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日本動物学会
第 85 回大会
一般公開要旨集
仙台大会
2014
目次
平成 26 年 9 月 13 日(土)
東北大学
川内北キャンパス
1. 動物学ひろば・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P3
「見てみよう触ってみようー多様な動物の世界ー」(無料)
時間:11:00~16:30
会場:講義棟 A104 および A105 教室(A 棟 1 階)
2. ミニ講演会・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P13
「みんなも動物博士! ー最先端の動物学研究を知ろう!ー」(無料)
時間:14:20~15:20
会場:講義棟 A200 番教室(A 棟 2 階)
3. 高校生によるポスター発表・・・・・・・・・・・・・・・・P15
「高校生による生物学研究成果の発表」
発表
時間:11:30~13:30
会場:講義棟間オープンスペース
表彰式
時間:13:45~14:15
会場:講義棟 A200 番教室(A 棟 2 階)
1
1
MEMO
--------------------------------------------------------------------------------
2
2
日本動物学会
第 85 回大会
仙台大会
2014
動物学ひろば
「見てみよう触ってみようー多様な動物の世界ー」
2014 年 9 月 13 日(土)
東北大学川内北キャンパス
14:20 ~ 15:20
A104 および A105 教室(A 棟 1 階)
「動物学ひろば」は、小学生・中学生・高校生・一般市民を中心とした参加者にさまざ
まな動物を見て、触れて、知ってもらい、動物学研究者との触れ合いを通して、動物の不
思議さ・面白さを実感してもらうことを目的としています。
実際には、全国の動物学会の会員が日頃、研究しているさまざまな動物を展示・紹介し
ます。顕微鏡でしか見えないような小さな動物から、直接触れることのできるような大き
な動物まで、多くの種の展示を目指しています。みなさん、存分に触れあってみて下さい。
1. 日本発の実験動物:メダカ
2. お腹の中で子供を育てるサカナ
3. 重要な実験動物:ツメガエル
4. 身近な鳥の世界
5. 数ミリ以下の動物学 III
6. 川に、陸に、身近にウヨウヨしているプラナリアを観察してみよう
7. 原生動物園へようこそ!
8. 「ゾウリムシ」を知っていますか?
9. ホヤという動物を知っていますか?~海のパイナップルと呼ばれるホヤの正体
10. ホヤはどこにでも付いている!!海はマボヤ以外もホヤだらけ!!
11. 卵から成体まで、海の動物で比べてみよう
12. 三崎の海の生きものたち
13. 口・腸・肛門も無い変な動物マシコヒゲムシはどうやって生きているか?
14. 海の中のクモ?熊?生きている石?
15. 下田の生物
16. ウニの体のミクロな世界
3
日本発の 実験動物:メダカ
佐藤 忠1、明正 大純1、竹花 佑介 2、成瀬 清 2、酒泉 満1
(1:新潟大学 2:基礎生物学研究所)
みなさんご存知のメダカ。少なくなったとはいえ、北海道を除く日本各地に野生のメダカが生息していますし、ペッ
トショップなどでよく見かけます。現在でも鑑賞用として人気のあるメダカですが、江戸時代には野生型のクロメダカ
の他にヒメダカやシロメダカもすでに飼われていました。メダカは昔から日本人にとっておなじみの魚だったようで
す。
ところで、メダカには生物学などの研究に広く利用されている”実験動物“としての顔もあります。その理由として
は、メダカは入手や飼育が簡単なので実験に使いやすい点が挙げられます。小学校の理科の授業の観察などに
使われているのもこのためです。さらに明治時代以降には日本の生物学者
によって実験に使われるようになり始め、多数の研究に有用な種類を見つ
けたり、作り出したりしてきました。こうした研究者たちの努力により、メダカ
は日本で開発された実験動物として、日本だけでなく世界で生物学の広い
分野で利用されるようになってきたのです。
今回は、教育・研究で利用されるメダカを収集・配布しているナショナルバ
イオリソースプロジェクトで維持されている様々なメダカ(写真の透明メダカな
ど)を展示して、メダカはどんな特徴をもった生き物なのかを解説します。
お腹 の中で子供を育てるサカ ナ
飯田 敦夫、徳増 雄大
(京都大学・再生医科学研究所)
多くのサカナは、卵を産んで子孫を増やす“卵生”です。しかし一部には、お母さんがお腹の中で赤ちゃんを育て
て産む “胎生”のサカナがいます。メキシコに住んでいる『ハイランドカープ』というサカナは、とてもユニークな仕組
みで赤ちゃんを育てます(写真1)。
人間など哺乳類の場合は、卵を作る“卵巣”と、赤ちゃんを育てる“子宮”は別々です。しかしハイランドカープは
“卵巣”で赤ちゃんを育てます。 哺乳類の赤ちゃんは“胎盤”や“へその緒”を使って、お母さんから栄養をもらいま
す。一方ハイランドカープの赤ちゃんは、お尻の周辺から伸びた“栄養リボン”という枝分かれしたヒモ状の構造を
使って、お母さんから栄養をもらって育ちます(写真2)。哺乳類の赤ちゃんは“胎盤”と“へその緒”で、お母さんの
体とつながっています。しかしハイランドカープの赤ちゃんは、お母さんの体とはつながっておらず、卵巣の中で分
泌された物質を“栄養リボン”から吸収しています。
このようにサカナと哺乳類では【赤ちゃんをお腹の中で育てる】という同じ目的のために【サカナは“栄養リボン”、
哺乳類は“胎盤”と“へその緒”】という別々の仕組みを獲得しています。このような現象を『収斂進化(しゅうれんし
んか)』と呼びます。
動物学ひろばでは、ハイランドカープのお父
さんとお母さんの展示を予定しています。また、
赤ちゃんの “栄養リボン”を顕微鏡観察して
みましょう。
4
重要な実験動物:ツメガエル
柏木 昭彦、柏木 啓子、花田 秀樹、鈴木 賢一、鈴木 厚、古野 伸明、田澤 一朗、倉林 敦、中島
圭介、竹林 公子、小林 里美、竹中 純子、杉原 麻美、山本 卓、住田 正幸
(広島大学大学院・理学研究科)
17~18 世紀以降、両生類は生命科学の進歩に貢献してきた。例えば、1780 年に、ガルバーニはカエル筋肉の研
究で動物電気を発見した。実験発生学を創始したルーは、1888 年に2細胞期のカエル卵の1割球を焼き殺して半
胚を得た。シュペーマンは、イモリ胚を用いた移植実験で形成体を発見、誘導現象を見つけ出した功績により 1935
年にノーベル医学生理学賞を受けた。さらにガードンは、アフリカツメガエルオタマジャクシの腸上皮細胞の核は初
期化したのち全能性を持つことを発見、2012 年にノーベル医学生理学賞を受賞した。アフリカツメガエルは半世紀
以上もの間、多くの生物医学研究に使われてきたが、異質4倍体である、成
熟するのに 1.5~2年を要するなどの欠点を持っている。一方、近縁種のネッ
タイツメガエルは2倍体で発生速度が早い、世代時間も6~8ヶ月と短い、ゲ
ノム配列が解読済みなど、優れた特徴を備え、ポストゲノム時代の重要な実
験動物になるものと期待されている。広島大学大学院理学研究科附属両生
類研究施設は、文部科学省の主催するナショナルバイオリソースプロジェク
トに参画し、高品質のネッタイツメガエルを育成、研究者や教育関係者に提
供している。
身近な鳥の世界
表 潤一 1、大場 真実 1、斉藤 千映美 2
(1:宮城教育大学・自然フィールドワーク研究会、YAMOI 2:宮城教育大学 環境教育実践研究センター)
私たち人間にとって鳥は身近な存在です。ビルが立ち並ぶ都会に住んでいよ
うと自然豊かな地域に住んでいようと鳥との関係は断ち切れません。季節ごと
に鳴き声を楽しませてくれる鳥、人間のおこぼれを狙う鳥、スーパーの食肉コー
ナーや卵売場に並ぶ鳥…など身近な所に鳥たちは存在しています。そんな鳥
たちの特徴について、私たちと一緒に改めて考えてみませんか。
私達は宮城教育大学でウコッケイを飼育しています。ウコッケイ卵は栄養価
が高く不老不死の食材とさえ例えられます。この企画では、その貴重な卵から
人工孵化で生まれたウコッケイを展示する予定です。ヒヨコを実際に観察し、そ
の特徴、ニワトリとの違い、哺乳類との違いなどを比べてみましょう。
また、鳥類の体についてさらに気付きを深めるため、宮城県の豊かな自然の中
で生息する身近な鳥の骨格標本と羽標本を展示します。鳥はどうして飛ぶこと
ができるのでしょうか?翼があるから…という理由だけではありません。実は
様々な条件が重なって鳥たちは飛んでいます。骨格標本や羽標本に実際に触
れたり観察したりしてその秘密を探ってみましょう。
5
数ミリ以下 の動物学 III
太田 悠造1、藤本 心太2、田中 隼人3、広瀬 慎美子4
(1:滋賀県立琵琶湖博物館 2:京都大学 3:広島大学 4:お茶の水女子大学)
地球上には人目に触れにくい、小さな動物であふれていて、生態系に大きく影響しているものも少なくありません。
小さな動物と言うと、微生物のゾウリムシやミジンコなどを想像するかも知れません。しかし、ここでは、もっとマニア
ックな動物が登場します。
ここで紹介する動物たちは、カイミジンコ、海のクマムシ、ウミユリヤドリムシ、ウミクワガタなど。彼らは、ちょっとし
た水たまり、波打ち際の砂浜の中、ただでさえマニアックな動物なのに、さらにその体の表面や体内など、その存在
を知っていなければ決して見つからないものばかり。
こうした動物たちは研究者も少なく、1 国に1人居れば多いほう! このコーナーは、そんなレア研究者が全国から
集まって紹介するプレミアムブース…!なぜ、こんな生き物の研究をなぜ始めたのか? その魅力とは?? こんな
マニアックな生き物を研究することによって何が分かるのか??? その疑問は会場に行って私たちにぶつけてく
ださい。お待ちしております…!
* 本企画は 9 月 12 日に開催されるシンポジウム「数ミリ以下の動物学 III」の連動企画として開催されます。今回
は 3 回目で、この他に、第1回、第 2 回のパネルも展示いたします。
写真:カイミジンコの一種 Parapolycope japonica
ウミユリヤドリムシ Waginella metacrinicola
カレサンゴウミクワガタ Gnathia camuripenis
川に、陸に、身近に ウヨウヨしてい るプラナ リアを観察してみよう
岡本 光1、柳原 由実1、石川 正樹2、小林 一也2、中村 剛之3
(1:弘前大学・農学生命科学部生物学科、2:弘前大学大学院・農学生命科学研究科、
3:弘前大学・白神自然環境研究所)
プラナリアといえば淡水に棲む扁形動物門三岐腸目に属する動物で、強い再生能力を持つことでもおなじみかと
思います。そもそも、プラナリアという名前はラテン語の Plānālius から作られたもので、「平たい虫」という意味です。
一方、日本語(和名)では、移動するときに体表面の繊毛で渦を作ることから、ウズムシ(渦虫)と呼ばれています。
私たちの研究室では、約30年前に沖縄で採集してきた1匹の無性個体が分裂・再生を繰り返して株化したリュウ
キュウナミウズムシ(Dugesia ryukyuensis)のクローン集団(OH 株[図1])を研究に用いています。プラナリアを材料
にしている研究室では、大抵、再生能力の強い種をクローン化したものを使っていますが、日本には20種類以上
棲息していて、種によって再生能力に大きな違いがあることは意外に知られてい
ません。そして、実は淡水だけでなく、海にも陸にもプラナリアは棲息しているの
ですが、こちらも知っている方は少ないように思います。
今回、私たちは、弘前大学の手代木博士が種同定したトウホクコガタウズムシ
(Phagocata teshirogii)を含めた淡水棲プラナリア7種、弘前大学白神自然環境
研究所周辺で採集された陸生プラナリア(コウガイビルの1種[図2]やリクウズム
シの1種[図3])などを展示する予定ですので、皆さん是非観察しにきてくださ
図1
い。
図1 リュウキュウナミウズムシ OH 株。体長は1cm くらい
図2 白神で採集されたコウガイビルの1種。体長は 5 cm くらい
図3 白神で採集されたリクウズムシの1種。体長は 1 cm くらい
図2
図3
6
原生動物 園へようこそ!
