Comments
Description
Transcript
韓国語 語話者の動詞の使用状況
[ キーワード ] 動詞、 習得研究、 語彙調査、 OP I 、 形態素解析 1. 研究の目的 日本語学習者の 産出能力のうち、 語彙についての 研究はまだ十分に 行われてい ない。 そこで、 本研究では、 会話データを 用い、 学習者がどのような 動詞を使用 しているか、 学習レベル別に 発話の使用状況を 分析する。 本稿では韓国語母語話 者 30 名のデータをサンプルデータとして 用い、 日本語学習者の 動詞語彙の習得に ついて全休像を 予測する。 2. 先行研究 学習者の語彙の 習得研究には、 いくつかの研究があ る。 谷ロすみ 子 ・赤堀保 司・任那 栗新 ・杉村和枝 ら 連想される語を (1994) は、 成人 次々に書いていくという (初級者・上級者 ) を対象に 1 つの 話か 方法をとり、 学習者の持つ 語彙ネット (1996) は、 小学校 5 年生以上のべトナム 太子 ワーク は ついて示した。 一二三朋子 弟を対象に 範晴語 連想、と 頭首連想とによる 調査を行い、 在日期間と語彙 数 、 日本 で 就学した学年との 関係について 述べている。 松本恭子 児童の 1 年間にわたるデータをもとに、 た 結果について (1999) は、 あ る中国人 全ての形態素に 対し語彙の量的分析を 行っ 報告している。 本研究では OP I データを用いるが、 同じ OP T データを用いた 動詞習得研究 では、 渋谷勝己 (1998)、 田中真理 (1999a,b)、 許 夏堀 (2000) があ る。 渋谷は可 箆形式に注目し、 その形式は中級以降になって 生産的に使用されること、 母語別 に見た時、 特に中級において 形式に違いが 見られること 等を述べている。 田中は ヴォイスの習得状況について「可能 ノ 受益 ノ 直接受身 習得過程であ ることを明らかにし (有 ) ノ 間接受身」という (1999a)、 さらに受身表現の 習得過程 (1999b) 一 53 一 ほ ついても報告している。 許は「ている」の 用法について 分析し、 運動の持続、 性状、 繰り返し、 結果の状態、 状態の変化、 経歴・経験の 順に習得するという そ デル を示した。 谷口 他 、 一二三は名詞語彙を 中心とした研究であ り、 松本は年少者の 研究、 申、 田 渋谷、 許は文法の習得からみた 動詞の研究であ る。 成人学習者の 動詞語彙の 習得に関する 研究はまだ行われておらず、 明らかにする 必要があ る。 3. 資料及び調査方法 本稿では、 0 P I (OralProfiCiency InterView) に基づき会話データを 収集した KY コ一 パス,を資料として用いる。 このうち、 韓国語母語話者 30 名 (初級 5 名、 中 級 10 名、 上級 10 名、 超級 5 名 ) また、 比較の の被験者の発話のみをデータとする。 ため、 日本語会話データベース ,のうち、 プリンストン 大学で収録した 日本語母語 話者 ( 日本人 A 及び B) 2 調査方法としては、 KY 抽出し、 分析を行 4。 う 名の発話も参考にする。 コ一 バスのデータに 対し、 形態素解析を 行い、 動詞を 。 形態素解析には『茶釜』 " を 使用した。 学習者が用いる 動詞語彙 データ結果を 見る前に、 KY コ一 パスの持っ意味について、 少し述べる。 牧野成一個 (2001) では、 OP I での話題の取り げるときは 既 出の話題をらせん 状に下から上に 上げ方について、 「レベルを上 持っていくこと」とあ る。 レベル 判定をするために、 超級らしいと 思われる被験者であ っても、 超級の話題だけを 与えるということはせずに、 中級、 上級の話題を 取り上げた上で、 超級の話題で 話を進めるのであ る。 