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ON THE SPOT
ON THE SPOT 現場から ●陸上競技 も、日本陸連では安心して使える薬 ングについて講義が行われた。コン 第18回日本陸上競技連盟 トレーナーセミナー のリストを紹介するなど、アンチド マ1秒を競う陸上競技者は、身体感 ーピング活動を積極的に展開し、ド 覚が非常に鋭敏であるため、トレー ーピング検査の対象となった時のた ナーは、テープの張り方や固定の強 去る 3 月27∼29日の 3 日間にわ めに注意するのではなく、選手とし さには非常に気を配る必要があるこ たって、国立スポーツ科学センター て薬の服用には日常的に注意するこ とを学んだ。 (東京都北区)にて、陸上競技連盟 とを促し、クリーンな競技者を育成 そのほかにも、栄養学や内科的疾 によるトレーナーセミナーが開催さ できるような教育システム構築を目 患、アスレチックリハビリテーショ れた。毎年この時期に行われている 指している。 ン、バイオメカニクス、婦人科疾患 本セミナーには、陸上競技に携わっ 初日の講義終了後には懇親会が行 などの講義が行われ、3 日間の講習 ているトレーナー、治療家、学生ト われ、終始和やかな雰囲気の中、同 はあっという間に過ぎていった。陸 レーナーなど、約100名が参加して じ陸上競技に携わっているトレーナ 上競技に特化したセミナーとして、 おり、本稿ではその内容について紹 ーや治療家の方々と交流が持てる貴 さまざまな先生の講義があり、初め 介したい。 重な時間となった。 て知ることや、大きな大会での対応 初日は、まず岩本広明氏(日本陸 2 日目では、陸上競技でよく見ら やルールなどとても内容の濃い講習 上競技連盟医事委員会トレーナー部 れる整形外科的疾患について上肢・ であった。これからも陸上競技に携 部長)による「トレーナーガイダン 下肢・体幹別に講義が行われた。ま わっていく者として、今回のセミナ ス」が行われ、トレーナー部の役割、 た、救急法の講義も行われ、実技を ーで得たことを現場で役立てていき そして日本陸連が関係する各種大会 担当された眞鍋芳明氏(国際武道大 たいと思う。 に帯同するにあたっての注意点や試 学:日本陸連トレーナー部委員)か 合会場での役割分担など、現場に出 らは陸上競技において実際に生じた ●ゲーム分析 た際にスムーズにトレーナー業務が 外傷について、映像もあわせて紹介 行われるための講義が行われた。午 して頂いた。こうした救護活動もト SportsCodeユーザカ 後には、山澤文裕氏(日本陸上競技 レーナーの大きな役割のひとつであ 連盟医事委員会委員長)から、「ド り、トレーナーとして何をすること 去る 3 月28日、フィットネスア ーピングコントロール」についての が最も重要なのか、そして競技を中 ポロ社ADSSスタジオ(東京都品川 講義が行われた。 (清水 歩) ンファレンス 断させずに最善の救護活動を行うた 区)にて、2009 SportsCodeユーザ 陸上競技の世界において、検出さ めには、どのように行動すればよい カンファレンスが開催された。 れる違反物質の約半数はタンパク同 のかを説明して頂いた。こうした講 スペシャルセミナー1では、ラグ 化薬であるようだが、これは即時効 義を受けていく過程で、我々トレー ビーのプロコーチ、キース・デービ 果を得やすいことや、比較的容易に ナーは選手に対するコンディショニ スが「SportsCode活用テクニック 入手できることが理由とされている ングのみではなく、陸上競技のルー ―― Live Codingを中心に」と題し ようだ。近年の検査実施件数の増加 ルもしっかり理解した上で救護活動 て講演。映像分析において20年以 に伴い、陽性反応が生じる確率も上 を行わなければならないことを痛感 上のコーチ経験から、気をつけるべ 昇しており、オリンピックでメダル した。 きポイントを挙げた。