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3章及びまとめ 4158KB
第3章 実証実験における評価
第 1 章の事業概要でも記したように、実証実験を通じて、超大画面映像システムの評価、QXGA
プロジェクタの有効性評価、専用に開発した機器の実用性・運用性評価、多地点中継の評価など
を実施した。
3・1 超大画面映像システムの評価
システム開発の最終目標であったバーチャルスタジアムの実現という観点から、システムの有
効性・実用性について、アンケートによる評価を実施した。評価に際しては、下記項目を評価の
ポイントに定めた。
①総合評価
全体の印象
②画面規模
臨場感と迫力
③解 像 度
選手の背番号や表情の識別
④画
画像のつなぎ目や色合いなどの映像品位
質
⑤音響効果
4 チャンネルサラウンドの効果
⑥演
スロー映像、アップ映像、文字情報等の画面への挿入や、実況音声などの
出
演出効果
⑦実 用 性
ビジネス展開の可能性など
3・1・1 アンケート実施概要
(1)アンケート方法
来場者全員を対象としてアンケート調査を実施した。アンケート用紙はサテライトスタジアム
の他会場でも共通使用することを考慮して、タイトルを“
「Satellite Stadium」アンケート”と
した。
アンケートの方法については、
来場者にアンケート用紙を渡し、
記入を依頼する方法をとった。
また、アンケート内容については、下記を調査した。
①回答者のプロファイル(設問数:5)
②サテライトスタジアム(実質的には超大画面映像システム)の評価(設問数:10)
③システムの実用性(設問数:5)
④その他感想(設問数 2)
まず、①で回答者の属性を把握し、②でシステムが受け入れられているか、システムの実力を
どのように評価しているかを調査した。③では、実用化の可能性を調査した。④では、広く率直
な感想を得ることを目標とした。
調査は、
回答の選択を基本としたが、
生の声を吸い上げるために、
各所にコメント欄を設けた。
アンケートの具体的な内容については、付録 2 の資料を参照。
21
(2)アンケート回収数
アンケートの回収数は 740 件と 100%に近く、A4 の用紙に対し 22 問という細かさにもかかわ
らず、大変高い回収率であった。回答者が招待者だけでなく、スタッフパス来場者の一部に及ん
だことを差し引いても、驚くべき回収率である。回答者の本システムに対する関心の高さを表し
ていると言ってもいいのではないだろうか。
各試合における、回答者数は Fig.3-1-1 の通りである。
韓国からの中継と日本国内の中継に技術的差異(Fig.2-3-2 参照)が存在するため、6 月 9 日の
2 試合中継については、ゲーム 6(韓国)のみの回答者、ゲーム 7(日本)のみの回答者、及びゲ
ーム 6、ゲーム 7 の両方を見た回答者にわけてアンケートを回収した。
日時
Game
対戦カード
アンケート
開催国
開催国
アンケート
6月1日
G-1
ウルグアイ VS デンマーク
43
韓国
韓国のみ
142
6月2日
G-2
イングランド VS スウェーデン
33
日本
韓国/日本
31
6月3日
G-3
ブラジル VS トルコ
86
韓国
日本のみ
567
6月4日
G-4
日本 VS ベルギー
98
日本
6月6日
G-5
カメルーン VS サウジアラビア
65
日本
6月9日
G-6-1
コスタリカ VS トルコ
13
韓国
6月9日
G-6-2
コスタリカ VS トルコ/日本 VS ロシア
31
韓国/日本
6月9日
G-7
日本 VS ロシア
56
日本
6 月 11 日
G-8
サウジアラビア VS アイルランド
57
日本
6 月 13 日
G-9
エクアドル VS クロアチア
73
日本
6 月 26 日
G-10
ブラジル VS トルコ
112
日本
6 月 30 日
G-11
ブラジル VS ドイツ
73
日本
Fig.3-1-1 アンケート回収状況
22
740
3・1・2 アンケート結果
(1)回答者のプロファイル
回答者のプロファイルについては以下に示すような結果となった。
性別については、83%が男性(女性 17%)であり、性別的にはやや偏りのあるサンプルとなっ
た。
(Fig.3-1-2)
年齢については、10 代はほとんど見受けられないものの、20 代・30 代・40 代・50 代までは、
ほぼ均等なサンプル構成である。
(Fig.3-1-3)
回答者の立場(職業)は、招待の関係から、メーカー関係者・放送/映像ビジネス関係者・行政
関係者が比較的多くなっており、全体の 64%となっている。
(Fig.3-1-4)
過去においてこの超大画面を見たことがあるか否かについては、37%(271 名)が過去の実験
等で見たことがあると回答した。
男性
女性
サンプル合計
617
123
740
(83%)
(17%)
(100%)
1.性別
女性
17%
男性
女性
男性
83%
Fig.3-1-2 性別構成
10 代
20 代
30 代
40 代
50 代
空白
サンプル合計
15
115
209
161
239
1
740
(2%)
(16%)
(28%)
(22%)
(32%)
(0%)
(100%)
2.年齢
50代
32%
空白
0%
10代
2% 20代
16%
10代
20代
30代
40代
30代
28%
40代
22%
50代
空白
Fig.3-1-3 年齢構成
23
メーカー スポーツ
放送・映像
芸能
ビジネス
イベント興行
行政
報道
関係者
関係者
関係者
その他
空白
サンプル
関係者
関係者
関係者
175
5
2
149
12
150
24
199
24
740
(24%)
(1%)
(0%)
(20%)
(2%)
(20%)
(3%)
(27%)
(3%)
(100%)
関係者
3.回答の立場
空白
3%
その他
27%
メーカー関係者
スポーツ
24%
関係者
1%
芸能
関係者
0%
報道関係者
3%
放送・映像
ビジネス
関係者
20%
イベント興行
関係者
2%
行政関係者
20%
メーカー関係者
スポーツ関係者
芸能関係者
放送・映像
ビジネス関係者
イベント興行関係者
行政関係者
報道関係者
その他
Fig.3-1-4 回答者の立場(職業)
見た経験
合計
ある
ない
271
468
739
(37%)
(63%)
(100%)
4.超大画面映像を以前見た事があるか
ある
37%
ある
ない
ない
63%
Fig.3-1-5 過去に超大画面を見た経験の有無
24
合計
(2)システムの総合評価
システムの評価(
「十分満足」
、
「満足」
、
「普通」
、
「少し不満」
、
「不満」の5段階評価)のうち、
システムの総合的な評価に係わる「全体の感想」
、
「迫力感・映像のサイズ」
、
「臨場感」について
まとめたものが Fig.3-1-6、Fig.3-1-7、Fig.3-1-8 である。
「全体の感想」
、
「迫力感・映像のサイズ」については、
「十分満足」
、
「満足」を合わせた数字(以
後、
「満足」以上という)が、各々85%、86%と非常に高い数字となっており、来場者の本シス
テムに対する評価の高さがうかがえる。特に、
「普通」も入れると、
「全体の感想」
、
「迫力感・映
像のサイズ」ともに 94%となり、システムとして十分に特徴が評価され、受け入れられていると
いえる結果となった。
「臨場感」については、
「満足」以上が 70%、
「普通」も入れると 86%とこちらも非常に高い
数字になってはいるが、
「全体の感想」
、
「迫力感・映像のサイズ」に比べると、やや下がった数字
となっている。これは、コメントに「もう少し大画面のほうがよい」
、
「前でみると首が疲れる」
、
「逆サイドが見づらい」などの意見があることから、視聴場所による問題などが考えられる。特
に、会場のスペースの都合で座席配置に無理のあったことが大きな原因と推察される。
また、映像が観客席上部からスタジアムを見下ろす画面構成に対して、会場が画面を見上げる
レイアウトになっていたこと(46 頁 Fig.3-1-36 参照)に対する違和感を感想に記した人も多く、
会場レイアウト(画面と客席の)は今後の課題と思われる。
十分満足
満足
普通
少し不満
不満
空白
サンプル合計
266
372
64
19
0
19
740
(36%)
(49%)
(9%)
(3%)
(0%)
(3%)
(100%)
1.全体の感想
少し不満
3%
普通
9%
不満
0%
空白
3%
十分満足
十分満足
36%
満足
普通
少し不満
不満
空白
満足
49%
Fig.3-1-6 全体の感想
25
十分満足
満足
普通
少し不満
不満
空白
サンプル合計
314
333
57
26
4
6
740
(42%)
(44%)
(8%)
(4%)
(1%)
(1%)
(100%)
2.迫力感・映像のサイズ
少し不満
4%
不満
1%
空白
1%
十分満足
普通
8%
満足
普通
十分満足
42%
少し不満
不満
空白
満足
44%
Fig.3-1-7 迫力感・映像のサイズ
十分満足
満足
普通
少し不満
不満
空白
サンプル合計
183
338
115
70
15
19
740
(25%)
(45%)
(16%)
(9%)
(2%)
(3%)
(100%)
3.臨場感
不満
少し不満 2%
9%
空白
3%
十分満足
25%
十分満足
満足
普通
普通
16%
少し不満
不満
満足
45%
Fig.3-1-8 臨場感
26
空白
(3)映像の評価
「映像の画質」については、
「満足」以上が 76%、
「普通」も含めると 90%と高い評価を得て
いることがわかる。
(Fig.3-1-9)
「映像の画質」についての意見では、
「十分満足」と評価しているものの、
「走る人がぼける」
「ボールの大きな動きがぼける」
など残像現象を指摘するものがあり、
今後の検討課題といえる。
十分満足
満足
普通
少し不満
不満
空白
サンプル合計
211
360
101
56
4
8
740
(28%)
(48%)
(14%)
(8%)
(1%)
(1%)
(100%)
4.映像の画質
少し不満
8%
不満
1%
空白
1%
普通
14%
十分満足
十分満足
28%
満足
普通
少し不満
不満
満足
48%
空白
Fig.3-1-9 映像の画質
「映像の明るさ」については、
「満足」以上が 84%、更に「普通」も加えると 97%と、十分な
評価が得られた。
(Fig.3-1-10)
一方、
「選手の背番号の見え方」については、
「満足」以上が 24%、
「普通」以上が 55%にとど
まっている。
(Fig.3-1-11)
これは、画質は十分と思って見ているものの、あらためて選手の背番号についてたずねられれ
ば、不満が残るものであったと思われる。本システムは、国立競技場のロイヤルボックスから視
力 1.0 の人がピッチを見ているのと同等の解像度を有しており、実際にスタジアムで観戦するの
と見え方は同程度である。しかし、背番号の見え方について敢えて問われれば、
「少し不満」と感
じた人が多かったことを意味すると思われる。コメントに記された「ほとんど見えない(実物も
このようなもの)
」が、このことを裏付けている。
27
十分満足
満足
普通
少し不満
不満
空白
サンプル合計
309
309
95
16
0
11
740
(42%)
(42%)
(13%)
(2%)
(0%)
(1%)
(100%)
5.映像の明るさ
少し不満
2%
普通
13%
不満
0%
空白
1%
十分満足
満足
十分満足
42%
普通
少し不満
不満
満足
42%
空白
Fig.3-1-10 映像の明るさ
十分満足
満足
普通
少し不満
不満
空白
サンプル合計
44
131
226
260
55
23
740
(6%)
(18%)
(31%)
(35%)
(7%)
(3%)
(100%)
6.選手の背番号の見え方
不満
7%
空白
3%
十分満足
6%
満足
18%
十分満足
満足
普通
少し不満
少し不満
35%
不満
普通
31%
Fig.3-1-11 選手の背番号の見え方
28
空白
(4)音響の評価
「音響効果」については、Fig.3-1-12 に示すように、
「満足」以上が 53%、
「普通」以上が 81%
