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解 説 - 家畜改良事業団

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解 説 - 家畜改良事業団
INDEX
■ 新 年 のご 挨 拶
■解
説
■国 内 情 報
■海
■農
外
家
情
訪
報
問
No.90
2005. 1. 25
●主な目次
乳用牛改良の現状と今後の方向
● 2004年国産検定済種雄牛生産者に
感謝状贈呈
●
Dairyman Today&Tomorrow
鹿児島県鹿屋市 平口牧場
● 和牛農家を訪ねて 第10回
山口県萩市 長屋牧場
■ I V F 卵 関 連 情 報 ● 体外受精卵産子市場動向
● 熊本市場体外受精卵意見交換会報告
■ 改良は牛飼う人の道しるべ ● 育てる(その4)
■春 夏 秋 冬 ● 第17回 姑の介護を振り返って
■ イージーブリードトピックス ● イージーブリードを利用した
年間出荷乳量の向上
(その8)
■ 河 ● その38 能力検定のはなし
福波茂
ノマド
1
2
11
●
13
17
23
24
25
27
30
32
平成17年の年頭に当たり、一言ご挨拶申し上げます。
皆様におかれましては、御健勝に新春をお迎えのこ
とと、心からお慶び申し上げます。
進める上で不可欠な業務に取り組んで参りました。
幸い乳牛につきましては、能力の国際比較を可能に
するインターブルに一昨年加入し、その成績は関係の
また、皆様方には、日頃より家畜改良事業団の業務
方々の長年の御努力が実り、国内で供用される種雄牛
に格別の御理解、御支援を賜り厚く御礼申し上げます。
は世界的にもトップレベルにあることが明らかになっ
昨年は記録的猛暑や幾多の台風の上陸、集中豪雨、
ております。
大地震の発生等これまでになく自然災害の多い年でも
また、肉用牛につきましては、まさに、肉質の面で
ありました。被災された方々に御見舞いを申し上げま
は輸入牛肉の追随を許さないレベルにあり、能力検定
すとともに、一日も早い復興を心から祈念致します。
成績も、肉質、肉量共に着実に向上してきております。
昨今の国内景気回復の実感が乏しい中で、対外的に
一方、消費者の信頼という面では、平成13年秋の
は昨年の夏、WTOの枠組み合意が行われました。更に
BSE発生を契機として畜産農家の方々をはじめ関係者
メキシコとの経済連携協定(EPA)の署名を終えたほ
の大変な御苦労と御理解のもとに、世界に誇れる全牛
かフィリピンとは大筋合意に達し、現在、タイ、マレ
の個体識別システムが確立され、更に昨年12月からは、
ーシア及び韓国とのEPA交渉が進められております。
生産から店頭に至る一貫した牛肉のトレーサビリティ
一方、国内では、これからの畜産の持続的発展の道
システムが稼働を始めたところであります。
しるべとも言うべき「酪農及び肉用牛の近代化を図る
家畜改良事業団はこのシステムの中で、国や家畜改
ための基本方針」、「家畜改良増殖目標」の見直し検討
良センターの御指導のもとに個体識別データベース作
が行われております。
りやDNA型による同一性の検査に参画して参りまし
畜産を巡る内外の環境が厳しくなる中で、国際化に
た。
耐え得る畜産を築いていくためには、消費者の方々の
国際化が進む中で、日本の畜産の将来を拓くため平
信頼を得られる安全で良質な畜産物を効率的に供給す
成17年度におきましても、皆様方の御支援のもとに家
ることが大変重要になってきております。
畜改良事業団に与えられた任務に全力を挙げて取り組
このためには生産から流通を通じ各般の対応が必要
でありますが、とりわけ家畜の能力の向上は一日もゆ
るがせに出来ない事柄であります。
家畜改良事業団は皆様の御支援のもとに、肉用牛及
び乳用牛の能力検定、優れた種雄牛精液や受精卵の供
給、遺伝病のDNA型検査や親子判定等、家畜の改良を
1
んで参る所存であります。
平成17年という年が皆様方にとっても良い年であり
ますことをお祈り申し上げますとともに家畜改良事業
団に旧倍の御支援と御鞭撻をお願いし、新年のごあい
さつといたします。
解 説
乳用牛改良の現状と
今後の動向
独立行政法人家畜改良センター 情報分析課
仲西 孝敏
インターブルが行う乳用種雄牛の国際評価に日本が
従来は、国内及び海外ではその飼養環境や遺伝的能
参加して1年半ほど経過し、2003年8月以降これまでの
力評価方法等が異なるため、乳用牛の遺伝的能力を直
間3ヶ月おきに6回の公表が行われた。参加に際しては、
接比較することは不可能であったが、インターブルに
日本の種雄牛の能力が海外よりも劣っているのではな
参加したことによってこのことが可能となった。その
いかと危惧する声もあり、そのため国内の乳用牛改良
概要等については既報のとおりだが、ここでは改めて
体制にただならぬ影響を及ぼすのではないかという懸
日本及び海外特に北米との間の遺伝的能力を中心とし
念もあった。しかし、いざ参加し結果を見てみると、
た比較を行い、日本の乳用牛遺伝資源について確認す
日本の種雄牛の能力は海外よりも劣っているどころ
るとともに私見を述べてみたい。
また、2005年2月の遺伝的能力評価から変更される
か、むしろ酪農主要国と比肩し国際的にも十分通用す
事項について解説する。
る水準にあることが分かった。
表1 検定牛の泌乳能力
(2002年:305日)
国
乳量
(kg)
乳脂率
(%)
乳蛋白質率
(%)
国
乳量
(kg)
乳脂率
(%)
乳蛋白質率
(%)
10,445 ①
3.43
3.14
チェコ
6,428
4.13
アメリカ
9,621 ②
3.69
3.07
ギリシャ
6,371
3.46
カナダ
9,511 ③
3.72
3.25
オーストリア
6,219
4.16 ⑨
日本
8,995 ④
3.97
3.27
チュニジア
6,206
3.42
3.19
韓国
8,761 ⑤
3.77
3.19
アルゼンチン
6,127
3.50
2.89
スペイン
8,392 ⑥
3.64
3.12
オーストラリア
6,082
4.01
3.28
イタリア
7,986 ⑦
3.60
3.27
ポーランド
5,712
4.19 ⑦
3.28
イスラエル
3.40 ⑤
…
3.41 ④
オランダ
7,972 ⑧
4.43 ③
3.49 ③
エストニア
5,605
4.26 ⑤
3.25
ポルトガル
7,727 ⑨
3.68
3.22
スロベニア
5,561
4.18 ⑧
3.34 ⑨
ハンガリー
7,599 ⑩
3.76
3.29
スロバキア
5,090
3.93
3.27
イギリス
7,524
3.90
3.29
リトアニア
5,015
4.24 ⑥
3.33
ベルギー
7,439
4.08
3.34 ⑨
クロアチア
4,989
3.92
3.37 ⑦
ドイツ
7,174
4.16 ⑨
3.40 ⑤
ノルウェー
4,944
4.14
3.27
3.58 ②
北アイルランド
7,103
3.78
3.20
ニュージーランド
4,895
4.83 ②
スイス
6,608
3.99
3.26
ラトビア
4,737
4.39 ④
3.26
フランス
6,530
4.06
3.36 ⑧
ジャージー
4,550
5.22 ①
3.75 ①
※ICAR(家畜の能力検定に関する国際委員会)調べ:2004年8月
※○は順位(10位まで)
泌 乳成績
表1はICAR(家畜の能力検定に関する国際委員会)
のアメリカやカナダと同程度であり、日本の検定牛の
泌乳能力(表型値)は世界の中でも上位に位置してい
ることが分かる。
が2004年8月に調査した結果であり、日本の検定牛の
なお、各々の国の品種構成や飼養管理方法、検定法
乳量は世界の中で上位に位置している。また、乳成分
(A4、B4、ATなど)、搾乳回数、年型、bST(牛成長
率についてはオランダやドイツなどが目を引くが、あ
ホルモン)等投薬の有無など泌乳成績に影響を与える
る程度の乳量を確保している国の中では日本も上位に
条件が同一ではないと考えられるため、この表をもと
位置している。従って、これらを掛け合わせた乳成分
に各国の違いを詳細に比較するのではなく傾向を見る
量では、日本の検定牛はイスラエルにはやや劣るもの
程度の利用にとどめるべきだと思われる。
2
解 説
種 雄牛の遺伝的能力
(全体像)
国で後代検定を行った種雄牛の結果であるとは言えな
いが(日本の種雄牛は後代検定参加牛)、直近の種雄
表2にインターブルに参加している主要な国の5年
牛(1998年生まれ)の成績を比較すると、日本の種雄
毎の種雄牛の遺伝的能力を示した。海外の種雄牛につ
牛は乳量や決定得点、NTPについて、海外に比べ優れ
いては原産国別に取りまとめているので必ずしも当該
た種雄牛を確保していると言える。また、年当たり改
表2 生年別国別遺伝的能力及び年当たり改良量
(乳量、決定得点、NTP)
良量を比較しても日本は海外よりも比較的数値が高
国\生年
日本
イギリス
1988
1993
く、組織的な後代検定事業を行ってきた成果が着実に
1998
頭数 乳量 頭数 乳量 頭数 乳量
176
1988∼
1998
表れたものと考えられる。
一方、イギリスは種雄牛の頭数がそれほど多くなく、
-81
170
276
185 1104
113
26 -285
53
295
64 1052
137
これまであまり注目してこなかったが、年当たり改良
438 1005 1043
98
量や直近の種雄牛の能力が高く注目すべき存在となっ
アメリカ
773
66
フランス
40
152
81
487
568
965
56
てきている。イギリスが現在どのような取り組みを行
イタリア
79
70
244
212
279
882
87
っているのか不明だが、種雄牛数が少ない中でこれほ
4 -224
9
434
4
878
86
どの成果を上げていることについては、日本の後代検
カナダ
291 -405
385
68
262
842
123
オランダ
309 -160
420
249
583
706
83
19
653
137
403
565
87
62
デンマーク
ベルギー
7 -579
905
12 -264
ドイツ
152 -288
スイス
34 -857
30 -405
52 -373
1988
1993
1998
国\生年
デンマーク
308
-30
1988∼
頭数 決定得点 頭数 決定得点 頭数 決定得点 1998
4 -0.32
9 0.34
4 0.84
0.05
カナダ
291 -0.10
385 0.48
262 0.73
0.09
日本
176 -0.29
170 0.22
185 0.60
0.08
アメリカ
773 -0.29
905 0.19 1005 0.57
0.07
イギリス
26 -0.21
53 0.13
64 0.43
0.05
ドイツ
152 -0.28
308 0.22
403 0.43
0.07
イタリア
79 -0.50
244 -0.03
279 0.38
0.09
フランス
40 -0.09
81 0.09
568 0.36
0.04
ベルギー
7 -0.48
12 -0.19
19 0.18
0.09
オランダ
309 -0.51
420 -0.23
583 0.17
0.05
34 -0.43
30 0.01
52 0.12
0.07
1988
1993
1998
スイス
国\生年
日本
イギリス
デンマーク
頭数 NTP 頭数 NTP 頭数 NTP
145 -142
170
349
185 1268
131
25 -145
53
480
64 1268
141
871
9
992
4 1227
62
オランダ
58
276
420
431
583 1161
82
アメリカ
693
-41
905
475 1005 1151
112
フランス
39
422
81
658
568 1148
イタリア
45
279 1031
カナダ
49
169
242
290
6 -437
12
-50
19
973
152
287 -397
385
226
262
961
134
302
195
403
919
89
30 -165
52
-79
67
ドイツ
79
スイス
34 -643
-69
75
※(独)
家畜改良センター2004-11月評価
(CD-ROM公表版)による取りまとめ。
※取りまとめ対象国は、1988年から1998年の連続した間に種雄牛のいる国とした。
3
種 雄牛の遺伝的能力
(供用種雄牛)
図1-1
日米供給可能牛の比較
(乳量EBV階層別頭数分布〔構成割合〕
)
図1-2
日米供給可能牛の比較
(決定得点EBV階層別頭数分布〔構成割合〕
)
1988∼
1998
1
ベルギー
定を行う上で学ぶべき点があると思われる。
解 説
図1-3
日米供給可能牛の比較
(NTP階層別頭数分布〔構成割合〕)
で生じた差を現在までは詰め切れていない。ただし、
最近の日本の種雄牛の遺伝的能力がアメリカを上回っ
てきたことからすれば、検定牛もやがて追いつき、追
い越すことも可能だと考えられる。
一方、乳脂量ではアメリカやカナダを上回って推移
しており、乳蛋白質量ではアメリカと概ね同等である。
図2-1
検定牛の遺伝的能力の推移(乳量)
図2-2
検定牛の遺伝的能力の推移(乳脂量)
図2-3
検定牛の遺伝的能力の推移(乳蛋白質量)
前項で示したのは、各国が生産した種雄牛の平均的
な姿だが、実際には次世代生産のために利用される、
後代検定終了後に選抜された種雄牛の能力が重要とな
る。そこで図1に日米で供用されている種雄牛につい
て比較したものを示した。乳量、NTPについては日本
の種雄牛の方がやや能力の高い階層に分布し、決定得
点ではやや低い階層に分布しているが、いずれもその
分布はほぼ重なっており、日米で供用されている種雄
牛の能力が概ね同等であると言える。ただし、日米間
で供用可能頭数が大きく異なるため、ここでは構成割
合で比較しているが、実頭数で比較した場合には、当
然アメリカのグラフの山が高くなり、つまり、能力上
位の個体数は多いということになる。
検 定牛の遺伝的能力
(全体像)
図2に検定牛の遺伝的能力の推移を示す。従来は、
各国の評価に基づく雌牛の遺伝的能力を直接比較する
ことができなかったが、インターブル参加後は、種雄
牛の国際評価が行われるのと同時に、海外の評価値を
自国の評価値に換算するための一次回帰係数が公表さ
れるようになったので、これを用いて海外の雌牛の評
価値も日本の物差しで比較可能となった。ただし、一
般に雌牛の評価は本牛の示した泌乳能力或いは審査成
績によってのみ計算されるものであり、種雄牛が多数
の娘牛の能力をもとに計算されるのと異なり、その信