「マイナスの 最終日では、テーピング実習とし 要素ばかりを指導すると、選手は自 ドーピングが発覚する例も珍しくな て、陸上競技で必要な走り高跳び選 信をなくしてしまうので、プラスの い。また、気づかないうちにドーピ 手に対する足関節のテーピングと槍 要素を必ず入れるようにしている。 ングをしてしまうことを防ぐために 投げの選手に対する肘関節のテーピ また、コーチの立場とアナリストの を獲得するような競技者においても、 6 Training Journal June 2009 現場から ウォルト・ロック氏は、NBAで働くようになったきっかけ、仕事内 容などを語った サッカーアナリストの根本氏は、あるチームの分析し、踏み込んだ 提案を行った 立場は異なるので、明確に分けてお ーチが求める形にして「スタッツウ 使って試合会場に向かう移動時間に くことが求められる。各チームに穴、 ィンドウ」というSportsCodeの機 選手へフィードバックしているとい 弱点は必ずある。また、個人のプレ 能を活用したフィードバックについ う。チームスタッフからも「強い印 ーにおける癖や特徴についても選手 て語った。仕事の内容としては、通 象を選手に与えることができ、共通 にフィードバックしている」とのこ 常は午前7時から始まり、翌日の夜 理解が進んだ」との声があったそう と。なお、データ入力においては、 中(午前 1 時)まで、遠征時には午 だ。 キーボードを使うのではなく、タブ 前 7 時から午前 5 時までの仕事にな 早坂一成氏(筑波大学大学院ラグ レットを用いてタッチすることでラ るという。ときおりユーモアを交え ビー研究室)は、ラグビーにおいて、 イブコーディング(試合進行と同時 ながら、ゲーム前後、ドラフトなど ELV(限定的ルール変更)により、 にデータ入力していくこと)を行う に対応したビデオ作成の方法、実際 ラインアウトにどのような影響が生 方法を紹介した。キース氏は、膨大 の運用面での注意事項についてまと じたかについて分析。多数の観点か なSWOT分析の過程を、アニメーシ めた。すなわち、「 1 にも 2 にもオ らラインアウトの映像にコーディン ョンの製作過程になぞらえ「たとえ ーガニゼーション(組織立てる、整 グを施すことで「ソフトウェアの限 数分であっても、その映像をつくり 頓する)ことである」。そして、い 界に挑戦」し、戦術としてまとめて 上げるために非常に大きな手間と時 かにバックアップするかについて、 いく様子を発表した。 間がかかる」と話した。 外付けハードディスクへの保存、二 根本雄一郎氏(サッカーアナリス 重化したRAIDという方法による保 ト)は、サッカーにおいて、1 つの 存、保存済みのメディアを物理的に チームのウィークポイントについて 異なる場所へ保管することの必要性 映像を集め、擬似的にチームスタッ について話題は及んだ。最後に、 フへの提案という形を取った。カウ 続いて、ウォルト・ロック氏は、 「NBAビデオ・コーディネーターの 役割とSportsCode」について講演。 冒頭では、NBAのビデオコーディ ネータとして、仕事につくきっかけ 「われわれの仕事は、必要とする情 ンターから、あるいはサイドを起点 を話した。コンピュータ操作になじ 報を素早く提供することだ」と述べ とした得点シーン、そしてセットプ めず、最初はキー 2 つのみに触れる た。 レーからのリスタートがポイントに だけだったのが、現在ではホットキ ユーザレポートでは、5 人が発表 なることを示した。「 1 人 1 人が情 ー(データ入力におけるショートカ した。まず、森重貴裕氏(鹿屋体育 報を持ち、それに対応したプレーが ットのようなもの)は156種類にも 大学)は、バスケットボール部にお できることを目指したい」とまとめ 及ぶという。キーの割り当ては、連 ける分析と、公開されている情報と た。 想ゲームのような方法を用いて覚え 組み合わせることでスカウティング やすくしているそうだ。その後、記 レポートをまとめている様子を発表。 