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2章熱損失係数の算出方法

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2章熱損失係数の算出方法
2章 熱損失係数の算出方法
2章
熱損失係数の算出方法
2.1
熱損失係数と算出手順
2.1.1
熱損失係数とは
熱損失係数(Q値)は、図 2.1.1 に示すように、建物内部と外気の温度差を1℃と
したときに、建物内部から屋外に逃げる熱量を1時間あたり、床面積1㎡あたりで表
したもので、(1)式によって求められる。
吹き抜け等を考慮した実質延床面積
Q = (∑ 𝐴𝑖 𝑈𝑖 𝐻𝑖 + ∑(𝐿𝐹𝑖 𝑈𝐿𝑖 𝐻𝑖 + 𝐴𝐹𝑖 𝑈𝐹𝑖 ) + 0.35𝑛𝐵) ÷ 𝑆
壁体(床・壁・天井・
屋根)からの熱損失
換気による熱損失
土間床からの熱損失
内外温度差1℃の場合の建物全体からの熱損失(総合熱貫流率)
Q :熱損失係数
[W⁄(𝑚2 ∙ 𝐾)]
𝐴𝑖 ∶ 外皮における第 i 番目の部位の面積
⌈𝑚2 ⌉
𝑈𝑖 ∶ 外皮における第 i 番目の部位の熱貫流率
⌈W⁄(𝑚2 ∙ 𝐾)⌉
𝐻𝑖 ∶ 外皮における第 i 番目の部位の温度差係数[無次元]
外気
外気に通じる小屋裏又は天井裏
外気に通じる床裏
1.0
1.0
0.7
𝐿𝐹𝑖 ∶ 第 i 番目の土間床等における外周の長さ
[𝑚]
[W/(𝑚 ∙ K)]
𝑈𝐿𝑖 ∶ 第 i 番目の土間床等における外周の熱貫流率
𝐴𝐹𝑖 ∶ 第 i 番目の土間床等における中央部の面積
[𝑚2 ]
𝑈𝐹𝑖 ∶ 第 i 番目の土間床等における中央部の熱貫流率
※
⌈W⁄(𝑚2 ∙ 𝐾)⌉
⌈回 ⁄ℎ⌉
𝑛
∶ 換気回数
𝐵
∶ 住宅の気積
S
∶ 床面積の合計
⌈𝑚3 ⌉
⌈𝑚2 ⌉
端数処理のルール
①熱貫流率、熱貫流抵抗は、「四捨五入」で小数点以下 4 桁とする。
②熱損失量は、「四捨五入」で小数点以下 3 桁とする。
③熱損失係数は、「四捨五入」で小数点以下 2 桁とする。
- 11 -
(1)
2章 熱損失係数の算出方法
屋根又は天井からの熱損失
換気による熱損失
屋外
開口部(窓・ドア)
からの熱損失
熱損失係数(Q値)とは、
建物の内部と外気の温度差を1℃としたとき
建物内部から外界に逃げる時間あたりの熱量
を床面積で除した値のこと
室内
外壁からの熱損失
Q値が小さいほど断熱性能が
良く省エネルギーといえる。
単位は[W/㎡・K]
床からの熱損失
図 2.1.1
2.1.2
熱損失係数の概念
熱損失係数の算出手順
熱損失係数の算定手順を図 2.1.2 に、本章対応表を表 2.1.1 に示す。
熱損失係数は、大きく外壁や窓、屋根等の壁体を通して損失する貫流熱損失と、換
気によって失われる換気熱損失に分けられ、両者を合計したものが熱損失係数である。
1.熱的境界の設定
2. 部位(外壁 、窓 、 屋 根、 床等 )の面 積
等の算出
①各部位の方位別面積の算出
②土間床等の周長の算出
③実質延床面積の算出
④換気計算用気積の算出
3.各部位の実質熱貫流率の算出
①一般部と熱橋部の設定
②実質熱貫流率の算出
4.貫流熱損失の算出
①各部位の貫流熱損失の算出
②土間床の貫流熱損失の算出
③開口部の熱損失
5.換気による熱損失の算出
6.総合熱貫流率の算出
7.熱損失係数の算出
図 2.1.2
熱損失係数の算出手順
- 12 -
2章 熱損失係数の算出方法
表 2.1.1
熱損失係数の算定(本章対応表)
項目
本章解説
1.熱的境界の設定
14 頁
2.2.1
①各部位の方位別面積の算出
17 頁
2.2.2(3)②③
②土間床等の周長の算出
17 頁
2.2.2(3)④
③実質延床面積の算出
16 頁
2.2.2(3)①
④換気計算用気積の算出
18 頁
2.2.2(4)
①木造住宅
24 頁
2.2.3 (2)
②鉄骨造住宅
30 頁
2.2.3 (3)
③鉄筋コンクリート造、組積造
38 頁
2.2.3 (4)
①各部位の貫流熱損失
11 頁
2.1.1
②土間床の貫流熱損失
44 頁
2.2.3(5)
③開口部の熱損失
46 頁
2.2.3(6)
5.換気による熱損失の算出
48 頁
2.2.4
6.総合熱貫流率の算出
11 頁
2.1.1
①小規模住宅
50 頁
2.2.5
②日射利用住宅
50 頁
2.2.6
2.各部位の面積の算出
3.各部位の実質熱貫流率の算出
4.貫流熱損失の算出
7.熱損失係数の算出
熱損失係数の基準値の補正
熱損失係数算出例
①木造戸建住宅
75 頁資料1
②RC造共同住宅
85 頁資料3
- 13 -
2章 熱損失係数の算出方法
2.2
熱損失係数の算出方法
2.2.1
熱的境界と部位の種類
熱的、あるいは温度的に外気と室内を区分する境界面を「熱的境界」とい い、具体
的には図 2.2.1 に示す部分が該当する。
断熱構造とする部分
換 気口
外 気に 通じ ている 小屋 裏
小外
屋気
裏に
に通
接じ
すて
るい
壁る
断 熱構 造と なって いる
外 壁か ら突 き出し た軒
物 置・ 車庫 等
に 接す る部 屋
の床 A
壁
そ の他 の床 B
土 間床
外
気
に
接
す
る
床
断 熱構 造と なって いる
外 壁か ら突 き出し た
ベ ラン ダの 床
A
換 気口
床裏
そ の他 の土 間床の 外周 部 D
外 気に 接す る土間 床の 外周 部 C
(a)熱的境界(断熱構造とすべき部分)
共 用廊 下
( 開放 )
共 用廊下
( 非開 放)
屋 根又 は天 井
バ ルコ ニー
壁
住戸
壁
壁
住戸
壁
バ ルコ ニー
壁
バ ルコ ニー
ピ ロテ ィ
外 気に 接す る床 A
住戸
壁
そ の他の 床 B
ピ ット
そ の他 の土 間床の 外周 部 D
外 気に 接す る土間 床の 外周 部 C
土 間床 等の 中央部
(b)鉄筋コンクリート造等の共同住宅における熱的境界
図 2.2.1
熱的境界
- 14 -
1)
2章 熱損失係数の算出方法
表 2.2.1
住宅(住戸)と隣接空間の境界部位の断熱構造
隣接空間の考え方
1)
熱損失係数計算時に
該当する用途、屋外との開放度
用いる温度差係数
①外気に開放されている空間
ex.共用廊下、共用玄関、共用階段室など
屋外等
半屋外(床下換気
のある床下と同
等)
②屋内駐車場
③共用部、住宅用途以外の空間に配置されているな
ど、熱的境界の外側に位置する MB(メーターボッ
クス)、給湯機置場
①外気に開放されていない空間
ex.店舗、共用廊下、共用玄関、共用階段室など
②昇降機室(屋外に開放されていないこと)
③共用機械室(屋外に開放されていないこと)
④倉庫等(外気に開放されていないこと)
住宅(住戸)と同
等の温熱環境にあ
る空間
2.2.2
⑤共同住宅における集会室、管理人室など
①住宅(住戸)の内部に配置され、熱的境界の内側
に位置する PS(配管スペース)など
②住宅(住戸)と同等に空調され、かつ、外気に接
する部位が省エネ基準同等以上の断熱構造となっ
ている空間
ex.24 時間空調の店舗、共用廊下、共用玄関、管
理人室など
1.0
0.7
0
各部の面積及び気積の算出ルール
(1)寸法等の取り扱い
寸法の値の取り扱いは、以下の通りとする。
①長さ
「切り捨て」で、0.01m 単位とする。
②面積
「四捨五入」で、0.01m 2 単位とする。
③気積
「四捨五入」で、0.01m 3 単位とする。
(2)寸法の拾い方
①水平方向
1)外壁・床・屋根・天井
壁心(壁の中心線)間の寸法によるが、モジュール心間の寸法でもよい(図 2.2.2)。
2)開口部(窓、玄関ドアなど)
取り付け部材間の内法寸法によるが、建具の呼称寸法でもよい (図 2.2.3)。
ℓ1
ℓ
ℓ3
図 2.2.2
ℓ2
壁心寸法の例
1)
図 2.2.3 開口部の内法寸法の例
(呼称寸法でもよい)
- 15 -
1)
2章 熱損失係数の算出方法
3)土間床
「外周部」と「中央部」の境界線は周囲壁の心から 1m の位置で算出する(図 2.2.6)。
②垂直方向
1)外壁
各階の外壁の高さは、天井面と下階天井面(最下階は床面)間の寸法による。但
し、鉄筋コンクリート造等の屋根断熱されたスラブにあっては、スラブ下面を上端
とする(図 2.2.4)。また、胴差等など独立した部位としての構造部材は、その部分
を別途算出する。
壁 面積 算定 の際の 階高
熱 計算 で
使 用す る高 さ
2FCL
天井
天 井断 熱
の 場合
( 屋根 断熱 の場合 )
最 上階 外壁 高さ
2階外壁高さ
標 準階 外壁 高さ
1FCL
た だし 部位 と見な され
る 構造 部材 がある 場合
は その 幅を 差し引 く
最 下階 外壁 高さ
1階外壁高さ
た だし 構造 部材が
あ る場 合は その幅
を 差し 引く
1FEL
(a)木構造の場合の外壁高さ
(b)コンクリート構造の場合の外壁高さ
図 2.2.4
外壁高さ
1)
2)開口部
まぐさ、たれ壁の下端と窓台、腰壁の上端の間の寸法によるが、建具の呼称寸法
