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織物卸売 - 大阪府

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織物卸売 - 大阪府
織物卸売
織 物 の 需 給 は 幾 分 、改 善 の 動 きがみられる。ただ、収 益 面 では、価 格 が 総 じて 弱 含みで
あることや、オリジナル 商 品の 企 画・提 案 の 強 化 に 伴 う経 費 の 増 加 などから引 き 続き 厳 し
い。
需 要 が 量 的 に 頭 打 ち となる 中、より 付 加 価 値 の 高い 織 物 の 扱いや、アパレルなど 製 品 分
野への取り組み強化が課題となっている。
業界概要
当 業 界 が 扱 う 織 物 の素 材 は 、 綿 と 合 繊 を中 心 に 、 ウ ー ル 、 麻 、 絹 な ど 多
岐 にわたっており、ニット生 地 を扱 う業 者 も少 なくない。
織 物 卸 売 業 は単 に 仕 入 れ た 織 物 を 販 売 す る だ け で な く 、 自 社 の リ ス ク で デ ザ イ ン 企
画 を行 い 、 織 物 の 織 り や 染 色 ・ プ リ ン ト 加 工 も 外 注 す る 。 さ ら に 、 織 物 で の 販 売 に 加
えて、アパレルや寝 装 品 などに製 品 化 して販 売 する企 業 も増 えている。
織 物 の 調 達 は 、 機 屋 ・同 業 の 卸 売 業 者 ・紡 績 メ ー カ ー ( 織 布 部 門 を も つ ) か ら 織 物
はたや
を購 入 する場 合 と、自 社 で企画 し、機屋に賃 織 りさせる場 合 とがある。こ の ほか、商
社 を通 じてまたは直 接 、海 外 から織 物 を調 達 する場 合 も増 えている。
ま た 、中 国 な ど に 縫 製 工 場 や自 社 の支 店 を持 つ企 業 では 、現 地 で調 達 した織 物 の一
部 や わ が 国 か ら輸 出 さ れ た 織 物 で製 品 化 ま で 行 い 、輸 入 す る例 も み ら れ る 。上 記 の よ
うな織 物 の輸 出 は近 年 、増 加 傾 向 にある。
織 物 の販 売 先 は織 物 二 次 卸 売 業 者 やア パ レ ル メ ー カ ー ・縫 製 業 者 な ど で あ る が 、 近
年 は後 者 の 割 合 が 高 ま っ て い る 企 業 が 多 い 。 な お 、 一 部 の ア パ レ ル メ ー カ ー は 織 物 で
の仕 入 に加 えて、製 品 での仕 入 を増 やしている例 もみられる。
大阪の地位
織 物 卸 売 業 は 、全 国 的 に は 大 阪 、東 京 、名 古 屋 、京 都 に集 積 し て い る 。
大 阪 の 特 色 は 、 染 色 加 工 や 縫 製 な ど の 生 産 機 能 も持 つ 企 業 が 多 い こ と と 、 集 散 地 問 屋
の機 能 をもち、地 方 の二 次 卸 売 業 者 などに販 売 する企 業 も少 なくないことである。
大 阪 の織 物 販 売 額 の対 全 国 シ ェ ア は 、近 年 高 ま っ て い る 。 こ れ は 、他 の 都 市 で は 織
物 専 業 の業 者 数 が減 少 し て い る こ と 、特 に東 京 な ど で は ア パ レ ル の扱 い 割 合 が高 い業
者 が増 えていることを反 映 している。
平 成 14 年 に お け る 大 阪 府 の 織 物 卸 売 業 を み る と 、商 店 数 1,066( 対 全 国 比 24.5% )、
従 業 者 数 11,593 人 ( 同 31.9% )、年 間 販 売 額 2 兆 869 億 円 ( 同 53.6% ) で あ る ( 大 阪
府 統 計 課 『大 阪 の商 業 』速 報 、経 済 産 業 省 『商 業 統 計 速 報 』
)。
販 売 は下 げ止 ま り か ら持 ち 直 し へ
国内織物製造業 の出荷量 を対前年同期比 でみる
と 、 本 年 に 入 っ て 減 少 幅 が 縮 小 し て お り 、 さ ら に 、 織 物 の輸 入 量 ・輸 出 量 は増 加 傾 向
にある。こうした中 、織 物 の流 通 量 は下 げ止 まりから持 ち直 しの動 きがうかがえる。
綿 、合 繊 、 ウ ー ル な ど の 織 物 を幅 広 く 販 売 す る 企 業 で は 、昨 年 11 月 頃 よ り 販 売 高 が
