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情 報 報 告 - 日本産業機械工業会
情 報 報 告 ウィーン 欧州環境情報 欧州、リサイクルペットボトルの需要が 15%増加 4 月 29 日 に発表された市場推計によると、欧州の bottle-to-bottle(ボトルを再び飲 料用 PET ボトルとしてリサイクルすること)業界における再生ポリエチレンテレフタ ラート(R-PET)の需要が 2013 年 4 月は前年比 15%増加したことが分かった。例年よ り冬が長かったにもかかわらず、この増加が見受けられた。一般に気温が低い場合、 ボトルドリンクの消費は減少する。 今回の結果は、持続可能性に関する目標や、 R-PET 利用時の二酸化炭素排出クレジットによるコスト削減によるもので、ボトルド リンク製造業者の間にリサイクル素材の需要が高まりつつあることを示している。 欧州、気候変動準備会合が閉会 5 月 3 日、ポーランドの Warsaw で 2013 年 11 月に開かれる国連気候変動枠組み条 約第 19 回締約国会議(COP19)に向け、ドイツの Bonn で 4 月 29 日から開かれていた 準備会合が閉会した。会合では 2020 年以降の新たな国際枠組みのほか、2020 年まで の温室効果ガスの削減目標を協議した。削減義務を先進国だけに課す京都議定書に代 わる新たな枠組みは、同議定書から離脱したアメリカのほか、最大排出国の中国など の新興国、途上国を含む全締約国が対象で、2015 年までにまとめる計画となっている。 国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)の Christiana Figueres 事務局長は記者会見で、 「活発な議論が行われ、実りの多い1週間だった」と述べたものの、先進国と途上国 の意見の隔たりは大きく、問題を先送りした形となった。途上国は会合で、先進国に 2020 年までの削減目標の引き上げを要求。また、途上国は先進国からの資金的支援が なければ削減できないと主張し、先進国の反発を招いた。ただし、アメリカは各国が 自発的に削減目標を決め、相互に評価し合った上で新たな合意を形成する構想を提唱 した。日本など先進国が前向きな反応を示す一方、途上国は先進国が低い目標を設定 する懸念があると警戒を強めており、6 月に Bonn で開催される次回会合は紛糾する 可能性がある。 欧州、シェールガスに期待 アメリカでエネルギー価格の大幅な下落をもたらした「シェールガス革命」に対し て、EU がシェールガス開発の準備を始めた。しかし、環境・安全面での懸念から開 発をめぐる EU 加盟国の意見が割れている上、域内の採掘可能量が不透明で、アメリ カのような効果を期待するのは難しい。EU 域内でのシェールガスの採掘は、ユーロ 危機を背景とした景気低迷に苦しむ産業界の強い要望があり、欧州の 2012 年の工業 用ガス価格はアメリカと比較して 4 倍も高い。企業にとっては競争力低下の原因であ り、英国やポーランドが新たな資源の開拓に力を入れている。 EU は 2011 年 2 月の ― 43 ― 情報報告 ウィーン 首脳会議で、「シェールガス資源の持続可能な採取・使用を検討すべきだ」との声明 を採択している。5 月 22 日に開く EU 首脳会議では「欧州のエネルギー供給の多様化 をさらに進め、固有のエネルギー資源を開発することが重要」と強調する見通し。 一方、シェールガス採掘に用いる「水圧破砕法」という技術に対しては、地下水汚 染などを招く恐れが指摘されており、フランスとブルガリアは同法による採掘を禁止。 また、一部の EU 加盟国がガス探査に当たり環境影響評価を義務化するなど、各国の 対応は統一されていない。このため欧州委員会は 2013 年、安全なシェールガス開発 を可能にする共通の枠組み作りの調査検討に着手しており、その結果は年末にも公表 される予定。 EU はエネルギー消費の約 4 分の 1 を占める天然ガスの 60%超を、ロ シアなどからの輸入に依存している。EU の研究機関の分析によると、域内のシェー ルガス採掘はアメリカに比べ高コストで、開発に成功しても EU が天然ガスの自給自 足を達成するにはほど遠いが、30 年先の輸入依存率を抑制することは可能という。 欧州、太陽光発電導入量が初の減少 5月8日、EPIA(欧州太陽光発電産業協会)によると、2012年に欧州で新規設置された容 量は17.2ギガワット(GW)となり、前年の22.4GW から減少した。欧州で新規の容量が前年 を下回るのは2000 年以降で初めて。欧州は総容量で70GW と、世界全体の70%を占めて おり、なお太陽光発電の先進地域となっているが、ここにきてその成長にブレーキがかか ってきている。調査対象となったのは、EU27ヵ国とクロアチア、ノルウェー、スイス、ト ルコ、ウクライナの計32ヵ国。新規の容量は太陽光発電大国のドイツ、イタリアが欧州全 体の64%を占めたが、ドイツは7.6GW、イタリアは3.4 GW と、それぞれ前年の7.5GW 、 9.5GW から減少。3 位のフランスも1.8GWから1.1GW に減った。4 位の英国は0.9 GW で、 0.8GW から小幅ながら増えた。ギリシャは0.4GWから0.9GWに増え、5 位に浮上した。 このほかブルガリアが0.1GW から0.8 GWに急増し、6 位に入った。太陽光発電が進んで いる国で鈍化している一方で、後進国で導入が進んでいることが浮かび上がった。今回の 結果についてEPIA は、「太陽光市場は欧州によって牽引されてきた時代から、太陽エネ ルギーの可能性と開発への政策的意思を持つ世界中の各国に依存する時代へとシフトして いる」述べた。 欧州、電力料金が前年より 6.6%上昇 5月27日、EU統計局Eurostatが発表したEU加盟27 カ国の2012 年下半期(7~12月)の家 庭用電力料金は100キロワット時(kWh)当たり平均19.7ユーロとなり、前年同期比6.6%上昇 した。上昇幅が最大だったのはキプロスの20.6%上昇で、これにギリシャ(14.5%)とイタリ ア(11.2%)が続く。一方で、スウェーデンは4.7%下落した。電力料金の最安値はブルガリ アで9.6ユーロ/100kWh(オーストリアは18.4ユーロ)。 ガス価格は同期で、加盟国全体でもユーロ圏でも10.3%上昇した(オーストリアは5.8%)。 ― 44 ― 情報報告 ウィーン スロベニアがマイナス7.8%で唯一下落した。ガス価格の最安値はルーマニアの2.7ユーロ /100kWh(オーストリアは6.9ユーロ)。 欧州、2011年の温効ガス排出量は3.3%減 5月29日、欧州環境庁(EEA)が公表したリポートによると、EU27 ヵ国における2011年の 温室効果ガス排出量は、暖冬傾向で全体的に電力需要が抑えられたことや、生産活動の緩 やかな回復と寒波の影響で前年比2.4%増となった2010年の反動によって、2010年比3.3% の減少となり、1990年以降で最低水準を記録した。2011年の総排出量は二酸化炭素(CO2) 換算で2010年を1億5,500万トン下回った。EUでは、2020年までにEU域内の温室効果ガス 排出量を1990年比で少なくとも20%削減する目標を掲げており、EEAによると2011年時点 で18.4%の削減を達成したことになる。ただ、2011年はCO2排出量が比較的少ない天然ガ スの消費量が前年比11%減と落ち込む一方、石炭の需要が大幅に拡大した。これはアメリ カでシェールガスの開発・生産が急拡大したことに伴い、石炭価格が下がったことを受け て大量に輸出され、加盟国の一部で石炭火力発電の占める割合が大幅に拡大したことによ る。EU27 カ国の実質GDP が1.6%の伸びを示す中で、温室効果ガス排出量が予想を上回 る減少幅となったことについて、EEAは「2010年は温暖な冬の気候に助けられた側面が大 きいが、全体としては2020年の目標達成に向けて順調に進んでいる」と述べた上で、コス ト面から再生可能エネルギーの利用が伸び悩む一方、石炭など化石燃料への依存度が上昇 傾向を見せている点を指摘し、「欧州が低炭素社会への転換を実現するには技術革新への 持続的な投資が不可欠だ」と強調している。 欧州、失業率が過去最悪 5 月 31 日、 EU 統計局 Eurostat が発表した 2013 年 4 月のユーロ圏の失業率は 12.2%で、 過去最悪を更新した(3 月は 12.1%)。オーストリアは、3 月から変わらず 4.9%で、EU 加盟 国で最低の失業率だった。EU 全体では 3 月から変化がなく 11%で推移しているが、前年 同月の 11.2%から上昇している。Eurostat の試算では、4 月に欧州全体で 2,660 万人が失 業している(ユーロ圏では 1,940 万人)。特に、若年層の失業率が欧州全体、ユーロ圏ともに 0.1%上昇し、23.5%、24.4%に上昇しているのが目立つ。ギリシャでは若者の 3 人に 2 人 が失業中で、失業率は 62.5%に達した。スペインの 56.4%、ポルトガルの 42.5%と続く。 欧州委員会、グリーンインフラパッケージを採用 5 月 6 日、欧州委員会は空間的計画の中心に自然プロセスを置いたグリーンインフラの整 備を促進するための新しい戦略を採択した。EU の資金は現在、コンクリート製の洪水対策 の建設に代わって、大雨による大量の雨水を吸収する天然の湿地を許可するといった、イ ンフラ問題に対するグリーンソリューションを奨励している。欧州委員会のグリーン活動 家が“Eureka moment(今までできなかったことが突然できるようになる瞬間のこと)”と ― 45 ― 情報報告 ウィーン して考えていることの中で、そのパッケージは、沿岸保護のための砂浜そして洪水対策や 水汚染の低減のために選ばれる河川の堤防や湿地帯に対して資金提供を優先的に受けるこ とを可能にする。「グリーンなインフラの建設は自然に対してだけでなく、経済や雇用に とっても非常に良い投資である。我々は、経済的且つ環境的に利にかなった自然と共存す るようなソリューションを持った社会を提供していく必要がある」と環境委員会の Janez Potočnik 委員は述べた。欧州委員会によれば、グリーンインフラは従来の土木工学による 対策と比べてより安く、より耐久性があり、熱波もまた生物多様性のある公園、緑地帯そ して新鮮な空気の働きによって和らげられる可能性があるとしている。欧州の生物多様性 は過去 50 年間以上に渡り都市や輸送インフラの急速な拡大のために、生息地の喪失、土地 の荒廃や分断によって傷つけられてきた。