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やムンダ人の祖先をはじめとする原オース ト ロアジア人が
や ム ン ダ人 の 祖 先 を は じめ とす る原 オ ー ス トロア ジア人 が ジ ャポ ニ カ を イ ン ドに も た ら した こ とは ほぼ 間違 いな か ろ う。 そ の前提 を さ らに広 げ る と、稲 を栽 培 しは じめ た人 々 は原 オー ス ト ロア ジア 人 で あ る可 能性 も十 分 考 え られ る ので は なか ろ うか 。 こ う した 前提 にた て ば 、 中尾 の い う照 葉 樹 林 文 化 に と って オ ー ス トロ ア ジ ア諸語 の話 し手 は非常 に重 要 な 意 味 を も って く る は ず で あ る13。 筆 者 は照 葉 樹 林 とい う生 態 系 に基 づ く文 化論 に決 して 反対 して い るわ け で は な い 。 しか し、 時 闇 軸 と そ の文 化 の担 い手 を考 え な い と、 文 化 の拡 散 は同 じ生 態 系 で しか起 こ らな い とい った、 完 全 な 環 境 決 定 論 に 陥 って しま う危 険 性 が あ る。 時 間 軸 と担 い手 とい う問 題 は第 三 章 を譲 る と して 、 こ こで は生 態 系 に絞 って さ らに論 を進 め て い きた い 。 4.3.サ ラソ ウ ジュ林 文 化 にっ いて そ れ で は 、 ム ン ダ 文 化 を 生 態 系 を 考 慮 し て 、 名 づ け る とす れ ば ど う な る で あ ろ うか 。 す で に 、 チ ョター ナ ー グ プ ル高 原 の森 林 を あ げ たが 、 こ う した樹 木 の な か で 、 ム ンダ人 を は じめ とす る 少 数 民 族 た ち が も っ と も依 存 して い る 木 が あ る 。 そ れ は サ ラ ソ ウ ジ ュ で 、 い わ ば サ ラ ソ ウ ジ ュ 林 文 化 と も い うべ き 文 化 が こ の チ ョ タ ー ナ ー グ プ ル 高 原 を 中 心 に 広 が っ て い る 。 サ ラ ソ ウ ジ ュ は 学 名 を5加rθaroわ πs画Gaertn.と い い 、 植 物 学 上 、 フ タ バ ガ キ科 サ ラ ノ キ 属 に 分 類 さ れ 、 熱 帯 雨 林 に 広 が る ラ ワ ン材 と な る樹 木 の 仲 間 で あ る 。 中 部 イ ン ドか ら ネ パ ー ル な い し ア ッサ ム の ヒ マ ラ ヤ 山 麓 地 方 に か け て 広 く分 布 す る 。 北 は 北 緯32度 マ ラ ヤ の 標 高1500mに まで 、高 さで は ヒ ま で み られ 、 フ タ バ ガ キ 科 と し て は 最 も高 緯 度 に ま で 分 布 し、 寒 さ に 耐 え る 。 中尾 に よ る と、 「ぼ く は ヒマ ラ ヤ で 照 葉 樹 林 に 入 っ た 。 低 い と こ ろ か らの ぼ っ て い く と 、 初 め サ ラ ソ ウ ジ ュが はえ て い る熱 帯 林 が あ るが 、 だん だ ん 涼 し く な って 照 葉 樹 林 帯 に 入 る 」 (上 山 編1969:77)と あ り 、 ヒ マ ラ ヤ で は こ の サ ラ ソ ウ ジ ュ 林 と照 葉 樹 林 帯 は接 し て い る 。 で は 、 この サ ラ ソ ウ ジュが いか に ム ンダ人 に とって 重 要 なの か 、 み て い こ う。 (1)ム ン ダ 人 が 最 も よ く使 用 す る の は サ ラ ソ ウ ジ ュ の 葉 で あ る 。sakamladと トギ 餅 に 利 用 す る の は2.1.で puru?やka}u?と す で に述 べ た 。 む し ろ 、 そ れ よ り も利 用 頻 度 が 高 い の は 呼 ば れ る 葉 器 で あ る14。puru?は (a)Hipuru?酒(iii)を 呼 ばれ る シ その用 途 に よ って 、次 の四 種 が あ る。 飲 む た め の:葉器 で 、 一 枚 葉 を 使 用 。 葉 の 両 端 を こ ぼ れ な い よ う に お って 、船 の形 に す る。 (b)utupuru?お か ず(utu)用 の 器 で 、 四 枚 の葉 を使 い、 水 が 入 っ て も こぼ れ な い よ うに な っ て い る。 (c)ka‡u?puru?二 枚 の 葉 で 四 角形 に 作 る。 儀 礼 の際 に、 油 や ター メ リ ック 、 米 な ど を 入 れ る。 (d)boOgapuru?別 名cadlompuru?と よ う に 長 い 。 儀 礼(booga)の 一方 、kalu?は6枚 い い 、 一 枚 の 葉 の 片 方 が 尻 尾(cadlom)が はえた 際 、酒 を入 れ るた め に 作 る。 以 上 の 葉 を 使 い 、 お も に ご飯 用 に 使 う。 ま た 、 座 る た め の ゴ ザ の 代 わ り や 壺 や 瓶 の 蓋 と して 使 う場 合 に は 、patriと 呼 ぶ 。patriの 名 称 の違 い は用 途 に よ る。 一103一 作 り方 はkalu?と 全 く同 じで 、 (2)サ ラ ソ ウ ジ ュ の 茎 は 歯 を 磨 く(karkad)の に 使 用 す る 。 使 用 す る の は ま だ 青 い 枝 で 、30㎝ ぐ ら い の 枝 の 端 を 噛 ん で 柔 らか く し な が ら 、 歯 を 擦 る 。 歯 が き れ い に な っ た ら 、 今 度 は 二 っ に 折 って 、 くの字 に な っ た枝 で 舌 を擦 る 。 (3)木 材 と し て 、 犂 を 作 る ば か り で は な く 、 家 を 作 る と き に も必 要 と な る 。 ま ず 、 柱 (kunta)に 使 用 す る ほ か 、 犂(danra)や 木 材araka‡a)に た る き(屋 根 板 を 受 け る た め に 棟 木 か ら軒 に 渡 し た も 使 用 す る 。 た だ し、 瓦(keco?)を 支 え る 木(bata)は お も に 竹(mad) を使 用 す る 。 (4)な ん と い っ て も サ ラ ソ ウ ジ ュ の 最 大 の 意 味 は 花(baa)に あ る。 サ ラ ソ ウ ジ ュ の花 が 咲 く三 月 一四 月 頃 に 、Baa《 花 祭 り》 が 行 わ れ る。 花 祭 り は ム ン ダ人 最 大 の祭 りで 、主 な 目的 は先 祖 供 養 で あ るが 、場 所 に よ って は雨 乞儀 礼 も行 わ れ る。 ヒ ン ドゥー 教 の祭 り 「ホ リー 」 は ヒ ン ド ゥー 暦 フ ァー グ ン月 の満 月 に行 わ れ るが 、 ム ンダの 花 祭 り は そ の フ ァ ー グ ン月 の満 月 が か け、 チ ャイ トラ月 の 新 月 と な る 日か ら満 月 に な る間 に 、 そ れ ぞ れ の 村 々 で ば らば らに 行 わ れ る 。 なぜ ば らば らに行 うか と い うと、 い ろん な村 の 花 祭 り に参 加 出 来 る よ うに と い う配 慮 か らだ とい う。 こ の 花 祭 りの記 述 は ま た の機 会 に譲 る と して 、花 が 大 き な 意 味 を持 って い る こ とだ け を強 調 して お きた い 。 な お 花 が実 を 結 ぶ と、 この実 を食 べ る こ とはす で に述 べ た 。 以 上 、 ム ンダ人 に とっ て 、 サ ラ ソ ウ ジ ュが い か に 重 要 な意 味 を持 っ か につ い て 、簡 単 に述 べ た が 、 と く に サ ラ ソ ウ ジ ュの花 を祭 る 「花 祭 り」 は チ ョタ ー ナ ー グ 花祭 り用に切 り落 として いるサラ ソウ ジュの花(sarjombaa) プ ル地 方 に住 む少 数 民 族 の共 通 の祭 りで あ る。 この サ ラ ソ ウ ジ ュ林 文 化 が どれ だ けの広 が りを 持 って い る の か は今 後 の課 題 と し、 こ こで はサ ラ ソ ウ ジ ュ林 と照 葉 樹 林 帯 が ど う関連 づ け られ るの か にっ い て 、述 べ て お こ う。 す で に述 べ た よ うに照 葉 樹 林 帯 とサ ラ ソ ウ ジ ュ林 は ヒマ ラヤ で は隣接 して い る。上 山 編(19 69:60-61)の 世 界 の生 態 気 候 区 分 図 に よ る と、 イ ン ド亜 大 陸 は南 イ ン ドの西 ガー ッ山 脈 や ヒ マ ラヤ 山 脈 付 近 を除 け ば 、 サ バ ンナ ・ステ ップ と一 括 され て い る。 