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不登校対象キャンプにおける臨床心理士の役割

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不登校対象キャンプにおける臨床心理士の役割
日心第70回大会(2006)
不登校対象キャンプにおける臨床心理士の役割
~キャンプ内からキャンプ外へ広げ、繋げる~
塚本 久仁佳
(釧路短期大学 幼児教育学科)
Key words: 不登校児童生徒 キャンプ 臨床心理士
目 的
長期にわたるキャンプが不登校の児童生徒の状態を改善す
ることが多くの先行研究より明らかになっている。
そうした多くのキャンプの実施スタッフの構成をみると、
野外教育専門家、教育委員会関係者、自然の家などの施設指
導員、大学教員、適応指導教室教員、大学生、大学院生など
が多く、その他、看護師や臨床心理士が関与しているキャン
プもみられる。また、専門家でなくとも、専門教育を受けた
大学院生がカウンセラーとしての役割を担っている場合もあ
る(堀出ら,2004)
。
様々なキャンプが試みられ、スタッフの果たす役割が大き
いにも関わらず、その役割についての研究は非常に少ない。
上原(2003)がスタッフの活動についてさらに研究を深めなけ
ればならないと述べているように、今後のキャンプのあり方
にも関わるスタッフの役割について検討していく必要がある。
本研究ではスタッフの活動の1つとして、臨床心理士の役
割について、発表者が臨床心理士として参加した北海道教育
委 員 会 主 催 キ ャン プ 「 北 のフ ロ ン テ ィア キ ャ ン パス in
Autumn」と「北のフロンティアキャンパス in winter」での役
割について考察したい。
方 法
実 施 時 期 及 び 場 所 :「 北 の フ ロ ン テ ィ ア キ ャ ン パ ス in
Autumn」は平成17年秋に道立青年の家(深川市)及びその
周辺で実施され、
「北のフロンティアキャンパス in Winter」
は平成18年冬に道立森少年自然の家(森町)及びその周辺
で実施された。
実施概要:キャンプの前に 1 泊2日の事前研修を行い、そこ
で参加者(小学5年生から中学3年生の悩みを抱える児童生
徒)が顔を合わせ、事業説明、協力ゲームなどを行う。その
間、臨床心理士による保護者のカウンセリングも平行して行
われる。8泊9日のキャンプでは、班ごとの食事作りや野外
活動、テント泊、職業体験等のプログラムを行う。自由時間
や参加者のみで話し合う時間も設定されている。キャンプ後
の 1 泊2日の事後研修では、思い出作りと別れの集いを行い、
事前研修と同様に、臨床心理士による保護者のカウンセリン
グも同時に行われる。
運営・指導:学生ボランティアの他、教育委員会関係者(指
導員を含む)、保健師、臨床心理士によって構成された。一部
の教育委員会関係者と保健師は交代で参加したが、それ以外
のスタッフは8泊9日すべて参加した。
臨床心理士の役割:保護者及び参加者を対象とした相談業務。
コンサルテーションを行いながら、直接参加者に関わる必要
があるときには関わるようにした。また、活動に参加できな
い参加者がいる場合には、適宜対応を行うようにした。それ
以外は参加者とともに活動に参加し、観察を行った。
結 果
事例1 他専門職との連携:不登校児童生徒の中には軽度発
達障がいを抱える子どもも多い。本キャンプにおいても数名
が軽度発達障がいの診断を受けていた。その中で広汎性発達
障がいの診断を受けているAについて、関わり方などを臨床
心理士(発表者)から保健師に伝えていた。キャンプ中、A
が座ったまま長時間動けなくなっていた時に、保健師がAに
関わりすぐに動けるようになったことがあった。また、キャ
ンプ後、臨床心理士から関係機関を紹介し、作業療法士との
情報交換を行った。
事例2 学校との関わり:選択性緘默と思われる参加者との
関わりにおいて、キャンプ中に実践したことや(活動への参
加よりも安全感を持ってもらうことや筆談での会話など)
、今
後の対応について学校の教員に伝えた。
事例3 保護者との関わり:軽度発達障がいに対する認識が
広まってきたとはいえ、親であればそれを受け入れるのは容
易なことではない。4回にわたるカウンセリングの中で、周
りに追いつく幸せを求めるのではなく、その子なりの幸せを
考えていきたいと保護者自身が子どもの進路について考えて
いく過程を支援した。
考 察
臨床心理士がキャンプに参加し、その専門性をどのような
形で発揮することが効果的なのか、上記の3つの事例より考
察したい。まず、事例1のような他職種へのコンサルテーシ
ョンやケース会議を随時行い、お互いの立場で情報交換する
ことにより、関わり方の方向性を確認することや、変容して
いく参加者に合わせた対応を考えることができた。事例3の
ような保護者対象のカウンセリングにおいても、参加者の生
活の変化を目のあたりにしながら行うことができるため、保
護者の気づかない点にも触れることが可能であった。
コンサルテーションや保護者へのカウンセリングなど、内
容は相談機関で行うことと同様であっても、対象者の生活と
変化を目の前にしながら柔軟に対応できるため、キャンプの
場において専門的な活動を行うことは効果的であると考えら
れる。
また、医療機関や学校との連携はキャンプでの活動を実際
の生活にも生かすことができるために必要不可欠なことであ
り、そのために専門的な視点からの報告を伝えること、また
は情報交換をすることはキャンプをより有効なものにすると
考えられる。キャンプはキャンプ内のみの変化に終わっては
効果がない。非日常的なキャンプ内での関わりを日常的なキ
ャンプ外の世界へと広げるために、より専門的な関わりがで
きると良いであろう。臨床心理士のみならず、様々なスタッ
フが連携してキャンプを効果的に進めていくことが、参加者
を大きく変容させていくのではないかと考えられる。教育や
野外教育の専門家と連携し、臨床心理士の最大の役割はキャ
ンプ内の活動をキャンプ外に広げ、繋げていくことではない
だろうか。今回は臨床心理士の役割を模索しながらの活動で
あったため、今後、各スタッフの役割やスタッフ間の連携に
ついて、さらに検討をしていくことが必要であろう。
引用文献
堀出知里・飯田稔・井村仁 2004 2 週間のキャンプに参加
した不登校中学生の友達関係の展開過程 野外教育研究,8,
49-62
上原貴夫 2003 人間関係における行動過程に関する行動分
析的研究―不登校の小中学生による自然体験活動キャンプに
おけるスタッフの行動の視点から― 人間関係学研究,10,
27-44
(TSUKAMOTO Kunika)
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