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まとめ
1.3 まとめ
野生動物は、その種の行動特性によって生息環境が異なり、それぞれ水辺や樹林あるい
は農耕地や市街地等といった環境に依存している。とくに鳥類は移動能力が大きいため、
環境の現況を反映しやすい。また、繁殖や越冬のため季節によって渡りをする種もおり、
種によって環境への依存度は異なる。
「地域環境評価書
県央地域」(神奈川県環境部、1992)では、まとまりのある自然環
境に依存している種を指定しており、これを踏まえて鳥類の生息状況から相模原市の環境
把握を行った。
1.3.1 環境指標種の抽出
「地域環境評価書
県央地域」による一級種・二級種
一級種:まとまりのある自然環境(植生・湖沼・干潟・岩礁等)に強く依存している種、
あるいは生息数が少ない種や近年減少傾向にある種
二級種:一級種に準ずるが農耕地・植林地・未開発な二次林など人為的改変地域におい
ても生息できる種
(1)水辺性の鳥類
水辺性の鳥類は、採餌や休息の場として水辺を利用しており、以下のような種が水辺環
境の指標となる。
・魚の豊富な河川の指標となる魚食性の種
−
カワウ,サギ類,カワセミ等
・大きな水辺の存在が必要な種
−
カモ類,オオバン等
−
セキレイ類,シギ・チドリ類等
・水辺の小動物(昆虫、底生動物)捕食し、
豊かな河川の指標となる種
本調査では、水辺周辺に生息する種として表4.1.11に示す種の生息を確認した。このう
ち「地域環境評価書
県央地域」における指定種は、水辺環境に強く依存している種で、
良好な水辺環境の指標となる種である。なかでも「一級種」に区分されているカワウ,ア
オサギ,ミサゴ,ヤマセミは、いずれも魚類を捕食するという習性から、とくに水辺との
関わりが多きい鳥類種であるといえる。また生態ピラミッドの上位に位置する種でもあり、
その環境に生息する生物の多様性の指標ともなる種である。
各調査地の「水辺環境指標種」確認種数は図4.1.10に示すとおりである。
これをみると、R1,3,4,8とP4,7で多くの水辺環境指標種を確認しており、
この中にはミサゴやカンムリカイツブリ,カワセミカワウといった水辺への依存度が高い
とされる一級種も含まれる。「相模川」(R1・3・4,P4)とカモ類の越冬地となっている
「相模原沈殿池」(R8,P7)が水辺性鳥類の大きな生息地となっていることが分かる。こ
れ以外の地点では「八瀬川」(R2)と「姥川」(R6)、「鳩川」(R7・9)、「境川」(R1
0・13)といった相模川支流の小河川も水辺の鳥の生息地となっている。
なお、台地上には河川等の水域はほとんど存在せず、水辺の鳥の生息地はみられない。
また、「平成10年度
一級河川道保川環境調査委託
概要版」(相模原市、1999)によ
れば、「道保川」にもカワウやサギ類,カワセミ,セキレイ類等が確認されており、水辺
の鳥の生息地となっている。
表4.1.11
図4.1.10
水辺周辺に生息する種
地点ごとの水辺性鳥類確認種数
(2)樹林性の鳥類
樹林性の鳥類は、繁殖や採餌の場として樹林を利用しており、以下のような種が樹林環
境の指標となる。
・階層構造の豊富な樹林
−
キツツキ類,キビタキ,エナガ等
・林床が豊かな樹林
−
アカハラ,シロハラ等
本調査では、樹林に生息する種として表4.1.12に示す種の生息を確認した。このうち
「地域環境評価書
県央地域」における指定種は、樹林環境に強く依存している種で、と
くに「一級種」に区分されているアオゲラ,アカゲラ,キビタキは良好な樹林環境の指標
となる種である。なお、オオタカやノスリといった猛禽類も、繁殖に関しては大径木の生
育するまとまった樹林が必要となるが、今回の確認のように冬季には平地の農耕地や河川
敷にも出現する。
各地区ごとの「樹林環境指標種」確認種数は図4.1.11に示すとおりである。
これをみると、R6,9,13とP12で多くの樹林環境指標種を確認しており、この中に
はアオゲラやエナガ,アカハラ,シロハラといった樹林への依存度の高い種も含まれる。
「横山丘陵緑地」(R6)と「磯部」(R9)にみられる段丘崖の斜面林、および「大野台」
(R12)のこもれびの森公園、「鵜野森」(R13,P12)の境川斜面緑地が樹林環境に依存し
た種の大きな生息地となっていることが分かる。これ以外の地点では、「神沢」(R1)や
「田名」(R2・3,P4)、「下溝」(R4)、「磯部」(R8)にみられる段丘崖の斜面林、
「相模原北公園」(R5)や「相南」(R14)の緑地が樹林性鳥類の生息地となっている。
また、「平成10年度
一級河川道保川環境調査委託
概要版」(相模原市、1999)によ