理論的に、新しいパッケージは雇用の創出およ び市民の健康と環境面での利益を提供してくれる自然のソリューションの使用によって、 現状からの好転を期待している。新しい EU のパッケージは以下のことを提案している。 ・2014 年までの EU の金融制度そして欧州投資銀行からの支援を受けたグリーンインフラ のプロジェクトに対する融資の利用の更新 ・EU レベルのプロジェクトの支援と 2015 年の終わりまでに EU 全体のグリーンインフラ ネットワークに対する支援策の評価を実施 ・次の予算期間に渡り政策にグリーンインフラを統合可能な方法を示すため、2013 年末ま でにガイダンスの作成 ・農業、林業、自然、水、海洋漁業、地域政策、気候変動の緩和と適応、輸送、エネルギ ー、防災そして土地利用政策などの分野におけるグリーンインフラの促進 ・調査とデータの精度向上および革新的技術の促進 欧州委員会、緊急時対応センターを発足 5 月 15 日、欧州委員会は、欧州そして世界中の災害へのより良い協力、より速くより効 率的な欧州の対応を提供するための緊急時対応センター(ERC)を発足したことを公表した。 欧州委員会の Jose Manuel Barroso 委員長は「残念ながら、災害の周期と複雑さが増して きているので、EU 加盟国はより一層の緊密な協力が必要となる。新しい EU の ERC は最 も極端な状況下で調整することを可能にし、より一層効率的にこれらの課題に取り組むこ とができ、結果的に我々の市民を保護するのに役立つための最新のプラットホームを提供 する」と述べた。 欧州委員会、エコ・イノベーション・プロジェクトの提案を募集 5 月 22 日、欧州委員会は、最も優れた 45 のエコ・イノベーション・プロジェクトに対 して、総額 3,160 万ユーロの予算に値する提案の募集を開始した。欧州全土にある企業は、 2013 年 9 月 5 日 17 時までに、5 つの分野(マテリアルリサイクル、水、持続可能な建築製 品、グリーンビジネス、食品と飲料)の市場への最新の環境ソリューションをもたらすよう ― 46 ― 情報報告 ウィーン な提案を提出しなければならない。募集は、革新的なグリーン製品、プロセスまたはサー ビスを開発したが、市場にそれを導入する困難さを経験している主に中小の民間企業を優 先対象としている。(参照:http://ec.europa.eu/environment/eco-innovation/apply-funds/call-proposal/) オーストリア、ドイツの歴史的エネルギー転換で恩恵 5 月 8 日付けオーストリアの『Der Standard 紙』によれば、福島原発事故により、ドイ ツは 2011 年に 17 の内 8 か所の原発を停止したが、電力の安定供給が懸念され、ドイツ電 力事業者は予備の発電所と供給契約を締結した。この中にオーストリアの発電所 2 か所が 含まれる。2011 年から 2012 年の冬に、ドイツ電力事業者は供給不足に陥った。2 度オー ストリア国内の発電所は稼働を再開、それに対し、天候の影響で予想される大規模な不足 は免れたため、予備の発電所の稼働再開は 2012 年から 2013 年の冬に 1 度だけ要求された。 ドイツは 2011 年に歴史に残るエネルギー転換を決定し、再生可能エネルギーに 200 億ユ ーロの税金を投入したが、それにより生み出された電力は 25 億ユーロしかなかった。ドイ ツ連邦電力網庁は、一企業であればビジネスモデルを見直すのが当然だが、支援制度は 20 年間固定されているので変えることはできないと擁護する。ドイツでは、“貧しい”消費 者が“豊かな”大企業のために、再生可能エネルギーのコストを支払っているが、それで も国民が納得している。ドイツの大企業だけでなく、オーストリアもドイツのエネルギー 転換で利益を得ている一国で、2010 年以降、ドイツからオーストリアへの電力輸出は 3 倍 になり、オーストリアの消費者は安い電力の恩恵を受けている。 ドイツ、ThyssenKruppが中国の投資を拡大 5月3日の『Dow Jones』によると、鉄鋼・エンジニアリングメーカー大手のThyssenKrupp 社は、急激に成長する中国への投資を拡大することを明らかにした。自動車部品やエレベ ーターの需要増加に対応するため、新たに5工場を開設し、総額2億8,000万ユーロ超を投じ るという。 ThyssenKrupp社は昨年度、中国でエレベーターの新規受注が前年比50%近く も伸びたことから、向こう5年間でエレベーター部門の人員を1万5,000人増やす考え。こ れにより、同部門の従業員数は現在の2倍以上に拡大する。 ドイツ、EnBW が 2 つの停止中の原発解体許可を申請 5月6日、エネルギー企業であるEnBW社は、福島第1原発事故後にドイツ連邦政府の要請 を受けて停止していた2基の原子力発電所について、初期解体と廃炉の許可をドイツの Baden-Württemberg州のドイツ連邦環境省(BMU)に申請したと発表した。 対象となるのは、Neckarwestheim原発1号機とPhilippsburg原発1号機。いずれも2011 年から停止中で、2012年8月に解体する方針を打ち出していた。EnBW社は年内に環境アセ スメントを含む解体作業の詳細計画と、核廃棄物の処理・貯蔵施設の建設申請を提出する 予定。ただし、解体の承認を得るまでには数年かかる見通し。 ― 47 ― 情報報告 ウィーン EnBW社では既に2基の廃炉費用として10億ユーロ相当の引当金を計上しており、核燃料 を取り出した後、すぐに解体作業を開始する即時撤去解体方式の採用を決めている。同社 は2004 年にObrigheim原発の解体を申請。2008 年に承認を得て、現在解体を進めている。 ドイツ、LEONIがインド事業を強化 5月6日、ケーブル大手のLEONI社はインドのPune近郊に建設した新工場の開所式を行っ た。自動車のほか、再生可能エネルギー、鉄道、石油・ガス産業向けのケーブルやケーブ ルシステムも生産する。今年末までに設備投資などに約1,100万ユーロを投資する計画で、 従業員数は約140 人を予定している。新工場の面積は約 1万5,000平方メートル。今年初め からすでに自動車向けの汎用ケーブルの生産を開始している。将来は特殊ケーブルも生産 する計画。LEONI社によると、インドの自動車市場は2016 年まで年約12%の高い成長が 続く見通し。インドでは現在、年約580 万台の自動車が生産されている。新工場ではこの ほか、太陽光発電や太陽熱、風力発電の再生可能エネルギー産業向けのケーブルや、高速 列車や機関車、路面電車、地下鉄、貨物列車、石油・ガス、石油化学、発電所、水処理施 設向けなどの製品を供給する予定。 インドでは中・長期的に同社が製品を供給する産業分野の成長が見込まれている。新工 場の建設により、現地顧客への対応を改善するとともに、事業のグローバル化を推進し、 インド市場の開拓や周辺諸国向けの事業をさらに強化する。現地生産により、関税がなく なるほか、労働コストや輸送費を抑えることができるなどコスト面でのメリットもあると している。 ドイツ、BASFが研究開発の国際化を推進 5月7日、化学大手のBASF は研究開発に関する記者会見で、研究開発事業の国際化を強 化する方針を示した。2012年はアジアとアメリカに7カ所の研究施設を新たに開設。欧州域 外における研究開発事業は全体の27%に拡大した。2020年には当該比率を50%以上にする ことを目指している。2012年は250を超える新製品を市場投入。過去5年以内に市場投入し た新製品の売上高は約85億ユーロに達しており、2020年には、過去10年に市場投入した製 品で300億ユーロの売上高を確保することを目指している。今後については、世界の大学や 研究機関、企業との連携を強化し、競争力を高めていくほか、開発した製品とサービスを 組み合わせた営業に注力する方針も示した。重点テーマとしては「エネルギーと資源」を 挙げており、再生可能エネルギーやエネルギー効率の向上、エネルギー貯蔵技術などの研 究に取り組んでいく方針を示している。 ドイツ、Duerrの第1 四半期は減収増益 5月7日、産業設備機械大手のDuerr社が発表した2013年第1 四半期(1月から3 月)決算の 売上高は5億4,250万ユーロとなり、前年同期に比べ3.5%減少した。ただし、営業利益(EBIT) ― 48 ― 情報報告 ウィーン は21.6%増の3,600万ユーロとなり、EBIT ベースの売上高利益率は前年同期の5.3%を上回 る6.6%に改善。税引き後利益も32.0%増の2,270 万ユーロと増益を確保した。Duerr社は 塗装・組み立て設備やロボット、計測・排気フィルターシステムなどを生産している。Duerr 社は減収ながらも増収となった理由として、高い稼働率と生産効率の改善、新興国市場か らの受注が好調なことを挙げている。利益率の高いサービス事業が成長するなど、利益率 の向上も増益に寄与した。新興国市場の事業が好調で、第1 四半期の受注高の70%を占め た。特に中国は全体の40%以上を占めているという。ブラジルでも自動車産業の投資が活 発で、生産能力の拡大が進んでいるとした。Duerr社は今後について明るい見通しを示して いる。世界の自動車販売は少なくとも 2017年まで大幅に増加する見通しであるほか、欧州 自動車市場の低迷も底をついたと見られている。中国では引き続き生産設備の高い需要が 見込まれている。また、欧州では工場の設備更新・近代化需要が見込めると予想している。 2013年3月末時点の従業員数は前年同期比9.9%増の7,784人。今年末には約8,000人に増え ると見込んでいる。 ドイツ、KUKAの第1四半期は34.3%増益 5月9日、産業用ロボット・機械設備大手のKUKA社が発表した2013年第1 四半期(1月か ら3 月)の決算の最終利益は1,450万ユーロとなり、前年同期比で34.3%増加した。製造業界 におけるロボット・自動化設備に対する需要が伸びていることが追い風となった。本業の もうけを示す営業利益(EBIT)は29.7%増の2,840 万ユーロ、売上高も18.7%増の4 億3,600 万ユーロに拡大した。同期の新規受注は、2012年同時期の反動を受けて19.9%減の4 億 8,270 万ユーロに低迷した。 部門別にみると、ロボット部門の売上高は 2億680万ユーロ(34.5%増)、新規受注高は2 億3,360万ユーロ(11.7%減)だった。受注残は2億7,140万ユーロ(9.4%減)となった。