洲崎 敏伸、早川 昌志
(神戸大学・理学研究科)
アメーバ、ゾウリムシ、ミドリムシ、・・・ミクロの世界に暮らしている単細胞生物の仲間たち。彼らは単細胞ですが、
巧妙な運動装置を備えて動き回ります。ミクロの世界で活動的に動き回る彼らは「原生動物」と呼ばれています。
ひとくくりに原生動物と呼ばれていますが、その仲間はとても多様です。まるで物語に登場するモンスターのよう
に、細胞全体が口の役割を果たして周囲の獲物を獰猛に補食しているアメーバやタイヨウチュウ。細胞全体に繊毛
と呼ばれる運動器官を大量に備えて高スピードで泳ぎながら、まるで投げ槍のような武器を発射するゾウリムシ。
いかにも“虫”のように細胞がぐにゃぐにゃ変形するのと同時に、“藻”のように葉緑体を持って光合成ができるミドリ
ムシ。他にも、多細胞の大きな動物の身体の中で暮らしているものや、逆に、自分自身の細胞の中に別の小さな生
物を共生させたりするものまでいます。
このように、一言では語りきれない、複雑で多様な生き方をしている
原生動物たち。目には見えないのであまりなじみはありませんが、実は
私たちの身近な場所に、いたるところに暮らしています。“原生動物園”
では、そんな彼らの実際に生きている姿を、顕微鏡を通して観察できる
ようにします。動物園へゾウやキリンに会いに行くように、アメーバやゾ
ウリムシに会いに来て下さい。普段、肉眼で見ている世界に暮らしてい
るだけでは知る事のできない魅力的な生き物の世界が待っています。
「ゾウリ ムシ 」を知ってますか?
藤島 政博1、2、田中 健也1、2、河本 雄貴1、2、児玉 有紀2
(1:NBRP、2:山口大学大学院・理工学研究科、3:島根大学生物資源科学部)
ゾウリムシは、田んぼや沼などにすみ、細菌をエサにして増える生き物で1個の細胞でできています。大きさは1
ミリの5分の1ぐらいですので、見るには虫めがねが必要です。ゾウリムシは、中学と高校の教科書に出てきますが、
いろんな研究に使用されています。
ゾウリムシには、オスとメスに相当する性があり、混ぜると約 45 分で細胞が接合し、15 時間後には離れて接合完
了体(子孫)になります。
ゾウリムシには、寿命があり、接合後の細胞分裂の回数で歳をとります。
接合後の細胞分裂回数が 50 回までは未熟期とよばれ、接合できません。
そして、約 700 回の細胞分裂後に寿命が尽きます。エサが充分にある時
は1日に約3回分裂しますので、700÷3=約 233 日(7~8 ヶ月)で寿命が
つきます。寿命は接合によってリセットされてゼロ歳になります。ゾウリム
シを冷蔵庫に保存するとゆっくり分裂するので老化を遅らせることができ
ます。
ゾウリムシには、これまでに 45 種類が発見されていますが、現在でも野
外から採集できるのは 27 種だけです。残りの 18 種類は絶滅した可能性が
あります。ナショナルバイオリソースプロジェクト(NBRP)では、24 種類を保
存し、世界中の研究者に提供しています。
7
ホヤという動物を知っていますか ?~海のパイナップルと呼ばれるホヤの正体~
宮奥 香理 1,2、中本 章貴 1、山田 温子 2、西田 宏記 2、熊野 岳 1
(1:東北大学・生命科学研究科 2)大阪大学・理学研究科)
夏になると、表面がごつごつしたオレンジ色の生き物が魚屋さんに並んでいるのを見かけます。それはマボヤと
呼ばれるホヤの仲間です。マボヤはその形から「海のパイナップル」と呼ばれ、海の底で岩にくっついて暮らしてい
ます。ここ東北地方では酒の肴(お酒を飲みながら食べるおつまみ)として有名です。
ホヤは植物のような見た目をしていますが、れっきとした動物です。しかも、私たちヒトを含む脊椎動物(背骨を持つ
動物のグループ:ほ乳類・鳥・カエル・魚など)に一番似ている無脊椎動物(背骨を持たない動物のグループ:昆虫・
貝・ミミズ・クラゲなど)です。その証拠に、ホヤの卵はオタマジャクシ(ホヤの子供)になります。ホヤのオタマジャク
シはカエルのオタマジャクシや魚と形がよく似ていますが、成長すると、形を変えて大人のホヤになります。このよう
な特徴から、ホヤは卵から体を作るしくみを調べるためによく使われます。このよう
に、何かを調べて新しい物事を発見する活動を「研究」と言います。
今回の展示では、(1)生きた大人のホヤ、(2)卵・オタマジャクシなどの標本、
(3)ホヤの卵がオタマジャクシになるまでの様子を撮影したムービーをお見せし
ます。これらの展示を通して、生命誕生の一連の流れを実感して頂ければと思い
ます。
ホヤはどこにでも付いている !!海はマボヤ以外もホヤだらけ!!
泉水 奏 1 、大倉 信彦1、廣瀬 裕一2
(1:琉球大学医学部、2:琉球大学理学部)
ホヤは海の岸壁やブイにくっついており、管(入水管)から海水を取り込み、その中のプランクトンを鰓で濾し取り
食べています。食べた後の糞と濾された海水を別の管(出水管)から体の外(海水中)へ出しております。鰓と内臓
は筋肉に包まれていてその外側を皮嚢という皮で被われています。一見すると貝(2 枚貝:アサリやハマグリ)の貝
殻が皮に変わったような姿と生活です。このことからホヤ貝と呼ばれることがあります。そして学者の世界でも 1866
年までは貝の仲間と思われていました。このようなホヤのうちマボヤは東北地方で養殖され食用となっていて、日
本でもっとも知られています。そのため東北の海以外にはホヤはいないと思っている方も多いのです。ところがホ
ヤは世界中の北から南まで海のブイとかロープ、海岸の岩陰とか至る所に付いています。世界で 2000 種以上、日
本にも 300 種以上棲んでいます。 海で良く目を凝らしてみると、様々なホヤを発見することができるでしょう。 この
ブースでは、沖縄のホヤの内臓の様
子を顕微鏡で覗いてみることが出来ま
す。また発生と変態の様子を動画とし
て、また色々なホヤを写真で(出来れ
ば本物も)ご紹介いたします、是非お
立ち寄り下さい。
8
卵から 成体まで、海 の動物で比べてみよう
清本 正人1、濱中 玄1、広瀬 慎美子1、出口 竜作2、並河洋3
(1:お茶の水女子大学、2:宮城教育大学、3:国立科学博物館)
海には体のつくりや形、そして、生活の様子もさまざまな動物がたくさん生息しています。これらの動物たちは、す
べて 1 つの受精卵からスタートし、子供(幼生)に育ち、やがて大人(成体)の姿に変わっていきます。これを受精卵
からの発生といいます。成体の体のつくりや形が異なるように、動物によって発生の様子や幼生の形などはさまざ
まです。逆に成体の形が違っても、幼生の形などが似ているものもいます。このようなことは、動物と動物との親戚
関係を探る手立ての一つにもなっています。
海の動物の発生と幼生の形などを比べてみることは海の動物をより深く学習するためには重要なことであり、そ
のための教材づくりを現在進めています。新しい学習指導要領では、中学生で海の無脊椎動物(ウニ、イカ、貝、カ
ニ、クラゲなど背骨のない動物)について学習することになりました。このことも踏まえて、これまで教材づくりを進め
てきた海の動物の成体と幼生を紹介したいと思います。
中学高校の教科書でも扱われているウニの受精の実験
を体験できます。この他、ホヤの仲間や貝の仲間、ゴカイ
の仲間、そして、クラゲの仲間の発生の違いを映像やパ
ネル展示で見て頂く予定です。
皆さんには、海の動物の多様な世界を感じていただけ
ればと思います。
三崎の 海の生きものたち
大森 紹仁 1,2、日野 綾子 1、関藤 守 1、浪崎 直子 1、川端 美千代 1、伊藤 那津子 1、幸塚 久典 1、
赤坂 甲治 1,2
(1:東京大学大学院理学系研究科附属臨海実験所、2:東京大学海洋基礎生物学研究推進センター)
るい
しゅるい
かながわけん
み う ら はんとう
日本の海には世界でも他に類を見ないほどたくさんの種類の生きものがくらしています。神奈川県の三浦半島に
みさき
とうきょうだいがく み さ き りんかい じっけんじょ
みさき
ある三崎の海は、その中でも特に多くの生きものが見られる海の一つです。東京 大学三崎臨海実験所では、三崎
けんきゅう
てんじ
ふ だ ん けんきゅう
の海で見られるさまざまな生きものを使った 研 究 をおこなっています。今回の展示では、私たちが普段 研 究 に使
みさき
しょうかい
けんきゅう
っているウミシダ、ナマコ、ウニをはじめとする、三崎の海にくらすさまざまな生きものを紹 介 します。 研 究 で育てた
から
かいがら
ひょうほん
てんじ
みさき
いそ
ナマコやヒトデの子ども、ウニの殻や貝殻などの動物の 標 本 などもあわせて展示する予定です。三崎の磯で見ら
じっさい
れるヤドカリやヒトデなどを実際にさわって
かんさつ
かいせつ
観察できるミニタッチプールも開設 しますの
で、ぜひ遊びにきてください。
三崎の磯で見られる生きものたち
9
三崎の磯のようす
口・腸・肛門も無い変な動物マシコヒゲムシはどうやって生きている か?
又多 政博、小木曽 正造、関口 俊男、鈴木 信雄
(金沢大学・環日本海域環境研究センター 臨海実験施設)
石川県能登半島の九十九(つくも)湾にアゴにヒゲが生えているように見えるゴカイが生息します(写真 1)。マシコ
ヒゲムシといいます。ヒゲムシの中で暖海に棲むのは、世界でもこの種だけで、見つかるのもここだけです。
本種のヒゲは、本当は触手で、口、腸そして肛門がありません。幼生の時期にはありますが、口から硫黄酸化細菌
の一種が入り込み、人でいうと大腸の部分に定着した時にそれらは退化します。この細菌は猛毒の硫化水素を分
解してエネルギーを得ています。人は食物を分解して、エネルギーを得ていますが、ヒゲムシはこの細菌が作る炭
水化物をもらって生きています。細菌を消化して吸収もしているようです。ヒゲムシは体内にこの細菌を生かしてお
く必要があり、細菌が棲みつく大腸は栄養体と呼ばれる組織に変化します。また、ヒゲムシは細菌に硫化水素を与
えるために、特殊なヘモグロビンを持っています。このヘモグロビンは、自分の組織に酸素を運ぶと共に、猛毒の硫
化水素とも結合でき、細菌へ届けます。
マシコヒゲムシの全長を写真2に示します。本種は、体幅 0.8mm、体長数十 cm と、とても
細長く、その棲管の末端は海底から 80cm 以深の泥の中まで埋まっており、途中で切れや
すい動物です。そのため、その終体部はこれまでに 2 個体しか採集されていません。マシ
コヒゲムシをより長く、より良い
状態で採集できるよう、現在取
り組んでいます。マシコヒゲム
シの飼育が可能となれば、共
生細菌との関連を解析可能な
モデル生物になると思います。
写真1 マシコヒゲムシ
(Oligobrachia mashikoi)
写真2 全長写真
写真3.生態写真
海の中 のクモ? 熊?生きている 石?
