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アトピー性皮膚炎は難病ではありません −1−
アトピー性皮膚炎は難病ではありません −1− 『アトピー性皮膚炎は治りにくい』というのは間違った治療による誤 解です。 ステロイド軟膏を正しく使用すれば副作用を起こさず簡単にスベスベ した皮膚になります。 間違い1 適切な強さのステロイド軟膏が使われていない ステロイド軟膏には、弱い・中程度・強い・とても強い・最強の5段階があっ て適切なランクを塗れば100%効きます。日本皮膚科学会は"湿疹の程度に 応じて異なるランクのステロイドを使い分け重症の湿疹にはとても強い~最強 のランクも使う"ことを薦めていますが、実際は不十分な強さのランクしか処 方されていないケースがほとんどのため、塗ってもよくならないのです。 また重い湿疹に弱い軟膏を塗っても良くなるどころか悪化することがあります から、弱いランクなら安心ということはありません。症状に応じて薬の強さを 変えることが何より大切です。 間違い2 軟膏の塗り方が正しくない 薄くすり込むように軟膏を塗っていませんか?薄く塗ってしまうと湿疹を治す のに必要な量が皮膚につきませんし、すり込んでしまうと指で皮膚をこするた め皮膚が一層痛んでかゆみもひどくなります。 人差し指の先端から第一関節までに乗せた軟膏を、手のひら2枚分の面積に塗 ると十分な効果が得られるとされています(下図)が、ほとんどの患者さんは この十分の一程度しか塗っていません。軟膏はすり込まずたっぷり塗りましょ う。 間違い3 完全に良くなるまでステロイド軟膏が塗られていない 単に赤み・かゆみなどの症状が軽くなっただけでは、湿疹の原因になる『炎症 細胞』が皮膚に残っているので治療を止めれば悪化します。これは治療が中途 半端なだけで、ステロイド軟膏にリバウンドという現象はありません。 ステロイドは皮膚がスベスベになってから中止して下さい。 間違い4 スキンケアが正しくされていない スキンケアは主に次の二つから成ります。 ●皮膚を清潔に保つ :石鹸やシャンプーをしっかり使います。 ●皮膚を乾燥させない:清潔にした後に軟膏や保湿剤で皮膚をしっとりさせます。 刺激があるという理由で(?)湿疹をお湯だけで洗う方がいますが、汗や脂、 汚れなどが残っていては薬の効果は半減しますから、まず石鹸やシャンプーを しっかり使います。またアトピー性皮膚炎の患者さんの皮膚はセラミドという 保湿成分がとても少なく、洗った後何もしなければすぐに皮膚は乾燥してしま うので、軟膏や保湿剤で皮膚を乾燥から守りましょう。 間違い5 余分なモノが使われている アトピー性皮膚炎に効果があるのはステロイド・保湿剤・プロトピックの3つ だけです。消毒と称するイソジンや酸性水は全く効果がないだけでなく『かぶ れ』を起こし湿疹を悪くすることさえありますし、非ステロイド軟膏や各種の 入浴剤なども同様です。 軟膏・クリーム 人差し指の先から 第一関節の長さ まで出した量 =約0.5グラム アトピー性皮膚炎の患者さんの皮膚はセラミドが少ないため水分が抜けやす く汗や汚れなどの刺激が入りやすいことがわかっています。 このため十分なスキンケアが必要になるわけです。 ローション 一円玉大の量 =約0.5グラム この量で 成人の手約2枚分の 面積に塗れます copyright(c)2004 mizunozaka.com All rights reserved. アトピー性皮膚炎は難病ではありません -2- Q1 食事制限は必要か? アトピー性皮膚炎の子供は皮膚を守るバリアーが普通より弱いため乾燥・汚れ ・摩擦・汗などのありふれた刺激によって湿疹を起こします。食物アレルギー が直接の原因なら食事制限だけですぐ治るはずですが、実際はいくら厳しい制 限をしてもステロイドと保湿剤でバリアーを補わなければ絶対にスベスベした 皮膚にはなりません。アトピー性皮膚炎はじんましんのような単純なアレルギ ーではないからです。(アトピー性皮膚炎の原因は皮膚のバリアーの異常でア レルギー検査は無意味です) 一方全身に湿疹のある赤ちゃんでも紙おむつの中や鼻の頭、鼻のわきの皮膚は スベスベしています。紙おむつは色々な刺激から皮膚を守ってくれるし鼻の頭 は皮脂が多いため皮膚が守られます。鼻のわきは顔をふいたりうつぶせになっ てもこすれません。これは皮膚のバリアーが十分だったり刺激を受けにくいと ころは何を食べても湿疹はできないということで、塗り薬を上手に使ってバリ アーを補えば食事制限は不要です。 アトピー性皮膚炎は様々な要因で悪化するのに食事ばかり問題にするのはナン センスです。 良い治療例 適切なランクのステロイドを十分に改善するまで使い、 保湿剤にきりかえる。その後の再燃時にも早めに適切な ランクのステロイドを使っている とても強い ↓ 強い ↓ 保湿剤 ↓ 保湿剤 ↓ 体質改善が必要? 血液型が変わらないように体質も変えることはできません。ですから高血圧や 糖尿病の患者さんは血圧や血糖が上がりやすい体質を変えようとするのではな く、塩分やカロリーを控え、薬を続けて病気と気長に付き合っておられます。 アトピー性皮膚炎も『皮膚が乾燥しやすく刺激に弱い』という体質は変えられ ませんが、塩分やカロリー制限にあたるのがスキンケア・薬がステロイド軟膏、 というように考えて治療を続けてみてはいかがでしょうか? また上手に症状をコントロールしている患者さんは、徐々に薬を減らしていっ ても湿疹が起きにくくなります。これはスキンケアとステロイド軟膏による広 い意味での体質改善といって良いと思います。 保湿剤 ↓ 悪い治療例 不十分なランクのステロイドを十分に改善する前に中止 し、保湿剤も使われていない 強い ↓ おだやか ↓ Q2 おだやか ↓ 中止 ↓ 中止 ↓ アトピー性皮膚炎はいったん良くなっても、色々な 刺激で再び悪化をくり返す慢性の病気です。悪化し たらステロイドを適切に使い、早めに皮膚を良い状 態に戻してあげて下さい。そうすれば徐々に悪化し なくなりやがては治ります。 copyright(c)2004 mizunozaka.com All rights reserved.