は、トレーナー的なポジションでは 録し、マトリクスにまとめたり、コ さらに、編集した映像を、i Podを あるが、パフォーマンス向上と傷害 太田千尋氏(クボタスピアーズ) Training Journal June 2009 7 ON THE SPOT 予防の観点から、個人スキルへの落 とし込みを図るために映像を活用し ている。脱力、股関節を大きく使う エクササイズ、力をオン・オフさせ る感覚を身につけさせることでイメ ージしやすくなり、自信がつくとい う効果がみられ、個人のプレー成績 に一部向上があったことを報告した。 戸田紀昭氏は、豊田自動織機ラグ ビー部で映像分析を始めて 1 年にな る。ラグビーのプレーには組織的な もののほか、個人によるものがある。 「個人のプレーにフォーカスした分 現場の情報を共有できる場にしたい、と語る福良氏 析をしてほしい」というニーズがあ ることを知り、俯瞰と横からの 2 つ の方向から撮影した映像を用いて、 立場の方が受講している。 今回は、テーマを二部に分け、講 たところ、「私たちスポーツ医療に 携わる専門職の連携を図るために、 ほかの人がどのような仕事をしてい 義とトレーニング実技が行われた。 共通言語や現場の情報を共有できる るか見えるようにしているという。 最初のテーマは、「仙腸関節の制御 場にしたい」と語ってくれた。 「どうしても悪いところばかりが目 について―― 構造と筋機能を中心 についてしまうが、それでは選手は に」であった。仙腸関節の機能解剖 映像を見なくなってしまう。どのよ 学から始まり、仙骨のうなづきと起 ●スポーツ鍼灸 うに話すかが大事だ」と戸田氏。な き上がり運動の理論や、ADL(日常 お、フィードバックするときに字幕 生活動作)の動作での関与も具体的 鍼灸実技セミナー を入れることで、文字情報を映像と に示された。 一緒に示す工夫をしているという。 トレーニング実技指導では、競技 (辻本和広・トレーニングコーチ) 去る 4 月12日、東京衛生学園専 門学校(東京都大田区)にて、鍼灸 最後に懇親会、そして参加者の投 復帰までのプログラムの紹介や、ス 票による優秀なユーザレポートの発 ポーツの競技特性に適合したトレー アメリカにて東洋医学とスポーツ 表も行われ、盛り上がりをみせた。 ニング、ファンクショナルトレーニ 医学の両面からアプローチをしてい チームスタッフとして似たような専 ングと段階的に進められた。その中 る小松武史氏(カリフォルニアスポ 門職が集まっていることもあり、プ でもシットアップ・エクササイズを ーツ医学センター)による、腰部・ レーをどのように評価するかなどの 実施するときにも、「筋連結をイメ 頸部・上肢編と続いた今回は下肢編 競技特性を踏まえた専門性の高い情 ージして負荷をかけることで筋の活 の治療になる。 報交換が行われていた。 性化につながる」と説明が加えられ た。 ●スポーツ傷害 次は、「ストレッチングの功罪」 実技セミナーが行われた。 膝の痛み、坐骨神経痛、今までの 復習として肩の痛みを持っている参 加者に対し、痛みの位置から経絡の であった。日本に導入された歴史的 火穴の圧痛をチェックし、痛みがあ 背景から、スタティック、バリステ れば水・金穴に刺鍼して治療する。 ィック、ダイナミックストレッチン 火が燃えているから水を使って火を 海道札幌市)にて、スポーツ傷害勉 グや、PNFストレッチングまで、生 消し、水がなくなると金を使うとい 強会が開催された。 理学的理論と研究データを交えなが う東洋医学を使った治療法にて痛み ら、スポーツ現場への応用までビジ が軽減することの即効性が見られた。 ュアル的に進められた。 試合のハーフタイムで使うと対処療 スポーツ傷害勉強会 去る4月12日、木の花鍼灸院(北 この勉強会は、月に 1 ∼ 2 回のペ ースで開かれ、参加者には学生、指 導者、医療従事者(理学療法士、柔 最後に講師の福良均氏(木の花鍼 法になるかもしれないが、痛みが取 道整復師、鍼灸師)と、さまざまな 灸院院長)に、今後の方向性を尋ね れパフォーマンスが出るなら使って 8 Training Journal June 2009 現場から みたいと思わせられる治療法だった。 