頼度は泌乳形質でせいぜい60%程度、体型形質は50%
にも満たない場合が多い。したがって、上述のように
雌牛の遺伝的能力を国間で比較できるようになったと
はいえ、個々に比較するのではなく傾向として捉える
べき数字である。
乳量についてみると、日本の検定牛は1994∼1995年
検 定牛の遺伝的能力
(遺伝的能力上位牛)
前項では、検定牛の全体像を示したが、ここでは次
世代の種雄牛を生産すべき水準の雌牛という視点で、
生まれで若干つまずきを見せ、その後はアメリカとほ
日米各々の総合指数(日本はNTP、アメリカはTPIに
ぼ同様な改良速度で向上しているものの「つまずき」
よる)上位千頭について乳量及び決定得点を比較して
4
解 説
みた。図3が各形質の階層別頭数の分布である。総合
図3のようにアメリカに優秀なものが多いのは当然と
指数の上位牛であるため、必ずしも乳量(又は決定得
言える。仮に日本の乳用牛の全てが牛群検定に参加し
点)という形質でランキングした場合の上位千頭の比
たとしてもアメリカの現在の規模に叶うことはない
較ではないことに留意する必要はあるが、乳量及び決
が、より多く検定に参加することによってすそ野が広
定得点ともアメリカの方がやや上回っている。しかし、
がり、優秀な逸材が出てくることになる。
各々の検定牛を自国が優先して次世代種雄牛の生産に
利用することができること等を勘案すれば、日本の種
図5
NTP上位検定牛の父牛国別割合
雄牛の生産を海外に頼るばかりではなく、国内雌牛の
利用を中心とした種雄牛生産に移行しても十分通用す
る水準であると思われる。
図3-1
日米総合指数上位雌牛(1000頭)の比較
(乳量EBV階層別頭数分布)
図5に国内検定牛の父牛国別の割合を示した。一見
すると、より上位牛にアメリカの種雄牛を父牛とした
検定牛が多いため、国内種雄牛よりもアメリカ種雄牛
の能力が高いということを示した図に見えるが、先に
示したように国内の種雄牛が海外の各国に比べて平均
図3-2
日米総合指数上位雌牛(1000頭)の比較
(決定得点EBV階層別分布)
的にも高く、また、供用種雄牛もアメリカと比肩する
こと等を勘案すると、この図は、より能力の高い検定
牛に多くの輸入精液、特にアメリカの種雄牛が集中的
に交配されているという実態による結果を示している
のではないかと考えられる。また、これまでの国内の
後代検定では、国産候補種雄牛と言えどもその父牛は
海外種雄牛というのが実態であったということも一因
かも知れない。今後、国内検定済種雄牛による国産候
補種雄牛の生産を増やしていくことによって、その過
程の中でいわば副次的に雌牛が生まれ、国内種雄牛を
図4
検定牛の能力階層別頭数の分布(イメージ)
父とした検定牛がNTP上位により多く占めていくとい
うことも可能なのではないかと思える。
信 頼度と信頼幅
海外の種雄牛は日本の種雄牛よりも評価に用いた娘
牛数が多く信頼できるということをしばしば耳にする
が、本当にそうなのか見てみる。アメリカの種雄牛に
ついて娘牛数毎の、アメリカにおける評価信頼度とイ
ちなみに、図2で利用した2002年生まれの雌牛の情
ンターブルによる日本向け評価信頼度を図6に示した
報等をもとに、日米の検定牛の能力階層別頭数の分布
(乳量)。アメリカの種雄牛を日本で利用する際の信頼
をイメージしたものを図4に示した。日米間では母集
度はアメリカの信頼度よりも10%程度低くなっている
団(検定牛)の規模が大きく異なる中での上位千頭
ことが分かる。つまり、海外で評価に用いた娘牛数が
(選抜率:日本0.18%、アメリカ0.02%)の比較なので、
如何に多く、信頼度が如何に高いといってもそれは当
5
解 説
該国のみで通用する数値であって日本でも同じように
が求められる。
通用するわけではない。
※掲載されるためには評価値の信頼度の基準を満たす必要があ
図6
アメリカの種雄牛の日米評価信頼度(乳量)
るほか、NAAB(全米種畜生産者協会)と提携する等の手続
きが必要と考えられる。
国内の評価では評価値に「±」の符号を付けた信頼
幅を表示しているが、この信頼幅というのは、この範
囲内におよそ70%の確率で遺伝的能力の真値が入ると
いうことを示す数値であり、信頼度と大きく関係があ
る。図8に日本の種雄牛の信頼度と信頼幅の関係を示
した(乳量及び決定得点)。アメリカの種雄牛を利用
する際の情報として、仮にアメリカの評価信頼度がそ
のまま日本でも通用すると勘違いして利用した場合に
図7
日本の種雄牛の日米評価信頼度(乳量)
は、実際には信頼度が10%程度低いので、その信頼幅
は±150kgのつもりが実は±250kg(アメリカ評価信頼
度が95%の場合)となり、また、図に示していないが
決定得点の場合の信頼度は日米の差が15%程度なの
で、±0.12点のつもりが実は±0.25点(アメリカ評価
信頼度が95%の場合)となる。つまり、その産子の遺
伝的能力は当初想定した以上に(良い場合も悪い場合
も含め)ばらつくことになり、期待した改良の効果を
得づらくなる。
図8
信頼度と信頼幅の関係
血縁
図9に日米雌牛の近交係数の生年別推移を示した。
日米とも後代検定の進展とともに特定の種雄牛の後代
に与える影響が増大し、近交係数が上昇していること
がわかる。近交係数は、交配雄の選択によってコント
ロールすることができるが、そのためには、利用する
ことのできる検定済種雄牛の血縁がバラエティーに富
んだものでなければならない。ところが、優れた能力
蛇足だが、逆の場合、つまり日本の種雄牛について
の期待できる候補種雄牛を用いて一定の娘牛を生産
アメリカではどのような信頼度になるかというのを図
し、その娘牛の検定結果から遺伝的能力が優れている
7に示したが、やはり日本と10%程度の差が見られる。
日本の種雄牛が50頭の娘牛で評価された場合の国内の
図9
日米の雌牛の近交係数
信頼度は85%程度となるが、アメリカでは10%程度小
さくなるため、どれほど評価値が国内で高くても
「SIRE SUMMARIES」の上位牛リストには掲載されな
い。少なくとも娘牛が60頭程度揃えば「SIRE
SUMMARIES」上位牛リストの掲載条件※80%を満た
すと考えられる(乳量の場合)。したがって、今後、
海外への遺伝資源の輸出をも視野に入れて改良を進め
ていくためには、種雄牛あたり娘牛数のさらなる充実
6
解 説
と明らかになった種雄牛を選抜・供用するという一連
ータを用いて国際評価が行われることになり、日本が
の後代検定の流れの中では、候補種雄牛が特定の血縁
評価・公表しない中間の時期であっても海外の情報は
に集中していくということはある程度やむを得ないと
インターネット等を通じて得ることができる。
考えられ、特に限られた集団の中で185頭という海外
日本は補助事業によって多くの関係機関等との連携
に比べて規模の小さな後代検定を行っている日本では
の中で、娘牛をランダムに配置すべく組織的に後代検
その傾向が顕著なものとなっている。図10に日米の父
定を進めてきた経緯等もあって、年2回の限定した期
牛別種雄牛頭数を候補種雄牛の段階と選抜された供用
間(11月∼翌年2月及び4月∼7月)に調整交配を実施
種雄牛の段階に分けて示した。規模の小さな日本がア
している。このことは、精液が準備でき次第調整交配
メリカのようなバラエティーの豊富さを求めるのは難
を行っている海外と比べ、僅か(最大で半年程度)か
しいが、一考の余地があると思われる。
もしれないが候補種雄牛の後代検定開始時期が遅れて
いることになり、国際競争の中では不利な状況である。
図10
父牛別種雄牛数の比較
こうした中で、評価・公表回数を日本のみ2回にする
ということは、遺伝的能力の優れた種雄牛の一般供用
開始時期が遅れることになり、さらに国際競争から一
歩取り残される状況になることを覚悟する必要があ
る。
イ ンターブルは受け入れられたか?
「インターブル」という単語そのものは、各種酪農
関連雑誌の記事でも見かけるようになる等比較的認知
されてきたのではないかと思えるが、その中身はどう
かというと、実はまだまだではないかと感じている。
その最も大きな理由は、海外種雄牛の遺伝的能力の表
評 価回数は年2回で良い?
示にTPIやLPI等海外における評価値や信頼度が未だに
利用されていることである。インターブル参加以前は、
従来、国内で行う評価は6ヶ月おきの年2回のペース
海外種雄牛が日本でどのような遺伝的能力を示すのか
であったが、インターブルでは3ヶ月おきの年4回のペ
知るすべもなく※、やむを得ず海外の評価成績で判断
ースで国際評価を行っているため、参加を機に国内評
せざるを得なかったし、また、海外の成績との相関関
価も年4回行うこととし、その都度国際評価と併せて
係を考えるとそのことによって決して誤った方向に進
成績を公表している。しかしながら、利用者や一部関
んできたわけではないが、日本向けの国際評価値を得
係者からは、評価値やランキングの変化が頻繁となっ
ることができるようになった現在では、既に述べたと
たことから、従来のような年2回のペースでの公表を
おり、遺伝的能力評価値は評価を行った当該国で利用
望む声がちらほら聞こえている。
する際にのみ役立つ情報であると認識を新たにし、国
インターブルでは年4回各国から送付されたデータ
内で交配種雄牛を選択する際の基礎資料としては日本
に基づいて評価を行っているが、指定された期日まで
向けの国際評価値を利用するべきである。
にデータを送付しなかった場合には、当該国から前回
※インターブル参加以前にも海外種雄牛の国内評価値を参考情
送付されていたデータを用いて半ば機械的に評価する
報として計算していたが、海外で検定済種雄牛として選抜さ
ことになっている。仮に日本が従来のように年2回し
れた後に精液が輸入され、国内の娘牛の成績をもとに評価さ
か評価を行わず、その中間に行われる国際評価のため
れ一定の基準を満たした海外種雄牛が公表の対象であったた
のデータを送付しなかったとすれば、日本のデータは
め、交配種雄牛として選定するには一世代古いものであった。
3ヶ月間更新されないまま、また海外は直近までのデ
7
解 説
2 005年2月評価からの
変更事項
1.
遺伝ベースの変更
遺伝的改良の進度を判断しづらい。それぞれ一長一短
があり、どちらの方式を選択するかは遺伝的能力評価
を行う各国の事情に委ねられるべきものであるが、イ
ンターブルが定めたガイドラインでは、西暦年の一の
遺伝的能力評価値はEBV(推定育種価)で示されて
位が0及び5となる5年毎に基準集団を変更するステッ
いるが、この数値は、ある特定の集団を基準(遺伝ベ
プワイズ方式を推奨しており、我が国をはじめインタ
ース)としてその平均EBVを0(ゼロ)とおいた場合
ーブルに参加している大半の国がこの方式を採用して
の差で示される。現在は1995年に生まれた検定牛の集
いる。
団を基準としており、ある個体(集団)がプラスの数
2005年2月の遺伝的能力評価は基準集団を変更する
値の場合には、1995年生まれの平均的な検定牛よりも
時期に当たっており、これまで1995年生まれの検定牛
優れており、逆にマイナスの数値の場合には劣ってい
の集団を基準としてきた評価値が2000年生まれの検定
るということになる。ただし、このことは、乳量や乳
牛の集団を基準とした評価値に変わる。具体的には各
成分量、乳成分率、体型形質のうち得点形質、一部の
個体の評価値が各形質毎に表3のように変化する。こ
線形形質など数値の大きなものほど遺伝的に優れてい
れは、評価が行われた全個体に対して一律に変化する
ると考えられる形質の場合であり、体細胞スコアのよ
ものであり見かけ上大きく数値が変動することになる
うに数値の小さなものが遺伝的に優れていると考えら
が、各個体そのもののもつ遺伝的能力やランキングが
れる形質の場合には逆となる。また、一部の線形形質、
大きく変動するわけではなく、あくまでも、1995年生
例えば「高さ」などは数値が大きいほど遺伝的に「十字
まれ及び2000年生まれの検定牛集団の遺伝的能力の差
部高」の高いことを示すが、このような形質の場合に
分が見かけ上の数値の変化として表れるものである。
は、数値が大きい(または小さい)ほど遺伝的に優れ
したがって、仮にこれまでプラスで表されていたもの
ているとは必ずしも言えず、その時点における改良目
がマイナスで表されるようになったからといって遺伝
標等によって優劣の判断は異なったものになる。
的能力が下がったわけではないということに注意する
遺伝ベースには、大きく分けてステップワイズ方式
とローリング方式の2種類の方式がある。ステップワ
必要がある(図11参照)。
図11
イズ方式とは基準となる集団を一定の期間固定する方
遺伝ベースの変更に伴う評価値の変動の
イメージ(乳量の例)
式であり、ローリング方式とは毎年基準となる集団を
1年ずつ移動させていく方式のことをいう。ステップ
ワイズ方式の場合には、基準集団を固定している一定
の期間内は、その数値の大きさで優劣を判断すること
ができ、遺伝的改良の進度を判断しやすいが、基準集
団を変更する際には、固定されていた期間の改良進度
の大小によって数値が動くため、利用者にとって違和
感を感じることがあるかも知れない。一方、ローリン
なお、乳用種雄牛評価成績(赤本)にはSBV(標準
グ方式の場合には、基準集団が変更されても、その数
化育種価)も表示している。現在のSBVは、ある種雄
値の変化は1年間の改良進度分であるため、利用者の
牛のもつ形質毎の特徴が1995年生まれの検定牛集団に
違和感は少ないが、毎年基準集団が変更されるために
対してどの程度かというのを標準偏差単位で示したも
表3 推定育種価(EBV)および総合指数(NTP)の変化量(見込み※)
形質
変化量
形質
変化量
乳量
-475(kg)
決定得点
-0.27(点)
乳脂量
-13(kg)
乳器
-0.36(%)
乳蛋白量
-14(kg)
肢蹄
-0.12(%)
無脂固形分量
-40(kg)
総合指数(NTP)
-590
※2005−2月評価の際の変化量は、改めて計算するためこの値とは異なる。
8
解 説
のであり、2005年2月からは2000年生まれの検定牛集
と考えられることから、2003年8月にインターブルに
団に対する特徴の程度を示すことになるので、プラ
よる乳用種雄牛の国際能力評価に参加したことを機
ス/マイナスが逆転する可能性があるが、この場合も
に、より見易く、また、掲載する種雄牛の範囲をスリ
その個体の遺伝的能力が変化したわけではないので注
ム化する等の変更を行い、一方で掲載する種雄牛の範
意する必要がある。
囲を拡大した有償による情報提供(CD-ROMによる)
を開始した。
2.