となっており、システムの総合的な評価や画質評価などに比べて劣るものの比較的高い評価とな
っている。コメントから、時折発生したノイズと音声の途切れに対して不満が多かったようであ
る。特に、伝送エラーによる「バチッ」という異音は非常に耳障りであり、評価の向上には、伝
送エラーの改善と音声ミュートの改良などの対策が必要である。
また、音響は 4 チャンネルサラウンドとしたが、後述する視聴位置による評価の項で記したよ
うに、会場のスペースの都合で座席配置に無理があり、視聴位置によってはサラウンド効果や音
量バランスが不十分だったことも評価の下がった一因と考えられる。
十分満足
満足
普通
少し不満
不満
空白
サンプル合計
119
273
206
100
31
11
740
(16%)
(37%)
(28%)
(14%)
(4%)
(1%)
(100%)
7.音響効果
少し不満
14%
不満
4%
空白
1% 十分満足
16%
十分満足
満足
普通
少し不満
不満
普通
28%
満足
37%
Fig.3-1-12 音響効果
29
空白
(5)演出の評価
バーチャルスタジアムの特質を生かし、子画面の挿入、文字情報の表示、実況音声の付加など
多彩な演出を行った。それらの評価について以下にまとめる。
「スローやアップ映像の挿入」
、
「得点など文字情報の挿入」について、評価結果をまとめたも
のが、Fig.3-1-13、Fig.3-1-14 である。
「スローやアップ映像の挿入」については、日本からの中継に限られたため、評価は国内中継
8試合を視聴した 598 名のサンプルで行った。
「スローやアップ映像の挿入」は 45%が「満足」以上の評価、
「得点など文字情報の挿入」に
ついては 59%が「満足」以上の評価となっている。
「スローやアップの挿入」については、試合により、
「常時挿入」した場合と、必要に応じて「随
時挿入」した場合とがあり、その評価についてもグラフのみ同時に示した。バーチャルスタジア
ムというコンセプトからアップやスロー映像の挿入は必要時に適宜挿入する「随時挿入」が理想
と想定していたが、評価結果からは、
「常時挿入」の方が評価の高い傾向にあり、再考を要するこ
とが判明した。
十分満足
満足
普通
少し不満
不満
空白
サンプル合計
62
208
175
71
19
63
598
(10%)
(35%)
(29%)
(12%)
(3%)
(11%)
(100%)
8.スローやアップ映像の挿入
不満
3%
空白
11%
十分満足
10%
十分満足
満足
少し不満
12%
普通
少し不満
不満
空白
普通
29%
満足
35%
<全体>
8.スローやアップ映像の挿入
不満
2%
空白
10%
8.スローやアップ映像の挿入
十分満足
14%
空白
12%
十分満足
不満
4%
満足
少し不満
9%
十分満足
10%
十分満足
満足
普通
少し不満
12%
少し不満
満足
31%
不満
普通
26%
満足
39%
普通
少し不満
不満
空白
普通
31%
<常時挿入>
空白
<随時挿入>
Fig.3-1-13 スローやアップ映像の挿入
30
十分満足
満足
普通
少し不満
不満
空白
サンプル合計
131
226
174
31
3
33
598
(22%)
(37%)
(29%)
(5%)
(1%)
(6%)
(100%)
9.得点など文字情報の挿入
不満
1%
少し不満
5%
空白
6%
十分満足
22%
十分満足
満足
普通
普通
29%
少し不満
不満
空白
満足
37%
Fig.3-1-14 得点など文字情報の挿入
「アナウンサーと解説者の実況音声」については、Fig.3-1-15 に示すように、
「満足」以上が
40 %と低くなっているが、これは本システム独自の実況音声を制作せず Sky Perfect
Communications あるいは Japan Consortium の中継音声を借用したため、止むを得ない結果と
思われる。特に、独自にスローやアップ映像を撮影して子画面に挿入した試合では、コメント中
に実況解説と挿入画面が相違するなどの指摘があり、今後は本システム専用の実況が望まれると
ころである。
十分満足
満足
普通
少し不満
不満
空白
サンプル合計
81
218
299
88
28
26
740
(11%)
(29%)
(40%)
(12%)
(4%)
(4%)
(100%)
10.アナウンサーや解説者の実況音声
不満
4%
少し不満
12%
空白
4%
十分満足
11%
十分満足
満足
普通
満足
29%
少し不満
不満
普通
40%
空白
Fig.3-1-15 アナウンサーや解説者の実況音声
31
(6)システムの実用性評価
システムの設置場所と期待する映像コンテンツに関する調査結果が Fig.3-1-16、Fig.3-1-17 で
ある。
(複数回答可)
システムの設置場所については、イベント施設、シアター、スタジアムが各々50%程度となっ
ている。屋内施設への期待が大きいことから、実用化は屋内施設からはじめ、順次、屋外施設へ
と展開するのが現実的と思われる。
(複数回答可)
街頭・ターミナル等
スタジアム
野外施設等
イベント施設内
F1等の
シアター
レースサーキット
博物館等
その他
サンプル合計
192
340
385
93
373
23
740
(26%)
(46%)
(52%)
(13%)
(50%)
(3%)
(100%)
その他
3%
50%
シアター
博物館等
F1等の
レースサーキット
13%
52%
イベント施設内
46%
スタジアム
野外施設等
26%
街頭・ターミナル等
0%
10%
20%
30%
Fig.3-1-16 システムの設置場所
32
40%
50%
60%
一方、どのような映像が見たいかについては、やはりスポーツがトップで 62%、ついでコンサ
ートや音楽関係が 47%となっている。コンサートや音楽関係に期待が大きいことは、本システム
の応用展開に新たな可能性を示すものと期待される。
(複数回答可)
サイエンス
コンサートや
CM映像
ドキュメンタリー
音楽関係
案内情報
100
349
(14%)
(47%)
その他
スポーツ
各種イベント
17
456
180
(2%)
(62%)
(24%)
映画
その他
サンプル合計
160
27
740
(22%)
(4%)
(100%)
(長編作品等)
4%
22%
映画
(長編作品等)
24%
各種イベント
62%
スポーツ
CM映像
案内情報
2%
47%
コンサートや
音楽関係
14%
サイエンス
ドキュメンタリー
0%
10%
20%
30%
40%
Fig.3-1-17 期待する映像コンテンツ
33
50%
60%
70%
システムの伝送系を構成した、高速・大容量の衛星通信回線に期待することについての評価を
まとめたものが Fig.3-1-18 である。
(複数回答可)
今回の実験が含まれるところの「衛星通信による高精細シアターの実現」が 57%と最も多くな
っている。次点の「家庭へのブロードバンド配信」
(38%)については、昨今のブロードバンド
の爆発的な普及と関心の高さをうかがわせる結果となった。
「衛星通信による高精細シアターの実現」に高い期待が寄せられていることは、システムの特
徴と実力が十分認識された結果であり、
ビジネスターゲットとして最も実現性が高いと思われる。
(複数回答可)
衛星通信による
家庭への
高精細シアターの
ブロードバンド
実現
配信
423
278
202
(57%)
(38%)
(27%)
その他
衛星通信設備の
小型化・低廉化
衛星による
インターネット放送の
その他
サンプル合計
153
12
740
(21%)
(2%)
(100%)
実現
2%
21%
衛星によるインターネット放送の実現
27%
衛星通信設備の
小型化・低廉化
38%
家庭への
ブロードバンド配信
57%
衛星通信による
高精細シアターの実現
0%
10%
20%
30%
40%
Fig.3-1-18 高速・大容量の衛星通信回線に期待すること
34
50%
60%
「ビジネス展開の可能性」については、
「2∼3 年以内」が 47%と最も多く、ついで「1 年以内」
が 23%、
「5 年以内」が 10%と続いており、
「難しい」と「無理」は合計で 11%にとどまった。
(Fig.3-1-19)
3 年以内での実用化に対する期待が 70%と非常に大きい。
1 年以内
2∼3 年以内
5 年以内
難しい
無理
空白
サンプル合計
170
343
74
77
6
70
740
(23%)
(47%)
(10%)
(10%)
(1%)
(9%)
(100%)
4.本システムとビジネス展開の可能性
難しい
10%
無理
1%
空白
9%
1年以内
1年以内
23%
2-3年以内
5年以内
5年以内
10%
難しい
無理
2-3年以内
47%
空白
Fig.3-1-19 ビジネス展開の可能性
「ビジネス展開の課題」については、
「コンテンツ面」の指摘が最も多く 31%、ついで「収益・
回収面」27%、
「技術面」26%となっている。
(Fig.3-1-20)
課題に対する主なコメントは下記のとおりである。
●コンテンツ面
・サッカー(ワールドカップ)以外の魅力的なコンテンツの有無
・放映権等(権利)の問題
・有料に値するコンテンツの有無
●収益・回収面
・回線使用料/機器コストの低価格化
・収益可能なビジネスモデルの確立
・有料化に適する魅力的なコンテンツの実現
●技術面
・更なる大画面化(屋外での設置)
・画質の向上(高解像度化)
・画面のつなぎ目/シームレス化(色/輝度等)
35
技術面における画面のつなぎ目改善は、撮影システムに光学のりしろ方式を採用することで解
決可能であり、更なる大画面化も可能である。コンテンツ面・収益回収面で指摘されているよう
に、放映権等の権利問題をクリアした魅力的なコンテンツの確保と、収益可能なビジネスモデル
の確立が実用化の課題と言えよう。
(複数回答可)
技術面
投資面
コンテンツ面
立地面
収益・回収面
その他
空白
サンプル合計
192
167
230
93
200
40
263
740
(26%)
(23%)
(31%)
(13%)
(27%)
(5%)
(36%)
(100%)
36%
空白
5%
その他
27%
収益・回収面
13%
立地面
31%
コンテンツ面
23%
投資面
26%
技術面
0%
5%
10%
15%
20%
25%
Fig.3-1-20 ビジネス展開の課題
36
30%
35%
40%
(7)回答者の立場(職業)の相違によるシステム評価比較
システムを製造・販売する立場のメーカー関係者(175 名)と、システムに映像を提供したり、
映像を制作したりする立場の放送・映像ビジネス関係者(149 名)で、システムに関する評価が
どのようになっているかを調べた。
(Fig.3-1-21∼Fig.3-1-27)
評価全般に対して、メーカー関係者よりも映像に関与する放送・映像ビジネス関係者の方が厳
しい評価をしている。しかし、それ程大きな差異はなく、最大でも「満足」以上で10%程度の
違いである。このことは、システムを作る側とシステムを利用して映像ビジネスをする側の両方
からシステムが十分評価され受け入れられたことを示すものであり、実用化に弾みがつく結果と
言える。
十分満足
満足
普通
少し不満
不満
空白
サンプル合計
59
99
11
2
0
4
175
(34%)
(57%)
(6%)
(1%)
(0%)
(2%)
(100%)
放送・映像ビ
40
78
17
7
0
7
149
ジネス関係者
(27%)
(52%)
(11%)
(5%)
(0%)
(5%)
(100%)
メーカー関係者
1.全体の感想(メーカー関係者)
少し不満
1%
1.全体の感想(放送・映像ビジネス関係者)
空白
2%
不満
0%
十分満足
普通
6%
十分満足
34%
空白
5%
十分満足
十分満足
27%
満足
普通
満足
普通
普通
11%
少し不満
不満
満足
57%
不満
0%
少し不満
5%
少し不満
不満
満足
52%
空白
<メーカー関係者>
空白
<放送・映像ビジネス関係者>
Fig.3-1-21 全体の感想
十分満足
満足
普通
少し不満
不満
空白
サンプル合計
69
87
9
8
0
2
175
(39%)
(50%)
(5%)
(5%)
(0%)
(1%)
