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解答 - 京都女子大学
2013 年度 京都女子大学 入試問題 受験生向け講評 古文 【一般前期A1】 二 『常山紀談』 三歳になった娘は、叔母の養育で十三歳になって、名前を、りやという。元右衛門夫婦を、本当の父母であ ると思い続けていたが、(元右衛門夫婦は)ある時くわしく父母のことなどを語り聞かせ、「あなたの母は、私に とって姉であるが、『せめてこの子が男であったならば仇を討つこともあるはずだが、残念なことであるよ』と一 日中嘆いて亡くなった」と語ったところ、りやは大いに驚き、「今まで夢にも気づかなかったことである、お心遣い により、このように一人前になったことのありがたさよ」ということを、さめざめと泣くばかりであった。そうして十 六歳になったとき、(元右衛門夫婦)二人に向かい、「江戸に参上して奉公し申し上げましょう。(亡くなった)父 母のために諸国の観音にも参詣したいと存じます。万が一つにも敵を討てる御慈悲も神仏に祈りたいのです」 と言う。二人はいろいろと止めるけれども、とうていやめるはずではないので、京極家の侍である村瀬藤馬とい った人が、江戸に赴任するのをあてにして、元右衛門夫婦は)付き従って行かせる。りやは、江戸へ赴き、番町 の長井源介といった御旗本のもとに奉公に出る。源介のもとには、剣術の弟子がたくさん毎日やって来る。リヤ が勤める様子は、格別に注意して奉公するので、(源介は)本当にめずらしく思い、「どういう者の子であろうか」 と尋ねなさると、りやは、こと細かに事情を語り、「父の仇に報復し申し上げるような気持ちでございます」という ことを、涙を流して返事をしたところ、源介はしみじみと聞いて、「女であるとしても、どうして父の仇を討たないこ とがあろうか、いや討つこともあるだろう。まず私の剣術の弟子となれ」といって教え試すと才能があって、思い 込んでいる気持ちであるので、剣術もすぐにうまくなった。夫婦はますます大切にしてかわいがった。二年に及 んで主人が言ったことには、「ここにばかり居るよりは主人をたくさん変えて仇を捜してみろよ」と(源介は)いろ いろと忠告したので、それからは、あちらこちらで奉公していたが、もはや十二年を過ぎて主人七十人に及んだ。 その後に、本所にある坂部安兵衛といった御旗本の家に奉公したところ、小泉文内といって五十過ぎである男 がいたが、ふだんは酒飲みで血気盛んだった頃のことをあれこれと語り出し、壮語していたが、「無分別で他人 の女房に恋い慕ったことにより、その夫を切り捨ててしまったが、昨日のように思うけれども早く月日も過ぎて行 ったことだよ」と雑談したところ、りやは聞いて、どうみても似たこともあるものだよと思い、はっきりと聞き届けた いのだがなあと心の中で思って、「それは嘘だろう」と言うと、「どうして嘘を言うだろうか。今まで人に言ったこと はなかったけれども、年月は過ぎた、国は隔たってしまった。詳しいことを、さあ語ろう。私は元讃州丸亀で京極 家の者である」といっえ、先ほどの事情を言って、「幸右衛門に子がいたが、娘であると思われたので恐れるこ ともない」といって肌を脱い(で見せる)と。りやの母が投げつけたと耳にしていた脇差しの(疵)跡も見えた。り やは、「たった今ここで討ってしまおう」と立ち上がろうとしたが、「もし討ちそこなったならばどうしようか」と思い 返して、さりげなくその座を立ち、その翌日、長井のもとに行って、(りやは)これこれと語ったところ、源介は大 いに喜んで、すぐにりやを連れて京極家の村瀬の所に行き、告げ知らせたところ、すぐに備中守に申し上げて 幕府に訴えた。坂部のもとに幕府より調べなさると、ますます間違えることはなかったので、(幕府は)文内を京 極家に引き渡しなさった。 【一般前期A2】 二 静縁法師が、自分の歌を語って言うことには、 「鹿の鳴き声を聞くと私までもが泣いてしまったなあ。