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Science 2006 年 7 月 7 日号
Embargoed Advance Information from Science The Weekly Journal of the American Association for the Advancement of Science http://www.aaas.org/ 本部: 1200 New York Avenue, NW Washington, DC 20005 電話: +1-202-326-6440 ファックス: +1-202-789-0455 問合せ先:Natasha Pinol +1-202-326-7088 [email protected] Science 2006 年 7 月 7 日号ハイライト クロイツフェルト・ヤコブ病の血液検査? マンモスとマウスの毛色 音楽の幾何学 遺伝子を奪って抗生物質に抵抗 Science は米国科学振興協会(AAAS)発行の国際的ジャーナル(週刊)です。以下に記載す る、次号掲載予定論文に関する報道は解禁日時まで禁止します。 論文を引用される際には出典が Science および AAAS であることを明記してください。 Blood Test for Creutzfeldt-Jakob Disease?(クロイツフェルト・ヤコブ病の血液検査?): クロイツフェルト・ヤコブ病(ヒトにおける狂牛病)の血液検査の実現に一歩近づいたよう だ。同疾患の一部の症例では輸血による感染が疑われることから、これを検出するシンプル な検査の開発が待ち望まれている。同疾患を含むある種の死に至る神経変性疾患を引き起こ す病原因子は、いわゆる「プリオン」と呼ばれる異常な折り畳み構造を持つ蛋白質であると 考えられている。Paula Saá らは、疾患の兆候がまだ現れていないハムスターの血液から感染 性プリオンを検出する方法について詳しく説明している。疾患の初期段階では、プリオンは 脳に侵入する前に複製していた。その後、症状が現れた段階で、プリオンは感染した脳組織 から漏れ出しているようであった。一方、Matthew Trifilo らは、高濃度のプリオンが血中を 循環する遺伝子組み換えマウスを作成した。同マウスは神経学的症状ではなく心疾患を発現 した。本マウスモデルでは血液中に感染性プリオンが検出可能なレベルで確実に生成される ため、新たな診断検査の感度や治療を決定する際に有用であろうと著者らは述べている。 論文番号 15:"Presymptomatic Detection of Prions in Blood," by P. Saá, J. Castilla, and C. Soto at University of Texas Medical Branch in Galveston, TX; P. Saá at Universidad Autónoma de Madrid in Madrid, Spain. 論文番号 16:"Prion-Induced Amyloid Heart Disease with High Blood Infectivity in Transgenic Mice," by M.J. Trifilo and M.B.A. Oldstone at Scripps Research Institute in La Jolla, CA; T. Yajima, Y. Gu, N. Dalton, K.L. Peterson, and K. Knowlton at University of California, San Diego in La Jolla, CA; E. Masliah at University of California, San Diego-Department of Medicine in La Jolla, CA; R.E. Race, K. Meade-White, J.E. Portis, and B. Chesebro at National Institute of Allergy and Infectious Diseases, NIH in Hamilton, MT. Hair Color in Mammoths and Mice(マンモスとマウスの毛色):マウスの毛色を決定する 遺伝子と同じ遺伝子によって、マンモスの毛色が決定されていたようだ。Mc1r 遺伝子は複 数の哺乳類で毛色の決定に関与していることが知られている。たとえば、Mc1r 遺伝子の活 性低下によりヒトでは赤毛が発現する。Holger Römpler らは、シベリアマンモスの骨から DNA を抽出し、Mc1r 遺伝子に対応するマンモス遺伝子の塩基配列を解明した。塩基配列の 変異に基づき、著者らは同遺伝子にはおそらく完全に活性化しているもの、および部分的に 活性化しているものという 2 種類の変異が存在する可能性があると結論している。著者らは、 部分的に活性化した遺伝子型を持つマンモスの毛色は明るかったと提案しているが、このこ とが進化の上で有利に働いたか否かは不明である。 もう一方の研究によると、Mc1r 遺伝子はフロリダに生息するビーチマウスの毛色も調節し ているという。このことは、同マウスの生き残りに一役買っていると思われる。