宮﨑 勝己 1、2、千徳 明日香 1、岡西 政典 1、中山 凌 1、朝倉彰 1、2
(1:京都大学フィールド科学教育研究センター瀬戸臨海実験所、2:京都大学白浜水族館)
皆さんは、海の中にクモがいたり、熊がいたり、生きている石がいることをご存知でしたか?紀伊半島南部の和歌
山県南紀白浜に位置する京都大学瀬戸臨海実験所では、そのような海の中の「謎の(?)生物」を日々研究してい
ます。
ではここで種明かしです。海の中のクモとは、陸上のクモによく似た節足動物の「ウミグモ」と棘皮動物の「クモヒト
デ」、海の中の熊とは、その高い耐久能力から「地球最強の生物」といわれて有名になった「クマムシ」(海のクマム
シにはそのような耐久能力はありません。残念…)、海の中の生きている石とは、炭酸カルシウムの硬い骨格を作
る「イシサンゴ」の仲間のことでした。
今回は「ウミグモ」「クモヒトデ」「クマムシ」「イシサンゴ」を中心
に、南紀白浜の海で採れた生きた個体や、瀬戸臨海実験所
及び併設の京大白浜水族館が所有する標本を使って、これ
らの動物たちの解説を行い、これらの動物について我々が行
っている研究の紹介をしていきます。
今回も、前回前々回の動物学ひろばで好評だった、豪華(か
もしれない)プレゼントがもらえる「標本当てクイズ」を行う予
定ですので、こちらの方もどうぞお楽しみに。
10
下田の生 物
柴田 大輔、土屋 泰孝、品川 秀夫、稲葉 一男
(筑波大学下田臨海実験センター)
筑波大学下田臨海実験センターは伊豆半島の先端、静岡県下田市にあります。センターが面している鍋田湾は変
化に富んだ砂地や磯、海藻であるカジメの海中林があり、実にさまざまな生物が生息しています。磯に一歩出れば、
魚やエビ・カニ、貝類、ゴカイ類などさまざま生物を簡単に見つけることができます。採集される海産の無脊椎動物
であるカニ、エビ、ウニ、アサリなどの多くが成体(おとな)で、それらの幼生(子供)はほとんど見つかりません。これ
は、無脊椎動物の幼生が成体とは大きさも形も全く異なるためです。例えば、
ウニの成体(図 1)は棘を持ち、海の底で生活します。しかし、幼生はプルテウス
(図 2)と呼ばれ、体の大きさは 1mm 以下で成体のような棘もなく、海の中を自由
に泳ぎながらプランクトンとして過ごします。その後、体の構造が大きく変化する
過程(変態)を経て、棘や足(管足;かんそく)を持つ成体になります。変態により、
自由なプランクトン生活を終え、海底で生活するようになります。ウニと同様、多
図1
図2
くの海産無脊椎動物の幼生はプランクトンとして生活を行って、その後変態して
成体としての海底での生活に移ります。
今回は、下田の海で生活している様々な生物を仙台に連れていきます(図3)。
海の生物たちと触れ合いや、成体と幼生を実際に比較しながら観察することに
より、親子の形や大きさの違いなど、海産生物について知ってもらえたらと思い
ます。
図3
ウニの 体のミクロな世界
渡辺 友美 1、藤原貴史 2、真行寺千佳子 2
(1:土木研究所 自然共生研究センター、2:東京大学・大学院理学系研究科)
美味しい食材として人気の高いウニですが、ウニの「足」について知っている人は、意外と少ないようです。そこで
今回は身近な種類のウニを題材に、五角形を基本とする体の構造や機能を、様々な視点からご紹介します。
肉眼では観察の難しいミクロな器官や構造を観察できる映像展示が、今回の企画の目玉となる予定です。姿勢を
維持するはたらきもあるトゲの構造、強い流れにも流されずに体を固定する「足」すなわち管足の構造、体内の水
圧を調節すると考えられているハ
ート形の多孔体、等々…顕微鏡で
しか見られない世界を、のぞいて
みましょう。
生きたウニの展示では、管足を
使って歩く様子を観察できます。
また、ウニへの餌やりも体験する
ことができるかもしれません。ウニ
の動きは「ゆっくり」でしょうか?
「意外とはやい」でしょうか?実際
トゲの短いウニでは五角形の構造が簡単に
管足の先端の吸盤を使って垂直面も
分かります
のぼります
に確認してみて下さい。
11
MEMO
---------------------------------------------------------------------------------------------------
12
日本動物学会
第 85 回大会
仙台大会
2014
ミニ講演会
みんなも動物博士!-最先端の動物学研究を知ろう!-
2014 年 9 月 13 日(土)
14:20 ~ 15:20
東北大学川内北キャンパス
A200 番教室(A 棟 2 階)
「ミニ講演会」では、研究対象としている動物の魅力と最先端の研究内容について、3
名の学会員が分かりやすく、短時間(それぞれ 15 分間程 度)で紹介・解説します。講演
会の最後には、高校生を中心とした参加者を交えた総合討論の時間を設け、参加者と学会
員の相互交流を計るとともに、動物学研 究への理解とあこがれが得られるような機会を提
供します。また、「ミニ講演会」で紹介される動物の実物を「動物学ひろば」で展示する
ことにより、参加者の興味と理解をさらに高めてもらう予定です。
14:20 - 14:35
「鳥は本当に恐竜なのか!?‐動物学の威力と魅力‐」
田村 宏治 (東北大学)
14:35 - 14:50
「珍味なホヤのマッチョな発生生物学」
西田 宏記 (大阪大学)
14:50 - 15:05
「プラナリアに脳を作った遺伝子の起源を探る」
阿形 清和 (京都大学)
15:05 - 15:20
総合討論
13
13
MEMO
--------------------------------------------------------------------------------
14
14
日本動物学会
第 85 回大会
仙台大会
2014
高校生によるポスター発表
2014 年 9 月 13 日(土)
講義棟間オープンスペース
ポスター発表
11:30
~
13:30
講義棟間オープンスペース
表彰式
13:45
~
14:15
A200 番教室(A 棟 2 階)
日本動物学会では、年 1 回の全国大会に「高校生によるポスター発表」のコーナーを特
別に設け、高校生自身による研究の発表を行っていただいております。発表の際には、全
国から集まる最前線の研究者(学会員)が発表を聞き、高校生と自由に討議してもらえる
ように、学会としても運営上の工夫をしているところです。普段あまり接する機会がない
研究者との議論は、高校生の皆さんにとって貴重な機会となるのではないかと考えており
ます。ポスター発表後の表彰式に合わせて、著名な研究者が最新の研究成果を簡単に紹介
するミニ講演会も企画しまし た。また、実物の展示も含めて研究対象の動物を紹介する「動
物学ひろば」も企画されています。今回は、発表をしない高校生の参加も可能です。多く
の高校生の積極的な参加をお待ちしております。
15
15
1
原木栽培干し椎茸中のV.D2がCa吸収に及ぼす影響に関する研究
桐山あゆみ、亀山若奈 (顧問:小野卓也)
岐阜県立岐阜農林高等学校 栄養代謝班 (岐阜県本巣郡)
脂溶性ビタミン(V)であるV.Dは、植物に含まれる V.D2と動物に含まれる V.D3に分けられる。これ
らは活性型V.Dとして血中Ca濃度を高め、腸からのCa吸収率を上げる生理的作用を持つ。
本実験は、マウスにCa及びV.D2をコントロールした試料を摂取させることで通常の試料を与えたマ
ウスと比較してCa吸収率が向上し、骨重量に有意差が出ると仮説を立て検証実験を行った。試料は
Ca源として「愛媛県宇和島産のジャコ」を、V.D2源としては「しいたけブラザーズ™(岐阜県)原木栽培
天日干し椎茸」を使用した。
骨重量はマウスの大腿骨を摘出し、重量測定を行い比較した。また日光照射によりV.D3は皮下に
生成されるため、試験中は光を遮断して飼育した。
結果、人や動物ではV.D3がCa吸収率を上げるのに有効であるとされているが、本実験においてV.
D2がマウスの骨形成に有意性があることを示唆する実験値を得ることができたため報告する。
2
アカハライモリのクローン作成
木村佳奈子、森年エマ日向子、勝良葉月 (顧問:秋山繁治)
ノートルダム清心学園清心女子高等学校 生命科学コース (岡山県倉敷市)
本研究は親個体を殺さずに受精卵を得る方法として、生物工学的な手法であるクローン技術を用い
てイモリの人工繁殖を目指した。ガードンがクローン作成に成功しているカエルは、単精受精で針の刺
激だけで付活を起こすが、イモリは多精受精で、核移植の刺激だけでは付活しないので、特別な工夫
をして克服する必要がある。
胞胚の割球(ドナー核)の未受精卵(レシピエント)への核移植によるクローン作成を試みた。核移植
した卵の付活には、Ca イオノフォア溶液による方法を用いた。
22 回合計 397 個の卵に核移植を行った。全体では、付活(細胞分裂)したのが 21%、桑実胚以上ま
で発生したのが 3.3%、胞胚まで発生したのが 0.3%であった。しかしながら、ピペットの改善及び移植
後の処置の改善を繰り返して、21 回目の実験では、付活した卵が 96.6%、桑実胚まで発生したのが
38.3%とレベルまで到達できた。最高で胞胚まで発生させることに成功した。
クローン技術は、親個体を殺さずに個体数を増やせる技術でありながら、その成功率の低さが原因
でなかなか実用化されなかったが、さらに良好な実験結果を出して、その技術を動物たちの保護に役
立たせたい。
16
3
富士山西南麓に生息するカイミジンコ(甲殻類)の分布 第2報
金子雄太、若狭和樹、宇佐美恭兵 (顧問:佐野恵子、木本和代)
静岡県立富士宮西高等学校 科学部 (静岡県富士宮市)
私たちは、昨年度から本校周辺の淡水域に生息するカイミジンコ類に興味を持ち、環境と微小生物
の対応関係を評価することを目的に、その分布調査を中心に行ってきた。その結果、多くの水田で見
られる種(Dolerocypris など) と特定の水田だけに見られる種(Limnocythere・Darwinula)があることが
わかった。特定の水田に見られる種は、湖に生息するとされているが、年間通して水がある水田の周
りの溝に生息しているため、水量が多くなくてもそのような場所にも生息が可能なのではないかと考え
ている。また、昨年度不十分だった年間の動態調査を行った結果、食物連鎖によると考えられる動態
変化もうかがえた。カイミジンコはまだ解明されていない部分が多く、調査するほど多くの疑問が生じ
てくる。今回、昨年度から蓄積したデータを中心に、分布・水質・年間変動等の報告を行う。
4
ダイコンとカブの光に対する反応
川村健勝 (顧問:木村亨)
青森県立名久井農業高等学校 TEAM FLORAPHOTONICS (青森県三戸郡)
現在、植物工場では人工光を活用したホウレンソウ、レタス、水菜など葉菜類の栽培がすでに実用
化されている。そこで本研究では、まだ実用化されていない太陽光利用型植物工場における根菜類
栽培の実用化を目指した。植物工場の利点のひとつとして生長の早さがあるが、それは葉菜類の赤
色光と青色光の反応を利用したものである。そこで根菜類にも赤色光と青色光を照射して、生長に与
える影響を探った。根菜類はアブラナ科で消費量の多いハツカダイコン(品種:キスミー)とカブ(品種:
金町こかぶ)とした。その結果、太陽光に加え青色(450nm)LED を照射することでカブの可食部の生
長を早めることに成功したので報告する。
17
5
光による無臭セロリの研究
中山恭輔 (顧問:木村亨)
青森県立名久井農業高等学校 TEAM FLORAPHOTONICS (青森県三戸郡)
子どもの嫌いな野菜のひとつにセロリがあるが、その理由は独特の香りにある。ポリフェノールや繊
維質などの機能性を保ったまま、香りの弱いセロリが誕生すればもっと消費が伸びるといわれている
が、そのような研究例はない。そこで本研究は、栽培法を工夫してまだ実現していない無臭セロリを目
