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6.2MB - 医療関係者の皆様へ|鳥居薬品

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6.2MB - 医療関係者の皆様へ|鳥居薬品
2013.11.1
8
TOR
『皮膚の不思議大発見!
知ればガッテン かゆみの科学』
Hisamitsu
SATO
第16回日本腎不全看護学会学術集会・総会 スイーツセミナー
座長:佐藤
Kenzo
TAKAHASHI
久光 先生
(特定医療法人 衆済会 増子記念病院 看護部教育学術担当 メディカルリスクマネージメント担当 参与)
講演1 皮膚の進化; 38億年の歴史
∼水中から陸上へ 我々の皮膚はどう進化したのか∼
演者:高橋
健造
先生(琉球大学医学部 皮膚科 准教授)
Naoko
TAKAHASHI
講演2 透析患者さんのかゆみとは?
∼皮膚の乾燥から内因性オピオイドの関与まで∼
演者:高橋
はじ め に
直子
先生(特定医療法人 あかね会 大町土谷クリニック 院長)
佐藤 久光
先生(特定医療法人 衆済会 増子記念病院 看護部教育学術担当 メディカルリスクマネージメント担当 参与)
Hisamitsu SATO
皮 膚がどのように進化してきたのかについて、
とその保湿がいかに重要かを考えるヒントにな
んでいても、
「そもそも皮 膚がなぜ 乾 燥するの
高橋健造先生に解説していただいた。水中から
ればと期待している。
か」「ヒトの皮 膚は他の生物とどう違うのか」 に
陸上へ、魚類から哺乳類・ヒトへと進化する中で、
次に、透析患者さんのかゆみの原因とその対
ついてはあまり考えたことがないのではないだ
環境に適応するためには皮膚が大きな役割を果
策、かゆみ治療の実践例について、高橋直子先生
ろうか。
たしており、水中とは異なる乾燥した陸上環境の
にご講演いただいた。先生ご自身が推進されて
このセミナーではまず、地球上に生命が誕生し
中で皮 膚の 働きを保つためには保 湿も重 要と
いるチーム医療による先進的な取り組みが、これ
てから現代に至るまでの38億年の歴史の中で、
なった。進化の足跡をたどることによって、皮 膚
からのかゆみ治療の指 針となれば幸いである。
日頃から透析患者さんのスキンケアに取り組
講演1 「皮膚の進化;38億年の歴史 ∼水中から陸上へ 我々の皮膚はどう進化したのか∼ 」 高橋 健造
皮膚の進化が
ヒトへの進化を可能にした
先生(琉球大学医学部
皮膚科 准教授)
Kenzo TAKAHASHI
達の祖先はそれらの試練を乗り越え、環境の変
や形態を獲得したことで、現在の私達のような
化に適応しながら進化を続けてきた
(表1)
。
ヒトへの進化が可能となったのである。
5.4億年前に誕生した魚類は、やがて陸上へと
地球上に生物が誕生したのは、約38億年前だ
進出して両生類となり、爬虫類を経て哺乳類へ
と言われている。38億年の間には、地球全体の
と進化した(図1)。そして500 ∼ 600万年前に、
ヒトの皮膚がもつ多彩な機能
凍結や隕石の衝突、大規模な噴火によるCO2濃
ようやくヒトが誕生した。実は、このような進化の
私達の皮膚は非常に多くの機能をもっている。
度の急 上昇といった過 酷な環 境の変化が起こ
鍵のひとつとなったのが、皮膚の進化であった。
私達をとりまく環境には、細菌やウイルスなどの
り、生物の大絶滅が幾度も起こった。しかし、私
環境の変化に合わせて、皮膚がさまざまな機能
病原体、物理的・化学的侵襲だけでなく、紫外線、
表1
生命誕生の歴史
図1
宇宙の誕生:
138億年前
地球の誕生:
46億年前
生物の誕生:
38-40億年前
魚類の誕生: 5.4億年前
植物が陸上へ上がる:
4億年前
両生類の誕生:
3.7-4.1億年前
爬虫類の出現:
3億年前
哺乳類・鳥類の誕生: 2億年前
ヒトの誕生:
500- 600万年前
出アフリカ(人種の派生)
: 5-6万年前
皮膚:最古からの、しかし常に新しい臓器
爬虫類
魚類
両生類
哺乳類
鳥類
I
I
Vol.