(100%)
放送・映像ビ
45
79
17
4
2
2
149
ジネス関係者
(30%)
(54%)
(11%)
(3%)
(1%)
(1%)
(100%)
メーカー関係者
2.迫力感・映像のサイズ(メーカー関係者)
少し不満
5%
不満
0%
2.迫力感・映像のサイズ
(放送・映像ビジネス関係者)
空白
1%
十分満足
普通
5%
十分満足
39%
満足
不満
1%
空白
1%
十分満足
30%
十分満足
満足
普通
普通
少し不満
少し不満
不満
不満
満足
54%
空白
満足
50%
少し不満
3%
普通
11%
<メーカー関係者>
空白
<放送・映像ビジネス関係者>
Fig.3-1-22 迫力感・映像のサイズ
37
十分満足
満足
普通
少し不満
不満
空白
サンプル合計
39
85
30
14
4
3
175
(22%)
(49%)
(17%)
(8%)
(2%)
(2%)
(100%)
放送・映像ビ
35
53
22
25
6
8
149
ジネス関係者
(23%)
(36%)
(15%)
(17%)
(4%)
(5%)
(100%)
メーカー関係者
3.臨場感(放送・映像ビジネス関係者)
3.臨場感(メーカー関係者)
不満
2%
少し不満
8%
空白
2%
十分満足
22%
空白
5%
不満
4%
十分満足
十分満足
23%
十分満足
満足
満足
少し不満
17%
普通
普通
17%
少し不満
満足
49%
普通
少し不満
満足
36%
不満
不満
普通
15%
空白
空白
<放送・映像ビジネス関係者>
<メーカー関係者>
Fig.3-1-23 臨場感
十分満足
満足
普通
少し不満
不満
空白
サンプル合計
44
83
22
19
2
5
175
(25%)
(47%)
(13%)
(11%)
(1%)
(3%)
(100%)
放送・映像ビ
44
57
26
19
1
2
149
ジネス関係者
(30%)
(38%)
(17%)
(13%)
(1%)
(1%)
(100%)
メーカー関係者
4.映像の画質(メーカー関係者)
少し不満
11%
不満
1%
4.映像の画質(放送・映像ビジネス関係者)
空白
3%
十分満足
25%
十分満足
不満
1%
少し不満
13%
空白
1%
十分満足
30%
満足
普通
普通
13%
満足
普通
少し不満
不満
満足
47%
十分満足
普通
17%
少し不満
不満
空白
満足
38%
<メーカー関係者>
<放送・映像ビジネス関係者>
Fig.3-1-24 映像の画質
38
空白
十分満足
満足
普通
少し不満
不満
空白
サンプル合計
69
77
23
4
0
2
175
(39%)
(45%)
(13%)
(2%)
(0%)
(1%)
(100%)
放送・映像ビ
60
57
24
5
0
3
149
ジネス関係者
(41%)
(38%)
(16%)
(3%)
(0%)
(2%)
(100%)
メーカー関係者
5.映像の明るさ(メーカー関係者)
不満
0%
少し不満
2%
5.映像の明るさ(放送・映像ビジネス関係者)
空白
1%
普通
13%
十分満足
満足
十分満足
41%
普通
満足
45%
空白
2%
十分満足
普通
16%
満足
十分満足
39%
不満
0%
少し不満
3%
普通
少し不満
少し不満
不満
不満
空白
空白
満足
38%
<メーカー関係者>
<放送・映像ビジネス関係者>
Fig.3-1-25 映像の明るさ
十分満足
満足
普通
少し不満
不満
空白
サンプル合計
10
35
54
54
16
6
175
(6%)
(20%)
(31%)
(31%)
(9%)
(3%)
(100%)
放送・映像ビ
13
23
38
58
13
4
149
ジネス関係者
(9%)
(15%)
(26%)
(38%)
(9%)
(3%)
(100%)
メーカー関係者
6.選手の背番号の見え方(メーカー関係者)
不満
9%
空白
3%
十分満足
6%
6.選手の背番号の見え方
(放送・映像ビジネス関係者)
十分満足
不満
9%
空白
3%
満足
満足
20%
十分満足
9%
満足
15%
普通
少し不満
普通
不満
普通
26%
少し不満
38%
空白
普通
31%
満足
少し不満
不満
少し不満
31%
十分満足
<メーカー関係者>
<放送・映像ビジネス関係者>
Fig.3-1-26 選手の背番号の見え方
39
空白
十分満足
満足
普通
少し不満
不満
空白
サンプル合計
17
72
46
29
9
2
175
(10%)
(41%)
(26%)
(17%)
(5%)
(1%)
(100%)
放送・映像ビ
18
37
47
28
15
4
149
ジネス関係者
(12%)
(25%)
(31%)
(19%)
(10%)
(3%)
(100%)
メーカー関係者
7.音響効果(放送・映像ビジネス関係者)
7.音響効果(メーカー関係者)
不満
5%
少し不満
17%
空白
1%
十分満足
10%
十分満足
空白
3%
十分満足
12%
満足
満足
41%
十分満足
満足
少し不満
19%
普通
普通
26%
不満
10%
満足
25%
少し不満
普通
少し不満
不満
不満
空白
普通
31%
<メーカー関係者>
空白
<放送・映像ビジネス関係者>
Fig.3-1-27 音響効果
40
(8)見た経験の有無によるシステム評価比較
本システムは、はじめてみたときのインパクトが非常に大きいため、2 回目以降の視聴では、
評価が厳しくなることが予想された。そこで、過去に本システムを見たことがある/ない
(ある:271 名、ない:468 名)で回答者を分類し比較した。
システムに関する評価について、Fig.3-1-28∼Fig.3-1-34 に示す。
結果的には、両者にほとんど差異はなく、2 回目以降の視聴者に対しても十分にアピールでき
ており、高い評価を受けている。このことは、システムが十分な実力と実用性を有することの証
左といえるだろう。
十分満足
満足
普通
少し不満
不満
空白
サンプル合計
見た経験
96
136
27
6
0
6
271
「ある」
(35%)
(51%)
(10%)
(2%)
(0%)
(2%)
(100%)
見た経験
170
235
37
13
0
13
468
「ない」
(36%)
(50%)
(8%)
(3%)
(0%)
(3%)
(100%)
1.全体の感想(見た経験 「ある」)
少し不満 不満
0%
2%
1.全体の感想(見た経験 「ない」)
空白
2%
普通
10%
少し不満
3%
十分満足
空白
3%
普通
8%
満足
十分満足
35%
不満
0%
満足
十分満足
36%
普通
普通
少し不満
少し不満
不満
不満
空白
満足
51%
十分満足
空白
満足
50%
<見た経験 「ある」>
<見た経験 「ない」>
Fig.3-1-28 全体の感想
十分満足
満足
普通
少し不満
不満
空白
サンプル合計
見た経験
105
134
20
8
3
1
271
「ある」
(39%)
(50%)
(7%)
(3%)
(1%)
(0%)
(100%)
見た経験
208
199
37
18
1
5
468
「ない」
(44%)
(43%)
(8%)
(4%)
(0%)
(1%)
(100%)
2.迫力感・映像のサイズ(見た経験 「ない」)
2.迫力感・映像のサイズ(見た経験 「ある」)
少し不満 不満
1%
3%
普通
7%
空白
0%
不満
少し不満
0%
4%
十分満足
満足
十分満足
39%
空白
1%
普通
8%
普通
満足
十分満足
44%
少し不満
不満
普通
少し不満
不満
空白
満足
50%
十分満足
空白
満足
43%
<見た経験 「ない」>
<見た経験 「ある」>
Fig.3-1-29 迫力感・映像のサイズ
41
十分満足
満足
普通
少し不満
不満
空白
サンプル合計
見た経験
81
113
44
22
5
6
271
「ある」
(30%)
(42%)
(16%)
(8%)
(2%)
(2%)
(100%)
見た経験
102
224
71
48
10
13
468
「ない」
(22%)
(48%)
(15%)
(10%)
(2%)
(3%)
(100%)
3.臨場感(見た経験 「ある」)
不満
少し不満 2%
8%
3.臨場感(見た経験 「ない」)
空白
2%
少し不満
10%
十分満足
十分満足
30%
満足
普通
16%
不満
2%
空白
3%
十分満足
22%
満足
普通
普通
普通
15%
少し不満
少し不満
不満
満足
42%
十分満足
不満
満足
48%
空白
空白
<見た経験 「ない」>
<見た経験 「ある」>
Fig.3-1-30 臨場感
十分満足
満足
普通
少し不満
不満
空白
サンプル合計
見た経験
70
137
41
18
1
4
271
「ある」
(26%)
(51%)
(15%)
(7%)
(0%)
(1%)
(100%)
見た経験
141
222
60
38
3
4
468
「ない」
(30%)
(47%)
(13%)
(8%)
(1%)
(1%)
(100%)
4.映像の画質(見た経験 「ある」)
少し不満
7%
普通
15%
不満
0%
4.映像の画質(見た経験 「ない」)
空白
1%
少し不満
8%
十分満足
十分満足
26%
満足
普通
13%
普通
不満
1%
空白
1%
十分満足
十分満足
30%
少し不満
普通
少し不満
不満
不満
満足
47%
空白
満足
51%
満足
空白
<見た経験 「ない」>
<見た経験 「ある」>
Fig.3-1-31 映像の画質
42
十分満足
満足
普通
少し不満
不満
空白
サンプル合計
見た経験
112
117
32
7
0
3
271
「ある」
(41%)
(43%)
(12%)
(3%)
(0%)
(1%)
(100%)
見た経験
197
191
63
9
0
8
468
「ない」
(42%)
(41%)
(13%)
(2%)
(0%)
(2%)
(100%)
5.映像の明るさ(見た経験 「ある」)
普通
12%
不満
0%
少し不満
3%
5.映像の明るさ(見た経験 「ない」)
空白
1%
十分満足
普通
13%
満足
十分満足
41%
少し不満
2%
不満
0%
空白
2%
十分満足
満足
十分満足
42%
普通
少し不満
普通
少し不満
不満
満足
43%
不満
空白
満足
41%
空白
<見た経験 「ない」>
<見た経験 「ある」>
Fig.3-1-32 映像の明るさ
十分満足
満足
普通
少し不満
不満
空白
サンプル合計
見た経験
14
56
74
98
21
8
271
「ある」
(5%)
(21%)
(27%)
(36%)
(8%)
(3%)
(100%)
見た経験
30
75
152
162
34
15
468
「ない」
(6%)
(16%)
(32%)
(36%)
(7%)
(3%)
(100%)
6.選手の背番号の見え方(見た経験 「ある」)
不満
8%
空白
3%
十分満足
5%
6.選手の背番号の見え方(見た経験 「ない」)
不満
7%
十分満足
満足
21%
空白
3%
満足
十分満足
6%
十分満足
満足
16%
普通
不満
少し不満
36%
空白
普通
27%
普通
少し不満
少し不満
少し不満
36%
満足
普通
32%
<見た経験 「ない」>
<見た経験 「ある」>
Fig.3-1-33 選手の背番号の見え方
43
不満
空白
十分満足
満足
普通
少し不満
不満
空白
サンプル合計
見た経験
35
95
80
43
15
3
271
「ある」
(13%)
(34%)
(30%)
(16%)
(6%)
(1%)
(100%)
見た経験
84
178
125
57
16
8
468
「ない」
(18%)
(38%)
(27%)
(12%)
(3%)
(2%)
(100%)
7.音響効果(見た経験 「ない」)
7.音響効果(見た経験 「ある」)
不満
6%
空白
十分満足
1%
13%
少し不満
16%
普通
30%
十分満足
少し不満
12%
満足
満足
34%
不満
3%
空白
2% 十分満足
18%
十分満足
満足
普通
普通
少し不満
少し不満
不満
普通
27%
空白
満足
38%
<見た経験 「ない」>
<見た経験 「ある」>
Fig.3-1-34 音響効果
44
不満
空白
(9)視聴位置によるシステム評価比較
会場内の視聴場所によってシステムに関する評価がどのように変わるかを解析した。