システ ム部門(溶接機械、自動車・航空宇宙・ソーラー産業向け生産設備など)の売上高は2億3,440 万ユーロ(6.6%増)、新規受注高は2億5,830万ユーロ(25%減)。 ドイツ、E.ON がMetroと分散型電源で提携 5月17日、エネルギー最大手E.ON社は、国内小売り最大手Metro社と分散型電源分野で 提携すると発表した。会員制卸売りスーパー“Metro Cash&Carry”の店舗に熱電併給(CHP) 設備を設け、拠点の電力および暖房などの熱需要を賄う。E.ON社は“Metro Cash&Carry” のドイツの2店舗とロシアの2店舗に4基のCHP施設を供給する。出力はそれぞれ250から 800 キロワット(kW)で、設置と保守、諸費用はE.ON社が負担し、運営はMetro社が行う。 これにより各拠点のエネルギーコストの削減が見込まれるほか、二酸化炭素(CO2)の排出量 を最大で20%減らすことができるという。それぞれの施設を太陽光など再生可能エネルギ ー発電システムと組み合せることも検討しているほか、今後もドイツ国内を中心にCHP施 設を設置する計画。将来的にはアメリカの店舗での導入も視野に入れている。 ― 49 ― 情報報告 ウィーン 分散型電源は、大規模発電設備と送配電網を用いた従来の電力供給と異なり、現場に小 型の発電設備を設けて電力などを供給する。E.ON社はこの分野の売上高は欧州だけで2020 年までに年間100億ユーロに達するほか、CHP設備の新設量も年間200万キロワットに上る と予想している。 ドイツ、DHLがBonnでの配送にEVを投入 5月21日、郵便・物流大手のDeutsche Post DHLは2013年途中から本拠を置くBonnとそ の周辺地域で配送に電気自動車(EV)の利用を開始すると発表した。投資総額は約1,400万ユ ーロで、うち600万ユーロは政府からの助成で賄う。第1段階として年内に79台を投入し、 2016年には141台に段階的に拡大していく。これにより二酸化炭素(CO2)の排出量を年間 500トン以上削減できるという。プロジェクトに投入するEVのうち20台は、50社以上が開 発に参加したオープンソース(設計図を公開して参加企業を募る方式)のEV“StreetScooter” をベースにAachen工科大学の研究チームが開発した配達仕様の特別車を使用する。 ドイツ、Merkel 首相は EV の普及目標に固執する 5 月 27 日、Angela Merkel 首相は、消費者の関心が低下している現実にもかかわらず、 2020 年までにドイツで 100 万台の電気自動車(EV)を普及させる自身の目標を再確認した。 Berlin で開催された EV 技術を普及させるための会議で、Merkel 首相は「あなた方にはエ レクトロモビリティを信じている首相がいる」と発言した。ドイツでは 2012 年に 300 万台 以上の自動車が売れたが、EV は 3,000 台以下でしかなかった。ドイツ自動車工業会(VDA) の Matthias Wissmann 会長によれば、ドイツの自動車業界は向こう 3 年から 4 年間に 120 億ユーロ規模の投資を、EV を含む代替燃料車の開発に投資することを計画しているが、 「EV の先行きは見えないのが現実」とも述べている。また、Philipp Roesler 経済技術大 臣は、中国、フランスそしてアメリカのような EV の需要を後押しするために購入時の助成 金を支給する取り組みの採用については拒否した。 かつては従来型の自動車を押しのける技術として大々的に宣伝されたが、EV の販売は高 いコストと限られた走行距離のために成功していない。ドイツ自動車連盟(ADAC)の調査で は、2 年前よりもドライバーは技術について非常に懐疑的であり、約半数が EV のために余 分なお金を支払うことに消極的という結果であった。 ドイツ、中国との貿易紛争に反対 5 月 27 日、中国の李克強(Li Keqiang)新首相の最初の EU への公式訪問がドイツであっ たことは偶然ではない。経済的観点から、この 2 つの国は強く結び付いている。中国への ドイツの輸出は増加しており、一方で、中国はドイツの最も重要な救世主にまさになろう としている。このことから、中国からの来賓は歓迎された。しかしながら、欧州委員会は 全く異なる信号を中国に送っており、それは中国の安価な輸入品に関する報復関税の検討 ― 50 ― 情報報告 ウィーン である。ドイツは、中国政策に対して EU との溝が広がることを懸念して、これに反対し ている。 ドイツ、再生可能エネルギークラブを設立 6 月 1 日、ドイツの Peter Altmaier 環境大臣の招待で、10 ヵ国からのハイレベルな代表 が“再生可能エネルギークラブ”設立のためにドイツの首都 Berlin に集合した。 彼らの共通 の目標は、再生可能エネルギーの世界展開を拡大することである。この再生可能エネルギ ーを提携する設立メンバーは、ドイツ、フランス、デンマーク、英国、モロッコ、南アフ リカ、中国、インド、トンガ(中小の島国の代表として)、アラブ首長国連邦そして国際再生 可能エネルギー機関(IRENA)の事務局長である。 「このクラブのメンバーとして、我々は 実例によって世界をリードすることを目的としている。再生可能エネルギークラブは、エ ネルギーシステムの世界的な転換という重要な目標によって団結したパイオニアである 国々の政策的イニシアチブである。我々は、世界レベルでの再生可能エネルギーの擁護者 そして実施者として一緒に活動することを決定した」と Altmaier 環境大臣は述べた。 クラブのメンバー国は、将来の政策的議題に再生可能エネルギーを取り入れることに合 意した。次の国連気候変動会議において、このクラブは、繁栄、気候そして持続可能な発 展のための再生可能エネルギーの利点を共同で提案することを予定している。アイデアの ネットワークと駆動力として、このクラブはエネルギーシステムの世界的転換を促進する プロジェクトに対する推進力を生みだすことも目的としている。 ドイツ、脱原発と温暖化に苦しむ 東京電力福島第1原発の事故を受け、ドイツが脱原発にかじを切ってから 6 月で 2 年が経過する。原発に代わる再生可能エネルギーの開発が進む一方で、石炭火力発電 所の稼働は続き、2012 年は二酸化炭素(CO 2 )の排出量が増加。環境先進国を自負する ドイツは、脱原発と地球温暖化対策のはざまで苦戦している。ドイツでは福島の事故 後、反原発の世論が一段と高まり、Angela Merkel 首相は 17 基の原発のうち、8 基の 稼働を停止。残る 9 基も 2022 年までに閉鎖する方針を決め、2011 年 6 月に閣議決定 した。2011 年の総発電量に占める再生可能エネルギーの割合は 20.3%で初めて原発 を抜き、2012 年は 22.1%に拡大。原発は 2011 年に 17.7%、2012 年は 16.1%と低下 し、エネルギー転換は着実に進む。一方では、2012 年の CO 2 排出量は 2011 年を 2.2% 上回った。2013 年はさらに 3.5%増えると見込まれる。ドイツでは急速なエネルギー 転換が予想されていなかった 2000 年代初頭、石炭発電所の整備に着手。ここ数年間 で次々と稼働を開始し、CO 2 排出量の増加を招いている。また、電力料金の高騰も深 刻化している。再生可能エネルギーの普及のため、電気料金に上乗せされる賦課金が 今年から 47%引き上げられた。この結果、標準世帯の年間の電気料金は昨年から 10% 上昇して約 1,000 ユーロとなり、家計を圧迫している。また、再生可能エネルギーの ― 51 ― 情報報告 ウィーン 発電施設が多い北部と、電力需要の多い南部を結ぶ高圧送電網も、住民の反対運動で 建設は進んでいない。9 月に総選挙を控え、政府は経済界が抵抗するエネルギー転換 や温暖化対策を進めにくいとの事情もある。 ドイツ、醸造業者はフラッキングがビール産業に悪影響を与えると警告 ドイツのビール醸造業者がドイツ政府に対して、フラッキングとして知られ論争中の掘 削技術を許可することは同国の大切なビール業界に損害を与える可能性があると警告した。 Brauer-Bund ビール協会は、地中へ高圧で水と薬品を圧送するシェールガスへのフラッキ ングが、醸造に使用される水を汚染し、水の純度に関する 500 年の歴史を持つ業界のルー ルを破ることを心配している。ドイツの Munich で毎年開催される収穫祭(Oktoberfest)で は、約 700 万人が参加する世界最大の民族祭りであり、醸造とビールを飲む伝統に誇りを 持っている。“Reinheitsgebot(ドイツのビール純粋令)”の下、醸造業者はモルト、ホップ、 酵母そして水だけを使ってビールを生産しなければならない。「水は純粋でなければなら ず、ドイツの醸造業者の半分以上が、フラッキングに関する政府が現在計画中の法律の下 で保護される範囲外に位置している彼ら自身の井戸を持っている。フラッキングの法律の 前により多くの調査の実施を政府に要求しているので、あなた方は水が化学物質によって 汚染されることを確認することはできない」と Brauer-Bund 協会は述べている。 ドイツは欧州最大のビールの生産国であり、人口 1 人あたりの消費量はチェコ、オース トリアに次いで第 3 位である。Brauer-Bund ビール協会によると、約 5,000 種類のビール を生産する 1,300 以上の醸造所がある。少なくともシェールガスの埋蔵量調査へのドイツ 産業界からの圧力によって、Merkel 政権は特定の分野を保護する探索に向けての条件を設 定する法律に関して取り組んでいる。国会の上院でフラッキングに関する法律に反対する 野党からの抵抗を考慮すると、今年 9 月の総選挙の前にその法律が通過する可能性はほと んどない。 フランス、海洋エネルギーへの進出が必要 5 月 3 日、政府の報告書によれば、フランスは再生可能な海洋エネルギーのための法的枠 組みを発効する必要性に迫られている。その枠組みは、海洋エネルギー業界のリーダーで ある英国を助けたけために、企業が波力と潮力による実験を試みるのを許可するというも のである。海洋エネルギーは風力や太陽エネルギーのような再生可能資源と比べて遅れて おり、大規模な商業用施設の稼働実績はいまだにない。しかしながら、英国は海洋エネル ギー分野で大きな進展をしており、9 メガワット(MW)の発電容量を持つ 12 の大規模なプ ロトタイプの装置を有している。また、英国は約 2 ギガワット(GW)の発電施設に対して海 底を賃貸した最初の国である。 