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欧州環境情報 - 日本産業機械工業会
情報報告 ウィーン ●欧州環境情報 ○ チェコ 業界団体が都市排水処理指令の遵守期限を守るのが不可能と指摘 チェコの水供給団体のSOVAKが、都市排水処理指令に該当する2,000人以上の530都市の内、 約4分の1の47都市が義務付けられる都市排水処理システム整備の遵守期限(2010年末まで) が守れないと指摘した。その理由としては、資金不足と建設能力不足を挙げている。ただ、 環境省によれば資金は十分提供していると述べている。 ○ イングランド 一般廃棄物のリサイクル・堆肥化・エネルギー回収率増加、埋立率は減少 英国環境・食糧・地方開発省(DEFRA)の報告によると、イングランドで2007/2008に回収 された一般廃棄物は2,850万トンで前年の2,910万トンと比較して2.2%減少した。この内、 45.1%が分別されて何らかの価値(リサイクル、堆肥化、エネルギー回収)を生み出してお り昨年の41.8%から上昇している。リサイクル・堆肥化率は、30.7%から34.0%と上昇し、エ ネルギー回収率は11%と変化が見られなかった。一方、埋立率は57.9%から54.4%まで減少 した。 イングランドは、 「廃棄物戦略2007」において家庭から排出される廃棄物の少なくとも40% をリサイクルまたは堆肥化するという目標を設定しているが、実際の数値と比較すると2006 /2007で30.9%であったが、2007/2008年は34.5%であり目標に近づきつつある。 ○ 英国 90%以上の地方自治体で廃棄物のリサイクル目標を達成 英国の各地方自治体における廃棄物統計が明らかになった。主要な結果は以下の通り。 ¾ 90%の地方自治体がリサイクル目標を達成または超えている ¾ 90%の地方自治体が昨年度よりも家庭からの廃棄物回収量が減少している ¾ 94%の自治体が昨年度よりもリサイクル・堆肥化割合を増加させている ¾ 72%の自治体が昨年度よりも埋立割合を減少させている ○ 英国 グロスタシャー州の廃棄物施設のPFI計画に9,200万ポンドを支給へ 英国環境・食糧・地方開発省(DEFRA)は、グロスタシャー州の廃棄物施設計画(PFI) に対して9,200万ポンドを支給することを明らかにした。これにより、同州は2020年までに26 万3,000トンの生分解性廃棄物を削減することで、3万3,800トン分(熱電併給施設を考慮す れば6万4,700トン分)のCO2削減が可能となる。 ○ スイス 中国と防災面および水管理部門協力の覚書を作成 スイスのロイエンベルガー運輸・通信・エネルギー相と中国の陳雷水利相はスイスのベル -23- 情報報告 ウィーン ンで会談し、両国は防災と水管理に関して意見交換等を通じて引き続き協力し、覚書を作成 すると明らかにした。両国は、2001年から天然災害防止やリスク管理について協力関係を維 持している。 ○ 2011年の世界のバイオプラスチック製造量が2006年比10倍以上増の200万トンと言及 2008年11月にベルリンで開催された、第3回欧州バイオプラスチック会議において、ドイ ツ経済・技術省のワグナー氏は、バイオプラスチック製造量が2006年で15万トンだったのが 5年後の2011年には10倍以上の200万トンに達するだろうと述べた。また、BASFのシュト ゥンプ博士は、数年以内に市場は急速に発達して持続的なものになるだろうと述べた。 ○ ドイツ 「環境技術マスタープラン」を承認 ドイツ政府は、同国産業のために環境技術の経済的潜在性を系統的に開発し、環境装置と イノベーション政策のさらなる連携強化を目的とした「環境技術マスタープラン」について 承認した。まずは、水、原材料、気候保護に焦点を当て、研究支援や新技術の移転・普及、 教育・研修の改善、革新的な中小企業の(特に国際協力面での)支援を実施する予定だ。 なお、世界における環境技術市場は現在1兆ユーロ超で、2020年には2兆2,000億ユーロに なると予想され、今回のマスタープランはドイツが持つビジネス機会を強調するものである。 ○ EU 洋上風力発電の拡大に期待 EUの再生可能エネルギー目標は、2020年までに総エネルギー使用量に占める割合を20% と設定しているが、その再生可能エネルギーの3分の1は風力発電によって得られると予測 されている。