つまり、 超級の会話で 用いられる動詞には 中級の動詞、 上 級の動詞が出現し、 さらに超級の 動詞が出現することになる。 この コ一 パスでは、 次のようなことが 予測できる。 予測 1 予測 2 レベルが上がるにしたがい、 動詞の数が増加すること どのレベルにも 共通の動詞が が 上乗せされ、 出現し、 増加していくこと。 一 54 一 さらに各レベルにふさわしい 動詞 4 Ⅰ各レベルの 学習者が用いた 動詞の数 まず、 学習者が使用した 動詞の数を見ることにする。 結果 4 ⅡⅠ 表 1 は 、 各レベルの学習者が 使用した動詞の 数を示す。 参考のため、 日本語母語 話者の日本人 A 及び B も併記した。 各レベル別の 1 人 当たりの使用数 ( 平均 ) をグ ラフにしたものが 図 Ⅰであ る。 表 1 における「のべ 使用動詞 致 」とは、 会話の中で用いた 動詞 致 で、 ( 正しく使用した 数 ) と「言い淀み、 言い直し、 活用の誤用」 「正月数」 ( 途中まで言いかけ てやめたり、 何度も繰り返したりしているもの、 活用が間違っているもの ) との 合計であ る。 また、 「正月使用率」とは、 「正月数」を「のべ 使用動詞 致 」で割っ たもので、 使用した動詞のうち、 どの程度正しく 使 え ているかを示す。 調教」は学習者が 正しく用いた 動詞が、 何種類あ 「異なり 動 ったかを示す。 さらに、 表の右 側「のべ使用数データ 範囲」「異なり 数データ範囲」は 学習者の使用した 数の中で 最も少なかったもの あ ( 最低 ) 、 最も多かったもの ( 最高 ) として、 その数を示して る。 まず、 初級を例にデータを 見てみよう。 のべ使用動詞数は 平均 35.6 で、 そのうち 正しく用いた 正岡数は平均 28.2 、 言い淀み、 言い直し、 活用の誤用等は 平均 7.4 で あ る。 初級では言い 淀み、 言い直し、 活用の誤用が 多 い ため、 正月使用率は 、 79.21% であ る。 異なり動詞 致 (平均 ) は一人当たり m2.6 種であ る。 次に 、 のべ使用動詞 致を レベル別に見てみる。 初級では一人当たり 平均 35.6 、 中 級 では 159.8 、 上級では 255.9 、 超級では 403.2 となり、 レベルが上がるにしたがい、 のべ使用数が 増加する。 異なり動詞 致を レベル別に見ると、 初級では 1 人当たり 12.6 種類、 中級では 52.5 種類、 上級では 64.5 種類、 超級では 86.2 種類となり、 のべ使用数と 同様、 レベルが 上がるにしたがい、 異なり使用数が 増加する。 また、 五周使用率を 見ると、 初級が最も低く、 79.21% 、 中級 91.49% 、 上級 96.87% 、 超級 99.6tM%めように、 徐々に正しく 使えるよ ものしか現れない。 う になり、 超級では、 言い淀み程度の 5 5 表 1 各レベルの学習者が 用いた動詞の 使用数 L 日本人 Bl I 533 532 図1 99.81% 1 1 Ⅰ 02 人当たりの動詞使用状況 500 400 300 200 Ⅰ 00 0 初級 401-2 1 予測 中級 上% 超級 考察 人当たりののべ 使用動詞数及び 異なり動詞数が 増加するということ、 1 「レベルが上がるにしたがい、 動詞の数が増加すること」と これは 一致する。 予測 通りの結果であ る。 牧野成一個 (2001) の OPI の各レベルの 判定基準を見ると、 初級では、 文法 における正確さは「 語 ・句のレベルだから 文法は事実上ないに 等し t.、 。 」とあ り、 語彙における 正確さでも、 「わずかの丸暗記した 基礎語彙や挨拶言葉が 使 える 。 とあ る。 表 1 では、 初級の異なり 動詞数は 1 人当たりわずか 12.6種類に過ぎない。 」 基 準通り、 文のために動詞を 使用せず、 語、 句のみで発話していることが 裏 付ける れる。 