フロリダ湾 岸の防波島沿岸部の砂地に生息するビーチマウスはフクロウや鷹の獲物であるが、カモフラ ージュすることで生き延びている。同マウスの毛色は明るく、本土に生息する仲間とは異な る毛色パターンを示している。Hopi Hoekstra らは、Mc1r が生成する蛋白質中のアミノ酸の 1 つが変化することにより、暗色色素あるいは明色色素のいずれかが決定されるとしている。 興味深いことに、フロリダの大西洋岸に生息するビーチマウスは当該遺伝子変異を持ってお らず、このことから同マウスの明るい毛色は独自に進化した結果である可能性が示唆される。 論文番号 8:"Nuclear Gene Indicates Coat-Color Polymorphism in Mammoths," by H. Römpler and T. Schöneberg at University of Leipzig in Leipzig, Germany; N. Rohland and M. Hofreiter at Max Planck Institute for Evolutionary Anthropology in Leipzig, Germany; C. Lalueza-Fox at Universitat de Barcelona in Barcelona, Spain; E. Willerslev at University of Copenhagen in Copenhagen, Denmark; T. Kuznetsova at Moscow State University in Moscow, Russia; G. Rabeder at University of Vienna in Vienna, Austria; J. Bertranpetit at Universitat Pompeu Fabra in Barcelona, Spain. 論文番号 18:"A Single Amino Acid Mutation Contributes to Adaptive Beach Mouse Color Pattern," by H.E. Hoekstra, R.J. Hirschmann, R.A. Bundey, and P.A. Insel at University of California, San Diego in La Jolla, CA; J. P. Crossland at University of South Carolina in Columbia, SC. The Geometry of Music(音楽の幾何学):バッハのフーガは幾何学的形状を有するのだろ うか。和音と旋律を数学的空間中の点と線として捉える「orbifold」と呼ばれる新しいアプ ローチは、西洋音楽の編成原理に新たな洞察をもたらすであろう。西洋音楽の作曲者は、和 声(2 種類あるいはそれ以上の音をまとめて 1 つの和音を作り出すこと)と対位法(複数の 旋律を、それぞれの独立性を保ちつつ調和させて重ね合わせる技法)を組み合わせるという 難題に直面する。Dimitri Tymoczkoは、和音が有効かつ心地よい響きを生み出すよう連結さ れるか否かの「規則」は、幾何学的空間における和音間の可能な連結を地図に表すこと、ま た和声と対位法がどれくらい正確に関係しているかを表すことによって、数学的に表現する ことが可能であることを証明した。Tymoczkoは、作曲者は、「空間」を探求することによ って新しい音楽を作り出すことができるだろう(そして実際そうしている)と述べている。 関連するPerspectiveではJulian Hookが音楽的空間を探る他の試みについて論じている。 論文番号 9:"The Geometry of Musical Chords," by D. Tymoczko at Princeton University in Princeton, NJ; D. Tymoczko at Radcliffe Institute for Advanced Study in Cambridge, MA. Stealing Genes to Resist Antibiotics(遺伝子を奪って抗生物質に抵抗):肺炎球菌は抗生物質 への曝露というストレス下に置かれると、仲間の肺炎球菌を襲って殺し、その遺伝子を自身 のゲノムに取り込むという反応を示す。このような現象は、細菌が毒性遺伝子や抗生物質抵 抗遺伝子を獲得する際に役立っていると考えられ、それにより大半の抗生物質に抵抗性を持 つ「スーパーバグ」を生み出す手助けをしていると思われる。Marc Prudhommeらは、抗生 物質を使った治療を計画する際には、細菌が抗生物質によるストレスに反応し、遺伝子を変 化させる頻度が高くなる可能性を考慮すべきであると述べている。 論文番号14:"Antibiotic Stress Induces Genetic Transformability in the Human Pathogen Streptococcus pneumoniae," by M. Prudhomme, L. Attaiech, G. Sanchez, B. Martin, and J-P. Claverys at CNRS-Université Paul Sabatier in Toulouse, France.