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ON THE SPOT
現場から
●学生トレーニング指導者
次に研修が行われ、午前の部では
たや民族としての違いがあると解説
第 5 回学生トレーニング
指導者研修・交流会
奥田功夫氏(東京国際大学)による
された。
「日米トレーニング比較──アメリ
学ぶべきことは、スポーツチーム
カから学べること学べないこと」と
の財政力の強化がトレーニング指導
2012年10月28日、東京国際大学
題した基調講演が行われた。米国で
者の職業確立につながるため、ナシ
(埼玉県川越市)にて、日本トレー
は日本に比べてトレーニング指導者
ョナルレベルではない底辺を広げる
ニング指導者協会(JATI)が主催し、
が社会において職業として確立して
ための活動に学生のうちから関わる
第5回 学 生 ト レ ー ニ ン グ 指 導 者 研
おり、その日米の違いを知ることで、
ことが重要であるとした。トレーニ
修・交流会が行われた。学生トレー
学生がトレーニング指導者を職業と
ングの知識に関しては米国では世界
ニング指導者の研修・交流を目的と
して長く続けられるように、今でき
から情報が集まる利点があるため、
しており、全国15の大学、専門学
ることを見つけてほしいという氏の
英語での情報収集が重要であるとし
校の学生トレーニング指導者、約
考えから話が始まった。
た。しかし、米国人と日本人では体
70名が集まった。
米国ではスポーツ環境が充実して
型が違い、トレーニングする要素も
始めに研修の前の簡単な交流とし
いる。スポーツチームの運営では試
異なるため、そのまま知識を取り入
て各参加校の自己紹介が行われた。
合の入場料やグッズの売り上げ、放
れるべきではないとした。
選手に対してのトレーニング面や心
映権料により金銭を発生させ、それ
午後の部の研修はロンドンオリン
理面などのサポート内容によりサポ
によってチームの競技力強化をす
ピックサポートを共通のテーマとし
ートスタッフの部門分けを実施して
る。米国ではそれが高校レベル、さ
て、3 つの交代制の分科会が行われ
いる学校や、選手へ即時に情報をフ
らには地域の少年野球のチームでも
た。1 つ目は大石益代氏(日本ソフ
ィードバックするためモバイル端末
行われていると実例を元に紹介され
トボール協会ナショナルトレーナ
を指導現場に導入しているなど、各
た。この違いがトレーニング指導者
ー、JISS非常勤トレーニング指導員)
校の特色ある活動を共有できる紹介
の職業確立に影響を与えており、そ
による「女子レスリング選手へのト
であった。
の根底にはスポーツ文化のとらえか
レーニング指導」と題した分科会が
行われた。レスリングの競技特性や
選手が実践しているトレーニング内
容の解説があり、実際にコアのトレ
ーニングとして、ベア・ウォークや
ワニ・ウォークを体験をした。
2 つ目は岡野憲一氏(JISSトレー
ニング指導員)による「フェンシン
グ男子フルーレチームに対するトレ
ーニングサポート」と題した分科会
が行われた。フェンシングの競技特
性とステップワークの重要が紹介さ
れた。フェンシング競技のステップ
ワークでは脚がクロスオーバーする
ことが弱点となるため、常に同じス
タンスを維持するためのステップワ
日米トレーニング比較について、奥田功夫氏の講演
6 Training Journal February 2013
ークが重要であると解説され、実際
現場から
に参加者もフェンシングの体勢から
機器、健康やダイエットに関する商
起こりうる脳震盪をラグビーの試合
のステップワークを体験した。
品を扱うメーカーや出版社、大学の
の映像を競技モデルとしてわかりや
3 つ目は斎藤圭子氏(株式会社明
研究までさまざまなブースが出展さ
すく説明していた。一般的に脳震盪
治ザバススポーツ&ニュートリショ
れていた。
は直達外力による外傷だと思われて
ン・ラボ)による「大野忍選手(な
座位保持や姿勢エクササイズな
いるが、実際には文字通り脳が揺ら
でしこジャパン)の栄養サポート」
ど、姿勢に関する商品やプログラム
されることがあれば起こりうるた
と題した分科会が行われた。食事の
が多くみられたこと、食品の中の成
め、肩を強打したり、尻もちをつい
重要性と実際のサポート内容を紹介
分が健康をもたらす効果があり、さ
たりすることでも頭部に介達外力が
された。大野選手へのサポートでは
らには運動時にも酸素運搬に効果が