短期的に見れば陸上風力発電が主流であるが、長期的に見れば洋上風力発電が ますます重要になってくるものと予想される。現在では、洋上風力発電はより複雑で、導入・ メンテナンスコストが陸上風力よりも高いものの、風車あたりの発電量は大きく、設置箇所 も広大にあるため、漁業や海洋環境を妨害しないように対処すれば、十分に将来性がある。 まず、そのためには経験の共有や電力網や海洋空間計画、法整備における協力が重要と述べ ている。 ○ EU エネルギーラベリング指令改正案を提出 欧州委員会は、1992年に制定されたエネルギーラベリング指令の改正案を提出した。同指 令では、洗濯機や食洗機、冷蔵庫やオーブンといった製品にエネルギー消費量、つまりラン ニングコストを示すランクA~Gのラベリングをすることで消費者に情報提供をするもので あった。今回の改正により、対象を1)工業および商業部門のエネルギー使用製品、2)使 用時にエネルギー消費に影響を与えるエネルギー関連製品(断熱窓等)、まで拡大している。 そして、公的調達やインセンティブのような追加対策についても言及している。 なお、本指令改正案は欧州戦略として発表された第2次戦略エネルギー政策の見直し案の 中の1指令であり、他に提案された指令案としては建築物のエネルギー効率に関する指令改 正案やタイヤのエネルギーラベリング指令案、洋上風力や熱電併給利用による省エネルギー 化に対する通達等も含まれている。 -24- 情報報告 ウィーン ○ ドイツ CDMプロジェクトが100件を超過 ドイツ連邦環境局(UBA)にある排出権取引局(DEHSt)によると、同国における京都議 定書に則ったCDMを利用した発展途上国での気候保護プロジェクトが100件を超えたこと が明らかになった。世界で1,186プロジェクト登録されているが、その内の112プロジェクト が同国によって実施されている。 ○ ドイツ インドと環境に関する戦略的対話に合意 ドイツとインドは、環境および気候保護に関する協力関係を拡大すべく環境に関する戦略 的対話を実施することとなった。これは、インドのニューデリーで開催されているインド・ ドイツ環境フォーラムの開催時においてドイツのガブリエル環境相が明らかにしたもので、 焦点となる分野は気候変動およびエネルギー政策、水、排水、廃棄物管理部門である。同環 境相は、インドの排水処理が現状でわずか20%となっていることや電力網に未接続の人々が 約4億人おり、彼らに電化生活を過ごしてもらうためには再生可能エネルギー利用が不可欠、 等々指摘してインドの環境分野に巨大な需要があると述べた。 ○ オーストリア 気候保護イニシアチブにより輸送部門のCO2 排出量を過去3年間で20万トン削減 オーストリア環境省によって実施されている気候保護イニシアチブ「klima:aktiv」対策に よって、輸送部門のCO2排出量が過去3年間で合計20万トン分削減されていることが分かった。 同イニシアチブは、400を超えるパートナーの協力によって実施されており、2010年までには 30万トンの削減目標を超過達成する見込みだ。そのうちの約半分である9万トンがバイオ燃 料や代替燃料によって削減されている。 ○ EU加盟9ヵ国 大気質指令の制限値遵守期限の延期を申請 2008年5月に発効した大気質指令であるが、二酸化窒素、ベンゼン、粒子状物質(PM10) 1 に関する制限値について諸条件を満たせば遵守期限を延期することが可能となっている 。欧 州委員会にその旨を連絡し、9ヵ月以内に何も異論がなければ認められる手続きとなってい 2 るが、EU加盟諸国のうち9ヵ国 がPM10について遵守期限を延長する申請をしていることが 明らかになった。 ○ EU ブラジルとエネルギー部門において関係を強化 2007年7月にエネルギーに関する二国間対話を実施したEUとブラジルであるが、初めて の閣僚レベル会合が11月20日に実施され、両者間でのエネルギー部門において、持続可能的 でエネルギー安全保障に関する協力およびパートナーシップを構築することを約束した。具 体的な政策や優先項目については、12月22日にリオデジャネイロで開催予定のEU-ブラジ ルサミットに向けて準備されているとのこと。