痛みが取れなかったり反応がよくな かったときは、取穴しなおしたり雀 啄をしながら反応をチェックする。 すると、最初に10あった痛みが2に 減っていくという。反応がよければ すぐに痛みが引くこともあり、痛い ところに刺鍼するわけではないので 炎症性疾患、感染症、外傷、熱疾患、 関節可動域拡大や鎮痛にも効果があ 全日本スキー連盟トレーナーセミナーより る。 最初に腹部で於血のチェックをし、 首にある免疫ポイントを押圧するこ が開催された。 予防にむけた取り組みとトレーナー とで、免疫力低下を評価し、経絡・ 今回のテーマは、フリースタイル サポート」のテーマの下、スキーで 経穴を使い気滞・血滞の流れを良く スキーモーグルナショナルチームに の障害発生として多く挙げられる前 してから治療をする場合もある。 よる医科学サポートの紹介、であっ 十字靭帯損傷、およびフリースタイ た。 ルスキーでの転倒の際、症例として 習った手技のいいところを取り、 患者さんを治す。痛みが取れなけれ セミナー講師としては全日本スキ 挙げられる脳震盪への対処と予防が ば取穴しなおすだけで効果が変わる ー連盟フリースタイルスキーモーグ 報告された。また各地域ブロックの ことがその場で実感できるだけに、 ルナショナルチーム情報医科学部サ 取り組みや啓蒙活動なども同時に報 臨床の現場ですぐ使える手技は、ハ ポート部会員の遠山健太氏・鈴木岳 告された。 ーフタイムなどのスポーツ現場のち 氏・寒川美奈氏の3名から、下記の ょっとした時間も利用できる手技だ 報告がされた。 った。 会場には北海道という地域の特性 もあり、フリースタイルスキーに限 遠山氏からの報告では、「ストレ らず、アルペンやノルディックと言 大事なことは取穴。経穴の位置は ングス&コンディショニングコーデ った、実際にスキーの現場にて指導 ひとそれぞれ違うもの。「ここ」で ィネーターとしての役割――チーム に携わっている関係者が多く見られ、 はなく、「このあたり」の一番反応 を機能的に動かすには」というタイ 現場でのコンディショニング管理や、 の出るところに刺鍼し状態を見るこ トルの下、2月に福島県猪苗代で開 日本人選手と海外選手の身体特性の とは、身体は皆同じではないことを 催されたフリースタイルスキー世界 差異、地域単位での強化を行う際の 教えられた。 選手権のサポートの様子を中心に紹 疑問点などが活発に議論された。 なお、上記と同様の内容で、4 月 介された。 このセミナーは開催時期が、大会 19日、兵庫医科大学(兵庫県西宮 内容としては国際大会における映 期が終わり残雪を利用してのトレー 市)でも行われた。半年に 1 回行わ 像サポート(選手およびチームへの ニング期となるため、会場での報告 れてきたセミナーは、今度はアドバ データ提供から科学的検証に用いる がトップ選手を対象にしたものであ ンス編として 7 月に行われる予定で データ収集まで)の様子が詳しく説 り、各地域のコーチ・関係者にとっ ある。 明された。 ては多くの刺激になった、と感じら (佐々木愛) 鈴木氏からの報告では、「アスレ ●スキーの医科学サポート ティックトレーナーの役割とシーズ 全日本スキー連盟 トレーナーセミナー ン中のコンディショニング管理」と 去る4月19日に札幌医科大学記念 ホール(札幌市)にて、2009年全 日本スキー連盟トレーナーセミナー し、08/09シーズンにナショナルチ ームと帯同し、そのなかでの選手へ のコンディショニング管理の実践例 を紹介し、報告された。 寒川氏からの報告では「障害発生 れた。 (工藤 聡) on the spot 欄では、学会やセミナー などへ参加していただいた様子を執筆 していただいたり、最近の話題をニュ ース記事としてお届けしています。下 記のメールアドレスへ情報提供をお願 いします。 [email protected] Training Journal June 2009 9