と こ ろが 筆 者 の 住 ん で い た 、 サ ラ ソ ウ ジ ュ林 の広 が る ラー ンチ ー辺 りで は ど う も違 うの で はな いか とっ ね つ ね 感 じて い た 。 そ こで 原 点 に戻 って 、上 山編(1969:55)に 掲 載 され て い る川喜 田 ・吉 良 の乾 湿指 数 を 算 出 し、 果 して サ バ ンナ に 当 て は ま るの か検 討 して み た 。 す で に 、最 初 に月 別 の平 均 最 高 気 温 と平 均 最 低 気温 、 そ して平 均 年 聞 降 水 量 を 提 示 した が 、 ま ず 「暖 か さ の指 数 」 を算 出 して み る と224.2と な る。 な お 、 算 出 方 法 は上 山 編(1969:54)を 参 照 。 そ して乾 湿 指 数 に っ い て 、 暖 か さの指 数 が100を 越 え る場 合 の算 出法 は2× /「 暖 か さ の指 数 」+140で あ るか ら、 計 算 す る と8.8と な る 。指 数 値 が10-7は 「年 降 水 量 」 森 林 、7-5 はサ バ ンナ とあ るか ら、 この数 字 で はサ バ ンナ に は当 て は ま らな い と い う こ と にな る。 照 葉 樹 一104一 林 の 領 域 は10.0以 上 で 、7.0-10.0は 暖 帯 落 葉 樹 林 領 域 と規 定 さ れ て い る(上 山 編1969:73)。 っ ま り 、 チ ョ タ ー ナ ー グ プ ル 地 方 は こ の 乾 湿 指 数 で は 暖 帯 落 葉 樹 林 に 属 し て お り 、 イ ン ドを サ バ ン ナ ・ス テ ッ プ と一 括 して い る の が 問 題 な の で あ る15。 そ こ で イ ン ドに っ い て 、 よ り専 門 的 な 自然 植 生 型 を み て み よ う 。Schwartzberg(ed)(1992: 6)に よ る と、 次 の よ うな分 け られ て い る。 A.準 湿 潤 熱 帯 型(MoistTropical) A-1湿 潤 常 緑 樹 林 帯(WetEvergreenForest) A-2準 湿 潤 半 常 緑 樹 林 帯(MoistSemi-evergreenForest) A-3準 湿 潤 落 葉 樹 林 帯(MoistDeciduousForest) A-4海 岸 樹 林 帯(Tidal:Forest) B.乾 燥 亜 熱 帯 ・熱 帯 型(DryTropicalandSub-Tropica1) B-1常 緑 樹 林 帯(EvergreenForest) B-2落 葉 樹 林 帯(DeciduousForest) B-3イ バ ラ 樹 林 帯(ThornForest) B-4イ バ ラ ヤ ブ 帯(ThornScrubsandGrasses) C.山 岳 亜 熱 帯 型(MontaneSub-Tropica1) C-1湿 潤 丘 陵 樹 林 帯(WetHillForest) C-2準 湿 潤 丘 陵 樹 林 帯(MoistHillForest) C-3乾 燥 常 緑 樹 林 帯(DryEvergreenForest) D.山 岳 温 和 型(MontaneTemperate) D-1湿 潤 ・準 湿 潤 混 合 樹 樹 林 帯(WetandMoistMixedForest) D・ 一2乾 燥 混 合 樹 林 帯(DryMixed:Forest) E.温 和 ス テ ッ プ ・砂 漠 型(TemperateSteppeandDesert) F.高 山 型(Alpine) この分 布 を み る と、次 頁 の よ うに な る 。 一105一 イ ン ド亜 大 陸 の 自然 植 生 型 図 。 出 典 はSchwarzberged.(1992:6)に 一106一 よ る。 これ に 、佐 々木(1982:14)の そ れ にD-1と 照 葉 樹 林 帯 の 図 を重 ね る と 、 照 葉 樹 林 帯 はC-1とC-2、 ほ ぼ一 致 す る 。 そ して 、 ム ン ダ人 を は じめ とす る少 数 民 族 が多 数 住 む チ ョタ ー ナ ー グ プ ル高 原 や サ ンタ ル ・パ ル ガ ナ地 方 はA-3に られ るC-2と 属 し、 ネパ ー ル南 部 で照 葉 樹 林 帯 と考 え 隣接 して い るの で あ る。