指すことにした。方法は太陽光に加え、消臭作用があるといわれる青色光(450nm)や赤色光(660nm)
を照射することとした。その結果、セロリ(品種:コーネル)に赤色光を照射して栽培することで、機能性
成分のポリフェノール量はそのままで、香りを弱くできることがわかった。またその仕組みをセロリのポ
リフェノール量で推測する方法を考えたので報告する。
6
草花による水質浄化システム「バイオエンジン」の開発
嶋守雄大 (顧問:木村亨)
青森県立名久井農業高等学校 TEAM FLORAPHOTONICS (青森県三戸郡)
生活排水などが湖沼に流入することでアンモニア態窒素やリン酸が増え、その影響でアオコなどの
藻類が発生する富栄養化が問題となっている。特に都市公園の人工池では流れも少なく発生しやす
い。そこで草花によって池の過剰養分を吸収させ水質浄化することを目指して研究した。そこでブラシ
ノステロイド生成阻害剤及びブラシナゾールを陸上植物のサンパチェンスに散布し、さらにアンモニア
態窒素を硝酸態窒素に変換する硝化菌をビーズ化して入れた鉢に植え、水辺に設置する「バイオエン
ジン」という浄化システムを考えた。その結果、水槽及び実際に湖沼で試したところ、水質浄化できるこ
とがわかった。これは水質浄化と都市公園の美化の両面で社会貢献できるものであり、その成果を報
告する。
18
7
光による切り花の伸長促進
小向美沙紀 (顧問:木村亨)
青森県立名久井農業高等学校 TEAM FLORAPHOTONICS (青森県三戸郡)
切り花用の花は花瓶に生けるため茎が長い方が高品質とされている。しかし生長調整剤のほとん
どが草花の徒長を防ぐ伸長抑制効果があるものばかりで、茎の伸長促進に関わるものはすくない。ま
た薬剤を使用した草花を好まない消費者も多く問題となっている。そこで本研究では農薬を使わず、
光だけで茎の伸長促進ができないか探った。草花は人気の高い切り花であるガーベラとジニアとし
た。照射光は太陽光に加え、赤色光(660nm)及び遠赤色光(800nm)とした。その結果、ガーベラでは
遠赤色光を照射したものは約 20%茎が伸びた。またジニアも同様に茎が伸びた。これにより農薬を一
切使わず光を照射するだけで茎を伸ばせることがわかったので報告する。
8
角膜内皮細胞の培養
荒巻理沙 (顧問:小島理明)
横浜市立横浜サイエンスフロンティア高等学校 (神奈川県横浜市)
角膜は目の表面にある透明な組織で目の中に光を取り込む機能があり、5層で構成されています。
角膜内皮細胞はその中でも一番内側に位置しています。霊長類(ヒトやサル)以外の角膜はすべての
層の細胞が再生するのに対し、霊長類である猿とヒトの内皮細胞だけが再生することなく、減少してい
くということを聞いたことがあり興味をもちはじめました。内皮細胞の減少の原因としては加齢やコンタ
クトレンズの長時間使用による酸素不足などがあげられます。そして角膜内皮細胞がある一定数より
も減少すると透明性が維持できず濁ってきて、白内障やレーシックの手術も受けられなくなってしまう
そうです。そこで私は普段の生活の中で環境について意識するべきことのヒントを見つけることを目標
にアホロートル(ウーパールーパー)を用い、条件を変えて角膜内皮細胞を培養・観察することで減少・
再生の仕組みを調べることを試みました。
19
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20
11
地域特産物残渣(ホタテ貝殻・シジミ貝殻)を採卵鶏の飼料に有効活用する研究
山口真緒、大平耀暉 (顧問:中川伸吾)
青森県立柏木農業高等学校 生物生産科3年 (青森県平川市)
養鶏用飼料のトウモロコシはほぼ100%輸入に依存していますが、近年、海外でのバイオエタノー
ルとしての利活用に伴い配合飼料価格も上昇しています。卵の価格が安い上に、飼料代が高騰し、養
鶏生産者は経営存続に危機感を強めています。
そこで、輸入トウモロコシ主体の配合飼料に代えて、本校生産の玄米(青米)や地域特産物残渣の
ホタテ貝殻やおから、野菜くずなどを有効活用し自給飼料を作り、飼料自給率の向上並びに飼料費の
コスト削減に関する研究を行っています。今回は、青森県で年間約40,000トン廃棄されているホタ
テ貝殻や約2,800トン廃棄されているシジミ貝殻を採卵鶏の餌に添加し給与試験を実施し、卵殻強
度及び卵質検査の検証を行いました。結果は両者とも、管理基準(最低基準)2~3kgf を上回る卵殻
強度となり、その有効性が認められました。さらに、シジミ貝殻を与えることによって、卵黄色が濃くな
る結果が得られました。このことは、トウモロコシ主体の飼料から玄米に変えることによって起こる卵黄
色の薄さを改善する救世主になるのではないかと期待されます。
12
植物への物理学的アプローチ
池口弘太郎 (顧問:内山正登)
東京学芸大学附属高等学校 (東京都世田谷区)
マグネループという磁力を使って血行を良くして肩こりを治す道具に興味を持ち、植物にも磁力を与
えた時にも血行(栄養分の流れ)が良くなり、成長が促進されるのではないかと予想し、小松菜にネオ
ジム磁石を用いて 300mT 程度の磁力を与えた時の生育の変化をみたところ、丈の成長が磁力を与え
ていない小松菜よりも 15〜20%ほど伸び、さらに小松菜が磁力線の方向に平均して 7.4°屈曲するの
が確認できた。また、日を追うごとに角度の変化が小さくなっており、屈曲は成長の初期段階で起こる
ということが分かった。そこで植物ホルモンであるオーキシンとの関係についても研究している。さら
に、水耕栽培で育てる時の溶液を磁力を使って水のクラスターを細分化させ、その水を循環させた
時、細胞内への水の浸透性が向上し、結果的に小松菜の茎の太さが 0.3mm ほど太くなった。しかし、
水のクラスター自体の存在を否定する学者もおり今後の慎重な検討と実験の再現性の確認を予定し
ている。
21
13
海藻に共生するバクテリア由来の酵素に関する研究
古賀樹、浦田瑞生、大澤銀河、西方優 (顧問:内山正登)
東京学芸大学附属高等学校 (東京都世田谷区)
2010 年にピエール・マリー・キュリー大学(フランス)のチームが発表した論文によると海苔に含まれ
る多糖類を分解する酵素(ポルフィラナーゼ)を持つバクテリアは、もともと海苔と共生していたが、日
本人が生で海苔を食べているうちに腸内に寄生するようになり、生で海苔を食べなくなった現在でも寄
生しているということである。このことから私たちは 2 つの疑問を抱いた。1)海藻に寄生するバクテリア
には、ポルフィラナーゼのような多糖類を分解する新しい酵素が他にもあるのではないかということ、
2)食生活の違いによって腸内細菌に違いがうまれるかということである。この解決のために本研究で
は 1)実際に海藻を採取してきてその海藻のゲノムからポルフィラナーゼの活性部位に着目してプライ
マーを設計し、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)法によって解析を行い新しい酵素が他にもあるのかを研
究し、2)NCBI 作成による腸内細菌のデータベースを用いて日本人と西洋人の腸内細菌を比較するこ
とで食生活の違いによって腸内細菌に違いが生まれるか研究した。
14
ミカヅキモによる汚染水から放射性物質の除去の可能性について
佐久間美華、土田真平、石井知希、佐久間巧、大津祐太 (顧問:山本剛)
福島成蹊高等学校 自然科学部 (福島県福島市)
ミカヅキモによるストロンチウムイオンの吸収についての研究を先輩から受け継ぎ,研究を開始し
た。先行研究では,原発事故後,学校近くの茶屋沼の微小生物の調査をしていたところミカヅキモ
(Closterium moniriferum) を発見し,アメリカの研究者の論文でミカヅキモがバリウムイオンやストロ
ンチウムイオンを分離固定するということがわかり,発見したミカヅキモを二相培地や CA 培地を用い
て培養して福島の水田にある放射性物質(ストロンチウムイオン)を除去できないだろうかと研究を行
った。その結果,ミカヅキモがストロンチウムイオンを吸収している可能性が高まった。そこで本研究で
は,さらに効率的にストロンチウムイオンを吸収する方法やストロンチウムイオンを吸収したミカヅキモ
の回収方法に関する研究を行っている。また、淡水で一番大きいミカヅキモ(Closterium lunula)でも同
様の実験を実施し,ストロンチウムイオンの吸収と考えられる挙動が見られた。二相培地で培養し,さ
らに研究を進め,福島の除染に役立てたい。
22
15
茶屋沼の微小生物~原発事故後の環境と微小生物の個体数について~
土田真平、天野志緒理、大沼卓登、立花航 (顧問:山本剛)
福島成蹊高等学校 自然科学部 (福島県福島市)
原発事故後の湖沼や河川の微小生物の個体数の変化について,先輩方から研究を引き継ぎ,続
けて調査している。本研究の調査ポイントは,福島成蹊高等学校近くの茶屋沼である。茶屋沼は,福
島市の渡利地区にあり、除染が行われた後も空間放射線量が比較的高い地域である。先行研究よ
り,茶屋沼の水質に関する調査,空間放射線量の調査を実施してきた。本研究では,茶屋沼に採水に
行く頻度を増やし,採水する量を 10Lから 100Lに増やしてより正確な微小生物の個体数を測定し,茶
屋沼の調査ポイントによる季節的な個体数の変化について調査している。同時に,昨年に引き続き放
射性物質(ストロンチウムイオン)を吸収する可能性のある微小生物を探している。筑波大学の白岩
善博先生の研究室の論文でサヤミドロがストロンチウムイオンを吸収するとの記述があったので,同
じミドロ類であるアオミドロもストロンチウムイオンを吸収するのではないかと考え,現在,茶屋沼から
発見されたアオミドロを用いて,ストロンチウムイオンを効率よく吸収する条件の研究も行っている。
16
シャジクモ,ミルフラスコモの保護活動と除染への応用
天野志緒理、佐久間美華、菅野由真、村井凌 (顧問:山本剛)
福島成蹊高等学校 自然科学部 (福島県福島市)
原発事故の影響で水田の微小生物に何か異常が見られるのではないかと考え,茶屋沼近くの水田
から採集した土をペットボトルに純水と一緒に入れ観察した。作付け制限のあった一昨年採取した土
から,絶滅危惧Ⅱ類(VU)に指定されているシャジクモ(Chara braunii )と絶滅危惧Ⅰ類(CR+EN)に指
定されているミルフラスコモ(N. axilliformis )が発生した。シャジクモ,ミルフラスコモを培養するために
市販の稲培土,花と野菜の土,黒土,赤玉土で培養を行ってみた。黒土,赤玉土を混合(体積比 黒
土:赤玉土=3:4)し,純水を使うことが最適であることが分かった。ミルフラスコモは絶滅の危機に瀕
している種なので,さらに培養して保護したい。また,その応用としてシャジクモを塩化ストロンチウム
水溶液の中に入れ,カルシウムイオンを少量加えるとシャジクモの表面に白い物質が大量に付着し
た。文献を調べていたところ埼玉大学の浅枝隆先生の論文にイトシャジクモの体表面にカルシウムを
吸着するという記載があった。シャジクモもカルシウムを吸着し,カルシウムと同じアルカリ土類金属に
属するストロンチウムも吸着すると考え,実験に取り組んでいる。
23
17
学校林に生息するニホンアカガエルの生態学的研究
蕪木史弦、高野将彰、清水準弥、金田尚己、奥野有希、埜田寛生 (顧問:澄川冬彦)
奈良学園高等学校 SS研究チーム (奈良県大和郡山市)
私達は8年前から学校と共同で、約 13ha の校地内にある学校林の里山整備と生物多様性保全活
動を始めた。その結果、奈良県レッドデータリスト記載種だけでも20種の動植物の増殖や回帰が見ら
れるようになった。その中で、厳寒期に産卵し、また再冬眠するユニークな生活史を持つ県絶滅危惧
種ニホンアカガエルに興味を持った。
産卵場の整備から始めて3年間研究を続けてきたところ、産卵した卵塊数は着実に増加した。そし
て、産卵後の再冬眠個体を調べるうちに、すぐに活発に動き出したり、鳴き出したりする個体が見ら