視聴位置については、①前方、②中央、③後方、④サイド、⑤立見の 5 つの選択肢から複数選択
させることで特定した。
回答者には 2 項目選択者と1項目のみの選択者が混在するため、Fig.3-1-36 の会場レイアウト
図の座席エリアを、Fig.3-1-35 のマトリクスとし、来場者を 7 つの位置に振り分けて評価の比較
を行った。
(対象者 723 名)
なお、座席数は 75 席を基本としたが、来場者に応じて最大 124 席を確保し、ほとんど立見の
出ない状態とした。
スクリーン
④サイド
②中央
前方/サイド
前方/中央
48
33
①前方
前方
119
計48
計152
中央/サイド
中央
13
175
②中央
サイド
187
計200
計175
後方/サイド
後方/中央
26
22
③後方
後方
89
計26
計111
立見/サイド
立見/中央
2
0
⑤立見
立見
9
計11
合計723
その他17
Fig.3-1-35 視聴位置マトリクス
45
Fig.3-1-36 会場レイアウト図
46
Fig.3-1-37∼Fig.3-1-43 が、システムに関する評価を、視聴場所をパラメータにして比較したも
のである。
一般的に、
ハイビジョン映像の最適視聴位置は画面高さの 3 倍以上離れた位置と言われており、
スクリーンの高さが約 3m だったので、9m 以上離れた位置が最適視聴位置となる。しかし、今
回の実験では、会場スペースの都合で無理な座席配置となっており、Fig.3-1-36 の会場レイアウ
ト図で明らかのように、後方座席(Fig.3-1-35 の「後方」
)より後ろが上記条件を満たす位置とな
る。
「映像の画質」
(Fig.3-1-40)では、中央部、サイド部ともに、前方より後方になる程、
「満足」
以上の比率が増加するが、まさにこの事実を裏付けていると言える。
また、
「全体の感想」
(Fig.3-1-37)
、
「迫力感・映像のサイズ」
(Fig.3-1-38)
、
「臨場感」
(Fig.3-1-39)
では、会場横方向で視聴位置の影響があり、前方から後方まで、中央部に比べてサイド部の方が
「満足」以上の数値が低い。しかし、会場奥行き方向の影響は余り受けていない。このことは、
撮影カメラと同じ中央位置が視聴の最適位置であることから、中央から横方向に外れる程、評価
が下がると推察される。しかし、前述したように、最適な距離だけ画面から離れていれば、その
影響はかなり軽減されるはずで、この評価結果は座席配置の前過ぎがその原因であろう。
「選手の背番号の見え方」
(Fig.3-1-42)では、前方の方が満足度は高いと予想されたが、
「満
足」以上の数値は前方/中央が一番低かった。これは、前方過ぎて選手のいることが多い左右画
面が見づらかったためと思われる。
「音響効果」
(Fig.3-1-43)については、中央部、サイド部ともに、
「満足」以上の比率が後方
で極端に低くなっている。これも、会場スペースの都合で、座席最後部両端付近にリアスピーカ
を配置したことが、後方部で 4 チャンネルサラウンド効果と音響バランスを崩す結果となり、評
価を下げた原因と推定される。
以上のように、会場内の観客の満足度を向上するためには、スクリーンとの距離に配慮すると
ともに、スピーカ配置も十分吟味して、視聴エリアを確保することが肝要である。
47
1.全体の感想(前方/サイド)
少し不満
6%
普通
10%
不満
0%
1.全体の感想(前方/中央)
空白
2%
少し不満 不満
0%
3%
普通
9%
十分満足
満足
十分満足
23%
少し不満
不満
不満
空白
満足
45%
<前方/中央>
1.全体の感想(中央)
1.全体の感想(中央/サイド)
少し不満 不満
0%
普通 2%
十分満足
十分満足
29%
満足
空白
1%
十分満足
満足
7%
普通
普通
十分満足
45%
少し不満
不満
少し不満
不満
満足
45%
空白
満足
55%
空白
<中央/サイド>
<中央>
1.全体の感想(後方/中央)
1.全体の感想(後方/サイド)
不満
少し不満 0%
0%
普通
12%
普通
少し不満
<前方/サイド>
空白
2%
満足
十分満足
38%
空白
不満
0%
十分満足
普通
満足
59%
少し不満
3%
普通
11%
空白
5%
十分満足
空白
8%
少し不満
1%
普通
5%
満足
十分満足
31%
普通
不満
0%
空白
5%
十分満足
十分満足
36%
少し不満
満足
普通
不満
少し不満
空白
不満
空白
満足
49%
満足
53%
<後方/サイド>
<後方/中央>
1.全体の感想(立見)
少し不満
0%
普通
27%
不満
0%
空白
0% 十分満足
18%
十分満足
満足
普通
少し不満
不満
満足
55%
<立見>
Fig.3-1-37 全体の感想
48
空白
2.迫力感・映像のサイズ(前方/サイド)
不満
少し不満 2%
6%
2.迫力感・映像のサイズ(前方/中央)
空白
0%
不満
少し不満 1%
5%
普通
8%
十分満足
満足
普通
8%
普通
十分満足
31%
空白
1%
十分満足
満足
普通
十分満足
47%
少し不満
不満
不満
空白
満足
53%
空白
満足
38%
<前方/サイド>
<前方/中央>
2.迫力感・映像のサイズ(中央/サイド)
少し不満
4%
不満
1%
2.迫力感・映像のサイズ(中央)
空白
1%
普通
11%
十分満足
十分満足
32%
普通
6%
満足
少し不満
3%
不満
0%
空白
0%
十分満足
満足
普通
普通
少し不満
少し不満
不満
不満
満足
41%
空白
十分満足
50%
満足
51%
<中央/サイド>
空白
<中央>
2.迫力感・映像のサイズ(後方/サイド)
不満
少し不満 0%
0%
普通
12%
少し不満
2.迫力感・映像のサイズ(後方/中央)
空白
4%
普通
4%
十分満足
満足
十分満足
38%
不満
0%
空白
0%
十分満足
満足
普通
普通
少し不満
少し不満
不満
満足
46%
空白
満足
46%
少し不満
2%
<後方/サイド>
十分満足
48%
<後方/中央>
2.迫力感・映像のサイズ(立見)
普通
9%
少し不満
0%
不満
0%
空白
0%
十分満足
満足
十分満足
36%
普通
少し不満
不満
空白
満足
55%
<立見>
Fig.3-1-38 迫力感・映像のサイズ
49
不満
空白
3.臨場感(前方/サイド)
少し不満
15%
不満
0%
3.臨場感(前方/中央)
空白
0% 十分満足
13%
十分満足
少し不満
11%
満足
空白
3%
不満
3%
十分満足
26%
普通
少し不満
不満
満足
47%
不満
空白
満足
46%
<前方/サイド>
少し不満
11%
3.臨場感(中央)
十分満足
19%
十分満足
少し不満
7%
満足
普通
空白
1%
十分満足
十分満足
27%
少し不満
不満
空白
空白
満足
48%
<中央/サイド>
<中央>
3.臨場感(後方/サイド)
不満
0%
満足
普通
不満
満足
48%
3.臨場感(後方/中央)
十分満足
19%
少し不満
15%
普通
15%
不満
2%
普通
15%
少し不満
普通
16%
空白
8%
空白
<前方/中央>
3.臨場感(中央/サイド)
不満 空白
4%
2%
満足
普通
普通
11%
少し不満
普通
25%
十分満足
不満
少し不満 3%
6%
十分満足
満足
満足
普通
少し不満
少し不満
不満
不満
空白
空白
満足
38%
<後方/サイド>
<後方/中央>
3.臨場感(立見)
少し不満
0%
十分満足
十分満足
37%
普通
13%
普通
満足
43%
空白
3%
不満
9%
空白
0%
十分満足
9%
十分満足
満足
普通
少し不満
満足
36%
普通
46%
<立見>
Fig.3-1-39 臨場感
50
不満
空白
4.映像の画質(前方/サイド)
不満
少し不満 2%
10%
空白
0%
4.映像の画質(前方/中央)
普通
十分満足
十分満足
29%
11%
満足
普通
17%
空白
2%
不満
少し不満 1%
十分満足
十分満足
21%
普通
普通
16%
少し不満
少し不満
不満
不満
空白
満足
50%
満足
41%
<前方/サイド>
空白
2%
4.映像の画質(中央)
不満
0% 空白
0%
少し不満
7%
十分満足
十分満足
24%
普通
12%
満足
普通
16%
十分満足
十分満足
33%
普通
少し不満
不満
不満
空白
満足
51%
満足
普通
少し不満
空白
満足
48%
<中央/サイド>
<中央>
4.映像の画質(後方/サイド)
少し不満 不満
0%
12%
空白
<前方/中央>
4.映像の画質(中央/サイド)
不満
少し不満 1%
6%
満足
4.映像の画質(後方/中央)
空白
0%
普通
10%
十分満足
普通
8%
十分満足
42%
満足
38%
少し不満 不満
0%
5%
空白
0%
十分満足
31%
満足
満足
普通
普通
少し不満
少し不満
不満
不満
空白
満足
54%
空白
<後方/サイド>
<後方/中央>
4.映像の画質(立見)
普通
9%
十分満足
少し不満
0%
不満
0%
空白
0%
十分満足
18%
十分満足
満足
普通
少し不満
不満
満足
73%
<立見>
Fig.3-1-40 映像の画質
51
空白
5.映像の明るさ(前方/サイド)
普通
25%
少し不満
0%
不満
0%
5.映像の明るさ(前方/中央)
空白
0%
十分満足
普通
14%
満足
十分満足
33%
少し不満
3%
不満
0%
空白
1%
十分満足
満足
普通
十分満足
43%
少し不満
不満
空白
<前方/中央>
5.映像の明るさ(中央)
5.映像の明るさ(中央/サイド)
空白
2%
普通
13%
空白
満足
39%
<前方/サイド>
不満
0%
少し不満
2%
十分満足
十分満足
36%
空白
2%
普通
10%
満足
普通
不満
0%
満足
41%
満足
46%
満足
十分満足
45%
不満
空白
十分満足
普通
少し不満
少し不満
不満
空白
<中央/サイド>
<中央>
5.映像の明るさ(後方/中央)
5.映像の明るさ(後方/サイド)
不満
少し不満 0%
0%
普通
12%
少し不満
不満
満足
42%
少し不満
3%
普通
空白
8%
少し不満
1%
十分満足
満足
十分満足
35%
不満
0%
空白
1%
十分満足
普通
10%
普通
満足
普通
少し不満
十分満足
51%
不満
空白
<後方/サイド>
<後方/中央>
5.映像の明るさ(立見)
普通
9%
空白 少し不満
0%
0%
不満
0%
十分満足
満足
十分満足
36%
普通
少し不満
不満
空白
満足
55%
<立見>
Fig.3-1-41 映像の明るさ
52
不満
空白
満足
37%
満足
45%
少し不満
6.選手の背番号の見え方(前方/サイド)
不満
6%
空白
2%
6.選手の背番号の見え方(前方/中央)
十分満足
6%
不満
7%
十分満足
満足
21%
空白
3%
十分満足
7%
満足
11%
満足
普通
少し不満
少し不満
不満
普通
28%
少し不満
44%
空白
普通
23%
<前方/サイド>
不満
7%
十分満足
4%
6.選手の背番号の見え方(中央)
十分満足
満足
17%
不満
6%
満足
空白
2%
十分満足
6%
少し不満
少し不満
33%
満足
不満
空白
普通
33%
<中央/サイド>
6.選手の背番号の見え方(後方/中央)
十分満足
4%
不満
8%
十分満足
満足
19%
空白
1%
十分満足
8%
十分満足
満足
満足
普通
満足
23%
少し不満
32%
少し不満
少し不満
23%
空白
<中央>
6.選手の背番号の見え方(後方/サイド)
不満
15%
普通
少し不満
少し不満
34%
不満
普通
34%
十分満足
満足
19%
普通
空白
4%
空白
<前方/中央>
6.選手の背番号の見え方(中央/サイド)
空白
5%
満足
普通
不満
少し不満
42%
十分満足
不満
空白
普通
28%
<後方/中央>
6.選手の背番号の見え方(立見)
空白
18%
満足
0%
十分満足
0%
十分満足
普通
27%
満足
普通
少し不満
不満
18%
不満
少し不満
37%
<立見>
Fig.3-1-42 選手の背番号の見え方
53
少し不満
不満
普通
35%
<後方/サイド>
普通
空白
空白
7.音響効果(前方/サイド)
不満
