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期末試験問題解答と講評

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期末試験問題解答と講評
CA07s-t2r
1
微分積分学 I 期末試験解答と講評
2007 年 9 月 1 日
浪川 幸彦
問題1
次の関数を積分せよ(原始関数を求めよ)(積分定数は省略してよい)
:
1) √
1
√
x+1+ x
5)xn log x
;2)
(n ∈ Z)
ex − e−x
ex + e−x
;6)
;3)tan x
;4)
1
;
sin x
1
x3 + 1
解
Z
Z
Z
√
√
√
√
dx
2
2
x + 1dx −
xdx = (x + 1)3/2 − x3/2
√ = ( x + 1 − x)dx =
3
3
x+1+ x
Z x
Z
e − e−x
(ex + e−x )0
2)
dx
=
dx = log(ex + e−x )
ex + e−x
ex + e−x
Z
Z
Z
(cos x)0
sin x
dx =
dx = − log |cos x|
3) tan xdx =
cos x
cos x
x
2t
2dt
4)t = tan とおけば,sin x =
, dx =
だから
2
2
1+t
1 + t2
Z
Z
Z
dx
1 + t2 2dt
dt
x =
=
=
log
|t|
=
log
tan
sin x
2t 1 + t2
t
2
Z
1) √
5)n 6= −1 とすれば
Z
n = −1 とすれば
6)
n
Z x log x dx =
1
xn+1
n+1
0
log x dx
Z
1
1
n+1
x
log x −
xn dx
=
n+1
n+1
1
xn+1
=
xn+1 log x −
n+1
(n + 1)2
1
log x(log x)0 dx = (log x)2
2
1
A
Bx + C
1
=
=
+ 2
3
2
x +1
(x + 1)(x − x + 1)
x+1 x −x+1
Z
log x
dx =
x
Z
CA07s-t2r
2
1
2
1
, B = − , C = だから
3
3
3
Z
Z
Z
dx
dx
x−2
1
1
=
−
dx
3
2
x +1
3
x+1 3
x −x+1
Z
(2x − 1) − 3
1
1
log |x + 1| −
dx
=
3
6
x2 − x + 1
Z
1
1
1
2
=
log |x + 1| − log(x − x + 1) +
3
6
2
これを未定係数法で解けば,A =
√
3
1
t=x−
2
2
dx
2
3
1
+
x−
2
4
!
2x − 1
√
で置換積分
3
1
1
1
2x − 1
log |x + 1| − log(x2 − x + 1) + √ arctan √
=
3
6
3
3
or
t=
講評
[1)ー4)各 5 点,5)6)各 10 点,計 40 点満点,平均 30.4 点]
不定積分の基本問題。これは最低限できるようになっておいてほしい。
置換積分あるいは部分積分をどのように行ったのかが明示されていない場合は減点した。
いつも言っているように,計算,証明は読む人への説明なのだから,根拠が分かるようにし
ておく必要がある。
5)で n = −1 の場合をほとんどの人が考慮していなかったのには驚いた。皆さんが大学
受験でこのようなミスを犯すことはまずなかったのではないだろうか。
問題2
次の定積分の値を求めよ:
Z π/2
Z
4
1)
sin xdx ; 2)
0
π/2
cos5 xdx
0
CA07s-t2r
3
解
1)n ≥ 2 とすると
Z
π/2
Z
π/2
sinn−1 x(cos x)0 dx
0
0
Z π/2
π/2
n−1
= − sin
x cos x 0 + (n − 1)
sinn−2 x cos2 xdx
0
Z π/2
sinn−2 x(1 − sin2 x)dx
= (n − 1)
0
Z π/2
Z π/2
n−2
= (n − 1)
sin
xdx − (n − 1)
sinn xdx
In =
n
sin xdx = −
0
0
= (n − 1)In−2 − (n − 1)In
In =
∴
かつ
I0 =
Z
π/2
dx = [x]π/2
=
0
0
π
2
だから
3 1
3
× I0 = π
4 2
16
I4 =
2)t =
π
− x とおけば
2
Z π/2
0
かつ
I1 =
Z
π/2
n−1
In−2
n
n
cos xdx = −
Z
0
n
sin tdt =
π/2
sin xdx = [− cos x]π/2
=1
0
Z
π/2
sinn tdt = In
0
だから
0
I5 =
8
4 2
× I1 =
5 3
15
[別解]もちろん 2 回部分積分を繰り返せば答に至る。それでもよい。
[別解]また次数が低いので,いろいろの三角法の公式を用いて解くことも可能である。例
えば
1)倍角 (半角) の公式を繰り返し用いて
sin4 x =
3 1
1
− cos 2x + cos 4x
8 2
8
として,これを積分;
1)解のように一度部分積分して I4 =
Z
π/2
sin2 x cos2 xdx を得,積と和の公式を用いる;
0
2)cos5 x = (cos2 x)2 cos x = (1 − sin2 x)2 (sin x)0 として置換積分し,多項式の積分に帰着等
CA07s-t2r
4
講評
[各 5 点,計 10 点満点,平均 8.0 点]
これは定積分の基本問題で,やはり必ずできてほしい。実際出来はよかった。
2)は確かに別解の方が自然であろう。しかし1)も別解流が多かった。三角法の公式を
いろいろ応用する方が皆さんにはなじみがあるということかもしれない。
なお上の証明から n が一般の場合の式が得られる。証明なしにこの一般式から直接答のみ
書いた者にはほとんど点を与えていない。
問題3
次の公式を示せ:
Z
1
−1
(1 − x2 )n dx =
22n+1 (n!)2
(2n + 1)!
