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排水ボーリングで思うこと

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排水ボーリングで思うこと
排水ボーリングで思うこと
調査課 石原 剛
私はこの頃様々な状況で排水ボーリング工事に携わることがあります。
排水ボーリングは、地すべり防止のためのものであったり、土工時の安定のためであったりしま
す。発注者も官公庁であったり、施工業者であったりします。
それぞれの形態,ありようで業務の進め方や問題点が異なっています。
そこで今回は、排水ボーリングについて経験したことや不思議に思ったこと,困ったことを脈絡
もなく思いつくままに書いてみることにしました。
①排水ボーリングの孔口高さの設定について
設計図面をもらって先ず見ることのひとつに機械設置高さ(多くは FH)と孔口の高低差があ
ります。
多くの設計者は、掘削するものが岩盤か土質かに関わらず約 1.00m としています。
これは、
掘進角度(一般には仰角 3.0∼10.0°)を考慮すると極めて難しいものであると思いま
す。
特殊なボーリングマシンで、調査用ロータリーボーリングマシンを横置きにしたものがあり
ます。これなら殆どのものに対応できますが、一般的ではありません。
多くの場合は以下の 2 通りが考えられます。(異論がある人もあると思いますが)
1) 調査用ロータリーボーリングマシンによる土質及び軟岩の比較的短い延長の排水ボー
リング
2) パーカッションドリルマシンによる軟岩以上を主対象とした長尺の排水ボーリング
(更にパーカッションの機械には大きく分けてスキッドタイプとクローラータイプがあり、
それぞれ制限される高さが異なります。)
そうなると、
1)の場合はスピンドル(機械の回転軸)までが約 0.90∼1.00m ありますので、掘進角度とマ
シンから対象の法面までの距離を考慮するとどうしても 1.30m 程度以上の高低差がない
と困ってしまいます。
また、
2)の場合の掘削機械はアンカー施工などで使用されるものと同じですので、殆どの場合が
大きな機械となってしまいます。それに伴って角度の中心になるところの高さも変わって
きます。1)の条件とほぼ同じことを考えた場合、1.50m 以上の高低差を必要とします。
これらの問題を解消するには以下の方法があります。
a) 場合によっては機械設置箇所の地盤を掘り下げて高低差を確保する。
b) 孔口高さを実施に当たって協議の上で変更してもらう。
c) 仰角の変更をする。
ⅰ) 計画のボーリングの先端(到達点)をおさえる。
ⅱ) 実施に必要な孔口高さを求める。
ⅲ) 上記の 2 点を結んだものを掘進角度とする。(孔口高さ,角度とも施工管理を考えて丸
める。)
実施では以上のような検討しなければなりません。変更事項は容易ではありませんので要注
意です。
追記として、道路での場合は横断勾配や縦断勾配によって、更に孔口高さが必要となること
があります。
②排水ボーリングの間隔について(放射状配置の場合)
一般に排水ボーリングの先端の間隔は、5.0 ∼10.0 m です。
設計では扇の要(中心点)を計画法面にピッタリつけて書いてあることがよくあります。
考えてみると、同じ孔口からえぐるように左右に掘削することは非常に困難で、先に掘削した
孔に引きずられて方向が変わり、施工の品質が保てなくなります。
以前にも何かで書いたと思いますが、孔口の中心間隔をそれぞれ 0.50m は離して欲しいので
す。従って、扇の要を計画法面から 2.5m 程度離してみると良い間隔になるようです。(角度にも
よりますが・・・。)
また、この場合では間隔が不等ピッチとなりますので要注意です。
これを解消する方法としては次の手順で行なうと良いでしょう。ただし、設計段階では明確に
せず、
「現場での対応」として記述するとうまくいくように思います。
1) 従来どおりに放射状に設計する。
2) それぞれのボーリングの先端(到達点)をおさえる。
3) 扇の要からそれぞれ 0.50m ずつ孔口を離す。
4) 離した孔口と到達点を結ぶラインを以って方向とし、掘削する。
以上のようなことで対応するのが現実的かなと思います。
③排水ボーリングの掘削排水(泥水 or 濁水)処理について
これもまたよくあることですが、設計では掘削排水(泥水 or 濁水)処理について、全く記述が無
いものが多くみられます。いや殆どと言っていいぐらい。
掘削した暁に出てくる水の流末処理は、
「取らぬ狸の・・・・」かもしれないけれどきちんと
書いてあります。しかし、掘削途中の水については殆ど考慮されていません。
官公庁の仕様書にも項目としては注意すべきものとして上がっていますが、設計では上がってい
ないことが多いのです。ところが、これがとても重要なはなしになっているのが昨今の「環境問題
etc」なのです。
泥水や濁水が川に流入したり田圃に流入したりすると、大騒ぎになることがあります。
これらの水は、掘削対象の土質,岩質にもよりますが、沈殿しにくい物が出た場合は後始末を含
めて大問題となります。
着工前に用心して処理施設などを設置したり、処理剤を購入したり、処理業者をプラントごと配
備したりすることとなった場合、何れも施工管理費の中では収まりきらない額となります。下手す
ると、施工業者が泣かなくてはならないことにもなりかねません。あってはならないことですが、
施工業者が泣きたくないばかりにいいかげんなことをする事だってあるかもしれません。
これは、責任問題にならないうちに、少しの配慮をすれば事前に解決できるものだと思います。
ただ、泥水,濁水処理費を計上しておけばすむことです。実際に多く費用がかかるようであれば、
実績で変更してもらえばよいことです。項目が無いものは、変更も何も出来ないのですから。(今
まで変更してもらったことはあっただろうか?)
因みに泥水,濁水の処理には凝集剤を用いたものがあり、その内容によっては産業廃棄物となる
こともあります。従って、マニュフェストを運用して処理することを含めて費用がかかることとな
ります。(藤井基礎では、処理したものが産業廃棄物にならない凝集剤”AV ハイキュア”というもの
を取り扱っているのですが、ご存知でしょうか。!?)
もっと建設的な提案やアイデアが出せればよかったのですが、どうも違う方向へ言っているよう
です。今後は建設的にしようと思いますので、ご容赦ください。
官公庁,民間を問わず同じ建設業界にいる人たちで良い方向を出していけば、不況の時代も何と
か生きていけるのではないかと思います。
最後まで読んでいただきましたことに感謝いたします。
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