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Page 1 Page 2 【3.3.2 風応答シミュレーション】成果@ スタディ2:中低層
\n Title 11 【3.3.2 風応答シミュレーション】成果② スタディ 2: 中低層免震建物の風洞実験模型の開発 Author(s) 安井, 八紀; Yasui, Hachinori; 大熊, 武司; Okuma, Takeshi; 丸川, 比佐夫; Marukawa, Hisao; 軽部, 英生; Karube, Hideo; 下村, 祥一; Shimomura, Shoichi Citation 地震・台風災害の制御低減研究(TEDCOMプロジェクト)成果 報告書 −制振・免震構造と実挙動観測−: 61-64 Date 2005-07-27 Type Research Paper Rights publisher KANAGAWA University Repository 【3.3.2 風応答シミュレーション】成果② スタデ ィ 2: 中低層免震建物の風洞実験模型の開発 安井八紀 `1 ,大熊武司 ' 2 ,丸川比佐夫 ◆1,軽部英生 ◆ 3 ,下村祥一 '2 ( * 1: ㈱泉創建エ ンジニア リング , * 2: 神奈川大学工学部建築学科) ( * 3: 当時神奈川大学工学研究科) 1.はじめに 兵庫県南部地震を契機に急激に免震建物が普及 し,高さ 6 0 mを超える鋼構造超高層建物への適用 例 も見 られるようになってきてお り,益々長周期化の傾向にある.しか し,この長周期化の傾向は, 風外力のスペク トルピーク周波数と建物の間有振動数がよ り接近の傾向にあるとも言い換えること ができる.免震建物では,通常の建築物に比べて固有振動数が低 く,並進 と振れの固有振動数が接 近してお り,通常の建築物に比べて空力不安定振動が生 じる可能性が高いと考えられる. 超高層建築物に生じる空力不安定振動の検討には, 空力振動模型を用いた風洞実験が有効である. しか し,弾塑性特性を有する免震建物を対象 とした空力振動模型による検討は行われていない.し たがって,空力不安定振動の発生も含めた免震建物の耐風性の確認のための空力振動模型の開発が 必要 と考えられる. 筆者 らは.その第一段階として、中層免震建物である神奈川大学 2 3与館を対象 とした空力振動模 型を開発 し,その応答性状について文献 1)∼ 5)に公表 している.以 下にその要点を示す. 2.実験模型の開発 2.1模型の縮尺と実験風速 図1 ).実験 対象建物は地上 8階地下 2階で,免震層は地下 2階 と地下 1階の間に設けられている ( 模型の縮尺は,風洞の閉塞率.気流の相似則、および模型においての免震部材の降伏変形を考慮 し てl /2 0 0とし,設計風速に対応する実験風速を 5 m / Sに設定 した. 実験模型は,実建物の地下 1階と 8階に相当する高さに質量を配分 した 2質点のせん断モデルと 図2 ).上部構造の剛性は,そのせん断剛性 し、各質点毎に並進 2自由度 と掠れ 1自由度を持たせた ( 本の鋼製の柱にモデル化 し,振れ剛性が実建物 と相似に に等価な4 なるように配置 した.実験において想定する免震層の最大変形を 1 m m( 実建物 : 2 0 0 m m )とした. ( a)Fr ami ngekl ・ a l i on ( b )Fl oorpl a n 匪1 2 実験模型の概要 図 1 建物概要 - 61 - 2 . 2揖層ゴム7イソレ一夕ーの実験用モデル アイソレーターの水平剛性に相当する弾性バネは,各方向について 4本の引張コイルバネでモデ ル化 し,振れ剛性が,実建物 と相似になるようにコイルバネを配置 した.