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学級集団の道徳性を高める心の教育実践プラン ~道徳の時間) 学級経営

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学級集団の道徳性を高める心の教育実践プラン ~道徳の時間) 学級経営
学級集団の道徳性を高める心の教育実践プラン
∼道徳の時間,学級経営を通して∼
専 攻
学校教育学専攻
コ 一 ス
心の教育実践コース
学籍番号
M0 7 2 9 0 J
氏 名
上 原 妙 子
1 問題の所在とその諸問題
現代の若者の特徴を芹沢は,自分だけの心地
依拠し,了解を目指した話し合い活動を中心と
よい自己固有の世界であるr自己領域性」で生
した道徳の時間を軸として,学級集団の道徳性
活を重ねるうちに子どもたちのr孤立」が高ま
を高める心の教育総合プランを構想していく。
り,社会規範の獲得が困難になっていると述べ
2 学級集団の道徳性を高める授業の構築
ている。また森岡は,いじめ発生要因の一つと
して「プライパタイゼーション(私事化)」とい
ドイツの哲学者,Jノ・一バーマスは,社会秩
う社会変化を挙げており,日本の学級が私事化
序は主にコミュニケーション的行為と討議とい
による傍観者意識の増幅の中でいじめを深刻化
う基礎に基づいているとしている。コミニ・ニケ
させていると述べている。つまり日本の学級は
ーション的行為と討議は,互いに協力して社会
私事化現象により集団としての自浄作用を失い,
の統合性の成立と維持に貢献する。つまり,社
学級集団としての規範,道徳性が低下している
会を一つにまとめておく接着剤の役割を担って
ことを表している。
いる。コミュニケーション的行為理論は,言語
学級は通常,共通の目標達成を通して凝集性
によるコミュニケーションによって了解を目指
が高まり,集団として成熟していく。しかし,
すことにより個々人が生活する社会の質を高め,
凝集性は仲間意識を高めるあまり,仲間外しや
このことによって同時に個々人が発達するとい
学級への不適応という負の現象を生む可能性を
うものである。
持つ。共通の目標に向かうという成果志向型の
また,ハーバーマスは,関わり,つまり相互
集団形成は,その目標達成のために時には自己
行為に注目し,道徳性を解く視点として役割取
中心的で計算された行為となって表れるのであ
得能力に注目している。質の高い集団とは,子
る。
ども個々の役割取得能力を高めることができる
筆者は,学級集団の道徳性の低下は,私事化
集団であり,役割取得能力の発達が道徳性の発
現象に加え,成果指向型の集団形成にも問題が
達につながると考える。
あるのではないかと考える。目標に向かわせる
これらの論を受け,道徳の授業においては,
ことで集団意識を高めるのではなく,個と個を
「どうすべきか」という問いのもと,行為を規
つなぐことに焦点を当てて集団形成を目指す学
定している価値について吟味し,了解によって
級づくりが必要だと考えるのだ。筆者は個と個
新たな価値を自覚していくという,価値の創造
をつなぐものとして,J.ハーバーマス(1929’)
をめざした授業を行っていく。また,話し合い
の提唱するコミュニケーション的行為の理論に
が成立するための条件・基盤づくりとして,子
一584一
どもと共に考えながら,「話し合いのルール」づ
を改善する手だて。
くりを行う。そして,ハーバーマスのコミュニ
(3)学級集団の道徳性を高めるために,自ら
ケーション的行為理論による,妥当要求に基づ
学級をつくり変えていくカの育成。
く話し合いを積み重ねることにより,学級集団
(4)体験を通したアプローチ。
の道徳性はもとより個々人の道徳性の発達を促
4 学級集団の道徳性を高める心の教育総合プラン
していく。
課題を受けて,五つのプログラムから成るプ
ランを作成した。
3 学級集団の道徳性を高める授業実践プログラム
A県B市C小学校第6学年の3学級を対象と
(1)年間を通した価値創造型道徳の授業
作成する際,自作資料を開発し,クローズ
して,9月に,約一ヶ月間実践を行った。
rどうすればいいの」の道徳的判断において
ドエンドの資料を価値創造型の授業に展開す
は,「本当のことを言うとひとみがかわいそう」
ることを試みた。
(2)年間を通した構成的グループエンガウン
「ひとみが逆だったら,言わないでほしいと思
うはず」という,二者の間における対象性をも
ターの設定(朝の会)
つ補償の関係が主にみられた。論点を絞り視点
子どもたちの自己理解・他者理解を促進し,
を広げて話し合わせたところ,「クラスのために
表現力を養うためのエクササイズを,学級の
も,みんなのためにも,本当のことを言う。」「二
行事や学級の成熟度を考慮して構成した。
人のせいで,みんなに迷惑をかけるのは一番い
(3) 「いじめのない学級をつくろう」(学級活
けないこと。ちゃんと正直にあやまった方がい
動)
い。」という,役割行為や社会規範によって導か
今日起きている様々な問題を,自分たちで
れた相互行為のレベルヘの変容がみられた。
解決に導いていくことができるよう,考える
また授業後の,「みんなで一つのことについて
力,話し合うカを育成する授業プランを作成
考えるのが楽しかった」r納得してもらった時,
した。
うれしかった」という感想から,話し合いによ
(4) 「働くみんなが笑顔になれる○○をつくる
って子どもたちの関係性が構築され,関わりを
う」(総合)
喜びとして実感していることが分かった。
相互行為の発達を促すため,地域や社会と
本実践を通して,話し合いを中心とした道徳
の相互行為,未来を見据えて共同でものを創
の授業を展開することによって,個々の関係性
る活動を中心に授業プランを作成した。
が構築され,相互行為が発達することが確認で
(5) rみんな輝け,○○エイサー」(学校行事)
きた。
学年団で協働性を発揮し実践する生徒指導
授業実践を通して,次のことが課題となった。
の場として学校行事を捉え,規範意識や社会
(1)年間を通して価値創造型の授業実践を
性の高まりをめざし,子ども主体の活動,地
するための教材開発。
域との連携を図った活動を中心に授業プラン
(2)言語によるコミュニケーションが苦手
を作成した。
な子どもに対する,コミュニケーション能
主任指導教員 渡邊 満
力を高める支援。学級の人問関係の希薄さ
指導教員 渡邊満
一585一
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