でもよい。
(3)面積の算出
①延床面積
1)熱損失係数を算出するための延床面積
階段室や吹き抜けにおいて天井高さ 2.1m 以上の部分は床があるとみなしてよい。
(図 2.2.5)
2)風除室やサンルームの面積
風除室やサンルームなど断熱の囲いの外に位置するものは延床面積に算入しない。
3)出窓の面積
出窓については、壁心からの突出が 50cm 以下の場合は床面積に算入しないが、
50cm を超える場合は算入する。
- 16 -
2章 熱損失係数の算出方法
<階段室、吹抜け部>
天井高さが2.1m以上の部分は床があるも
のとみなし、延べ床面積に算入する。
<出窓>
壁心からの突出が 50㎝以下突出部は
⇒ 床面積に算入しない。
2.1m
壁心からの突出が 50㎝超
⇒ 突出部は床面積に算入する。
床 があると見 なせる範 囲
出窓
断熱層
<風除室、サンルーム>
断熱の囲いの外に位置する
ものは延べ床面積に算入しない。
図 2.2.5
床面積算出のためのルール
②外壁の面積
外壁の面積は、開口部、胴差等の構造部材を除いた面積とし、開口部、構造部材
は別途算出する。
③傾斜面の面積
屋根等の傾斜面は実面積とする。
④土間床の面積
外周長さを「外気に接する部分」と「その他の部分」別に求める。周辺壁から 1m
の範囲の部分以外の面積を算出する。(図 2.2.6)
X
1m Y-2m 1m
Y
1m
X-2m
1m
土 間床 等の 外周部 の
外 気に 接す る部分 :
LFi 外 周 長 さ= X+Y[m]
土 間外 周部
土 間中 央部
土 間床 等の 外周部 の
そ の他 部分 :
LFi 外 周 長 さ= X+Y[m]
床下
土 間床 等の 中央部 の
面 積:
AFi 外 周 長さ = (X-2)×(Y-2)[㎡ ]
床下
図 2.2.6
土間床の外周部と中央部の例
- 17 -
1)
2章 熱損失係数の算出方法
(4)気積の算出
①階間ふところ
階間ふところは、気積に算入しなくてよい。また、階段室及び吹き抜け部の階間
に相当する部分も算入しなくてよい。
②風除室、サンルーム
風除室やサンルームは、気積に算入しなくてよい。ただし、風除室等を熱的境界
に囲まれた空間とみなす場合は算入する。
③出窓
壁心よりの突出が 50cm 以下の出窓は、突出しないものとして扱ってよい。50cm
を超える場合は算入する。
天 井断 熱の 場合( 天井 裏
が 換気 )天 井裏の 気積 は
算 入し なく てもよ い
屋 根断 熱で 天井に 開口
が ない 場合 は気積 に算
入 しな くて もよい
出 窓 (50cm以下の 突出 )
は 算入 しな くてよ い
階 間ふ とこ ろ部、 階段
室 及び 吹抜 け部の 階間
に 相当 する 部分の 気積
は 算入 しな くてよ い
階 間ふ とこ ろ部は 算
入 しな くて よい
風 除室 とサ ンルー ムの
気 積は 算入 しなく てよ
い
(a)木構造の場合
張 り出 し床 の場合
床 下は 気積 に算入
し なく ても よい
(b)コンクリート構造の場合
図 2.2.7
気積算入の範囲
1)
④屋根断熱における小屋裏、及び基礎断熱における床下
屋根断熱における小屋裏、及び基礎断熱における床下空間は、気積に算入しなく
てよい。ただし、小屋裏が収納用途等で利用されている場合は算入する。床下も同
じである。
なお、屋根断熱にあっては、一部が天井断熱である場合も含めて、以下の方法に
よることができる。(図 2.2.8)
1)面積及び気積は、屋根が設置されている階(以降、「屋根レベル」)ごとに算出
する。(最上階の屋根、中間階の屋根、最下階の下屋などに分けて算出する。)
2)
「屋根の最高頂部」と「屋根直下の床面積」までの間を『高さ寸法』として、屋根
直下の床面積(以降、「屋根水平投影面積」)にその『高さ寸法』を乗じた値を
求める。
屋根直下の床の下部にさらに下階がある場合は、
『高さ寸法』を「屋根直下の
床面」ではなく、最下階の床面までの寸法とする。この値を、屋根レベルごと
の「階間部を含む気積」とする。
屋根レベルごとの気積を合計した値から、階間部の気積を差し引いた値を熱
損失係数計算に用いる気積とする。
- 18 -
2章 熱損失係数の算出方法
3)熱損失係数の計算に用いる屋根、天井断熱部位の面積は水平投影面積とする。
壁面積は、各方位の立面図において壁の垂直投影面積から開口部面積を差し
引いた値とする。ただし、壁の垂直投影面積は、壁上端を「屋根の最高頂部」
とした矩形とする。また、コの字型平面プランの場合は、凹部の立面図で壁の
垂直投影面積も算出して加える。
4)熱損失係数の計算で1)~3)により算出した気積及び面積を用いた場合は、
住宅の面積の合計に、屋根水平投影面積 に1/8を乗じた値を加算することが
できる。
網 掛け 部分 が「階 間部を 含
む 気積 」算 出範囲 とな る
最 高頂 部
高さ寸 法
屋根直下の床面
屋根直下の床面
最 下階
の 屋根
の ある
エ リア
水 平投 影面 積で屋 根断 熱面 積を 算出
最 高頂 部
隙 間部 の
気 積を 差
し 引く
最下階の床面
(a)階間部を含む気積
屋 根勾 配を 考慮せ ず、屋 根最
高 頂部 を最 高高さ とす る直
方 体で 屋根・天井 、及び 壁面
積 を算 出す る
最 上階 の屋
根 のあ るエ
リア
高さ寸 法
最 下階
の 屋根
の ある
エ リア
最 上階 の屋
根 のあ るエ
リア
最 高頂 部
「 階間 部を 含む気 積」か ら
隙 間部 の気 積を引 いた 値
が 熱損 失係 数計算 に用 い
る 気積 の値 となる
(b)熱損失計算に用いる気積
(
いこ垂
たれ直
値か水
がら平
壁開投
の口影
面部面
積を積
)引
最 高頂 部
(c)屋根・天井、壁の面積
実 際の 建物 外周ラ イン
図 2.2.8
屋根断熱における気積、部位面積の扱い
- 19 -
1)
(
垂こ
直れ
水か
平ら
投開
影口
面部
積を
引
い
た
値
が
壁
の
面
積
)
2章 熱損失係数の算出方法
2.2.3
貫流熱損失の算出
貫流熱損失は、外壁や窓、屋根等の各部位の面積に熱貫流率( U 値)を乗じて算出
する。
(1)壁体の熱貫流率(U 値)
①熱貫流率算出の基本
熱貫流率(U 値)は、内外温度差が 1K(℃)時に 1m 2 の面積を 1 時間当りに通過
する熱量を表す。
熱貫流率算出の基本式は(2)式で表され、壁体を構成する断面各層の熱抵抗を合計
したもの(熱貫流抵抗𝑅𝑡 )の逆数とすることによって求められる(図 2.2.9)。
U=
1
𝑅𝑡
=
1
(2)
𝑅𝑜 +𝑅𝑖 +𝑅𝑎 + ∑(𝑑𝑛 /𝜆𝑛 )
壁体構成材の熱抵抗
U
[W⁄(𝑚2 ∙ 𝐾)]
:熱貫流率
𝑅𝑜 :外気側表面熱抵抗
𝑅a :空気層の熱抵抗
𝜆𝑛
𝑅𝑡
[𝑚2 ∙ 𝐾/𝑊]
𝑅i
[𝑚2 ∙ 𝐾/𝑊]
:𝑛 番目の層の熱伝導率
:熱貫流抵抗
[𝑚2 ∙ 𝐾/𝑊]
:室内側表面熱抵抗
[𝑚2 ∙ 𝐾/𝑊]
𝑑𝑛 :𝑛 番目の層の材料厚さ
[𝑚]
[𝑊 ∕ (𝑚 ⋅ 𝐾)]
外気側
表面
室内側
表面
外気側
表面熱
抵抗
1番目
材料の
熱抵抗
2番目
材料の
熱抵抗
空気層
の熱抵
抗
3番目
材料の
熱抵抗
室内側
表面熱
抵抗
Ro
d1/λ1
d2/λ2
Ra
d3/λ3
Ri
【外気】
【室内】
熱貫流抵抗 Rt = Ro + (d1/λ1 + d2/λ2 + Ra + d3/λ3) + Ri
図 2.2.9 熱貫流抵抗の算出 1)
(熱貫流率=1÷熱貫流抵抗)
②材料の熱伝導率
各種材料の熱伝導率を表 2.2.2 に、各種断熱材の熱伝導率を表 2.2.3 に示す。こ
れ以外の材料については、学会などの文献や、公的な試験機関や研究機関で測定し
た値を使用することが望ましい。
- 20 -
2章 熱損失係数の算出方法
③材料の熱抵抗:𝑑𝑛 /𝜆𝑛
材料の熱抵抗は、材料の厚さを材料の熱伝導率で割ることにより求められる。計
算に用いる材料の厚さは、メートルであることに注意が必要である。
表 2.2.2
各種材料の熱伝導率
熱伝導率
λ
[W/(m・
k)]
材料名
セメント
コンクリート
レンガ
金属類
ガラス
プラスチック
ゴム
木質系
木質繊維系
せっこう
壁
床材
1)
セメント・モルタル
コンクリート
軽量骨材コンクリート1種
軽量骨材コンクリート2種
軽量気泡コンクリートパネル
(ALC パネル)
普通れんが
耐火れんが
銅
アルミニウム合金
鋼材
鉛
ステンレス鋼
フロートガラス
アクリルガラス
PVC(塩化ビニル)
ポリウレタン
シリコン
ブチルゴム
天然木材1種
天然木材2種
天然木材3種
合板
木毛セメント板
木片セメント板
ハードボード
パーティクルボード
せっこうボード
せっこうプラスター
漆喰
土壁
繊維質上塗材
畳床
タイル
プラスチック(P)タイル
- 21 -
備考
密度
[㎏/㎥]
規格等
1.5
1.6
0.81
0.58
1,900
1,600
0.17
500~700
0.62
0.99
370
200
53
35
15
1.0
0.20