筆 者 が イ ン ドを サ バ ンナ ・ス テ ップ と一 括 して い る こ とへ の疑 問 は これ で あ る程 度 解 決 す るよ うに思 わ れ る。 っ ま り、 この こ とか ら次 の ことが い え る。 サ ラ ソ ウ ジ ュは植 生 の上 か らみ る と、川 喜 田 ・吉 良 の算 出方 法 に した が え ば暖 帯 落 葉 樹 林 帯 に属 し、上 の分 類 で は少 数:民族 が 多 く住 む地 域 に広 が るA-3に 対 応 し、 しか も照 葉 樹 林 帯 に 隣 接 して い る。 そ して筆 者 が サ ラ ソ ウ ジ ュ林文 化 と名 づ け た、ム ンダ人 を は じめ とす る チ ョター ナ ー グ プ ル や サ ン タル ・パ ル ガ ナ地 方 に住 む少 数 民 族 の文 化 は稲 作 技 術 に っ い て も、歌 垣 な ど の習 俗 や儀 礼 に つ い て も、照 葉 樹 林 文 化 と多 くの類 似点 を み い だ す こ とが で きる の で あ る 。 す な わ ち 、 イ ン ドに は稲 作 文 化 はな く麦 作 文 化 を 基盤 とす る とい う主 張 が 、 イ ン ドの基 層 文 化 で あ る ム ン ダ稲 作 文 化 に は 当 て は ま らな か った よ うに 、生 態 系 に っ い て も、 イ ン ドを サ バ ンナ ・ ス テ ップ帯 と一 括 して い る こ とに 問題 が あ る こ とが よ くわ か った と思 う。 この こ とは サ ラ ソ ウ ジ ュ林 文 化 と照 葉 樹 林 文 化 が単 に 歴 史 的 に 、 関 連 を 持 って い るば か りで はな く、生 態 系 を考 え る上 で も、 隣接 した植 生 帯 に属 して い る こ とを 示 し、 今 後 の 研 究 に と って重 要 な意 義 を も って く る とい わ ざ るを得 な い 。 4.4.歌 垣 と して の チ ョウ 。ダ ンス さ て 、 こ こま で は農 耕 や 食事 と直 接 関連 の あ る文 化 事 項 にっ いて み て きた 。 こ う した事 項 は そ の文 化 を 生 み 出 す環 境 と深 く関 わ って い る ので 、 生 態 系 を 考 慮 した 文 化論 が受 け 入 れ られ る の は よ く理 解 で き る。 と こ ろが 、 照 葉 樹林 文 化 の 共 通 要 素 の 中 に は、 神話 や 伝説 とい った生 態 系 とい う よ りも、 そ の 文 化 の 担 い手 と深 く関 わ る文 化 事 項 が あ る。 た とえ ば 、死 体 化 生 神 話 や 洪水 神 話 、そ して 歌垣 や 夜 狽 いで あ る(上 山 ・佐 々木 ・中 尾 編1976:218-227、 佐 々木1982:165201)。 照 葉 樹 林 文 化 とオ ー ス トロア ジア語 族 が 非常 に密 接 に関 係 が あ る こ と はす で に述 べ て きた が 、 この オ ー ス トロ ア ジア語 族 に属 す る ム ンダ人 に も こ う した 歌 垣 類 似 の 文化 が あ る。 そ れ が チ ョウ ・ダ ンスで あ る。 チ ョウ ・ダ ンス はす で に峰 岸(1981)、 小 西(1985、1986)、 宮 尾(1984a、1984b、1987) な どに よ って 日本 に も紹 介 され て い る。1981年 に は国 際 交 流基金 の招 きで来 日 し、日本 で もチ ョ ウ ・ダ ンスが 演 じ られ た こ と もあ る し、1991年 に民 族 学 博 物 館 が 主 催 した大 イ ン ド展 に お いて もチ ョウ ・ダ ンスが 披 露 され て い る。 チ ョ ウ ・ダ ンス と一 口 に い って も、地 域 に よ って か な り こ とな り、普 通 次 の三 種 が よ く知 られて い る。 (1)プ ル リア ・チ ョウ 。西 ベ ンガ ル州 プ ル リア県 を 中心 とす る チ ョウで 、 激 しい動 きが 特 徴 で あ る。 (2)セ ライ ケ ラ ・チ ョ ウ。 オ リ ッサ州 セ ライ ケ ラの マハ ー ラー ジ ャーが 奨 励 した チ ョウ で 、 優 雅 な 舞 が特 徴 で あ る 。 (3)マ ユ ー ル バ ン ジ ・チ ョ ウ。 オ リ ッサ州 マ ユ ー ルバ ン ジ県 を中 心 と したチ ョウで 、 プ ル リ 一107一