れ、「再冬眠」という言葉に疑問を抱くようになった。
そこで、本種の「産卵」を誘発する要因をつきとめるとともに、「再冬眠」とは生活史においてどのよう
な意味を持つのか、調べてみようと考えた。
その結果、冬眠個体の産卵を誘発する要因は、7℃以上への水温上昇と降雨であることが分かっ
た。また、本種の生活は、水温と体表温度から、冬眠期・産卵期・再冬眠期・活動期の4期に分けるこ
とができた。再冬眠期の個体は、刺激に敏感に反応することから、活動は可能であるが、エサがない
ための一種の休息期と考えられる。
18
カイコの絹糸腺による絹フィブロインシートの作製
小谷海斗 (顧問:溝上豊)
横浜市立横浜サイエンスフロンティア高等学校 (神奈川県横浜市)
本研究は、カイコの絹糸腺からの絹フィブロインシートの作製を試みたものである。初めてカイコの
解剖を行ったとき、絹糸腺が透明で張りのある器官で、何かに使えないものかと興味を持った。そこ
で、天蚕糸を作る手順で絹糸腺を加工してみると、細長く、かつ丈夫な糸状のものが作製できた。そこ
で、この透明で丈夫な材質の利用法を考えた。そのまま薄いシート状に出来ると食品関連品や絆創膏
などの医療関係品などに利用できる。また、既に繭糸による絹フィブロインを用いたフイルムやコーテ
ィング剤などが研究されている。これは絹糸腺中のゲル状のものをカイコが糸にし、それを再度液化し
てフイルムにするものである。本研究は、絹糸腺(ゲル状)から直接的にフイルムをつくるもので、タン
パク質の変性等の変化が少ないものと考える。
24
19
マダラヒメグモの営巣場所選択にみられる嗜好性
井上怜、小林駿亮、板垣純花 (顧問:後藤宗範)
宮城県古川黎明高等学校 自然科学部 (宮城県大崎市)
マダラヒメグモ Steatoda triangulosa は 1980 年代に日本に侵入したとされる外来種のクモである。現
在ではその分布域を広げ,市街地などの人工建造物に不規則網を張って生活している。外来種であ
るため,他の在来種ヒメグモ類との間に生活空間や餌などの点で競争があるならば,在来種を駆逐
し,従来の生態系に影響を及ぼす可能性が考えられるが,本種の生態についての詳しい知見はまだ
多くは得られていない。そこで本研究ではまず,本種の営巣場所の選択における嗜好性を明らかにす
るため実験を行い,同じく市街地にふつうにみられる在来種であるオオヒメ グモ Parasteatoda
tepidariorum との違いを比較した。マダラヒメグモは野外では,軒下など光が直接当たりにくく陰になっ
ている場所に網を張り,自身は壁の割れ目などに潜んでいることが多い。そこで飼育器の中にアクリ
ル板(透明なものと黒色のもの)を数枚設置し,飼育しているクモ数頭を入れ,どの位置に営巣するか
を調べた。実験結果をもとに,マダラヒメグモの営巣場所の選択における①光が及ぼす影響②幼体と
成体による違い③本種とオオヒメグモとの違い という 3 つの点について考察した。
20
ナメクジの記憶の研究
蛭田美紅、髙橋絵理子 (顧問:小平裕子)
福島県立磐城高等学校 生物部 (福島県いわき市)
私たちは、ナメクジの記憶能力について興味を持ち、研究を進めている。
ナメクジの記憶実験は、好物に寄って来たナメクジに刺激の強いキニジン溶液を与え、その好物に
忌避性を持たせ、時間をおいて忌避記憶の推移を調べるというものである。ナメクジの好物としてよく
ニンジンジュースが用いられているが、他の食材では代用出来ないのかと疑問に思い、まず、どの食
材がナメクジの記憶実験に用いるのがふさわしいか、つまり、ナメクジはどの食材をより好むのかを調
べた。
ニンジンジュース、キュウリジュース、ビールへの移動速度をそれぞれ調べた結果、平均値が最も
小さかったのはキュウリジュースであったが、T 検定を行った結果、有意差は見られなかった。
25
21
発泡ガラスを用いた植物栽培に関する検討
中野真紘、辻村杏奈、羽山廣、後藤菜水、游田瑞生、西塚大 (顧問:大津孝佳)
鈴鹿工業高等専門学校 課題研究グループ (三重県鈴鹿市)
農業で用いる農地では 、腐葉土など有機物の自然分解により、自然沈下して体積が減少するとと
もに、固体部分の割合が増大する。そのために気体部分の割合が減少して通気性が悪くなり、植物の
成長が妨げられる。そのため、気体部分と液体部分を同時に農地に保持して、固体部分が常に適切
な排水性、保水性、保肥性の状態を維持する必要がある。また近年、異常気象による野菜の不作が
問題となっている。そこで、地域企業(㈱アベックス:安部宏社長)と連携し、発泡ガラスを入れることに
よって畑の土と田んぼの土の効果を調べた。発砲ガラス「グラセーラ」とは、廃ガラスを原料とする無
機系多孔質軽量材料であり、原材料となるガラスの成分の約 70%は、土壌に多く含まれているケイ素
(SiO2)である。 他の成分も、ナトリウム(Na2O)やカルシウム(CaO)などで、いずれも日常生活用品な
どに使われていて毒性がなく、安心安全な材料である。具体的には、粒径を変えた発泡ガラスを様々
な割合で畑の土と田んぼの土に混ぜ、小松菜の発芽率違いを調査し、発泡ガラスの有効性について
観察した結果について述べる。
22
バイオプラスチックの耐熱性向上に関する研究
渡邉充哉、川崎禎明、懸野正崇、森陽一郎、浅川健一郎、伊藤遼、小川凌、西村大樹、
稲垣美穂、政木確 (顧問:大津孝佳)
鈴鹿工業高等専門学校 課題研究グループ (三重県鈴鹿市)
生分解性プラスチックは、化石燃料を使わずに製造することも可能であったり、埋め立てても微生物
に分解されることで環境の負担が小さいことなど、環境にやさしいという利点を持つ。しかしながら、生
分解性プラスチックは耐久性・耐熱性が通常のプラスチックに比べて低く、機能性に劣るという問題点
があった。そこで、発泡ガラスの添加による耐熱性向上に関する検討を実施した。本実験に用いた発
砲ガラス「グラセーラ」(㈱アベックス)は、無機系多孔質軽量材料であり、ガラスの成分の約 70%はケ
イ素(SiO2)、他の成分も、ナトリウム(Na2O)やカルシウム(CaO)などであり、毒性がなく、安心安全な
材料である。
実験の結果、生分解性プラスチックに発泡ガラスを添加すると耐熱性の他、保温性の向上もみられ
た。これにより、建材への利用による経済効果も期待できると考えられる。本発表ではこの検証につい
て述べる。
26
23
3D ブロックを用いた軽量ヘビ型ロボットの開発
辻村杏奈、梅川響、高橋祐策、岡本尊、中西虹太、藤井駿吉、坂倉広樹、江口祐大、
伊藤麗央、土屋慶伍、勝田敦 (顧問:大津孝佳)
鈴鹿工業高等専門学校 課題研究グループ (三重県鈴鹿市)
地域の課題として、猿による農作物への被害があり、様々な取組がなされている。これまで「猿が蛇
を嫌う」らしいと言われてきた。2013 年、Quan Van Le 氏等により、猿がヘビを見ると即座に警告を発す
る特殊な細胞が脳内にあることが報告された。そこで、猿の行動についてもっと知りたいと思った。「猿
は本当にヘビが嫌いなのか?」色、形、動き、その検証を行うべく、ヘビ型ロボットの開発を始めた。本
研究にあたり、色、形、動きなどを変えることが出来、軽量であることが望まれる。本ロボットの特徴
は、プラスチック製の 3D ブロック(アーテック社)を用いることで、軽量で組み換えが容易であり、プログ
ラムで自由な動作が可能となった。本発表では、ヘビ型ロボットのバイオミメティクスの分野への応用
について述べる。
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幼稚園生と取組む 3D ブロックを用いたダンゴムシの行動観察
西村菜摘、落合晴香、浮田菜央、松浦あや子、山口成美、田堀朱音、大屋玲、那須結実
(顧問:大津孝佳)
鈴鹿工業高等専門学校 課題研究グループ (三重県鈴鹿市)
バイオテクノロジーの重要性と共に、生物への関心を低年齢から高めることは、非常に重要なこと
である。そこで、実験手順を簡単にすることで、幼児とともに実験をすることを可能にし、実験を通して
結果を得、考察する喜びを幼児と共有する。本研究では、3D ブロック(アーテック社)を用いた。この
3D ブロックはどの方向からも接続できる構造をしており、思った形を実現するに適している。そこで、
3D ブロックを用いた迷路等を用い、身の回りにいるダンゴムシの持つ特徴や性質について調べた。観
察には、オカダンゴムシを用いた。オカダンゴムシは無農薬栽培に於いて害虫ともなっており、食の安
心の観点からも対策が望まれている。更に、忌避法や、捕獲法など、有機栽培への応用等を試みる。
また、ダンゴムシの行動パターンや特徴(記憶等)から医療等への活用法を模索する。
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25
透明骨格標本に関する研究
田堀朱音、岩崎由佳、笠井見友希 (顧問:大津孝佳)
鈴鹿工業高等専門学校 課題研究グループ (三重県鈴鹿市)
価値創造型エンジニアの育成を目指したアイディアの創造・保護・活用を実践的に学ぶ「知的財産
教育」の一環として、「課題研究~創造・保護・活用~」がある。本研究では、実験動物の 3R の原則、
苦痛軽減(Refinement)、使用数削減(Reduction)、代替法活用(Replacement)から、生命を大切にし、そ
こに価値を生み出すことに着目し、廃魚の透明骨格標本製作に取り組んだ。透明骨格標本は、生物
の骨格を観察するため様々な染色法を用いて作成される標本であり、染色には一般的にアルシアン
ブルーとアリザリンレッドが用いられる。特に、解剖による乾燥状態での骨格標本作製が難しい小型
の動物や胚に対して有効な観察手段であり、おもに分類学や比較解剖学、発生学などの研究分野で
広く用いられている。これまで、標本に使用する生物の種類や大きさや pH の違いによる染色法につい
て調べた。本研究では特に、軟骨染色や標本に使用する薬品の効果を調べる。
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ダンゴムシの交替性転向反応が生じるメカニズム
金田穂乃香、西澤香南実、橋本佳澄 (顧問:西出和彦)
福井県立武生高等学校 (福井県越前市)
ダンゴムシを連続するT字路に進入させると交替性転向反応という行動を示すことが知られている。
この行動に対して BALM 仮説では,左右の脚にかかる負荷を均等にする結果、交替性転向反応が生
じると説明される。私たちは、BALM 仮説では説明が困難だと思われる行動を観察し、昨年度の動物
学会岡山大会で、新たな仮説「壁伝い逃避行動」仮説に基づく観察実験の結果を発表した。しかし、ダ
ンゴムシの左右両体側が壁に接触する程度の細いT字路を歩行させても交替性転向反応を示したこ
とから、壁伝い逃避行動仮説だけでこの行動を説明することも不十分であることが分かった。そこで、
改めてダンゴムシにおける交替性転向反応について、整理して説明を試みる。(1)左右交替性転向
反応は逃避行動だと考えられる。(2)目、触角の機能を失わせても交替性転向反応は生じる。(3)壁
があると壁に沿って歩く。(4)壁に沿って歩いていて壁がなくなると、壁側へ進行方向を変える。(5)左
右両体側が壁に接触するような連続する細いT字路でも交替性転向反応を示す。
ダンゴムシの行動の探究から、動物の行動の本質に迫りたい。
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27
カイコガを用いた寿命評価試験法の確立
相澤悠太、石井貴大、大松澤侑矢、菅原諒、加藤数馬 (顧問:小島紀幸)
東北学院中学校・高等学校 (宮城県仙台市)
本研究は,カイコガをモデル生物とし,酸化ストレスやヒートショックを与えた場合の寿命への影響を
調査することで,主にアンチエイジングに関わる因子を探索することが目的である。これらの生体影響
評価は,すでにショウジョウバエや線虫 C. elegans などで実施され,in vivo スクリーニング手法が開発