伝われば脳震盪の原因になる。
カウンセリングを実施したところ、
見られるというような、食品に関す
脳震盪は安静にしていれば、自然
練習前後の栄養補給に不足があった
る出展も多く見られたのではないか
と回復するが、回復を待たずに再び
ため改善の取り組みを行った結果、
と感じた。
脳にダメージを受けると、50%は
測定数値の改善と選手からの身体の
また、ブースでの商品紹介だけで
死亡し、ほぼ100%の確率で慢性的
キレが増したとの所感があったと、
はなく、広い会場では新しいエクサ
な頭痛、不眠、物忘れ、鬱、記憶力・
メカニズムを元に解説された。
サイズ器具やメソッドを紹介しなが
集中力低下など重篤な後遺症を残す
最後に交流会が行われ参加者が交
ら、参加者とともに身体を動かしな
危険性があるという。また、脳に外
流を行った。また、研修を担当した
がら行なうセミナーも一日を通して
力が加わることで頭蓋内の架橋静脈
講師や各学校の引率教員との交流の
行われていた。ブースを回りながら
が損傷され、急性硬膜下血腫を引き
機会も設けられ、賑やかに交流や情
商品を実際に試し、聞きたいことが
起こす恐れもある。脳震盪も急性硬
報交換が行われた。 (阿部拓馬)
あれば聞くことができる。気に入れ
膜下血腫も意識清明期があり、判別
ばその場で商品を購入したり、名刺
が難しいので、ただちにその選手を
●スポーツ科学
を交換して仕事へつなげていくこと
競技から外す必要がある。監督・ト
SPORTEC2012
ができるので、積極的に商品を手に
レーナーなどの指導者もこのことを
取りコミュニケーションを取ってい
よく知り、頭部を直接ぶつける以外
2012年11月21日~23日の 3 日間、
る姿が見受けられた。
にも脳に外力が伝わることがあるこ
東京ビックサイトにてスポーツ・フ
会場内に設けられたセミナー会場
と、元気に見えても必ず安静にさせ
ィットネス・ヘルスフードに関する
では、スポーツ・健康・栄養に関す
るなど、競技に関わる者の共通認識
総 合 展・ カ ン フ ァ レ ン ス「SPOR
る多くの講演が行われた。ここでは
として周知徹底させることが大切に
TEC2012」(第 4 回スポーツサイエ
「スポーツ現場における脳震盪の対
ンス・テクノロジー EXPO・第 2 回
処法」に関してレポートする。山田
今年度より、中学校で武道が必修
リハビリテーションEXPO)が開催
睦雄氏(流通経済大学スポーツ健康
化され、その中でも柔道は頭部外傷
された。トレーニングマシンや測定
科学部)により、スポーツの現場で
が多く、スポーツ医学の分野でも注
なる。
SPORTEC2012にて
Training Journal February 2013 7
ON THE SPOT
目されている。生徒や選手の安全を
澤木啓祐氏(日本陸上競技連盟副
ルチサポートシステムはロンドンオ
守るためにも今後ますます指導者た
会長)により「日本長距離界のこれ
リンピックまでに、①よい状態で選
ちが脳震盪を含めた頭部外傷に理解
まで・これから」を題にして基調講
手がスタートラインに立つ環境整
を深め、選手にも身を守るための指
演が行われた。これまでのオリンピ
備、②情報共有、③チームジャパン
導をしていく必要性の高まりを感じ
ックマラソンと10,000m国内外の記
として戦う意識の醸成、などができ
る意義ある講演だった。
録比較やその時代のトレーニングや
たということであった。
コンディショニングなどのトピック
高岡氏からは、JOCの若手教育指
を見ながら、今回のオリンピックに
導のシステムで行ったアメリカのマ
ついての問題点や今後の課題を含め
ンモストラッククラブが詳しく紹介
●陸上競技
て、世界で戦うための問題提起がな
された。環境の違いやシステムの違
第11回陸上競技学会
された。また、「技術(コーチング)
いなど、日本のよさ(実業団での早
と科学(データ)と調和」の必要性
期練習・距離や設定タイム・駅伝)
第11回陸上競技学会が、公益社
や「コーチングは芸術」であるとい
やアメリカのよさ(トレーニング環
団法人日本学生陸上競技連盟と関東
う持論などが語られた。
境・大会の環境・情報・移民)の比
学生陸上競技学会連合との共同開催
続いてのシンポジウムでは、豊岡
較がなされた。また、継続したトレ
で2012年12月15・16日に行われた。
示朗(大阪体育大学)と澤木啓祐氏
ーニングのために補助的な運動には
今年は千葉県勝浦市にある国際武道
(日本陸上競技連盟副会長)がコー