模型の質量を含む鉛直力 杏,エアーコンプレッサーによって供給 される空気圧 によって支持 し,模型を浮上させた状態 とし た.因みに,ダンパーを組み込まない状態での模型の減衰定数は 0 . 2 %以下である. 2 , 3ダンパーの実験用モデル ダンパーの形状には図 3に示す高さSに対する想定変形が 1 / 1 0以上と大 きくなるため,U字型の形状を採用した.鉛ダンパーのモデルには鉛素線 杏,鋼棒ダンパーのモデルにはアルミニウム素線を採用 し,それぞれ直径 dとして 0. 6 5 mm,0. 5mm,高さSとして 4mm,7mm,長さLとして 3 mm. 3 mmとした.また,アルミニウム素線は降伏点の焼きなまし処理によ り降 伏点の調整を行った. 図3 模型用ダンパーの 形状 3.実験模型の基本性能 3 . 1ダンパーの特性試験 模型用ダンパーの繰 り返 し載荷試験の結果の一例 として,鋼棒ダ ンパー o方向( 図 3)について図 4に示す. g 細 罰0 一定の変位振幅値 に対 し一定の荷重振幅値を示 している.除荷時 の剛性 を弾性剛性 とみると,ダンパーの弾性剛性は目標の弾性剛性 に概ね一致 している.また,目標の降伏荷車に対 し実験値は良い対 応を示 している 軽 0 . 5 0. 50. 2 5 0 3 . 2 自由振動実験 0. 25 05 変位 ( … ) 図 5は自由振動実験による変位波形および振動モー ドである. 免喪層の初期変位が0. 03 m mの場合は,模型用ダン/ ト は弾性状態 図4 模型用ダンパーの 触り返し試験結果の事例 にあり,設計で言 うところの初期剛性時に相当する.この自由振動波形か ら求められる固有振動数 は1 8.5 Hzで,目標 とした固有振動数 1 8.1 Hzと良 く一致 している_半周期毎の対数減衰率によって %,それ以降は 1 %前後であった. 求めた減衰定数は,半周期日では 8 免震層の初期変位が0.2 0 mmの場合は, 模型用の鉛ダンパーおよび鋼棒ダンパー共に降伏変位を超 6. 4 H之で,振幅が大きくなる えた状態に相当する.この自由振動波形か ら求め られる固有振動数は 1 ことに伴って,固有振動数が低くなっていることがわかる.半周期毎の対数減衰率によって求めた 各層の自由振動波形から求めた固有 して得 られる加速度時系列に各層の質 量を乗じ,それ らを合算 して求めた免 震層の層せん断力と変位の関係を図6 帽 口 一 一- 一蛸U O 免表層初期変形0 0 3 t ' l m △ 免虚月初糊変形0 2 0 r n m l 乳汁における初斯剛作F . f .10 図 5の変位の自由振動波形か ら微分 0 6 千 振動モー ドは,概ね初期剛性時の振動 モー ドに一致 している. o ( u ] u ) 7 1 樹 o, (uJuJ)当別 減衰定数は,半周期 日では 1 4 %,1周期 目で 6 %.それ以降は 2 %前後の値であった. 0 6 0 . 02 0. 3 OJ G 0. 1 模型の弾性剛性が概ね一・ 致 しているこ とがわかる. 間 4. 時 0 に示す.目標の復元力特性の弾性域と 図 5 自由振動波形 と振 動モー ド - 62 - 4.風応答実験 4.1実験条件 気流は,地表面粗度区分 Ⅰ Yの乱流境界層流と 、 し,周辺部は再現 していない.実験は,風速を模 、 . 6 m /Sか ら 1 3 . 5 m / Sの関を 1 6 型頂部で平均風速 3 段階に変化 させ,レーザー変位計によ り各風速に ー 0 . 0 3 おいて 6 0秒間,サ ンプリング周波数 2 0 0 Hzで応 屑および 2層共 答変位を測定 した.測定位置は l 0 0 . 0 30 . 2 5 0 変形( mm) 図6 自由振動時の復元力特性 0. 