れば、「道保川」周辺の樹林ではアオゲラやアカハラ,シロハラ等が確認されており、樹
林性鳥類の生息地となっている。
表4.1.12
図4.1.11
樹林に生息する種
地点ごとの樹林性鳥類確認種数
(3)田園や都市環境を代表する鳥類
田園や都市環境は、以下のような種が指標となる。
・水田や耕作地
−
ヒバリ,セッカ,ツグミ,カワラヒワ
・都市環境
−
ハシブトガラス,スズメ,ツバメ,ドバト
市域にはまとまった田園はほとんど存在しないが、相模川沿いの田名や磯部には耕作地
が広がっており、「相模原市の鳥」であるヒバリや、セッカ,ツグミ,カワラヒワといっ
た耕作地や草地にみられる種の生息地となっている。また、相模川の河川敷でもこれらの
種が確認でき、田園と同様な環境となっている。
一方、台地上の平地は大部分が市街地や住宅地となっているため鳥類相には乏しく、ハ
シブトガラスやスズメ,ツバメ,ドバトといったいわゆる都市鳥が優先する地域となって
いる。
1.3.2 鳥類相からみた相模原市の環境
相模川によって形成された平坦な段丘面上に広がる相模原市域には、山地や丘陵地のよ
うな地形もなく、とくに台地上の平地はほとんどが市街地や住宅地として利用されており、
カラス類やスズメといった都市鳥が優先する地域が大部分を占めている。市街化が急速に
進んだため、樹林地は急傾斜に残された段丘崖の斜面林や、「首都圏近郊緑地保全地域」
として残された雑木林など断片化したもので、まとまった樹林はほとんどみられない。そ
のため、良好な樹林の指標となる鳥類は少なく、樹林性鳥類の生息も少なかった。しかし、
オオタカのような生態ピラミッドの頂点に位置する種も生息するなど、一部では豊かな自
然の指標となる種も確認されている。
一方、相模川に代表される水域では、サギ類や,カワウ,ミサゴ,ヤマセミ,カワセミ
といった魚食性の種が多数生息するなど、魚影が濃い河川であることがうかがえる。また、
相模川の河川敷には草地環境も広がっているなど、良好な河川環境を呈している。ただし、
段丘崖に沿って流れる相模川の支流河川は、コンクリートで護岸された箇所が多く、相模
川以外の河川環境は必ずしも良好とはいえない。
なお、横浜市水道局の相模原沈殿池は県内でも有数のカモ類の飛来地となっており、冬
季にはカモ類やカワウをはじめ、有に1000羽を越える多くの鳥類が生息する。
鳥類からみた相模原市の環境区分を図4.1.12に示した。
[相模川]
「水辺の鳥」の生息をはじめ、河川敷や隣接する農耕地には「田園の鳥」が生息するな
ど、水辺と農耕地が一体となって、多様な生息環境を形成している地域である。
[斜面部]
規模は小さいながらも様々な「樹林の鳥」が生息する市域では限られた”まとまった樹
林地”が残されている。また、相模川ほど多様ではないが「水辺の鳥」も生息する小河川
が隣接している。これらも、樹林と水辺が一体となって存在することによって、様々な生
物の生息が可能になっていると考えられる。
[沈殿池]
カモ類をはじめ、非常に多くの「水辺の鳥」の生息地となっており、市域では特異な環
境となっている。ただし、周辺に”餌場”となる環境が保全されることが必要である。
[都市部の緑地]
一見、良好そうに見える雑木林が生育しているが、その規模が小さいうえ、市街地に点
在しているため、鳥類相も豊かではない。ただし、ほとんど都市鳥しか生息しない鳥類相
が非常に乏しい市街地の中にあっては、残された貴重な緑地として位置づけられる。
[境川]
市街地を流れる河川でありため、鳥類相はあまり豊かではない。ただし、鵜野森のよう
に河川と樹林が一体となったまとまった緑地は、市街地内のいわばオアシスとなっている。
市 街 地
ハシブトガラス
スズメ
ツバメ
ドバト
凡 例
水辺環境
市街地の緑地
シジュウカラ
メジロ
ヒヨドリ
キジバト
樹林環境
※各地域の環境を代表する
鳥類を示した
境 川(鵜野森)
樹林の鳥
・キツツキ類
・カラ類
・キジバト
・アカハラ
水辺の鳥
・サギ類
・カモ類
・セキレイ類
沈 殿 池
相 模 川
田園の鳥
水辺の鳥
・カイツブリ類 ・ヒバリ
・セッカ
・カワウ
・オオヨシキリ
・サギ類
・ツグミ
・カモ類
・ミサゴ
・ヤマセミ
・カワセミ
・シギ・チドリ類
カイツブリ類
カモ類
カワウ
アオサギ
オオバン
イソシギ
セキレイ類
図4.1.12
鳥類からみた相模原市の環境区分
段 丘
水辺の鳥
樹林の鳥
・サギ類
・オオタカ
・カルガモ
・キツツキ類
・カワセミ
・アカハラ
・セキレイ類
・シロハラ
・センダイムシクイ
・エナガ
・カラ類
・シメ
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