乳用種雄牛評価成績(赤本)の変更
こうした中で1年半が経過した赤本の内容を改めて
乳用種雄牛評価成績、いわゆる赤本は1984年に開始
検討し、2005年2月評価の赤本からその内容を変更す
された全国統一的な後代検定事業によって評価された
ることとした。
種雄牛の遺伝的能力を1989年にはじめてとりまとめ発
①掲載範囲
行したものであり、以来15年間評価を行った都度発行
している。赤本は、本事業に参加していただいている
海外種雄牛の日本における遺伝的能力評価値は、
酪農家(牛群検定参加酪農家)をはじめ乳用牛改良に
2003年8月からインターブルによる日本向け国際評
係る関係団体、家畜人工授精事業体、国、都道府県の
価値を掲載しているが、2004年よりインターブルに
行政指導機関や試験研究機関等に対し、飼養する雌牛
おける国際評価へのデータ採用条件が変更されたこ
への交配種雄牛選択のための資料として、或いは今後
と等を踏まえ、下記のように変更することとした。
の乳用牛改良のための基礎資料としての役割を担うこ
変更に当たっては、現在牛群検定参加酪農家が飼養
とを期待し、原則として無償で配布されている。
する雌牛の父牛の大部分について評価値を見ること
見易さや発行に係る経費等を考えると、掲載する種
ができるよう配慮し、過去に選抜・供用された検定
雄牛の範囲や情報量は多ければ良いというものではな
済種雄牛についても一定の制限(年齢が15歳未満)
く、利用者の利用実態等に応じた情報内容であるべき
の下で掲載することとした。
表4 乳用種雄牛評価成績(赤本)の掲載内容変更−2月及び8月発行分−
旧
国内種雄牛
国内で血統登録されてい
るもの=日本の所有牛
海外種雄牛
国内で血統登録されてい
ないもの=海外の所有牛
新
供用中または供用停止後 1
年以内のもの、及び供用され
なかったもので成績判明後 1
年以内のもの。
供用中または供用停止後1年以
内のもの及び供用されなかったも
ので成績判明後1年以内のもの。
上記以外の検定済種雄牛で15
歳未満のもの。
10歳未満のもの及び直近
10歳未満のもの及び15歳未満
までに輸入実績のあるもの。
で直近までに輸入実績のあるもの。
※これら以外の条件については従来どおり。
②泌乳形質の記録数
ととした。
泌乳形質及び体型形質について、遺伝的能力評価
に用いた娘牛の頭数及びそれら娘牛が属した牛群数
③母牛名号と登録番号
を表示している。体型形質については、現在は初産
赤本には、種雄牛の血縁情報として父牛及び母方
時の記録のみを評価に用いているため「娘牛数=評
祖父牛(MGS)の登録番号と名号を掲載しており、
価に用いた記録数」であるが、泌乳形質については
1989年に初めての赤本を発行して以来現在まで継続
同一の娘牛であっても初産のみならず2産以降5産ま
している。しかしながら、これまでの間、評価方法
での記録があれば評価に採用しているため、必ずし
はMGSモデルからアニマルモデルへと移行してお
も「娘牛数=評価に用いた記録数」となっておらず、
り、種雄牛の父牛や母方祖父牛のみならず、母牛を
実際に評価に利用された記録数は赤本上では不明で
はじめとする雌牛情報を含む幅広い血縁情報を利用
あった。そこで、2産目以降の記録追加が正しく判
し評価が行われるようになっている。
断できるよう泌乳形質について記録数を表示するこ
9
一方、2003年8月にインターブルの行う国際評価
解 説
に参加したことにより、我が国の国産種雄牛が世界
産子が国内で血統登録可能かどうかという情報を得
的な水準にあることが確認されているが、このこと
た上で販売されるという保証が必ずしもあるわけで
は、我が国で飼養されている雌牛の中にも優秀な逸
はない。
材が存在することも示しており、2003年に北米で
登録は改良の基本の一つであり、赤本を通じて産
BSEが発生し生体輸入ができなくなったこととも相
子の血統登録の可否についての情報を提供すること
まって、国産種雄牛生産の機運が高まってきている。
は有益であると考えられることから、赤本に掲載さ
こうした状況等を踏まえ、赤本に種雄牛の血縁情
れる種雄牛に血統濃度を付すとともに93%を下回る
報として母牛の登録番号及び名号を加えることとし
種雄牛についてはその産子が血統登録できない旨を
た。
記載し注意を促すこととした。
④血統濃度
⑤難産出現頻度
オランダなどの種雄牛の中には、世代を遡ると他
かねてより、泌乳や体型に係る遺伝的能力評価値
品種が交配されたために、日本の雄牛血統登録の条
公表と同時に分娩難易に係る評価値も公表できるよ
件である「血統濃度93%以上」に満たないものがあ
う強い要望があるものの、未経産へのホルスタイン
る。しかしながら、インターブルでは、何れかの国
種の交配が少ないこと等により評価に用いるデータ
がホルスタイン種として認めた種雄牛は"ホルスタ
が不足しているという根本的な部分への対応につい
イン種"として国際評価が行われていることから、
ては未だ目途の立たない状況である。
現行の赤本への海外種雄牛の掲載条件ではこうした
このため、当面の対応策として、牛群検定の記録
種雄牛もホルスタイン種として掲載されるケースが
をもとに50件以上の単子分娩記録がある産子の父に
ある。実際に、2004-8月評価に係る赤本では2頭が
ついて、難産(スコア4および5)出現頻度を掲載す
このようなケースに該当したため、その産子は我が
ることとし、また、初産牛と2産以降で大きく傾向
国ではホルスタイン種として血統登録ができない
が異なると考えられるため、初産及び2産以降に区
旨、注意を促したところである。
分した記録数を併記することとした。
一方、海外種雄牛の精液が輸入される際に、その
●ETニュースレターNo.28
●ETニュースレターNo.27
●ETニュースレターNo.26
●ETニュースレターNo.25
●ETニュースレターNo.24
●ETニュースレターNo.23
●ETニュースレターNo.22
………………………1,800円
………………………1,800円
………………………1,800円
………………………1,800円
………………………1,800円
………………………1,800円
………………………1,800円
価格は送料・税込み
●その他資料
LIAJ News《当団機関紙》
─隔月 発行─
卵通信《当団の体外受精卵情報》 ─年4回発行─
DIARY SIRE DIRECTORY 2004-5月
2004 黒毛和種種雄牛案内
お問い合わせ、お申込みは、最寄りの種雄牛センター、または
〒104-0031 東京都中央区京橋1-19-8 大野ビル
(社)家畜改良事業団 事業部
(電話 03-3561-8151 ファックス03-3561-8156)までお申しつけください。
10
報
情
国内
2004年国産検定済種雄牛生産者へ感謝状贈呈
お招きし、ホルスタイン種種雄牛4頭に対して当団よ
り記念品をお贈りいたしました。
3組の方々は、網走市 岩本久男様ご夫妻、山越郡
八雲町 舟橋秀貴様、富良野市 三好正倫様ご家族で
す。いずれも北海道の酪農家であり、遠路ご出席をし
て頂きました。
岩本様は、一昨年の表彰式以来2度目となります。
式は三好様の、お子様(舞咲(2才)ちゃん、まひろ
(1才)ちゃん)もまじえた非常に和やかな雰囲気の中
での表彰式となりました。
去る平成16年12月10日、当団会議室において2004年
式では、当団板井理事長よりお礼を申し上げるとと
国内検定済種雄牛生産者の方々を、お招きし感謝状贈
もに、感謝状と記念品の贈呈を行い、地域、親子、夫
呈式を開催いたしました。この贈呈式では国産検定済
婦、家族の協力無くして、成し得ないこの大きな功績
種雄牛を生産いただいた農家、団体に対し日頃からの
を称えるとともに、3名の方が生産した数多くの候補
改良努力に敬意を表するとともに後代検定事業へのご
種雄牛が現在検定中であることから、再開を心から念
協力に感謝の意を表彰しているものです。
願しました。以下皆様のプロフィールをご紹介致しま
今年で15回目を数える表彰式には、3組のご家族を
す。
北海道網走市 岩本 久男氏
JP5H51554 デ コール ウインチェスター スターバック
JP5H51554 デ コール ウインチェスター スターバック
父:レディスマナー ウインチェスター
母:デコール ジェー スターバック
ら2頭を輩出したデコールの一族は、古くから乳量の
岩
本
久
男
・
栄
子
様
遺伝力が高く、長命なファミリーとして北見地区を中
心に繁栄してきました。特に、このウインスターは体
型バランスがよく、乳脂肪率が高い種雄牛であり、国
産の貴重な遺伝子として全国的に人気を博しておりま
す。今回公表された11月の評価成績でも乳脂量のEBV
ランクは、第1位。また、海外の種雄牛を含むインタ
ーブル評価においても堂々の第2位と国際的にも群を
抜いた遺伝能力を有しています。
また、ウィンスターは次世代の種雄牛生産用種雄牛
遠くオホーツク海を望む小高い丘の上で100頭規模
としても活躍が期待されており、年明け早々には2世
の酪農を営む岩本牧場にとって、今年度選抜のウイン
が誕生し、来年度の後代検定への参加が予定されてい
スターが、2年前に選抜されたサンド スター
ます。
(JP5H01479)に続く、2頭目の快挙となります。これ
11
北海道山越郡八雲町 舟橋 秀貴氏
JP5H51830 ホクト マラソン マナー ベティー ET JP5H51830 ホクト マラソン マナー ベティー ET 父:レディスマナー ウインチェスター ET 母:ブリッジボード ベルウード ベティー
均乳量は常に9,000kg以上を維持され、高い飼養管理技
舟
橋
秀
貴
様
術を誇っておられます。
この度、選抜されたホクトの母“ベティ”は平成7
年度から実施された乳成分改善モデル事業で輸入され
た受精卵の産子で、この母系からは、これまでにも当
団所有のレッドリーフ セカンド チャレンジャー ET
を始め、高能力の種雄牛が選抜され、国内でも高能
力・好タイプとして実績の高いファミリーです。
また、舟橋さん所有のマンフレッドの娘メラニーは
現在もNTPの上位にランクされ、次世代の候補牛が後
道南地方の八雲町といえば北海道酪農の発祥の地と
代検定に参加中です。
言われ、古くから酪農の盛んな地帯としてよく知られ
長年の町ぐるみでの改良に対する取組みの中で選抜
ています。大型酪農の多い北海道のなかにあってこの
されたホクトは、町内の酪農家にとっても、励みと同
八雲町は比較的中規模の酪農家が多く、舟橋牧場も経
時に喜びでもあり、早速、推奨種雄牛として積極的に
産牛45頭、育成牛30頭と少数精鋭の経営の中、牛群平
利用が図られることになっております。
北海道富良野市 有限会社 三好牧場
JP5H51501 RCA
JP5H51501 RCA
サンシャイン ET
サンシャイン ET
JP5H51805 RCA
JP5H51805 RCA
アルカディア
アルカディア
父:イーストビュー インフルエンス マティー ジー 父:レディスマナー ウインチェスター ET
母:RCA ベルウード アニー エー ET
母:RCA セルシアス アニー ET
生産し、この他に個体販売が全体の2割と、文字どお
ん三
、好
ま正
ひ倫
ろ、
ち真
ゃ由
ん美
様
舞
咲
ち
ゃ
り道内屈指のブリーダーとして有名です。この度のア
ルカデイア、サンシャインは共に三好牧場を代表する
アニーファミリーより生産され、平成14年度に選抜さ
れたアトロンを含めますと3頭の検定済種雄牛が誕生
したことになります。
三好牧場では早くから受精卵移植技術を活用され、
アニーファミリーからは今や200頭を超える血縁牛が
血統登録されており、三好牧場はもとより全国各地の
酪農家がこの遺伝子を所有し、いずれもその牛群でト
有限会社 三好牧場のご長男である正倫さんと奥様
ップレベルの能力を発揮しています。先ごろ発表され
の真由美さんは三好牧場の後継者として、その屋台骨
たNTPトップ100位に18頭の血縁牛が含まれているこ
を支えられております。また、正倫さんは、カナダ
とからも、アニーの遺伝能力の高さを伺い知ることが
オンタリオ州のオコーナー牧場で2年半の牧場研修を
できます。
積まれ、その経験を元に経営に参画されております。
現在、三好牧場は経産牛140頭、未経産牛120頭、1
今や国内の遺伝子を語る上でも、アニーは無くては
ならない存在と言えます。
頭あたり平均乳量10,000kg、年間1,400トンの生乳を
12
“酪農は適度な規模で楽しむべきもの
明るくなければ
明るくなければ楽農でない”
『楽農』でない”
鹿児島県鹿屋市東原町
平口(雅人&良子)牧場
パドック
平口牧場のある鹿屋市は、鹿児島空港から約1時間
半、大隅半島のほぼ中央に位置する。この地域は立地
条件に恵まれて県内屈指の酪農地帯を形成し、地域を
挙げて改良に熱心で、牛群検定に真剣に取り組んで
年々顕著な成果を上げている。
位置図
鹿児島空港
●
●お父さんと雅人ご夫妻
鹿児島市
●
桜島
かのや市
ご家族構成は表1に示したが、現在地に入植された
のは先代武光さんで、雅人さんは2代目。昭和56年に
結婚され、3人の子供さんに恵まれた。現在大学生の
佐多岬
長男知人さんが後を継ぐことになっているとのこと
まず地元の大隅酪農協を表敬訪問し、戸塚組合長、
で、後継者も約束されて安泰である。今後は若い活力
内山技師、当団熊本種雄牛センターの東技師とともに