0.17
0.30
0.35
0.24
0.12
0.15
0.19
0.16
0.10
0.17
0.17
0.15
0.22
0.60
0.70
0.69
0.12
0.11
1.3
0.19
1,700 以下
1,700~2,000
8,300
2,700
7,830
11,400
7,400
2,500
1,050
1,390
ISO/TC163
N293E
1,200
1,200
桧、杉、えぞ松等
松、ラワン等
ナラ、サクラ、ブナ等
420~660
400~600
JIS A 5404
1,000 以下
JIS A 5404
950 以下
JIS A 5905
400~700
JIS A 5908
700~800
JIS A 6901
JIS A 6904
1,300
1,280
500
JIS A 6909
JIS A 5901
2,400
JIS A 5209
1,500
JIS A 5705
JIS A 5416
2章 熱損失係数の算出方法
表 2.2.3
断熱材の熱伝導率
1)
断熱材区分
断熱材の種類
A-1
λ=0.052~0.051
吹込み用グラスウール(施工密度 13K、18K)
タタミボード(15 ㎜)
A級インシュレーションボード(9 ㎜)
シージングボード(9 ㎜)
住宅用グラスウール断熱材 10K相当
吹込み用ロックウール断熱材 25K
住宅用グラスウール断熱材 16K相当
住宅用グラスウール断熱材 20K相当
A種ビーズ法ポリスチレンフォーム保温板 4 号
A種ポリエチレンフォーム保温板 1 種 1 号
A種ポリエチレンフォーム保温板 1 種 2 号
住宅用グラスウール断熱材 24K相当
住宅用グラスウール断熱材 32K相当
高性能グラスウール断熱材 16K相当
高性能グラスウール断熱材 24K相当
高性能グラスウール断熱材 32K相当
吹込用グラスウール断熱材 30K、35K相当
住宅用ロックウール断熱材(マット)
ロックウール断熱材(フェルト)
ロックウール断熱材(ボード)
A種ビーズ法ポリスチレンフォーム保温板 1 号
A種ビーズ法ポリスチレンフォーム保温板 2 号
A種ビーズ法ポリスチレンフォーム保温板 3 号
A種押出法ポリスチレンフォーム保温板 1 種
建築物断熱用吹付け硬質ウレタンフォームA種 3
A種ポリエチレンフォーム保温板 2 種
A種フェノールフォーム保温板 2 種 1 号
A種フェノールフォーム保温板 3 種 1 号
A種フェノールフォーム保温板 3 種 2 号
吹込用セルローズファイバー 25K
吹込用セルローズファイバー 45K、55K
吹込用ロックウール断熱材 65K相当
高性能グラスウール断熱材 40K相当
高性能グラスウール断熱材 48K相当
A種ビーズ法ポリスチレンフォーム保温板特号
A種押出法ポリスチレンフォーム保温板 2 種
A種硬質ウレタンフォーム保温板 1 種
建築物断熱用吹付け硬質ウレタンフォームA種 1
建築物断熱用吹付け硬質ウレタンフォームA種 2
A種ポリエチレンフォーム保温板 3 種
A種フェノールフォーム保温板 2 種 2 号
A種押出法ポリスチレンフォーム保温板 3 種
A種硬質ウレタンフォーム保温板 2 種 1 号
A種硬質ウレタンフォーム保温板 2 種 2 号
A種硬質ウレタンフォーム保温板 2 種 3 号
A種硬質ウレタンフォーム保温板 2 種 4 号
A種フェノールフォーム保温板 2 種 3 号
A種フェノールフォーム保温板 1 種 1 号
A種フェノールフォーム保温板 1 種 2 号
A-2
λ=0.050~0.046
B
λ=0.045~0.041
C
λ=0.040~0.035
D
λ=0.034~0.029
E
λ=0.028~0.023
F
λ=0.022 以下
- 22 -
熱伝導率
λ
[W/(m・k)]
0.052
0.052
0.051
0.051
0.050
0.047
0.045
0.042
0.043
0.042
0.042
0.038
0.036
0.038
0.036
0.035
0.040
0.038
0.038
0.036
0.036
0.037
0.040
0.040
0.040
0.038
0.036
0.035
0.035
0.040
0.040
0.039
0.034
0.033
0.034
0.034
0.029
0.032
0.032
0.034
0.034
0.028
0.023
0.024
0.027
0.028
0.028
0.022
0.022
2章 熱損失係数の算出方法
④空気層の熱抵抗:𝑅𝑎
壁体中空気層熱抵抗は、表 2.2.4 の値を用いる。これは、密閉空気層が対象であ
り、通気層は含まない。また、外気に通じる床裏、小屋裏または天井裏は空気層と
はみなさない。
表 2.2.4
空気層の種類
空気層の熱抵抗
1)
空気層の厚さ da[cm]
Ra:空気層の熱抵抗[m 2 ・K/W]
2 未満
0.09×da
2 以上
0.18
1 未満
0.09×da
1 以上
0.09
工場生産で気密なもの
上記以外
*1)空気層内表面の放射率が 0.9 程度の場合の熱抵抗である 。
*2)空気層に面する高温側と低温側の放射率を変えた場合は、以下のとおり。
片側の放射率を 0.9 として他方を 0.3 としたとき、 Ra=0.30
片側の放射率を 0.9 として他方を 0.1 としたとき、 Ra=0.42
⑤壁表面の熱抵抗:Ri、Ro
壁表面の熱抵抗は、室内側と外気側の別により、表 2.2.5 の値を用いる。
表 2.2.5
部位
室内側と外気側の表面熱抵抗
1)
外気側表面抵抗[m 2 ・K/W]
室内側表面抵抗[m 2 ・K/W]
Ro
Ri
外気の場合
外気以外の場合
屋根
0.09
0.04
0.09(通気層 *1 )
天井
0.09
外壁
0.11
0.04
0.11(通気層 *1 )
床
0.15
0.04
0.15(床下)
0.09(小屋裏)
*1)外装材の建物側に設ける湿気排出等のための、外気に開放された空気層
*2)「JIS 試験法」や「BL 試験法」など、公的機関においてオーソライズされている試験法または
計 算法 で上 記記 載の もの と異 なる 数値 を用 いて いる 場合 は、 既往 の数 値を その まま 用い てもよ
い。
⑥部位の分類
熱貫流率算出の際には、熱的境界を部位別、断面構成別に分類する。
1)同じ部位であっても、断面構成が異なれば別のものとして分類する。
2)熱的境界を貫通する構造部材のある部分は、別の断面構成として分類する。構
造部材は、木造軸組構法、鉄骨造の中間階床に位置する胴差、枠組壁工法の中
間階床に位置する側根太など、他の部位に比べて熱損失の大きい箇所が該当す
る。
3)RC造等の住宅における外壁、屋根、床、間仕切壁がそれぞれ取り合う部分等
に生じる熱橋(構造熱橋)も別な部位として分類する。
- 23 -
2章 熱損失係数の算出方法
⑦熱橋と実質熱貫流率
熱橋は、ヒートブリッジとも呼ばれ、外壁等で断熱材が柱 (木材・金属等)など
の熱伝導率の大きい材料で途切れる熱の通しやすい部分のことをいう。
(図 2.2.10)
熱貫流率は、この熱橋を考慮した実質熱貫流率で評価する。
熱橋部
(木材・金属等)
断熱材
図 2.2.10
熱橋部分
(2)木造住宅の熱貫流率
木造住宅のように熱橋が木材の場合、熱橋部と非熱橋部の面積加重平均した平
均熱貫流率を実質熱貫流率としてよい。
①平均熱貫流率の算出
1)平均熱貫流率の算出
平均熱貫流率は次の式により計算する。
UA =
(𝑆1 𝑈1 + 𝑆2 𝑈2 + 𝑆3 𝑈3 + ・・・)
(𝑆1 + 𝑆2 + 𝑆3 + ・・・)
= 𝑎1 𝑈1 + 𝑎2 𝑈2 + 𝑎3 𝑈3 + ・・・= Σ 𝑎𝑗 𝑈𝑗
(3)
[W⁄(𝑚2 ∙ 𝐾)]
UA
:平均熱貫流率
Sj
:第 j 番目の異種断面部分の面積
aj
:第 j 番目の異種断面部分の面積比率(𝑎1 + 𝑎2 + 𝑎3 + ・・・=1)
Uj
:第 j 番目の異種断面部分の熱貫流率
[𝑚2 ]
[W⁄(𝑚2 ∙ 𝐾)]
平均熱貫流率を求めるためには熱橋の形状ごとに面積を拾い出す必要がある。し
かし、木造軸組構法や枠組壁工法においては、躯体モジュールが標準化しているた
め、外壁等の総面積に対する熱橋面積の比率は常数化されており、一般には、常数
化された割合(面積比率)を用いて平均熱貫流率を算出する。
なお、個々の工法に応じて、部位全体に生じる熱橋面積比率を独自に検討・設定
してもかまわない。
また、熱橋部材の熱貫流率を求める際の部材寸法は、図 2.2.11 上のように、断熱
材厚さと同じとする。図 2.2.11 下のように構造部材寸法が断熱厚さより大きい場合
は、木材の場合は断熱効果を低下させる影響はわずかとみなされるので、木材の部
材厚さは断熱厚さと同じとしてよい。
- 24 -
2章 熱損失係数の算出方法
熱橋部材
断熱厚さ
ℓ
L
※熱橋部材 L は断熱厚さℓと同値とする
熱橋部材が木材の場合
断熱厚さ
ℓ
L
※熱橋部材が木材の場合、部材寸法 L を断熱厚さℓとみなす
図 2.2.11