回 復 し て お り 、 本 年 4 ∼ 6 月 の販 売 高 も前 年 同 期 を 上 回 っ て い る 。 同 社 の 扱 い 品 で 比
1
較 的 伸 び て い る の は 、 ウ ー ル( 婦 人 服 地 用 )、高 密 度 織 物 、 ド ビ ー 織 物 ( 紋 様 の あ る 織
物 ) である。
ま た 、 主 と し て 綿 織 物 の 生 地 を系 列 の ア パ レ ル メ ー カ ー へ 直 接 販 売 す る 企 業 で も 、
カジュアル衣 料 向 けを中 心 に回 復 傾 向 を強 めている。
商品企画 力の強化
各 社 とも織 物 二 次 卸 売 業 者 へ の販 売 が減 る一 方 で 、 ア パ レ ル メ
ー カ ー や 縫 製 業 者 へ の 直 接 販 売 が 増 え て い る 。 こ の た め 、 扱 い 商 品 の 素 材 、柄 、 配 色
についての商 品 企 画 や提 案 の一 層 の強 化 が求 められている。
こ う し た 中 、 シ ー ズ ン ご と に自 社 オリ ジ ナ ル 商 品 の展 示 会 を開 催 す る例 、 ア パ レ ル
メ ー カ ー と の 共 同 企 画 に 力 を 入 れ る 例 、見 本 帳 掲 載 織 物 生 地 を 拡 充 す る と と も に 、 受
注 品 を短 納 期 で納 品 で き る よ う な 在 庫・物 流 シ ス テ ム を 構 築 す る 例 、な ど が み ら れ る 。
な お 、 近 年 は各 社 と も 東 京 へ の 販 売 割 合 を 高 め て い る が 、 大 阪 の ア パ レ ル メ ー カ ー
は ミ セ ス 向 けが多 く 、東 京 の同 メ ー カ ー は ヤ ン グ向 け が多 い と い う特 色 が あ る た め 、
これらに対 応 した商 品 企 画 が重 要 となっている。
流 行 変 化 とリ スクへの 対 応
以 上 の よ う な フ ァ ッ シ ョ ン 性 の高 い 商 品 は流 行 の変 化
が 速 く 、 売 れ残 り と な る リ ス ク も 大 き い 。 流 行 に下 火 の 兆 し が 見 え れ ば 、 早 い 目 に 対
応 し 、 値 下 げ販 売 さ れ る が 、 中 に は 見 切 り 品 と し て 大 幅 な値 下 げ を 余 儀 無 く さ れ る 場
合 も少 な く な い 。 大 手 織 物 業 者 の 場 合 、 こ れ ら 見 切 り 品 は外 国 系 の貿 易 業 者 を 通 じ て
アジアを中 心 に世 界 各 国 へと輸 出 されている。
収 益 は厳 し い
需 給 は幾 分 改 善 の 動 き が う か が え る も の の 、 仕 入 ・販 売 価 格 は こ の
と こ ろ ブ ー ム と な る 商 品 が な い こ と や 、市 場 全 体 と し て 供 給 過 剰 傾 向 に あ る こ と か ら 、
総 じて弱 含 みのままである。
こ う し た 中 、経 費 面 で の 負 担 が高 ま っ て い る 企 業 が 多 い 。 前 出 の と お り 自 社 オ リ ジ
ナ ル商 品 の拡 充 が求 めら れ る中 、見 本 生 地 の試 織 や、 染 色 ・プ リ ン ト の 外 注 費 、見 本
帳 ・カタログの作 成 費 などが増 大 している。
また、 ア パレル部 門 をもつ企業 では、自 社 内 でのデ ザ イン企 画 やパタ ー ン作 成 に加
え て 、 海 外 の縫 製 工 場 へ の 委 託 が 主 流 と な る 中 、縫 製 技 術 指 導 や 検 品 の た め の 人 材 の
育 成 と 、 海 外 工 場 か ら 出 荷 後 の ス ム ー ズ な 物 流 シ ス テ ム 構 築 の た め の 投 資 が必 要 と な
っている。
従 業 員 数 は正社 員を中 心に減少 傾 向
各 社 と も 人 件 費 の 削 減 に取 り 組 ん で お り 、正 社
員 数 は非 営 業 職 、事 務 職 を中 心 に減 少 している。
雇 用 形 態 で は 、 物 流 ( 荷 捌 き ) 部 門 を 正 社 員 か ら パ ー ト ・ ア ル バ イ ト に 切 り替 え た
例 、コ ン ピ ュ ー タ シ ス テ ム の デ ー タ 入 力 作 業 を派 遣 社 員 から パ ー ト ・ ア ル バ イ ト に切