2013 年11月16日
(土)パシフィコ横浜会議センター 3階第2会場
YOKOHA
MA
6
哺乳類(類人猿)
魚類から両生類、爬虫類:恐竜、さらには人類のような大型の哺乳類、
霊長類と進化するにつれ、皮膚の機能や形態は、動的に比較的すばやく変化してきた。
ヒトの進化はより急速になっている。
記載されている薬剤の使用にあたっては添付文書をご参照ください。
I
I
2013.11.1
YOKOHA
MA
6
TOR
暑さや寒さ、乾燥など、さまざまな問題が 存 在
しかし、爬虫類の皮膚は、ヒトの皮膚の機能に
脂膜の形成・皮下脂肪の発達は、ほぼ同時に達
するが、皮膚は、細菌やウイルスなどの病原体や
近付いているものの、毛包や汗腺、脂腺などの付
成されたと考えられる。なぜなら、身体を覆って
物理的・化学的侵襲には免疫や物理的な頑丈さ
属器は全く認められない。これらの付属器は、哺
いた体毛を失った状 態で、気温の変化や乾燥、
という
「バリア機能」
、紫外線にはメラニン合成、
乳類、さらにヒトへと進化する過程で獲得され
紫外線などにさらされることは、生物にとって致
気温変化や乾燥には汗や皮脂の分泌と、あらゆ
たものである。
命的だったはずだからである。
る機能を駆使してこれらに対抗し、身体を守って
いるのである。
さらに、知覚作用や紫外線によるビタミンD3の
合成作用など、皮膚のもつ多彩な機能は全て生物
が進化する過程で獲得されたものなのである。
こうした皮膚の変化は、ヒトの行動様式にもさ
まざまな影響を与えた。エクリン汗腺の発達で汗
「中枢神経系」、
「免疫系」そして
「皮膚」の進化によってヒトへ
をかけるようになったことで体温調節機能が向
上し、ヒトはスピードは遅いものの長距離を走っ
猿人(アウストラロピテクス)から現代人(ホモ
て移動できるようになった。また、赤ん坊が掴め
サピエンス)になる際には、どのような変化が起
る体毛がなくなったために、母親は赤ん坊をずっ
こったのだろうか。類人猿であるチンパンジーと
と両手で抱いて世話をしなければならなくなり、
ヒトの遺伝子(ゲノム)を比較すると、
「中枢神経
母親の育児を援助するために家族という単位が
機能」、
「免疫」
そして
「皮膚」
の遺伝子が最も大き
でき、社会性が 獲得されたと考えられている3)。
太古の生物にも体の内と外を分けるという意味
く変化したことがわかる 。
こうして、アフリカで誕生したホモサピエンス
での
「皮膚」
は存在したが、現在の皮膚とは構造も
たとえば、大脳の発達に関連したのは、MYH16
は、数 万年の間に地球 上に広く分布するように
機能も全く異なっていた。最初の脊椎動物である
という食物を噛み砕くための顎の筋肉(咬合筋)
なった。地球上では緯度によって紫外線の強さ
魚類が進化した時期には、眼や心臓、消化管など
の遺伝子であった 2 )。この遺伝子に変異が起こっ
が異なるため、紫外線から身を守りつつ、骨や歯
多くの臓器の構造が確立された。これらの臓器は、
たために、ヒトは頑丈な咬合筋を失い、硬い食
の形成に必要なビタミンD3を合成し、さらに葉
その後、高性能にはなったものの、基本的な機能
物を噛み砕くことはできなくなった。しかし、
そ
酸の代謝のバランスがちょうど良い肌の色は、住
には大きな変化はない。ただし皮膚は違う。魚類
の代わりに筋肉に阻害されずに頭蓋骨を拡大す
む場所によって異なる。このようにして、さまざ
と哺乳類の皮膚を比較すると、構造はもちろんの
ることが 可能となり、大脳を大きく発達させる
まな肌の色、すなわち人種が生み出された。
こと、機能そのものが全く異なることがわかる。
ことができたのである。
環境の変化とともに
構造や機能が進化した皮膚
1)
水中で生活する魚類の皮膚
(鱗)
の役割は、浸
透圧や水圧の変化から体内を保護するという、
シンプルなものであった。ところが、水中から陸
上への進出という環境の劇的な変化によって、生
皮膚の細胞は角化の過程で
構造や機能を変化させていく
「裸のサル」は
肌の色と皮脂膜を身につけた
こうして進化してきたヒトの皮膚は、常に分裂
物は皮膚の機能や形態を大胆かつ速やかに進化
では、サルからヒトへの進化の過程で、皮膚で
増殖と分化を繰り返している。皮膚の断面をみる
させる必要があった。陸上で生活するためには、
は何が起こったのだろうか。ヒトの皮膚の特殊性
と、一番内側の基底層から外側に向かって有棘
乾燥や気候の変化、紫外線に耐えなければなら
は、一言で言えば「裸のサル」になったこと、つま
層、顆粒層、角層へと表皮角化細胞
(ケラチノサ
ない。特に、水中から陸上に出て、皮膚が乾燥す
り、体毛が消失・萎 縮したことである
(図3)
。さ
イト)
が分化していき、約28日で角化して脱落す
るようになったことは重大な問題であった。水中
らに、眉毛の出現、エクリン汗腺の発達、アポク
る。見かけ上は、どの層のケラチノサイトも同じ
から出たことで浮力を失ったため、自分の重さを
リン腺・脂腺の萎 縮、皮下脂肪の獲得、皮 膚色
ようにみえるが、実はその構造や機能は角化に
支えられるだけの皮 膚の強 度も必要となった。
の獲得などが、ヒトの皮膚ならではの特徴と言え
伴って動的に変化している。これは、他の細胞や
陸上で生き抜くためには、これまでの皮膚ではな
る。チンパンジーの皮膚と比較すると、ヒトの皮
組織にはない、皮膚だけにみられる特徴である。
く、新たな役割も果たせる進化した皮膚が必要
膚ではほぼ水分のみを含む汗を分泌するエクリ
たとえば、有棘層において、ケラチノサイトは、
不可欠だったのである
(図2)。
ン汗腺が発達し、脂質・タンパク質・糖などを含
ケラチンとデスモソームからなる細胞骨格により、
水中から陸上へ、魚類から両生類、爬虫類へ
む汗を分泌するアポクリン腺や毛包は消失・矮
