に関する薬学
も救急医療の現場で業務をし、医師、
の診断および治療に専念し、安全で
管理指針 7)において、薬剤師が ICU
的管理の評価等において保険点数化
看護師と接することで何を必要とされて
適切な治療を提供するためには、各専
内に常時勤務することが望ましいと明
が認められるようになり、救命救急セン
いるのかが理解できる。と述べられて
門職が自分に課せられた役割を果たす
記されるようになり、救急医療の現場に
ターにおける薬剤師配置施設は増加し
います。今回の診療報酬改訂からも救
ことが重要であると思われます 5)。救命
おいて薬剤師の必要性が徐々に認め
てくるものと思われます。救命救急セン
急医療において薬剤の適正使用を薬
救急センターでの薬剤師の常勤化は薬
られています。さらに、薬剤師の配置
ターで活躍されているある先生が、救
剤師が責任をもって行うことが求められ
剤の副作用を減少することにおいても
施設を増やすためには、病棟活動によ
命救急センターにおける薬剤師業務
ているもので、今後の動向に期待した
非常に有用であるとの報告もあり 6)、薬
る保険点数化や施設基準などの改定
は、未知数である。何を行ったらよい
いと思います。
参考文献
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2007年12月20日アクセス
平成 20 年 5 月 20 日
第 210 号
6月
処方箋様式変更について
安全管理の視点から見た薬剤管理
磯部総一郎(厚労省)
肝癌診療ガイドラインの現状と問題点
16
30
23
神谷 晃(山口大)
インターフェロン療法の副作用とそ
吉尾 隆(東邦大)
薬剤性肺障害
全国薬局ホットラインとサプリメント
全国薬局ホットラインとサプリメント
情報
情報
情報
情報
∼オダギリ薬局(神奈川県大和市)②
∼高階誠心堂薬局(熊本県人吉市)①
∼高階誠心堂薬局(熊本県人吉市)②
17
24
堀 美智子(医薬情報研/SIC)
日
堀 美智子(医薬情報研/SIC)
前立腺癌の有効かつ低侵襲治療に
日
10
堀 美智子(医薬情報研/SIC)
ステロイドの眼科的副作用
横川 真紀(高知大)
未定(未定)
横井則行(京府医大)
全国薬局ホットラインとサプリメント
日
3
久保 惠嗣(信州大)
学薬アワー
∼オダギリ薬局(神奈川県大和市)①
日
火
薬剤師・登録販売者のための
総合サプリメント情報
池田健次(虎の門H)
ドライアイ
津金昌一郎(国立がんC)
佐藤滋樹(名市大)
全国薬局ホットラインとサプリメント
泉 並木(武蔵野赤十字H)
インフリキシマブ(ミレケード/ 抗
TFN-α抗体)
による薬疹
國土典宏(東大)
食習慣とがん
日
9
結核治療におけるDOTS
堀 美智子(医薬情報研/SIC)
認知症による問題行動に対する対応
毛虫皮膚炎に対する対策
ついて
内田豊昭(東海大八王子H)
坂本泰二(鹿児島大)
21:00 心臓財団虚血性心疾患セミナー
[トーアエイヨー]
15 分
20:25 ツムラ・メディカル・トゥデイ
[ツムラ]
15 分
天野直二(信州大)
夏秋 優(兵庫医大)
動脈硬化診療
動脈硬化診療
動脈硬化診療
日本人における薬剤溶出ステントの
⑪禁煙と生活習慣指導
⑫禁煙と薬物療法
⑬血管新生療法
成績
寺本民生(帝京大)
鈴木將玄(筑波メディカルC)
領域別入門漢方医学シリーズ∼消
化器領域と漢方医学 胃食道逆流
化器領域と漢方医学 機能性ディ
化器領域と漢方医学 腹痛、腹部膨
症と漢方
スペプシアと漢方
満感と漢方
領域別入門漢方医学シリーズ∼消
化器領域と漢方医学 消化器にお
ける漢方医学の捉え方
新井 信(東海大)
新井 信(東海大)
新井 信(東海大)
新井 信(東海大)
小児期体重と成人期虚血性心疾患
脳卒中に対する高血圧治療
一色高明(帝京大)
小室一成(千葉大)
領域別入門漢方医学シリーズ∼消
領域別入門漢方医学シリーズ∼消
未定
肺癌の治療成績は向上したのか
のリスク
医学講座
北 潔(北整形外科)
高木泰孝(市立砺波総合H)
山科 章(東医大)
杉本耕一(順天堂大)
石川俊次(ソニー)
山内俊一(帝京大)
日薬アワー「医療安全について」
土屋文人(日薬)
第59回日本皮膚科学会西部支部学術大会②
会長講演より
「学会を振り返って」
折井孝男(NTT東日本関東H)
嗅覚障害への新しい対応
19
ips細胞と再生医療
26
三輪高喜(金沢大)
福田恵一(慶大)
第59回日本皮膚科学会西部支部学術大会③
第59回日本皮膚科学会西部支部学術大会④
ミニレクチャー1
「Th2サイトカイン
ミニレクチャー6
「毛包幹細胞と皮
ミニレクチャー12
「酸化ストレスと
によるバリア機能修復障害」
膚付属器腫瘍」
皮膚」
片桐一元(大分大)
三砂範幸(佐賀大)
小川文秀(長崎大)
医療安全調査委員会(仮称)での論点と争点①
医療安全調査委員会(仮称)での論点と争点②
医療安全調査委員会(仮称)での論点と争点③
医療安全調査委員会(仮称)での論点と争点④
佐原康之(厚労省)/加藤良夫(栄法律事
佐原康之(厚労省)/加藤良夫(栄法律事
佐原康之(厚労省)/加藤良夫(栄法律事
