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ツシマヤマネコ保護活動
ツシマ ヤ マネコ保 護 活 動 ツシマヤマネコ保 護 活 動 Photo by Makoto Kawaguchi 住友大阪セメントは社会貢献活動の一環として『ツシマヤマネコ』を保護するため樹木の育 成に適した自然環境の再生に努めています。 当社では、2007 年春から、日本で最も絶滅が危惧されるツシマヤマネコの保護を目的とし た森づくりのため、長崎県対馬市舟志地区に所有する森林約16ヘクタールを無償で提供し、 ツシマヤマネコ保護活動に参画しています。 当該用地は、かつて当社の原料(粘土)を採掘する用地として取得したものでしたが、セメン ト産業へのリサイクルの要請が高まったことで、粘土の代替品となる産業廃棄物(石炭灰等) の利用が増加したことから、天然の粘土の使用が激減し、遊休地となっておりました。 セメント会社にとって天然資源は欠かせないもので、当社が創立 100 年を 越えられたのも自然の恵みがあってからこそです。 だからこそ貴重な自然をより大切にしていき、かつての遊休地をも希少動 物の保護活動へ役立たせたいと願い、ツシマヤマネコの保護活動に参加す る事を決めました。 自然を回復させるにはとても長い年月がかかりますが、これからも、 『ツシ マヤマネコ』が住みやすい自然再生を目指し、地元対馬の方々と協力し合 い、さまざまな環境保全活動を続けてまいります。 から 対馬 元 地 の ート レポ 舟志の森づくりにおける 森林管理の効果 〜 モニタリング調査の結果から見えてきたもの 〜 茂木 周作 琉球大学大学院理工学研究科在籍中にツシマ ヤマネコに出会い生態学的研究を始める。同大 環境省対馬野生生物保護センター アクティブ・レンジャー(調査研究担当) 学院修士課程修了後、2007年8月より現職。 舟志の森づくり 〜企業、地元住民、ボランティア団体、行政によるヤマネコに優しい森づくり〜 長崎県対馬市上対馬町舟志地区では、2007 年春より住友大阪 セメントさんより無償で提供していただいた森林(約 16ha)にお いて、間伐や植林などの森林管理を推進することで人と自然が共 生するモデル森を確立することを目的とした「ツシマヤマネコに優 しい森づくり」が行われています。企業と地元住民、ボランティア 団体、行政が一体となってツシマヤマネコの保護活動に取り組む 画期的な取り組みです。 これまで舟志の森づくりでは、ヤマネコの餌動物であるネズミが 食べるどんぐりが実る広葉樹の苗の植樹や植林地の間伐・枝打 ち、ススキを植栽した萱場地の造成などの活動を行ってきました。 一方で、森林保全・野生生物保全の効果的促進のためには、これ らの活動の効果測定を行う必要があります。 そこで、対馬野生生物保護センターでは、2008 年 5 月からヤマ ネコの主要な餌動物であるネズミを指標として、植林地における 間伐前後におけるヤマネコの餌資源量の変化という観点から森 林管理の効果を評価しています。 2013 年夏の植樹地の様子 モニタリング調査の結果より示唆される森づくり活動の成果 〜ネズミの生息調査〜 植林地を間伐して林床まで太陽の光が届くようになると林床植生が豊かになり、ヤマネコの餌動物であるネズミが増えます。餌動物が豊 富な森はヤマネコにとって暮らしやすい環境だと評価できます。果たして舟志の森に変化は起きたのでしょうか・・・ ? ●調査地および調査期間 ネズミの生息調査は、植林地内に設定した 2 箇所の調査区 (50m 調査の結果、舟志の森には主に2 種類のネズミ(アカネズミとヒ ×50m)にかごワナを設置してネズミを捕らえ、生息数を把握す メネズミ)が生息していることが分かりました。この 2 種のネズミ るものです。2008 年 5 月〜 2010 年 3 月まで 2 ヶ月に1 回 7 は外見や生息環境など良く似ていますが、アカネズミはヒメネズ 日間、2010 年 11 月以降は年 2 回(5 月、11 月)7 日間の捕獲 ミに比べて体が大きいため、ヤマネコにとって餌動物としての価 調査を実施しました。 値が高いと考えられます。 アカネズミ ヒメネズミ ●各実験区における間伐前後のネズミ生息数の変化 実験区 1 では、2009 年 3 月に間伐した後、2009 年 5 月から が見えました。一方、同時期の実験区 1 では、アカネズミの生息 7 月にかけてアカネズミの生息数が急激に増加し、ヒメネズミの 数の増加は見られませんでした。 生息数が減少しました。一方、同時期の実験区 2 では、ヒメネズ 各実験区では、間伐後にアカネズミの生息数が増加する傾向が見 ミの生息数は減少していましたが、アカネズミの生息数に大きな られたことから、間伐によってネズミの生息状況が変化したと考 変化は見られませんでした。 えられました。植林地における間伐は、アカネズミにとって生息 実 験 区 2 で は 2010 年 6 月 に 間 伐 を 実 施したところ、翌 年 環境を好適化する可能性が示唆されたのです。 2011 年 5 月にアカネズミが増加してヒメネズミは減少する傾向 〜自動撮影カメラ調査〜 赤外線センサーが動物を検知することにより自動で写真を撮るこ にはオスがメスを求めて活発に動き回ることが分かっています。 とができる自動撮影カメラは、ヤマネコのように夜に森の中を単 つまり、この写真は、舟志の森でヤマネコが繁殖して子育てして 独で行動するため直接観察することが難しい動物の生態を調査 いる可能性を示唆しており、また、ヤマネコが繁殖できるというこ する上で大変効果的です。舟志の森でも自動撮影カメラを設置 とは、舟志の森がヤマネコにとって暮らしやすい環境であるとい して調査を行っています。 うことの何よりの証拠となるのです。 舟志の森で自動撮影カメラを設置するとまもなく ヤマネコの姿が確認できました。 特に湿地の周 辺では定期的にヤマネコの姿が確認され、狩りに 成功してカモを運ぶヤマネコの姿も写りました。 舟志の森の湿地がヤマネコの餌場として重要な 環境であることが証明された 1 枚となりました。 また、2012 年 2 月には、舟志の森に暮らす 2 頭 のヤマネコの姿を撮影することに成功しました。 普段は単独で暮らすヤマネコですが、冬の繁殖期 捕らえたカモを運ぶツシマヤマネコ これからの森づくり 今回ご紹介したとおり、ネズミ調査や自動撮影カメラによるモニタ リング調査の結果より、舟志の森づくりにおける活動の成果が明 らかになってきました。ただし、間伐等の効果は徐々に長い時間 をかけて現れてくることもあります。また、現在対馬全域で問題 になっているイノシシやシカによる林床植生への影響は舟志の森 においても見られます。対馬野生生物保護センターでは引き続 きモニタリング調査を継続し、獣害対策も含めたより良い森づく りの方向性を探っていきたいと考えています。 TOPICS 自動撮影カメラで撮影された2 頭のツシマヤマネコ 植樹苗にどんぐりが実る! 2007年3月植樹から早 6年が過ぎましたが、つ いにどんぐりが実りまし た。これから舟志の森に どんぐりが沢山実り、ネ ズミも増えることが期待 されます。 植樹苗に実ったどんぐり