自分の重さに耐えることのできるような皮膚の強
と進化する過程で皮膚の乾燥や気温の変化、紫
小化していることがわかる
(図3)
。ヒトではチン
さと柔軟性を生み出している。そのおかげで、足
外線に耐えうる能力は格段に向上した。ジュラ紀
パンジーよりも皮下脂肪が多く、メラニン色素も
の裏には数十∼数百kg
(運動時)
の加重が負荷さ
の生物の主役である爬虫類
(恐竜)
は30∼ 40年
発達している。さらに、ヒトの皮膚表面は、汗と
れるが、皮膚が破綻することはないのである。も
くらいの寿命を持っていたとされ、体重も大きく
皮脂から作られる皮脂膜で覆われて、うるおい
し、有棘層のケラチンの発現に先天的な異常が
なっていたため、長い寿命の間の気候の変化に
が保たれている。
あれば、物理的な刺激で容易に表皮細胞が破綻
対応し、かつ自分の体を支えるために皮膚の強
ヒトの皮 膚の進化の中で、体毛の消失と、汗
し水胞が生じる先天性水疱症などを発症する。
度はかなり増していたと考えられる。
腺の発達・メラニン色素による皮膚色の獲得・皮
また、顆粒層にはタイト結合というファスナー
図2 脊椎動物の皮膚の進化
図3 ヒトの皮膚の特殊性
ヒトの皮膚の特徴
魚類から大型の陸棲の動物へ
●
●
眉毛(まゆげ)の出現
体毛の消失・萎縮
●
●
エクリン汗腺の発達
アポクリン腺・脂腺の萎縮
チンパンジーの皮膚 体表の毛包
魚類の皮膚(鱗)は、
海水の浸透圧や、水圧の変化から
体内を保護するのが、
一義的な役割である。
自重・物理的外力
乾燥した環境・紫外線
長い寿命の間の気候の変化、
体内を保護する機能
●
●
皮下脂肪の獲得
皮膚色の獲得
エクリン汗腺
ヒトの皮膚 型の強固な結合が存在する。これが外界と生体
ルギー性疾患であると理解されてきたが、最近
よりも女性で低い傾向があり、成人では中高年
内の境界を形作り、皮膚のバリア機能の要となっ
ではドライスキンによる皮膚のバリア機能破綻に
になると減少していく(図5)5)。さらに、皮 脂 量
ている。バリア機能は体外からアレルゲンや病
よっても引き起こされることが明らかになってお
は季節や年齢だけでなく、部位によっても大きく
原体などが侵入するのを防ぐと同時に、体内か
り、その重要な因子として、顆粒層において皮膚
異なる。皮脂腺は毛包に向かって開いているの
ら血漿成分が漏れ出すのを防いでいる。
の保湿に重要な役割を持つフィラグリンの関与
で、腕や手・脚など毛穴の少ない部位の皮膚は
が注目されている。
皮脂が非常に少ない。
フィラグリンは、皮膚を構成するケラチン線維
体内の水分量も、胎児では90%であるのに対
を束ねる糊のような蛋白で、水分を皮膚の表層に
して、出生後は80%になり、20歳では75%、高
皮膚のバリア機能の破綻が
アレルギーを引き起こす
保持する天然保湿因子として働く。このフィラグ
齢 者では60%にまで減少する。これに伴って、
皮膚のバリア機能が破綻すると、外界からアレ
リンの量が減少すると、角質の天然保湿因子が不
皮膚もみずみずしい状態から乾燥した状態に変
ルゲンが容易に体内に侵入し、樹状細胞が活性化
足して皮膚が乾燥してしまう。すると、皮膚のバ
化してしまう。
されてアトピー性皮膚炎や金属アレルギーが悪化
リア機能が低下するためにアレルゲンが体内に
このように、ヒトの皮膚は老化とともに皮脂や
する。
また最近では、バリア機能が破綻した皮膚か
侵入して、アトピー性皮膚炎が発症するのである。
水分が欠乏し、うるおいが失われていく。そのた
ら次々とアレルゲンが侵入して感作されることで、
アトピー性皮膚炎の患者では一定の割合でこの
め、特に皮脂が少なく乾燥しやすい腕や脚には、
皮膚アレルギーだけでなく、全身性のアレルギーに
フィラグリン遺伝子の異常がみられ、さらにアト
老人性乾皮症による皮 脂欠 乏性湿疹や貨幣状
も繋がると考えられている
(図4)
。皮膚から侵入し
ピー性皮膚炎の患者のほぼすべてでフィラグリン
湿疹などが発症する
(図6)
。また、手掌や爪の周
たアレルゲン感作で全身性のアレルギーを発症し
蛋白が低下していることが明らかになっている。
りには毛包がなく皮脂に乏しいため、看護師の
た例として、小麦を加水分解した成分を含む石鹸
最近では、フィラグリンを増加させる化合物も
職業病ともいえる手湿疹が起こりやすいのであ
による小麦アレルギーや、アクセサリーなどに含ま
発見され、アトピー性皮膚炎の新たな治療薬と
る。口唇や肛門などの粘膜も皮脂に乏しく、湿
れるコバルトに感作されたことによるビタミンB12
して今後の研究に期待が高まっている 。
疹が起こりやすい。現代では温水洗浄機能付き
4)
内服時の薬疹、外用抗生剤感作による点滴抗生
便 座 の 普及によって、洗いすぎが 原 因の「ウォ
剤でのアナフィラキシーなどが報告されている。
シュレット皮膚炎」
などが増加している。
老化で失われる
皮膚のうるおいには、保湿を
このように、皮膚は免疫反応の場としても非常
に重要であり、そのバリア機能の破綻がさまざ
600万年前に猿人から現代人への進化の過程
で獲得した皮膚の特徴である、うるおいや色調、
まなアレルギー疾患の原因となることが明らか
バリア機能を維持するためには、皮膚のうるお
キメ、柔らかさは、老化とともに失われていく
(図
になってきた。
いが大切である。皮膚のうるおいは皮脂と汗で
7)
。これらを補って皮膚の健やかさを保つため
作られる皮脂膜によって保たれている。皮脂膜を
には、保湿が非常に重要なのである。
生み出すもととなる皮脂腺や汗腺、毛包などの皮
フィラグリンの異常によるドライ
スキンでアトピー性皮膚炎を発症
膚の付属器の発生は一生に一度、胎生期にしか
起こらず、その数は一生変動しないため、成長に
皮膚のバリア機能の破綻を起こす疾患として