も加わって、平口牧場はますます充実した経営が展開
平口牧場を訪問した。
されることであろう。
訪ねてみると、以前にもお邪魔したことのある酪農
家さんでご夫妻は牛好きの熱心な方、とくに奥さんは
快活そのもので有明町出身であることまで想い出し
この管内の農地は、以前に大規模な畑地灌漑を完成
た。何を言いたいかというと、それほど明るく熱心で
させて沃野となり、野菜類や飼料作物などの栽培が盛
印象に残る奥様だということである。とくに酪農経営
んで、農業に力を注いでいることがうかがえた。
では女性の果たす役割は大きく、「奥さんがしっかり
者の経営は必ず儲かっている」が定番表現である。
表1
一面平坦で、広大な土地が拡がる。周辺の35戸の酪
農家は、それぞれ広い耕地面積を有し一大酪農地帯を
形成している。温暖な気候で、飼料作物などは年2回
ご家族構成と労働力
収穫できる二毛(期)作地帯である。
本人 平口雅人 (49) 経営全般
最近の明るい話題は、地元鹿屋体育大学に在学中の
妻
良子 (47) 管理全般 父
武光 (79) 乾乳担当
柴田亜依さんがアテネ五輪の競泳自由形で見事に優勝
母
キャクヨ(79) 家事ほか後方支援
したことである。街角や事務所などで彼女のポスター
長男 知人
(22) 大学生
長女 明日香 (21) 菓子店勤務
次男 大輔
13
(18) 高校生
(鹿児島市在住)
や写真を多く見かけるが、健康的で明るい笑顔が何と
(同居)
も素晴らしい。いま牛乳の消費が大きく落ち込んで酪
(鹿児島市在住)
農界は苦慮しているが、彼女は消費拡大のPRに是非一
農家訪問
農家訪問
役買ってくれるキャラクターを持ち合わせていよう。
もう一つは過去の話題。特攻隊といえば知覧を連想
表2 経営概要と作付の内訳
飼養頭数
成牛36頭(総勢70頭)
全牛自家産(血統登録)・全牛検定
するが、鹿屋にも特攻隊基地があったことはあまり知
検定済種雄牛の上位牛を供用
られていないようだ。現在も海上自衛隊鹿屋航空隊が
耕地面積
10.5 ha(うち借地5ha)
駐留しているそうだが、当時二十歳そこそこの海鷲た
作 付
夏場
ちが戦闘に飛び立ち900余名が帰らぬ人となったと史
料館の解説にあった。彼らが捧げた尊い命に合掌。
冬場
ローズグラス
2 ha
(ロール用)
ソルゴー
1.5 ha
(ロール用)
トウモロコシ
7 ha
(サイレージ用)
イタリアン
10.5 ha (ロール用)
酪農が大勢であるが、管内の牧場は立地条件を生かし
平口牧場の現在の牛舎は、昭和36年にお父さんの代
粗飼料を自給し十分確保している。1頭当たりの生産
に建てられた。パドック付の搾乳舎、乾乳舎、育成舎
効率が最も高いのは搾乳牛が35∼50頭とされるが、頭
がある。管内は当時推奨された自然流下(ロストル)
数規模が適正で耕地は借地を含めて十分確保してい
式が多く平口牧場も流下式であるが、換気を良くし管
る。平口牧場の頭数規模や作付状況を表2に示したが
理が伴っているので空気の澱みやアンモニア臭が感じ
ロールの出来は香ばしく、物理性があって、嗜好性に
られない。敷料なしのマットであるが、とくに肢蹄の
優れていた。このような食い込める粗飼料を飽食させ
腫れや発赤の牛などは見当たらない。流下式のスラリ
ている限り、殆どの周産期病は防げること受け合いで
ー散布で硝酸態が懸念されるが、これには細心の注意
ある。基本に忠実で、酪農の本道を歩んで儲けを出し
を払っておられるようだ。
ている農家は愚痴ったり、騒ぎ立てたりはしないよう
牛体は白黒の斑紋が鮮明で毛艶良く、適正なボディ
に思える。ご主人は穏やかな方、誇りを持って酪農を
コンディションで、乳房は張りや色調良く、糞の状態
楽しんでおられ、人にも牛にも過分な負担のかからな
も良く、管理が行き届いていることが表れていた。
いゆとりある酪農を営んでおられると感じた。地域活
また検定成績を拝見すると、乳成分は乳脂率がやや
高めながらも目立ったアンバランスさがなく、繁殖や
動にも積極的で、現在管内のヘルパー組合の組合長で
ある。
乳量の足を引っ張る要因になっていないと見られた。
●牛舎入口
●清潔な牛舎内
分娩後の食い止まりで、立ち上がりが悪い牛はほと
酪農家には色々な経営スタイルがあり、それぞれに
んど出ないそうである。検定成績を拝見しても、泌乳
様々な事情を抱えていよう。平口牧場の課題について
初期に体脂肪が過剰に動員されているような異常乳脂
奥さんにうかがったが、あえて挙げれば大型農機具に
率は見られないし、エネルギー不足を示す低蛋白質率
お金がかかること、リピートブリーダーで年1∼2頭淘
の牛は見当たらない。これは既述のとおり、嗜好性に
汰牛が出ること位なそうである。
富んだ粗飼料を飽食させている結果によるもので、乳
多くの酪農家は農機具代の低減や労働力の関係で粗
飼料をも購入し、それによって規模拡大を図る加工型
牛の健康管理の基本といえよう。
概して、疾病牛が少ない牛群は乳房炎牛も少ないと
14
農家訪問
表3「経営の情報」
立会
年月
15/11
16/11
1日当
乳 量
949 kg
1,006
生乳1kg当 1日1頭当粗収益(円)
濃厚飼料費
搾乳牛
(円) 経産牛
1日1頭当
濃厚飼料
給 与 量
飼料
効果
飼 料
乳 価
7.8 kg
3.3
42
88.4
14
12.75
1,694
1,957
7.4
3.7
42
89.1
13
11.39
1,887
2,123
単 価 (円)
乳飼比
表4「繁殖の情報」
立会
年月
平均搾乳 121日≦ 平均乾乳 平均分娩 平均空胎 平均授精 初回授精 平均初産 平均体重
空 胎 牛
日数(日) 頭数(%) 日数(日) 間隔(日) 日数(日) 回数(回) 平均日数(日) 月齢(月) (kg)
15/11
183
7(17)
68
405
103
1.8
75
26
638
16/11
185
9(23)
60
397
147
2.7
78
24
629
いうのが経験則である。因みに11月中旬の出荷伝票の
一時的な乳量を追いかける管理ではなく、繁殖成績
平均体細胞数は12.7万であった。当然Aクラスで100円
を重視した管理を心がけている経営と見なされ、これ
を超える高い乳価となって反映されている。
が牛群の健康や繁殖の成績に連動しているといえる。
給与は自給粗飼料が主のTMRで、栄養バランス上ル
一万kg牛群が喧伝されることが多いが、それが全てで
ーサン乾草を年に30トン購入するそうだが、混合する
はないし、必ずしも儲けの目安とならないケースもあ
濃厚飼料は乳配とビート3kgずつでまかなう。25kg以
る。大事なのは、いかに乳牛を健康に飼って繁殖成績
上の泌乳牛にはこれらの濃飼をトップドレスする程度
を向上させるか、生産コストをいかに低減できるかな
で、ボディコンディションを整えている。また、粗飼
どの中味であろう。
料検定と給与診断、土壌検定も受けておられる。
表3に検定成績表の経営の情報を示したが、直近の
過去1カ間の乳量は367トン、1日1頭当たりの粗収益は
搾乳牛で2,123円、何よりも飼料効果や乳飼比、生産コ
ストなどの経済指標が誇れる牛群である。
●ご夫妻を囲んで 向かって左は大隅酪農協の内山技師
右は熊本種雄牛センター東技師
いま、繁殖成績の大幅な遅延が問題になっている。
●手前の牛は検定材料牛
表4に平口牧場の過去2年の繁殖情報を示した。経営は
常に動いているので繁殖の数字も動くが、データの分
析で遅延した場合の要因や改善点が見えてくる。
都府県の1日1頭当たりの平均濃厚飼料給与量(15年
一般的な実例と比べると、比較的安定した繁殖成績
度)は11.2kgである。食い込めないと思われる18kgも与
で良い部類に属する。その理由は、乳量を追い求める
える極端な事例が見られる中で、平口牧場では8kgに
濃厚飼料の多給ではなく、繁殖成績を重視した管理を
満たない。勿論、濃厚飼料をもっと増やせば、もっと
していることに尽きよう。表5の妊娠牛の授精回数が
搾れることは目に見えている。
示すとおり、2回の授精で約80%が受胎しているので
15
農家訪問
ほぼ栄養管理が伴っているものと見なせよう。預託時
は都府県並みである。
の栄養状態などによって、3回を超える授精や初産分
個体情報を見ると、牛群内評価で10を筆頭に5以上
娩が26カ月齢になることもあるようだが、授精回数3
が77%、パーセント順位では50%以内が66%を占めて
回以内、初産分娩24カ月齢を心がけておられる。
揃った牛群であることが分かる。このことは、表示は
関連して、育成牛の発育を促し初産分娩月齢の短縮
していないが検定終了牛一覧の標準偏差が他との比較
につなげるため哺育の基本を守り、初乳はできるだけ
で極めて小さいことからもうかがえた。
早く、できるだけ多く飲ませること。奥さんのお話で
表7は、検定成績表の改良情報関係の取りまとめで
は生後すぐ一回に3リットルはおろか、5リットルも飲
ある。2年だけのデータであるが、乳量レベルが高く
ませることがあるといわれ哺育をとくに重視しておら
なっていることが大事な点。それを裏付けるのは初産
れた。
牛の補正乳量平均が全牛補正乳量を上回っていること
で、濃厚飼料多給に頼らなくても改良で乳量アップは
図られることを示している。
表6は、牛群改良情報で推定育種価(EBV)等を示
改良上の留意点は、バランスのとれた遺伝的な能力
している。乳量は+460で、他との比較で優位にある。
の向上を図ることであるが、体型上では乳房と肢蹄を
下段の推定生産能力(EPA)も高いことから、育成管
重視していきたいとのことであった。
理も上手くいっていると見られる。乳成分率では、乳
家畜改良アドバイザー 佐藤 末太郎
脂率は遺伝的に高い牛群であり、他の成分率は県また
表5「妊娠した牛の授精回数」
立 会
授精
妊娠した頭数(割合)
年 月
頭数
1回
2回
15/11
18
11頭(61%)
16/11
20
10頭(50%)
3回
4回
3(17)
4(22)
0
6(30)
0
4(20)
表6「牛群改良情報」
数 乳 量 乳脂量
(kg) (kg)
+18
33 +460
+19
+478
+11
2136 +432
+12
+472
+10
5863 +410
+11
+446
+12
271286 +416
+13
+446
+11
110511 +421
+12
+460
+12
381797 +417
+13
+450
E
B
V 頭
E
P
A
あなたの牛群
あなたの組合
鹿 児 島 県
北
海
道
都
府
県
全
国
乳 脂 率 蛋白質量 蛋白質率 無脂固形分量 無脂固形分率
(%) (kg) (%) (kg) (%)
+0.02
+37 −0.03
+12 −0.02
+0.02
+39 −0.03
+13 −0.02
−0.06
+35 −0.03
+11 −0.03
−0.06
+39 −0.02
+12 −0.03
−0.06
+33 −0.03
+11 −0.02
−0.06
+36 −0.03
+12 −0.02
−0.03
+36 0.00
+12 −0.01
−0.03
+38
0.00
+13 −0.01
−0.06
+35 −0.02
+11 −0.02
−0.06
+38 −0.02
+13 −0.02
−0.04
+35 −0.01
+12 −0.01
−0.04
+38 −0.01
+13 −0.01
乳代効果(円) 総合指数
生産効果(円) (NTP)
+35,919 +642
+37,207
+31,350 +505
+34,445
+29,441 +453
+32,167
+31,680 +541
+33,998
+30,727 +534
+33,730
+31,404 +539
+33,920
頭
数
20
産乳成分
+105
754
+85
1980
+80
93280
+94
40145
+85
133425
+92
表7「改良の情報」
立会
年月
平均経産 平均搾乳 搾乳牛率
牛頭数(頭)牛頭数(頭) (%)
1日1頭当乳量(kg) 平均
経産牛
搾乳牛 F %
平均 平均 補正乳量 経産乳量 初産補正 初産期待 補正量(−)
P % SNF% 平均(kg) 平均(kg) 平均(kg) 平均(kg) 期 待 量
15/11
42.4
36.7
86.6
22.4
25.8
3.98 3.29
8.86
7,993
8,160
8,200
7,017
1,183
16/11
41.4
36.8
88.9
24.2
27.3
4.04 3.34
8.88
8,780
8,875
8,987
7,501
1,486
16
高 久 ア ド バ イ ザ ー の
和牛農家を訪ねて
第 10 回
“無角和種のから黒毛和種の繁殖経営に転換し、仕事
の役割り分担を家族で分け合い、粗飼料の自給を図
りつつ、増頭を続けている和牛繁殖経営について"
今回は山口県山口市の北西部、日本海に面し、遥か
んが担当していたそうです(ご主人は今から9年前に
に北長門海岸国定公園を望む、風光明美で気候も温暖
亡くなられました)。昭和60年、無角和種の飼養中止
な、JA萩市管内の長屋静枝さん(57才)方の和牛繁殖
に伴って、黒毛和種の繁殖牛を導入し、以降常時4∼5
経営を取材しましたので、ご紹介いたします。
頭の飼養を続けていたそうです。やがて平成9年、県
1.長屋牧場を取りまく、JA萩市管内の
和牛繁殖経営と長屋牧場について
やJAが中心となって畜産基盤再編総合整備事業が開始