ただ、2009年における両者間で協力する主要 項目として、1)経験および技術交流、2)省エネルギーおよび需要操作、3)第2世代バ 1 具体的には、二酸化窒素、ベンゼンは2005年1月1日から2010年1月1日へ、PM10については2005年1月1日から2011 年6月11日まで期限を延長することが可能となっている(第22条)。 2 オランダ、オーストリア、ベルギー、デンマーク、ギリシャ、ハンガリー、ポーランド、スロバキア、スペイン -25- 情報報告 ウィーン イオ燃料共同研究、4)低炭素技術における両者間の産業協力推進の4項目を挙げた。 ○ オーストリア チュニジアに自国の環境技術を売り込み オーストリア政府は、同国の「環境技術輸出イニシアチブ」の一貫としてチュニジアを訪 問した。これは、チュニジアの将来における持続可能な開発支援協力に対して、オーストリ アの環境技術採用を目的としたものである。今回の訪問で、チュニジアの太陽エネルギー利 用や環境に優しいエアコン、冷房システムといった種々の潜在性が見受けられるとともに、 バイオマス利用の熱電併給システムやバイオ燃料製造、風力・水力発電、水質管理、排水管 理、飲料水供給、廃棄物管理といった技術移転が考えられる環境関連トピックスについて検 討がなされた。今後、同イニシアチブの枠組み内で覚書が締結される予定だ。 ○ ポーランド 2020年までにバイオマス発電施設を2,500ヵ所建設へ ポーランド経済農業省の計画によると、2020年までにバイオマス発電施設が2,500ヵ所建設 され、廃棄物利用の発電施設が各州に少なくとも1つ建設される予定である。総投資額は、約 400ポーランドズロチ(約9億7,800万ユーロ)で、発電総量は3,000MWになる見込みである。 ○ チェコ 2012年までに風力発電量を100MWまで増加 チェコの国営電力会社CEZの子会社が、風力発電容量を2009年までに20MW、2012年まで に100MW追加することを明らかにした。2006年における同国の風力発電導入容量は、43.5MW 3 となっている 。 ○ ポーランド 2010年に同国初の洋上風力発電建設へ デンマークのGreentech Energy Systemのグループ企業であるWiatropol Internationalに よると、2010年に同国初の洋上風力発電施設をリゾート地であるデブキ沖合5~7キロメート ルに建設することが明らかになった。総投資額は3億ユーロで、3MWの風車を33基設置する 予定。 ○ 欧州環境庁 欧州における温室効果ガス排出の80%がエネルギー部門に起因との報告 欧州環境庁が発表した報告書「エネルギーと環境に関する報告書2008」によると、欧州に おける温室効果ガスの80%がエネルギー部門に起因することが分かった。現在、エネルギー・ 熱供給の効率化や再生可能エネルギーの化石燃料利用の代替によって徐々に温室効果ガス削 減や大気汚染物質の削減効果が見られているが、依然として重大な影響を与えていることが 分かった。そして、このままの対策であれば2030年までにエネルギー消費量は26%増加し、 依然として化石燃料が主要供給源であることも報告されている。これを受けて、欧州環境庁 のマックグレード事務局長は、「エネルギー部門において『このまま』という選択肢はない」 と述べ、「低炭素社会への動きは将来の環境を維持する上で十分な速さで進んではない」とも 述べた。 3 出典:http://ec.europa.eu/energy/renewables/electricity/ms_report_directive_2001_77_en.htm -26- 情報報告 ウィーン 報告書内におけるそれ以外の項目は以下の通り。 ¾ 2005年の欧州における最終エネルギー消費量に占める再生可能エネルギーの割合は 8.6%となっている。なお、2020年までのEU目標は20%である。 ¾ 欧州の家庭の電力使用量は、過去15年間で電力の最終利用者価格が17%増加したにもか かわらず31%増加した。 ¾ 2005年の欧州におけるエネルギー利用の54%以上がEU域外から輸入されており、EU への最大のエネルギー輸出国はロシアである。その割合は、EU-27の一次エネルギー総 消費量の18.1%を占める。 ¾ 1990~2005年において、EU-27の平均GDP成長率は2.1%であったが、エネルギー関連 のCO2排出量は約3%減少している。同時期で比較すると、米国は20%増、中国は倍増し ている。 -27-