伴って体表面積が大きくなると、その密度は乳幼
有名なアトピー性皮膚炎は、これまで免疫・アレ
児期に比べて成人では低下する。皮脂量は、男性
引用文献
1)The Chimpanzee Sequencing and Analysis Consortium:
Nature 437
(7055)
: 69. 2005
2)Stedman HH. et al.: Nature 428
(6981)
: 415. 2004
3)Sutou S.: Genes Cells. 17
(4)
: 264. 2012
4)Otsuka A. et al.: J Allergy Clin Immunol. 133
(1)
: 139. 2014
5)Nazzaro-Porro M. et al.: J Invest Dermatol. 73
(1)
: 112. 1979
図6 老人性乾皮症の例
図4 皮膚のバリア機能の破綻による全身性アレルギーの惹起
アレルゲンの曝露
角層
表皮角化細胞
基底膜
アトピー性皮膚炎
金属アレルギー
ネザートン症候群
尋常性魚鱗癬でのバリアの低下
皮膚樹状細胞
(ランゲルハンス細胞など)
食物・気道
アレルギー/
アナフィラキシー
図7 ヒト皮膚における保湿の意義
図5 皮膚の構造とうるおいを保つ仕組み
皮膚の構造とうるおいを保つ仕組み
角質層
角質細胞のすき間
に水分を保持して
うるおいを保つ
皮脂膜
(μg/sq cm )
表皮
基底
細胞層
真皮
80
40
汗腺
気温が高くなる
と汗を出して
体温を調節する
皮下
脂肪
0
600 万年前に猿人から現代人へと進化の過程で獲得した
うるおい・色調・キメ・柔らかさ ・若く見えるなどは
老化で失われ、保湿が必要になってしまう
皮脂量
皮脂腺から分泌さ
れた皮脂は毛に
沿って流れ、皮膚の
表面に放出される
皮脂量の年齢差
2
120
皮脂腺
写真提供:高橋健造先生
男性
女性
2
3
4
5
6
8
1
5∼ 10
9 ∼14 5 ∼2 6 ∼3 6 ∼4 6 ∼5 6 ∼6 6 ∼7 0 ∼(歳)
5
5
5
5
5
5
Nazzaro-Porro M. et al.: J Invest Dermatol.73(1):112.1979
皮脂腺の大部分は、毛包に開口するので、毛のない皮膚は、皮脂が乏しい
皮脂の分泌量は、季節・年齢・部位により全く異なる
I
I
2013.11.1
YOKOHA
MA
6
TOR
講演2 「透析患者さんのかゆみとは?∼皮膚の乾燥から内因性オピオイドの関与まで∼ 」
高橋 直子
先生(特定医療法人
あかね会 大町土谷クリニック 院長)
Naoko TAKAHASHI
さまざまな原因で起こる透析そう痒症
物質の総称である。中枢神経組織には、主にβ-
なく良好に持続することが示された。
エンドルフィン、ダイノルフィン、エンケファリンの
白取分類による日中および夜間のかゆみスコア
透析そう痒症は、透析患者にみられる皮膚の
3種類の内因性オピオイドと、
μ(ミュー )、
κ(カッ
の推移をみても、日中のかゆみスコアの平均値は、
かゆみのうち、原因を特定できない、一次的な皮
パ)、
δ(デルタ)等の受容体が存在する。このうち、
投与前の3.4から、4週目には1.9と有意に低下し、
膚病変を呈さない
(掻破による二次的な湿疹化
かゆみに関係しているのはμ受容体とκ受容体で
104週目も1.9と良好であった
(それぞれp<0.001、
以外の皮疹を伴わない)
かゆみと定義される。透
あり、
β-エンドルフィンがμ受容体に結合すると
p<0.0005、対応のあるt検定)
。一方、夜間のかゆ
析そう痒症の主な原因としては、腎不全や透析に
かゆみが誘発され、ダイノルフィンがκ受容体に
みスコアの平均値は、投与前の2.1から、4週目以
由来する異常、皮膚そのものの異常、中枢神経
結合するとかゆみが抑制されると言われている。
降で低下傾向であったものの有意差は認められ
内のかゆみ制御の異常があげられる
(図8)。
透析患者ではオピオイドバランスがくずれ、
μ-オ
ず、104週目のみ1.2と有 意に低下した(p<0.05、
腎不全や透析に由来してかゆみを起こすのは、
ピオイド系が優位になっているためにかゆみが起
8)
。しかし、レミッチ®投与
対応のあるt検 定)
(図9)
尿毒 症性物質、二次性副甲状 腺機能亢進症や
こると考えられており、血液透析患者における既
前に夜間のかゆみスコアが3以上であった7名に
6)
それに伴う血清カルシウム
(Ca)
・リン
(P)
高値な
存治療で効果不十分なそう痒症には、選択的κ
ついて検討すると、夜間のかゆみスコアの平均値
どである。また、透析膜による補体活性化、EOG
受容体作動薬であるナルフラフィン塩酸塩
(以下
は投与前の3.1から投与開始後4週には有意に低
滅菌、ヘパリンなどの薬剤と、これらに関連した
が、かゆみ治療薬として用いられている。
レミッチ )
下し、投与後74週でも1.1であったことから(それぞ
アレルギー反応もかゆみを引き起こす。
レミッチ®は、中枢神経系にあるκ受容体を作
れp<0.005、対応のあるt検定)、レミッチ®は日中だ
動させることでかゆみを抑制すると考えられてい
けでなく、夜間においても中等度以上のかゆみを
®
る。また近年では、表皮や真皮、求心性C線維に
良好に改善することが示された。副作用 で最も多
もμおよびκ-オピオイド系が 存在することが明
かったのは不眠であり、8 名に認められた。レミッ
皮膚そのものの異常によるかゆみの原因とし
らかにされ、皮膚においてもレミッチ がκ-オピ
チ®投与中止となったのは3 名で、残りの5 名につ
ては、まず、角層水分量低下、発汗低下、皮脂腺
オイド系を優位にすることでかゆみを抑制してい
いては、透析日は透析終了後、非透析日は昼食後