佐原康之(厚労省)/加藤良夫(栄法律事
務所)/嘉山孝正(山形大)/寺野 彰
務所)/嘉山孝正(山形大)/寺野 彰
務所)/嘉山孝正(山形大)/寺野 彰
務所)/嘉山孝正(山形大)/寺野 彰
(獨協医大)/成島香里(医療ライター)
(獨協医大)/成島香里(医療ライター)
(獨協医大)/成島香里(医療ライター)
(獨協医大)/成島香里(医療ライター)
多発性脳梗塞
疼痛性障害
β遮断剤の使い方
認知療法
岩本俊彦(東医大)
保坂 隆(東海大)
嶽山陽一(昭和大藤が丘H)
山内 俊一(帝京大)
林田康男(順天堂大)
石川俊次(ソニー)
細菌による動物と人の共通感染症
マラリアの迅速診断キット
澤田拓士(日獣生科大)
“脳卒中診療の進歩”
シリーズ(6)
くも膜下出血の診断と治療
急性期脳梗塞の管理
20
加藤晴一(東北大)27
“脳卒中診療の進歩”
シリーズ(7)
急性期脳梗塞の血栓溶解療法
畑 隆志(静岡市清水H)
塩川芳昭(杏林大)
長尾毅彦(荏原H)
齊藤郁夫(慶大保健管理C)
齊藤郁夫(慶大保健管理C)
大西 真(東大)
ラジオ NIKKEI の医学番組をお聞きもらしの方には、 お申し込み
「医学番組」収録 CD を実費にてお届けいたします。 お問い合せ
山内俊一(帝京大)
深在性トリコスポロン症
日
“脳卒中診療の進歩”
シリーズ(5)
大野 裕(慶大保健管理C)
小児ヘリコバクター・ピロリ感染
日
13
狩野繁之
(国立国際医療C)
日
日
金
6
最近の話題(12)
日
大仁田賢(長崎大H)
第59回日本皮膚科学会西部支部学術大会①
瀬戸山充(宮崎大)
21:45 ドクター・サロン
[キョーリン製薬]
15 分
イルベサルタン
日
日
川合謙介(東大)
医薬品・医療機器等安全性情報
梅村 敏(横浜市大)
旅行者の下痢への対応
12
日
木
5
未定(厚労省)
アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬
原田 尚(獨協医大)
渡邉裕司(浜松医大)
林田康男(順天堂大)
最近の副作用情報から
未定(厚労省)
話題の新薬2008−(1)
てんかんの外科治療
佐藤 弘(東女医大東洋医研)
厚生労働省アワー
シルデナフィル
21:15 総合メディカルマネジメント
[総合メディカル]
20 分
漢方薬の食前服用
林田康男(順天堂大)
後藤葉一(国立循環器病C)
山田朱織(16号整形外科)
血球貧食症候群
泉 並木(武蔵野赤十字H)
肺動脈性肺高血圧治療薬
21:00 マルホ皮膚科セミナー
[マルホ]
15 分
整形外科医に役立つ睡眠と枕の知識
佐藤啓二(愛知医大)
高齢者の高血圧
心臓リハビリテーションの効果
20:25 スズケン DI アワー
[スズケン]
15 分
25
呉屋朝幸(杏林大)
第41回日本整形外科学会
骨・軟部腫瘍学術集会開催にあたって
B型慢性肝炎
20:10 薬学の時間
[第一三共]
15 分
21:45 杏林シンポジア
[キョーリン製薬]
15 分
18
髄腔内バクロフェン療法
21:45 ドクター・サロン
[キョーリン製薬]
15 分
21:15 アボット感染症アワー
[アボットジャパン]
15 分
児玉浩子(帝京大)
運動器不安定症
日
21:00 マルホ整形外科セミナー
[マルホ]
15 分
20:40 医学講座
[第一三共]
20 分
日
11
棚橋紀夫(埼玉医大)
脊髄疾患由来の重度痙縮に対する
日
4
日
水
20 分
C型肝炎治療の新たな潮流
の対策
20:40 医学講座
[塩野義製薬]
20 分
20:40
精神科専門薬剤師
日
原 祐輔(金沢大H)
高齢者の嚥下障害
20:10 薬学の時間
[塩野義製薬]
15 分
[ コサナ ]
閲覧可
ホームページでオンデマンド放送あり
放送番組と企画団体 医学講座/日本医師会、病薬アワー/日本病院薬剤
師会、薬学の時間/日本薬剤師会、歯科医の時間/日本歯科医師会、虚血
性心疾患セミナー/日本心臓財団、専門薬剤師講座/日本病院薬剤師会
治験の統一書式について
日
指導
日
2
才藤栄一(藤田保衛大)
15 分
[提供社名]テキストで内容を
指導 手術前患者に行う薬剤管理
21:15 医学の焦点
15 分 [ミノファーゲン製薬]
20:25
放送番組名
○分
主な聴取対象
=薬剤師 =歯科医師
第一放送 3.925MHz 6.055MHz 9.595MHz
日
月
20:10 病薬アワー
[万有製薬]
15 分
番組表
放送時間
放送時間の
長さ
※番組のテーマ・出演者などが都合に
より変更になる場合があります。ご
時松一成(大分大) 了承ください。
“脳卒中診療の進歩”
シリーズ(8)
■最新の番組は、ラジオNIKKEI医学情
報局HPのWEB版番組表をご参照く
寺山靖夫(岩手医大) ださい。
慢性期の二次予防―血圧
齊藤郁夫(慶大保健管理C)
〒107-8373 東京都港区赤坂 1-9-15 TEL.03-3583-8436(代)FAX.03-3582-1944 株式会社日経ラジオ社 医学 CD 係まで
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