フランスは世界で 2 番目に大きな海域を管理している。 それは、標準規模の原子力発電所の 3 から 5 基に相当する 3GW から 5GW の発電容量を持 つ英国に続いて、欧州で 2 番目に大きな潮力の可能性を持っていることを意味する。5 月 3 ― 52 ― 情報報告 ウィーン 日にフランスの産業エネルギー省と合同で発行された政府の報告書では、フランスが世界 的競争力を示すためにパイロットプロジェクトを自国で進める必要があり、フランス産業 界の重工業 Alstom、Areva GDF Suez、 EDF Energies Nouvelles、Nexans のような大手 だけでなく、他の中小企業もまた海洋プロジェクトに向けた政府からのゴーサインを待っ ていると述べている。「それら企業は企業自身による開発とプロジェクトの資金面での保 証を可能にする戦略を描き出すための状況を待っている」と報告書は述べている。加えて、 海洋エネルギーの商業的開発は 2016 年よりも早く行われるかもしれない。 英国はすでに 2020 年までに 100MW から 200MW の波力と潮力エネルギーの導入を目指 している。しかし、業界の専門家はプロトタイプから完全な商業ベースへの急激な変化は、 特に現在の経済的危機とアジアとの競争を考えると大きな挑戦であると指摘している。 フランス、シェールガス禁止継続 5 月 22 日、フランスの Francois Hollande 大統領は EU 首脳会議閉幕後に Brussels で記者会見し、シェールガスの採掘に用いられる「水圧破砕法」という標準的な技術 は容認できず、「いかなる(探査や採掘の)許可もできない」と述べ、開発禁止の方 針を継続する考えを明らかにした。 国際エネルギー機関(IEA)によると、フランスは EU 加盟国で屈指のシェールガス埋蔵量があると予測されている。この中で大統領は 「フランスが EU に求めるのは、シェールガス開発によって、できることとできない ことを決める共通の規則をつくることだ」と述べた。 フランスのシェールガス田は 観光地や人口密集地にあり、水圧破砕法による環境・安全への影響を仮にクリアして も、開発は容易ではないとみられている。欧州委員会は安全なシェールガス開発を可 能にする共通の枠組み作りの調査検討に着手している。 イタリア、スマートメーター普及率が9 0%に 5月30日付けの『REUTERS』によると、イタリアでスマートメーターの普及率が90%を 超え、他の欧州諸国をリードしていることが明らかになった。スマートメーターはデジタ ル計測機能や通信機能を備え、各家庭で使用されるガスや電力の情報をリアルタイムで表 示することが可能。技術者や検針員が各家庭を訪問する必要がなくなるだけでなく、消費 者に節電を促すことが期待されている。またエネルギー会社は各家庭のエネルギー消費量 やパターンを把握することで、需給調整が可能になる。 スウェーデンの調査会社Berg社の試算によると、欧州全体では2017 年までに約1億1,000 万台が設置される見通しで、投資総額は158億ユーロ前後に達するとみられている。フラン スでは2020年までに3,500万台、英国では3,000万台、スペインでは2018年までに1,300万台 を導入する計画。 ― 53 ― 情報報告 ウィーン スペイン、Gamesaがケニア電力公社からタービン受注 5月29日、風力発電機大手のGamesa社はケニア電力公社(KenGen)がナイロビ近郊で開発 中のNgong2風力発電所に風力タービン16 基を供給する契約を交わしたと発表した。ケニ アへの進出は初めて。受注したタービン“G52”の出力は1基当たり850キロワット(kW)。 16基全体で1万3,600kWに上り、9,500世帯以上の電力需要を賄うことが可能となる。プラ ントは2014年第1四半期(1月から3月)のタービン設置を経て、第2四半期(4月から6月)に稼働 する見通し。ケニアで2カ所目の風力発電施設で、東アフリカで最大規模となる。Gamesa 社は1999 年にアフリカ市場進出を果たし、既にモロッコ、チュニジア、エジプト、南アフ リカで合わせて85万kW相当のタービンを設置。41万9,000kW分のタービンのメンテナンス を請け負っている。 英国、EU の汚染法に違反との判決 5 月 1 日、英国の裁判所は、英国政府が EU の大気汚染法(環境大気質に関する新指令)に 違反しているとの判決を下し、英国政府に対して具体的にどのような是正処置を取るべき か、欧州司法裁判所に判断を求める方針を明らかにした。英国の最高裁判所である高等法 院は、英国政府が EU 指令にある二酸化窒素(NO2)の規制値を違反していると述べた。ロン ドンは欧州の首都の中で最も高い NO2 濃度であり、英国では大気汚染が原因と考えられる 疾患によって 1 年間に約 29,000 人が亡くなっている。さらなる行動を決める前に、高等法 院は欧州司法裁判所にいくつかの法的な質問事項を確認しており、これに最大 18 ヵ月を要 する可能性がある。「高等法院は最終的に英国政府に対して大気汚染改善のための確実な 対策を取らせることを強制できるかもしれないが、罰金を支払わせる権限は持っていない」 と弁護士などで構成する環境保護団体 ClientEarth の Alan Andrews 氏は述べた。 ClientEarth は EU 加盟国が遅くとも 2015 年までに EU の規制値を遵守する義務があるに もかかわらず、英国政府が目標達成に向けて十分な対策を講じていないと主張し、2011 年 に政府を相手取り訴訟を起こしている。ClientEarth の James Thornton 会長は「今回の 歴史的な判決は大気汚染との戦いにおいて重要な転機になるだろう」と述べ、英国政府に 対して迅速な対応を求めた。 英国、スマートメーターの本格導入、当初予定より遅延 5月12日、エネルギー・気候変動省(DECC)の最新の調査によれば、スマートメーターの 本格導入が1年以上ずれ込む見通しであることが分かった。国内3,000 万世帯にスマートメ ーターを設置する総額117億ポンド規模のプロジェクトの開始時期は、当初予定されていた 来年夏から2015年秋までずれ込む見込み。製品開発や実証試験が長期化しているためで、 これに伴い全世帯への設置完了時期も2020年と、予定から1年ほど先送りになる。設置され るスマートメーターはデジタル計測機能や通信機能を備え、各家庭で使用されるガスや電 力の情報をリアルタイムで表示することが可能。これにより消費者に節電を促すことが期 ― 54 ― 情報報告 ウィーン 待されている。またエネルギー会社は各家庭のエネルギー消費量やパターンを把握するこ とが可能になる。業界関係者によれば、従来型メーターとスマートメーターの差異は、「電 報を打つ代わりに無線ブロードバンドを使うほどの開きがある」ようで、本格導入に向け ては十分な準備が不可欠とし、設置完了時期に余裕を持たせる政府の判断を歓迎している。 英国、海底送電ケーブル敷設へ前進 5月15日、送電大手National Gridとノルウェーの国営送電網会社Statnettは両国間の海底 送電ケーブル敷設計画の継続に向け、協力することで合意したと発表した。実現すれば、 この種のものとしては世界最長のケーブルが英国とノルウェーの送電網をつなぐことにな る。National GridとStatnettは2012年6月、両国間に全長700 kmの海底ケーブルを敷設す ることで合意。送電容量は140 万キロワット(kW)を予定している。今後は監督当局の承認、 環境免許の取得、ケーブルや変電設備の調達先決定が課題となる。プロジェクトは両社の 折半出資を予定しており、来年中に投資決定にこぎ着ければ、当初の計画通り2020 年まで の完工が可能という。ケーブル敷設が実現すれば、英国とノルウェーの送電網が初めて相 互接続されることになる。National GridとStatnettはこれにより、北海沿岸諸国の電力市 場の統合が進むとともに、再生可能エネルギーの生産と消費が促進されると期待している。 英国、燃料貧困層は世帯数減少もよりも深刻 5月16日、エネルギー・気候変動省(DECC)が公表したレポートによれば、英国で電力・ ガスなどの光熱費が収入の1割を超える“燃料貧困世帯数”は減少しているものの、問題は より深刻化していることが明らかになった。レポートによると、燃料貧困世帯数は2011年 に450万世帯と、1年前から25万世帯減少した。ただし、電力・ガス価格の引き上げなどを 背景に、今回から導入された貧困の深刻さを表す指標“燃料貧困格差”は1世帯当たり年間 平均448ポンドと、前年から26 ポンド増加した。“燃料貧困格差”は、燃料貧困世帯が実 際に支払っている光熱費と本来なら望ましい水準の光熱費の差を示すもので、ロンドン・ スクール・オブ・エコノミクス(LSE)のJohn Hills教授が提唱している。 英国、低炭素バス普及に1,200 万ポンドを交付 5 月27 日、英交通省は低炭素バスの普及を目的とした「グリーンバス基金」による助成 事業の第4 弾として、低炭素バスを導入する自治体やバス運営会社に総額1,200 万ポンド の補助金を交付すると発表した。グリーンバス基金は、ハイブリッドバスや電気バス、バ イオメタンガスバスなどの低炭素バスを導入する自治体やバス運営会社を支援するため 2009 年に創設され、これまでに7,500 万ポンドを交付、約1,000 台の低炭素バスの導入に 活用された。今回の助成対象となるのは、鉄道・バス運行大手のStagecoachとFirstGroup、 YORK、Greater Manchester、Nottinghamの各自治体とロンドン交通局(TfL)などが導入 する合計213 台の低炭素バス。内訳はシングルデッカーが83 台、ダブルデッカーが130 台 ― 55 ― 情報報告 ウィーン となっている。 スイス、ABB トロリーバスの超高速充電プロジェクトを実施 重電大手のABBは、ジュネーブ交通公社(TPG)などと共同でトロリーバス向けの超高速充 電システム“TOSA”の実証試験を実施する。停留所に組み込まれた充電装置にパンタグラフ を押しつけて蓄電池を充電するもので、充電時間はわずか15秒。停留所で乗客が乗降して いる間に充電が完了するため、通常のダイヤ通りに運行ができる。道路上に設置された架 線から常時電力供給を受ける従来の方式とは異なり、停留所で充電する方式のため、景観 上の理由などから架線を敷設できないルートでも運行することができる。