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抵当権の抹消
抵当権の抹消 これまでは抵当権の一生というテーマに基づいて、抵当権の設定 と 抵当権の変更 についてご紹 介してきましたが、本号は抵当権をテーマにした連載の最終回となります。 今回は、債権の担保という役目を終えた抵当権の 抹消登記 に焦点を置いて、手続きの際にポイン トとなる抹消登記の申請人と、抹消登記の前にすべき登記申請についてご紹介いたします。 抵当権抹消登記の申請人 登記権利 者 ① 担保不動産の所有者 ② 不動産所有者の相続人 ③ 不動産共有者の一部のもの 登記義務 者 ① 抵当権者 ② 抵当権の承継者 ③ 抵当権の準共有者全員 抵当権抹消登記の登記義務者となるのは、登記 抵当権抹消登記は、原則どおり、登記記録上利 記録上権利を失うことになる抵当権者、つまり銀 益を受ける者と不利益を受ける者との共同申請 行などの金融機関です。しかし、登記記録を見て で行います。抵当権が抹消されて、抵当権という みると、数十年も前に設定された抵当権の抵当権 負担から解放される担保不動産の所有者が、まず 者は、今は存在しない金融機関のままになってい 登記権利者として挙がります。登記記録上の所有 たりします。こういった場合、その金融機関が抵 者が既に亡くなっていた場合には、その相続人が 当権設定登記をした後、どの様な変遷をたどって 申請人となります。 いるか調査する必要があります。商号を変更して 共有不動産の全体に設定されている抵当権を いるのであれば、変更後の商号を称する金融機関 抹消する場合には、不動産の共有者の一部の者か が登記義務者となりますし、別の金融機関と合併 らの申請が可能です。抵当権抹消登記をすること し、消滅しているのであれば、合併で存続した別 により、共有者全員が抵当権の負担から解放され の会社が登記義務者となります。 るので、特に共有者全員の関与が義務づけられて いないのです。 また、一つの抵当権を複数の抵当権者で共有 (準共有)している場合には、準共有者全員が抹 消登記の登記義務者とならなければなりません。 登記済証か登記識別情報か、どうやって見分けるの? 抵当権抹消登記の際に、登記義務者である抹消金融機関は、抵当権設定契約証書に登記済の赤いハンコが押印 された「登記済証」か、パスワードの部分を目隠しシールで覆った「登記識別情報」のどちらかを用意します。 抹消する抵当権の、設定登記の受付けられた日が、管轄の法務局がオンライン指定庁となる前であれば登記済 証が、オンライン指定庁となった後であれば登記識別情報が出ていますので、どちらが必要かを判断できます。 抵当権抹消登記の前に 申請しなければならない登記 Ⅰ 不動産所有者の住所変更登記 抵当権抹消登記の申請人となるのは、担保不動 産の所有者と債権者である抵当権者です。 Ⅲ 所有権移転登記 不動産所有者兼債務者の方が亡くなり、団体信 用生命保険を利用して住宅ローンを完済した場 合には、抵当権抹消登記の前に、必ず相続による 所有権移転登記を申請しなければなりません。 不動産の所有権が相続人に移転するのは、所有 不動産の所有者についても、抵当権者について 者死亡の時ですが、団体信用生命保険によって保 も、抵当権設定の登記がされてから債務を完済す 険金が支払われるのは、所有者が死亡した後にな るまでの間に、引っ越しや本店移転などで、登記 るので、この順番に沿って登記申請をする必要が 記録上の住所と現在の住所が異なっていること あります。 があります。抵当権者の住所(本店)が異なる場 合には、抹消登記の添付書面のひとつとして、住 所変更があったことを証する書面(登記事項証明 書など)を提出すれば、抹消登記は問題なく受理 されます。これから抹消されてしまう抵当権の権 利者の住所変更登記は、省略できる扱いなのです。 しかし、不動産の所有者が住所を移転している 場合は、住所変更を証する書面を提出するだけで は、抹消登記は受理されません。抹消登記の前提 として、所有者の住所変更登記を申請しなければ、 抵当権の登記は抹消できないのです。 Ⅱ 抵当権移転登記 なお、保険金の支払いの後に、遺産分割協議に よって不動産を相続する者を決定した場合でも、 所有権移転登記を先に申請することになります。 金融機関が債権担保のために抵当権設定の登 記をしたのちに、他の金融機関との合併により消 滅(吸収合併消滅会社)し、存続する金融機関(吸 収合併存続会社)が被担保債権と抵当権を承継し ている場合、登記記録上の抵当権者を変更する抵 当権移転登記を申請します。この抵当権移転登記 を行わないうちに、残債が完済されて抵当権が消 滅した場合には、抹消登記の前提として、必ず抵 当権移転登記を申請します。不動産登記は原則、 権利変動の過程をも忠実に公示しなければなり ません。残債が完済されて抵当権が実体上消滅す る前に、抵当権が他の者に移転している場合には、 その移転の登記を省略して抹消登記を申請する ことはできないのです。抹消登記の申請人となる のは、不動産の所有者と吸収合併存続会社です。 編集後記 前号からかなり時間が空いてしまい申し訳ありませんで した。今回から精力的に発行したいと思います。 さて暑かったり寒かったり、花粉飛びまくったりで憂鬱な 方も、登記通信を読破し登記通になりましょう w ホームペ ージにも掲載しておりますのでよろしくお願いいたします。 さて、今回のテーマは【抵当権抹消】です。住宅ローン 等の返済が終わられた方は速やかに担保抹消の登記を しましょう。その際はお気軽に御相談ください。【惠壽】