分泌の低下などによる皮 膚の乾 燥があげられ
る可能性が示唆されている7)。
に投与時間を変更し、継続投与できた。注1)注2)
乾燥皮膚におけるかゆみ発現メカニズム
®
る。透析患者の表皮の水和量は健常人の8分の
※1 VAS:Visual Analogue Scale ※2 白取分類:白取の重症度判定基準
1と言われており、透析患者の多くは、乾燥によ
レミッチ®のかゆみ改善効果による
血液透析そう痒症治療への影響
る皮膚のバリア機能異常が生じている。
乾燥した皮膚では、ケラチノサイトにおいて神
経成長因子が強く発現し、かゆみを伝える神経
レミッチ®発売をきっかけに、当院では、3ステッ
であるC線維を伸長させ、神経の末端が表皮内、
プの血液透析そう痒症治療を試みた。かゆみ治療
かゆみによる不眠の解消により
治療満足度も向上
かゆみによる不眠の頻度は、レミッチ®投与前は
角層のすぐ 下まで侵入している。そのため、少し
のステップ1として、既存の透析そう痒症治療で
53.9%であったが、投与74週目以降には0%となり
の外部刺激によってもC線維が容易に刺激され
効果不十分な症例にレミッチ®を追加投与し、長期
8)
、レミッチ®は夜間のかゆみを改善すること
(図10)
てかゆみが引き起こされてしまう、かゆみ閾値が
使 用での有 効 性と安 全 性を検 討した8)。対 象は
で、かゆみによる不眠を減少させることが示された。
低下した状態になっている。
2009年5月、アンケート調査においてVAS ≧70
また、レミッチ®投与後すべての調査時期におい
さらに、かゆい部分をかくと、C線維神経終末か
(中等度)
以上のかゆみ
または白取分類 がスコア3
て、
69.2∼92.3%の患者が
「大変満足している」
また
ら、かゆみのメディエーターであるサブスタンスP
を訴え、レミッチ の 投与 を 希 望した 既 存 治 療
は
「満足している」
と回答しており、レミッチ®に対す
が遊離される。サブスタンスPは、C線維を興奮さ
で効果不十分な血液透析そう痒症の患者31名で
8)
。
る患者の治療満足度は高いと思われる
(図11)
せると同時に、マスト細胞やケラチノサイトから炎
あり、レミッチ®2.5μg/日を夕食 後に 投与した。
これらの結果からレミッチ®は、血液透析患者の
症性サイトカインやかゆみのメディエーターの遊離
入院などによる脱落を除き、104週間の継続
既存治療で効果不十分なかゆみに対して長期間
を引き起こし、かゆみを増悪させる。このように、
投与が 可能であった13名の結果を以下に示す。
安定した効果を示し、かゆみによる不眠を解消す
乾燥皮膚では、
かゆみの悪循環が形成されている。
VAS平均値は、投与前の63.8から投与開始2週
ることが可能であり、患者のQOL向上による予後
目には26.4と有意に低下した
(p<0.001、対応の
の改善が期待されると考える。
※1
※2
®
あるt 検 定)
。4週目以 降 もVAS平均 値は安 定し
オピオイドバランスの異常が
中枢神経内でかゆみを起こす
て推 移し、104週目は17.1であった
(p<0.0001、
中枢神経内のかゆみ制御には、内因性オピオ
果は投与開始後比較的すみやかに発現し、個々
イドが関与している。オピオイドとはモルヒネ様
の症例を確認したところ、季節に影響されること
®
①腎不全・透析に由来する異常
起痒物質
角層水分量低下
発汗低下
皮脂腺分泌低下
かゆみの
メディエーター
ヒスタミン、
サブスタンスP
インターロイキン1・2
トリプターゼ、TNF-α
高橋直子ほか : 中国腎不全研究会誌 22: 89, 2013
3.5
3.4
3.0
**
***
日中
***
***
2.5
2.0
***
***
1.9
.9
2.1
1.9
1.5
1.2
1.0
夜間
0.5
0.0
*
投与前
②皮膚そのものの異常
皮膚の乾燥
アレルギー反応
かゆみスコア
皮膚のC線維伸長
かゆみ閾値低下
皮膚の過敏性
透析膜による補体活性化
EOG滅菌
ヘパリンなどの薬剤
かゆみ
(Mean±SD、n=13)
*:p<0.05 **:p<0.001
***:p<0.0005 (対応のあるt 検定)
4.0
透析治療関連
尿毒症性物質
血清カルシウム・リン高値
二次性副甲状腺機能亢進症
内因性オピオイド
次に、ステップ2として保湿剤によるスキンケアは
図9 レミッチ 投与後の白取分類による日中・夜間のかゆみスコアの推移
図8 透析そう痒症の原因
③中枢神経内の
かゆみ制御の異常
レミッチ®のかゆみ改善効果による
既存治療薬の減量、中止への影響
対応のあるt検定)
。この結果から、レミッチ®の効
8
16
24
32
40
48
56
64
72
80
88
96 104(週)
高橋直子ほか : 透析会誌 46: 371, 2013
注1)
【用法及び用量】
通常、成人には、ナルフラフィン塩酸塩として1日1回2.5μgを夕食後又は就寝前に経口投与する。なお、症状に応じて増量することができるが、1日1回5μgを限度とする。
注2)
【使用上の注意】
2.重要な基本的注意
(1)
眠気、めまい等があらわれることがあるので、本剤投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作には従事させないよう注意すること。
継続しながら、ステップ1においてレミッチ®を投
適合性のよいダイアライザーを選択することも
から保湿剤にステロイド外用剤を併用する。いず
与した患者31名のうち、180週間長期投与が 可
必要である。
れの場合も、効果が得られたらステロイド外用剤
能であった6名を対象に、抗ヒスタミン薬や抗ア
当院のアンケート調査では、透析前
(1.9%)
と
のランクダウンや減量・中止を試みるが、保湿剤