熱橋部材寸法Lの考え方
1)
2)充填断熱の熱橋の面積比率
(a) 木造軸組構法
木造軸組構法の各部位の面積比率を表 2.2.6 に示す。表の面積比率は、床工法
の違いや断熱位置の違いで異なる。
表 2.2.6
部位
木造軸組構法の各部位熱橋面積比率 1)
工法の種類等
熱橋面積比率
床梁工法
床
束立大引工法
根太間に断熱する場合
0.20
根太間に断熱する場合
0.20
大引間に断熱する場合
0.15
剛床(ネダレス)工法
床梁土台同面工法
根太間に断熱する場合
0.15
0.30
外壁
柱・間柱に断熱する場合
0.17
天井
桁・梁間に断熱する場合
0.13
屋根
たるき間に断熱する場合
0.14
※
天井は、下地直上に十分な断熱厚さが確保される場合は、熱橋として勘案しなくてもよい。
ただし、桁・梁が断熱材を貫通する場合は、桁・梁を熱橋として扱う。
(b) 枠組壁工法
枠組壁工法の各部位の面積比率を表 2.2.7 に示す。
- 25 -
2章 熱損失係数の算出方法
表 2.2.7
※
枠組壁工法の各部位熱橋面積比率
1)
部位
工法の種類等
熱橋面積比率
床
根太間に断熱する場合
0.13
外壁
たて枠間に断熱する場合
0.23
屋根
たるき間に断熱する場合
0.14
天井は、下地直上に十分な断熱厚さが確保される場合は、熱橋として勘案しなくてもよい。
ただし、桁・梁が断熱材を貫通する場合は、桁・梁を熱橋として扱う 。
(c) 木質パネル構法等
木質パネル工法の外壁の実質熱貫流率を簡易に計算するには、枠組壁工法の面
積比率により、床パネルは、木造軸組構法もしくは枠組壁工法の面積 比率のいず
れかを適用する。
3)充填断熱に付加断熱を併用した工法の面積比率
充填断熱と付加断熱を併用する工法の例を図 2.2.12 に示す。表 2.2.6、2.2.7 で
示した面積比率は、充填断熱だけの場合に適用できるものであり、付加断熱のある
場合は、別の面積比率によらなければならない。
付 加断 熱材
充 填断 熱部 の熱橋 のみ を考 慮す る
充 填断 熱部 及び付 加断 熱部 の熱 橋を それ ぞれ考 慮す る
(a)付加断熱部に下地がない場合
充填断熱部
充填断熱部
胴差 105×105
窓枠上下
45×105
柱 105×105
付加断熱材
(b)付加断熱部に下地がある場合
間柱 30×105
柱 105×105
間柱 30×105
開口部
付加断熱材
付加断熱下地材
455mm 間隔
窓枠上下
45×105
開口部
付加断熱下地材
455mm 間隔
立 面図
(c)木造軸組構法
胴差 105×105
壁 断面 図
立 面図
充填断熱+付加断熱
(横下地 455mm 間隔)
図 2.2.12
(d)木造軸組構法
充填断熱+付加断熱工法
- 26 -
1)
壁 断面 図
充填断熱+付加断熱
(縦下地 455mm 間隔)
2章 熱損失係数の算出方法
(a) 木下地を併用しない付加断熱工法の場合
図 2.2.12(a)は、木下地を併用しない付加断熱の場合であり、この場合の面積
比率は充填断熱に同じである。
(b) 木下地を併用する付加断熱工法の場合
図 2.2.12(b)のように、木下地を併用する場合は、充填断熱部、付加断熱部の
それぞれの熱橋を考慮する。この場合については、付加断熱工法の代表的な下地
構成である横下地 455mm 間隔(図 2.2.12(c))と縦下地 455mm 間隔(図 2.2.12(d))
について面積比率を表 2.2.8~2.2.10 に示す。
表 2.2.8
付加断熱をした場合の外壁の熱橋面積比率
1)
(a)木造軸組構法
壁
構
成
横下地
455[mm]間隔
縦下地
455[mm]間隔
充填断熱材+付加断熱材
0.75
0.79
充填断熱材+付加断熱部下地材
0.08
0.04
構造部材+付加断熱材
0.12
0.04
構造部材+付加断熱部下地材
0.05
0.13
(b)枠組壁工法
壁
構
成
横下地
455[mm]間隔
縦下地
455[mm]間隔
充填断熱材+付加断熱材
0.69
0.76
充填断熱材+付加断熱部下地材
0.08
0.01
壁枠組材等+付加断熱材
0.14
-
壁枠組材等+付加断熱部下地材
0.06
0.2
まぐさ+付加断熱材
0.02
0.02
まぐさ+付加断熱部下地材
0.01
0.01
表 2.2.9
大引等(900[mm]間隔)の間と根太間(303[mm])で断熱した場合の
床の熱橋面積比率 1)
床
構
成
熱橋面積比率
根太間断熱材+大引間断熱材
0.72
根太間断熱材+大引材等
0.12
根太材+大引間断熱材
0.13
根太材+大引材等
0.03
- 27 -
2章 熱損失係数の算出方法
表 2.2.10
壁
付加断熱した場合の屋根の熱橋面積比率
構
成
横下地
1)
455[mm]間隔
たる木間充填断熱材+付加断熱材
0.79
たる木間断熱材+付加断熱部下地材
0.08
構造部材+付加断熱材
0.12
構造部材+付加断熱部下地材
0.01
(c) 木下地を併用する付加断熱工法の簡易計算法
表 2.2.8~2.2.10 の面積比率を適用する場合は、付加断熱材のある部位と付加
断熱材下地材の部位の熱貫流率を別々に計算しなければならず、計算が煩雑であ
るため、簡易な計算方法を用いることができる。この場合、付加断熱材の熱抵抗
に表 2.2.11 に示す低減係数を乗じて、付加断熱材のある部位の熱貫流率を計算す
れば、付加断熱材下地部位の熱貫流率の計算を省略することができる。
ただし、この方法は、充填断熱部の熱抵抗が、付加断熱部の熱抵抗より大きい
場合に適用できる。なお、この簡易計算は簡便ではあるが、断熱材の必要厚さは
多少厚くなる。
表 2.2.11
付加断熱材の熱抵抗の低減係数
1)
(a)外壁
横下地
木造軸組構法
枠組壁工法
(b)床
木造軸組構法
枠組壁工法
(c)屋根
455[mm]間隔
0.82
0.79
縦下地
455[mm]間隔
0.67
0.6
根太と直交方向の下地(下地:455[mm]間隔)
0.85
0.88
屋根たるきと直交方向の下地(下地:455[mm]間隔)
木造軸組構法
枠組壁工法
0.9
4)外張断熱の面積比率
外張断熱(図 2.2.13)の場合で、外張断熱材に下地がない場合、あるいは断熱材
を2層張り以上とする場合は(図 2.2.13(a))、熱橋はないとしてよい。
しかし、断熱材を1層張りとし断熱材を貫通する木下地を設ける場合は(図
2.2.13(b))、充填断熱と同様に、断熱一般部の木下地を熱橋とみなす。この場合の
実質熱貫流率は、表 2.2.6 の木下地の面積比率を用いるか、あるいは、外張断熱材
の熱抵抗に表 2.2.12 に示した低減率を乗じて求める。
- 28 -
2章 熱損失係数の算出方法
外 張断 熱材
外 張断 熱材 を貫通 する 木下 地は 熱橋 とみ なす
構 造材 等は 熱橋と して 考慮 しな くて よい
(a)外張断熱材に下地がない場合
及び2層張りとした場合
(b)1層張りで外張断熱部 に下地がある場合
図 2.2.13
外張断熱工法
1)
1)
表 2.2.12
外張断熱における断熱材の熱抵抗の低減係数
一層張りの下地併用の場合
木造軸組構法
0.9
枠組壁工法
熱抵抗R(t/λ)
材料
番号
材厚
t(m)
材料
1
室内側表面熱抵抗
2
石膏ボード
3
4
5
熱伝導率
λ
A
B
C
D
充填断熱
付加断熱
充填断熱
付加下地
構造部材
付加断熱
構造部材
付加下地
0.11
0.11
0.11
0.11
0.012
0.22
0.0545
0.0545
0.0545
0.0545
高性能グラスウール 16K
0.1
0.038
2.6316
2.6316
-
-
熱橋(木材 1 種)
0.1
0.12
-
-
0.8333
0.8333
合板
0.009
0.16
0.0563
0.0563
0.0563
0.0563
6
普通グラスウール 32K
0.025
0.036
0.6944
-
0.6944
-
7
縦下地(木材 1 種)
0.025
0.12
-
0.2083
-
0.2083
8
通気層の伝熱抵抗
熱貫流抵抗
ΣR
熱貫流率Un(1÷ΣR)
面積比率
0.11
0.11
0.11
0.11
3.6568
3.1707
1.8585
1.3724
0.2735
0.3154
0.5381
0.7287
0.79
0.04
0.04
0.13
平均熱貫流率
D C
B
0.3449
A
石膏ボード
断熱材
熱橋
合板
12 ㎜
高性能 GW 16K
断熱材
普通 GW 32K
縦下地
木材 1 種 25 ㎜
通気層
図 2.2.14
熱貫流率の計算例(充填断熱+付加断熱)
木造軸組構法(縦下地 455mm 間隔)
- 29 -
100 ㎜
木材 1 種 100 ㎜
9㎜
25 ㎜
2章 熱損失係数の算出方法
(3)鉄骨造住宅の熱貫流率
①
実質熱貫流率の算出
鉄骨造のように、熱をよく通す金属が熱橋となっている外壁等では、熱の流れが
熱橋部に集中するため、実質熱貫流率は平均熱貫流率よりかなり大きくなる。実質