谷の庵は住みづらいものだなあと(和歌を)詠み申し上 げています。この和歌はどうでしょうか」と言う。私が言うことには、「まずまずですね。ただし、『泣かれぬる』と いう表現は、ひどく考えが浅すぎて、どうでしょうかと思われます」と言うと、静縁が言うことには、「その表現を、 この歌の眼目と(私は)思っておりますのに、この非難は心外に思われます」といって、ひどくよくなく非難すると 思っている様子で去っていった。つまらなく心に浮かぶままにものを言って、気をつけなければならなかったこと だと残念に(私は)思ううちに、十日ほど経って、再び(静縁が)やって来て言うことには、「先日の歌を(あなた が)非難しなさったが、隠すところない、納得できず思いまして、不審に思われましたままに、(あなたが)そのよ うに言うとしても、大夫公のもとに行って、私が間違いを思うのか、あなたが悪く非難しなさるのか、決着を付け ようと(私は)思って(大夫公のもとに)行って語りましたところ、即座に、あなたはこのような思慮の浅い歌を詠 みなさるのだ、泣いてしまったとは、どんなことをそのようにまで泣く本性であろうかと戒められておりました。だ から、よく非難しなさったなあ。私が下手に理解していたので、お詫びを申し上げるために参上したのです」と言 って帰ってしまいました。(静縁の)心の清らかさはめったにないものです。 【一般前期B】 三 『正徹物語』 幼かった頃、七月に星に供えると言って一首歌を詠んで、木の葉に書きつけましたのが、(私の)歌の最初の ものである。そうするうちに、星の恩恵を思って、去年の秋まで七首を詠んで七枚の葉に書いて、星にお供えを したのです。また歌も詠み習わない前から、厚顔にも、正式な歌会に出て詠み習ったのです。私の家は、三条 東洞院にあったのです。その向かいに奉行の治部といった者の所で月ごとの会があって、(その会は)冷泉為 尹、冷泉為邦、今川了俊、そのほかの近臣の人、三十余人が、参加者がいた(歌会)である。 恩徳院の律僧がいたが、「歌が詠みたいならば、向かいの治部の所へ連れて行きましょう」ということを言いな さった時に、その頃前髪を下ろしている年齢で、恥ずかしかったけれども、律僧に連れられて治部の邸に行きま したところ、治部入道はその時八十歳あまりの大入道で白髪交じりである人が対面して言いましたことは、「子 どもが和歌をお詠みになることは、今の時分ではまったくないことである。禅温が若く盛りであった時などでその ようなことはお聞きした。感心なことでいらっしゃる。こちらで毎月二十五日に月ごとの会がございます。お出で になりましてお詠みください。今月の歌題は、これこれでございます」といって、自分で書いて与えます。深夜閑 月、暮山遠雁、別無書恋、三首四文字の歌題であったのです。それは八月初めの頃のことです。そうして二十 五日に会に参上しますと、一方の上座には冷泉為尹・為邦、もう一方の上座には今川了俊、その順々に近臣 の人たち、禅温の一族たち三十人あまりが、威儀を正して並んで座っているところへ、遅れて出席したので、上 座へ招かれた時に、突然であったけれども、座敷へ着席しました。今川了俊はその時八十歳あまりの入道で、 墨染めの裳もない衣に平江帯で房の長い帯をしてお座りになっていた。深夜閑月は、 むだに更け行く空の月の光であるなあ。ひとりで眺める秋の夜の月は。 雁の歌は、「山の端に一列見ゆる初雁の声」とあっただろうか、上の句を忘れました。恋も思い出せません。そ れからは、いちずに出席し続けて、歌を詠み習ったことです。その頃十四歳であった時です。 