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アンドン村のキャッサバ加工(1).
研究員レポート 2 アンドン村のキャッサバ加工(1) プロジェクトサイトのひとつのアンドン村では、キャッサバは様々に加工され、消費・ 販売されます。炊いて食べられる青酸の弱いキャッサバ品種は、農作物として販売される こともありますが、その大半は加工されます。最も一般的なキャッサバ加工法に「ポンゴ」 が挙げられます。 アンドン村周辺では、「クスクス」 (バンベ レ語では「イケイ」 )と呼ばれる、キャッサバ 粉を練り粥状にしたものが主食です。クスク スをつくるには、製粉した「ポンゴ」が必要 です。ポンゴは、キャッサバの皮をむき、2 日間程度水に浸けて灰汁抜きしたものを鉈で 細かく叩き切り、天日干ししてしっかりと乾 燥させると出来上がります。ポンゴづくりは 基本的に女性が担いますが、キャッサバの皮 むきは男性も手伝います。灰汁抜きには大量 写真 1. ポンゴの天日干し 写真 2. ポンゴの天日干し の水を必要とします。村には、ポンプ 2 つ、 井戸 1 つ、湧水場が数か所あります。大半の 女性は湧水場で水を汲みますが、家から 1 ㎞ 以上離れていることもあり、ポンゴをつくる ための水汲みは楽ではありません。 従来、写真 1 のように竹で編まれた「タン ザガ」にポンゴを並べ、それを屋根に乗せて 天日干ししていましたが、近年では、写真 2 のように家の前に広げた大きなビニルシート に並べて天日干しする女性が大半です。 近年、ビニルシートが普及し始めたのは、 これまで消費されるのみであったポンゴが、販売されるようになったからだといえます。 女性は現金が必要になった時、ポンゴをつくり、金たらいに盛って販売します。タンザガ ではどうしても天日干しできる量が限られ、一度に多くを加工することができません。村 では、金たらい山盛り 1 杯が通常 2500CFA で販売されます。さらに多くの利益を得ようと する女性は、約 55 ㎞先の都市へ運搬して販売します。 ポンゴの天敵は、家畜・家禽・野鳥、雨です。家の周辺にはヤギ、ニワトリなどがいて、 それらがポンゴを食べてしまいます。タンザガに並べて屋根に干していると家畜・家禽に 食べられることはありませんが、舞い降りてくる鳥を追い払うことはできません。一方で、 ビニルシートで天日干しする場合は、それらの家畜・家禽を追い払うため、また、雨が降 1 研究員レポート 2 り出したときにポンゴを回収するためにも、誰かがポンゴのそばについている必要があり ます。大半の場合、その役割を担うのは、畑に出かけない妊産婦や老女です。 キャッサバは一年を通じてポンゴに加工されますが、いつ雨が降り出すかわからない雨 季は、しっかりと乾燥させることが困難です。一度回収して翌日また天日干しすると、ポ ンゴの量は 4 分の 3 程度に目減りしてしまいます。そのため、大半の女性は、雨季より乾 季にポンゴに加工して販売する傾向にあります。 しかしながら、乾季には乾季の難しさがあ ります。国道 1 号線がアンドン村を横断して いて、トラックが毎日、ひっきりなしに物資 を都市から都市へ輸送しています。アスファ ルト舗装されていない道路のため、写真 3 の ように、トラックが通過した後の砂塵はひど いものです。家の前や屋根の上でポンゴを天 日干ししていると、どうしても砂塵が混入し てしまいます。そのため、乾季には、写真 4 のように、村に何か所かある岩盤でポンゴを天 写真 3. 乾季の村の様子 日干しします。岩盤の近くに水場があるため、 家の前でポンゴを天日干しするときと比較し て、水汲みにかかる労力は軽減されます。し かし、家事をほったらかして、一日中岩盤で 家畜や野生動物がポンゴを食い荒らさないか どうか、監視しているわけにはいきません。 50 代の女性は、 「砂が混ざったイケイを食べる よりは、動物に食われたとしても真っ白なイ ケイを食べるほうがよい」と、岩盤でのポン ゴづくりを選びます。 写真 4.岩盤でのポンゴづくり ポンゴづくりに必要な水の確保、家畜や野生 動物からポンゴを守る手段、砂塵への対応など、今後、人びとと話し合いながら対策を考 えて行きたいと思います。 【文責】研究員 2 浅野史代