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アーティスト・インタビュー

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アーティスト・インタビュー
J apanese tex t
2014年 秋/冬号 日本語編
に遭ったりもするが、それでもツアーに出続けるのは「未知
インタビュー
なる挑戦を仲間と一緒にしたいから」。近藤さんが大の旅好
アーティスト・インタビュー
きであり、トラブルをも面白がれる人だという点も大きい。
「そこは、コンドルズのメンバー皆に共通している点だと思
います。もしかしたら海外のお客さんにも、そういう部分が
近藤良平
伝わるのかな。 いろんなことを本気で面白がってる日本人
―交流が生むピュアな瞬間
がいるぞ って (笑)。僕らは芸人でも、ずば抜けて優れたダ
撮影=小澤達也
文=岡 香
ンサーでもないけれど、面白いパフォーマンスをする集団だ
p.071
という自負はあるし、自分たちが面白いと思うことを体を使っ
東京に数多あるダンスカンパニーのなかでも、ひときわ異
て発表することに対する迷いはない。これからもいろんな場
彩を放つ男だけの集団がある。トレードマークは学ラン。洒
所に行きたいですね」
落た映像に続いて、ゆる∼いコントが始まり、キレのあるソ
今秋以降もさまざまな国内公演があり、2015 年2月には
ロダンスやエネルギッシュな群舞に変わったと思ったら、次
南アフリカ共和国での公演も予定している、個性派集団コン
は人形劇と楽器演奏……というように、バラエティと緩急に
ドルズ。熱く胸に響くダンスと笑いで、観る者を元気にする
富んだ、愉快かつ痛快なステージで人気のコンドルズだ。
そのステージを、ぜひ一度ご体験あれ。
その主宰者であり、全作品の構成・映像・振り付けを手
がけているのが、ダンサーで振付家のこの人、近藤良平さん。
大学時代にダンスを始め、1996 年にコンドルズを旗揚げし
た。以来 コンテンポラリーダンス という言葉につきまとう、
高尚で難解そうなイメージを軽く吹き飛ばしながら、新たな
・『日中韓芸術祭 2014』 9 月 4 日 KAAT 神奈川芸術劇場
・NHK エデュケーショナル×新宿文化センター×コンドルズ『コンドル
ズの遊育計画』 10 月 25 日 新宿文化センター大ホール
*コンドルズ彦根公演 10 月 29 日 ひこね市文化プラザ グランドホール
・『ダンスファーム』 1 月 16 日、17 日 東京芸術劇場 プレイハウス
ファンを続々と獲得。2000 年のアメリカ公演を機に、
ヨーロッ
*コンドルズ仙台公演 2015 年 1 月 18 日
パやアジア各国、オーストラリアやイスラエル、中南米でも
・『日本昔ばなしのダンス』 1 月 31 日、2 月 1 日 彩の国さいたま芸術
公演を展開している。
劇場
「初めて N.Y. で海外公演をやったときに、日本から来た男
だけのカンパニーだっていったら 和太鼓やるんですか? っ
*コンドルズ南アフリカツアー 2 月上旬∼中旬 南アフリカ共和国ヨハ
ネスブルクほか *コンドルズ兵庫公演 3 月 1 日 兵庫県立芸術文化センター
て聞かれたんですよ。それで当初は 日本人が皆、和物をやっ
*コンドルズ春の東京公演 3 月 4 日∼ 8 日 東京芸術劇場 プレイハ
てるわけじゃない。東京で普通にダンス的なパフォーマンス
ウス
をやって暮らしている、これがリアルジャパニーズなんです
*コンドルズ熊本公演 3 月 15 日 熊本県立劇場
という気持ちで海外ツアーをやってました。でもいろんな場
所へ行くうちに、単純に人と交流することが面白くなってき
ちゃって。なんの予備知識もない観客と出会ったときに生ま
*印はコンドルズの単独公演です
www.condors.jp
れるすごくピュアな瞬間が、いちばんの醍醐味です」
中央:コンドルズのメンバーは現在 16 人。見た目も中身も様々な個性
その出会いをより楽しむために、公演では現地で拾った
派集団だ。
時事ネタを必ず盛り込む。それが受ければ つかみ はO
右:2013 年のアジアツアーの際に香港にて撮影。
Kだ。たまに全く盛り上がらなかったり、想定外のトラブル
写真= HARU
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Autumn / Winter 2014 Vol. 34[ アーティスト・インタビュー ]
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ので、稽古場に Mac を持ち込んで、リハーサルと並行して
束芋&森下真樹
映像を制作しました」
(束芋)
―運命の2人が仕掛ける型破りな「女子会」
デビュー以来、美術館での大規模な個展など、単独の大
撮影=八田政玄
文=住吉智恵
舞台をいくつも経験してきた束芋にとって、これまでの現場
p.072
は常に彼女を中心に動き、あらゆる場面で自分自身の決断
初めから胸騒ぎのする企画だったことは確かだ。体操服を
がすべてだった。「誰も文句のいえない状況でしたね。それ
まとった部員が美術館や街角に飛び出して踊るダンスカンパ
が今回は個性の強いダンサーやスタッフが口も手も出す現
ニー「まことクラヴ」から独立し、ダンサー・振付家として