されている。しかし,同様にゲノム解析されたカイコガでは,未だにその評価試験は実施されていない。
現在,カイコガについては,免疫力評価の対象生物としても期待されているため,それらの評価試験
を通して得られる研究成果は,免疫力賦活活性の調査に応用できるだけでなく,今後の食品や医薬
品などに含まれる特定あるいは非特定成分の安全性や有効性の評価にもつながるものである。ここ
では,カイコガの羽化後の日数と個体重量との関係,酸化ストレス耐性および熱耐性について調査し
た結果を報告する。
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アルパカの毛について
緒方ちえ花、松石夏実 (顧問:藤田和久)
大阪府立農芸高等学校 資源動物科ふれあい動物部アルパカプロジェクト (大阪府堺市)
本校では6頭のアルパカを飼育しており、それらの毛を利用して毛製品を制作・販売しています。
アルパカの毛は保温性や耐久性に優れており、細くて柔らかく軽いです。そのため、高級毛織製品
として利用されています。毛は、部位によって2種類に分けられます。首や足などの短い毛は「セカン
ド」、胴周りの長い毛は「ブランケット」と呼ばれています。セカンドの質は、ブランケットに比べると劣っ
てしまうため、主に利用されるのは、ブランケットのみで、セカンドは廃棄されています。
本校でも、毛刈り・洗毛・糸紡ぎ・機織りの作業をすべて自分たちの手でおこない、ブランケットを利
用して、マフラーやベストを制作しています。しかし、毛を無駄にしてはいけないと考え、セカンドを利用
した製品作りにも取り組みました。一度紡いだだけでは糸が切れやすかったため2本の糸を紡ぎ、そ
れらを合わせて二重に紡ぐことで強度を増すことができました。これによりニット帽を制作することがで
きました。今後は、製品の質の向上やバリエーションを増やすことに重点をおき活動を行っていきま
す。
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29
ヤギの除草活動
豊浦拓海、鮫島一貴 (顧問:藤田和久)
大阪府立農芸高等学校 資源動物科ふれあい動物部芝生プロジェクト (大阪府堺市)
ヤギの除草実験は、雑草の草刈りを機械で行うのでは無く、草食動物の採食能力を利用し除草を
行う研究です。本研究では、本校で飼育しているヤギ2頭を使用して実験を行いました。実験では、ヤ
ギをサークルで囲い除草を行う方法とリードで繋いで除草を行う方法で比較しました。実験を3回行っ
た結果から、リード方式が除草には効率的でした。
今回の実験で判明したこと:①ヤギを自由に活動させたほうが効果的、②ヤギの除草には、雑草の
草丈で効果に違いがある。以上の2点が判明しました。
ヤギによる除草活動は、機械を使用しないため排ガスが皆無であること、機械事故が起きない安
心、刈った草を動物が採食するので処理不要のメリット等の利点があります。欠点として、ヤギの除草
は、機械より時間が必要、動物管理に関してコストがかかること、ヤギの採食には、木の葉や樹皮も
食べてしまうので注意が必要です。今後は、ヤギ除草の改善点として、草の成長が初期の段階で行う
こと、ヤギ除草を長時間継続的に行うことの2点です。私たちは、今後もヤギ除草の知名度拡大とヤ
ギの能力を引き続き研究して行きたいです。
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ハリネズミの泡付け行動観察
北野万葉、島菜月、小久保明莉 (顧問:藤田和久)
大阪府立農芸高等学校 資源動物科ふれあい動物部ハリネズミプロジェクト (大阪府堺市)
意外と知られていないハリネズミの泡付け行動(アンティング)について私たちは研究を始めました。
泡付け行動(アンティング)とは、においや食べ物に反応、咀嚼をして泡をつくり、自分の体の針に舌で
舐めつけます。泡付け行動は研究者の間でも詳しくは判明されておらず、さまざまな説が立てられて
います。そこで私たちは、ある条件を作り出し、その条件上で泡付け行動を調べることにしました。
実験条件 サンプル個体:ハリネズミ(性別♂ 年齢不明 外観 やや小柄 左後ろ足が生まれつき悪
い)。
条件設定:①通常に与えているエサ(フェレットフード)を与えない場合、私たちで選んだ食べ物(カボチ
ャ、ニンジン、鶏ささみ等)を与えることで夜と昼で泡付け行動を行うか。②通常に与えているエサ(フ
ェレットフード)を与える場合、私たちで選んだ食べ物を通常の採食以外で与えることで夜と昼で泡付
け行動を行うか。
観察ポイント:泡付け行動の確認(時間を設定し、区切り与える)、顕微鏡で、泡を観察し、各種の試験
溶液を使って調べる、リトマス紙で pH を調べる。
観察結果・考察:7月・8月に2回の夜間観察を実施し、結果を発表します。
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鳥類の性決定メカニズムの解明
松浦美里、梶山瑞希、佐藤太紀、清水雅弘 林茉莉香 (顧問:中野公隆)
広島県立西条農業高等学校 (広島県東広島市)
畜産分野において雌雄生みわけ技術はほ乳類でほぼ完成されている。しかし鳥類は雌ヘテロ型の
性染色体構成をとり,ほ乳類と異なった性決定機構を持っているため,産業的な利用や飼育下の繁
殖において,雌雄判別は大きな課題となっているとともに鳥類の性決定機構もいまだ明らかになって
いないところが多い。そこで本研究では産業家畜として代表的なニワトリにおけるミートプロダクショ
ン,エッグプロダクション化への可能性を探ることを目的とした。
(1)ニワトリヒナの性比を調査,(2)ニワトリ無精卵の胚盤葉細胞を回収しDNA鑑定,(3)ニワトリ受精
卵,受精直後の胚盤葉細胞を回収しPCR法でDNA鑑定,(4)受精後胚盤葉細胞の一部を回収しPCR
法でDNA鑑定後,体外培養で孵化の可能性の検討を行った。その結果,生物学における性比は1:1
と考えられているがニワトリヒナでは僅かにオスの発生率が高かった(0.01~0.08%)。また未受精卵
のDNA鑑定では,PCR法で増幅させれば観察できる可能性もうかがえた。卵胞の細胞分裂時に放出
する極体の存在にともない不確実な面もあるが,受精1~2日目であれば胚盤葉細胞のPCRでも雌
雄判別ができた。
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河川のモデル装置を用いた硝化作用の観察・硝化細菌の培養
山田春樹、高山ほの香、柴田隼太郎、角田健吾 (顧問:若林春日)
宮城県仙台第二高等学校 生物部 (宮城県仙台市)
河川には自然浄化作用があると云われている。その仕組みの一つに、有毒なアンモニウムイオン
が別の物質に変えられる「硝化作用」がある。これに着目した私たちは、河川の環境を再現したモデル
装置を作り 15 年近く研究を行ってきた。汚れのモデルとして塩化アンモニウムを装置に入れイオン濃
度の変化を毎日測定している。
昨年度からは株式会社リバネス「東北バイオ教育プロジェクト」の支援のもと、硝化細菌前後の石の
表面のバイオフィルムを構成する生物種を調べるため、DNA 解析を行った。その結果、実験の前後で
バイオフィルムの生物種が変化し,硝化細菌の増加が確認された。
今年度は浄化剤の開発も視野に入れ、広瀬川から採取した硝化細菌の単離培養を行った。培地内
のイオン濃度を測定した結果、硝化細菌の増加が確認された。今後は浄化剤の開発を通して、河川
や水槽などの水質改善に役立つ技術を確立したいと考えている。
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里山におけるチョウ相の比較
髙橋翠、粟田香名子 (顧問:坂口美紀、中村志芳)
和歌山県立向陽高等学校 環境科学科 (和歌山県和歌山市)
近年、生態系保全において里山が注目されている。里山とは、人間が生活をする上で自然に適度
に手を加えて構成された環境で、都会と大自然の境界の環境といえる。里山では人間が自然に手を
加えたことにより、自然の環境要素に「ため池」「田畑」などの環境要素が加わる。そのため、里山では
さまざまな種類の生物がひとつの狭い範囲に集まることになり、豊かな生物相が構成される。しかし、
里山の管理方法は場所によって異なることから、生物相にも違いが見られる。
そこで、本研究ではチョウ相の比較により里山の管理方法について考えることを目的として研究を
行った。具体的には和歌山県岩出市の「げんきの森」と海南市の「ビオトープ孟子」の2ヶ所の里山に
おいてモンシロチョウやモンキチョウ、オオムラサキをはじめとするチョウ類の種類及び個体数をライン
センサス法により調査した。なお、「げんきの森」は田畑のない里山で、和歌山県内で数少ないオオム
ラサキの生息場所であり、「ビオトープ孟子」は無農薬水田や畑があり、ユネスコの第一回未来遺産運
動に指定された里山である。今回、以上についての報告を行う。
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ドジョウ類に寒冷適応をもたらす不凍タンパク質の探索
佐野舜一、加藤広司、新藤弘康、青木ほのり、遠藤菜央 (顧問:後藤禎補)
山形県立米沢興譲館高等学校 コアSSクラブ (山形県米沢市)
ドジョウ類は国内に広く分布し、冬の気温が-10℃を下回る寒冷地でも田や河川などの泥中に潜り、
越冬する。本研究ではドジョウ類の低温耐性に着目し、ドジョウ、タモロコ、フナの間で低温下での生
残率を比較した。その結果、ドジョウはタモロコやフナに比べて低温下での生残率が高いことが示唆さ
れた。近年、寒冷地に生息する動植物、菌類、細菌類などの様々な生物群において不凍タンパク質
(Antifreeze Protein, AFP)が確認されており、AFP は生物の寒冷適応において重要な役割を果たして
いることが明らかとなっている。我々はドジョウ類が AFP を持つのではないかと考え、ドジョウ
Misgurnus anguillicaudatus とフクドジョウ Barbatula barbatula について、筋組織から抽出したタンパク
質の電気泳動を行ったところ、一般的な AFP と同程度の分子量である 3k~14kDa 程度のバンドが複
数種類認められた。現在、これらのタンパク質が AFP としての性質を有するか、また、温度変化によっ
て発現量が変化するかについて、調査・検討を行っている。
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分子系統樹によるプラナリアの比較
見城昂祐、小島遼平、小林一也、田村彰彦、田村和紀 (顧問:田部井正代、阿久津紀行)
栃木県立足利高等学校 科学部生物班 (栃木県足利市)
日本に生息するプラナリアは約 20 種といわれている。本研究では、足利市内に生息するプラナリア
の塩基配列を調べ、分子系統樹を作成するとともに、生息場所・生殖方法による違いを比較検討し
た。
栃木県足利市内の5か所の地点から採集したプラナリアを、18℃に設定したインキュベーター内で
飼育した。採集地・生殖方法ごとに 10 個体の DNA を抽出し、mtDNA 上の CO1 遺伝子の一部を PCR
法で増幅した。増幅した DNA についてシークエンスを行い、塩基配列解析ソフト(Seqman)で塩基配列
を決定した。次に、系統樹作成ソフト(ClustalX, MEGA)を使い、「距離法」による分子系統樹を作成し
た。
その結果、足利市北部に生息するプラナリアはナミウズムシ(Dugesia japonica)であることが判明し
た。その中に、塩基配列が他と比べ、大きく異なっている個体が見つかった。見かけ上の差は無い
が、系統樹では別の種と思われるほど異なっていた。
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あなたの先祖はどこから来たの?