少し不満 0%
6%
7.音響効果(前方/中央)
空白
2% 十分満足
8%
不満
5%
少し不満
13%
十分満足
満足
普通
普通
40%
満足
44%
満足
普通
不満
不満
空白
普通
28%
満足
31%
<前方/中央>
十分満足
空白
1%
不満
3%
少し不満
14%
満足
少し不満
16%
十分満足
23%
普通
空白
不満
満足
37%
<中央/サイド>
7.音響効果(後方/中央)
十分満足
12%
不満
4%
十分満足
空白
4%
十分満足
12%
十分満足
満足
少し不満
23%
空白
<中央>
7.音響効果(後方/サイド)
不満
4%
満足
少し不満
普通
22%
不満
満足
37%
十分満足
普通
少し不満
空白
4%
空白
7.音響効果(中央)
十分満足
10%
普通
29%
十分満足
少し不満
7.音響効果(中央/サイド)
空白
2%
十分満足
20%
少し不満
<前方/サイド>
不満
6%
空白
3%
満足
19%
満足
少し不満
23%
普通
少し不満
満足
19%
不満
普通
38%
<後方/サイド>
<後方/中央>
7.音響効果(立見)
少し不満
9%
不満
0%
少し不満
不満
空白
普通
38%
普通
空白
0%
十分満足
18%
十分満足
満足
普通
少し不満
不満
普通
36%
満足
37%
<立見>
Fig.3-1-43 音響効果
54
空白
空白
3・1・3 アンケート評価のまとめ
会場のスペースの関係で理想的な座席配置ができなかったため、
「音響効果」で「満足」以上
の比率が少し下がったものの、全体として、システムに対する非常に高い評価が得られており、
近い将来のビジネス展開が大いに期待されていることがうかがえる。
しかし、高い評価ながらも、アンケートのコメント中には課題・希望が挙げられており、それ
らを参考に、今後も評価向上に向けた改善努力が必要である。視聴環境等を含めた技術的課題に
関するものを列挙すると下記のとおりである。
●シアター形状の検討
・階段状の客席の設置
(撮影角度と視聴角度のマッチング)
・更なる画面の大型化
●高画質化
・撮影側の高画質化(フォーカス・つなぎ目等精度向上)
・伝送における高画質化(ビットレート、圧縮方法の最適化)
・映写側における高画質化(つなぎ目・色・輝度を含む十分なシームレス化)
●音響効果の整備改善
・シアターにおける音響効果の改善
・専用アナウンス及び解説
上記から明らかなように、すでに対処可能ないし解決の方向が見えている多くのことが、来場
者の不満要素となっており、その解決によって、より一層の満足度向上が得られると思われる。
特に、階段席はバーチャルスタジアムには必須といえるだろう。
一方、ビジネス展開に向けた課題については、前項に記したとおりであるが、数年内にビジネ
ス化を望む声が多数であり、本システムの実用性を裏付けるものであった。
また、今回、参加数の少ないスポーツ関係者から「商業利用は先かもしれないがチームのパフ
ォーマンス評価、戦略、戦術分析等には現在のレベルで十分可能である。是非我々の事業に協力
してほしい」などのコメントがあり、本システムがアプローチすべき今後の方向性のひとつとし
て注目される。
システムが実用化された場合の顧客は一般の人である。しかし、今回の実証実験では、放映権
の問題で一般の参加は実現できなかった。今後は、広く一般の視聴者へのデモンストレーション
を行い、評価の収集を図るとともに、システムの認知度向上に努めることが必要であろう。
55
3・1・4 アンケートの代表的な意見
■その他として代表的な意見を下記に挙げる。
◎全体が見られてよい。臨場感がある。迫力がある。
◎初めて拝見しました。商業的に今日のようなイベントも可能性があると思います。
◎現在、映画の衛星配信の試みがあるが、これが実現した場合、同じ設備を利用することでサテ
ライトスタジアムの実現可能性があり得るのではないか。その際、映画館ビジネスに新たな方
向性が生まれる可能性もあり、興味深い。
◎TVとは全く違い会場にいるかのような臨場感があり素晴らしかった。逆に会場に行くよりも
(交通、天候、etc の面で)こちらの方が良いとさえ思う。遠方に足を運ぶのが難しい障害を
お持ちの方にも大変喜ばれるのでは。
◎このような実験は、より一般の方に見て頂いた方がよい反応があるとともに、よい意見が聞け
ると思います。大変楽しく見ることができました。
◎ビジネスの観点からの様々な可能性を検討、より多くの人々に本スタジアムのよさを認めても
らうことが基本。
◎オーケストラ、オペラ、バレエでは、音響について臨場感上げる工夫が必要。少々高くても入
場料がとれるコンテンツの発掘。Live より繰返し再利用できるコンテンツ。
◎もっと多くの人に見て頂く機会を。
◎会場設営について、カメラがやや上方からパースペクティブを確保しているのに、フロアが低
くチェアから画面を見上げる形になるので違和感・ギャップが感じられた。会場設営と撮影の
カメラ側との問題。次回は階段シート会場でみたい。サテライトスタジアムの到達目標をしっ
かり設定する必要がある気がした。
◎FIFA にもっと見せるべき。アフリカ、東南アジア、東欧など FIFA のゴールプロジェクトに
リンクさせて世界へ展開しては?
◎迫力十分、もう少し解像度があればよい。サッカー観戦に必要な全景が鮮明に映る。
◎素晴らしかったの1語に尽きる。早く実用化を。
◎中央から見ると問題ないが、サイドからは偏りがある。
◎商業利用は先かもしれないがチームのパフォーマンス評価、戦略、戦術分析等には現在のレベ
ルで十分可能である。是非我々の事業に協力してほしい。
◎全体を自由に見渡せるところに新鮮さと迫力を感じた。
◎臨場感を出すために音声のサラウンド化などもっと大胆に行う方がよかったのではないか(サ
ラウンドに迫力が無かった)
。
◎フットボール観戦に関して言うなら、もう少し真横に近い目線の方が臨場感がある(本当にス
タジアムにいる)と思われます。若干、カメラ位置が上から、ピッチを見下ろし過ぎるという
か…。
◎衛星放送の技術力の高さを実感した。
◎サッカーに関してはとても適していると思う。
◎非常に満足、迫力感がすばらしい。
◎立体で 5.1 サラウンドにすれば十分採算がとれると思う。
◎知らない人が多いので、もっとプロモーションしても良いのでは!?
◎ぜひ今後もサッカー中継などに活用して頂きたいです。
56
◎全般的に画質は良好であり、技術的な高度さが感じとれた。
◎前回に比べ、解像度・色再現等画質に対して向上している。サッカーのように全体の動きを見
るのにはよい。
◎一番後ろの席がちょうどいい。前の方に行ったら見づらかった。
◎サッカーの国際Aマッチの放映を続ければこのよさが広く知れ渡り、
普及の足がかりとなろう。
このような施設を増やすこと。欧州、南米へ輸出してはどうか。
◎フィールド全体を大画面で見せるというアイデアは評価できる。ただ折角ならばズームアップ
画面を常にマルチでみせるなど工夫をして、
中継映像ならではの付加価値を付けて欲しかった。
◎全体を見られるのが非常によかったです。デジタルシネマへの応用が期待されます。3D 化によ
り奥行き感が改善されるかもしれません。
◎実用化にぜひ挑戦してください。
◎今回のワールドカップの様にたくさんの人が実際に見たいというコンテンツがあるときに、各
イベントや場所等で、たくさんの人が共有できるよう、イベント実施者への普及が図られれば
よい。
◎多分野へのビジネス展開を図ることを検討すべき。システムとして十分魅力あり。
◎この度は素晴らしい体験をさせて頂きまして感謝しています。迫力満点でした。
◎将来サテライトスタジアムが世界や都心と地域を結ぶコンテンツとして発展することを期待し
ます。
◎対外的に一般、公共へもアプローチすべき。スポンサー(メーカーetc)として協賛企業も取入
れ、さらに技術面を向上し、大衆へ周知すべきでは? これほど素晴らしいシステムはもっと
活用されるべきです。
◎全選手の動きが理解できることが素晴らしい。画面を動かしスタンドやベンチの映像も入れた
りしては。本画面が立体画像(バーチャル)であったら申し分ない。
◎映像を作ってみたいですね。第一印象素晴らしい。
◎スポーツ観戦において(特にフィールド)全体を見ることが出来るので、スポーツ技術向上に
役立つと思われる。会場の椅子を後ろに下げたほうが見易い。
◎リアルタイム送信の可能性として魅力を感じました。受像システムの低価格化が実現すればと
ても有望ですね。
◎惜しむらくは、権利関係からこの迫力あるサテライトスタジアムをパブリックビューイングな
どで活用出来なかったこと。
◎内容はよかったです。あとは公の場でのデモの回数を増やして一般の方々への認知度を高めて
いくことが必要では。
◎実用性の高い技術を使っている点が素晴らしい。実用化を急いで欲しい。休日・週末の夜に伝送
によりスポーツシアターバーで楽しむ新しいエンターテイメントとして早く実用化して欲しい。
◎画質、臨場感、どれもスタジアム並かそれ以上でした。コアなサッカーファンの私でも十分楽
しめました。ありがとうございます。
◎本システムを地方の文化会館、博物館等で利用して欲しい。
◎是非ミュージカル、演劇などでのデモストレーション機会が欲しいです。
57
3・2 QXGA プロジェクタの有効性評価
サッカーにおいては、選手を認識する手立てとして表情や背番号が考えられるが、とりわけ背
番号が重要である。サッカーピッチを横 5,760 ドットの解像度で撮影した場合、理論的に背番号
がどう見えるか解析するとともに、実際の視聴結果と比較して、QXGA プロジェクタの有効性・
必要性について考察する。
評価に際しては、超大画面映像システムの各種実験でこれまで使用されてきた SXGA(1,280
×1,024、一部機種は 1,365×1,024)プロジェクタをその比較対象とした。
3・2・1 QXGA プロジェクタについて
QXGA プロジェクタは、2,048(水平)×1,538(垂直)画素の解像度を有し、Fig.3-2-1 に示
すように、ハイビジョン(HDTV)画像をそのまま取り込むことができる。
一方、SXGA プロジェクタは、ハイビジョン画像を取り込むには画素数が不足するため、画素
を間引く画素密度変換によるリサイジングによって対応せざるを得ない。その結果、解像度が落
ちるだけでなく、リサンプリングに伴う折り返し歪み、いわゆる偽信号が発生して、モアレ等の
現象として視認され、画質を劣化させる要因となる。
画面イメージと解像度(画素数)
QXGA 3.2M画素
(2048×1536)
2048×1536)
HDTV 2.1M画素
(1920×1080)
1920×1080)
SXGA 1.4M画素
(1365×1024)
1365×1024)
Fig.3-2-1 QXGA/HDTV/SXGA の画面イメージと解像度
フロント投射方式プロジェクタでは、UXGA(1,600×1,200)解像度までしかこれまで実用化
されておらず、ハイビジョン解像度を実現することができなかった。本実験で使用した QXGA
プロジェクタは、実験直前に世界ではじめて実用化されたもので、1.3 インチ D-ILA 素子を使用
して QXGA 解像度と、1,000:1 のハイコントラストを実現している。
58
3・2・2 超大画面映像
超大画面映像システム
映像システムの理論的な背番号視認限界
システムの理論的な背番号視認限界
(1)背番号を表現するのに必要なドット数
Fig.3-2-2 に示すように、数字の 1 桁、とりわけ、表現しづらい数字「3、5、6、8」等を表現
するのに必要なドット数は、8×5 ドット程度でよいことから、背番号の数字 2 桁は、8×11 ドッ
ト以上あれば、数字として認識可能と判断できる。
従って、背番号の認識可否を判定するピッチ上の位置(評価地点)で背番号を表現する「撮影
画素数」が 8×11 相当以上であるならば、システムが視認可能な解像度を持つことの理論的な根
拠となる。
Fig.3-2-2 8×11 画素ブロックによる数字表示
(2)背番号を表現する画素数
Fig.3-2-3 の「埼玉スタジアム平面図」に示すとおり、地上高 45mのメインスタンドテレビカ
メラスペースにカメラを設置すると、手前のピッチラインまで 97.7m、1/3 地点までの直線距
