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06-10p On The Spot04

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06-10p On The Spot04
ON THE SPOT
現場から
●スポーツ医学
チェックポイントを実際の指導場面
45歳になる今なお現役を続け第一
第14回スポーツ選手
―指導者交流会
を含めて話した。膝へストレスをか
線で活躍できる秘密は彼の潜在能力
ける原因となる動きの観察方法を解
をどう引き出すかという探究心にあ
説したうえで、膝に対してのアプロ
ると白木氏は話し、出会った頃から
去る 2 月23日、大阪国際交流セ
ーチとして小田氏らトレーナーチー
現在までの逸話とともに登板に備え
ンター(大阪府大阪市)にて、第
ムが実際に指導しているストレッチ
たケア風景や工藤氏のトレーニング
14回スポーツ選手−指導者交流会
やトレーニング種目、ケアの方法を
に対する姿勢などを解説された。続
が医療法人永広会島田病院の主催で
紹介した。講演後は参加者から積極
いてゴルフの片山晋呉プロ。片山氏
開催された。今回はゲストスピーカ
的に質問が投げかけられ、多くの症
が17歳のときから指導している白
ーに筑波大学准教授白木仁氏を迎え、
例を持つ島田病院ならではの話を聞
木氏は、片山氏の反復練習できる強
50名以上の参加者が集まった。
くことができた。
さと圧倒的な練習量、そしてプロ生
初めに、「スポーツ選手の膝の痛
両氏の講演後、白木氏が30年に
活の中で見出した「自信」の定義を
みに対するアプローチとケア」と題
も及ぶトレーナー経験を「トレーナ
話した。さらにゴルフ競技につなげ
して富原朋弘氏(島田病院整形外科
ーから観たトップアスリート」と題
る機能的なトレーニングを実際の写
医師)と小田朗宏氏(島田病院理学
して語った。陸上競技、スピードス
真を見せながら紹介してくれた。最
療法士)による講演が行われた。座
ケート、野球、ゴルフ、シンクロナ
後に取り上げられたのはアテネ五輪
長は愛州純氏
(島田病院理学療法士)
イズドスイミングなどといった競技
でメダルを獲得したシンクロナイズ
が務めた。
と関わり多くのプロ選手やオリンピ
ドスイミング日本代表チームでの体
実際の島田病院での症例データを
ック選手を観てきた白木氏。その中
験談。過去に経験したどの競技とも
もとに、膝の有痛性の疾患で最も多
でもとくに印象深い 3 つのエピソー
異なる特性を持っていたと語る白木
い膝蓋下脂肪体炎を中心に、発生の
ドを多数のスライドや個人で撮影し
氏は、フィジカルコーチとしてチー
メカニズムや予防のためのアプロー
た秘蔵映像を用いて紹介された。
ムをみた苦労話を実際のトレーニン
チ方法について解説された。続いて
まずは工藤公康投手(現横浜ベイ
グメニューと併せて紹介し、あまり
小田氏が膝の疾患を予防するための
スターズ)。200勝を達成し、今年
広く知られていない井村コーチの情
熱の現れとも言える指導法について
も解説された。
これら多くの経験談やトップアス
リートの姿を語った後、まとめとし
て「トレーナー(フィジカルコーチ、
アスレティックトレーナー)はトリ
ガー(引き金)と言えます。われわ
れが何かを与えることはきっかけを
つくっているに過ぎず、選手が自主
的に行わなければ効果は期待できな
い。そのためにトリガーとして理論
に基いた正しい情報、選択肢、処置
の仕方を提示し続けることが大切で
す」と白木氏は語った。
富原朋弘氏による講演。膝の痛みについて
6 Training Journal May 2008
今回の交流会での講演を通じてト
現場から
ップレベルの選手をみる指導者やト
レーナーもトップレベルでなければ
ならないと強く感じた。白木氏の言
う「トリガー」となりえる人物はそ
れだけの影響力を持った人間性が必
要になる。白木氏はトレーナーも選