解
Z
n = 0 のときは,
1
dx = 2 で明らかに成り立つ。
−1
n ≥ 1 とすると
Z 1
Z
2 n
(1 − x ) dx =
−1
1
−1
x0 (1 − x2 )n dx
Z 1
2 n 1
= x(1 − x ) −1 + 2n
x2 (1 − x2 )n−1 dx
−1
Z 1
Z 1
2
2 n−1
= −2n
(1 − x )(1 − x ) dx + 2n
(1 − x2 )n−1 dx
−1
∴
∴
Z
(2n + 1)
Z
1
−1
−1
1
2 n
−1
(1 − x ) dx = 2n
Z
1
−1
(1 − x2 )n−1 dx
2n − 2
2
2n
·
··· ·2
2n + 1 2n − 1
3
2n
2n 2n − 2 2n − 2
2 2
=
·
·
·
··· · ·2
2n + 1 2n 2n − 1 2n − 2
3 2
22n+1 (n!)2
=
(2n + 1)!
(1 − x2 )n dx =
[別解1] x = sin t とおけば,dx = cos x dt より
Z
1
2 n
−1
(1 − x ) dx =
Z
π/2
cos
−π/2
2n+1
2n
x dx =
2n + 1
Z
π/2
−π/2
cos2n−1 x dx = · · · (問 2 と同様)
CA07s-t2r
[別解 2]
Z 1
−1
5
2 n
(1 − x ) dx =
=
=
=
=
=
=
Z
1
−1
x0 (1 − x2 )n dx
x(1 −
1
x2 )n −1
+ 2n
1
Z
1
−1
x2 (1 − x2 )n−1 dx
Z
22 n(n − 1) 1 4
2n 3
2 n−1
+
x (1 − x )
x (1 − x2 )n−2 dx
3
3
−1
−1
···
Z 1
2n n(n − 1) · · · 1
x2n dx
1 · 3 · 5 · · · (2n − 1) −1
2n+1 1
2n n!(2 · 4 · · · 2n)
x
1 · 2 · 3 · 4 · 5 · · · (2n − 1)(2n) 2n + 1 −1
22n (n!)2
2
22n+1 (n!)2
·
=
(2n)!
2n + 1
(2n + 1)!
[別解 3]
Z 1
Z 1
2 n
(1 + x)n (1 − x)n dx
(1 − x ) dx =
−1
−1
1
Z 1
n
=
+
(1 + x)n+1 (1 − x)n−1 dx
n
+
1
−1
−1
Z 1
n
n−1
1
= ··· =
·
···
(1 + x)2n dx
n+1 n+2
2n −1
1
n
n−1
1 (1 + x)2n+1
=
·
···
n+1 n+2
2n
2n + 1
−1
=
1
(1 + x)n+1 (1 − x)n
n+1
(n!)2 22n+1
22n+1 (n!)2
·
=
(2n)! 2n + 1
(2n + 1)!
講評
[10 点満点,平均 7.9 点]
これも定積分の基本問題。出来もよかった。最後の答の処理にちょっとした工夫が要るが,
皆さんにはお手の物であろう。
基本的な公式には,ここで見るように様々の解法がある。
問題4
y = f (x) が [−1, 1] = {x ∈ R; −1 ≤ x ≤ 1} で連続な奇関数であるとき,
Z 1
f (x)dx = 0
−1
CA07s-t2r
6
であることを,定積分の基本性質を用いて証明せよ。
解
奇関数であるとは f (−x) = −f (x) が成り立つことであるから
Z 1
Z 1
f (−x)dx
f (x)dx = −
I=
−1
−1
−1
=
Z
f (y)dy
1
= −
Z
∴
[別解]F (x) =
Z
x
(y = −x, dy = −dx)
1
−1
f (y)dy = −I
I=0
f (t)dt とおけば,
0
F 0 (x) − (F (−x))0 = f (x) + f (−x) = 0.