離は 118.36mとなり、画角 66.87°で 129m(手前ピッチライン+両サイド分)
、156.27m(1/
3 地点)となる。
これに対し、
ハイビジョンの水平画素数は1920であり、
3面を横に並べると5760 画素となる。
この 5760 の画素数で手前ピッチから 1/3 地点の 156.27mを撮影すると1画素は被写体の
2.71cm に相当し、背番号サイズが縦横共 30∼35 cm であることを考慮すると、背番号は 11.1∼
12.9 画素で表現されることになる。
手前ピッチから 2/3 地点の 184.30mを撮影すると1画素は被写体の 3.20 cm に相当し、同様
にして、背番号は 9.4∼10.7 画素で表現されることになる。この数字は 2 桁の数字を表現可能なド
ット数とほぼ一致するため、理論的には手前ピッチから 2/3 地点まで背番号が認識できると期
待される。
59
埼玉スタジアム平面図
105m
(P4c)
(P4r)
(P3c)
(P3r)
68m
手前1/3のライン
22.67m
(P2r)
(P2c)
12mの余裕がある
118.36m
(P1r)
(P1c)
97.7m
33.43
86.8m
45m
メインスタンドテレビカメラスペース
カメラ(メインスタンドテレビカメラスペース)
Fig.3-2-3 カメラ位置からサッカーピッチ特定位置(評価地点)までの距離
(埼玉スタジアム)
60
Fig.3-2-4 が、Fig3-2-3 の各評価地点(P1c∼P4c、P1r∼P4r)におけるカメラからの距離と背
番号を表現する理論的な HDTV 画素数を表している。太枠で囲んだ評価地点が、背番号が視認
できると期待される限界位置である。なお、左側ゴールラインでの視認性は、右側ゴールライン
と同様なので、表記していない。
HDTV
カメラから
評価
地点
評 価 地 点 ま で 1画素に相当す 背番号の画素数
の 直 線 距 離 る被写体の長さ (背番号が 30cm の場合/
(m)
背番号が 35cm の場合)
(cm)
P1c
97.70
2.24
13.39/15.63
P2c
118.36
2.71
11.07/12.92
P3c
139.59
3.20
9.38/10.74
P4c
161.21
3.70
8.11/ 9.46
P1r
110.91
2.24
13.39/15.63
P2r
129.48
2.71
11.07/12.92
P3r
149.14
3.20
9.38/10.74
P4r
169.54
3.70
8.11/ 9.46
Fig.3-2-4 各評価地点のカメラからの距離と背番号の画素数(HDTV レベル)
一方、画素数が SXGA レベルの 4095(1365×3)だった場合の検討結果を Fig.3-2-5 に示す。
SXGA
カメラから
評価
評 価 地 点 ま で 1画素に相当す 背番号の画素数
地点
の 直 線 距 離 る被写体の長さ (背番号が 30cm の場合/
(m)
背番号が 35cm の場合)
(cm)
P1c
97.70
3.15
9.52/11.11
P2c
118.36
3.81
7.87/ 9.19
P3c
139.59
4.50
6.67/ 7.78
P4c
161.21
5.20
5.77/ 6.73
P1r
110.91
3.15
9.52/11.11
P2r
129.48
3.81
7.87/ 9.19
P3r
149.14
4.50
6.67/ 7.78
P4r
169.54
5.20
5.77/ 6.73
Fig.3-2-5 各評価地点のカメラからの距離と背番号の画素数(SXGA レベル)
61
Fig.3-2-6 が、Fig.3-2-4、Fig.3-2-5 の結果をピッチ上にマッピングした図である。実線枠が
HDTV を表示可能な QXGA の場合の、破線枠が SXGA の場合の背番号を表現する画素数を表し
ている。このうち、背景が白の数値が背番号の判読可能な画素数を示す。
この図より、SXGA プロジェクタ 3 台を使用したシステムではかろうじて手前のピッチライン
の背番号が確認できる程度である。
しかし、QXGA プロジェクタ 3 台を使用したシステムでは手前のピッチラインから 2/3 の位
置でも条件がよければ背番号を確認できると推察される。
8×8/9×9
6×6/7×7
8×8/9×9
P4r
P4c
9×9/11×11
7×7/8×8
P3r
8×8/9×9
8×8/9×9
11×11/13×13
P2c
13×13/16×16
7×7/8×8
9×9/11×11
P3c
11×11/13×13
6×6/7×7
P2r
10×10/11×11
13×13/16×16
P1c
P1r
<凡例>
実線枠
QXGA(HDTV)の場合の画素数
破線枠
SXGA の場合の画素数
枠内左側数値
背番号が 30 cm の場合の画素数
枠内右側数値
背番号が 35 cm の場合の画素数
背景がグレイ
11 画素未満で判読に難
背景が白
11 画素以上で判読可能
Fig.3-2-6 評価地点での背番号判読可否
62
10×10/11×11
3・2・3 QXGA プロジェクタの有効性追加確認実験
(1)追加確認実験概要
アンケート評価では、背番号の見え方に関する定性的な評価しか得られない。そこで、実際に
中継された映像等を利用して、背番号がどこまで判別できるか定量的な把握を目的に、TEPIA の
実験会場で追加実験を行った。QXGA プロジェクタの評価は中継実験期間中を含め複数回実施し
たが、SXGA プロジェクタの評価は QXGA から SXGA にプロジェクタを置き換える機会を捉え
て実施した。
比較評価を行った際に使用した映像、その撮影システム、プロジェクタの概要及びその他諸条
件を下記に示す。また、QXGA と SXGA プロジェクタの仕様比較を Fig.3-2-7 に示す。
○評 価 映 像:日本代表対ベルギー代表戦(6 月 4 日、埼玉スタジアム)
・撮影システム:ズーム型単レンズシステム+4CCD ハイビジョンカメラ
・収 録 V T R:HDCAM(1/7 圧縮)
○表示システム:フロント投射方式プロジェクタ
種:QXGA DLA-QX1×3
・機
SXGA DLA-M5000L×3
・入 力 方 式:QXGA HD-SDI(デジタル)
SXGA RGB(アナログ)
・ス ク リ ー ン:250 インチ×3(約 3m×16m)
ホワイト(スクリーンゲイン:1)
・投 射 距 離:17m
QXGA
項目
型名
撮像素子
SXGA
DLA-QX1
DLA-M5000L
1.3 型(2048×1536 画素)×3 枚 0.9 型(1365×1024 画素)×3 枚
光源
2 kW キセノンランプ
1.6kW キセノンランプ
光出力
7000 ANSI ルーメン
5000 ANSI ルーメン
解像度
2048×1536 画素
1365×1024 画素
コントラスト比
1000:1 以上
350:1
水平同期周波数
31.5kHz∼135kHz
15kHz∼82kHz
垂直同期周波数
48Hz∼120 Hz(HD-SDI:
24Hz/25Hz/30Hz にも対応)
Fig.3-2-7
50Hz∼100Hz
QXGA と SXGA プロジェクタの比較表
63
Fig.3-2-8 が、評価に使用した QXGA プロジェクタの外観写真である。
Fig.3-2-8
QXGA プロジェクタの外観
比較評価は、
ハイビジョンを用いた超大画面映像事業委員会のメンバーを中心にして実施した。
解像度の違いを色々な角度から評価したほか、QXGA と SXGA プロジェクタの比較に際し、同じ
部分を写真にとって画像で比較できるように配慮した。
<評価の模様1>
<評価の模様2>
<画像の撮影状況1>
<画像の撮影状況2>
Fig.3-2-9 追加確認実験の模様
64
(2)実験結果
Fig.3-2-10 に評価地点を記入したピッチ全体図を示す。評価は理論解析との比較ができるよう
にこの地点を基準にして行った。背番号が評価できなかった地点は付近の代替物で評価した。
P4c
P4l
P3l
P3c
P2l
P2c
P1l
P4r
P3r
P2r
P1r
P1c
Fig.3-2-10 ピッチ全体と評価地点
1)QXGA と SXGA プロジェクタによる解像度の違い
QXGA と SXGA プロジェクタの解像度の違いを、同じ映像の同一場所を撮影した写真で
示す。
Fig.3-2-11 が背番号の見え方の違いを示す写真で、
ピッチラインから 2/3 の位置
(P3c)
における選手の映像である。QXGA プロジェクタでは、背番号の縦方向が 11 画素で構成さ
れ、明白に読み取れるのに対し、SXGA プロジェクタでは、7 画素しかなく視認はできない。
縦方向11画素
縦方向7画素
<QXGA>
<SXGA>
Fig.3-2-11 ピッチラインから 2/3 位置(P3c)の選手映像
65
評価地点 P4l 付近の比較が Fig.3-2-12 である。
「YAHOO」文字の見え方、輪郭に解像度の
違いが明白にわかる。
<QXGA>
<SXGA>
Fig.3-2-12 評価地点 P4l 付近の比較
評価地点 P4c 後方のバックスタンド・フェンスにかけられた垂れ幕の様子を Fig.3-2-13 に
示す。日の丸の見え方や日の丸の輪郭、選手名に解像度の違いが読み取れる。
<QXGA>
<SXGA>
Fig.3-2-13 評価地点 P4c 付近の比較
左側ゴール付近(P2l 後方)の比較を Fig.3-2-14 に示す。ゴールポストやネットの見え方
に解像度の違いがわかる。
<QXGA>
<SXGA>
Fig.3-2-14 評価地点 P2l 付近の比較
66
2)QXGA プロジェクタの背番号視認限界
QXGA プロジェクタで、手前ピッチラインから 2/3 位置(P3c)とバックスタンド側ピ
ッチライン付近(P4c)の背番号の見え方を評価した。
先述したように、手前ピッチラインから 2/3 位置(P3c)では、Fig.3-2-15 に示すとおり
背番号がはっきりと認識できる。しかし、バックスタンド側ピッチライン付近(P4c)では、
Fig.3-2-16 に示すように、背番号の認識は困難なことがわかる。
以上から、QXGA プロジェクタであれば、理論どおり手前ピッチラインから 2/3 付近の
位置まで背番号の視認が可能であり、この辺りが限界となることを確認できた。
Fig.3-2-15 手前ピッチラインから 2/3 位置(P3c)での背番号の見え方
Fig.3-2-16 バックスタンド側ピッチライン付近(P4c)での背番号の見え方
3)QXGA プロジェクタの有効性・必要性
サッカーのバーチャルスタジアムでは、選手の識別を背番号に依存せざるを得ない。しかし、
SXGA プロジェクタでは、手前ピッチライン付近の背番号がかろうじて視認できる程度であり、
バーチャルスタジアムには不適である。一方、QXGA プロジェクタは、すでに記したように、手
前ピッチラインから 2/3 付近まで背番号を視認でき、十分ではないもののバーチャルスタジア
ムには非常に有効で、必須の表示システムであったといえる。不十分な部分はアップ映像の挿入
等で補完すれば、十分実用に供せると思われる。
67
3・3 開発機器の実用性・運用性評価
3・3・1 4CCD 画素ずらしハイビジョンカメラ
4CCD 画素ずらしハイビジョンカメラ(以下、4CCD カメラと略す)は、現行の HDTV 放送
規格に準拠しながらいかに解像度を高めるかに着目して開発されたもので、今回のワールドカッ
プでは 埼玉スタジアムと横浜国際総合競技場の合計 8 試合で運用された。運用上、特に大きな
問題もなく、高画質な映像を上映会場に送り届けることができた。
いくつか重要なポイントに的を絞り、運用評価について記す。
(1)解像度
競技場の芝生や観客席など細かな部分の解像感が、3CCD ハイビジョンカメラ(以下、3CCD
カメラと略す)に比べて確実に上がっていることが細部にわたり確認できた。このことは、2000
年度の開発時に取得された変調度データの違い(Fig.3-3-1、Fig.3-3-2)が、そのまま運用評価テ
ストで確認されたことになる。
27.5MH
27.5MH
Fig.3-3-2 4CCD カメラの変調度