公募制 推 薦 入 試 国語 解答例〔前期 A 方式 1/29〕 二 □ 〈a〉 問一 考量 〈b〉 指標 〈c〉 当該 問一 ① エ ② ウ ③ イ 〈d〉 愚鈍 〈e〉 代替 ④ オ ⑤ エ 問二 ① ゆうい ② たんぽ 〈1〉 イ 〈2〉 オ 〈4〉 エ 〈5〉 ア 問四 〈い〉 エ 〈ろ〉 ア 〈に〉 イ 〈ほ〉 ウ 〈3〉 ウ 〈は〉 ウ 問五 ウ 問二 〈a〉 問三 〈甲〉 問四 〈1〉 ア 〈5〉 キ 問五 〈A〉どうして父の仇(敵)を討たない オ イ 〈b〉 き 〈乙〉 〈2〉 〈c〉 エ 〈d〉 オ 〈3〉 エ 〈4〉 イ ず ア るだろう。 問七 ア 問八 ウ 問九 オ 問六 ウ 問十 (学んだことを)成長の糧にするやり方 問七 イ 一般入試 生 物 は人によって違う(ということを意味して 〈C〉討ってしまおう 一般入試 世 界 史 ことがあろうか。いや討つこともあ 問六 ウ 一般入試 日 本 史 問三 一般入試 英 語 一 □ いる。) 問十一 エ 一般入試 化 学 国語 解答例〔前期 A 方式 1/30〕 一般入試 数 学 一 □ 二 □ 〈a〉 苦行 〈b〉 道程 〈c〉 履歴 問一 ① ね ② いほり 〈d〉 潔癖 〈e〉猛烈 問二 和歌 問二 ① ウ ② オ ③ イ 問三 Ⅰ イ Ⅱ ア Ⅲ ア Ⅳ オ 問三 〈a〉ウ 〈b〉ア 〈c〉イ 〈d〉ウ 問四 〈敬語の種類〉 〈だれに対する〉 〈1〉 エ 〈2〉 ウ 問五 〈1〉 ウ 〈2〉 イ 〈3〉 ケ 〈4〉 イ 〈5〉 ケ 〈6〉 ア 問六 〈1〉 イ 〈2〉 エ 〈3〉 オ 〈4〉 ア 問七 イ、 キ 〈5〉 ウ 問八 1 鴨長明 問五 御坊のか 〜 く心根や 問六 気をつけなければならなかった 2 新古今和歌集(新古今集) 問八 ウ 問九 本来絵を味わうのが目的であるはず 一般入試 国 語 問七 ケ ① イ ② イ ③ イ 音楽実技 問四 ① B ② C ③ A 現代社会学部 A O 入 試 問一 なのに、絵が知識を得るための手段 129 国︲31 公募制推薦入試 問十 ウ (国 語) でしかなくなっている (という意味) 公募制 推 薦 入 試 国語 解答例〔前期 B 方式 1/31〕 一般入試 英 語 一 □ 問五 ア 問一 〈a〉かんじょう 〈b〉しわす 問六 ウ 〈c〉ま 〈d〉ひんぱん 問七 エ 問二 ① 承諾 ② 催促 ③ 困惑 問八 イ ④ 誇張 ⑤ 依然 問九 (筆者の思考は)西洋の思想よりも日本 一般入試 日 本 史 問三 〈1〉オ 〈2〉キ 〈3〉ア 〈4〉ウ の「伝統」の影響を受けている(という 〈5〉イ こと。) 問四 〈6〉ア 〈7〉エ 〈8〉カ 〈9〉ウ 一般入試 世 界 史 問五 エ 三 □ 問六 エ 問一 〈1〉ア 〈2〉ウ 〈3〉オ 問七 ア 〈5〉エ 問八 オ 問二 〈敬語の種類〉① C 問九 (一葉が西鶴の作品から影響を受け ④ A 一般入試 生 物 視できなかった「金銭」の問題を正面 ③ ア ④ ウ から見据え、作品化できるようになった 問三 (ということ。) 〈a〉 〈e〉 ② C ③ A ① エ ② ア て)それまで心にわだかまりつつも直 〈だれに対する〉 〈4〉エ ふみづき(ふづき・ふんづき)など はづき 問四 まったく(少しも・決して)ないことで 問十 ウ 一般入試 化 学 ある。 二 □ 問五 イ 一般入試 数 学 問一 〈a〉矛盾 〈b〉立脚 〈c〉栽培 問六 ウ 〈d〉典型 〈e〉徹 問七 エ 問二 〈1〉オ 〈2〉イ 〈3〉ウ 〈4〉ア 問八 (上の)句 〈5〉エ 問九 ウ 問三 オ 問十 エ 問四 ア 現代社会学部 A O 入 試 国語 解答例〔後期 3/10〕 音楽実技 ⑴ 5 ⑵ 2 ⑶ 3 ⑷ 4 ⑸ 5 ⑹ 5 ⑺ 2 ⑻ 3 ⑼ 3 ⑽ 1 ⑾ 6 ⑿ 3 ⒀ 4 ⒁ 2 ⒂ 1 ⒃ 5 ⒄ 1 ⒅ 5 ⒆ 4 ⒇ 1 5 5 5 1 3 1 2 一般入試 国 語 5 1 3 2 3 4 8 7 3 4 2 5 2 5 8 1 3 5 2 4 2 公募制推薦入試 (国 語) ※問題講評(出題傾向、学習対策、設問解説)及び古典の現代語訳については6月下旬以降、本学ホームペー ジ内「京女倶楽部」に掲載予定です。 128 国︲32