中級以降に、 動詞の使用量が 増えるという 結果について、 文の数が増えて 一 56 一 い くことが考えられる。 その文が単文なのか 複文なのかはここで 判断できないが、 複文で使用されるなら、 その中にいくつかの 動詞を含んでいると 言える。 つまり レベルが上がるにしたがい 動詞 文 が増え、 複文に拡大していくことも 予測できる。 一方、 レベルが上がるにしたがい、 のべ動詞 致 、 異なり動詞数が 増加している ことについて、 両者の差に注目したい。 初級ではのべ 動詞数は異なり 動詞数の約 ( のべ 35.6: 倍 約4 倍 異なり 12.6) 、 中級でも約 3 倍 ( のべ 255.9: ( のべ 159.8: 異なり 64.5) 、 超級では約 5 倍 ている。 つまり、 レベルが上がるにしたがい、 3 異なり 52.5) 、 上級では ( のべ 403.2: 異なり 86.2) となっ のべ動詞 致 、 異なり動詞数の 差が 大きくなっている。 このことから、 レベルの高い 学習者ほど同じ 動詞を多用する と言えるのではないだろうか。 4.2 使用頻度の高かった 動詞 4 Ⅰでは、 レベルの高い 学習者は同じ 動詞を多用しているという 結果であ った。 では、 どのような動詞を 多く用いたのだろうか。 次に各レベルの 学習者が用いた 動詞語彙の使用状況を 見ることにする。 4.2 Ⅰ 結果 表 2 はレベル別に 現れた動詞の 種類と使用回数、 及び使用者数と 各レベルの人数 に 対し 1 人 当たりの使用回数 (平均 ) を示している。 紙面の都合上、 使用人数の多 い もので上位 2W 位 までの動詞を 挙げる。 超級で最も多かったのは、 (28.2回 ) 、 以下「あ 3 番目が「思う」 「言 う (V 人 当たり 98.0 回 ) 、 次いで、 「する」 (48.8回 ) 、 「言 う 」 る」 (26.0回 ) 、 「なる」 (18.4回 ) となっている。 」の使用はダントッであ り、 繰り返し使用されている。 上級では、 1 位 「する」 となっており、 以下「あ (41.6回 ) 、 る」 2 位「言 う 」 (U4.8回 ) 、 まで超級と同じ 動詞であ る。 上級 「なる」 (30 8 回 ) 、 ・ 減少している。 「あ る」は同じ (18.8回 ) (9.5回 ) と続く。 上級は上位 1 位の「する」 5 位 (41.6 回 ) は超級の「する」 (48.8回 ) と使用回数はそれほど 変わらない。 一方、 超級で では 2 位に下がり、 3 位「思う」 1 位の「言 う 」は上級 4 位にあ るものの、 それらの使用回数は 大きく 上級と超級の 差は「言う」と「あ る」ということになる。 一 57 一 表2 レベル別使用動詞 超敬宇宙者 ち 居る 4 ヰ やる ㏄ 6 @ s8 s9 ち 0 5 5 5 5 5 Ⅰ 見る 笘 行く 33 29 出来る Ⅰ 上級宇宙吉 頓位 幼輻 Ⅰ する 4 6 g 3㏄ a2 a3 a4 Ⅰ5 a6 7 Ⅰ8 a9 8.2 6.8 6.8 6.6 5.8 き s]7 @ 軽く @ ]6 409 10 1 .4.5 0 g 9 9 3.4 6.4 4.9 3.7 Ⅰ ㏄ う 笘 g 12 Ⅰ 0Ⅰ 8 8 見る 出来る 分かる 0 Ⅰ き Ⅰ 2 来る l 冊る ⅠⅠ l 29 3 逮う やる n1 n2 n3 する 来る 食べる 壊る ヰ f4.8 9.5 7.5 6.8 5.2 5.2 Ⅰ Ⅰ Ⅰ Ⅰ l @ 出る @ 25 l a4 Ⅱ 0 1 4.5 Ⅰ 324 拍は むう 住連甘 64 49 37 l l Ⅰln@︵ 玄Ⅰ なる 挟 える は柚軋 見る 榊 @ 出来る 居る 1 2.4 ( Ⅰ7 祀 .Bl13 m14 m15 ⅠⅠ 9g8 笘 m7 食べる 思う 柿 I Ⅸ㏄ 帖 帖 % 5 l 桝 め来 l 行く l l 分かる 148 95 75 68 52 52 ある Ⅰ・ 9 46 35 35 I 2.9 9 8 8 8 1 2.5 5 5 4 4 4 3 3 4.4 2-2 0. 