手とともに成長していかなければな
らない事を参加者に伝えてくれた。
参加者からも「膝へのアプローチ
として、明日から即使える内容を聞
くことができた」「白木先生の講演
の中で、学生の私でもトレーナーと
しての心構えやどうあるべきかを知
る事ができ、これからの勉強や活動
に活かしていきたい」といった声を
それぞれ異なる立場から、スポーツ科学の役割について語られた
聞くことができた。
この交流会はもともと島田病院の
の活動状況を知ることができる手法
ど、さまざまな問題についても紹介。
患者や関係者に院の治療方針などの
も紹介した。車椅子や酸素ボンベな
「だから駄目だと言うのではなく、
理解を得ることを目的として1991
どが機器に張りついてしまった写真
表情、振る舞いなど、コミュニケー
年に行われたもの。その歴史には理
を用いて非常に強い磁場を用いるこ
ションの介在をするのがメディアで
事長の島田永和氏をはじめとするド
とを示し「運用面で注意しなくては
あると考える。そのうえでアスリー
クターやスタッフの情熱を強く感じ
ならないが、身体内部を侵襲なく、
る。このスポーツ選手・指導者交流
自由な撮像断面を設定して観察でき
会が情報の発信源となり、関西から
ることからMR I は強力な武器になり
日本のスポーツ界を盛り上げていけ
うる」と説明した。動作原理を知っ
「記者会見ごっこ」として、取材を
るであろう。今後のさらなる発展が
ておくことで、そこに映し出された
する側と受ける側に分かれて取材場
楽しみである。
ものが何を意味するかを理解するこ
面を経験する試みを紹介し「会見は
(報告者:山村 聡・5 -relaxスタッ
フ)
●スポーツ科学
スポーツ科学の役割
とは
とができるのだという。
トの複合的なメディアリテラシー
(メディア操作・受容・表現)を考
える必要がある」と述べた。さらに、
『ごっこ』であるにもかかわらず、
次に、水越伸氏(東京大学)が
私は取材を受けて息が詰まって怖い
「メディアからみたスポーツ」と題
感じがした。取材する側は学生であ
して特別講演を行った。松坂投手
っても嬉々として聞き、記事を書い
(レッドソックス)の新聞報道を例
てくる。メディアの特性によって同
に、受ける印象が変わることを示し、
じストーリーでも切り取られ方が違
リアリティとイメージの関係につい
うことが明らかとなる。これによっ
去る3月1日、東京大学駒場キャ
て述べ、「一般の人は、メディアを
てメディアの本質に気づくのが目
ンパス(東京都目黒区)にて、日本
通してイメージを受け取り、リアリ
的」。そして「どこか遠いできごと
体育学会東京支部第35回学会大会
ティを感じる。イメージとリアリテ
ではなく自分の身の回りのことであ
が開催された。
ィは非常に関連が深く、場合によっ
ることに気づくかが重要。またアス
ては重なっているかもしれない。イ
リートの場合は当事者としてのリテ
による教育セミナーは、「身体運動
メージが『嘘』であるかというとそ
ラシーが非常に重要であって、メデ
観察のためのMR I の活用」をテーマ
うではない」と話した。さらにメデ
ィアに踊らされるのではなく、活用
とし、MR I 画像の基礎的なメカニズ
ィアの普及に果たしたスポーツの役
していく視点が求められるのではな
ムについてわかりやすく説明した。
割の大きさについて、そしてメディ
いか」と締めくくった。
立体的に血管造影をしたり、筋や脳
アの影響力による集中豪雨型取材な
「競技力向上におけるスポーツ科学
冒頭の渡邉丈夫氏(早稲田大学)
Training Journal May 2008 7
ON THE SPOT
の役割」をテーマとしたシンポジウ
ムでは、最初に石塚浩氏(日本女子
体育大学)がコーチの立場から、競
技力がどのように構成されているか
を説明。そして科学とは何かについ
て歴史をさかのぼって解説しながら、
「選手とコーチ、科学者の3つが同
じ方向で考えていけるかが、競技力
向上におけるスポーツ科学の役割。