熱貫流率を U で表すと、このような場合の U は、平均熱貫流率 U A を割増さなけ
ればならない。この割増率を熱橋係数という。
熱橋係数は、熱橋の形状と熱橋の間隔(ピッチ)ℓの影響を受けるため、𝛽ℓ と標記
されており、熱橋がピッチℓで入っている壁体の実質熱貫流率 U は、(4)式で表さ
れる。
U=𝛽ℓ ・UA
②
(4)
熱橋係数
熱橋係数を求めるには、二次元の伝熱計算をしなければならない。金属熱橋部等
の熱橋係数を簡便に求めることができるソフトとして、「 TB1 for Windows」等があ
る。
なお、同じ熱橋が異なるピッチで入っている場合、一方の熱橋係数が既知であれ
ば他方の熱橋係数は(5)式で求めることができる。
𝛽ℓ2 = 𝛽ℓ1 +
𝑈1
ℓ
[ 1 − 1] (𝛽ℓ1 − 1)
(5)
𝑈𝐴2 ℓ2
𝛽ℓ1
:(a)の壁体(ピッチℓ1)の熱橋係数(既知)
U1
:非熱橋部分の熱貫流率
[W⁄(𝑚2 ∙ 𝐾)]
UA2 :(b)の壁体の平均熱貫流率
[W⁄(𝑚2 ∙ 𝐾)]
熱橋ピッチが1mの場合の熱橋係数を特に基準熱橋係数という。(5)式はℓ 1 が1m
であれば(5)式は次のようになる。
𝛽ℓ = 𝛽+
𝑈1 1
[ − 1] (𝛽 − 1)
(6)
𝑈𝐴 ℓ
βℓ
:熱橋ピッチℓの熱橋係数
β
:基準熱橋係数
U1
:非熱橋部分の熱貫流率
UA
:熱橋ピッチℓに対応する平均熱貫流率
[W⁄(𝑚2 ∙ 𝐾)]
[W⁄(𝑚2 ∙ 𝐾)]
鉄骨系の工業化住宅の代表的な金属熱橋の基準熱橋係数を表 2.2.13 に、スチール
ハウスの典型的な熱橋の熱橋係数を表 2.2.14 に示す。
- 30 -
2章 熱損失係数の算出方法
③
形状が異なる熱橋が混在する壁体の熱橋係数
異なる形状の熱橋を有する壁体(図 2.2.15)の実質熱貫流率を求める場合、熱橋
係数は(7)式で求めることができる。この式は熱橋の数が3つ以上の場合にも拡張で
きる。
𝛽ℓ = 1+
𝑈𝐴1
𝑈𝐴
𝑈𝐴2
(𝛽ℓ1 − 1)+
𝑈𝐴
(𝛽ℓ2 − 1)
βℓ
:対象壁体(a)の熱橋係数
βℓ1
:壁体 1(熱橋ピッチℓ1)の熱橋係数
βℓ2
:壁体 2(熱橋ピッチℓ2)の熱橋係数
(7)
壁体 2 の熱橋ピッチは一定でないが、ℓ2 は平均したピッチとする
[W⁄(𝑚2 ∙ 𝐾)]
UA
:対象壁体(a)の平均熱貫流率
UA1
:壁体 1 の平均熱貫流率
[W⁄(𝑚2 ∙ 𝐾)]
UA2
:壁体 2 の平均熱貫流率
[W⁄(𝑚2 ∙ 𝐾)]
熱橋1
熱橋1
熱橋2
平均熱貫流率 U A
熱橋係数
βℓ
実質熱貫流率 U
(a)対象壁体
図 2.2.15
熱橋2
U A1
β ℓ1
U A2
β ℓ2
(b)壁体 1
(c)壁体 2
形状の異なる熱橋が混在する壁体のモデル
- 31 -
1)
2章 熱損失係数の算出方法
表 2.2.13
代表的な金属熱橋の基準熱橋係数β(その1)(鉄骨系工業化住宅) 1)
- 32 -
2章 熱損失係数の算出方法
表 2.2.13
代表的な金属熱橋の基準熱橋係数β(その2)(鉄骨系工業化住宅) 1)
注 1)基準熱橋係数βと熱橋のピッチℓ等から式(6)によ
って熱橋係数βℓ式を計算し、平均熱貫流率 UA に乗じれ
ば、実質熱貫流率 K が求められる。
注 2)βは 1 より大きい値で、断熱構法が良好で熱橋の影
響が小さい程 1 に近い値となる。一方、断熱程度の適否
は UA で評価され、断熱不足の場合は UA が大きくなる。
注 3)金属熱橋の形状は幅 600[㎜]の断面で示してあるが、
壁厚や各部材厚・幅が多少図と異なっても、断面構成が
同じであれば同じβを適用してもよい。
注 4)金属の厚さが 2.0~6.0[㎜]程度に変化しても同じβ
を適用してよい。
注 5)[1]~[5]、[7]~[17]は図の上下どちらが室内側でも
よいが、[6]及び[18]~[41]では図の上が外気側、
([36]
~[41]では天井裏又は床裏)
、図の下が室内側である。
注 6)[1]~[17]、[22]~[25]、[31]で、金属角柱内部に断
熱材が充填されている場合は、UA はその熱抵抗を密閉空
気層の熱抵抗に置き換えて計算する。
注 7)[1]~[15]で、木材に挟まれた金属熱橋の上下・左右
の断熱材厚又は幅が 25~50[㎜]程度に変化しても同じβ
を適用してよい。
角柱 2 本
注 8)[1]~[17]の金属角柱 1 本を、
〔付図〕のように金属
角柱 2 本、角柱と C 形鋼の組合せ、H 形鋼、C 形鋼に置き
換えても同じβを適用してよい。
〔付図〕の角柱と角柱の
間、又は角柱と C 形鋼の間に中空部又は断熱材があって
も同様である。
注 9)[18]~[21]、[28]のβは、H 形鋼又は C 形鋼のフラン
ジ内部に入り込んだ断熱材を中空層に置き換えたときの
値であるから、UA の算出ではこれと同じ置き換えをする
こと。またフランジ幅が 50~100[㎜]に変化しても同じ
βを適用してよい。
注 10)[36]~[41]は天井の断面を示すが、これらのβは同
じ構造の床にも適用してよい。
注 11)[36]~[39]で、C 形鋼の間に挟まれた中空層の幅が
100~200[㎜]程度に変化しても同じβを適用してよい。
注 12)[36]~[39]で、表面材厚 12[㎜]を 2 倍程度とすると、
βをそれぞれ 0.02 だけ減じることができる。
注 13)[36]と[37]、[38]と[39]の上部断熱材厚は、それぞ
れ 25[㎜]と 50[㎜]程度である。
注 14)[40]、[41]で、鋼材を厚さ 9[㎜]程度のポリエチレ
ンシート等で断熱した場合は、βをそれぞれ 1.70 から
1.50、1.80 から 1.60 に減じてよい。
角柱と C 形鋼
- 33 -
H 形鋼
C 形鋼
2章 熱損失係数の算出方法
表 2.2.14
代表的な金属熱橋の熱橋係数β(スチールハウス) 1)
(熱橋ピッチは 455mm)
- 34 -
2章 熱損失係数の算出方法
③
鉄骨壁体の実質熱貫流率の計算例
図 2.2.16 に示す鉄骨壁体の実質熱貫流率を求める。熱橋はスタット部、柱の2種
類が混在している。計算手順は、初めにスタッド部の熱橋を考慮した実質熱貫流率
を算出し、柱の熱橋を計算する場合に非熱橋部の熱貫流 率として用いる。
計算対象は□-200×200 の柱で構成されたラーメン構造で、断熱は柱間で設置し
たC型鋼の間に充填されているものとする。
4095
455
455
455 302.5
670
302.5 455
□200×200
1155
670
2230内
S2
S1
800
3835
水平断面
302.5
30
200
K4
K3
吹付けロックウール 30㎜
S1
455
石膏ボード 12㎜
グラスウール16K
125㎜
K1
K2
図 2.2.16
S2
押出法ポリスチレン 3種 50㎜
C-75×45×15×2.5
4095
2670
C-75×45×15×2.5
計算対象とした鉄骨造壁体のモデル 2 )
- 35 -
2章 熱損失係数の算出方法
1)断熱充填部位S 1 の熱貫流率
断熱充填部位では、一般部の熱貫流率K 1 とC型鋼部位の熱貫流率K 2 に分類で
きる。詳細にはC型鋼のエッジ部と中空部に分類できるが、エッジ部の断面は小
さく、かつ中空部の断熱性と大きく変わらないため、エッジ部は無視する。
材料
材料
番号
材厚
熱伝導率
t(m)
λ
熱抵抗R(t/λ)
C型鋼部 K2
1
室内側表面熱抵抗
2
石膏ボード
0.012
0.22
3
高性能グラスウール 16K
0.125
0.038
4
空気層の熱抵抗
5
押出法ポリスチレンフォーム 3 種
6
通気層の伝熱抵抗
一般部 K1
0.11
0.11
0.0545
0.0545
3.2895
0.09
0.05
0.028
1.7857
0.11
0.11
2.1502
3.564
熱貫流率Un(1÷ΣR)
0.4651
0.2806
面積比率
0.198
0.802
熱貫流抵抗
ΣR
平均熱貫流率
0.3171
熱橋係数β1
1.3203
実質熱貫流率
0.4187
a 平均熱橋ピッチ
柱、梁の間の一般部とC型鋼で構成された部位の総面積は、
3.835W×2.67H-2.33W×1.155H=7.5483(㎡)
C型鋼の総延長は
2.67m×6 本+0.8m×4 本+0.67m×4 本+2.23m×2 本+0.41m×14 本+0.2575m×4 本
=31.3m
総面積とC型鋼の総延長から平均熱橋ピッチを求めると
7.5483÷31.3=0.2278m
b
面積比率
C型鋼;45÷227.8=0.198
c
一般部;1-0.198=0.802
平均熱貫流率
0.4651×0.198+0.2806×0.802=0.3171
d
熱橋係数
表 2.2.14 スチールハウスの熱橋係数より熱橋ピッチが 0.455m の場合の熱橋係
数β=1.20[3]であるため、(5)式より熱橋ピッチ 0.2278m の場合の熱橋係数は
β1=
e
1.20+(0.2806/0.4651)×{(0.455/0.2278)-1}×(1.20-1)=1.3203