必要であり、プラスとして高地トレ
大学で実施された。会場ブースには
(日
ディネーターとして、
長沼祥吾氏
ーニングは必要であろうということ
協賛企業やご当地ラーメンの「勝浦
本陸上競技連盟強化委員)
、高岡寿
であった。これらを実施していくこ
タンタンメン」などが並んだ。大会
成氏(カネボウ化粧品陸上競技部)
とで世界で日本が戦っていけるので
実行委員長の眞鍋芳明氏(国際武道
の話のあとに藤田信之氏(F・R・A
はないかという感想を持っていた。
大学)によると、陸上競技学会など
藤田ランニングアカデミー)が加わ
藤田氏からは、高地トレーニング
の運営には協賛企業の協力が必要で
り様々な議論がなされた。
に対して将来的には平地でできた運
あり、時代に合わせた工夫をするこ
長沼氏からはロンドンオリンピッ
動強度を高地できれば強くなると考
とで多くの企業の協力を得ることが
クまでの強化についてやマルチサポ
えていることや、実際に高地トレー
できたと言っていた。
ート内容についての紹介がなされ
ニングで実施した順化の確認方法な
本大会のテーマは 2 本立てで、
「日
た。現実的なサポートシステムとし
ど非常に興味深い話がされた。
(前半部は大槻清馨、後半部は西澤
隆)
本長距離界のこれまで・これから」
て個別チームの強化を陸連がサポー
2 日目には、中村明彦氏(ロンド
と「陸上競技界の指標」であった。
トするシステムの紹介と強化体制の
ンオリンピック代表)による「私の
ロンドンオリンピック後ということ
見直しに伴い、実業団の持っている
指標──調子の把握方法」という題
もあり、遠くは長崎からも参加があ
情報の共有のための合宿やマルチサ
で特別講演が行われた。主にウォー
るほど、非常に注目の高いテーマで
ポートのよる情報共有のシステム化
ミングアップなどで立 5 段跳びを実
あった。
などが詳しく説明された。とくにマ
施し、コンディションの把握を実施
講演を行う中村明彦氏
8 Training Journal February 2013
懇談会と一般発表
現場から
しているという話があった。また、
眼視が可能であるという。
いた。今後の研究も期待される。
ロンドンオリンピックは400mハー
山本氏は、競技復帰を見極めると
今回、陸上競技学会に参加して、
ドル出場したが10種競技の選手で
きに現場で有効な指標はいくつかあ
データや指標を持つことが必要であ
あり、その中で400mと110mハード
るが、単一の指標だけでは難しい。
るが、コーチングではそれだけに頼
ルで400mハードルというようなイ
また、指標のみに頼らず、さまざな
らず総合的に判断することが大事で
メージを持っており、その他の種目
要素を一つ一つ確認しリスクを最小
あると改めて感じた。なお、陸上競
のコーディネーション能力なども注
限にして運動負荷を上げていく。こ
技学会には研究者、指導者、選手を
目された。
の作業が重要であると強調された。
問わず、陸上競技に関わっていれば
シンポジウム 2 では、木越清信(筑
さらに、一般発表(ポスター発表)
入会することができる。なお、次回
波大学)をコーディネーターとして、
が懇談会と同時に行われ、活発な議
は日本大学文理学部での開催が決定
森丘保典氏(日本体育協会)、山本
論が行われた。発表賞には広野泰子
している。
利春氏(国際武道大学)の話のあと
(日本女子体育大学大学院)
、湯田淳
に活発な議論がなされた。
(日本女子体育大学)の両氏による
森丘氏からは過去の400mHのレ
「短距離種目のカーブ疾走動作にお
ースパターンと、外国選手とのレー
けるキネマティクス的特徴」が選ば
ス比較からタイムの指標を用いトレ
れた。本人は日本人が世界で戦える
ーニングに生かした実践例を示し
ための研究ができたらという中での
た。量的、質的研究の方法論の両者
現状把握の段階であると位置づけて
を縦貫的関係で統合することによ
いるようであった。また、研究にお
り、個別性と一般性(普遍性)の両
いては指導者の協力に感謝を述べて
(寺本寧則・Creative Running)
on the spot欄では、学会やセミナー
などへ参加していただいた様子を執筆
していただいたり、最近の話題をニュ
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Training Journal February 2013 9
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