スポーツ科学が競技力向上を思いつ
づけられるか、勝つことを愛するこ
とができるか。選手が得た結果はす
べて選手のものという気持ちを持て
るかどうか」と話した。次に、山本
利春氏(国際武道大学)は、学生ト
リフティング大会の様子。大いに会場を沸かせた
レーナーがポイントとなって取り組
まれている国際武道大学でのスポー
ようにフィードバックするかなど興
鑽の場として将来トレーニング指導
ツ医科学サポート体制を紹介。また、
味深い議論が続いた。
者を目指す学生を対象に実施されて
いるものである。
トレーナーに求められる知識や技術
についても具体例をあげながら述べ、
●ウェイトリフティング
遠山実行委員長によれば、通常の
ウェイトリフティング(クイ
ックリフト)をメジャーに
授業内での実技練習はもちろんのこ
だけなく、しっかりと理解し、ニー
去る 3 月 1 日、日本工学院八王子
者修行」などを積極的に行って今大
ズに合わせて応用していかなくては
専門学校メディカルフィットネスセ
会に備えてきた学校もあるほどで、
ならない」とまとめた。最後に平野
ンターにおいて、「第 2 回学生クイ
総勢29名の参加各校は学生指導者
裕一氏
(国立スポーツ科学センター)
ックリフト記録会・ウェイトリフテ
とは思えないハイレベルのリフティ
は「スポーツ科学の立場からは、選
ィング選手権大会」が開催された。
ング技術を大勢の観客の前で披露し
手に対する測定法をはっきりさせて
昨年も好評を博したこの大会は、遠
大いに会場を沸かせていた。また、
いかなくてはならない。何を測定し
山健太実行委員長(フリースタイル
今大会は映像や音楽とのコラボレー
ているのか、どのように競技に当て
スキー全日本チームS&Cコーチ)、
ションやwebsiteの開設(www.ath-
はめれていくかを意識しなくてはな
永友憲治競技委員長(全日本自転車
lemedia. com)、場内FMを用いた実
らない。そのためには競技現場を知
競技連盟ストレングスコーチ)をは
況・解説に加え、本誌でもお馴染み
っておく、または現場と研究をつな
じめとする国内を代表する若手指導
の伊藤句里子氏らの協力のもとトレ
ぐような存在が必要である。トレー
者陣に加え、当日の実況解説に関口
ーナーズルームの設置といった斬新
ニング内容がよいかどうか、データ
脩氏(日本体育大学)、用具提供に
なアイデアも多数盛り込まれており、
による検証をしていくべきだと思わ
ウエサカ・ティー・イーを迎えるな
大好評を博していた。
れる。測定とトレーニングの両面に
どの運営体制のもと、競技形式もシ
「もっと記録を伸ばしたい」「また
わたって、しっかり時間をかけて研
ンクレア方式を採用するなど本格的
出場したい」といった参加者の声だ
究を重ねていくことが大切」と述べ
に実施、国内ではまだまだマイナー
けでなく、「はじめて見たけれどと
た。
「測定結果をきちんと理解して、選
手のリコンディショニングに活用す
るためには、正しい情報を入手する
と、時間外での自主トレーニング、
さらには自ら他施設へ赴いての「武
競技の域を出ないウェイトリフティ
ても楽しめた」との観客の声も多く、
この後、総合討論として、3 つの
ング競技の普及と活性化および指導
欧米では格闘技のような人気種目と
立場からの意見交換、会場を交えて
者としての必修技術ともいえるクイ
して大きな盛り上がりを見せるのに
の質疑応答が行われ、データをどの
ックリフト・エクササイズの実技研
比して競技としてもエクササイズと
8 Training Journal May 2008
現場から
しても一部専門家のもの、という認
ポート体制を整え、これから2010
笠原政志氏(国際武道大学)から
識がまだまだ根強い感のある日本の
年に向けた試みや活動のコンセプト
は、19年度における千葉県内での
ウェイトリフティング(クイックリ
について話があった。
活動内容、今後の千葉国体へ向けた
フト)の現状に対しても一石を投じ
る催しとなったのではないだろうか。