したがって F (x) − F (−x) = C(定数)であるが,x = 0 とおけば, C = 0 すなわち F (x) は
偶関数であることが分かる。したがって
Z 1
f (x) = [F (x)]1−1 = 0
−1
講評
[10 点満点,平均 5.6 点]
積分の基本中の基本の性質と奇関数の定義を順に使いさえすればできる問題。解答した多
くの人はそのようにして正解に達していたが,無解答がかなりあって平均点が低くなった。
皆さんは,公式を上手く使って計算することは得意だが,定義にさかのぼってそれを用い
て証明する,というのは意外に不得手のようである。
一部どの条件を使ったのか不明確な答案があった。また「グラフから明らか」とした答案
の気持ちは分かるが,問題の趣旨からしてこれは不正解。明らかに見えることをどう(数学)
言語化するかが大切なのである。別解で,証明なしに F (x) は偶関数とした答案が幾つかあっ
たが,これは証明を要する。実際逆に偶関数の積分は必ずしも奇関数にならない。0 起点の
不定積分ならば奇関数になる。
問題5
次の広義積分の値を求めよ:
Z 1
Z ∞
2
1) (log x) dx ;2)
0
0
dx
ex + e−x
CA07s-t2r
7
解
1)
Z
2
(log x) dx =
Z
2
0
2
x (log x) dx = x(log x) −
Z
2
= x(log x) − 2 log xdx
Z
x
2 log x
x
dx
= x(log x)2 − 2x log x + 2x (+C)
したがって
Z
1
1
x(log x)2 − 2x log x + 2x t
(log x)2 dx =
t
= 2 − t(log t)2 − 2t log t + 2t
ロピタルの定理を繰り返し用いることにより
1/t
log t
= lim
= lim (−t) = 0
t→+0 −1/t2
t→+0
t→+0 1/t
2
2(log t)(1/t)
(log t)
= lim
= lim (−2t log t) = 0
= lim
t→+0
t→+0
t→+0
1/t
−1/t2
Z 1
(log x)2 dx = 2.
∴
lim t log t =
t→+0
lim t(log t)2
t→+0
lim
0
2)
Z
ex dx
(t = ex , dt = ex dx)
2x
e +1
Z
dt
= arctan t
=
2
t +1
dx
=
ex + e−x
Z
この変数変換で x : 0 → ∞ のとき t : 1 → ∞ であり,かつ lim arctan t =
t→∞
意すれば,
Z
∞
0
dx
=
x
e + e−x
Z
∞
1
t2
π
であることに注
2
dt
π π
π
= [arctan t]∞
− = .
1 =
+1
2
4
4
講評
[各 5 点,計 10 点満点,平均 6.6 点]
広義積分の問題。ふつうの積分に比べ皆さんの知識の定着がやや不十分。
極限操作が明らかでなく,ふつうの積分のように書いている者には答が合っていても点を
与えていない。1)では本来「ロピタルの定理」等を使って limt→+0 t log t = 0 等を示すの
log t
が望ましいが, lim α = 0 を講義でやっているので,証明していなくても大目に見た。
t→∞ t
2)で変数変換した結果積分の始まりが 1 になっているのに,もとの 0 のままとしたため
の間違いが複数あった。
CA07s-t2r
8
問題6
1)λ > 0 に対し,広義積分の定義に従って,次の積分を求めよ(発散する場合もある)
:
Z ∞
Z 1
dx
dx
; b)
a)
λ
xλ
1
0 x
2)λ > 0 に対し,上の結果を用いて,次の広義積分の収束発散を調べよ:
Z ∞
dx
λ
x + x1/λ
0
解
1)a)0 < λ < 1 のとき
lim
ε→+0
λ = 1 のとき
lim
ε→+0
λ > 1 のとき
lim
ε→+0
Z
1
ε
Z
1
Z
1
ε
1 − ε1−λ
1
dx
=
lim
=
λ
ε→+0 1 − λ
x
1−λ
dx
= lim [log x]1ε = lim (− log ε) = ∞
ε→+0
ε→+0
x
ε
tλ−1 − 1
dx
1 − ε1−λ
=
lim
=∞
=
lim
t→∞ λ − 1
xλ ε→+0 1 − λ
b)0 < λ < 1 のとき
lim
t→∞
λ = 1 のとき
lim
t→∞
λ > 1 のとき
Z
t
1
lim
t→∞
λ
1/λ
Z
t
1
1
(t = )
ε
t1−λ − 1
dx
=
lim
=∞
xλ t→∞ 1 − λ
dx
= lim [log x]∞
1 = lim log t = ∞
t→∞
t→∞
x
Z
t
1
t1−λ − 1
1
dx
=
lim
=
xλ t→∞ 1 − λ
λ−1
2)0 < λ < 1 とする。x , x > 0 に注意すれば,ε > 0 に対し