レルギー薬など保湿剤以外の既存そう痒症治療
比べて透析中
(15.0%)
や透析後
(13.1%)
のかゆ
は継続する。保湿剤には皮膚のバリア機能を修
薬の減量・中止およびステロイド外用剤のランク
みが多かったことから、透析膜や回路と血液の
復し、表皮内まで伸長したC 線維を退縮させる効
ダウン・減量・中止の効果を確認した。当院では、
接触によって起こるアレルギー反応や、補体・サ
果があるため、継続することが重要である。
中止は内服薬、注射の順で行い、内服薬が2種類
イトカインの活性化もかゆみの原因と考えられ
以上ある場合の中止は2週間の間隔を空け、内服
た。その対 策として、当院ではPMMA膜や前希
薬と注射の中止は4週間の間隔を空けた。また、
釈オンラインHDFを選択している。また、かゆみ
注射は混注していたため、
すべて同時に中止した。
閾値を上げるため、35.5℃程度の低温透析療法
既存治療抵抗性の血液
透析そう痒症にはレミッチ®を投与
ステロイド外用剤のランクダウン・減 量・中止は
を行うこともある。EOGで滅菌された穿刺針や
これらの治療を2週間以上行ってもかゆみが改
決まった間隔を設けなかった。すべて、VASおよ
チューブなどの透析素材、ヘパリンなどもかゆみ
善されない場合は、既存治療で効果不十分な血
び白取分類を用いて定期的な評価を行いながら
の原因となりうるため、注意が必要である。
液透析そう痒症と判断して、中枢神経内のかゆみ
実 施した。その結果、6名のうち3名はレミッチ
制御のバランス異常の是正を図るために、レミッ
®
のみで、残りの3名はレミッチ®と保 湿 剤のみで
チ®を投与する。効果があればステロイド外用剤
保湿+外用剤で皮膚の異常を是正
かゆみをコントロールすることができた。
のランクダウンや減量・中止を試みるが、保湿剤は
当院では、透析方法の工夫に加え、図12に示す
継続し、外用剤の塗り方やスキンケア、生活指導を
かゆみの原因に応じた治療方針の検討
ような治療方針をとっている。皮膚そのものの異
繰り返し行う。生活指導のポイントは、皮膚の乾
常を是正するために、まず接触皮膚炎、
アレルギー
燥がかゆみの大敵であることを、患者によく理解
かゆみ治療のステップ3としては、チーム医療
などの皮膚科的疾患を検討し、必要に応じて抗ヒ
してもらったうえで、保湿剤の必要性と塗り方、
としてスキンケアと生活指導を重視するととも
スタミン薬、抗アレルギー薬などで治療する。その
日常生活での注意点などを指導することである。
に、従来のかゆみ治療の見直しを図った。
うえで、透析そう痒症と診断したら、皮膚の状態
当院ではかゆみ定量化ツールを活用してスタッフ
まず、図8に示す透析そう痒症の原因別の治
に合わせて外用剤を処方する。皮疹がなく乾燥の
が問診を行い、かゆみの把握と評価を行っている。
療方針を検討した。
みの状態なら保湿剤のみを使用し、無効の場合に
腎不全・透析に由来する異常への対策として
は、保湿剤にステロイド外用剤を併用する。保湿
は、かゆみの原因となる尿毒症性物質を効率的
剤は、油性の膜を作り水分の蒸散を防ぐエモリエ
に除去する透析方法を選択する必要がある。小
ント作用を持つものと、角層に保湿成分を補うモ
2013年4月に、当院において、透析そう痒症の
分子尿毒素・蛋白結合尿毒素の除去に優れる長
イスチャー作用を持つものがあり、皮膚の状態、
実態調査を行い、
2009年の結果と比較した6)。その
時間・頻回透析、アルブミンレベルあるいはそれ
季節、患者の好みに合わせて使い分ける。ステロ
結果、
かゆみがある患者は、2009年の78.8%から
以上の分子量物質を除去できる蛋白吸着型透析、
イド外用剤は、かゆみの重症度や皮膚の状態や部
2013年には69.7%へと有意に減少し(p<0.01、
カイ
蛋白結合尿毒素の除去に優れている前希釈オン
位に応じて、weakからstrongestまですべての
2乗検定)
(図13)
、
VAS平均値も37.3から30.5へと有
ラインHDF
(血液 透析濾 過)
などが 有効である。
ランクを使い分ける。また、乾燥に加えて、掻破に
意に低下した
(p<0.005、対応のあるt検定)
。白取分
また、EVAL膜・PMMA膜・AN69膜 など生体
よる炎症や二次的な湿疹化を伴う状態なら、最初
類によるかゆみスコアの平均値は、
日中では1.93
図10 かゆみによる不眠の頻度の変化
図12 当院の透析そう痒症治療の治療方針
かゆみによる不眠 7名
(53.9%)
4名 30.8%
7名 53.8%
4週目
3名 23.1%
3名 23.1%
3名 23.1%
12名 92.3%
1名
7.7%
38週目
12名 92.3%
1名
7.7%
74週目
13名 100%
90週目
13名 100%
104週目
13名 100%
8週目
0
20
40
透析そう痒症
(n=13)
乾燥および掻破による炎症や
二次的な湿疹化を伴う状態
ない
1週間に1日程度
1週間に2∼3日
1週間に3∼4日
皮疹がなく乾燥
のみの状態
1週間に5日以上
保湿剤
効果あり
効果不十分
保湿剤 +ステロイド外用剤
効果あり
60
80
既存治療抵抗性血液透析そう痒症
保湿剤 + ステロイド外用剤+レミッチ ®
治療に対する満足度の変化
7名 53.8%
投与前
3名 23.1%
4名 30.8%
4週目
6名 46.2%
4名 30.8%
8週目
38週目
2名
15.4%
74週目
2名
15.4%
8名 61.5%
4名 30.8%
104週目
0
3名 23.1%
1名
7.7%
3名 23.1%
20
7名 53.8%
5名 38.5%
40
60
(n=13)
大変満足している
どちらともいえない
不満
かなり不満
3名 23.1%
1名