8 0. 8 0. 8 3.0 4.6 3.5 3.5 3.2 l 2 / ㏄ 9 Ⅰ 合計 す 23 抽 るるる Ⅰ l t Ⅰ㏄ l なる l 行く Ⅰ 4 6 30.8 18.8 00 ︶ 使佃6 Ⅰ @ 3 3 l 取る l ]2 5% 引8 う al 0 10 0 0 0 0 0 0 g Ⅰ Ⅰ 思う Ⅱ Ⅰ 平均 3.4 Ⅰ. 9 2 Ⅰ 4 4 4 15 l 住む n8 l 行く n9 l 思う l 6 l Ⅲ0 n11 l 見る l 3 l nl2 l 忘れる @ n 3 n14 n15 居る 6 nt6 かかる n 7 n 8 n19 n20 Ⅰ 冊る Ⅰ 飲む /42 一 58 一 fl n5 n6 n7 Ⅰ Ⅰ・ 22 入る ある @ 6 @ 8 l @ 2 2 [email protected]@│ l Ⅰ・ 1 Ⅰ. 6 2 @ 2 l 3 2 @ 0.6 出る 2 結す n2 ∼ 2 2 0 4 0, 4 2 O.8 0 6 0 4 0 4 0 4 @@6@ │@ 3@ │@ 混む 出来る 3 2 2 2 小針/合材 Ⅱ 2/]78 l 0 6 0 6 ・ ・ ・ Ⅰ・ ・ ・ ・ ・ (62.92%) 中級では、 1 位「する」 (22.4回 ) 、 なっており、 以下「行く」 位の 「あ (12.8回 ) 、 2 位「あ る」 (4.5回 ) 、 「分かる」 (5.9回 ) 3 位「来る」 と (4.5回 ) と続く。 1 位の「する」、 2 る」が多いのは、 超級、 上級と同様であ るが、 その数は半減している。 超級、 上級にも出現しているが、 使用回数は、 「来る」「行く」「分かる」は 前者と 比較しても、 大きな差は見られない。 一方、 超級、 上級で上位を 占めた「思 位 (6.4回 ) 、 「なる」 9 位 (3.7回 ) 、 う 12位 (4.6回 ) で、 大きく下回り、 「言 う 」 」 7 全く 使用しなかった 者も見られる。 初級では、 他のレベルの 上位にあ ったものは、 i 位の「する」 (4.4 回) 以外見当 たらない。 4.2,2 考察 ここでは、 具体的にどんな 動詞が多く使用されたかについて 見た。 その結果、 各レベルに いくっ かの共通の動詞が 見られた。 共通の動詞のうち「言 「思 う 」「あ 」「する」 う る」「なる」は、 レベルが上がるにしたがい、 使用回数が増えた。 また、 各レベル間で 大きな差が見られるものもあ った。 これらの動詞を 用いた表現が 習 得過程に大きく 関わると予想 は れる。 牧野成一個 (2001) では、 「 レベル判定の 基準として、 テキストの型では、 初級 語 、 句 」、 中級「 文 」、 上級「段落」、 超級「 複 段落」となっているかどうかで 判 定するとしているが、 具体的にどんな 動詞や表現が 判断の基準になっているかを 示しているわけではない。 特に、 「言 う 」「思 う 」は引用助詞「と」によって 習得過程として、 う 「言 う 」「居、 う 」のような動詞を 導かれ、 複文を要求する 。 使用して、 複文が発話できるよ になっていくことが 予想される。 また、 これらの表現には「そ ぅ 」等の複文からさらに ( 例 1) う 言 う 」「そ う居、 段落を要求する 表現が発話されている 可能性があ り ( 例 2) 、 実際の会話の 中で動詞がどのように 使われているのか、 語だけではなく、 句 、 文、 段落というレベルで 見て い く必要があ る。 例 1 例2 ( 作例 ) 山田さんはあ したは 日本人は働き 蜂みたいって 聞いたんです。 でも、 そ三五ュ土人はまだ 見た ことがなくて…。 