~遺伝子解析による北海道上川地方のアズマヒキガエルの由来と分布~
阿部勇人、中原正登 (顧問:戸嶋一成)
北海道旭川西高等学校 生物部 (北海道旭川市)
旭川西高校生物部では、埼玉から持ち込まれた外来種と言われているアズマヒキガエル(以下アズ
マ)が、周囲の環境等に与える調査を行ってきた。アズマが外来種であることは、過去に我が部や他
団体が行った調査などでほぼ事実であるが、常々科学的根拠が得られないものかと考えていた。今
回は、アズマの肝臓片のミトコンドリアDNAを用いた系統解析を行い、先行研究で得られているデー
タとの比較を行った。これまでの結果、約30年前に旭川でアズマを放したと伝えられている地点から4
つのハプロタイプが確認された。そのいずれもが関東地方から報告されているハプロタイプに由来す
ると考えられるものであった。旭川周辺で採集された個体は全てこの4つのタイプのいずれかであっ
た。また、北海道では以前から函館にアズマが生息しており、現在では札幌市近郊(石狩川流域)でも
その分布が確認されている。今回、函館や札幌の個体も解析した結果、函館の個体は旭川と類縁関
係性がなく、札幌の個体は旭川と同一の配列であった。従って、札幌のアズマは旭川の個体が石狩
川の流れに乗り移動し、分布域を広げたものと考えられる。
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タニシ精子に関する研究
髙橋真湖、德山絢子、榊原望明、大山みか、佐藤のぞみ (顧問:二瓶貴之、鈴木俊彦)
宮城県宮城第一高等学校 生物部 (宮城県仙台市)
本校生物部は、4年前からタニシ精子に関する研究を始めた。昨年の本大会では、蛍光染色を用
いての核およびミトコンドリアの局在や走査型電子顕微鏡を用いた正型精子および異型精子の微細
構造について報告した。
その一方、本校生物部のタニシ研究の原点となる精巣中に存在する正型精子と異型精子の割合が
大きく異なるにもかかわらず、正型精子は卵と受精し、雌体内で正常に発生して、稚貝として誕生す
る。精巣中において、その割合が極端に小さい正型精子がなぜ受精できるのか、正常に受精できる仕
組みに興味を持ち続けてきた。本研究では、昨年発表した内容も含め、作成した組織切片像等から正
型精子の受精機構について検討した。その結果、精巣から陰茎としての役割を持つ右触角につなが
る管の組織像で、正型精子を含む小胞状のものが観察された。この結果から、一考察として、精子が
精巣から出る際、はじめに正型精子が精巣から出て、右触角に送られることが考えられる。
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広瀬川の水質調査と水生昆虫に関する研究
内海彩織、宮本栞、佐藤知美、菅原海斗、深沢萌香、吉原実祈 (顧問:二瓶貴之、
鈴木俊彦)
宮城県宮城第一高等学校 生物部 (宮城県仙台市)
広瀬川の水質調査と水生昆虫に関する研究は、本校生物部が以前から続けてきた継続研究であ
る。しかしながら、その研究方法には改善すべき点が多くあり、これまでも少しずつ調査方法を変えて
きた。昨年、芦生・環境コンソーシアムに参加し、さらなる改善を必要とすることを痛感した。
そこで、本研究では、これまでの調査対象地(本研究では中流域となる)の他に2箇所(上流域と下
流域)を調査対象とした。調査方法は、月に1度、部員と顧問が分かれて同日に3箇所の水質調査お
よび水性昆虫の採集を行うようにした。調査後、パックテストを用いた水質調査と水性昆虫の同定を行
った。また、その調査結果を、行政等で発表している広瀬川のデータと比較した。その結果、本校生物
部が調査した水質において、上流での COD の値が高かった。これは、COD は有機物以外の還元性無
機イオンが存在しても正の誤差が生じる。上流の COD の値が高い一要因として、調査日の2、3日前
に雨が降ったことで周囲の地層等から硫化物イオン等が流出したことによる可能性がある。
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コオロギ前肢の感覚情報
上坂真裕子、矢野更紗 (顧問:山本高之)
帝京大学高等学校 コンピュータ科学部 (東京都八王子市)
昆虫の肢には、様々な種類の機械受容器があり、外界の情報や自己の状態を検知し感覚神経の
興奮として、中枢に伝えている。このはたらきを、ヨーロッパイエコオロギ(Acheta domestica)を材料とし
て調べた。コオロギの前肢を基節で切断し、コルク板におき、腿節に電極として 3 本のステンレス製の
昆虫針(微針)を刺して、細胞外電極誘導法による感覚神経の活動の観察を試みた。前置増幅器の出
力を、最初はオシロスコープに接続したが、交流ノイズが大きく観察が困難であった。そこで前置増幅
器の出力をスマートフォンやタブレット端末やノートパソコンにオーディオインターフェイスを介して接続
したところ、交流ノイズも少なくなり、前肢に機械刺激を与えた場合の感覚神経の活動を観察すること
ができた。
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メキシコサンショウウオの産卵について
鏡真奈、高橋桜、成田柚女 (顧問:佐々木隆行)
山形県立山形西高等学校 放課後実験倶楽部 (山形県山形市)
両生類の産卵形態は多様であるが、卵を利用した研究分野では卵の入手が容易なアフリカツメガ
エルに研究が偏りがちである。他の両生類で研究をしようとした場合、野生個体を採取するのが一般
的であり、大量に入手しようとすれば生態系に影響を与えたり、絶滅させてしまう懸念がある。メキシコ
サンショウウオは、実験動物として世界的に使用され、繁殖個体が流通しているが、産卵コントロール
の方法が確立されていない為、受精や初期発生の分野での利用は少ない。
そこで、メキシコサンショウウオの産卵コントロール方法の確立を試みた。一般的には、低温刺激で
産卵するとされているので、明暗周期(明 12h 暗 12h)を固定し、低温処理により産卵するか確かめた。
また、ホルモン投与も試みた。
その結果、明暗周期を固定した条件で低温刺激を与えただけでは産卵しないことを確認した。低温
にしただけでは産卵しないことから、明暗周期や温度の乱高下が産卵に影響している可能性が考えら
れる。
また、ホルモン投与では、アフリカツメガエルとは異なる結果が得られたことから、ホルモンの作用
機序が異なる可能性が示された。
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クマムシと酸性雨の関係について
小林雛子、三浦早耶香、兼子悠、佐藤涼乃 (顧問:佐々木隆行)
山形県立山形西高等学校 放課後実験倶楽部 (山形県山形市)
緩歩動物であるクマムシは、乾燥状態では乾眠に入り、様々な条件で高い耐性を持つことで知られ
ている。しかし、酸性雨が降る条件では、乾眠状態から目覚めてしまう為、クマムシが耐えられないの
ではないかと考えた。山形西高では、クマムシと酸性雨の関係について調べるため、これまでに様々
なpHの塩酸の中で、乾眠から目覚めさせた場合、pH3まで耐えられることを確認している。酸性雨は
pH3になることもあるが、pHだけ見ればクマムシは耐えられることになるが、酸性雨の原因物質であ
るSOXやNOXから生じる酸は、硫酸や硝酸なので、この段階では、影響がないかは不明である。
そこで、今回、様々な濃度の硫酸と硝酸の中でクマムシが耐えられるか確認した。
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酵母のチカラ
井上海香、安高亮、内田悠奈、松本日南望 (顧問:副島英子)
福岡工業大学附属城東高等学校 科学部 (福岡県福岡市)
本研究では、昨年の酵母によるリンゴ発酵および、アルコール発酵の研究を踏まえたうえで、酵母
菌についての新たな研究に取り組んだ。それは花の中に住んでいる酵母菌を見つけ、それを食品加
工に生かすというものである。花に住む酵母菌には、未だ未発見のものが多く、私たちでも新たな酵
母菌の発見の可能性があるといえるからだ。
今回は、学校の敷地に生えているツツジやサクラの花、さらに柑橘類などの果物の花と合わせて 10
種類以上の花を使用し、それらの花の中から酵母菌を探した。
実験では、寒天培地に生えた菌を単離して、単離した菌の DNA を抽出、それを PCR で増やし、電気
泳動を行うことで、それが原核生物か、真核生物かを見分けるという方法をとった。私たちは、幾度か
この実験を重ねるうちに、遂に酵母菌と似た菌を見つけることができた。
発見した酵母菌が昨年のものと比べてアルコール発酵能力がどれくらい違うのかその結果を報告
する。
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43
小さくても増えます~ミドリムシ大量培養作戦~
佐藤政磊、児島早咲、岡本覚、古賀瑞穂 (顧問:副島英子)
福岡工業大学附属城東高等学校 科学部 (福岡県福岡市)
近年、豊富な栄養源として注目を浴びているミドリムシを資源として活用するためには、短期間に大
量にミドリムシを培養することが必要である。私たちはミドリムシの大量培養の方法をミドリムシの生態
や性質から導き出すことを目標に平成24年度から研究を行っている。
そこで、昨年の走光性の研究では、ケミカルライトを用いた、ミドリムシの走光性の実験を行った。そ
の結果、ミドリムシは赤外線のような波長の長い光よりも、紫外線のような波長の短い光を好むことが
わかった。
今年は昨年の結果を条件に用いてミドリムシの走光性を利用した培養実験(蛍光灯、日光、ブラック
ライトそれぞれの下で培養)を行い、さらに温度(冷蔵庫内、室内、ヒーター内それぞれで培養)や液体
肥料の量(毎日、週1回で与える回数を変えて培養)といった様々な条件下で培養することによって、ミ
ドリムシを大量に培養する方法を模索した。
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クマムシの環境耐性に対しての蘇生率
國分亜異香、岡出隼、川島大和、平澤桃世、舩木鉄元 (顧問:佐沢勇太)
神奈川県立弥栄高等学校 サイエンス部生物班 (神奈川県相模原市)
クマムシは緩歩動物門に分類されている 0.1~0.8 ミリ程度の大きさの動物である。クマムシは私た
ちの身近な苔の中や池、山脈、海など様々な場所に生息している。このように身近に存在しているク
マムシは、乾燥すると樽型になり、様々な環境条件に対する耐性があることが報告されている。このこ
とからクマムシは近年「最強生物」と話題になっている。そこで、この最強説を裏付けるための基礎知
見を得るため、また既に報告されている環境耐性について確認をするため、実験を行った。実験で使
用したクマムシは、神奈川県内で採取した苔から採集した。環境条件については、樽型と通常状態の
それぞれについて電子レンジによる加熱、紫外線、高気圧、高温、低温に対する耐性を検証した。そ
の結果と、樽型から通常状態への蘇生率を報告する。
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土壌動物を用いた環境評価の正確性
小宮山友絵、中田柚凪、米倉司、根本優、足立裕美 (顧問:山浦邦宏)
神奈川県立弥栄高等学校 サイエンス部生物班 (神奈川県相模原市)
土壌中にはさまざまな種類の土壌動物が存在し、それらの分布は環境変化に大きく影響を受ける。
このことから、環境評価に土壌動物が利用されることがある。
私たちは以前から、「土壌動物による自然の豊かさ評価(青木,1989)」に基づいて、学校の付近の
森林について調査を行ってきた。しかし、同じ環境から採取した土壌でも、時期によって数値に差が出
ることが分かった。本研究では、これまで同一の環境としていた地域において、その環境によってより
細かく土壌の採取地点を分けた。また4月以降、毎月調査を行い、自然度の変化をより詳細に調査し
た。このことにより、サンプルの採取地点や時期の違いによって起こる、自然度の値の変化の度合い
を調査した。
46
シンナムアルデヒドは抗菌物質の効果にどのような影響を及ぼすか
古井瑛恵、長谷川水輝、加賀谷慧子 (顧問:遠藤金吾)
秋田県立秋田南高等学校 (秋田県秋田市)
乳酸菌が産生する抗菌ペプチドであるナイシンは様々な食品に保存料として使用されている。ナイ
シンはグラム陽性菌には細胞膜に細孔を形成することで抗菌効果を示すが、グラム陰性菌に対して
は抗菌効果を示さない。しかし、ナイシンとシナモンを併用すると、ナイシンの抗菌効果が促進され、グ
ラム陰性菌(大腸菌(Escherichia coli O-157:H7))に対しても抗菌効果を示すようになることが分かって
いる。我々はこれまでの研究で、シナモンの主な香り成分であるシンナムアルデヒドがナイシンの抗菌
効果を促進し、大腸菌(Escherichia coli DH5α)にもナイシンが抗菌効果を示すようになることを発見し
た。そこで、本研究では、次の 3 点を目的とした。
① シンナムアルデヒドのどのような構造がナイシンの抗菌効果を促進しているのかを明らかにする。
② シンナムアルデヒドがどのようなメカニズムでナイシンの抗菌効果を促進しているのかを明らかに
する。
③ シンナムアルデヒドがナイシン以外の抗菌物質の抗菌効果を促進するかどうかを明らかにする。