場。むしろ私が彼らの意見をまとめる役目もしなければなら
活動が注目される森下真樹。ヴェネチアビエンナーレで日
ない。好き勝手にやってきた自分にとってはチャレンジでし
本館代表も務めた美術作家・束芋。2人のコラボレーショ
た。森下さんには、コントロールしきれない混沌とした現場
ンによるダンス公演『錆からでた実』の東京初演は、女性アー
の空気を、意見をいいやすい環境にもっていく力があるん
ティストたちのぶつかり稽古のようなすさまじい舞台であっ
です。本気で向き合ってみよう、私も成長しなければ、と思
た。美しい毒の花のような束芋の映像世界のなかで、した
いました」
(束芋)
たかな奔放さを身につけた森下と、関西一の暴れん坊・き
京都公演では、特殊な劇場のため、演出自体が舞台空間
たまり、そして今最も取り扱い注意のアンファンテリブル・
に対応して変化する可能性があるという。「3人が大暴れし
川村美紀子という、いびつな 三姉妹 の競演が魅惑的な
たソロのシーンも変わるでしょう。初演から1年、それぞれ
不協和音を奏でた。特に束芋の洗練された舞台美術を目当
いろいろあって、今の自分たちがあるので。客席も使える広
てにやってきたアートファンは、お行儀のよいコラボを期待
い空間なので、きたまりも思いっきり駆け回るはず。川村美
して油断しきっていただけに震え上がっていた。美術界でこ
紀子は確かに武器にも凶器にもなる危険物ですが、初演で
んな荒っぽい「女子会」はかつて見たことがないからだ。
は抑制せず、野放しに見せながら、本番のショッキングなハ
「束芋さんと私が、生年月日や血液型、家族構成、出生地
プニングにも皆が素晴らしい対応で乗りきったという経験が
まで同じだということがわかってから急速に距離が縮まり、
あります。全く同じことはやりません。再演することで作品
この企画が立ち上がりました。同じ星のもとに生まれた以上、
を育てていきたい」
(森下)。
きっと何かしら共通点があるはずだから、あえてゴールを設
京都という町には、古くからある伝統には保守的だが、ア
定せず、ふわりとスタートしたんです」
(森下)
ヴァンギャルドな芸術を容認し、育んできた土壌がある。そ
一方の束芋は、これまでイスラエルのオハッド・ナハリン
れだけに観客の目も肥えているし、厳しいともいわれる。海
(バットシェバ舞踊団)や康本雅子など、それぞれタイプの違
外から訪れる人や長く住みついている外国人も多い。共に
うダンサーや振付家と作品を作ってきた経験がある。
国際舞台での経験も豊富な2人だが、京都公演を前に、日
「森下さんは私とは作品の作り方が全く違うので普通なら一
本人のクリエイターとして意識することはあるのだろうか。
緒にできるタイプではないんです。これまでのコラボではま
「私の場合、最初にダンス公演に参加したのがヨーロッパ
ず私の作品ありきで映像の可能性を伸ばしていただきまし
のダンスカンパニーだったので、欧米のダンサーを基準に
たが、彼女は相手を鏡にして自分自身を確認しながら作る
していたところがありました。彼らはほぼ全員、しっかりとバ
人。一歩進むごとに互いの持っているものを見せながら方
レエの基礎があり、身体能力やスキルにも恵まれています。
向を定めていくやり方をとりました。これは映像のパートだ
なので以前は、日本のコンテンポラリーダンスに違和感や
けでなく、構想から一緒にやらなきゃ絶対だめだとわかった
物足りなさも感じていたんです。ところが、だんだんとヨー
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ロッパの舞踊文化と違う面白さを発見するようになったんで
すね。現代美術も同じです。たとえばデッサン力がなくても
強い表現ができることがあるように、日本のアートにも日常
の動きや感情の反映という独自のアプローチがある。ダンス
の場合も、リズムのとり方一つとっても日本人ならではの面
白さがあります。身体的スキルのその先を観ていただきた
いですね。映像も体の動きを美しく見せる効果を出したい。
イケると思います!」
(束芋) 「東京の初演では、観客の反応は賛否両論で、さまざまな
意見に分かれました。いまだに賞賛の声や辛口の批評が、
あちこちでくすぶり続けているほどです。京都の観客はちょっ
とやそっとでは驚かないでしょうから、前例のない新しいアー
トを作るチャンスだと思っています」
(森下)
古今東西、とことんツボにはまって面白がる人がいれば、
全くわけがわからずポカ∼ンと置いてきぼりにされる人もい
るという、型破りだが間違いなく同時代的な芸術表現が確
かに存在する。彼らのチャレンジは紛れもなく、その先鋭に
ある。
『錆からでた実』
11 月 8 日、9 日
京都芸術劇場 春秋座(京都造形芸術大学内)
京都市左京区北白川瓜生山 2-116
9 月上旬チケット発売予定
お問い合わせ:京都芸術劇場チケットセンター
Tel. 075-791-8240(平日 10:00 ∼ 17:00)
構想:
森下真樹、束芋
振付:
森下真樹
振付補佐:鈴木美奈子
美術:
束芋
出演:
きたまり、川村美紀子、森下真樹
音楽:
粟津裕介
上・右:『錆からでた実』2013 年公演より
写真=塚田洋一
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