Fig.3-3-1 3CCD カメラの変調度
(2)つなぎ目の白線解消
4CCD カメラのカメラ制御器(CCU)に輪郭補正のエッジブランキング(輪郭補正をカットす
る機能)を左右 30 ピクセル個別に自由に動かせる機能を追加した。調整の方法は、まずカメラ
側にてラフに合わせ、最終的に TEPIA 側の大画面にて確認しながら1ピクセル単位で合わせ込
んで行く手法を取った。この機能により、つなぎ目の所に発生する輪郭補正に起因する縦の白線
を除去することができ、つなぎ目部分の品位向上に大いに貢献した。エッジブランキングの幅を
あまり広くするとその部分の映像の鮮明度が落ちるので、必要最小限にとどめれば、非常に有効
かつ効果的であることが確認できた。
(3)環境条件による合わせ込み
1ヶ月間にわたるワールドカップサッカーの撮影は、梅雨時期とも重なった上に、セッティン
グは日中で本番撮影は夜間というように、環境が刻々と変化する中での作業となった。一般的な
撮影でも色のトーン合わせは難しいが、今回の 3 面シームレスでは、3 台のカメラが揃っていな
いとつなぎ目がわかってしまうという 3 面シームレスならではの厳しさがあった。
68
その中で、問題になったのが、外気温度の変化によるブラックシェーディングの変動である。
運用中は調整技術でカバーしたが、CCD を含んだ駆動系が、4CCD 化により若干不安定なとこ
ろがあった。
Fig.3-3-3 がスタジアムでのカメラ設置場所および調整風景である。
<埼玉スタジアム>
<横浜国際総合競技場>
Fig.3-3-3 カメラの設置場所及び調整風景
(4)今後の課題
2001 年度の衛星伝送実験を含めた運用テストにはじまり、今回の長期にわたるワールドカップ
サッカーの撮影に 4CCD 画素ずらしハイビジョンカメラが使用された。細かなトラブルはあった
が、
幸いにも機器のトラブルで撮影中止と言うことは一度もなく、
順調に運用することができた。
やはり中継現場としては、まず壊れないことが第一条件である。
本システムおよびカメラが、様々なスポーツや催し物等に幅広く注目を集め始めた今、実用性・
運用性を高める上で、今後の改善課題として気付いた点を下記にまとめる。
① 感度の向上
カメラのレンズ F 値としては、現状 2000Lux の照明下で、F7 に設定している。ワールド
カップサッカーのスタジアムでは平均 1500Lux と若干照明不足であり、センターと周辺の
ピントずれ(被写界深度が浅い)が発生していた。レンズ性能を上げることも必要である
が、カメラの高感度化を図ることによりレンズのアイリスを絞ることができ、結果的に被
写界深度が深くなり、画面の中心と周辺のピントずれを軽減させることができる。
② カメラの小型軽量化
移動の多い撮影では、移動のたびにカメラを外して運搬している。カメラ取り付けのたび
にメカ調整が必要になってくるので、カメラを小型化してレンズを固定したままにした方
が今後の運用性としては良い。
③ 環境変化(気温変化)による安定性
CCD の温度特性改善も必要であるが、CCD を 3 枚から 4 枚にした為の消費電流増により
カメラヘッド内部の温度が上がり、動作が不安定気味である。特にブラックシェーディン
グが不安定で、熱設計および回路設計の見直しが必要と思われる。
新規に設計する機会があった場合には、上記の改善項目について再度見直しを行い、さらなる
安定した画質の追求を行った上で、実用化に備えることが望ましい。
69
3・3・2 ズーム型マスターレンズ
ズーム型単レンズ方式撮影システムは、2001 年の 7 月 1 日に実施された札幌ドームからの生
中継が、実質的なサッカー試合での初の運用実験であった。この実験は、本方式初の衛星伝送実
験であったため、伝送の結果に注目が集まったが、受信点の観客を大いに沸かせたのは、試合終
了後に札幌ドーム内部全体を見せる意味で行なったズーム機能を使った映像であった。
3 面シームレスの構造を維持したままズーム可能な本方式の特色を遺憾なく発揮したと言える
が、ズーム型単レンズ方式撮影システムの開発の主な理由は、ワールドカップサッカー大会会場
の様々な大きさに対応するためである。
本方式の開発にあたっては、まず、浦和市駒場競技場のような狭い会場での運用を可能にする
ため、水平画角 100°の固定焦点型マスターレンズを開発し、ついで、ワールドカップ会場に対
応可能な水平画角 50°∼90°のズーム型マスターレンズを開発した。
今回、ズーム型単レンズ方式撮影システムを運用したのは、埼玉スタジアムと横浜国際総合競
技場である。埼玉では、日本戦が 1 試合と準決勝を含む 4 試合、横浜では、同じく日本戦が 1 試
合と決勝を含む 4 試合が行なわれて、国内の会場では最重要な会場であった。
両会場とも、開催される試合の組み合わせ等によって、会場内に設置されるカメラ台数や位置
が大きく異なるため、事前に HBS(Host Broadcast Services)社との綿密な打ち合わせの結果、
カメラ位置を決定した。
まず、埼玉では、2001 年 11 月に別事業で行った日本代表対イタリア代表戦の撮影時と基本的
に同じ位置となった。メインスタンド側最後部、且つ中央部である。
2001 年 11 月の際は、周辺にはカメラは設置されなかったため、客席最後部に観客の頭をクリ
アする目的で、高さ約 1m のイントレ(カメラ台)を設置したが、今回は客席最後部の席を撤去
して、HBS 用の高さ 1.5m のカメラ台が設置されたため、イントレの高さを約 3m にして対処し
た。Fig.3-3-4、Fig.3-3-5 にその模様を示す。
本システム
一般カメラ
Fig.3-3-4 埼玉での撮影システムの設置状況 1
Fig.3-3-5 埼玉での撮影システムの設置状況 2
70
この位置からサッカーピッチのコーナー間は画角約 56°でズーム型マスターレンズの使用範
囲に問題なく入る。又、最大限ズームバックすれば左右の客席の大部分も収めることが可能で、
ズームの効果も充分期待できる位置である。
一方、横浜では、客席最後部では適当なカメラ位置が得られなかったため、通常はアメフトの
戦術監視のために客席上部に設置されたゴンドラ内部に設置することとなった。Fig3-3-6、
Fig3-3-7 にその模様を示す。
カメラ設置位置
Fig.3-3-6 横浜での撮影システムの設置状況 1
Fig.3-3-7 横浜での撮影システムの設置状況 2
この位置からサッカーピッチのコーナー間は画角約 61°で、埼玉同様、ズーム型マスターレン
ズの使用範囲に問題なく入る。又、最大限ズームバックすれば左右の客席の大部分も収めること
が可能で、ズームの効果も充分期待できる位置である。
両会場の運用では、前述の札幌ドームと同様にズームの利用は大好評であった。特に、6 月 30
日に行われた決勝戦のプレイベントは参加各国の国旗を使用して会場全体で繰り広げられるパフ
ォーマンスであったため、ズーム型マスターレンズの機能を遺憾なく発揮することが出来、本シ
ステムの有用性を大いに印象付ける結果となった。
撮影システムの設置状況は以上の通りであるが、運用上の問題点として、各面映像の大きさの
違いと映像のボケが挙げられる。
まず、
映像の大きさの違いであるが、
埼玉の 6 月 2 日に向けた事前調整映像で、
受信点の TEPIA
より、右側と左側映像の大きさが中央映像に比べ大きいとの指摘を受けた。
ズーム型単レンズ方式撮影システムのリレーレンズは、過去に固定焦点型マスターレンズと組
み合わせて使用した際に、原因不明の映像のボケを発生したため、その対策として、映像のサイ
ズを変える変倍系を固定にする改良を施している。そのため、映像の大きさを変更することは簡
単な作業ではない。そこで、現場対応の可能な方法として、分割プリズムブロックに対するリレ
ーレンズの取り付け位置を変える方法で対処した。Fig.3-3-8 に作業の模様、Fig.3-3-9 に考え方
を示す。
71
6 月 1 日の調整では、中継車内のモニタ上で像のサイズを確認しながら、Fig.3-3-8 にあるような
様々な厚みのシム(例えば 0.75mm)を適宜取り付けることにより、実用上許容できる範囲に調
整を施した。6 月 2 日の試合本番から映像の大きさの問題は解決した状態で撮影が継続された。
分割プリズムブロック
リレーレンズとプリズムブロックの
間隔を変える
リレーレンズ
Fig.3-3-8 作業の模様
Fig.3-3-9 作業の考え方
次に、映像のボケであるが、6 月 2 日の国内初の試合以降、6 月 26 日の準決勝までは、特に問
題となっていなかった。6 月 26 日の準決勝の撮影準備中、左側画面の左端付近のボケが大きいこ
とが発見された。発生状況から考えて、リレーレンズの解像不良と考えられたが、どの時点から
発生したか不明である。
実際の試合時の様にマスターレンズを絞り込めば実用上問題ないことから推測すると、6 月 26
日までの前半戦は天候に恵まれて準備作業中の午後は日が射し、
絞り込まれた状態であったため、
問題にならなかったが、6 月 26 日以降は曇天或いは雨で午後も全般的に暗い状況で、準備中は絞
りも開け気味だったため、症状が発見しやすかったと考えられる。
続く 6 月 30 日の横浜の決勝戦撮影準備中に、中央画面右側から次第に右側画面にかけてボケ
気味という問題が発生した。症状から、明らかにマスターレンズの解像不良と思われる。絞り込
めば実用上問題ない範囲であったので、本番では問題にならなかったが、この症状は 6 月 30 日
の時点で発生したと思われるので、振動等による何らかの変化がマスターレンズ内に発生してい
ると推測される。
以上の問題点については、上映側である TEPIA のプロジェクタが QXGA になり、大画面でよ
り鮮明に判別可能になったために顕在化した面もあるが、今後の本システムの応用を考えると、
実用上問題にならなかったとは言うものの原因を精査して解決を図る必要があると考えられる。
72
3・3・3 3面ビューアー
3 面ビューアーは本システムを運用する上で欠くことのできない必須の機器として認識されて
いる。
画面中央で 2 面の接合を確認するモードは、基本的にシームレスプロセッサの「E-POS」
(画
面の端の位置)による接合と同じであるので、カメラ取り付け位置の調整に使用可能であるし、
接合の位置設定のために入力する数値は「E-POS」と同じ値となるため、実質、シームレス関係
の調整は、3 面ビューアーでほとんど事足りる。
また、今回の撮影のように、ズーム・パンを行うためには 3 面全体のモニタは必須で、3 面全
体を縮小モニタするモードは多用された。
実際の運用では、3 面ビューアーは中継車内部に設置され、スイッチャ卓前のモニタに接続さ
れて、各種調整後は 3 面ビューモードの映像が出力された。
運用上、問題になる点は全くなく順調に動作した。
今回の運用までは、単発的な使用であったため、基本的な動作に支障がなければ、個々の細か
い使い勝手等はさほど問題視されなかった。
しかし、今回の運用は約 1 ヶ月 8 試合の連続作業となったため、幾つかの要改良点が指摘され
た。
最も有用と思われるのが、各モード切り替えのカメラ側でのリモートコントロールである。3
面ビューアーのモード切り替えはほとんどの場合、カメラ取り付け等のシームレス調整のために
行われる。その調整を行う場所はカメラ側であるため、モードの切り替えがカメラ側で可能にな
ると、作業は非常に楽になる。
現在の開発品は背面に RS-232C のリモート端子を装備しているが、これは中継車内部等での
使用を念頭においており、通常 100m 以上離れたカメラ位置まで、その信号を伝送するには別の
方法を考えなければならない。
また、カメラファイバー以外に別のケーブルを引くのは面倒であるので、理想的には CCU か
らカメラファイバー経由で伝送できるのが理想的であろう。
次に、3 面ビューアー出力の位相合わせである。現在の 3 面ビューアーは内部処理の分だけ出
力が外部同期信号よりも遅れるため、その出力は概略、基準信号に比べ画面高さの半分以上遅れ
ている。つまり、基準信号にロックしたモニタでその出力を見ると、画面の下端あたりに 3 面ビ