3名 23.1% 7.7%
80
保湿剤
ステロイド外用剤の
ランクダウン・減量・
中止の試み
効果あり
保湿剤+レミッチ®
満足
1名
7.7%
10名 76.9%
3名 23.1%
90週目
3名 23.1%
8名 61.5%
効果不十分
100(%)
高橋直子ほか : 透析会誌 46: 371, 2013
図11
病態に応じて
抗ヒスタミン薬や
抗アレルギー薬の
投与を考慮する
スキンケア・生 活 指 導 を 繰 り 返 す
6名 46.2%
投与前
チーム医療で成果を上げたかゆみ治療
100(%)
レミッチ®は、血液透析患者の既存治療で効果不十分なかゆみに対して
長期間安定した効果を示し、かゆみによる不眠を解消するなど、
患者のQOL向上による予後の改善が期待されると考える。
高橋直子ほか : 透析会誌 46: 371, 2013
図13
患者アンケートによるかゆみの有無
2009 年 5 月
(n=330)
2013 年 4月
(n=396)
70名
21.2%
120名
30.3%
260名
78.8%
p<0.01
(カイ2乗検定)
かゆみあり
かゆみなし
276名
69.7%
院内データより
から1.37へと有意に低下したが
(p<0.0001、
カイ
工夫を行っている。また透析室に、2名の看護師
かゆみ外来とスキンケアスタッフ
の誕生でさらなるステップアップ
2乗検定)
、
夜間では1.23から1.14と有意差は認め
られなかった。
しかし、かゆみによる不眠は13.6%
と1名の薬剤師、そして1名の臨床工学技士から
なるスキンケアスタッフを設置し、かゆみ定量化
から6.8%へと有意に減少していた
(p<0.005、
カ
当院では、さらなるかゆみ治療のステップ4と
ツールを用いた問診、皮膚症状などの視診を定
イ2乗検定)
。
治療満足度では、
「大変満足している」
して、かゆみ外来を新設した。透析室や待合室に
期的に行い、
「かくれた乾燥やかゆみ」
を発見す
および「満足している」
と回答した患者が当院の取
かゆみ治療を行っている旨の掲示を行い、患者だ
るとともに、治療中の患者の生活指導やスキンケ
り組みで有意に増加した
(p<0.05、
カイ2乗検定)
。
けでなく、その家族にもかゆみの認識を高める
アへの取り組みをよりしっかりと行っている
(図
14)
。患者の自立 度や理 解度に合
図14
図15
かゆみ定量化ツールの使用例
スキンケアの指導風景
わせ、実際のスキンケア指 導は患
者本人だけでなく、介護する家族
にも指導を行っている
(図15)
。
かゆみ治療においては、看護師
がスキンケアや生活指導を行い、薬
剤師が正しい薬剤の使用方法につ
いて情報提供する。さらに、臨床工
学 技 士 もデー タ管 理 など で 関 わ
り、医師が最終的な治療の効果判
定を行 う。
こうしたチ ーム 医 療 に
よって、かゆみ治療の効果が最大限
に発揮されると考えている。
写真提供:高橋直子先生
経口そう痒症改善剤
写真提供:高橋直子先生
引用文献
6)高橋直子ほか: 中国腎不全研究会誌 22: 89. 2013
7)熊谷裕生ほか : 透析会誌 24: 387. 2009
8)高橋直子ほか : 透析会誌 46 : 371. 2013
劇薬、指定医薬品、処方せん医薬品注)
**2013年6月改訂(第7版)
*2012年 2月改訂
ナルフラフィン塩酸塩(Nalfurafine Hydrochloride)
製剤
商
品
名
和 名
レミッチ® カプセル 2.5㎍
洋 名
REMITCH ® CAPSULES 2.5㎍
一 般 名
注)注意-医師等の処方せんにより使用すること
ナルフラフィン塩酸塩(Nalfuraf ine Hydrochloride)
外箱に表示
87119
販 売 開 始
2009年3月
承 認 番 号
22100AMX00392000
販 売 元
鳥居薬品株式会社
承 認 年 月
2009年1月
製造販売元
東レ株式会社
薬 価 収 載
2009年3月
提 携
日本たばこ産業株式会社
(1)重大な副作用
γ-GTPの著しい上昇
肝機能障害(頻度不明注))、黄疸(頻度不明注)): AST(GOT)、ALT(GPT)、Al-P、
等を伴う肝機能障害、黄疸があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には
投与を中止し、適切な処置を行うこと。
(2)
その他の副作用
下記の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には適切な処置を行
効能又は効果
うこと。
特に、
不眠、
便秘、
眠気は、
投与開始後2週間以内にあらわれることが多いので、
観察を十分に行い、
異
常が認められた場合には減量するなど適切な処置を行うこと。
血液透析患者におけるそう痒症の改善(既存治療で効果不十分な場合に限る)
用法及び用量
通常、成人には、
ナルフラフィン塩酸塩として1日1回2.5μgを夕食後又は就寝前に経口投与する。
なお、症状
に応じて増量することができるが、1日1回5μgを限度とする。
<用法及び用量に関連する使用上の注意>
本剤の投与から血液透析開始までは十分な間隔をあけること。
[本剤は血液透析により除去されることから、
本剤服用から血液透析までの時間が短い場合、
本剤の血中濃度が低下する可能性がある。]
使用上の注意
5%以上
1∼5%未満
精神・神経系 不眠
眠気、
浮動性めまい
便秘、
嘔吐
消化器系
1%未満
頻度不明 注)
せん妄
いらいら感、
頭痛、幻覚、
構語障害、
レストレ 不穏、
スレッグス症候群の悪化、振戦、
しびれ
悪心、
下痢、食欲不振、腹部
不快感、
口渇
皮膚
発疹、
湿疹
蕁麻疹、紅斑、
色素沈着、丘疹
AST
(GOT)
上昇、
ALT