断熱充填部S 1 の実質熱貫流率
0.3171×1.3203=0.4187
- 36 -
2章 熱損失係数の算出方法
2)ラーメン柱部位を考慮したS 2 の熱貫流率
ラーメン柱部の熱貫流率は、中空部K 3 と周囲の断熱部K 4 の2つにわけること
ができる。
材料
材料
番号
熱伝導率
t(m)
λ
中空部 K3
周囲 K4
非熱橋部
1
室内側表面熱抵抗
0.11
0.11
2
石膏ボード
0.012
0.22
0.0545
0.0545
3
吹付けロックウール
0.06
0.047
1.2766
4
吹付けロックウール
0.26
0.047
5
柱内部中空層
0.18
6
通気層の伝熱抵抗
0.11
0.11
1.7311
5.8064
熱貫流率Un(1÷ΣR)
0.5777
0.1722
0.4187
面積比率
0.049
0.015
0.936
熱貫流抵抗
a
熱抵抗R(t/λ)
材厚
ΣR
5.5319
平均熱貫流率
0.4228
熱橋係数
1.0755
実質熱貫流率
0.4547
平均熱橋ピッチ
ラーメン柱の柱間隔であり 4.095m
b
c
面積比率
中空部
0.200m
0.049
周囲
0.03×2=0.06
0.015
非熱橋部 4.095-0.2-0.06=3.835
0.936
平均熱貫流率
0.5777×0.049+0.1722×0.015+0.4187×0.936=0.4228
d
熱橋係数
表 2.2.13 の基準熱橋係数より熱橋係数β=1.30[38]
であるため、(6)式より
熱橋ピッチ 4.095m の場合の熱橋係数は
β2=
e
1.30+(0.4187/0.4228)×{(1/4.095)-1}×(1.30-1)=1.0755
計算対象壁全体の実質熱貫流率
0.4228×1.0755=0.4547
(㎡ K/W)
- 37 -
2章 熱損失係数の算出方法
(4)鉄筋コンクリート造等住宅の熱貫流率
①鉄筋コンクリート造等の構造熱橋部の扱い
鉄筋コンクリート造等では、図 2.2.17 に示すように、外壁、床との接合部、外壁か
ら突出したバルコニー等の部分が構造熱橋となり、部位面積の算出も別途扱うことに
なる。
構造熱橋部は無断熱とした熱貫流率を用い、求めた熱貫流率に構造熱橋部の面積を
乗じることによって、住宅全体での構造熱橋部熱損失を算出する。
断 熱層
断 熱補 強
(両 側)
断 熱層
断 熱補 強(両側 )
断 熱層
断 熱補 強(両側 )
(L)
構造熱 橋部 の
部位の 幅(W)
構
造
熱
橋部
の
部位
の
長さ
図 2.2.17
:構造熱橋部
構造熱橋部の概念
1)
1)構造熱橋部の面積の求め方
構造熱橋部の面積は、図 2.2.18、2.2.19 に示した例のように、構造熱橋部に取り
付いている部位の幅(W)に部位の長さ(𝐿)を乗じた値に、断熱補強の仕様に応じて定
められている低減係数(𝑎𝐻 )(表 2.2.15(a)、(b)、(c))を乗じて求める(次式)。
構造部熱橋部の面積[𝑚2 ]=部位の幅(W)×部位の長さ(𝐿)×低減係数(𝑎𝐻 )
なお、共同住宅において隣住戸との関係における当該住宅への算入方法は、以下
のとおりである。
a
戸境壁:戸境壁の幅の半分を当該住戸に算入する。(隣住戸と折半)
b
界床:界床の幅(床厚)のすべてを上階の住戸に算入する。
- 38 -
2章 熱損失係数の算出方法
【構造熱橋部の断面】
当該室
W
当該室
部位の幅(W)
さ
長
の
位
部
D
構造熱橋部
)
(L
D
下階室
図 2.2.18
構造熱橋部の部位の長さと部位の幅
当 該住 戸の 熱損失
と して 扱う
W
屋外
当該住戸
当 該住 戸の 熱損失
と して 扱う
D
屋根
W
断 熱補 強
床
断 熱補 強
断 熱補 強
外壁
下階住戸
当該住戸
外壁
1)
屋外
屋外
屋外
D
構造熱橋部
下階室
当 該住 戸の 熱損失
と して 扱う
(隣 住戸と 折半 する )
屋外
D
外壁
D
断 熱補 強
断 熱補 強
断 熱補 強
当 該住 戸の 熱損失
と して 扱う
屋根
断 熱補 強
W
隣住戸
W
当該住戸
当該住戸
戸 境壁
当該住戸
間 仕切 壁
図 2.2.19
構造熱橋部の部位の幅(例) 1)
- 39 -
2章 熱損失係数の算出方法
表 2.2.15-(a)
構造熱橋形状、断熱工法、断熱補強仕様に応じた低減係数 (𝑎𝐻 )と熱
橋部の最低表面温度を求めるための係数 b 1)
- 40 -
2章 熱損失係数の算出方法
表 2.2.15-(b)
構造熱橋形状、断熱工法、断熱補強仕様に応じた低減係数 (𝑎𝐻 )と熱
橋部の最低表面温度を求めるための係数 b 1)
- 41 -
2章 熱損失係数の算出方法
表 2.2.15-(C) 断熱補強の仕様
(イ)補強の範囲
断熱工法
断熱補強の範囲(北海道地区)
内断熱工法
900
外断熱工法
450
(ロ)断熱厚さ
断熱材の種類別厚さ[mm]
A-1
A-2
B
C
D
E
F
35
30
30
25
25
20
15
(注)断熱材の種類は表 2.2.3 参照。
(a) 柱、梁等のある構造熱橋部の扱い
構造熱橋部に柱、梁等が取り付いている場合は、躯体から柱、梁等の先端まで
の寸法に応じて断熱補強範囲が異なるが、面積算出は同じ扱いとする(図 2.2.20)。
室内
屋外
屋外
室内
断 熱補 強
部位の 幅(W)
部位の 幅(W)
断 熱補 強
900mm 以 上
900mm 未満
室内
室内
図 2.2.20
柱 、梁 部は 、躯体 の
断 熱仕 様と 同じ。
柱、梁等のある構造熱橋部における面積の取り方
1)
(b) パラペット等の突起物による構造熱橋部の扱い
鉄筋コンクリート躯体からの突き出し長さが 450mm 未満の場合でも、図
2.2.21(b)に示すように、一部に断熱欠損が生じている場合は、貫流熱量を算出す
る。また、図 2.2.21(c)のように、鉄筋コンクリート躯体からの突き出し長さが
450mm 以上の場合には、突き出し部分が断熱材に覆われている場合、あるいは外
側または内側で断熱補強を施した場合も、貫流熱量を算出する。
- 42 -
2章 熱損失係数の算出方法
屋 外
屋 外
屋 外
ℓが 450mm 未満
ℓが 450mm 以上
ℓが 450mm 未満
D
当 該住 戸
ℓが 450mm 未満
当 該住 戸
当 該住 戸
ℓが 450mm 未満
ℓが 450mm 以上
当 該住 戸
当 該住 戸
当 該住 戸
屋 外
下 階住 戸
下 階住 戸
(c) ℓが 450[mm]未満 で断 熱欠
損 がな けれ ば熱橋 は生 じ
な いも のと する
図 2.2.21
下 階住 戸
(b) ℓが 450[mm]未満 で一 部
に 断熱 欠損 がある 場合 は
熱 橋と して 扱う
(a) ℓが 450[mm]以上 では 断熱
欠 損の 有無 に関係 なく 熱
橋 とし て扱 う
断熱材を貫通する突起物がある場合の計算上の扱い
1)
2)構造熱橋部の熱貫流率の求め方
構造熱橋部の熱貫流率は、図 2.2.22 に示すDを材料厚さとし、無断熱として熱貫
流率を算出する。また、部位を構成する躯体以外の内外装材等は熱貫流率算出に含
めない。
屋外
屋外
当 該住 戸
当該住戸の熱損失
として扱う
W
D
当該住戸の熱損失
として扱う
断熱補強
W
屋根
床
断熱補強
Ro
D
W
Ri
断熱補強
D
外壁
下 階住 戸
当 該住 戸
外壁
屋外
W
当該住戸の熱損失
として扱う
(隣住戸と折半する)
D
当該住戸の熱損失
として扱う
D
外壁
外壁
Ro
D
Ri
断熱補強
断熱補強
隣 住戸
当 該住 戸
断熱補強
当 該住 戸
戸 境壁
図 2.2.22
断熱補強
W
当 該住 戸
間 仕切 壁
構造熱橋部の熱貫流率算出に用いる材料の厚さ(例) 1)
- 43 -
W
2章 熱損失係数の算出方法
(5)土間床等の評価
①土間床等の定義
1)土間床の定義
土間床とは、床下が地面に密着している床のことをいう。
土間床からの熱損失は、土間床及び基礎断熱の住宅の床を通じて室内から地盤・
外部に流出する熱量を意味する(図 2.2.23)。
外壁
外壁
土間床等
として扱う
土間床等
として扱う
土間床
図 2.2.23
基礎断熱
土間床等として扱う範囲
1)
2)土間床の熱的評価
土間床は、図 2.2.24 に示すように、外周部と中央部に分けて評価する。土間 外周
部と土間中央部は、土間床外周の壁心から 1m の範囲までを土間外周部とし、土間中
央部はそれ以外とする。さらに、外周部は、「外気に接する部分」(図の黒線部分)
と、
「その他の部分」
(床下等の外気に直接的に接しない部分(図のハッチ部分))に
分けて評価する。
また、熱損失は、外周部においては外周長さに応じて評価し、中央部は面積で評
価する。
1m
1m
1m
土間外周部
1m
土間中央部
床下
床下
図 2.2.24
土間床の外周部と中央部
- 44 -
1)
2章 熱損失係数の算出方法
②土間床等の熱貫流率の算出方法
土間床の熱貫流率は、土間床等の外周の熱貫流率 ULと土間床等の中央部の熱貫流