充電は完全自動 化されている。充電装置の出力は 400キロワット(kW)という。実証試験はGeneva空港と Palexpo国際見本市会場を結ぶ区間で実施される。試験車両(大型バス)は135 人を運ぶこ とが出来る。 スウェーデン、インドネシアに5億ドルの投資 5月3日の『Jakarta Globe』によると、スウェーデン企業8社がインドネシアに最大5億ド ルの投資を計画していることが明らかになった。スウェーデンのHidayat産業相は、 Yudhoyono大統領ら政府関係者とスウェーデンを訪問した際に「重機、自動車、家具、鉱 業、再生可能エネルギー分野の8社がインドネシア進出に関心を示した」と述べている。 Yudhoyono大統領は通信機器大手Ericsson社、家具製造・販売大手IKEA社の経営トップと も会談した。既に、スウェーデン企業ではエンジニアリング大手ABB社 が総額5,000万ド ルでジャワ島に2つの発電所の新設を予定している。IKEA社は来年にもBanten州の Tangerangにインドネシア第1号店の開設を予定している。2012年の2国間貿易額は、2011 年比28%増の14億6,000万ドルだった。スウェーデンによる投資実現額は11案件の520万ド ルにとどまったが、前年の9案件、91万6,000ドルから大幅に拡大している。 デンマーク、現代自動車が燃料電池車15台を納車 6月3日、韓国の現代自動車はデンマークのCopenhagen市に燃料電池車「ix35フューエル セル」15台を納車した。同市では同じ日にデンマーク初の水素燃料供給ステーションがオ ープンし、セレモニーが行われた。現代は韓国の蔚山工場で2月26日から同モデルのライン 生産を開始している。量産の燃料電池車が欧州市場に導入されるのは初めてという。デン マーク市は2025年までにカーボンニュートラルを達成する目標を掲げており、水蒸気しか 排出しない燃料電池車の導入は目標達成に向けた取り組みの一環に位置付けられる。 「ix35フューエルセル」は現代自のCセグメントSUV「ix35」をベースに開発された。出力 100kW(136ps)の電気モーターを搭載し、最高速度は時速 160 キロメートルに達する。 時速 0~100 キロメートルの加速性能は 12.5 秒。1 回の燃料充填で 594 キロメートル走行 できる。水素燃料の充填には数分しかからないという。 ― 56 ― 情報報告 ウィーン 中東欧のビジネス環境インデックス悪化 オーストリア・コントロールバンクによると、国内のエネルギー、金融、消費財を扱う 企業は、今後 6 カ月の中東欧市場の見通しをネガティブに捉えていることがわかった。 4 月のアンケートでは、エネルギー事業者の 44%、建設部門の 39%が赤字だった。建設部 門の企業は、短・中期的にみて先行きは明るいと見ているが、エネルギー事業者の 40%が 中東欧事業の撤退縮小を検討している。オーストリア・コントロールバンクは国内企業の 400 社に今後 6 カ月の見通しを尋ねた。400 社は中東欧 21 カ国に 1500 の関連会社に影響 力をもっている。回答した企業は 2013 年中に中東欧市場に景気の浮揚は訪れず、20%が悪 くなるとみている。ビジネス環境インデックスは 1 月の 83.4 から 4 月の 81.8 に低下した。 国別では、スロバキアとクロアチアに対するビジネス環境インデックスは改善しているが、 スロベニアは 42%が今後 12 カ月間に悪化すると答えている。 チェコ、太陽光発電への助成金 2014 年から廃止へ 6 月 3 日、エネルギー庁の報道官は、太陽小発電とバイオガス施設の新設に対し、2014 年から助成金を廃止すると述べた。これにより、現在建設を開始したばかりの工事の完成 が急ピッチで進むとみられる。2013 年には 133 のバイオガス施設が電力網に接続される予 定。同庁によると、太陽光発電による生産電力は、2011 年にその目標に到達したというの が理由であり、担当の貿易産業・エネルギー省は、以前から再生可能エネルギーの助成を 廃止すると公言していた。チェコでは、2013 年に 9 億 9500 万ユーロが太陽発電の助成に 充てられた計算で、2012 年は 8 億 8800 万ユーロだった。再生可能エネルギーの 66%が太 陽光発電だった。 ポーランド、EBRDがCCGTプラント建設に融資 4月29日、欧州復興開発銀行(EBRD)は、ポーランドの電力セクター近代化を支援する事 業の一環として、ガスタービン複合サイクル(CCGT)プラント建設プロジェクトに2億8,300 万ズロチ(6,900万ユーロ)を融資すると発表した。。CCGTプラントは同国第2位の国営電力 Tauronとポーランド石油・ガス採掘公社(PGNiG)が南東部のSutaroba-Bora発電所で老 朽化した石炭火力発電プラントに代わって建設するもので、年間95万トンの二酸化炭素 (CO2)削減が見込まれている。総工費は推定10億ズロチで、EBRD のほか、Pekao銀行と欧 州投資銀行(EIB)も資金を提供する。EBRDは1991年以来、ポーランドに60億4,600万ユー ロを投資している。同国は石炭に大きく依存するエネルギー構造から脱却するため、エネ ルギー源の多様化を進めており、EBRDはエネルギーセクターへの資金供与を重点的に行な っている。 ポーランド、洋上風力発電の経済効果が175億ユーロ 5月29日、世界的会計事務所のErnst & Young社の最新の調査レポートによると、ポーラ ― 57 ― 情報報告 ウィーン ンドは洋上風力発電の設置を加速することで大きな経済効果が期待できると報告している。 この調査はポーランド風力発電協会(PWEA)の委託で実施されたもので、PWEAは、「風力 発電はシェールガス開発と競合するものではなく、補完しながら電源多様化に貢献できる」 として、政府に投資を呼び込むための環境作りに向けさらに働きかける。調査によると、 2025 年までに出力6ギガワット(GW)の風力発電設備を設置することによって、経済が生み 出す付加価値は175億ユーロ(788 億ズロチ)に達し、約4,000万トンの二酸化炭素(CO2)排出 量の削減によって支出が3.6億ユーロ減らせるという。ポーランドはEUの方針に沿い、2020 年までに最終消費電力に占める再生可能エネルギーの割合を15%にする目標があり、達成 に向けた政府行動計画では、洋上風力発電の合計出力を500メガワット(MW)と設定してい る。PWEAによると、ポーランドでは昨年の法改正を受けて風力発電に対する国内外の投 資家の関心が高まっており、「魅力的な投資の枠組みを設定すれば、外国からの投資を呼 び込み、EU 目標達成に貢献するだろう」と、その有効性を訴えている。さらに、ポーラ ンドの洋上風力の拡大は発電コストの低減も期待されている。E&Yによれば、洋上風力発 電に関連する需要で生まれる雇用は2012年から2025年の間に3万1,800人に達すると予測 しており、労働力需要は整備段階で最も大きく、設置容量1MWあたり17人のフルタイム従 事者、操業時には同0.5~1人が必要になるとしている。 ルーマニア、EBRDが火力発電所近代化に融資 4月26 日、欧州復興開発銀行(EBRD)は、ルーマニアのTurceni火力発電所の近代化事業 に2 億ユーロのシンジケートローンを供与することを検討していると明らかにした。 Turceni火力発電所はルーマニア南西部のGorj県に位置する。出力330 メガワット(MW)の 発電ユニット7 基を備えた同国最大の発電所で、国内で消費される電力の約1 割を担って いる。EBRD は同発電所の第6 発電ユニットの改修・近代化費用として、運営会社である CET Olteniaに最大で2 億ユーロをシンジケートローンの形式で貸し付ける。改修・近代化 プロジェクトの総費用は2億6,600 万ユーロが見込まれており、完了すれば年間30万トンの 二酸化炭素(CO2)の排出削減のほか、発電ユニットの効率および信頼性の向上、欧州送電系 統運用者ネットワーク(ENTSO-E)の基準に準拠した制御システムが実現するという。 ルーマニア、Conergyが太陽光発電所の建設を受注 ドイツの太陽光発電システム大手Conergy社がルーマニアの投資家から太陽光発電所の 建設を受注した。2013年1月に発表したクラヨバ近郊の2.2メガワット(MW)を持つ発電所に 続くもので、南東部のスロボジアに2MWの発電設備を新設する。受注規模は明らかにされ ていない。今回のプロジェクトでは、4 ヘクタール(ha)の敷地に8,000枚を超えるモジュー ルを設置する。年間発電量は2,700MWを超える見通しで、およそ770 世帯の需要をまかな えるという。ルーマニア政府は再生可能エネルギーの拡大に力を入れており、太陽光発電 市場の大きな成長が予想される。再可エネ供給量に応じた「グリーン電力証書」の交付と、 ― 58 ― 情報報告 ウィーン 配電会社と結ぶ長期電力売買契約(PPA)の存在で、このようなプロジェクトの収益性が確保 されているという。 ルーマニア、Lightwayが太陽光発電所を建設 中国の太陽エネルギー開発会社、Lightway・Solar社がルーマニア南部のPrunduに太陽 光発電プラント建設を計画している。『PV マガジン』によると、同社はこのほど、中国開 発改革委員会(NDRC)からプロジェクト開発許可を取得。現在は土地取得などプロジェクト 実行に関わる交渉に入っている段階という。施設の発電能力は50 メガワット(MW)で、投 資額は6億1,000万元(約7,600万ユーロ)。投資資金の3割をLightway社が拠出し、7割を銀行 から借り入れる計画。Lightway社は2013年3月、ドイツ子会社を通して現地メーカーを買 収し、中東欧市場進出への足がかりを築いた。ルーマニアの再生可能エネルギー促進戦略 を追い風に同国での事業拡大を狙う。Lightway社は2008 年設立で、セル・モジュール製 造から太陽光発電プロジェクトに至るソーラービジネスを展開する垂直統合型企業。ドイ ツ子会社は、市場競争に向けた戦力向上やルーマニア事業構築など、欧州戦略を担う。 ルーマニア、シェールガス開発を加速へ 5月21日、ルーマニアの鉱物資源局は近く、シェールガス探査権の公開入札を実施する予 定であることを、Constantin Nitaエネルギー担当相が『REUTERS』に答えた。具体的内 容や日程は決まっていないが、同相は「エネルギー資源の探査に、より多くの投資家や企 業が参加することを望む」としている。実際にシェールガス採掘まで踏み込むかどうかは 探査の結果を踏まえて決定する方針。