されたのを契機にこの事業への参加と繁殖牛の増頭を
考え、従来からの自宅の牛舎での牛の飼養とともに、
この地域は、昭和50年頃迄は、山口無角和種の供給
この事業で農協が設置した萩木間団地でのJA繁殖牛舎
基地として、盛んに経営が進められていましたが、無
(繁殖雌牛30頭規模・リース)に入植し、繁殖牛50頭
角和種子牛価格の低迷により、無角和種経営が衰退し、
飼養を目標に積極的に増頭。これに対応するため平成
現在ではほとんど無くなり、山口県全域でも200頭程
13年4月、会社勤務をしていた長男の利幸さん(現在
度の頭数となりました。かわって黒毛和種の繁殖経営
35才)が脱サラし、牛の飼養に従事することになりま
となり、現在では、80頭の繁殖雌牛が萩地区で飼養さ
した。このような経営態勢に持っていくため家庭内で
れ、平成15年度の山口中央子牛市場への出荷成立頭数
仕事の役割分担を決め、経営者の静枝さんが子牛の哺
は、雌・去勢込の54頭となっています。なお、山口市
育・育成を、長男の利幸さんが成牛・育成牛の飼養管
場の平成15年度の販売成立頭数は2,775頭で、従って54
理と人工授精を、次男の裕治さんが工場勤務の傍ら繁
頭はその2%です。(ただし、平成14年度までは1%で
殖牛への交配計画・繁殖雌牛の導入を担当。また、サ
あり、最近出荷頭数は増加傾向です)。
ラリーマンと結婚し近くに家庭を持つ長女の恵子さん
長屋牧場は、昭和50年代、義父の直光さんと静枝さ
が長屋牧場の経営管理を担当し簿記の記帳を行うと、
んとで、無角和種繁殖牛25頭を飼養し、繁殖経営を進
まさに家族ぐるみの作業の実施。他に、飼養の補助と
めていましたが、直光さんが亡くなられてから、飼養
して若いアルバイトさんが1名いる状況となっていま
頭数を減らし、静枝さんが飼養を続けていました。な
す。
お、80haの山林を所有している関係から、ご主人は主
平成14年3月からは肉用牛と水稲の複合経営者とし
として山林の管理に従事し、牛の飼養は奥様の静枝さ
て萩市の認定農業者になるなど、積極的な繁殖牛経営
の推進を計ってきたそうです。それを更に推進するた
め、平成15年3月には自宅内に20頭規模の繁殖牛舎を
増設し(県単事業)、平成16年3月には団地での繁殖牛
舎に差し掛けを増設して機能の増加を図り、更に、子
牛生産頭数の増加に伴い、平成16年7月には自己資金
により20頭規模の子牛育成牛舎を団地内に増設し、い
よいよ本格的な経営推進が計られる態勢が整いまし
た。
●長屋さんと一緒に
17
舎で飼養されています。今回団地内の牛舎を見せてい
ただきましたが、真中に通路、両側に牛房があり、牛
房は繁殖牛房を主に分娩房、子牛育成房があり、明る
く、通風も良く、きれいにオガが敷かれ、よい環境と
なっています。他に20頭建の育成牛舎もあり、成雌・
育成牛舎を含めて約60頭が飼養されていますが、牛は
いずれもゆったりと飼われています。成牛の削蹄につ
いては、1年に1回、20万円程度の費用をかけて手入れ
をしているそうで、何れもしっかりした蹄をしていま
●整備された子牛育成牛舎
した。また、自宅には繁殖・育成の多目的牛舎(繁殖
牛用には、10頭用連動スタンチヨン牛房と一部に群飼
(1)増頭及び繁殖成績の推移
用育成房がある)があり、およそ15頭の牛が飼われて
施設の整備に伴い急速な増頭が進められ、成雌牛で
います。自宅と団地牛舎とは、自動車で10分以内の距
13年度には29頭、14年度には30頭、15年度には38頭、
離で作業に支障はなく、計画どおり畜舎も整備され、
平成16年8月現在で成雌牛44頭、育成雌牛9頭、子牛
着々と頭数目標に近づきつつあります。
23頭の計76頭の規模にまでなりました。このような状
子牛下痢予防等の目的で平成13年10月から超早期離
況の中で、生産子牛頭数は13年度に19頭(雌11頭、去
乳の試験的な取組みと併せて技術の研修・視察を行
勢8頭)、14年度には前年からの繰越しを含め31頭
い、平成14年4月からは全面的に子牛の育成を人工哺
(雌17頭、去勢14頭)、15年度には32頭と良好な成績を
育に切換えました。
あげるよういなってきました。これを成雌牛頭数に対
まず繁殖牛の飼養ですが、分娩して3日目に子牛を
する比率で見ると84%、その分娩間隔については、13
離し、人工哺育をしています。妊娠牛には、分娩予定
年度が438.7日と長くなっていますが、14年度は391.3
2ヶ月前から濃厚飼料を1日4回2握り程度を給与し、粗
日、15年度は380.4日と短縮され、多頭飼養での繁殖成
飼料は青草・稲ワラ・乾草等を十分に与え、分娩後1
績としては良好な成績になって来ています。
週間程して母牛が落着くのを待って、成雌グループの
ここで長屋牧場での雌牛について生産地別に状況を
中にもどします。なお、分娩後1ヶ月程度は濃厚飼料
見ますと、山口中央市場を中心として、鹿児島県、熊
をやりますが、以降は濃厚飼料は中止するそうです。
本県、宮崎県からの導入と、自家保留牛となっていま
また、1ヶ月程度で初回の発情が出ますが、あえて交
す。種雄牛別でみると、44頭の成雌牛中13頭が平茂勝
配せず、次の発情で交配をし、それでだめなら、その
の娘牛、他に美津福が5頭、神高福が3頭、北国の7の
次の発情を待ち交配します。これでおよその牛は受胎
8・藤桜・谷茂・義久各2頭、安福165-9を含めて10数
するそうです。なお、人工授精は利幸さんが行います
種類の雄牛の子が各1頭となっています。これを増体
が、受胎率もかなり良好との事でした。人工授精師の
の良い体積系と肉質が期待できる資質系に分けて見る
資格は静枝さんも、次男の裕治さんも持っておられる
と、体積系が少々多い57%程度になっています。
との事です。なお、ここで長屋牧場の更なる特徴を申
次にこれ等に交配する種雄牛ですが、県有牛や平茂
勝等とともに、この地域が家畜改良事業団の平準化事
業に参加している事もあり、美津福等の事業団繋養の
種雄牛となっています。なお、その交配の方式として
は、基本的には体積系の雌に対しては資質系の雄を、
資質系の雌に対しては体積系の雄を交配するようにし
ているそうです。
(2)繁殖牛の飼養と子牛の育成について
長屋牧場の牛舎については、前述のとおり、自宅内
の牛舎と団地内の牛舎とがあり、主として団地内の牛
●青草・稲ワラ・乾草を十分に与えられています。
18
令で人工哺乳を中止し、他の子牛群の中に入れます
(ここ迄は手製のカウハッチで飼います。なお、人工
乳は不断給餌で飽食させます)。ところで超早期離乳
の目的の一つとして授精卵移植の考えもあり、現に北
国7の8・平茂勝・神高福の受精卵を保存しているそう
です。このような哺育・育成をしていますが、これに
伴う子牛の発育目標値は持たず、実際にも子牛の発育
調査等については行っていません。
(3)子牛の販売成績について
萩市農協管内の子牛は、山口中央市場に出荷されて
●アドバイスに聞き入る長屋さん
います。山口中央市場は、現在は1月から始まり11月
し上げると、徹底した粗飼料の自給を行っている事で
迄の隔月6回の開催で、年間販売成立頭数は、平成14
す。16年の実績として秋冬作として飼料園からイタリ
年には2,756頭、平成15年には2,775頭、平成16年に
アンライグラスを1.5ha、夏作では自己転作田から6ha
2,692頭で、近い将来に年間8回開催を予定しているそ
と採取しました(水稲作付1.4ha、その他堆肥交換等に
うです。平成16年の長屋牧場の子牛販売成績をみると、
よる)。これによって、殆んどの粗飼料を自給します
出荷頭数は26頭(雌11頭、去勢16頭)で、その販売金
が、更に一部乾草を購入しています。このような事か
額は税込みで1,054万円となっています。その内訳を見
ら、粗飼料の飽食が十分に可能であると考えています
ますと、1頭当りの平均価格は405千円で、雌が352千
し、濃厚飼料については超早期離乳の方式を取ってい
円、去勢444千円となっています。
るので給与量は少なくてもよいとの事でした。
その日令は、平均して248日、うち雌が257日、去勢
次に子牛の哺育ですが、分娩後3日目から人工の哺
が239日で、体重は雌が228kg、去勢が257kg、これ等
乳をしています。当然これは人工乳によって行われま
の成績を山口中央市場及び全国主要市場平均等と比較
すが、生後3日目の離乳第1日目から3日目が代用乳を1
してみると、表1のとおりなりました。要約すると、
日100g(7倍の湯に溶かす)、次の日には125g、次の2
中央市場平均値に対して出荷体重、平均体重、売上高
日間が150g、下痢の状況を観察して、下痢が無ければ
で多少低い数字になっています。
200g、250gとふやし、2ヶ月令以降は200gとし、75日
チャンピオン獲得!! 雌! 524kg
去る11月29日に開催された、第2回宮城県家畜商協同組合枝肉共
進会で、今年度、注目度NO1の安重福が、枝肉重量524kg、ロース
芯面積63cmと素晴らしい成績でチャンピオンに輝きました。
第2回宮城県家畜商協同組合枝肉共進会
<雌の部チャンピオン>
父
母の父 祖母の父 性別 月齢 枝肉重量 ロース バラ BMS 格付
安重福 雷電
19
糸晴波
雌
29
524
63
9
10
A-5
単価
枝肉価格
3,504 1,834,344
表1 山口中央市場販売成績(平成16年)との比較
市 場
総 販 売 頭 数(頭)
出 荷 体 重(kg)
開催月日
計
雌
去
全平均
雌
去
中央1.6∼7
461
202
259
254
240
265
428,807 395,540 454,110 1,688 1,648 1,714
(長屋牧場)
4
2
2
227
202
251
395,325 354,900 435,750 1,747 1,757 1,736 210 241
11,002 13,685
272
261
281
441,611 400,286 474,833 1,624 1,534 1,690
全国33市場
24,687
販 売 価 格(円)
全 平 均
雌
去
kg 当 単 価
全平均
雌
去
日 令
雌
去
中央3.4∼5
486
203
283
253
244
260
393,681 361,827 416,483 1,556 1,483 1,602
(長屋牧場)
4
- 4
255
-
255
430,238 -
全国33市場
26,428
11,865 14,563
276
265
286
434,824 397,243 465,442 1,575 1,499 1,627
中央5.10∼11
538
236
263
249
274
408,048 367,060 440,078 1,551 1,472 1,601
(長屋牧場)
9
4
244
244
245
393,987 345,713 442,260 16,147 1,417 1,805 252 233
全国33市場
26,477
281
269
291
442,656 403,261 475,301 1,575 1,499 1,633
中央7.6∼7
437
245
261
246
273
410,444 372,705 440,019 1,573 1,515 1,612
302
5
11,998 14,479
192
430,238 -
-
1,687
234
(長屋牧場)
2
1
1
258
235
281
380,100 321,300 438,900 1,473 1,367 1,562 276 225
全国33市場
16,756
7,502
9,254
278
264
289
474,925 428,841 512,284 1,708 1,624 1,773
371
151
220
261
244
273
460,936 417,650 489,858 1,766 1,712 1,794
(長屋牧場)
5
2
3
250
243
255
420,525 367,500 473,550 1,682 1,512 1,857 296 260
全国33市場
18,730
8,222 10,508
276
264
286
472,498 430,626 505,261 1,712 1,631 1,717
中央9.14
中央11.5
399
191
208
251
238
264
404,079 400,039 484,519 1,769 1,681 1,835
2
2
- 216
216
-
371,700 371,700 -
16,254
7,261
8,993
中央
計・平均
2,692
1,175
1,517
(長屋牧場)
計・平均
26
11
15
全国33市場
計・平均
129,332 57,850 71,482
276
262
287
467,717 423,463 503,447 1,695 1,616 1,754
257
243
267
424,334 385,804 454,178 1,651 1,588 1,701
245
228
257
405,252 352,222 444,140 1,654 1,545 1,728 257 239
276
264
287
451,691 413,953 489,428 1,637 1,668 1,705 295 281
(長屋牧場)
全国33市場
-
1,721 -
251 -
つためには、現在やっている飼養の方法を、しっかり
と数字でつかんでおく必要がありますので注意して下
2.