2 5 変形( mm) に,風方向については図 1に示す桂取 り付け位置 に相当する 2点,風直角方向については剛心位置に相当する位置である 4. 2風速 と応答変位の関係 f Y E l 10 ' 1 r j エ 9 9 5 7 7 軒蔽 均風速に関係な く 4. 5前後の僻を示 し ている.この結果は,対象建物である 味 応答変位の ピークファクタ-は.平 1O O つノl 上で概ね直線的な増減関係を示 してい る.ただ し,その勾配は若干異なる. 滋 応答変位の平均値,標準偏差および 最大値は平均風速に対 して,両対数軸 t 1 -9 5 図7に, 模型頂部の平均風速と応答変 変付(mm) 位の統計量の関係を示す. 1 0 J 三 4 5 67891 0 3 1 4 3 4 5 67891 0 実験風速 ( m/ A ) 実験風速( t n/ S ) 図 7 実験風速と応答変位の関係 神奈川大学 2 3 号館に関する風応答観測 結果6 ) と良い対応を示 している.一方.ガス ト影響係数は,風速の増加に伴って低下する傾向が認 められ, 1 . 8-2 . 8程度の値である. 4, 3応答変位のパ ワースペク トル密度 . 6 m /S ,8 . 5 m /Sおよび 1 3 . 5 m / Sの時の 2 層の応答変位のパ ワースペク トル 模型頂部の平均風速が 3 密度を図 8に示す.同図の風方向並進変位は,2点の風方向の変位を平均 して求めたものであり,戻 れによる変位 は 2点の差 をとったものであ . 6 m / Sは模型用ダ る.また,頂部平均風速 3 1 02 ンパ-が弾性挙動 を示す風速に,同 8 . 5 n l /S は模型用鉛ダンパ-が平均風速によって塑性 1 3 . 5 m / Sは 域に概ね達する程度の風速に,同 1 0。 模型用鋼棒ダンパーも完全に塑性域に達 して いる風速に相当する. 並進成分のパ ワースペク トル密度において 1 0 2 0 Fr e q t J e n C yn( Hz , ) a)風方 向並進 成分 は,スペク トルの ピークが低振動数側に移動 して, 風速の増加に伴ってスペク トル ピーク 3 0 u J0 I O 2 0 30 Fr e que n c ya( Hz ) b ) 振 れ成分 図8 応答変位のパワースペクトル密度 の鋭さも鈍 くなっている. 4. 4平均風速 と固有振動数 および減衰定数の関係 実験風速 と固有 1次振動数および減衰定数の関係を図 9に示す.なお.固有 1次振動数および減 衰定数は,応答変位のパワースペク トル密度にフィッティングす ることで推定 した. 実験風速 8 m /S以下では,固有振動数および減衰定数共に概ね一定で,実験風速が 8 m /Sを超える - 6 3- と固有振動数 は急 激 に減少 し,減衰定 数 は急 激 に増加 して いる.これは、実験 間有振動数 【 Hz l 4 風速が 8 . 5 m / S付近で鉛 ダ ンパーが塑性 化す るためで ある.また,図 5に示 した 減衰定数 よ り図 9での減衰定数が小 さ I L l 「 E A l I T u o o o o o o c Q c b 3 D : 0 じ L o o o いの は,前者 の応 答振 幅が正負 に渡 る もので ある ことに対 し,後者が平均 風 減衰鮭数【 %】 0 風方向並進成分 : 口 授れ成分 4 5 67891 0 実験風速( m/ S ) ○ 風方向並進成分 : □ 振れ成分 ・ ■ \ . _ _ _ _ . _ _∴ 2 … ‥… . ( 声 1 ギ __ . rlr 1 . 0 O_O_ c JoO惑 口 。 