アメリカの石油大手Chevronは先に、ルーマニアでシ ェールガス開発に乗り出す計画を発表している。黒海沿岸部で二次元探査を計画している ほか、東部Vaslui県でも試掘を予定する。 アメリカ・エネルギー情報局(EIA)によると、ルーマニア、ブルガリア、ハンガリーの3 ヵ国のシェールガス埋蔵量は推定5,380 億立方メートル(m3)に達し、ルーマニアのエネルギ ー需要を約40 年間満たせる計算となる。ただ、ルーマニアは天然ガスの埋蔵量が多く、国 内需要に輸入が占める割合は約4分の1にとどまっていることから、近隣諸国ほどシェール ガス開発の必要性に迫られていない。 ギリシャ、太陽光発電への助成削減 5月10日、ギリシャ政府は太陽光発電への助成金を新たに引き下げる方針を明らかにした。 現在の1,000キロワット時(kWh)当たり180ユーから225ユーロとからほぼ半分の95ユーロ から120ユーロに引き下げる方針。助成縮小は過去1年半余りで3度目になる。ギリシャでは これまで、太陽光発電業者に対し20年間にわたる高い電力買い取り価格を保証することに よって、再生可能エネルギーへの投資を促進してきた。その結果、3年間で10倍に増え、太 陽光発電量は昨年に16億9,400万kWhに達している。ただし、現在の水準の助成を続ければ、 ― 59 ― 情報報告 ウィーン 電力市場運営機関(LAGHE)の赤字が2015年初めまでに16億3,000万ユーロに拡大すること が予想されるため、助成を削減せざるを得ない状況であった。 セルビア、インフラ開発の資金探し EU 加盟交渉の日程が決まるかどうかは、加盟条件となるコソボとの関係正常化への進展 が鍵となる。加盟交渉の日程が決まれば、セルビアにとっては、EU からの支援金により、 国内の経済停滞から抜け出すことができる。一方では、投資家の動向を気にしなければな らなくなる。産業部門の投資は 2013 年 1 月以来、若干回復しつつある。EU からの助成金 だけでなく、同国政府は、発電所、バイオマス、炭鉱で、戦略的パートナーを探している。 国際機関からの融資で最重要の高速道路建設は(2020 年完成)賄うことができる。同国は、 ロシア、アゼルバイジャン、チェコと道路建設の融資で協力関係を構築しようとしている。 モンテネグロ、EBRDが送電網整備に融資 5月8日、欧州復興開発銀行(EBRD)は、モンテネグロの電力セクターを支援する事業の一 環として、送電網整備プロジェクトに最大で6,000万ユーロを融資することを決定したと発 表した。融資はモンテネグロの送電会社CGES が計画しているアドリア海沿岸に高圧送電 線の架線、変電所の建設プロジェクトに活用される。同プロジェクトの投資額は1億ユーロ で、ドイツ復興金融公庫(KfW)からも2,500 万ユーロの融資を受ける。EBRDによると、同 プロジェクトはイタリアとバルカン半島を結ぶ送電回廊建設プロジェクトの一環として実 施される。2014 年に着工し、建設費用は10億ユーロを見込んでいる。 コソボ、EBRDがエネルギー事業を支援 5月17日、欧州復興開発銀行(EBRD)は、コソボのエネルギープロジェクトを支援するた め、同国4 位の銀行であるTEB に500 万ユーロを融資すると発表した。この融資は、5月1 日にEBRD理事会で承認されたコソボ持続可能エネルギープロジェクト枠組(KoSEP)の下 で実施される最初の融資で、中小企業や個人によるエネルギー効率改善・再生可能エネル ギープロジェクトに活用される。コソボはエネルギー効率の低さと発電量の不足が大きな 問題となっており、特に冬期は国内で必要とされる発電量の6 割しかカバーできていない。 また、再生可能エネルギーの普及も遅れており、エネルギー消費量の3%を占めるに過ぎな い。政府は2015 年までに再生可能エネルギーのシェアを倍以上に引き上げることを目指し ている。EBRDは1999 年以来、29件のプロジェクトをコソボで実施。融資総額は6,600万 ユーロに上っている。 キルギス、EBRDが2千万ドルを融資 欧州復興開発銀行(EBRD)は、キルギスの省エネ投資対象を対象に 2,000 万ドルの融資枠 を設定したと発表した。欧州連合の中央アジア投資基金(IFCA)による総額 380 万ユーロの ― 60 ― 情報報告 ウィーン 支援措置と組み合わせてエネルギー部門への投資を促進する。今回設定された融資枠の名 称は「キルギス再生可能エネルギー基金(KyrSEFF)」で、今後 4 年にわたり提携銀行を通 じて一般世帯および民間企業に貸し付けられる。個々の融資額は数百ドルのごく小規模な ものから最大 100 万ドルまでを想定している。 一般世帯では、窓や壁、床、屋根の断熱工事、省エネ型ボイラーへの交換、バイオマス暖 房設備の設置、太陽熱給湯システムの導入などが対象となる。完工後にIFCA の助成金と して融資額の20 ~30%が投資者に支給される予定。民間企業では新しい生産設備の購入社 屋・工場棟の改装などが対象だ。IFCAの資金で、専門家チームのアドバイスを無料で提供 する。また、融資額の最大20%を助成金として支給する。 ウズベキスタン、ADB が太陽光プロジェクトに融資 アジア開発銀行(ADB)は、ウズベキスタン国営のUzbekenergoが進める太陽光発電プロジ ェクトに9万ドルを融資することで、再生可能エネルギーの利用を促し、二酸化炭素(CO2) の排出削減を目指す。 Uzbekenergoは西部のSamarkand州に太陽光発電施設を建設する計画。発電容量は10万 キロワット(kW)、年間発電量は1億9,000万kW時に達する見込み。ウズベキスタンのエネ ルギー集約度は世界で最も高い水準とされ、世界平均の6倍以上といわれている。ADBでは、 ウズベキスタンの再生可能エネルギーが大きな可能性を秘めているにもかかわらず、国内 の12.3ギガワット(GW)の発電設備容量の89%が従来型火力発電所に依存しており、残りの 11%が水力発電からまかなわれていると指摘している。これら従来型火力発電所の半分は 1982年以前に建設されており、1997年以降に建設された発電所はわずかに10%だけである。 さらに非効率な発電に加えて、長距離の送電によって20%の送電ロスもある。ウズベキス タンはほとんど100%電化されているが、需給ギャップが多くの州で発生しており、使用量 増加からディーゼル発電機に依存する結果となった。また、ウズベキスタンの電力需要は 急速に上昇しており、国内の化石燃料埋蔵量が早く枯渇(石油で10年から12年、天然ガスで 28年から30年、石炭で40年から50年)することが予想されている。2012年2月にウズベキス タン政府は、ADBの協力で首都Tashkentに太陽光エネルギーの研究施設を設立している。 欧州、域内の遊泳場の94%が水質基準クリア 5月21 日欧州環境庁(EEA)が発表した遊泳場の水質調査によると、2013年7 月に加盟す るクロアチアを含むEU28 ヵ国内の約2 万2,000ヵ所に上る海水浴場などのうちEUの定め た水質基準を満たしているのは全体の94%となり、前年の92%を上回った。EEA は毎年、 夏の遊泳シーズンを前に水質調査を発表している。昨年のデータに基づく今回の調査では、 海水浴場で95%、川・湖の遊泳場で91%が基準を満たした。水質が最高水準と評価された のは全体の78%。国別ではキプロスが100%となったほか、マルタが97%、クロアチアが 95%、ギリシャが93%、ドイツが88%、ポルトガルが87%、イタリアが85%、イタリア・ ― 61 ― 情報報告 ウィーン フィンランドが83%と高かった。一方、ワースト3 となったのはベルギー、オランダ、英 国。不適合率はベルギーが12%、オランダが7%、英国が6%だった。 世界、WHO と UNICEF は衛生設備の MDG が 8%未達と警告 5 月 16 日、世界保健機関(WHO)と国連児童基金(UNICEF)の共同レポート『progress on sanitation and drinking water2013』によると、現在の進捗率では、衛生設備に対する国 連ミレニアム開発目標(MDG)の 8%が未達となり、それは 5 億人に相当する規模であると 警告している。 WHO の Maria Neira 博士は「政治的公約、資金とリーダーシップなど全 ての必要な項目が適切であることを緊急に確認する必要があり、そして、世界は MDG へ の進捗を加速させ、目標を達成しなければならない。このレポートでは、給水および衛生 設備へのアクセスにおいて、都市部と農村部の住民の間にある“明らかな格差”を指摘し ている。 UNICEF の WASH プログラムの責任者である Sanjay Wijesekera 氏は「これは 大規模な自身や津波と同じくらい恐ろしい緊急事態である。毎日、数百人の子供が亡くな り、毎日、数千人の両親が彼らの子供たちを嘆き悲しんでいる。我々はこの大きな日々の 人間の悲劇に対して行動しなければならない」と述べた。 欧州、EEA の調査結果はグリーンに焦点を当てた税金は成長を後押し 現在の経済危機の影響を受ける EU の 4 ヵ国(スペイン、イタリア、ポルトガル、アイル ランド)の財政改革のための可能性を見ている欧州環境機関(EEA)による一連の研究では、 環境的に有害な製品とサービスから、いくつかの税率の上昇および補助金の撤廃をして、 発生した収入を雇用や投資にかかる税金を削減することに使用したとすれば、国の成長を 後押しすることを示唆している。 モデリングでは、環境税は他のタイプの税金と比較して、 GDP に関してほとんどマイナスの影響はないとしている。 EEA の Jacqueline McGlade 事務局長は「欧州の政府は、持続可能な成長を創出するための効果的な方法を探している。 環境面での財政改革はその時のアイデアである。欧州の人々は、経済危機への解決策が公 平であることを心配しているので、社会に関して課されている残りのコストを汚染者に支 払わせがちである」と述べている。 英国、SMB が AMP6 枠組みパートナーに決定 スウェーデンの建設企業 Skanska 社、アメリカの環境エンジニアリング企業 MWH Global 社と英国のインフラ企業 Balfour Beatty 社の合弁企業である SMB は、Thames Water 社の AMP6 投資プログラムに向けた設計・建設ソリューションを提供するために選 ばれた。SMB によれば、契約金額は約 10 億ポンドから 15 億ポンドであり、3 つの企業で 均等に分配される。