学生向けイベントとしてのみなら
千葉県アスレティックトレーナー
サポート体制について、現在のサポ
協議会の設立総会・総会では、役員
ート状況やトレーナーステーション
やこれからの事業計画が審議され、
設置時の活動が報告され、トレーナ
ず、業界の恒例行事として今後のさ
役員は山本利春氏が会長、副会長に
ーだけでなく、選手を取り巻くサポ
らなる発展も大いに期待される大会
は岡田亨氏(船橋整形外科病院)が
ートスタッフとなる者全員のコンセ
である。選手権優勝者・チームは以
就任し、理事に 3 名、会計 1 名、監
ンサスを得ることが大切だと話して
下の通り。男子の部:山川直人(東
事 2 名がそれぞれ就任した。千葉県
いただいた。
京健康科学専門学校、シンクレア値
アスレティックトレーナー協議会は、
今後は、県内のスポーツドクター
230.7)、女子の部:千田一子(ヒ
独自に開催している講習会修了者、
との連携を進めながら、国体選手で
ューマンアカデミー東京校、シンク
この会の目的「千葉県アスレティッ
ある各競技の千葉県代表チームへの
レア値 132.1)、団体の部:ヒュ
クトレーナーの資質の向上を図ると
トレーナー派遣帯同、全競技会場に
ーマンアカデミー東京校(男女と
ともに県体協のスポーツ普及並びに
おけるトレーナーステーションの設
も)。
競技力向上事業に協力し、広く県民
置を全国に先駆けて行うことを目指
(報告者:伊藤謙治・株式会社ジー
ズニューコンセプト)
スポーツの振興と地域スポーツの発
展に寄与することを目的とする」に
賛同できる者で組織されている。総
している。
(報告者:松井健一・千葉県アスレ
ティックトレーナー協議会)
●地域での取り組み
会では、協議会の規程や今後の予定
千葉県アスレティックト
レーナー協議会設立総会
などについて承認され、新たに協議
●大学とスポーツ
会が動き出した。
スポーツにおける大学
の役割
その後の研修会では、基調講演と
千葉県アスレティックトレーナー
して村木良博氏(日本体育協会アス
協議会は、7 ∼ 8 年前より数名が
レティックトレーナー連絡会議運営
去る 3 月 8 日、慶應義塾大学日吉
2010年に開催される千葉国体へ向
委員会委員長)を招き、「日本にお
キャンパス来往舎シンポジウムスペ
けて、医科学サポート体制のシステ
けるトレーナー活動の現状と展望―
ース(神奈川県横浜市)にて、慶應
ム化を図ろうと動き出したのが始ま
―トレーナーに期待すること」と題
義塾大学大学院健康マネジメント研
りだった。その後、千葉県体育協会
し講演が行われた。村木氏のこれま
究科およびスポーツ医学研究センタ
と連携を図りながら活動の幅を広げ、
での活動や、日体協公認ATの歴史、
ー主催の慶應義塾創立150年記念シ
千葉県内においてサポートしたいと
今後の構想などを話していただいた。
ンポジウム「大学とスポーツを考え
いう意思のある者が集い、講習会や
また、パネルディスカッションで
る∼日本のスポーツにおける大学の
研修会などを重ね、国体に向けたサ
は、「ゆめ半島千葉国体へ向けたス
役割・2008春∼」が開催された。
ポートが現実味を帯びてきた。
ポーツ医科学サポートの確立」と題
会場には現役大学生や大学OB、各
そして、去る 3 月 2 日、みやざき
し、南昌平氏(聖隷佐倉市民病院)
大学関係者、スポーツ関係者等250
倶楽部(千葉県中央区)にて、よう
には、ドーピングに関することを中
名が集まり、立ち見が出るほどの盛
やく千葉県アスレティックトレーナ
心に、国体における注意点や使用方
況ぶりで本テーマへの関心の高さが
ー協議会を正式に立ち上げ、設立総
法などについて話していただき、土
伺えた。
会・総会ならびに研修会を開催され
屋敢氏(JFE 川鉄千葉病院)には、
た。開会に先立ち、山本利春氏(国
現在日本代表サッカーU-23チーム
理事)が「これからの大学スポーツ」
際武道大学)より「ゆめ半島千葉国
ドクターであることから、チームに