(GPT)
上昇、Al-P上昇、
γ-GTP上昇
ビリルビン上昇、
LDH上昇
そう痒の悪化
肝臓
1.慎重投与
(次の患者には慎重に投与すること)
循環器系
内分泌系
(1)高齢者(「高齢者への投与」の項参照)
(2)
中等度から重度の肝障害のある患者[血中濃度が上昇するおそれがある。]
2. 重要な基本的注意
(1)眠気、
めまい等があらわれることがあるので、
本剤投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操
作には従事させないよう注意すること。
(2)本剤の使用により効果が認められない場合には、漫然と長期にわたり投与しないように注意すること。
(3)本剤の投与により、プロラクチン値上昇等の内分泌機能異常があらわれることがあるので、適宜検査を実施することが望ましい。
薬剤名等
気密容器、遮光、室温保存
使用期限
日本標準商品分類番号
【禁忌(次の患者には投与しないこと)】
本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
3. 相互作用
本剤は、
主として肝代謝酵素CYP3A4によって代謝される。
併用注意
(併用に注意すること)
貯 法
動悸、
ほてり
プロラクチン上昇、
テストステロン低下、 女性化乳房
甲状腺刺激ホルモン低下、甲状腺刺
激ホルモン上昇
血液
好酸球増多
その他
胸部不快感、脱力感、回転性めまい
倦怠感
注)
自発報告によるものについては頻度不明。
5. 高齢者への投与
一般に高齢者では生理機能が低下しているので、
患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。
※国内では外用剤のみ発売
臨床症状・措置方法
機序・危険因子
CYP3A4阻害作用のある薬剤等
アゾール系抗真菌剤
(ケトコナゾー
、
ミデカマイシン、
リトナビル、
ル※等)
シクロスポリン、
ニフェジピン、
シメチ
ジン、
グレープフルーツジュース等
本剤の血漿中濃度が上昇する可能性
があるため、併用の開始、用量の変更
並びに中止時には、患者の状態を十分
に観察するなど注意すること。
睡眠薬、抗不安薬、抗うつ薬、抗精
神病薬、抗てんかん薬
本剤との併用により、
不眠、
幻覚、
眠気、
浮動性 本剤による中枢性の副作用が増
めまい、
振戦、
せん妄等が認められる可能性が 強される可能性がある。
あるので、併用の開始、用量の変更並びに中
止時には、副作用の発現に注意すること。
オピオイド系薬剤
本剤の作用が増強あるいは減弱される
おそれがある。
本剤は、主としてCYP3A4により
代謝されるため、CYP3A4阻害
作用のある薬剤等との併用により
本剤の代謝が阻害され、血漿中
濃度が上昇する可能性がある。
両剤の薬理学的な相互作用(増
強又は拮抗)
が考えられる。
4. 副作用
国内臨床試験における安全性解析対象609例中242例(39.7%)
に副作用(臨床検査値異常を含む)
が認め
られた。その主なものは、不眠96例(15.8%)、便秘29例(4.8%)、眠気19例(3.1%)、
プロラクチン上昇19例
(3.1%)等であった。
(承認時)
6. 妊婦、産婦、授乳婦等への投与
(1)妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には投与しないことが望ましい。
[動物実験(ラット)
において、
胎
盤通過、
生存胎児数の減少、
出産率の低下及び出生児体重の減少が報告されている。]
(2)授乳中の婦人には、
本剤投与中は授乳を避けさせること。
[動物実験(ラット)
において、
乳汁中へ移行する
ことが報告されている。]
7. 小児等への投与
低出生体重児、
新生児、
乳児、
幼児又は小児への投与に関する安全性は確立されていない。
(使用経験がない)
8. 過量投与
徴候、症状:過量投与により、
幻覚、
不安、
重度の眠気、
不眠等があらわれるおそれがある。
必要に応じ適切な対症療法を行うこと。
なお、
本剤は透析により除去されることが示されている。
処置:投与を中止し、
9. 適用上の注意
(1)薬剤交付時:PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること。
[PTPシートの誤
飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、
さらには穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発
することが報告されている。]
(2)保存時:未使用の場合はアルミピロー包装のまま保存し、開封後は遮光保存すること。
また、服用時に
PTPシートから取り出すこと。
10.その他の注意
(1)動物実験(イヌ静脈内投与、
0.1μg/kg以上)
において全身麻酔下での血圧低下が報告されている。
(2)動物実験(ラット筋肉内投与、
40μg/kg/day以上)
において受胎率の低下が報告されている。
詳細は添付文書をご参照ください。禁忌を含む使用上の注意の改訂に十分にご留意ください。
製造販売元
販売元
東京都中央区日本橋室町二丁目1番1号
東京都中央区日本橋本町3ー4ー1
提携
資料請求先
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TEL 0120-316-834
FAX 0120-797-335
® 登録商標
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2014年3月作成
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