まとめ
さい。次に、生産子牛の育成です。最も重要な事は、
どのような子牛を造っていくのかの目標を持つという
以上長屋牧場についてお聞きした事を述べてきまし
事です。このためには、何日令で出荷をするか(隔月
たが、改めて、これらの諸項目について分析させてい
市場開催ではなかなか出荷予定、日令の目安が立たな
ただきます。
い面もあります)。その時の発育値を、雌・去勢別に
体高・胸囲をどの程度にするかの目標を持つ事が必要
(1)繁殖牛及び育成牛の飼養について
豊富な自給飼料を利用して繁殖牛を飼養する結果、
です。そして、それを確認するため、毎月1回牛の日
をつくり、子牛の全頭というわけにもいきませんが、
濃厚飼料の給与量については、やや不足かとも考えら
5頭とか10頭の規模で生時から出荷まで測尺をして頂
れる量ですが、給与の実態が、量は計らず、2にぎり
く事です。その理由は、子牛は毎日発育を続けていま
とか4にぎりという給与方法については、時に量を計
す。その発育値を通じて、子牛は、飼い主に対して現
ってみる事が必要と考えます。なお、分娩後の発情再
在の飼い方で良いとか、悪いとかという事を知らせて
帰は1月目と早く、次の発情で種もつくという事なの
いるのです。そこでその発育値を計り、知る事により、
で、濃厚飼料の給与量はこれでも良いかとも思われま
牛がなんといっているか、この飼い方で良いのかを判
す。しかし、今後の受胎率の向上と、成績の維持を保
断する事が出来るのです。私は、これを子牛と話しを
20
しながら育成するといっています。誰に聞くよりも牛
入れ、調教等があると考えます。まずここで、血統に
に聞く事が最も確実です。母牛の系統やら、父牛の血
ついて考えてみましょう。良い子牛というものは、時
統によって子牛の発育はいろいろと変わるものです
代によって変わっていくものです。例えば、バブルの
が、せめて、およその発育…その発育目標値をつくり、
頃は肉質の良い牛肉が高く売れました。従って子牛も、
実際の測定値と比較しながら、子牛育成飼養を進めて
将来肉質のよくなる資質系、兵庫の系統の子牛が高く
いく事が大切です。
売れました。バブルがはじけると、高い牛肉が売れな
子牛の発育目標値はそれぞれの地域でつくる必要が
くなり、肥育牛の売り上げ高が下がりました。そこで
あります。具体的には、まず、子牛が生まれた時の体
肥育農家はお金を上げるために枝肉が沢山とれる大き
重の目標から始まります。例えば子牛の生時体重は雌
くなる素質を持つ体積系の子牛を希望する時代へと変
で25kg、去勢で30kgとか、生時体高は雌68cm、去勢
化してきたのです。長屋牧場で盛んに導入した平茂勝
70cm、平均して70cm、とか、体高は6月令までは、毎
などはその例です。しかし単に大きくなるだけではい
月雌で5cm、去勢で6cm伸ばすとか、6月令を過ぎれば、
けません。肉質もある水準以上の肥育牛でなければな
1月当りの増加目標を3cmにするとかという事です。そ
かなか売上げは伸びません。となると、父牛が体を大
うすると、去勢牛なら6月令で6cm×6月=36cmの増加、
きくする系統ならそれを交配する雌牛は肉質を良くす
それに生時体高70cm分を加え106cm以降10月令出荷と
る系統でなければならず、また、その逆もあるという
なれば3cm×4月=12cmを加えて118cmとなります。わ
事です。更に知名度の問題があります。その雄牛の子
が家の子牛はどのように発育しているかを逐時確認す
牛が沢山生産されていて、各地で成績を上げている、
ることにより現在の飼養方式の改善に役立つ事になる
肥育農家に、それも全国的によく知られている雄牛の
のではないでしょうか。
子。又は、若い雄牛でも、後代検定の成績等から、こ
の雄牛の子はその時代に合ったよい肥育牛になると考
えられるなどの各種の条件を満たすものではなければ
(2)子牛の販売について
子牛の販売状況については、表1に示しましたが、
高くは売れません。その点、全国に精液を配布してい
る事業団の雄牛は知名度も高く、わが家の雌牛に合っ
今までは、畜舎の関係から早くに出荷せざるを得ない
た血統のものも沢山あると思います。山口県内の種雄
等の理由があったそうです。畜舎その他の態勢もとと
牛とともに、それ等の雄牛も、積極的に使ってみる事
のった現在、今後の経営に当たっては、最も重要な事
が必要と考えます。
として、子牛の販売対策について考える必要があると
次に、発育状況についてです。全国の成績で見ると、
思います。まず表に見られるとおりの結果から、わが
1日当り増体量は、雌牛で0.8kg、去勢牛では0.9kgとな
家の販売価格目標を中央市場の平均価格に置くとか、
っています。例えば、雌で生時体重を25kgとすれば、
或いは全国平均価格並に、更にそれ以上の販売価格を
280日間飼うと280日×0.8kgで224kgの増体となり、生
ねらい設定するという事です。
時体重25kgを加えれば、249kg以上となります。
子牛の価格を決定する要素については、まず血統で
もし、全国平均の264kgまで持っていくとすれば
あり、次には子牛の発育状況があり、更には子牛の手
25kgを引いて239kg増体させねばならず、1日当増体量
を0.8kgとすれば、これで割って298日齢まで飼うとな
るわけです。長屋牧場の場合、ここまで飼う必要もな
いでしょうが、現在の飼養日数ではやや、早すぎると
考えられます。これについては中央市場で高く売れて
いる日令、体重はどのようになっているかをよく調べ、
その結果から決めていけば良いと思います。最後に手
入れ、調教の問題がありますが、これはいうまでの事
もありません。なお、注意を要する事は、市場価格で
お気づきのとおり7産を越えると、一般的に子牛は安
くなります。従って、仮に子牛を6産取るときめたと
●さっそく体高を測りました
21
すれば、毎年子牛を生ませる事は困難なので、期間は
7年かかるとして、成牛となって7年間で6産させると
を導入する等、ますます、精度の高い記録・記帳を行
いう目標になります。50頭の成雌牛経営とした場合は、
い、分析し、将来の経営改善のための重要な基礎資料
7で割って7頭、これが1年間に更新すべき頭数となる
としてご活用下さい。
わけです。これは大変な事ですが、これを怠ると、途
なお、将来に備えて、恵子さんの名前で農協に預金
端に老牛がふえ、受胎率が低下するとともに、子牛価
口座をつくり、子牛を市場で1頭売る毎に農協が3万円
格も安くなるので注意して下さい。肥育農家の皆さん
を天引きし、この口座に振り込み、妹さんのやり甲斐
は、いまの時代に合った良い子牛を目標に購買してい
にするとともに、何かの時の非常用対策の貯金にした
くものです。子牛価格を高めるためには、以上のよう
らとお話したところ、経営者の静枝さん、利幸さん、
な沢山の条件が必要となります。長屋牧場の態勢で進
勿論恵子さんも喜んで、それをやっていこうとの話に
むならば勿論、子牛価格を高める事は十分に可能です。
なりました。
よく考えて進みましょう。
長屋牧場がますます発展されますように、心からお
最後に、多頭飼養になりますと、経営管理が極めて
祈りいたしますとともに、今回の取材にあたりまして、
重要な事になります。各種のデータの収集に記録及び
資料の提供やいろいろなお世話を頂きました山口県畜
整理、これが非常に重要な部門になってきます。長屋
産振興協会改良増殖部の野島技術主任さんに厚く御礼
牧場の場合は、結婚して近くに住む恵子さんが経営管
を申し上げ、筆を置かして頂きます。
理を担当し、簿記の記帳を行っていますが、パソコン
実力発揮!! 松福美
昨年、12月13日に行なわれた、近江牛枝肉共励会(35頭出品)で、なんと松福美が
6頭出品されました。さらに4頭が格付け“A−5”と素晴らしい成績でした。
種雄名
母の父
性 別
枝肉重量
格 付
単 価
枝肉金額
松福美
糸北富士
雌
410
A-5
3,862
1,583,420
松福美
竜雲
雌
423
A-5
3,412
1,443,276
松福美
糸晴波
雌
380
A-5
3,207
1,218,660
松福美
北国7-8
雌
409
A-4
3,002
1,227,818
松福美
第22平茂
去
518
A-3
2,002
1,037,036
松福美
安福花
去
529
A-5
1,852
979,708
22
1.家畜市場平均価格の推移
(IVF・F1スモール)(税込み)
45
40
販
売
価
格
35
30
25
20
15
10
5
13
13.03
13.04
13.05
13.06
13.07
13.08
13.09
13.10
13.11
14.12
14.01
14.02
14.03
14.04
14.05
14.06
14.07
14.08
14.09
14.10
14.11
15.12
15.01
15.03
15.04
15.05
15.06
15.07
15.08
15.09
15.10
15.11
16.12
16.01
16.02
16.03
16.04
16.05
16.06
16.07
16.08
16.09
16.10
16.11
.1
2
0
IVF雄
IVF雌
2.H16年12月分IVF産子市場成績
F1スモール雄
F1スモール雌
(スモール市場、雄、雌、種雄牛別)
(税抜き)
雄
種雄牛名
安福165の9
福栄
美津照
計(平均)
頭数
18
23
4
45
平均日齢(日)
87.4
89.9
84.8
88.4
平均体重(kg)
99.7
100.7
103.5
100.5
平均価格(円)
369,800
387,100
405,000
381,800
雌
種雄牛名
安福165の9
福栄
美津福
計(平均)
頭数
9
8
1
18
平均日齢(日)
87.3
87.5
74.0
86.7
平均体重(kg)
86.3
89.1
85.0
87.5
平均価格(円)
279,700
241,100
294,000
263,300
63
87.9
96.8
348,000
合計(平均)
3.コメント
①今回は、66頭上場され63頭売買された。
②種雄牛別では、福栄の産子31頭(49%)と上場が多く、当市場初めて、安福165の9を上回った。
③価格面では、雌雄とも先月に比べ約2∼3万高で、特に、福栄の♂産子が、92日令142kg561,750円(税込み)の高
値で売買され、当市場の記録であった。
④美津照の産子が上場頭数は少ないものの雌雄とも高値であった。
⑤今回は、新しい人も含め購買者が多く、市場の活気が目立った。
23
熊本県畜産農業協同組合 徳丸常務理事を座長とし
て活発な意見が出されたが、生産者からの主な質問は
「購買者が求める牛」をキーワードとして、「求める月
齢と体重は?」であった。購買者からは「3ヶ月齢で
120∼130kgは欲しい。しかし、あまり大き過ぎて
も魅力はない」との回答があった。また、「産まれた
子牛は早期離乳して早期粗飼料給与をしていたが、こ
れだと80∼90kgくらいにしかならない場合が多い。
最近は乳をたくさん飲ませているが下痢の問題もあり
平成16年11月22日(月)、熊本県家畜市場において、
悩んでいる」との質問には、購買者からは「早い時期
IVF産子の生産者並びに購買者を対象とした意見交換
に粗飼料を与えても胃の絨毛が発達しておらず、あま
会が開催された(主催:熊本県畜産農業協同組合、協
り消化する事ができない。また、生乳だけでなく人工
(社)家畜改良事業
賛:熊本県畜産農業協同組合連合会、
乳も与えて貰いたい、そして3ヶ月以降に粗飼料を与
団 熊本種雄牛センター)。熊本県ではE.T技術の普及に
え、しっかりした腹を作って欲しい」との回答があっ
先進的に取り組んで来ており、体外受精卵については
た。この他に生産者側から「除角して上場した方がい
平成3年から利用が始まっている。当初、産子は乳用
いか」、「今後、注目している種雄牛はあるか。また新
子牛市場へ上場されていたが、体外受精卵移植の普及
規メニューの“安茂勝”はどうか」といった質問があ
により県内はもとより九州各県からの上場頭数の増加
り、それぞれ「除角してもらうと助かる」、「体外受精
に伴い、受精卵産子を中心としたE.Tスモール市場が
卵は母方の血統がわからないので、なるべくばらつか
平成12年5月より開設された。上場頭数の増加と共に
ない安定した種雄牛産子が(セリの)ボタンを押され
哺育育成技術の向上が見られ、近年には安定した高値
る傾向にある」という意見であったが、購買者によっ
での販売が行われている。また、購買者についても県
ては「除角はしないでほしい」や「新規種雄牛を使う
内・外から定期的に来場があり、各地で開催される枝
のは大いに結構」といった意見もあった。また、家畜
肉共励会等においてIVF産子が上位入賞するなど、高
改良事業団に対し「性判別卵について詳しく教えてほ
い付加価値が認識されるようになった。この様な状況
しい」「情報付体外受精卵について採卵した雌牛の血
の中、更なる哺育育成技術の向上と購買者の求める子
統や枝肉情報を公開してほしい」といった意見が述べ
牛生産を希望する生産者や移植技術者の皆さんから、
られた。
購買者を交えた意見交換会を行いたいとの要望があり
今回の開催に至った。
※当日のETスモール市場は今年度最多の200頭超の
上場となり、予定時間よりも1時間ほど遅れてか
らの意見交換会開催であったが、生産者・購買
最後に徳丸常務理事より「限られた時間の中であっ
たが、活発なやり取りが行われた。年に2回から3回の
意見交換会を行って更に市場を活性化していきたい」
と挨拶があり第1回目の意見交換会が終了した。
(熊本種雄牛センター 原澤 幹夫)
者・関係者を含む約60名の参加があった。
主催者である熊本県畜産農業協同組合 池辺参事よ
り「意見交換会というのは初めての試みである。3∼4
ヶ月齢での上場である為、生産者は育成の苦労等もあ
るであろう。市場や事業団への要望があれば併せて聞
かせてほしい。」と挨拶があり、(社)家畜改良事業団
鈴木理事から「現在、全国の市場でIVF産子が上場さ
れるようになったが、熊本県市場が最大の市場であり
注目されている。また、性判別した体外受精卵の供給
も始めており、今回上場された美津照産子は性判別卵
由来である。この意見交換会で、繁殖・肥育両サイド
がより良くなって行ければと考える。」と挨拶があっ
た。
24
埼玉県坂戸市 シンボライズファーム
亀田 康好
新年あけまして、おめでとうございます。昨年は、
日本のみならず、世界中が自然災害に見舞われた年で
あった。本年は是非、穏やかな年であるよう祈りたい。
酪農界にとって、今年のメインイベントは、5年に一
度の全日本ホルスタイン共進会(ジャージー共進会も
併催)であろう。第12回全共は、栃木県壬生町で「と
ちぎファームフェスタ2005」として開催される。「見
る」だけのイベントから、みんなが「参加する」イベ
ントとして、全共の新しい方向付けを示すべく様々な
●出前授業に参加した、東京の小学生たち
プランが準備されている。酪農家なら一度は出品して
だけに期待通りの乳牛を出品できるかどうかは「神の
みたい全共でもあり、地域を越えた交流の場としても、
みぞ知る」に近いものがある。無念の涙をのんだ酪農
また消費者への酪農理解を深める場としてもその役割
家の方が多いのだから、「是非、6回目の出品を」と願
は大きい。関係者のみならずとも「とちぎファームフ
うのは「欲張り」だと言われるかもしれない。5回の全
ェスタ2005」の成功を祈りたい。
共出品の中で、盛岡全共で連続入賞を逃した後の熊本
私は、幸運にも過去において開催された5回の全共へ
全協での復活入賞は、忘れられない感動体験であった。
の出品に恵まれている。第6回(淡路)・第7回(前
今日まで、私の乳牛改良を支えてきた原点は、初出
橋)・第8回(盛岡)・第9回(熊本)・第11回(岡山)
品であった第6回淡路全共である。
に延べ8頭の自家産牛(第6回以外は経産牛)を出品で
“ハピースト アールチェ バターガール”。第2部
きた。幸運にも、というのは、まさに5年に一度の全共
(16∼20ヶ月未満)の出品牛である。この牛は、私が
昭和48年春、就農した時に、唯一の登録牛だった牛に
埼玉県所有のバターボーイモニター(父ホワイトバー
チバターボーイ)を交配して誕生した、当場初の自家
登録牛である。
県共進会にも出品経験の無い若造が、県全共選考会
を経ていきなり全国デビューし、さらに1等4席に入
賞してしまった。まだ牛飼いの右も左もわからない私
が、自家産牛を一生懸命に育てての結果だけに、「シ
ョウは、自家産牛で」の意を強くしたのは言うまでも
ない。
●子供たちの“まなざし”につい、力が入ります。
25
従ってこの入賞が、今日までの30年間、乳牛改良を
継続
継続できた原点であり、支えであったと思う。牛作り
の面白さ、難しさが、共進会の魅力でもある。愛牛と
の『出会い』の楽しみもある。その愛牛を通じて多く
の共進会仲間との『出会い』もある。差し詰め今回は、
愛牛との『出会い』に焦点を当ててみたい。過去の全
共出品牛は、それぞれ思い出に残る牛たちである、そ
れぞれのドラマもあった。経済的にも、すべて乳量
10,000kgを超える成績を残してくれた。第8回盛岡全共
に出品した“シンボライズ ポーテージ ローレンス”
は11産し、9回の検定成績を残したほか、都府県産初
の生涯乳量100,000kgを越え106,076kgの成績を残して
いる。また、第11回岡山全共出品牛の“シンボライズ
●林克郎関東生乳販連常務と!