率UFに分けて計算する。
ULは外周1m当りの係数として定義される量で、単位は [𝑊/(𝑚 ∙ 𝐾)]であり、他の
熱貫流率とは異なる。ここに床の外周とは、外壁の壁心から1mまでの範囲の床周
辺部をいう。
一方、UFは土間床等の中央部(外壁の壁心から1mの床周辺部を除いた部分)の
単位面積当りの熱貫流率であり、単位は[𝑊/(𝑚2 ⋅ 𝐾)]である。
UL、UFは、図 2.2.25 に示すモデルによって値が異なり、それぞれ各部の寸法を
変数とする簡易な式(次式)で算出することができる。
モデルA
UL = 1.88 + 0.5𝜆𝑠𝑜𝑖𝑙 − 0.005𝐷 − 1.02𝑇10.15 − 0.001𝑊 − 0.014𝑇2
UF = 0.021 + 0.054𝜆𝑠𝑜𝑖𝑙
(9)
(8)
モデルB
UL = 1.77 + 0.5𝜆𝑠𝑜𝑖𝑙 − 0.77𝑇10.15 − 0.003𝑊 − 0.042𝑇2
UF = 0.022 + 0.054𝜆𝑠𝑜𝑖𝑙
(11)
𝜆soil ∶ 土の熱伝導率
[𝑊/(𝑚 ∙ 𝐾)]
(10)
0.58~1.74W/(𝑚/𝐾)
注:土の熱伝導率は、一般的には1.0W/(𝑚/𝐾)を用いることとし、明確な根拠
資料がある場合には、別途定めてもよい。
D
: 断熱材埋め込み深さ
[cm]
𝑇1 ∶ 基礎外側の断熱材の厚さ
𝑊
10~40cm
[cm]
2.5~15cm
∶ 土間外周の断熱長さ(外周内面からの距離)
𝑇2 ∶ 土間外周の断熱材の厚さ
[cm]
[cm]
0~90cm
0~6cm
ただし、𝑇1 並びに𝑇2 の厚みは、断熱材の熱伝導率を0.0326[𝑊/(𝑚 ∙ 𝐾)]とした
場合であり、これ以外の場合は厚み𝑇1 、𝑇2 を熱抵抗換算する。
Tn1 or Tn2 =
dn
λn
× 0.0326
(12)
Tn1 ・ Tn2 : 換算厚み [m]
dn ∶ 採用する断熱材の厚み [m]
λn
: 採用する断熱材の熱伝導率
- 45 -
[W/(m・k)]
2章 熱損失係数の算出方法
モデルA:床下あり
T1
W
D
T2
T1
W
T2
D
基 礎断 熱(外側・土間外 周部 断熱 )
基 礎断 熱(内側・土間外 周部 断熱 )
モデルA:床下なし
T1
W
D
T2
W
T2
D
T1
基 礎断 熱(外側・土間外 周部 断熱 )
基 礎断 熱(内側・土間外 周部 断熱 )
モデルB:べた基礎
T1
T1
W
W
T2
T2
基 礎断 熱(外側・土間外 周部 断熱 )
図 2.2.25
基 礎断 熱(基礎 内側・土間 外周部 断熱 )
基礎断熱のモデル
1)
③旧式の土間床等の熱貫流率の算出方法(参考)
モデルC(土間床の場合)
0.28
UL = 1.3𝜆𝑠𝑜𝑖𝑙
× 𝑒 −A
A = {(0.58 +
0.15
𝜆𝑠𝑜𝑖𝑙
(13)
0.32
) + 0.89(ℓ0.1 − ℓ0.1
0 )} 𝑅𝑊
+(0.075 + 0.156𝜆𝑠𝑜𝑖𝑙 )𝑅𝐹0.42
- 46 -
(14)
2章 熱損失係数の算出方法
モデルD(外気に通じない床裏をもつ場合)
0.28
UL = 1.46𝜆𝑠𝑜𝑖𝑙
× 𝑒 −B
B = {(0.63 +
0.16
𝜆𝑠𝑜𝑖𝑙
(14)
0.32
) + 0.98(ℓ0.1 − ℓ0.1
0 )} 𝑅𝑊
+(0.075 + 0.156𝜆𝑠𝑜𝑖𝑙 )𝑅𝐹0.42
(15)
土間床の中央部
UF = 0.21𝜆𝑠𝑜𝑖𝑙 × 𝑒 −C
(16)
0.3
C = {0.157 + 0.19(ℓ0.15 − ℓ0.15
0 )}𝑅𝑊 + 0.2𝜆𝑠𝑜𝑖𝑙 𝑅𝐹
[𝑊/(𝑚 ∙ 𝐾)]
𝜆soil ∶ 土の熱伝導率
(17)
0.58~1.74W/(𝑚/𝐾)
注:土の熱伝導率は、一般的には1.0W/(𝑚/𝐾)を用いることとし、明確な根拠
資料がある場合には、別途定めてもよい。
ℓ
: 基礎の深さ
ℓ0 ∶ 基準基礎深さ
[m]
0.1~0.8m
[m]
ℓ0 = 0.15m
𝑅𝑊 : 基礎断熱の熱抵抗値
[m2 K/W]
0~5m2 K/W
𝑅𝐹 : 床下断熱の熱抵抗値
[m2 K/W]
0~5m2 K/W
モデルC(土間床)
室内
外気
床高
床 下断 熱
基 礎断 熱
基 礎深 さ
ℓ
土壌
モデルD(外気に通じない床裏をもつ床)
室内
外気
床 下断 熱
床高
床 下密 閉空 気層
基 礎深 さ
基 礎断 熱
ℓ
図 2.2.26
土壌
基礎断熱のモデル(旧式)
- 47 -
2章 熱損失係数の算出方法
(6)開口部の熱貫流率
開口部とは、窓とドアを総称するものである。
開口部の熱貫流率(実質熱貫流率)は、原則として表 2.2.16(a)の中から該当する
「建具の仕様」と「代表的なガラスの仕様」の組合せを選び、その仕様の熱貫流率を
使用する。また、参考までに、文献2)に掲載されている高性能窓の熱貫流率を表
2.2.16(b)に示す。
また、該当する仕様が表中にない場合は、 JIS や財団法人ベターリビングの優良住
宅部品認定基準に規定されている試験法や「WindEye」等を使用して求めることも可能
である。WindEye は、(社)リビングアメニティ協会で開発された窓の総合性能を計算
するプログラムで、ISO10077-1 及び 15099 に準拠している。
- 48 -
2章 熱損失係数の算出方法
表 2.2.16(a)
熱損失係数の計算に用いる開口部の熱貫流率U 1),3)
三層低放射複層 注 1)注 2)
低放射複層(Ar12) 注 1)
低放射複層(kr12) 注 1)
低放射複層(A12)
三層複層(A12×2)
複層(A12)
複層(A6)
低放射複層(A12)
低放射複層(A6)
複層(A10~A12)
複層(A6)
低放射複層(A12)
低放射複層(A6)
複層(A10~A12)
複層(A6)
低放射複層(A6)
複層(A6)
単板 2 枚(A12 以上)
単板 2 枚(A12 未満)
単板
単板+複層(A12)
単板+単板
単板+単板
計算に用いる
熱貫流率
(W/㎡K)
1.50 注 3)
1.90
1.50
2.33
2.33
2.91
3.49
2.33
3.49
3.49
4.07
2.91
3.49
3.49
4.07
4.07
4.65
4.07
4.65
6.51
2.33
2.91
3.49
低放射複層(A12)
三層複層(A12×2)
複層(A12)
低放射複層(A12)
複層(A12)
2.33
2.33
2.91
2.33
2.91
複層(A6)
複層(A6)
複層(A6)
4.65
4.07
4.65
建具の構成
建具の仕様
ガラスの仕様
(一重)木製またはプラスチック製
窓 (一重)金属・プラスチック(木)複合
・
構造製
引
戸
・
框
ド (一重)金属製:熱遮断構造
ア
(一重)金属製
窓 (二重)金属製+プラスチック(木)製
・
引 (二重)金属製+金属製
戸
(枠中間部:熱遮断構造)
木製 断熱積層構造
金属製 高断熱構造
ド 扉:断熱フラッシュ構造
ア 辺縁部等:熱遮断構造
枠:熱遮断構造
木製
扉:木製、枠:金属製
金属製 扉:断熱材充填フラッシュ構造
金属製 扉:ハニカムフラッシュ構造
注 1) 本表は㈶建築環境・省エネルギー機構の住宅の「省エネルギー基準の解説」より抜粋し、注釈部の仕様に
ついて加筆したものである。
なお、中空層の A12 は空気層厚 12 ㎜を、Ar はアルゴンガス、Kr はクリプトンガス入りを示す。
注 2) 三層低放射複層とは、FL4+A12+FL4+Ar12+(Low-E)FL4、FL3(Low-E)+Ar9+FL3+Ar9+(Low-E)FL3 など
のガラス構成を指す。
注 3) この熱貫流率値は、プラスチック製建具の引違い窓・上げ下げ窓には適用できない。
- 49 -
2章 熱損失係数の算出方法
表 2.2.16(b)
窓(ガラスとサッシ)による開口部の熱貫流率U
単板
単板 2 枚
中空層の
素材
-
空気
中空層厚
(mm)
-
12
ガラス全体厚
(mm)
3
18
単板+Low-E
空気
12
空気
1),3)
金属
金属
熱貫流率
U 値(W/㎡・K)
6.51
4.07
-
金属+樹脂
1.90
6
12
金属
4.65
空気
12
18
木 or 樹脂
2.91
空気
12
18
金属断熱
3.49
空気
12
18
木 or 樹脂
2.33
アルゴンガス
12
18
木 or 樹脂
1.90(*)
クリプトンガス
12
18
樹脂
1.50(*)
ガラス種類
複層
Low-E 複層
サッシ種類
3 層(トリプル)
空気
12
33
木 or 樹脂
2.33
3 層低放射複層
(トリプル Low-E)
アルゴンガス
12
33
木 or 樹脂
1.50(*)
真空
真空
0.2
6
木 or 樹脂
1.30(*)
注)
(財)建築環境・省エネルギー機構の「住宅の省エネルギー基準の解説(第3版)」より抜粋、
一部加筆(*)したものである。
2.2.4
換気熱損失の算出
換気熱損失は、2.2.2(4)に基づいて求めた気積に1時間当りの換気回数と
容積比熱を乗じて求める。
換気回数は、換気方式ごとに、以下に示す換気回数とする。また、空気の容積比熱