一方、 超級において「言 (作例 ) う 」「する」「思 う 」「あ る」「なる」が 一 59 一 上位に出現したこ とについて、 日本語母語話者と 比較してみたい。 本 データの日本人 AB において も、 上記の動詞は 上位 5 位に出現する。 164回 ) が最も多くなっている。 (1982)では、 林 大監修 : 84 回、 B の使用数 : 「話しことはの 語彙調査」 この中で、 知識階層で使用した 上位 20 語では、 全ての 品 の結果を示しているが、 詞 において「言 う 」が筆頭になっており、 る (A の使用数 「言 う 」 「する」は 3 位、 「あ る」は 7 位に出現す 。 この結果は今回の 超級の結果と 一致する。 つまり超級レベルでの 上記の動詞 の 使用は、 知識階層の発話に 相当すると考えられる。 日本語学習において 超級 ベルの発話を 目指すのであ れば、 これらの動詞を 含んだ表現が 習得されて い とが望まれる。 その表現とは レ くこ 何だろうか。 以上の考察に 基づき、 次のような仮説を 立てる。 n 、 「言 う 」「居 ぅ 」を含んだ表現は 複文、 段落、 複 段 5 を引き起こさせる 表現で はないか。 2) 「言 う 」「する」「思 う 」「あ る」「なる」を 含む表現においては、 用法の違い が 、 習得過程に影響を 与えているのではないか。 4.3 学習者が用いた 動詞の種類 4,2 では、 各レベルにおいていくつかの 共通する動詞が 見られたが、 他にはどの ような動詞を 共通して用いていたのだろうか。 学習者が使用した 動詞を具体的に 見ることにする。 4.3 Ⅰ 結果 表 3 は学習者が用いた ため、 1 に、 1 は、 動詞を全て挙げたが、 レベル間に共通している 動詞を見る 一 Ⅳに分類し、 どのレベルからその 動詞が見られたかを 示した。 初級レベルから 見られた動詞で、 A,E,F,G A グループ「あ る」「歩く」「言 見られる共通の 動詞であ う」 グルーブの四通りあ 8 種であ E,F,G グルー った。 Ⅱは中級レベルから 見られた動詞で B,H,I 動詞は初級では 見られず、 特 等 35種の動詞はどのレベルの 学習者にも る。 その他、 初級から現れているものは、 プの「売る」「流れる」「泳ぐ」等 った。 グループの姉通りあ 中級以降のレベルで 使 m されている。 った。 これらの B グルーブ「 会 」 つ @l 「上がる」「集まる」等 61 種は、 中級、 上級、 超級の三つのレベルに 共通して 一 60 一 見られた。 その他中級から 現れているものは H,I グルーブの「泣く」「合わせる」 等 49 種であ った。 Ⅲは上級から 見られた動詞で、 C,J ぇる 」「余る」「受ける」等 に 現れているものは、 J グループの二通りあ った。 C グループ「 会 41種は、 上級、 超級で共通して 見られた。 グループ「返る」「 関 わる」等 Q7種であ その他上級 った。 Ⅳは 、 他のレベルには 出現せず超級のみで 見られた動詞で、 D グループ「上げ る 」「歩む」「要る」等 4.3.2 103 種であ った。 考察 予測 2 では、 「どのレベルにも 共通の動詞が 出現する」としたが、 予測通り 4 つの レベル全てに 出現するもの 上げ方について、 OP I (l の A グループ ) があ った。 OP I での話題の取り が全ての被験者に 対し、 同じ話題でらせん 状に話題を進 めているということの 他に、 もう一つ、 被験者の間で「共通の 話題があ るかどう か」という問題があ る。 たとえ下から 上への話題の 広がりがあ っても、 各被験者 に 同じような話題の 質問を与えなければ、 各レベルに共通の 動詞が出現しない 可 能性があ るということであ る。 そこで、 KY コ一 パスで話題の 内容を確かめてみた。 