Z 1
Z 1
dx
dx
1
0<
<
<
(1)より)
λ
1/λ
λ
1−λ
ε x +x
ε x
積分値は ε が減少するにつれて単調増加するので,有界であることと併せて,収束して極限
が存在する。一方 t > 1 に対し
Z t
Z t
1
λ
dx
dx
<
<
=
(1)より)
0<
λ
1/λ
1/λ
(1/λ) − 1
1−λ
1 x
1 x +x
CA07s-t2r
9
積分値は t が増大するにつれて単調増加するので,有界であることと併せて,収束して極限
が存在する。したがって所与の広義積分は収束して値を持つ。
λ = 1 のとき
Z ∞
dx
= [log x]∞
積分 =
0 = ∞ (1)より)
x
0
λ > 1 のときは, λ0 = 1/λ とすれば 0 < λ0 < 1 で,しかも
xλ
1
1
= λ0
1/λ
+x
x + x1/λ0
であるから,上の場合に帰着して,これは収束する。
したがって答は λ = 1 で発散,λ 6= 1 で収束。
講評
[1)a)b)各 6 点,2)8 点,計 20 点満点,平均 6.9 点]
1)は広義積分の基本であるが,よい出来とは言えなかった。結果に対称性があることを
講義で強調しておいたのに,解答がそうなっていない者がかなりあったのは残念。特に a)で
λ > 1 のとき ε1−λ の極限を 0 とした者が少なからずあった。
2)の問題の正解者は誰もなかった(λ = 1 の場合の発散は少なからずできていたが,そ
の他の場合も発散するという解答ばかりだった)。いささか物足りなさを感じる。収束性は,
解答を読まれればすぐに理解されるであろう,簡単なアイデア(有界なもので上から評価す
るというのは解析の基本)で示せる。このアイデアを使おうとする解答が一人だけあったが
正解には至っていなかった。
総評
[120 点満点,平均点 70.8 点(ボーナス問題を除くと 65.3 点)]
期末試験は皆さんの努力の甲斐あって,全体としては悪くない出来でした。後半の講義内
容が高等学校での数学とあまり違いが大きくなかったこともありましょうか。
今期の講義は皆さんに対しショックを与えるものであったと思います。しかしその意図が
十分に伝わらず,単に分からない講義だったで終わってしまうことを恐れます。ここで知っ
てほしいのは,皆さんが大学での学習の仕方を根本的に変える必要があるということです。
今までの皆さんの学習は,引かれた路線の上をひたすら走ってくればよいものでした。でも
大学での学びで一番大切なのは,自分で学習するということです。例えば講義内容を理解し
定着させる,いわゆる「練習問題」「演習」は本来自分で演習書を求め,解いていくべきも
のです。ましてや「正解」を求めるというのは,大学の学び方ではありません。皆さんはこ
れから「正解」があるかどうかも分からない問題に立ち向かわなければならないのです。自
分の出した答が「正しいかどうか」まで含めて自分で判断できるようにならなければなりま
せん。しかし自分で考えて,なおかつ分からないとき,判断できないときには,遠慮なく教
員に質問すればよいのです。「模範解答」が配られるのを待つという受け身の態度ではいけ
ません。
CA07s-t2r
10
もう一つ,数学に関して大事なのは,分からなくなったら定義に立ち返ること(そして簡
単な具体例で確かめてみること),公式は覚えるものではなく,どうしてそれが成立するの
か,何に使えるのか(つまり他の命題との関連)を理解することの二つです。これらは「受
験競争」のただ中を通ってきた皆さんにともすれば不足しがちなことのように見えます。
そうした皆さんの状況が今回の試験でも反映しているように思われます。
もう一つ大変残念であったのは,何人かの人がカンニングペーパーを持ち込んだことです。
これはとても恥ずべき行いであると共に,それは実行した人にとって何の得にもならないこ
とを是非知って欲しいと思います。講義はそこから何か自分の教養・知識を豊かにするもの
を学び取ることこそが大切なので,単位を取るかどうかは全く副次的な問題です。そもそも
この講義は皆さんにとって必修ではありません。単位を落としたら,別の講義で取ればいい
のです。私にはカンニングまでして単位にこだわる方の気持ちが全く理解できません。
注意
答案の返却を希望する者は,10 月後期が始まってから,研究室まで取りに来て下さい。なる
べくオフィスアワーを利用して。それ以外の場合には事前にアポを取ってください。
メールアドレスは [email protected] です。
後期の私の講義を受講する方には 2 回目の講義の際に返却します。
得点分布
得点
90 点以上
80 点台
70 点台
60 点台
50 点台
50 点未満
人数
13 名
22 名
16 名
18 名
13 名
11 名
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