と登録は継続が大切であると教えられた牛である。
こうした「わが家の名牛たち」も、当然別れのとき
アールチェ マレット”
(前出バターガールから6代目)
が来る。BSE発生前までは夜の搾乳後に自分でと畜場
は、2産目から5回連続305日検定で1,000ポンドを記録
へ運搬して「ご苦労さん」「ごめんなさい」と声を掛
して、現在、7産目の検定中である。共進会で楽しみ、
け別れてきた。名牛たちには少量のエサを置いて来た
経済的にも貢献してくれた愛牛たちは、心に残る『出
こともある。
会い』だと言える。
乳牛の改良を志して30年余り。検定と登録は、手間
現在まで生涯乳量100,000kgを記録した牛は、記録
も費用もかかる。愛牛たちへせめてもの感謝の意を含
が確認できる5頭と、他にも検定登録申請漏れの2頭を
め、続けてきたのだが、その費用対効果を実に大きい
含め、7頭がいるが、これらの牛たち1頭1頭が、供に
ものだと感じている。貴方の牧場にも、必ずこうした
生活する時間が長いだけに心に残るわが家の名牛たち
名牛たちがいるはずである。「我が家の名牛たち」と
である。“クリスチーナ”は高泌乳牛の飼い方を体で
の出会いに気付かずにいたとしたら、実にもったいな
示して教えてくれた牛である。“ローレンス”は検定
いことだと思う。
気付かぬ名牛との出会いを演出してくれるのは、検
定と登録であろう。それは、酪農経営のエッセンスで
もあり、経営へのエネルギーとなるだろう。
では、また。
●子供たちは総立ちでした!
生涯検定記録
名 号
総日数
(日)
総乳量
(kg)
総乳脂量
(kg)
平均乳脂率
(%)
シンボライズ レイン ビューティ クリスチーナ
3,589
125,255
4,712
3.8
シンボライズ ポーテージ サイテーション エラ
3,632
123,767
4,450
3.6
シンボライズ ポーテージ ローレンス
3,399
106,076
3,712
3.5
シンボライズ ロメオ エレーナ
2,789
103,767
4,125
4.0
シンボライズ ポーテージ エー クリストファー
(ローレンスの娘)
3,233
102,091
3,872
3.8
26
鳩野 トミ子
私は鹿児島県日置郡日吉町吉利の東シナ海を見下ろす
高台で、50頭の乳牛を夫と息子の3人で飼っている酪農家
ました。
「百歳以上まで長生きしましょう。
」を合言葉にして、
の主婦です。他に山羊、ポニー、うさぎ、孔雀など10種
介護に努めてまいりましたが、私の力が及ばなかったた
類の動物もいて、ふれ合い体験など、お客様もおみえに
めに残念ながらその目標は達成できませんでした。
なり、忙しい中にも楽しく日々を過ごしています。
16回まで続いている“リレーエッセイ”にバトンタッ
チの話が前号まで寄稿されていました沖縄の喜友名さん
介護をしていた頃の話をご紹介させていただくにあた
り、当時のことについて「文芸ひよし」に載せていただ
いた文章から二つの体験をご紹介したいと思います。
※
からあった時、最初は初めての体験でもあり、戸惑いも
はは
ありましたが、勉強のつもりで酪農をやりながらの体験、
退院してからは姑の世話は全部私が看ることになった
感じた事を私なりに文書に綴っていこうと決心致しまし
のですが、オムツ交換、入浴、食事と、動けない体を抱
た。読者の皆様よろしくお願いいたします。
えながらしなくては…と覚悟していました。しかし、オ
はは
喜友名さんとは、九州交流牧場の催しで6年間、活動を
ムツ交換のとき、姑が自分の足を持ち上げてくれたこと
ご一緒し喜友名牧場にもイベントでおじゃました事があ
に救いがありました。これだったら私も助かるし、風呂
ります。喜友名さんご夫婦は音楽をこよなく愛され、特
場までどうにか連れて行けるかもと望みが沸いてまいり
にご主人の“三味線”は素晴らしいものでした。
ました。そこで私は姑がどうにかオムツが外せて、自分
はは
※
酪農家に嫁いできた私は妻として自信が持て、酪農家
として健康を皆様に届けると自覚できた頃、いつも一緒
のことができるようにならないか色々工夫を凝らしまし
た。先ず、オムツ外しです。オマルをベッドの横に置き、
部屋にビニールカーペットを敷きました。ベッドもカバ
はは
に一昨年99歳で他界した姑がいました。
ーをして、いつ汚れてもすぐ対応ができるようにしまし
はは
若く元気だったころの姑は、厳格な中にも几帳面で優
た。オムツを外したので、当然シーツや寝間着は汚しま
しい人でした。PTA活動にも熱心で、学校給食をいち早
す。これを毎日のようにせっせと洗う毎日が続きます。
く取り入れたり、先進地を視察に行ったり、たいへんな
汚したら洗う、そして入浴…こんな生活が1ヵ月半続きま
努力家だったそうです。私が結婚したばかりのある日、
一緒に大根の草取りをしていたとき「トミちゃん。人に
後ろ指を指されるような嫁にはしたくないので、気付い
たときには何でも言うようにするね。
」と言いました。私
は「はい。何も分からないので色々教えてください。
」と
答えました。言われたときは「時代が違うのに…」とか
「分かっているのに…」などと心の中で思った事でも、1
日経ってからじっくりと考えてみますと、全部当たり前
のことで正しいことだと思え、反省するという毎日でし
た。やはり年の功、人生の先輩は、言葉の重みが違うと
思いました。
はは
そんな姑も、やがて年を取り、介護が必要になってき
27
●近所のお友達との交流
はは
した。姑は私に「苦労をかけてすまないね」と言い続け
ます。
「いいのよ。いいのよ。
」と言う私に通じるものが
あり、汚さないようにしなくては、という意識が芽生え
てきたようで、トイレに行ってみようと手すりを伝った
り、四つん這いになっていくことを試みたりするように
なりました。失敗もありましたが、プラス思考でとらえ
ました。
あるとき「パンツを履きたい」と言いだしたので、す
ぐに用を足せると思い、履かせてみることにしました。
そのパンツを履いて自分で上げ下げをしているうちに、
普通の生活ができるようになりました。
やればできるんだなという確信をつかみました。
●姑と私
はは
日々はだんだん過ぎていき、今では手押し車で庭や牧
ひどい姑の様子に心を痛め、突っ張りを外し、暖かい縁
場周辺を1人で散歩するではありませんか。往診にいらっ
側に連れ出してくれたそうです。それ以来、部屋に閉じ
はは
しゃる先生や看護士さんもそんな姑の姿を見てすごい驚
込めることはやめました。1人にしないで優しく話しかけ
きようです。もうすっかり元気になって、付きっきりに
ることをいつも心がけました。幻覚症状が出たときは、
なる必要もないし、お互いもやりやすくて有り難いこと
同じ気持ちになって、相づちを打つようにしました。逆
です。もしあのとき、オムツ外しを試みていなかったら、
らうと姑の気持ちを混乱させてしまうことになるからで
こんなものかと諦め、オムツをするのは当たり前という
す。姑の言葉に合わせていると、私もだんだん楽になっ
気持ちで、お互いストレスもたまりつつ、ずっとオムツ
てきました。そして介護をしながら「このまま痴呆が治
はは
はは
はは
を付けていたかもしれません。やはり姑の今があるのは、
らないかしら…」とあれこれ考えていました。
はは
本人の生きようとする気持ちと周囲の理解。優しさと励
そして「そうだ。姑が仏教婦人会でお経を読んでいた
ましが大事だということや、孤独にさせないこと…など
ことがあったけど、それを一緒に本を見ながら唱えてみ
が考えられます。
たら…」と考え、実行してみました。姑も思い出したよ
はは
うに唱え始めましたそして「よく覚えていたね」と、一
※
その症状が現れたのは1年前でした。言葉に幻覚症状が
生懸命褒めました。幻覚が起こらないように、お経を唱
現れ始め、そうこうしているうちに徘徊も始まり、夜に
えることで頭の中をいっぱいにしました。姑はお経を思
外へ出て行く日もありました。私たちが酪農の仕事中、
い出そうと必死になって唱えました。さらに先祖様のこ
はは
はは
徘徊して行方不明になったら大変と、姑が部屋から出ら
とを思い出させて「ありがとう」と感謝の気持ちを常に
れないように突っ張りをしたところ、大声を出して荒れ
頭の中にいっぱいにするように会話を続けました。しか
狂うようになりました。
し、私1人でずっと付きっきりではいられません。幸い家
すると、丁度その場に居合わせた息子が、あまりにも
族が手伝ってくれたり、近くに住む夫の姉夫婦が話相手
になってくれたりして協力してくれました。それがよか
ったのか痴呆の症状はいつのまにか消えていったようで
した。元気になってくれて本当によかったです。
あのとき息子が突っ張りを外さず、あのまま部屋に閉
はは
じ込めていたら姑の痴呆はますますエスカレートしてい
ったと思います。今思えば、やっぱり寂しかったんだと
思います。生き物を相手にしている仕事のこと、わが家
の現状などを「どうせ分からないから…」ではなく、話
してあげなければいけないのだと思います。
※
以上の2つが介護中に書いた手記です。参考になれば幸
●誕生祝の宴を孫夫婦と一緒に…
いです。
28
このように何か問題があったとき、工夫し、努力を続
ちよくやることが大事ではないかと思います。家の中に
けることで、解決できないことはないと確信しました。
ばかり閉じ込めないで、戸外へ出て外気に当たったり、
今現在、介護にあたっていらっしゃる皆様、頑張ってく
自然に触れ合ったりすることを勧めます。そして、介護
ださい。私の体験は、避けて通れない人の道です。どう
もたらい回しではなく、同じ人がずっとお世話を続ける
せやるならば、楽しみながら、心を通わせながら、気持
方がよいでしょう。
はは
●動物たちとふれあう姑
29
T O P I C S
イージーブリードトピックス
EBショートプログラムの導入が
年間出荷乳量を増加させた、
上川北NOSAI中川家畜診療所
1酪農家に関する報告
森田 稔
Ⅲ.成績
Ⅰ.はじめに
膣内留置型プロジェステロン製剤(以下EB)と
PGF2α製剤(以下PG)および安息香酸エストラジオ
ール注射液(以下エストラジオール)を用いた定時人
工授精プログラムであるEBショートプログラム(以下
H14.1∼H16.3の期間でEB SPによる人工授精受胎率
は54.5%であった(図2)。
図2 EB SPとEB SP以外の受胎率の比較
54.5
EB SP)が繁殖効率を改善させることは、数々の研究
報告により明らかにされてきた。今回、中川家畜診療
所管内の定期繁殖検診実施農家(スタンチョン・分離
給与・搾乳牛40頭)において、H14.1∼H16.3の約2年
受
胎
率
︵
%
︶
43.1
間にわたりEB SPを積極的に活用し、繁殖成績の向上
EB SP(n=66)
EB以外のAI(n=51)
および年間出荷乳量の向上を認めたので報告する。
卵巣所見別の受胎率は、卵巣静止と診断されたQO
Ⅱ.材料及び方法
群で70%(n=10)、卵胞嚢腫と診断されたFC群で50%
(n=8)、排卵直後と診断されたOV群で42.9%(n=7)、
H14.1から月に2回のペースで、定期繁殖検診を実施
した。フレッシュチェックは分娩後約60日に、妊娠鑑
黄体が触知されたCL群で53.7%(n=41)であった
(図3)。
定は授精後40日以降に直腸検査にて行った。フレッシ
ュチェックにおいて子宮に異常を認めなかった牛およ
び妊娠鑑定マイナス牛は、直ちにEB SP(図1)を実施
した。EB SP開始時の卵巣所見を記録し、卵巣所見別
の受胎率を比較した。また、乳検情報・バルク乳旬報
成績・乳牛情報管理システムを用いて、JMRの推移・
分娩頭数の推移・年間出荷乳量などの調査を行った。
図3 EB挿入時における卵巣所見別の受胎率
80
70
60
受 50
胎
率 40
︵
% 30
︶
70
53.7
50
42.9
20
図1 EBショートプログラム
0日
8日
10
9日
10日
0
QO群(n=10) FC群(n=8) OV群(n=7) OL群(n=41)
エストラジオール
(1mg)注射
JMRはH14.1時点で123.7であったが、次第に下降し
EB挿入
エストラジオール
(2mg)注射
EB抜去
PG注射
人工授精
H14.11に19.2となってからは、H16.1まで20以下で推移
した(図4)。
30
T O P I C S
JMR(日)
図4 JMRの推移
分娩頭数はH13年20頭、H14年16頭、H15年28頭、
140.0
H16年33頭(分娩予定11頭を含む)となった。年間出
120.0
H14
100.0
H15
荷乳量の調査ではH13年211.1t、H14年182.9t、H15年
H16
244.9t、さらに北海道NOSAIがリリースしている乳牛
80.0
情報管理システムによるH16年の予測年間出荷乳量は
60.0
272.8tの見込みであった(図6)
。
本酪農家の経産牛1頭あたり乳量は7000Kgであった。
40.0
またBCSの分娩後の推移を調査したところ、泌乳最盛
20.0
0.0
期(分娩後50∼110日)のBCSは最低値でも2.5であり、
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
初回授精日数はH13年では分娩後119日あったものが
H14年では86日、H15年では79日へと下降し、空胎日
泌乳中期のBCSの回復も良好であった。
Ⅳ.考察
数はH13年で124日、H14年で209日と一旦上昇した後、
H15年で110日となった。H14年12月で一旦上昇してい
本酪農家においてフレッシュチェック牛や妊鑑マイ
るのは、H14年に長期未受胎牛が一斉に受胎した結果
ナス牛に対して、卵巣所見に関わらずEB SPを積極的
と推察された。また分娩間隔は、H13年で463日であっ
に活用し定時人工授精を実施していくことは、繁殖効
たものが、H14年で436日、H15年で448日、H16年3月
率の改善ひいてはそれに伴う出荷乳量の向上に、非常
で402日となった(図5)。
に有効な手段であることが判明した。また繁殖効率が
改善されてきたとしても、目に見える・数字として表
図5
初回授精日数・空胎日数・分娩間隔の推移
図5 初回授精日数・空胎日数・分娩間隔の推移
分娩間隔
初
回
授
精
日
数
・
空
胎
日