に 話を進めていくが、 中級レベルでは、 方の説明」「小説やドラマのスト OP I では中級をべ ー ス 「一日の生活」「自己紹介」「趣味」「やり 一リー描写」、 「最近の時事問題」等について 問う タスクが与えられる。 これら全てのタスクをさせるわけではないが、 いく っ かはどのレベルの このうちの 被験者に対しても 必ず行われている。 似たような話題を 与えれば、 同じ動詞が出現する 可能性は大いにあ ると言える。 例えば、 A グループに見られた 動詞を見てみよう。 A グループでは「起きる、 食べる、 飲む、 行く、 来る、 寝る」等の日常生活について 説明したと思われる 動 詞 が多い。 つまり、 「一日の生活」についての 話題をどのレベルの 被験者にも与え たと考えてよいのではないだろうか。 ここに話題の 共通性が認められる。 一6Ⅰ 一 表3 各レベルに現れた 動詞 暉 ⅠⅡ ヒ 種 るく つ る するす もめるる入越 す入 るる出る る (注4) すっ 一 62 一 さらに、 予測 2 「各レベルにふさわしい 動詞が上乗せされる」という 点について 見てみよう。 A グループでは、 日常生活を説明したと 思、 われる動詞があ ったが、 B グループでも 日常生活について 説明したと思われる 動詞「始まる、 終わる、 着 る 、 浴びる」等があ る。 つまり初級レベ ノレ では A グループの動詞しか 使えなかっ たが、 中級レベルでは 語彙が広がり、 同じ話題でもっと 表現豊かに説明できると いうことになる。 以上のことから、 このデータでは、 初級は初級だけの 動詞、 中級は中級だけの 動詞が出現するのではなく、 予測 2 の通り、 各レベルには 全レベルに共通した 動詞 とそれぞれにふさわし い 動詞がっ け 加えられたものが 出現すると言える。 こうしたことを 念頭に、 もう一度表 3 を見ることにする。 予測 2 の通りに出現するという 傾向があ るとすると、 Ⅰの初級から 見られた動詞 はどのレベルの 学習者も使っており、 W の超級に見られた 語彙と考えられる。 また、 習得が最も易しい 動詞は他のレベルが 使用せず最も 習得が難しい 語彙と考え ろ れる。 そして、 動詞語彙の習得過程を 予測すると、 1 図 2 のようになる。 初級なら表 3 の の動詞が使え 、 中級ならⅠ 十 Ⅱの動詞、 上級なら 1+ Ⅱ十 Ⅲ 十 W どのレベルにも 1+ Ⅱ 十 Ⅲの動詞、 超級なら の動詞が使えるようになっていくと 思われる。 つまり、 初級には 共通の動詞が 出現し、 さらに各レベルにふさわしい 動詞が上乗せ され、 増加して い くということになる。 図2 初級学習者 動詞語彙の習得過程の 予測 中級学習者 上級学習者 一 63- 超級学習者 特に、 表 3 の ABC 1 の A 、 Ⅱの B 、 Ⅲの C は、 基本語彙的存在であ ると考えられる。 グループの動詞は 習得が進むにつれ、 必ず産出できるようになる 動詞だと 言える。 E 一 J が出現した理由については、 いくつか考えられる。 一つは学習者の 個別 性 、 もう一つは話題の 特殊性、 三つめは被験者の 人数であ る。 三 つ めについては 本 データでは被験者の 人数が初級と 超級では半数であ ること、 10 名ずつという 小 さい規模のデータであ ることと言った 問題があ る。 人数が増えれば ABC グルー プに 加わる動詞もあ るのではないだろうか。 これらの結果に 基づき、 日本語学習者の 動詞語彙の習得には 難易度があ り、 動 詞 語彙は、 自然な順序で 習得されると 予測する。 実際にどんな 動詞が習得しやす く、 どんな動詞が 難しいのかまでは 断言することはできないが、 それぞれの しベ ルで 産出可能な動詞があ る程度わかるのではないだろうか。 5 おわりに 本稿では韓国語母語話者の 動詞の使用状況についてみた。 その結果、 動詞の習 得 過程について、 次のことが考えられる。 