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事例で考えてみましょう
事例で考えてみましょう 〜こうした研究を行うためには、 何に留意して、 どんなことを、 どのように、 行う必要があるでしょうか? ①教育との関係 • 学生に授業に関するアンケートを実 施して分析し論文を書く • 学生に書かせたレポートをデータとし て論文を書く • 授業を受講している学生から心理学 実験の被験者を募る 留意点 • 授業は教育業務であり、研究とは異なる →研究のための作業は授業外で行うべき • 授業で得たデータは教育のために用いる のが本来の目的 →研究利用は目的外使用になる。ICも別途 取得する必要がある • 教員と学生は平等な関係でない →強制がかからないよう配慮が必要 ②依頼先の問題 • 勤務先である病院の患者や、施設の 利用者を対象に、インタビュー調査を行 う • その際に、診療録(カルテ)や作業日 誌から、患者や利用者の情報を転載す る • 現場の職員へのアンケートを管理職 から依頼してもらう 留意点 • 診療やケアは業務であり、研究とは異なる →研究のための作業は業務外で行うべき • 診療やケアで得たデータは、診療やケアのため に用いるのが本来の目的。研究利用は目的外 使用になる →研究利用の許可を管理責任者(施設長等)から得 る必要。その施設が定めた手続きに従う →患者や利用者のICも別途取得する必要がある • 医療者と患者、施設職員と利用者、上司と部下 は対等な関係でない →強制がかからないよう配慮が必要 ③行政との関係 • 市役所で住民基本台帳を閲覧して研 究データを集める • 保健所から住民健診のデータをもら って研究する • 自治体の高齢者向けプログラムに協 力し、プログラム改善のために実施し たアンケートをデータにして研究を行う 留意点 • 研究は、業務としての住民サービスとは異なる • 業務で得たデータは、業務のために用いるの が本来の目的。研究利用は目的外使用になる • データの管理責任は行政にある →研究利用の許可を管理責任者から得る必要。 自治体等が定めた手続きに従う →個人情報であれば、研究対象となる住民のIC も別途取得する必要がある (実際には管理責任者のほうが連結不可能匿 名化して提供することが多い) ④著作権の問題 • 学生が書いた作文をそのまま論文に 転載する • ウェブサイト上の文章をコピー&ペー ストして論文の一部の文章に使う • 以前出版社の小雑誌のコラムに書い た記事を手直しして論文の一章にする • 市の委員として執筆した報告書を、 著書の部分に繰り入れる 留意点 • 著作物の著作権(copyright)は本人にある →転載するには本人の許可が必要 *本人が自発的に放棄している場合は、放棄し たことが証明できなければならない • コピー&ペースト自体が違法なわけではない →転記範囲と出典を明示すれば「引用」(適法) 明示しなければ「盗用(剽窃)」(違法) • 自分が執筆し発表済みの文章を二次利用し た場合はそのことを明記すべき *著作権を委譲した場合は委譲先の許可を得る ⑤肖像権の問題 • 実習風景の写真を論文に図版として 掲載する • 相談所でグループワークやソーシャ ルスキルトレーニングを振り返りのた めに記録した映像から、静止画を取 り出して論文に掲載する • 断酒会を見学し撮影した写真を論文 に載せる 留意点 • 肖像を撮影されない権利および肖像の流布を コントロールする権利は本人にある →掲載するには本人の許可が必要 • 撮影する前に許可を得ておいたほうがよい • 本人はもちろんのこと、管理責任者の許可も 得ておく必要がある • ぼかし(モザイク)をかけるかどうかも本人の 希望を確認する *許可を得ていない場合、ぼかしをかけさえす れば掲載してよいというわけではない