数
︵
日
︶
初回授精日数
463
448
436
150
124
100
470 分
460 娩
間
450 隔
︵
440 日
︶
430
209
200
110
111
119
86
するため、繁殖検診は我慢強く、ときには農家を励ま
空胎日数
250
86
402
79
H14
H15
れ程高くない牛群であれば、わざわざEB SPなど使わ
なくても充分発情は来るという意見もあるかもしれな
い。しかし、たとえ発情発見率の低いことが繁殖成績
低迷であったとしても、その酪農家にしてみれば深刻
400
370
H13
本酪農家のような、経産牛1頭あたり年間乳量がそ
410
380
0
しながら実施していく必要があると思われた。
420
390
50
れてくるのは、その1年後であったり2年後であったり
H16.3
な問題に変わりはなく、EB SPを活用して定時人工授
精していくことは意味があると考えられた。本酪農家
においてEB SPで不受胎であっても、1周期目のリター
ンで授精した5頭はいずれも受胎したことから、EB
SPは授精した1周期後のリターンを注意深く見つける
図6 年間分娩頭数と出荷乳量
図6 年間分娩頭数と出荷乳量
出 300
荷
乳
量 250
︵
ト
ン 200
︶
出荷乳量
分娩頭数
ことで、さらに有効なものになると思われた。
33
28
20
分
娩
30 頭
数
︵
25 頭
︶
20
16
150
35
15
100
211.1
182.9
244.9
272.8
50
5
0
0
H13年
31
10
H14年
H15年
H16年
ただし、BCSに示されるように良好な飼養管理はEB
SPを有効活用する上で必要条件であり、牛群ごとの効
果判定において思ったような効果が上がらない場合に
は原因を突き詰める必要があると考えられた。
その 38
能力 検 定 の は な し ⑧
家畜改良アドバイザー
牛群検定成績をどう活用するかについて経営改善、
佐藤 末太郎
被っていることを先ず認識すべきである。
牛群改良、繁殖管理などに触れてきたが、乳質管理や
その数が多くなればなるほど、潜在性乳房炎により
乳房炎対策にも極めて有効である。いま新規検定加入
大きな乳量減を伴い、慢性乳房炎へと移行し耐用年数
農家、とくに頭数規模の大きい酪農家が乳質の改善を
の低下へとつながる。風味が悪くなり、乳質は脂肪や
図りたいという理由で検定に加入するというケースが
乳糖などが低下し逆に塩類が多くなる。カルシウムが
見られる。昔も今も、繁殖成績の向上とともに乳質の
三分の一位に低下し、カゼインも減りチーズの生産量
改善が経営に直結した大きな課題となっている。
が少なくなるなど牛乳成分、加工品質に悪い影響を及
ぼす。甘味を欠いたうま味のない牛乳では、おいしい
潜在性の乳房炎を減らすこと
牛乳のイメージを損ない牛乳・乳製品の消費拡大の足
を引っ張ることになる。
健康食品としての牛乳に、消費者の厳しい視線が向
こうした直接、間接に大きな損失を及ぼす体細胞数
けられている。大手のメーカーが「おいしい牛乳」を
増加の防止対策は避けては通れない課題で、酪農家は
うたい文句に売り出しているが、生乳の品質が良くな
本腰を入れて取り組まなければ生乳を買って貰えない
ければ加工技術でうまい牛乳をつくれるはずがない。
時代が到来しているように思われる。
乳質改善のポイントは、目に見えない乳房炎、即ち
北海道と都府県の体細胞数の比較では、北海道の方
体細胞数の多い潜在性乳房炎を減らすことであろう。
が4万ほど少ないというデータがあるが、側聞するとこ
体細胞数の増加は乳房炎感染の増加と明らかに比例し
ろ道内では将来を見通して、独自に厳しい乳質改善目
ており、臨床型乳房炎の殆どが潜在型レベルの症状が
標を立てて取り組んでいるようである。
悪化したものと見なされる。
従って、体細胞数は乳腺機能や乳房炎診断の指標と
して一般的に用いられており、これが牛群検定のデー
タを見れば分かる。体細胞数の数値によって、乳房炎
感染の程度を知り予防することができる。
乳房炎は感染率は極めて高い。規模の大きい牛群で
臨床型が1頭出ると、潜在型は約30(15∼40)頭も存在
すると言われている。
牛群検定は乳質改善のツール
表1のとおり、毎月の検定成績表には個体ごとの体細
胞数が表示される。その数をチェックして、多い牛や
臨床型乳房炎の発生率をモニターしてみよう。
体細胞数の増加は細菌感染が主であるが、原因菌が
検出されなくても年齢や産次で高く出ることがあり、
概して分娩直後や泌乳末期は高い。一般に年齢や産次
乳質が良くなければ売れない
一般に“ブツ”の出る臨床性乳房炎には神経質にな
が進めば高いと認識されているが、衛生環境の不備の
方が強く関係しているとも言われる。また他の疾病、
サンブリング方法、ストレス、酷暑、エサバランス、
るが、目に見えない潜在性には関心が薄いというのが
蛋白過剰、変敗したサイレージなど色々な要因で一時
実態であろう。その証拠に、体細胞数というと規制が
的に数が増えることがあるので原因を確認し前月、
厳しいとかペナルティを課せられるなどの発想の方が
前々月の3カ月位前のデータと重ねて読み取るとよい。
強いがこれによって酪農家自身が大きな経済的損失を
体細胞数情報は、牛群管理プログラムでも見ること
32
表1 体細胞数
個体別リニアスコアの推移
牛コード\年月 2003/12 2004/01 2004/02 2004/03 2004/04
0301
2
2
2
2
2
0283
7
2
3
2
3
0303
2
3
2
4
0247
2
3
3
2
2
0296
5
3
0249
2
2
2
4
4
0270
3
3
5
5
0304
3
4
3
3
2
0322
4
0313
0297
7
7
7
7
0312
4
4
4
3
3
0331
0272
2
4
0290
3
5
4
7
0327
0274
2
2
2
2
2
2004/05 2004/06
3
3
5
7
7
4
4
3
4
2
4
4
6
5
3
4
3
3
2004/07
2004/08
2
4
5
4
6
2
5
4
2
4
6
3
5
5
5
3
3
3
5
3
3
5
2
2004/09
4
5
6
5
5
7
4
4
6
2
5
4
6
2
4
4
4
7
5
4
2004/10
7
5
5
7
7
6
2
4
5
5
2
3
5
4
3
3
2004/11
7
7
7
7
7
7
6
6
5
5
5
5
5
4
4
4
4
(最新検定日でリニア・スコア4以上の牛を網掛表示)
ができる。表1にリニアスコアを用いた体細胞情報を示
拡大で感染機会が増大していること、高泌乳化で免疫
したが、色分けした視覚化したもので連続して体細胞
反応や抵抗力が弱くなり、乳器形質も傷つきやすくな
数の高い問題牛などが一目瞭然である。
っていること、搾乳性が重視されてしぶい牛が淘汰さ
表2に、バルク乳情報の概略を示した。バルク乳に占
める体細胞数の多い順に個体を並べたもの。ここに引
れ乳頭口がゆるい牛になっていることなどが上げられ
よう。
いた事例は、上記3頭の体細胞数の割合が93.4%でこれ
らを除くと良質の生乳生産となることを示している。
実際に、一部の多い牛が全体の体細胞数を増やしてい
る事例は少なからず見られる。
体細胞数情報を活用して、乳房炎を予防し、おいし
い牛乳を生産することが求められている。
乳房炎による損害は甚大
乳房炎は酪農産業が続く限りつきまとう存在、その
対策は古くて新しい課題である。一説によると、全世
界の乳牛の約40%が一分房以上の乳房炎に罹っている
と言われる。わが国でも、乳房炎による損失額は約700
億円と試算されたり、家畜共済統計によると乳房炎に
よる廃用頭数は年2万頭に達するとされ、莫大な損害を
被っていること間違いない。
乳房炎がはびこる理由は何だろうか。乳房炎は感染
症であり常在菌で駆逐が困難なこと、それが頭数規模
33
表2 バルク乳情報
乳量(kg) SCC(千) バルク中
SCC(千) 比率(%)
035
27.0
6077
601.6
53.19
022
26.7
3055
297.3
26.44
020
27.2
1561
136.8
13.76
037
32.2
131
47.1
1.37
030
21.8
144
40.4
1.02
034
42.2
68
34.4
0.93
033
42.2
59
30.2
0.81
∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼
牛コード
∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼
038
37.7
16
11.3
0.20
031
34.9
12
9.1
0.14
026
47.1
7
7.0
0.11
合計
512.7
11326
100.00
注)バルク乳に占める個体の体細胞数の多い順(15頭/17頭)
体外受精技術はここまで来た!
事業団の体外受精卵をおすすめいたします。
雌牛をやむなく
病気などで廃用
しなくてはいけ
なくなったら…
NTPランク
トップクラス
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♀
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〒104-0031 東京都中央区京橋1-19-8大野ビル2F
TEL 03-3561-8151
ホームページ http://liaj.lin.go.jp/
●
●
●
●
十勝種雄牛センター
北海道事業所
盛岡種雄牛センター
前橋種雄牛センター
0155-54-2889
011-242-9641
019-683-2450
027-269-3311
● 東海近畿事業所
● 岡山種雄牛センター
● 熊本種雄牛センター
0564-57-2055
0868-57-2475
096-279-2647
【 栃 木 県矢
県 矢 板 家 畜 市 場 初 せりにみる今年の躍進牛!】
せりにみる今年の躍進牛!】
上場頭数TOP10(平成17年1月)
雌
1
福栄
2
平茂勝
3
北国茂
4
北国7-8
5
美津福
6
安平照
7
貴安福
8
美津照
9
第6栄
9
北仁
全体頭数/全体平均価格
去勢
頭数
平均価格
日齢単価
頭数
平均価格
日齢単価
合計頭数
84
41
32
25
20
23
11
13
12
9
308
429,300
523,796
411,666
437,220
394,433
450,952
385,360
428,158
374,850
406,350
432,839
1,539
1,808
1,508
1,621
1,476
1,650
1,421
1,622
1,482
1,528
1,579
77
63
34
39
30
25
23
21
9
12
388
554,524
622,367
478,244
534,692
471,625
531,846
517,696
539,450
478,450
532,963
536,596
1,834
1,944
1,700
1,833
1,627
1,784
1,783
1,788
1,682
1,813
1,794
161
104
66
64
50
48
34
34
21
21
696
北国茂 P黒375
北仁 P黒291
全国でトップクラスの平均販売価格を誇り、また家畜改良事業団の種雄牛上場がほとんど占める市場として有名 な栃
木県矢板家畜市場の“初せり”の上場をべスト10までを表にしました。上位10頭の種雄牛で全体上場頭数の87%を占
めています。やはり、一番上場頭数が多いのは、
“福栄”161頭、ついで“平茂勝”104頭、平均価格では平茂勝、福栄が上
位1位、2位を占めております。
ここで注目したいのが、北仁と北国茂です。北仁については、上場頭数が21頭と全体頭数の3%ですが去勢の日齢平
均単価は安平照、美津照、美津福を抜き、福栄、北国7-8の平均に迫る勢いです。 これ は、昨年来の各地での枝肉共励
会の素晴らしい成績を受けての評価と考えられます。 次いで、北国茂ですが、全体上場頭数の10%近くを占めています。
昨年より上場頭数が開催月ごとに増加し、頭数で第3位を占めるまでになりました。みなさんの子牛市場ではいかがでし
ょうか? 平均価格・単価では、まだ上位牛には及びませんが、間接検定成績BMS3.
1の当団藤良系ナンバー1の実力が、
今年ブレイクしたら、矢板家畜市場は更なる進化をとげることでしょう!
お 願 い
80
送り先
皆様からの投稿をお待ちしております。
日頃考えられていらっしゃること、
こんなことをやっているよ、
こんなことあったよ、
という
ようなこととか、
この小紙をお読みになってのご意見、
ご要望などをお寄せ頂ければ幸い
です。400字詰原稿用紙2∼3枚にまとめて、住所、氏名、電話番号、
ファクシミリ番号を
添えてお送り下さい。
〒104‐0031 東京都中央区京橋1‐19‐8 大野ビル内
(社)家畜改良事業団 事業部宛
編・集・後・記
16回を数える、
リレーエッセイは、今号より沖縄の喜友
名さんから、鹿児島の鳩野さんにバトンタッチされました。
喜友名さん、
1年間ありがとうございました。喜友名さんの
沖縄からのエッセイは、毎号、
「大好き!」、
「感動した!」そ
して「がんばろう!」の3つの言葉が文章の中で踊っており、
LIAJ NEWS
南国から元気を直送して頂きました。
5代目、鳩野さんのエッセイは、お義母様の介護記録から
始まります。誰もが通る人生の道を、酪農家として、嫁とし
て感じられた気持ちが綴られています。次号も、介護記録
の続きを寄稿していただく予定ですが、自ら介護中に詠ま
れた“短歌”も合わせて掲載させていただきます。是非ご
一読ください。
(Y)
発 行 人:新 山 正 隆 発 行 日:隔月発行
発 行 所:(社)家畜改良事業団
〒104‐0031 東京都中央区京橋1‐19‐8 大野ビル
TEL 03
(3561)
8151(代) FAX 03
(3561)
8165
ホームページアドレス:http://liaj.lin.go.jp/
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