2015 年 4 月からの AMP6 引渡し開始に向けた準備は、23 ヶ月の早期 請負業者関与(early contractor involvement、ECI:設計段階から施行業者に関与させて効 率的な施工を行う方式)期間とあわせて、2013 年 5 月から開始される。 Thames Water 社は、 ― 62 ― 情報報告 ウィーン フランスの Veolia Water 社と英国の Costain 社と一緒に他の設計・建設コンソーシアムと して英国のエンジニアリング企業の Atkins 社を打診していた。 また、アメリカの IBM 社は、AMP6 の連合の技術と革新のパートナーとして打診された ことを公表した。 英国、高レベルの難燃剤が河川で発見される 英国 Yorkshire 州にある Aire 川の調査によって、特定の臭素化有機リン系の難燃剤 が高濃度で検出された。Lancaster 大学の Andrew Sweetman 博士によれば、全長 71 マイル(114km)の Aire 川は都市と産業用開発地の近くを流れており、英国において有 機化学物質のために最も幅広く調査された河川の 1 つであり、特に、検出された難燃 剤は流入する廃水によるものであった。その調査は Lancaster 大学とスペインの環境 評価・水調査研究所そしてノルウェーの Fram Centre との合同調査で行われた。合 同チームは全ての試料から次の難燃剤の濃度を検出し、TCPP の濃度が最も高かった。 ・リン酸トリス(2-クロロエチル):TCEP ・リン酸トリス(1 メチル-2-クロロエチル):TCPP ・リン酸トリス(1 クロロメチル-2-クロロメチル):TDCP ・リン酸トリフェニル:TPhP 難燃剤である“デカブロモジフェニルエーテル(BDE-209)”は採取試料の大半で検 出されたが、“ヘキサブロモベンゼン(HBB)”と“ペンタブロモエチル(PBEB)”はほ とんど検出されなかった。その後のリスク評価から、産業と都市からの下水が排出地 点に近い藻類、魚類そして微小甲殻類のミジンコに対する副作用による重大なリスク があることが証明されている。 Sweetman 博士は「合同チームはこの 6 月に汚染レ ベルの変化を確認するために再度、試料を採取することを計画している」と述べた。 Sweetman 博士は、彼らが排出源から下流の濃度を予測することが可能なモデルで河 川システムをまとめることが可能かどうかを期待している。その情報と理解は英国と さらに遠くを横断する河川に適用できる可能性がある。 アメリカ、Cascade Water は Veolia Puget Sound と契約を延長 5 月 14 日、アメリカ Cascade Water Alliance は、Puget Sound 地域にある 7 つの自治 体への将来の水供給源とする白川(White river)とタップス湖の貯水池プロジェクトに対し、 レベルの高い運転、維持補修および管理サービスの提供を引き続き受けるために Veolia Water との契約を延長した。この官民共同型事業(PPP)は、決められた目標レベルに貯水池 の水面を維持し、既存のインフラ設備の維持補修そして日々の運転を行うものである。 ― 63 ― 情報報告 ウィーン アフリカ、廃水の技術提供に関する覚書をマレーシアと締結 5 月 16 日、マレーシアの水道インフラ管理会社の Indah Water コンソーシアムは、アフ リカ全土の廃水管理における技術的ノウハウとコンサルティングサービスを提供するため にアフリカ浄水公社(WSA)と覚書を締結した。Indah Water コンソーシアムは、WSA 加盟 国における衛生サービスに対する即時、中期そして長期的なソリューションを提案する Bill and Melinda Gates 財団によって形成された技術委員会の 1 つであったことから WSA に 選ばれた。 エチオピア、エジプトがダム建設に対して国家的熟慮を要求 6 月 10 日、エチオピアは議論の余地のある Grand Renaissance ダムの建設準備に向けて、 青ナイル川へ方向転換をし始めたので、エジプトの Mohamed Morsi 大統領は、ダム建設 による様々な影響に関する三者技術委員会の調査結果を議論する国家的対話を求めた。 The tripartite team included international experts as well as representatives from 三者 技術委員会には国際的な専門家だけでなく、エジプト、エチオピアとスーダンからの代表 者も含まれていた。その調査結果では、ダムの経済的・社会的影響だけでなく、安全保障、 水資源とより広い環境にあたえる影響に関するより詳細な調査を推奨していた。Morsi 大統 領は、青ナイル川の流れを保証するために取られる措置を確実にするため、三者技術委員 会との詳細な調査を求めた。Morsi 大統領は、エチオピアの調査がこの規模のプロジェクト にとって適切ではなく、現在 21%が完了したところであるとの発言を引用した。現地の記 者は匿名のエジプト政府筋の発言を引用し、エチオピアがこのプロジェクトに関する同意 に達しなければ、エジプトは国際司法裁判所にこの問題を訴えるかもしれないと伝えてい る。 レバノン、WASH ガイドラインの厳守を求める 5 月 14 日、レバノンの文部省は、Tripoli にある学校で 60 人の子供が水道水を飲んだ後 に入院した最近の事件を受けて、同国の公立学校での WASH(上下水道、保健)ガイドライ ンの厳格に実施するよう求めている。 カタール、国の水投資部門を設立 5 月 20 日、カタールは、海外の電力と水資源を購入するため、10 億ドルの投資部門とし て Nebras Power を設立したことを発表した。Nebras Power は、カタール発電・造水会社 が 60%を所有し、残りをカタールホールディングスとカタール国営石油会社の投資会社 (QPI)がそれぞれ 20%を所有する。カタール発電・造水会社は、このベンチャーを通じて中 東およびアジアを中心に、発電、淡水、冷房・暖房プロジェクトへの投資を行うことを表 明している。 ― 64 ― 情報報告 ウィーン バーレーン、大きな廃水事業への投資を明らかにする 5 月 30 日、公共事業省の Khalifa Al Mansoor 衛生工学次官事務補佐官は、廃棄物と廃水 処理施設の改善にむけた国家戦略の一環として、バーレーンが 2030 年までに衛生およびイ ンフラ整備プロジェクトに 15 億ディナール(BD、約 40 億ドル)を投資する予定であること を明らかにした。記者会見で、Al Mansoor 事務補佐官は、提案した更新の完了後には、1 日あたり約 20 万立方メートル(m3)の廃水を処理することが可能になることを説明した。 Al Mansoor 事務補佐官は次のように補足した。 「バーレーンの約 95%はすでに廃水ネット ワークに接続されおり、我々はそれを 2020 年までに 100%にしたい。国家計画では、バー レーンの衛生サービスと施設の改善を次の 3 つのレベルで目指している。 ・汚水処理 ・雨水廃水 ・下水処理水と汚泥の再利用 Al Mansoor 事務補佐官は、大臣も Muharraq 廃水処理施設を含む戦略的プロジェクトのい くつかを実施するために活動していることも明らかにした。Muharraq にあるバーレーン最 大の施設では、最終的に 1 日あたり 40 万 m3 の廃水を処理するために拡張されることも説 明された。 サウジアラビア、Ma'aden と Alcoa が湿地式廃水処理システムを完成 5 月 28 日、サウジアラビアの国営鉱物資源会社の Ma’aden とアメリカのアルミ地金メー カーAlcoa 社は、サウジアラビアの Ma’aden アルミニウム合弁企業で独自設計の湿地によ る廃水処理システムの完成を発表した。(参照 http://www.alcoa.com/global/en/news/news_detail.asp?pageID=20130528005745en&newsYear=2013) そのシステムは、1 日あたりほぼ 750 万リットルまで、現地からの水需要を低減するように 設定されており、それは水道料金にして 2,600 万リヤル(約 700 万ドル)に相当する。Alcoa 社の湿地式システムでは、一般市民および産業廃水の両方を集めて処理し、製造プロセス での再利用と Ras Al Khair 複合施設での灌漑用に利用できるようになる。 湿地式システム は 3 段階であり、有機系材料の分解と分離をする嫌気性処理槽から始まる。次に、能動型 (passive)の湿地でさらに有機物の処理を行い、窒素および金属類を除去する。最終的にボ ーキサイトの技術を含んだセルによって消毒と仕上げを行う。Alcoa 社の Ray Kilmer 副社 長兼最高技術責任者は「この革新的な廃棄物管理システムは、Alcoa 社が Ma’aden と Alcoa 社の合弁企業にもたらす技術の高さと持続可能なリーダーシップに加えて、地域の知識と 専門的技術の組合せを示している。Ma’aden と一緒に、我々は安全な処理と環境に対して 優しい方法で節水をすることで、砂漠のこのオアシスに生命をもたらしている。」と述べた。 自然の湿地プロセスを模倣したこの処理システムは 7 月末までに完全稼働することが期待 されている。 ― 65 ― 情報報告 ウィーン アブダビ、灌漑のためのリサイクル水の割合を増加 5 月 27 日、公園や街並みの緑化のための灌漑に使用される水の 90%以上をリサイクル水 とするための新しい基本計画が自治体の上級職員から発表された。関係者は新たな動きが どれくらい節減できるのか具体的に示さなかったが、新しい計画が首都の緑地帯の持続可 能性を保証するものであると述べた。 「現在、灌漑に使用される水の 70%近くが廃水処理水 のようなリサイクル水からであり、残りは淡水化水と地下水によって賄われている」とア ブダビ市の Rashid Al Falasi 局長は述べており、アブダビ市は合計 5,000km 以上の灌漑用 パイプラインを管理している。 アブダビ、Taqa が 8 億 5,000 万ドルの発電所を計画 5 月 27 日、アブダビ国営エネルギー企業の Taqa は 8 億 5,000 万ドルを投資して、アブ ダビに 20,000 世帯分の電力の発電と 100 万トンの埋立て廃棄物の削減するための 100 メガ ワット(MW)級の廃棄物発電(WtE)施設の建設計画を進めていることを明らかにした。 