ロ コDD□U 速の影響 によって,片側 だ けの振幅 に なるためで ある. 3 1 4 4 5 67891 0 1 4 実験風速 ( ∩/ S ) 図 9 実験風速七固有振動数および減衰定数の関係 5.ま とめ 中低層免震建物 を対象 に, 免震層の復元 力特性 を取 り入れた風洞実験用多 自由度弾塑性模型 を開 発 し ,基本性能お よび応答性状 を確認 した.その結果以下 のよ うな知見 を得た. I )鉛および アル ミニ ウム素線 を用 いて,鉛ダ ンパーおよび鋼 棒 ダンパ ー の実験用モテル作成 し, 両 ダンパー共 に弾性剛性 につ いては概ね 目標値 に一致 した .降伏荷重 につ いては.鉛 ダンパー 用モデルが 目標値 よ り高 めの値 を示 した ものの. 鋼棒 ダ ンパ-用モデル につ いて は概ね 目標 に 一致 した.また,一定振幅 の変形 に対 し一定 の履歴 を描 き,安定 した性能 を示す ダ ンパーが製 作できた . 2 )モデルの 自由振動実験 の結果 ,初期剛性時 の固有振動数が 目標値 と良い対応 を示 した. 3 )模型用ダ ンパー の形状絞込みの際 に用 いた ケーススタデ ィは,有効で あ ることが確認 された4 )アルミニウム素線 は.焼 きな ま し処理 によ り,種 々の降伏応 力度 に設定 で きる ことが確認で き た. 以上よ り,鉛 ダ ンパー用モデルの降伏荷重 に若干 の調整が必要な ものの,本研究で取 り入れた免 震建物 を対象 とした風洞実験用弾塑性模型の開発法が妥 当で ある ことが確 認 された. また,風応答性状 については.以下 のよ うな知見 を得た. . 5前後の値 を示 した.この結果 は,本 I )応答変位 の ピー ク ファクタ- は,平均風速 に関係な く 4 研究の対象建物で ある神奈川大学 2 3号館 に関す る風応答 観測結果 6)と良い対応 を示 している. 2 )一方,ガス ト影響係数は,風速の増加 に伴 って低 下す る傾 向が認め られ .I. 8- 2. 8程度 の値 で あった. 参考 文献 i )安 井八紀 . 大熊 武 司 ,丸川 比佐夫 .軽部英 生 .下村祥一 ・中低層 免震 建物 の風洞 実験模 型 の開発 ,地震 ・台 風災害 の制御 ・低減 に関す る シンポ ジウム ,p p. 81 -9 O,2 0 02 . 3 2 )丸川比佐夫 _大熊 武 司 ,安井 八紀 ,軽部英 生 .下村 祥一 :中低層免養 建物 の風洞実験 模 型 の開発 そ の 1, 日本 建築 学会大会学術講演梗概集 ,p p. 2 03 -2 0 4,2 0 0 . I . 8 3 )安井八紀 ,大熊 武 司 .丸川 比佐夫 .軽 部共生 ,下村 祥一 :中低 層免震建物 の風洞 実験模 型 の 開発 そ の 2, 日本 建築 学会大会学術講 演梗 概集 ,p p.2 05 -2 06 ,2 0 02. 8 4)安井 八紀 ,大熊武 司 ,丸川 比佐夫 ,軽部英 生 .下村 祥一 :中低層免震 建物 の風洞 実験模 型 の開発 、風 工学 シンポジ ウム .p p, 51 7 -522 ,Z O O2. 1 2 5 )T.Oh ku ma .】 i . Ya sui .I l .Mar uka Wa:De vel o pmentolyI T L dt unnell estmode一olmi d-ri sebas e -i so】 al e d buHdi n g,Yl n d良St r uct u r esVol . 7,No3,p p. 2 0 3 -21 4 .2 O O4 6 )大熊武 司 ,安井八紀 .小賀 伸一 .下村 祥一 ・ .2 3号館 の強風時実挙動観測 ,地 震 ・台風災害 の制御 ・低減 に関す る シン ポ ジウム ,p p. 6 9 -8 0,2 002. 3 -6 4-