1) レベルが上がるにしたがい、 のべ動詞 致 、 異なり動詞数が 増加するが、 それ と 同時に両者の 差が大きくなることから、 レベルの高い 学習者ほど同じ 動詞 を 多用している。 ( 目 4-1-2) 2) レベルの高 い 学習者が多用する 動詞は 、 各レベルに出現する 共通の動詞で、 「言う」「する」「 思、 う 」「あ る」「なる」等であ った。 特にこれらの 動詞を含む 用法の違いが 習得過程に影響を 与えている。 (54-2-2) 3) 初級にはどのレベルにも 共通の動詞が 出現し、 さらに各レベルにふさわしい 動詞が上乗せされ、 増加していくという 傾向があ ることから、 動詞語彙の習 得に難易度があ って、 自然な順序で 習得される。 (54-3-2) しかしながら、 これは既存のデータを 利 m したバ イ 語彙習得の過程を 解き明かすまでにはいたっていない。 明らかにしたい。 一組 一 ロット調査的なものであ り 今後、 データを充実させ、 9主 1 鎌田修 氏 、 山内博之氏による。 0P (OraIProⅡ ciencyInterView) に基づき、 I 会話を行い、 レベルを判定する。 KY コ一 パスはそれを 文字データとしてテキ スト化したものであ る。 2 『日本語会話データベースの 構築と談話分析会話 コ一 パス』上村隆一氏代表。 国際基督教大学 (40名 ) 、 プリンストン 大学 (14名 ) で収録された 日本語母語話 者のデータのうち、 最も発話量が 多かったプリンストン 大学収録の 3 日本語形態素解析システム『 茶堅 (ChaSen)J 而 n 版 松本研究室。 院大学 は 4 2 名を選んだ。 奈良先端科学技術大学 動詞は「自立」「非自立」「 接尾 」に分類される。 本稿で 『茶釜』で「自立」と 認められた動詞を 分析した。 『 茶笠 』では、 一部の複合動詞 として登録されている。 (表 2 「取り組む」「引き 上げる」等 ) は一話 また、 可能動詞 (表 2 「言える」「行ける」 等 ) もそれ ぞれ一話として 登録されている。 参考文献 許 夏堀 (2000) 「自然発話における 日本語学習者による「ティル」の 習得研究 一 OPI データの分析結果から 一 」『日本語教育』 104 号 pp.20-29 日本語教育学 @耳 渋谷勝己 (1998)「中間言語における 可能表現の諸相」『 阪 大日本語研究 d l0pp.67- 81 大阪大学文学部日本語学講座 田中真理 (1999a) OPI における日本語ヴォ 「 イ 詩話者の場合」『第二言語としての スの習得状況 : 英語・韓国語・ 中国 日本語の習得に 関する総合研究 d pp.33年350 平成 8 年度∼平成 10年度科学研究費補助金研究成果報告書 (1999b) OPI に現れた受身表現について 「 : 日本語教育とコミュニケーシ ョンの視点から」『第二言語としての 日本語の習得に 関する総合研究 コ pp.351-378平成 8 年度∼平成 10 年度科学研究費補助金研究成果報告書 谷口すみ 子 ・赤堀保司・ 任那 栗新 ・杉村和枝 (1994) 「日本語学習者の 語彙習得 一 語彙のネットワークの 形成過程一」『日本語教育』 育学会 一 65 一 84 号 pp.78-91 日本語教 林 大監修 (1982) F 図説日本語凹角川書店 - 二三朋子 (1996) 「年少者の語彙習得過程と 言語使用状況に 関する考察 一 在日ベ トナム太子弟の 場合一」『日本語教育』 牧野成一個 (2001) ACTFL-OPI 『 松本恭子 入門』 ァ ルク (1999) 「あ る中国人児童の タディ : 90 号 pp.13-24 日本語教育学会 来日 1 年間の語彙習得一発話資料のケースス 形態素レベルの 分析」『日本語教育』 学会 一 66 一 102 号 pp.68-77 日本語教育