Taqa によれば、その発電施設の実行可能性調査(FS)はすでに完了しており、年間に 100 万 トンの二酸化炭素(CO2)の削減にも貢献する。その施設はプラスチック、紙そして家庭ごみ から発電を行うが、解体廃棄物は含まれない。発電施設のプロジェクト完了までには 2 年 が必要で、提案された施設は 2016 年から 2017 年までに操業開始を予定している。平均的 な世界の 1 日あたりの石油とガスの生産量は原油換算で 127,000 バレルであるが、昨年の 同時期の 134,000 バレルと比較して 5%落ち込んでいる。 インド、Odisha Sands complex に淡水化施設を計画 インド国営の Indian Rare Earths は、Matikhala にある Odisha Sands complex の産業 用水および飲料水の要件を満たすために、1 日あたり 5,000m3 の能力を持つ淡水化施設の 建設を計画している。この 112.9 クローレ(1 クローレ=1,000 万ルピー、約 2,050 万ドル) のプロジェクトは、2019 年 3 月までに完成が予定されている。この淡水化施設は、4,500m3 の海水を処理する逆浸透膜(RO)システムと 500m3 の多重効用式蒸留(MED)システムから 構成される。 ドイツ、連邦環境庁が市民に対して REACH 規則の冊子を出版 ドイツ連邦環境省(UBA)は、市民に対して欧州の化学品規制(REACH 規則)を説明 するオンライン冊子を出版し、法律の基づいた情報へアクセスする権利の活用を奨励 している。 ドイツ、連邦環境庁が REACH 規則の違反に対する罰則を定める ドイツ連邦環境庁(UBA)は、欧州の化学品規制(REACH 規則)に関する新しく導入 された罰則について企業に警告した。成形品(articles)中の高懸念物質(SVHC)に関す ― 66 ― 情報報告 ウィーン る情報への対応のような報告義務を違反した企業には、最大 50,000 ユーロまでの罰 金が科される。REACH 規則の要件に対する責任者には、生命を脅かす違反に対して 最大 5 年の懲役刑が科される。 欧州、REACH 規則の第 2 回目の登録が終了 欧州化学品庁(ECHA)は、化学物質の登録・評価・認可・制限に関する規則(REACH 規則)の第 2 回目の登録締切り期日である 2013 年 5 月 31 日までに、年間に製造また は輸入量が 100 トンから 1,000 トンの 2,923 の化学物質に対して、9,084 の登録一式 文書を受領した。「我々が予想した数字の登録があった」と ECHA の Geert Dancet 執行長官は Brussels での記者会見で述べた。「最新の締切りの下に登録された物質は EU 市場における最大の量の化学物質の次の発行分を示している。 今回の締切りは大 きな問題も無く非常に素晴らしく見えた。登録はルーチンとなりつつあり、2010 年の 第 1 回締切り時に業界が持つ多くの実用的問題に対する我々が見たソリューションは 理解されていた。今、我々は、次の作業と 2018 年の最後の締切りに焦点を当てなけ ればならない 。我々は、関係者全員が自身の登録義務を完全に対処できるように、 業界と一緒に作業を続け、特に中小企業に対して注意していく必要がある」と欧州委 員会の環境総局の化学物質ユニットの Bjorn Hansen 議長は話した。 最終的な数値は、全ての一式文書が処理される 9 月上旬に得られる予定である。6 月 3 日に公表された全 2,344 の物質は問題無く登録され、ECHA は残りの 579 の物質 を処理している。 保留中のほとんどは、ECHA が企業の登録費用の支払いを待って いるものである。REACH 規則の開始以降に、合計 6,598 の化学物質が登録されてい る。 3,215 社が第 2 回目の締切りに対して物質の登録を行った。全登録者の 20%が 中小企業(零細を含む)によって提出され、残りの 80%が大企業から提出されたもので あった。ECHA は、中小企業と主張している全ての登録者、削減費用、EU の中小企 業の定義との照合の確認を行うとしている。 第 1 回目の登録締切りの後、多くの企 業が誤って中小企業であることを主張したために罰金を科された。 登録書類の 23% が非 EU 企業に代わって“唯一の代理人”によって提出された。また、登録書類は 26 の EU 加盟国と EU 経済領域(EEA)の 3 ヵ国から提出され、ドイツが 31%で最も多く、 英国(12%)、イタリア、フランス、オランダ(以上各 8%)と続いた。規則によって意図 されたように、82%の物質が共同提出の一部として登録された。 欧州、唯一の代理人は REACH 規則のコストを問題とする 2013 年の REACH 規則の締切りに向けて提出された一式文書(dossier)の 4 分の 1 近くが唯一の代理人(OR)から提出されたものであった。 その数値は 2010 年の締切り よりも増加している。EU 市場で物質を取扱うことを希望する EU 域外の企業は、唯 一の代理人を指名して、要求される登録一式文書を提出することが可能である。 ― 67 ― 情報報告 ウィーン 唯一の代理人から受領したコメントでは、物質情報交換フォーラム(SIEF)の作業と データの利用書(letters of access)の費用などが含まれ、多くの問題が指摘されている。 ある唯一の代理人は、中小企業は経験を積んできているが、SIEF やコンソーシアム に内での複雑なデータの共有に関する同意や規制の規定事項に関する理解不足と 思 われることがまだあると指摘している。 その唯一の代理人は、このことは欧州化学 品庁(ECHA)が目的とする中小企業との関係を損なう可能性があるとコメントしてい る。 ある唯一の代理人は、特にコスト分担の仕組みに関して透明性に欠けていると 報告している。その報告では、いくつかの SIEF において、少ないトン数帯で物質登 録している中小企業が、大きなトン数帯で物質登録している多国籍企業と同等の費用 を支払っていることを指摘している。 データの利用書の“均一な料金”が意味して いるのは、企業規模やその市場がけた違いでありながら、中小企業はその少ないトン 数帯に対してトン数帯の大きい企業と同等の費用を支払わなければなならいこと を 補足している。 また、後の段階で利用書の交渉を行っても、唯一の代理人によって は状況を悪化させるだけで、「悪い習慣に立ち向かう時間はほとんど無い」と述べて いる。 いくつかの事例では、コンソーシアムは欧州共同体ローリング・アクション・ プラン(EU-CoPAP)に基づく物質評価コストを SIEF の費用の中に含めていると、唯 一の代理人は指摘している。 また、唯一の代理人によって指摘されたもう 1 つの問 題は、EU 域外の企業が物質を登録するための意思決定の遅れである。「顧客は戦略 に関する決定や物質登録に関係する情報入手により多くの時間を要するために、我々 は必要な情報、特に研究に関係する情報を入手することにより多くの問題を抱えるこ とになる。これらの理由によって、一式文書の提出は 2010 年に出した時期よりも遅 れた」と述べている。 一方で、調査終了や文書作成の遅れは、複雑な物質の特定デ ータに合意することに時間を要するからだという見方もある。 正確な物質確認や分 析データの重要性について、ECHA は「十分なほど声高に」情報を発信しているもの の、一方では、初めての登録案件においては物質の定義にいくつかの課題が残されて いると唯一の代理人は指摘している。「何十年も市場に出回っている有名な物質の名 前や、古い名前で EU 内外の規制範囲に登録された有名な物質名を変更しなければな らない理由を説明することはいつも難しい」と述べている。一方で、REACH-IT の全 体的な利用に関しては、スムーズに運用できたと報告されている。 ドイツ、ドイツ版 RoHS2 が発効 5 月 9 日、2013 年 1 月 3 日から施行された EU の RoHS2 指令(2011/65/EU)から 4 ヵ月 以上遅れて、ドイツ版 RoHS2 となる電気・電子機器に含まれる有害物質に関する規則 (ElektroStoffV)が発効された。 その変更は電気業界だけでなく製造業者から代理店と処理 業者までのサプライチェーン全体に影響を与える。主要な変更事項は以下のとおり。 ・適用範囲 ― 68 ― 情報報告 ウィーン “ElektroStoffV”は、電気・電子機器に関するドイツ法(ElektroG)によってカバーされて いなかった電気・電子機器(EEE)に対して、2019 年 7 月 23 日までに物質の使用制限範囲を 拡大する。その結果、例えば、ElektroG の製品カテゴリー内に含まれていなかったケーブ ルそして型式承認から除外されていた車両が制限の対象となる。 ・過去の例外 医療関連機器と監視および制御機器は、物質の使用制限の対象から除外されていた。こ れらの除外製品は、今後 4 年以内にいくつかの段階(2014 年、2016 年、2017 年)を経て、 制限の対象となる。 ・適合性評価と CE マーキング: EEE の製造業者は、内部製造管理手段、EU 適合宣言書と CE マーキングの表示におい て、物質の制限により自身の EEE のコンプライアンスを実証しなければいけない。 ・追加のマーキングの要件 製造者および輸入者は、物質の特定を保証するような追加のマーキングの表示を義務付 けられている。 ・検証要件 代理店および輸入業者は市場にそれを投入する前に EEE の確認をする必要がある。 特に、代理店および輸入業者は、EEE が CE マーキングの要件や他のマーキング要件に 適合しているかどうかを確かめなければならない。 ・撤収/リコール 最悪の場合、製造業者、輸入業者および代理店は、既に市場に存在するが制限を遵守し ていないまたは適合性が正式に証明されていない EEE の撤収またはリコールが義務付けら れている。 ・識別要件 必要に応じて、製造業者、輸入業者および代理店は、EEE と一緒に制限された物質を供 給した経済事業者(economic operator)そして EEE を供給された経済事業者を識別すること が要求される。経済事業者は関係書類を 10 年間に渡り保管しなければならない。 ・登録要件 製造業者および輸入業者は非適合の EEE だけでなく、リコールと撤収された EEE の登 録を保管しておかなければならない。 製造業者および輸入業者は定期的に代理店にリスト化された EEE を通知する必要がある。 ― 69 ―