は 0.35[𝑤 ∙ ℎ ∕ (𝑚2 ⋅ 𝐾)]とする。
(1)一般的な熱交換を行わない換気方式
熱交換を行わない一般的な換気方式の場合の換気回数は、0.5 回/h とする。
(2)熱交換換気方式
1)
給排気セントラル換気方式で熱交換換気を行う場合は、次式によって求められる換
気装置のエネルギー消費増加分を勘案した「みかけの換気回数」とする。
𝑛′ = 0.5 − 𝑒 ∙ 𝑚 + {(Δ𝐹 ∙ 𝜌𝐸 ) ∕ (0.35 ⋅ 𝐵 ⋅ 𝜀𝐻 ∙ 𝜌𝐻 )} ∙ 𝜏𝐻 ⁄𝐷
n′ :みかけの換気回数
[回 ∕ h]
e :熱回収装置の顕熱回収効率
m :熱回収対象の換気回数
[−]
[熱回収対象の換気量 V ⋇1 ∕ 気積 B]
ΔF :熱回収装置の熱交換素子による換気用消費電力の増量分 (𝑉𝐹 ∙ Δ𝑃 ∕ 𝜂𝑉 )
V𝐴 :熱回収装置の換気量(設計風量)
- 50 -
[𝑚3 ∕ ℎ]
2章 熱損失係数の算出方法
𝑉𝐹 :熱交換素子の通過風量
[𝑚3 ∕ s] (𝑉𝐴 ∕ 3600[𝑠 ∕ ℎ])
Δ𝑃 :風量がV𝐹 のときの熱交換素子の静圧差
𝜂𝑉 :送風機の総合効率
∗2
[−]
𝜌E :電力の1次エネルギー換算係数
B :気積
[P𝑎 ]
[−]
(2.71 = 9760[𝑘𝐽/𝑘𝑊]/3600[𝑘𝐽/𝑘𝑊])
[𝑚3 ]∗3
𝜀𝐻 :暖房熱源機器の2次エネルギー係数
[– ]
(暖房用の熱量1[W]を製造するために消費される2次エネルギー、暖房機
効率(COP)の逆数)
𝜌H :暖房熱源に使用する2次エネルギーの1次エネルギー換算係数
[−]
(灯油・ガス:1.0、電気:2.71)
𝜏𝐻 ⁄𝐷 :係数
*1
[−] 0.112
熱回収対象の換気量 V=給気風量(換気計算で「設計風量」と表現され
る値)𝑉𝐴 × 有効換気量率=有効換気量
*2
総合効率[−] = (機外圧力 [𝑃𝑎 ] × 風量[𝑚3 /ℎ]) ∕ (3600[𝑠⁄ℎ] × 入力電力[W])
ここで、機外圧力は全圧を原則とするが、静圧としてもよい。
*3
[熱回収の対象風量」×2=[気積(B)]であること。
注 1)ΔFに関しては、熱交換換気装置による定格消費電力と、それと同等の
風量及び圧損における第3種換気装置の定格消費電力の差としてもよい。
注 2)電力の1次エネルギー換算係数は、
「エネルギーの使用の合理化に関する
法律」の施行規則第 4 条第 3 項第 2 号による。法改正の際は数値が変わる
こともあるので確認が必要である。
(3)パッシブ換気方式
自然の換気動力を主動力とした計画的な換気システムであるパッシブ換気を採用
する場合の熱損失係数算出に用いる換気回数は、換気動力の削減を加味し、 0.4 回/
hを用いることが出来る。ただし、パッシブ換気を採用した場合の年間暖房エネルギ
ー消費量の算出の換気回数は 0.5 回/h とすること。
- 51 -
2章 熱損失係数の算出方法
2.2.5
小規模住宅における熱損失係数の基準値の補正
床面積の小さな住宅では、断熱性を高めても、熱損失係数が床面積の大きな住宅ほ
どには小さくならない。このため、戸建住宅で 100m 2 以下、共同住宅等で 60m 2 以下の
住宅においては、熱損失係数の基準値は次式によって補正してよい。
𝑄𝑆𝑆 = (1 + 0.005(𝐴𝑆 − 𝑆))𝑄𝑆
𝑄𝑆𝑆 :補正後の熱損失係数の基準値
[𝑊/(𝑚2 ∙ 𝐾)]
𝑄𝑆 :補正前の熱損失係数の基準値
[𝑊/(𝑚2 ∙ 𝐾)]
A𝑆 :本補正において基準となる床面積
(戸建で100m2 、共同住宅等で60m2 )[m2 ]
𝑆 :当該住宅の床面積の合計
2.2.6
[m2 ]
(ただし、S ≤ A𝑆 )
日射利用住宅における熱損失係数の基準値の補正
日射を取り込むことのできる住宅であれば、程度に差はあるが、日射取得によって
実質的な熱損失量が低減される。国の省エネルギー基準では、標準的な住宅と比較し
て日射を取り入れる工夫がなされている場合に、熱損失係数の基準値を緩和できるこ
ととしており、札幌版次世代住宅基準においてもこれを適用する。
(1)日射利用による熱損失係数の基準値の補正式
日射利用住宅における熱損失係数の基準値の補正式は、次式で表される。
𝑄𝑝𝑠 = 𝑄𝑠 ⋅ 𝑎
𝑄𝑝𝑠 :補正後の熱損失係数の基準値
[𝑊 ∕ (𝑚2 ⋅ 𝐾)]
𝑄𝑠 :補正前の熱損失係数の基準値
[𝑊 ∕ (𝑚2 ⋅ 𝐾)]
𝑎
:地域の区分、日射を取り入れる工夫に応じて定められる補正係数
(2)日射を取り入れる工夫
日射を取り入れる工夫には、建物の蓄熱量を大きくすることと集熱開口部の面積を
大きくすることの2つの方法があり、それぞれの方法の組合せにより、表 2.2.17 のよ
うに設定されている。
- 52 -
2章 熱損失係数の算出方法
表 2.2.17
日射を取り入れる工夫と補正係数aの対応
居室の床面積当りの居室に面す
る蓄熱部位の熱容量
床
床以外
(a)
50kJ/K 未満
(b)
(c)
(d)
50kJ/K 以上
住宅の床面積当りの集熱開
口部の面積
15%以上
17.5%以上
100kJ/K 以上
100kJ/K 未満
100kJ/K 以上
100kJ/K 以上
条件なし
1.04
1.06
1.06
1.06
(3)蓄熱部位の熱容量
①蓄熱部位の定義
蓄熱部位とは、蓄熱に有効な熱容量をもつ部位をいい、天井、床、外壁、間仕切
壁、戸境壁を対象とする。ただし、断熱材の有無や材料の熱的性能によって蓄熱効
果が異なるため、蓄熱部位の熱容量は、次に示す範囲で計上する。
1)蓄熱部位とみなせる範囲は、最も室内側の材料を含め、断熱材または密閉空
気層の間に位置する材料とする。ただし、戸境壁の場合は、壁厚の半分までを
対象とする(図 2.2.26)。
2)材料ごとに蓄熱部位として計上できる有効厚が、表 2.2.18 のように設定され
ており、材料の厚さが有効厚以上の場合は、有効厚までを計上することができ
る。図 2.2.27 の「材料1」のように有効厚以上の場合は、次の材「材料2」
を蓄熱部位とみなすことができる。
外
外
材料4:断熱材
5
4
3
蓄熱部位
とみなせる範囲
(材料1~3)
2
材料1
材料4:断熱材
5
4
3
材料2 の
有効厚
2
材料1
内
図 2.2.27
内
蓄熱部位の対象範囲
1)
図 2.2.28
蓄熱部位
材料2:有効厚以上
材料1:有効厚以下
蓄熱厚さによる蓄熱部位の扱い
1)
3)最も室内側の材料から断熱材との間に空気層がある場合、空気層の外側の材
料であっても断熱材よりも室内側にある材料は蓄熱部位として計上できる。例
えば、床断熱の場合がこれに当てはまる。ただし、基礎断熱であって、床ある
いは土間床部に断熱していない場合は、蓄熱部位としてみなすことはできない。
- 53 -
2章 熱損失係数の算出方法
表 2.2.18
材料
蓄 熱有 効厚
m
材料の蓄熱有効厚と容積比熱
容 積比 熱
k J/( ㎥・K)
コンクリート
普 通コ ンク リート
軽 量コ ンク リート
気 泡コ ンク リート
左官材料
モルタル
しっくい
プラスター
壁土
木材
まつ
すぎ
ひのき
ラワン
合板
0.20
0.07
0.07
2,013
1,871
1,289
0.12
0.13
0.70
0.17
2,306
1,381
2,030
1,327
0.03
0.03
0.03
0.04
0.03
1,624
783
933
1,034
1,113
材料
1)
蓄 熱有 効厚
m
容 積比 熱
k J/( ㎥・ K)
0.06
0.06
0.12
0.06
854
820
1,302
615
0.12
0.11
0.15
0.02
0.01
2,612
1,390
1,959
260
318
せっこう等
せっこうボード
パ ーラ イト ボード
フ レキ シブ ルボー ド
木毛セメント板
その他
タイル
ゴムタイル
リノリウム
畳
カーペット
②蓄熱部位の熱容量の算定
蓄熱部位の熱容量C[𝑘𝐽 ∕ 𝐾]は、次式で算定される。
C = cγ ∙ V
cγ :容積比熱
V :容積
[kJ/(𝑚2 ∙ 𝐾)]
[m3 ]
また、居室に面する蓄熱部位の居室床面積 1𝑚2 当りの熱容量は、「床」と「床以
外」に分けて、居室に面する蓄熱部位の熱容量を合計し、居室の床面積の合計値で
それぞれ除して算出する。
なお、表 2.2.18 に示す材料以外の有効厚さは、算定したい材料の温度伝導率(熱
伝導率/容積比熱)を普通コンクリートの温度伝導率( 0.813 × 10−6 [𝑚2 /𝑠])で除し、
0.20 を乗じた値を用いることができる。
(4)集熱開口部の面積
集熱開口部とは、日射取得に有効な開口部をいい、真南から東西 30°の範囲内に
おける外気に接する開口部を対象とする。集熱開口部の面積は、サッシ枠等の面積
を除くガラス部分の面積とするが、ガラス部分の面積の算定が困難な場合は、枠等
を含めた開口部の面積に 0.9 を乗じた値を用いることができる。
- 54 -
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