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森田次一・智子牧場 3代で築 で築く「ゆとり経営 経営」 関東甲信越経営
農家訪問 3代で築く 3代で築 で築く「ゆとり経営 「ゆとり経営」 経営」 関東甲信越経営発表大会で最優秀賞に輝く 群馬県勢多郡北橘村 森田次一・智子牧場 ●花のある暮らし、3世代のご家族 ●森田牧場の経営の歩み 群馬県のほぼ中央、前橋市の北に隣接する北橘村に 森田牧場がある。現在では道路網が発達して距離的に ●9年前に邸宅建築、これも牛のお陰 苦を舐めてこられた。色々な作物の栽培を試みたが上 手く育つものは少なく、高台にあることから特に水の 確保には最も苦労されたそうである。 は前橋に近いが、赤城山中腹の標高550mの山間部に そこで酪農と係わり合うが、昭和37年寒冷地対策事 あり、夏は快適な避暑地であるが冬には特有の「から 業で乳牛1頭を導入したのが始まり。その6年後に5頭 っ風」にさらされる寒冷地である。 に、さらに4年後に16頭に増頭し本格的な酪農経営へ 昭和26年に、お父さんの倉次さんが仲間12家族と共 に現在地の硯石開拓に入植された。よその開拓地同様 に当時は人力で山林を切り拓く日々で、多くの艱難辛 の基盤をつくり、計画生産時は30頭に止まったが現在 では総勢84頭までに頭数規模が拡大した。 森田牧場のように、開拓地でも現在では平場の既存 農家に勝る安定経営ぶりが窺える事例が少なくない。 それは、入植された先達の長年の並々ならぬご労苦が 報われたものであり、ねぎらいと共に今後一層豊かに なって欲しいという思いを強くする。 ●生涯現役で好きな仕事を 表1に、ご家族構成と役割分担を示した。爺ちゃん 婆ちゃんの従事日数に注目、ご隠居扱いしたら失礼に 当たる。ゲートボールに興じながらも、れっきとした 現役で若い者に引けを取らない。さすが、体を張って ●ご家族と共に。向かって右より3代目、2代目ご夫婦 初代ご夫婦、 左端は前橋種雄牛センターの栗田技師 働いてこられた年配者は違うのである。ご家族共通の 目標に側面協力しておられるが、現役で好きな仕事を 10 農家訪問 ●デントコーン収納サイロ① ●デントコーン収納サイロ② 続けられることが最高に幸せなことでもあろう。 村女性の過重労働を軽減して、男女共同参画社会を国 単に、総労働時間が多いとか少ないとかが課題では なかろう。こうして、3世代の家族全員が仕事を分担 も推奨している。頑固な「昭和生まれの明治男」が権 力をふるい、独り決めをする時代ではなくなった。 して働くから時間的な余裕ができて「心のゆとり」も この点、森田牧場は進歩的で当主ご夫妻は以前から 生まれる。一日の作業は夕方5時半には終える。ダラ 家族協定を結んでおられたそうだが、3代目の就農に ダラ長い作業で、夕方遅くまで灯りが牛舎に灯るよう 際して改めて家族経営協定を結んだとのことである。 では嫁さん対策上でもよろしくなかろう。 いずれにしても「家族経営」という言葉がピッタリ 当てはまる酪農家さんであった。 表1 家族構成と役割分担など 作業分担 氏 名(年齢) 従事日数 経験年数 続 柄 祖 祖 父 森田 倉次(77) 350 日 搾乳、群管理 搾乳、群管理、家事 母 久江(79) 350 当 主 次一(51) 350 経営全般 33 奥 様 智子(51) 350 搾乳、群管理、哺育、家事 30 長 女 麻紀(25) 長 男 拓哉(22) 350 次 女 智恵美(21) ー 10 43年 43 (在京) 搾乳、群管理、自家授精 1 介護福祉 ●3代目就農に期待高まる 3代目息子さんが県の農林大学校を卒業し、畜産試 験場での1年間の研究を終えて就農。親御さんらは後 継者の育成を最も重視して、仕事のやりやすい環境整 備や牛舎増築を考えておられる。また、息子さんは最 も大事な牛群改良と人工授精業務を一任されていると ●家族経営協定を結んだ よく話題になる家族経営協定は、日本でも1万3千戸 か。ご両親の見守る中で責任ある仕事をさせて貰える とは、有り難いことでご家族の愛情の程が分かろうと 前後の農家で導入されているらしい。平たく言えば家 いうもの。ぜひとも、それに応えて欲しいものである。 族で仕事の分担、時間、報酬を決めて、個人の自由な 森田牧場は、15年間乳肉複合経営を続けてきたが素 時間とお金を得ること。余暇をつくり、趣味を生かし 牛補充は自群内で調達してきた。BSE発生により酪 て生活をエンジョイすることである。往時のような農 農専業に切り換えたが、やはり後継牛は自家産が後を ●搾乳舎の内部(前通路)飼槽は、ステンレス張り 11 ●バルク室は、整理整頓されて、清潔で衛生的 農家訪問 ●育成・乾乳牛舎(前面) ●育成・乾乳牛舎(中通路) 断たず上がってくる。