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香料の抗変異原性に関する研究
佐々木晴香、佐藤春佳、吉岡絵里 (顧問:遠藤金吾)
秋田県立秋田南高等学校 (秋田県秋田市)
秋田県では、がん死亡率が毎年上位であることが問題となっている。がんの原因の 1 つとして突然
変異が挙げられるが、我々は、食品に使われる香料に着目し、突然変異を抑制する機能を持つ香料
を発見し、香りを楽しむのと同時に健康の維持増進を実現することを研究の目的とした。バニラの香り
の主成分であるバニリンは代表的な香料の 1 つである。バニリンは大腸菌を用いたエームス試験にお
いて突然変異抑制効果が認められており、これは DNA 修復系の中でも組換え修復によるものである
ことが報告されている。また、哺乳類細胞においても様々な変異原による突然変異を抑制することも
報告されている。
本研究では、主要な DNA 損傷の 1 つである DNA 酸化損傷による突然変異に対して、バニリンがど
のような作用をもたらすかを出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)を用いて検証した。その結果、バニ
リンは自然突然変異に関しては影響がないこと、過酸化水素による点突然変異は抑制すること、その
際に、組換え修復は促進されておらず、DNA 酸化損傷が生じることを抑制している可能性が示唆され
た。
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ナマズの行動と地震の相関性
谷野陽太郎、千田健太郎、高橋優太、白石正大 (顧問:田中恵太)
宮城県仙台第三高等学校 (宮城県仙台市)
私達はナマズの行動と地震の相関性について研究を行っている。ナマズが暴れると地震が起こると
いう現象は昔からとても有名だが、すでに熱帯性のナマズであるレッドテールキャットフィッシュによる
例が報告されている。そこで私達は在来種であるマナマズ(Silurus asotus)を用い、その行動と日本各
地で起きる地震との相関性に注目した。
ナマズの行動を,水槽上部に設置した赤外線センサーカウンターの数値を 1 時間に 1 回の頻度で
撮影することで定量化し,その行動データと公開されている気象庁の地震データを照合することから
二者の関係性を求めた。
その結果,測定期間 6 月 4 日~7 月までの 2 か月のあいだで,県内震度 4 以上の地震が 12 回発
生し,そのうち,発生前に行動データが大きく変化したのは 4 回(確率 33%),発生後に行動データが大
きく変化したのは 1 回(確率 8%)だった。このことから、地震発生前にナマズは行動することが多いとい
うことが分かった。今後,さらに詳しい分析を進めていき報告する。
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エゾイソアイナメの発光細菌の培養と環境条件の違いによる発光の変化
伊藤青空、青木雄一、佐々木隼 (顧問:永井由佳、田中恵太)
宮城県仙台第三高等学校 自然科学部生物班 (宮城県仙台市)
災害時に電気がなくても使えるランプを作るため、発光細菌がよく光る環境条件について研究を行
った。
エゾイソアイナメの発光器から採取した発光細菌を、固体培地と液体培地で培養した。固体培地で
は加熱時、冷却時の細菌の発光の変化を見た。また、液体培地では試験管で 12 時間振とうした時の
細菌の発光の変化を見た。
その結果、全ての培地で培養に成功したが、固体培地と液体培地で発光持続時間に差が見られ
た。加熱実験では、20℃から始めて 40℃で発光を確認できなくなったが、1 日後に再び発光が見られ
た。冷却実験では、24 時間冷却直後は発光が見られなかったが、培地温度が 14℃に上昇した 20 分
後に発光を確認できた。振とう実験では、振とう後に強い発光を確認できたが、静置後は上澄みのみ
発光が確認できた。これを撹拌すると、試験管全体に強い発光が見られた。
これらのことから、発光細菌の培養は容易であること、14℃~35℃で働く酵素が発光に関係してい
る可能性と、酸素が発光の強さに関係している可能性が考えられる。今後は発光と酸素の関わりにつ
いて詳しく調べ、DNA 鑑定などを用いて細菌の同定も行う予定である。
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ヒトデの抗菌効果
澤田尚毅、堀川貴広、船越健志郎、吉川洸樹、高木駿、千葉彼野人 (顧問:中野剛)
宮城県仙台第三高等学校 理数科サポニン研究班 (宮城県仙台市)
棘皮動物門に属するヒトデ類は,ウニ類やナマコ類と異なり食用には向かず,漁の網にかかっても
ただ捨てられるだけの存在である。その原因として渋みをもたらすサポニンの存在があげられるが,こ
の物質はナマコ類などで抗菌作用が知られ,体の部位ごとにも含まれる割合が異なることが知られて
いる。そこで私たちはヒトデの有効利用法を考えるためにヒトデサポニンの抗菌作用を調べた。また,
ヒトデは生態系において捕食されにくく,他の生物を捕食する側であるが,その地位が,固い骨格に加
えサポニンも影響しているのではないかと考え,体の部位ごとにサポニンがどの程度含まれるのか調
べ,生態との関わりを考察した。ヒトデ類はイトマキヒトデ,モミジガイ,ヤツデヒトデを用意し,それぞ
れを外皮,生殖巣,内臓に分け,粉砕後エタノールで抽出した。抽出液は乾燥後,水に溶かし,トルエ
ンで脱脂し再び乾燥させた。これをサポニン粗抽出粉末とし,ペーパーディスク法により納豆菌を用い
て抗菌作用を調べたので,今回その結果を報告する。今後は他の菌への効果や,他のヒトデ類での
サポニンについても調べる予定である。
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宮城県産アマモの遺伝的特性
渡邉浩文、高田帆夏、村上周明、秦大貴、新田真弓 (顧問:千葉美智雄)
宮城県仙台第三高等学校 (宮城県仙台市)
アマモは海底に「アマモ場」と呼ばれる大群落を作り,潮流を緩和したり外敵からの隠れ場にもなる
ため,様々な海洋生物の産卵場所や棲みかになっている。また,水質浄化の面でも重要な役割を果
たしており,アマモ場は海の生態系でとても重要な存在であることが分かる。東北沿岸のアマモ場は,
東日本大震災の津波によって多くが流失してしまった。特に,松島湾のアマモ場は大きな被害を受
け,その復興が急がれている。アマモ場再生に向けて,今後移植活動が活発になる事が予想される。
アマモを移植する場合は,地域個体群の遺伝的多様性について慎重に検討されなければならない。
現在,松島湾,万石浦,志津川,気仙沼など,宮城県産のアマモの遺伝的距離は十分に調べられて
いない。そこで本研究では,松島湾,万石浦,志津川で個体を複数採取し,マイクロサテライトマーカ
ーを用いて遺伝的特性を調べ,地域個体群の遺伝的な構成を明らかにすることを目的とした。松島湾
で採集したアマモについて,7 種類のマイクロサテライトについて調べた結果を報告したい。
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多足類の歩行の解析
柿崎泰広、赤星栄治、小原大樹、武藤柊、渡辺俊也 (顧問:千葉美智雄)
宮城県仙台第三高等学校 (宮城県仙台市)
ヤスデは,私たちに身近でありながら人々にあまり知られていない存在である。ヤスデは多く脚を持
つにも関わらずどんな道でもスムーズに移動することができる。この脚の動きを知ることができれば,
災害用ロボットの移動手段として応用できるかもしれないと思い研究を始めた。まずヤスデを捕まえ,
カメラの連写機能で脚の動きを観察した。一つ一つの体節から出た脚が同じ動きを繰り返し,動きの
周期がずれていると分かった。次に脚の動く軌道について仮説を立てた。脚の速さを一定だと仮定し,
横から見たときに脚の先は半円を描いていると考えた。地面についている脚が半円の直径をたどり,
浮いている脚が半円の弧を描いて動く。半径を 1 とおくと直径と弧の長さの比は約 2 対 3.14 となる。10
枚ほど写真を見ると地面についている脚と浮いている脚の比が 10 対 16 と 11 対 15 の二つがあると分
かった。これは 2 対 3.2 と 2.2 対 3 となり仮説と近い。ヤスデの足の動きは等速で半円運動をしている
と考えられる。今後は別のヤスデでも足の数を数えてデータの数を増やし実験の精度を上げ,他の多
足類についても解析したい。
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両生類の変態
阿部友哉、伊藤岳晟、佐伯憲一、佐藤光、庄司大智 (顧問:千葉美智雄)
宮城県仙台第三高等学校 (宮城県仙台市)
両生類の変態の過程では,えら呼吸から肺呼吸に切り替わり,四肢が形成・発達して尾が消失する
とともに,皮膚の構造も変化することが知られている。本研究では,チロキシンを高濃度で与えたり,
チロキシン合成を阻害することで変態をコントロールし,どのようにえら呼吸から肺呼吸に切り替わる
かを,呼吸器や循環器,ヘモグロビンの変化から理解することを目的とする。アフリカツメガエルの変
態直後の個体は水中で生活し,特に肺に空気が入っている個体は観察できなかった。ヒキガエルの
変態直後の個体は,水から上がれないと水中ですべて死んだ。主に陸上で生活するカエルの場合,
変態にともない呼吸器系,循環器系が大きく変化することが示唆された。チロキシン合成を阻害する
過塩素酸を用いて幼生の変態を抑制できるかをヒキガエルの幼生で検討したところ,10g/L では 1 日
ですべての個体が死亡し,1g/L では幼生の尾の消失が遅れ,0.1g/L および 0.001g/L では影響がなく
対象区と同様に変態した。アマガエルの幼生についてチロキシンおよび過塩素酸で処理を行い,変態
への影響を調べ報告したい。
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バクテリオファージφNIT1 に対する納豆菌の感受性
鎌田睦大 (顧問:永井由佳)
宮城県仙台第三高等学校 (宮城県仙台市)
本研究では,バクテリオファージの感染のしくみの理解に向けて感染に差のある納豆菌とバクテリ
オファージの組み合わせを調べた。そしてバクテリオファージと納豆菌の宿主と感受性の相互作用に
ついてまとめていきたい。そのためバクテリオファージΦNIT1 に感染する納豆菌の探索を行った。そ
の際に枯草菌と思われる6株を単離し,その6株のΦNIT1 感受性を調べるため,ΦNIT1 のプラークの
形成を見たところ 6 株のうち 4 株にプラークが見られた。また PCR に枯草菌の特異的なプライマーを
使用し,エンドグルカナーゼ遺伝子の増幅を調べたところ,6 株のうち 3 株で PCR 産物の増幅が確認
できた。これより,ΦNIT1 の感染が確認された 4 株は納豆菌であると考えられる。また,1株に差が現
れたのは今回の PCR 法では増幅させることができない納豆菌ではないかと考察できる。ゆえに野外
から単離した 6 株がどのような細菌であるのか種の同定を行っていく必要がある。
今後の課題として細菌株を増やし,また野外からバクテリオファージを採取することでさらに多くの感
染に差のある組み合わせを見つけていきたい。
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鶏の卵殻膜が示す植物果肉の色素沈着抑制機能
田原早央莉、松井千佳 (顧問:谷藤尚貴)
米子工業高等専門学校 (鳥取県米子市)
鳥の卵殻が常温で中身を守る機能は、他の対象物を守る機能として適用できるのではないかと考
えた我々は、食品の劣化現象を抑制する素材として応用する研究に取り組んだ。実験方法は、卵殻を
酢酸処理して炭酸カルシウム分を除いた卵殻膜を取り出し、これを水洗後にセラミック包丁でカットし
たアボカド上の最も色素の沈着する維管束付近を覆った後にシャーレ内へ入れ、アボカド果肉上に変
色現象が起こる時間について測定した。また、卵殻膜チロシナーゼ活性阻害試験を行い、実験で見出
された劣化を抑制する因子についての検証を行った。
アボカド果肉へ卵殻膜を被覆させるだけで、無処理の果肉よりも褐変を抑制させることに成功した。
卵殻膜には果肉に沈着する着色成分を吸着している作用が見られた。また、卵殻膜の作用を明らか
にする目的で膜の水抽出物についてもチロシナーゼ活性阻害試験を行ったところ、阻害作用が確認さ
れた。
すなわち、本研究では卵の殻が有する卵が孵化するまで腐らせることなく生命活動を維持する機能
が,その他の目的として活用できる例を見出すことに成功した。
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「動物学ひろば」および「みんなも動物博士!-最先端の動物学研究を知ろう!-」は、JSPS 科研費
(研究成果公開促進費「研究成果公開発表(B)」)(課題番号:260029)による補助を受けて開催されました。
一般公開要旨集
発行
2014 年 8 月
発行元 社団法人日本動物学会第 85 回大会実行委員会
印刷
(株)ホクトコーポレーション
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