り替 えた例 、がみられる 。 このほ か 、正 社 員 の給 与 は年功制 から能 力 給 に移 行 させつ
つある企 業 も多 い。
S A R S の影響は部 分 的
本 年 3 月 中 旬 か ら 6 月 下 旬 ま で の間 、中 国 の 一 部 や台 湾
2
な ど はW H O ( 世 界 保 健 機 関 ) に よ っ て新 型 肺 炎 S A R S 感 染 地 域 に指 定 さ れ 、 こ れ
ら の 国 ・ 地 域 へ の 渡 航 及 び 同 国 ・ 地 域 内 で の 人 の移 動 が 制 限 さ れ た 。 こ の た め 、 中 国
に 仕 入 拠 点 や縫 製 工 場 を も つ 企 業 で は 、 生 地 見 本 の 収 集 や技 術 面 で の 指 示 が で き な く
な る 例 が み ら れ た 。 ま た 、 一 部 の 卸 売 業 者 は 需 給 の 先 行 き不 安 の 中 、 国 内 の織 物 産 地
への発 注 を増 やす動 きもみられた。
た だ 、 幸 い な こ と に 4 ∼ 6 月 は春 夏 物 と秋 冬 物 の端 境 期 で あ っ た こ と 、 物 流 面 も ス
ム ー ズ で 納 期 の遅 れ も な か っ た こ と 、6 月 下 旬 に は感 染 地 域 の指 定 が解 除 さ れ 、 秋 冬
物 に向 け て 現 地 へ の 出 張 が 再 開 さ れ た こ と か ら 、 S A R S の 影 響 は こ の ま ま 終 息 す れ
ば部 分 的 で軽 微 に終 わる見 通 しである。
今後の見通し
織 物 生 地 に 対 す る需 給 は現 在 の と こ ろ や や 改 善 の 動 き が み ら れ る が 、
今 後 の順 調 な回 復 を期 待 する企 業 は少 ない。
こ れ ま で 主 な販 売 先 で あ っ た 地 方 の 織 物 二 次 卸 売 業 者 が 減 少 し て お り 、 近 年 、 販 売
先 と し て 注 力 さ れ て い る ア パ レ ル メ ー カ ー も 企 業 間 格 差 が大 き く 、 一 部 で は 業 績 不 安
の企 業 もみられる。
業 界 で は 、売 上 高 の量 的 な増 加 よ り も 、利 益 の確 保 を重 視 す る 企 業 が多 く 、 ニ ッ ト
生 地 も 含 め て よ り 付 加 価 値 の 高 い 生 地 の扱 い や 、 自 社 の ア パ レ ル 部 門 の 拡 充 が 課 題 と
なっている。
た だ 、 こ う し た取 り組 み は リ ス ク を 覚 悟 す る 必 要 が あ り 、販 売 効 率 も低 い 。 す な わ
ち 、 織 物 生 地 の 企 画 、品 揃 え 、 調 達 に は 従 来 以 上 に 手 間 が か か り 、 ま た 、 自 ら ア パ レ
ル 商 品 に 取 り組 む 際 は 、 海 外 で の 縫 製 が中 心 と な る 中 、 人 材 、 情 報 収 集 力 、資 金 力 、
な ど が重 要 とな る 。 こ う し た中 、蓄 積 され た 営 業 ノウ ハ ウ 、資 金 力 など の経 営 資 源 を
活 用 し つ つ 、自 社 に ふ さ わ し い 取 り組 み が 模 索 さ れ て い る 。
織物の国内出荷・輸出入(全国)
(単位:千㎡、%)
国内織物製造業
輸入量
輸出量
の出荷量
平成12年
3,030,657(-10.3) 912,709(-6.5) 545,336( 2.9)
13年
2,806,736( -7.4) 833,131(-8.7) 533,418(-2.2)
14年
2,449,542(-12.7) 753,056(-9.6) 549,958( 3.1)
15年1∼3月
571,556(-8.9) 195,092( 2.1) 137,174( 7.3)
4∼5月
379,514(-6.6) 142,950(20.9)
84,396(-4.1)
資料:出荷量は経済産業省『繊維・生活用品統計月報』。
輸入量、輸出量は日本紡績協会『日本紡績月報』。
(注)出荷量は従業者10人以上の事業所。
( )内は前年比、前年同期比。
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(松
岡)
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