これは育成牛を多く保有してい 糞尿処理対策は万全で、公の環境保全組合の堆肥化 ることの強みで、当座育成費がかさんでも導入するよ 施設、尿浄化施設を利用して完全にクリアしている。 りは格安だし予め能力レベルも推測できる。今後の課 それもこれも、農業委員など色々な役職をこなし事業 題は、新しく牛群に組み込まれる若雌牛の遺伝的な能 の推進役でもあり、お父さん同様に地域の酪農業の発 力をいかに読み取って引き上げるかであろう。3代目 展に貢献しておられる。 に課せられた期待と責任は大きなものがあろう。 因みに、彼のホビーはバイクとバンドだそうである。 働いて楽しむことは良いことで、コマーシャルではな 表2 飼養頭数と耕地面積 総頭数84頭 経産44頭、未経産28頭、育成5頭、哺育7頭 取り組み 検定済種雄牛を主に供用、検定材料牛の取得4頭 いが元気溌剌、若さ爆発の青春であろう。 ●経営のあらましと特徴 森田牧場は、表2に示すとおり全牛自家産・登録牛 で、後代検定済種雄牛を主に使って検定材料牛も生産 しておられる。頭数規模を地道に増やして経産牛で44 頭になったが、近い将来60頭搾れる牛群にしようと計 全頭自家産(血統登録牛) ETへの取り組み検討中 耕地面積 8.5ha(7戸共同の草地含む)、粗飼料自給率85% 作付内訳 普通畑 519a(うち借地309a) 夏作:デントコーン(サイレージ用) 秋作:イタリアンライグラス・えん麦(ラップサイレージ用) 牧草畑 250a(うち借地230a) オーチャードグラス(ラップサイレージ用) 共同草地 530a(村有地・7戸分) オーチャード・イタリアンの混播(ラップサイレージ用) 画中である。 粗飼料の自給率が高く、7戸の団地仲間と共同草地 を持ち旦那さんが自ら生産管理に携わっておられる。 ●奥様は動物大好き人間 奥様の智子さんは、去る3月に開催された「関東甲信 作付内容は表のとおりで、ベースはデントコーンサイ 越酪農青年女性会議の経営発表大会」で経営の内容を レージの通年給与。ほかにラップサイレージを生産し、 発表された。その結果、見事最優秀賞に輝きブロック 購入乾草はコンテナ2個程度に止めているとか。 の代表者として、7月下旬に岡山市で開催される全国 ●搾乳舎外観。昭和52年国の構造改善事業により40頭牛舎建設 ●搾乳舎内部(中通路)。 清潔、乾燥通気良く、臭気のない快適な状態 12 農家訪問 大会へ出場することとなった。 が多いようである。 題して「楽農と私」、サブタイトルは「Uターン青年 の酪農団地に嫁いで26年」である。26年前に遡るから、 もちろん青年とは若かりし頃の現在のご主人のこと。 お二人の馴れ初めやロマンスを問い質したかったが、 芸能記事ではないので野次馬根性は捨てた。 ●全国大会でのご健闘に期待 森田牧場がブロック代表に選ばれたことは、上記の 色々な難しい条件をクリアしていることになろう。 従って、今回は詳細な検定成績の数字や検討結果は 要約すれば、奥様は東京は阿佐ヶ谷のサラリーマン 割愛することにした。勝手に想像すれば、特に上記の 家庭育ちで牛が大好き人間。非農家育ちの方は動物に ①、⑤、⑥が高い評価につながったように思われる。 新鮮な感覚や関心を持ち、それだけに探求心や向上心 最後に、全国大会では奥様が各ブロック代表者との が旺盛で酪農家の嫁さんに見合う存在、その典型的な 交流を深め、輝しい成果を持ち帰っていただくよう期 方だったのであろう。独身時代に北海道の牧場実習を 待申し上げたい。 志願。経験者でなければ分からないが、当時は好きな だけでは勤まらない激務の連続。それを隠れて涙しな がらも、やり遂げたという筋金入りの根性の持ち主。 その後、奥様は群馬県内の牧場に勤めることになり、 旦那さんに見初められたというわけ。言うなれば、牛 が取り持つ縁という事になろう。 ●酪農青年女性発表大会 この発表大会は歴史があり、酪農家の参加も多い時 は1,500人近くになったこともあり、酪農界の活力を推 し量るバロメーターの一つであった。今までの発表内 容のパターンは、①経営の持続が望まれることから粗 ●飼料作物とラップサイレージ 飼料生産基盤を確立し②生産コストの低減のための経 営改善努力をし③生産性を上げるために牛群改良に取 り組んで高い収益を上げ④創意工夫をこらした安定経 営であること、さらには⑤地域の発展のために仲間と 交流し地域活動に積極的な役割を果たしていること⑥ 牛舎等環境美化に努めていることを強く訴える発表者 13 家畜改良アドバイザー 佐藤末太郎 訂正のお詫び 前号の酪農家訪問の記事で文章の欠如がありましたのでお詫び申し 上げます。 P25左最下段 「成分の低い」以下、下記文章を挿入 “安価なものをベースに、ステージ毎の乳量に応じ濃度”