と題した基調講演を行った。まず小
体に向けて――トレーナー活動コン
帯同するドクターとして選手をどの
泉信三元塾長が残した言葉であるス
セプト」と題し講演を行い、千葉県
ようにサポートしているかについて
ポーツが与える 3 つの宝「練習が不
初の国体に向けたスポーツ医科学サ
話していただいた。
可能を可能にする体験」「フェアプ
はじめに山崎元氏(慶應義塾常任
Training Journal May 2008 9
ON THE SPOT
い議論が交わされた。後藤氏、ヨー
コ氏はNCAAの事情にも精通し、時
折米国との比較を織り交ぜながら日
本の体育会のあり方を議論し、医師
の立場から大西氏が医科学サポート
の重要性やスポーツが心身の健康に
与える影響を述べた。参加者との質
疑応答では現役の大学生アスリート
からも質問があがり、自らの学生生
活に役立てようとする姿が印象に残
った。このシンポジウム「大学とス
ポーツを考える」は、今後テーマを
絞りながらシリーズ化していく予定
だ。
(報告者:増田元長、篠原圭子・慶
パネルディスカッションの様子
應義塾大学大学院健康マネジメント
研究科)
レイの精神」「生涯にわたる友」を
では多くの金メダリストを輩出して
紹介し、大学生がスポーツを行うこ
いる」と語った。国立スポーツ科学
との意義を語った。現在の大学の入
センター(JISS)の設立がアテネオ
●学生トレーナー
試制度について触れながら「学ぶこ
リンピックでの成果に結びついたこ
とを前提としてスポーツに励むこと
とを例にあげ、大学スポーツにも医
が大切だ」と文武両道の大切さ訴え
科学サポート施設の充実、指導者の
第11回学生トレーナー
の集い
た。大学スポーツを運営する側とし
育成や一貫教育指導の重要性をあげ、
て「時代に合わせて何を変えなけれ
競技力向上にはハード・ソフト両面
交換の場としてスタートした「学生
ばいけないのか、何を維持していか
の環境整備は欠かせないと訴えた。
トレーナーの集い」が第11回を迎
ねばならないかをきちんと分けて考
また、「今後の大学スポーツは地域
え、去る 3 月11∼12日の 2 日間に
えて、ことを運んでいくことが大切
社会との交流も重要になる。地域住
わたって、早稲田大学国際会議場
だ」と締めくくった。
学生トレーナー同士の交流と情報
民への教育や施設開放料を部の運営
(東京都新宿区)をメイン会場とし
次に竹田恆和氏(JOC会長)によ
費に充てることもよいのではない
て開催された。全国から700名弱の
る特別講演「大学スポーツに期待す
か」という考えを述べ、最後に山崎
参加があったため、映像を中継する
るもの」が行なわれた。竹田氏は
元氏が例にあげた小泉信三氏の言葉
サテライト会場を設けての運営とな
「これまで日本の競技力向上を支え
「スポーツが与える 3 つの宝」を多
てきたひとつが大学であったが、こ
くの大学アスリートに持ってもらい
の10年で、娯楽の多様化やコンピ
たいと締めくくった。
った。
今回のメインテーマは「新時代の
トレーナー像」であり、最初に行わ
ュータゲームの発達により子どもた
その後のパネルディスカッション
れたシンポジウムでは「トレーナー
ちのスポーツ離れや少子化が顕著に
では、パネリストとして後藤寿彦氏
の現状と将来を多角的に捉える――
なり、その波は大学にも押し寄せて
(元野球日本代表監督)
、ヨーコ・ゼ
トレーナーの職域の拡大」を議題と
いる」と現状を述べた後、今後の大
ッターランド氏(スポーツキャスタ
して、馬場宏輝(仙台大学)、中村
学スポーツのあるべき姿として「ま
ー)、大西祥平氏(慶應義塾大学大
好男(早稲田大学)
、原田宗彦(同)
ずは学生の本分として学問の責務を
学院健康マネジメント研究科委員
の 3 氏が登壇した。まず、長年スポ
果たすことが基本。その中で競技と
長)が登壇し、杉山茂氏(スポーツ
ーツ行政に関わっていた馬場氏が、
して好成績を残すにはシステムを構
プロデューサー)がコーディネータ
社会的なスポーツに関する価値が見
築しマネジメントを確立することで
ーを務め、「教育研究機関としての
直されているトピックを紹介し、
可能になる。米国のハーバード大学
大学スポーツの役割」をテーマに熱
10 Training Journal May 2008
「それではトレーナーの強みは何か
現場から
多くの学生トレーナーが集まった
コミュニケーションワークでの話し合い
という点を問い直す必要がある」と
の仕事の定義づけについて「自分で
「チームの一員として――トレーナ
述べた。職域とは何か、資格が意味
決めてしまっているから競争過多の
ーのあるべき姿」をテーマに話し合
するものは何かを改めて解説し、広
レッドオーシャンに陥るので、競合
った。
い視野に立ってトレーナーとは何か
のないブルーオーシャン戦略になる
について知られていく必要があるこ
ような新しい定義づけが必要」と、
ミュニケーションワークにおける全
とを強調した。そのうえで「競技や
マーケティングの資質が求められる
グループの回答が集約され、発表さ
地域を軸として、関わりを持ってい
ことを示した。その後、質疑応答が
れた。会長を務めた中村千秋氏が
くことが重要」とまとめた。「学会
交わされ、学生トレーナーとその先
「頭を使ってヒートアップするほど
など学生トレーナーの組織化、ある
につながるものとしての職域と存立
であれば、この 2 日間は成功だった
いは資格の創設も考えてよいので
基盤について、話題が広がった。
と思います」と挨拶し、会場が安部
最後に、クロージングとして、コ
は」との提言もされた。そして中村
次に、コミュニケーションワーク
球場跡地に建てられていること、学
氏は所沢市西地区総合型地域スポー
の時間が設けられた。これは数人が
徒出陣のエピソードを紹介しながら
ツクラブでの活動内容を紹介した後、
グループをつくって、「ケガのこと
「歴史は単に流れているのではなく
ほかの地域クラブにおいてアスレテ
を黙っていてほしいと選手に言われ
節目節目のイベントによって彩られ
ィックトレーナー的な立場で活動が
たが、それを監督に伝えるか?」と
ています。このイベントも、学生ト
行われている事例と、アンケート調
いった 6 つの質問について話し合い、
レーナーの方向性を考えていくうえ
査の結果を示した。トレーナーの存
答えを記入するというもの。同じ問
で非常に重要であることに気づきま
在を知っている人はその必要性を感
いを経験者にインタビューした映像
した。これまでの歴史をつくりあげ
じていること、そしてとくにトレー
が流され、グループ内での議論の刺
てきた方々に敬意を払い、これから
ナーによる処置を経験した場合は
激となっていたようだ。初日の最後
どういう歴史をつくっていくのかに
「雇ってでも必要」という意識を持
は、会場を移し、全員が集まる懇親
ついて思いを馳せたい」とまとめた。
ったという。このことから「適切な
プロモーションによって、今後の職
会で締めくくりとなった。
2 日目は、最初にパネルディスカ
域の拡大も期待できるのではない
ッションが行われた。大道泉(JP
か」と述べた。最後に、原田氏は、
フィットネス)、並木磨去光(サッ
スポーツビジネスの視点からポート
カーU-23日本代表アスレティック
フォリオ分析、ブルーオーシャン、
トレーナー)、相馬直樹(元サッカ
SWOTなどで捉えなおしてみること
ー日本代表)、中竹竜二(早稲田大
を提言。アスレティックトレーナー
学ラグビー蹴球部監督)の各氏が
次回は中京大学にて開催の予定で
ある。
on the spot 欄では、学会やセミナー
などへ参加していただいた様子を執筆
していただいたり、最近の話題をニュ
ース記事としてお届けしています。下
記のメールアドレスへ情報提供をお願
いします。
[email protected]
Training Journal May 2008 11
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