ューが見えることになる。当然、つなぎ目確認のモードでは画面はモニタ画面中央で折り返した
ようになる。
現在までの運用では、3 面ビューアーの出力を見るモニタは 3 面ビューアーの出力でロックす
るように設定しているため問題にはならない。
しかし、中継車内部のシステムに組み込むような場合は問題が生じやすいので、今後、様々な
場面での運用を考慮すると改善の必要があると考えられる。
最後は、光学のりしろ対応である。別事業にて、各面のつなぎ目改善のために光学のりしろ方
式が検討された結果、その有効性が確認され実施の可能性が大である。
しかしながら、現在の 3 面ビューアーには光学のりしろを処理するために必要な加算機能等が
ないため対応不可能である。また、光学のりしろ方式を採用するためには、シームレスプロセッ
サも新規開発となる。
73
従って、最終的には、リモート機能等も含めてシームレスプロセッサと 3 面ビューアーを統合
した光学のりしろ対応の新シームレスプロセッサを開発するのが実用的と考えられる。
3・3・4 シームレスプロセッサ
今回の運用での最大の問題は、日韓双方で同時期に撮影するにも関わらずシームレスプロセッ
サが 1 台しかなかったことである。
従って、何れかの国の映像はのりしろ付きではなく突き合わせで上映することになり、つなぎ
目の調整は様々な困難が予想されたが、その詳細については 78 頁に記すことにする。
様々な検討の結果、日本戦があることや試合数が多いこと等の条件を考慮して、シームレスプ
ロセッサは日本側で運用することとした。
6 月 1 日の蔚山(ウルサン:韓国)の試合が最初の試合で、以後 6 月 9 日の仁川(インチョン:
韓国)と同日の横浜の試合までは、韓国側が突き合わせとなるため、国内側も突き合わせで対応
した。
6 月 11 日の横浜の試合で初めてシームレスプロセッサにてのりしろを付加して上映したが、
TEPIA 側で問題が生じた。
それは、カメラ取り付け位置やシームレスプロセッサの調整を追い込んでも、のりしろ部分端
面の各面の接合部分に黒線が見え隙間が生じる場合と、重なり過ぎて画素が欠落する場合の何れ
かにしかならないジレンマに陥ったことである。
カメラ取り付け位置を精密に追い込み、最終的にシームレスプロセッサの「E-POS」で映像の
接合位置を微調して接合部分を最良の状態にすべく作業をしても、
「E-POS」を 1 ピッチ動かす
と、隙間が空き、逆に 1 ピッチ動かすと、重なり過ぎて画素欠落の状態になる。
カメラ取り付け位置調整の結果得られる画像位置は連続量で移動するため、任意の位置に設定
可能である。一方、シームレスプロセッサの「E-POS」は内部処理の関係で 2 画素単位の移動を
するため、飛び飛びの位置になる。
今、仮に中央画像の横幅の画素数が奇数だった場合、Fig.3-3-10 のようにシームレスプロセッ
サの 2 画素単位での「E-POS」で接合位置を移動させても、片側の接合部分は隙間が空くか重な
りが生じるかのどちらかにしかならない。
74
E-POS 位置
E-POS 位置
中央画像
中央画像
右画像
右画像
右画像
右画像
隙間が空く
E-POS の選べる偶数画素位置
重なる
E-POS の選べない奇数画素位置
右画像の E-POS は不変で中央画像の E-POS を
左図から左側に 1 ピッチ移動した結果
Fig. 3-3-10 今回の問題の原因
この図は、中央画像の右側について検討しているが、左側は中央画像幅が奇数だから偶数位置
にあり、左側映像との間にこのような問題は生じない。カメラ取り付け調整で中央画像右側を偶
数位置に合わせると、中央画像の左側は奇数位置となり、まったく逆の関係となる。
TEPIA のプロジェクタは QXGA で HD フルスペックである。従って、極めて微細な隙間も確
実に視認される。SXGA 等のプロジェクタでは、画素変換等の処理でこれらの微細な問題が次第
に曖昧になり視認されにくく、今までこのような問題が顕在化しなかった原因はプロジェクタの
解像度にある可能性が高い。
しかし、今後の本システムの運用を考慮すると、当然、解決しなければならない問題であり、
そのためには、画像幅を正確に偶数単位にするのは困難なので、シームレスプロセッサの最小調
整幅を少なくとも 1 画素単位にする必要がある。
しかし、実際の画像の幅や位置は、上記の様に決められた位置に正確にいる訳ではなく、当然、
中間値をとることもあり得る。従って、最小調整範囲が 1 画素であっても、微妙な位置関係の場
合は最適値がない場合もあり得るので、別事業で検討された光学のりしろ方式等の採用も検討す
べきであろう。
75
3・3・5 日韓間の画質評価
今回の運用は、日韓双方からの映像が同一の受信点に時を隔てず伝送されるという、システム
の違いによる画質比較にまたとないチャンスとなった。
78 頁に記している様に、日韓双方では撮影システムが異なる。
韓国側は汎用の 3CCD カメラに画角 100°の固定焦点型単レンズシステム、日本側は開発品の
4CCD カメラにズーム型単レンズシステムの組み合わせである。
現在までの研究・開発の経過から考えると、固定焦点型マスターレンズとズーム型マスターレ
ンズの性能はほぼ同等、リレーレンズは途中で改良を施しているため、ズーム型マスターレンズ
に組み合わされたものの方が性能向上しているように思われるが、実質、差はない。
従って、日韓の画質比較は主として 3CCD カメラと 4CCD カメラの画質比較と考えられる。
画質比較は厳密な意味では、撮影現場で行うべきであるが、本事業の場合は日韓間であるので
実現不可能である。従って、伝送後の画質を QXGA のプロジェクタが設置された TEPIA で確認
することとした。
因みに、先述したように伝送路は日韓間で大きく異なる。しかし、ATM セルの段階での経路
の差等は、セルロスによるフリーズ、ノイズを除けば解像度等に影響を与えることはない。
以上のような点を念頭において、
複数の試合を時系列に見たり、
伝送地点で収録したテープを、
時間を空けずに VTR 再生したりして確認した結果では、明らかに国内の映像の方が高解像度で
ある印象を受けた。
3CCD カメラと 4CCD カメラのカラーマトリックスの設定違い等で、韓国(3CCD)映像の方
が色の濃度が濃いために、映像全体のコントラストが強く鮮鋭度が高いように感じられる一方、
日本(4CCD)映像の方が、色が薄めなためコントラストが低めで鮮鋭度が相対的に低い印象を
持つが、映像の細部に注目すると解像度が高いことが視認できた。
この鮮鋭度とは、一般のテレビの画質調整項目である「シャープネス」に相当するものである。一
般放送の映像の「シャープネス」を強くすると、画像は輪郭が強調されて鮮鋭度は上がってくるが、
解像度がハイビジョン並になるわけでは決してない。
日本側の 4CCD の映像が、先鋭度が相対的に低く、極論すれば平面的であるにもかかわらず解
像度が高い、というのは、ちょうど、カメラの輪郭強調回路を OFF にしてカメラの裸の解像度
を見ている状況と似ており、4CCD カメラの裸の特性が従来の 3CCD カメラに比べ大きく向上し
ていることを裏付けていると考えられる。換言すれば、4CCD カメラの場合には、輪郭強調を付
加して鮮鋭度を高めずとも解像度の高い映像が得られたということである。
本項の最後に、参考としてシームレスプロセッサの設置状況等、日韓双方の撮影現場の模様を
示す。
(Fig.3-3-11、Fig.3-3-12)
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埼玉 SNG 車と中継車
3 面ビューアー
埼玉 中継車内部
中継車内部 シームレスプロセッサ
Fig.3-3-11 日本側撮影現場の模様
韓国中継車内部 後方
韓国中継車内部 前方
文字発生装置
画像位置移動用 FS
音声ミキサ
ENC
仁川 カメラ設置状況
KBS HD CAMERA
本システム
蔚山 中継車
Fig.3-3-12 韓国側撮影現場の模様
77
3・4 多地点中継の評価
システムが実用化された場合には、現状のテレビ中継と同様に、一つの中継の最中に他からの
中継映像を流す場合があり、このような多地点(多元)中継にも柔軟に対応できることが必要で
ある。
通常のテレビ中継では、映像を一つ送ればよいが、超大画面映像システムでは、3 画面分の映
像を伝送し、上映側で 3 面シームレス映像として映写する。従って、突き合わせ映写の場合には、
つなぎ目部分に隙間ができたり、重なり合ったりしてしまう可能性がある。また、のりしろ付きの
重ね合わせ映写の場合には、のりしろ部分がボケたり、極端な場合には、ダブった映像になった
りしてしまう可能性がある。そこで、実証実験の中でその実力を評価した。
6 月 9 日の実験では、韓国の仁川スタジアムの試合中継(コスタリカ vs トルコ、18:00 キック
オフ)が 17:40 から開始され、日本の横浜国際総合競技場の試合中継(日本 vs ロシア、20:30 キ
ックオフ)が 20:05 から開始された。前者の試合が 19:50 頃に終了し、直ちに回線を切り替えて、
後者の中継に対応したわけだが、後者の中継開始まで 15 分足らずであり、基本的には、多地点
(多元)中継のシミュレーションと呼べるものであった。
超大画面映像システムでは、上映地点間での互換性が取れるように、システムガイドラインの
中で、画像の位置が一定となるように規定している。Fig.3-4-1 は、TEPIA 等で上映した際の画像
の位置である。黒いエリアは画像のない部分を示す。
1920 画素
中央画像
30 画素
30 画素
1920 画素
1920 画素
左画像
右画像
42 画素
42 画素
Fig.3-4-1 画像の位置
現時点では、画像の位置規定は、変更の可能性を見込んで現状値を示すに留め、規格化はなさ
れていないが、目標値として、各撮影側がこの規定を遵守することにすれば、2 地点から 3 面映
像を送ってきても問題は起こらないことになる。しかし、韓国側と日本側では、撮影システムの仕
様が異なっており、以下の通りである。
<韓国側>
・固定焦点型単レンズシステム+3CCD ハイビジョンカメラ
・シームレスプロセッサなし
<日本側>
・ズーム型単レンズシステム+4CCD ハイビジョンカメラ
・シームレスプロセッサあり(6 月 9 日は使用せず)
78
このように仕様の異なる、しかも開発品で行うはじめての多地点(多元)中継であり、これでうま
くいけば、システムの実用性が証明できることになる。
今回は、日本側のシームレスプロセッサを使用せずに、3 面映像については条件を同一とし、
Fig.3-4-1 の画像位置で突き合わせて実験を行った。
下記手順で、Fig.3-4-1 となるように画像位置を追い込むとともに、映像の色合いを合わせ込ん
だ。
①韓国側、日本側それぞれが画像位置を調整
②上映側(TEPIA)との調整では、日本側映像で最終画像位置を決定
③韓国側映像の位置を日本側映像と合うように微調。カメラの取り付け位置調整で対応できな
い分はフレームシンクロナイザによる電気的な 2 画素単位のシフトで補正
④日本側と韓国側の映像の色合わせも、それぞれの撮影側で対応
このようにして、事前調整を実施した結果、本番の中継では、上映場所である TEPIA 側の追
加調整を何ら必要とすることなく、韓国側から日本側の中継映像に切り替えることができた。こ
れで、通常のテレビ中継と同じように、超大画面映像システムも多地点(多元)中継に対応でき
ることが立証された。
また、日本側がシームレスプロセッサを使用して、のりしろ付き映像を送る場合には、韓国側
映像の画像位置を Fig.3-4-2 となるようにカメラ取り付け位置を調整すればよく、のりしろ付き
の重ね合わせ映写と、
のりしろなしの突き合わせ映写を切り替えて上映することができる。すなわ
ち、仮想ののりしろがあるように画像位置を調整すればよい。
1920 画素
中央画像
30 画素
30 画素
1920 画素
左画像
1920 画素
のりしろ のりしろ
90 画素 90 画素
右画像
42 画素 42 画素
Fig.3-4-2 のりしろ付き映写に対応した突き合わせ映写の画像位置
79
まとめ
1996 年秋から研究開発を進めてきた高精細超大画面映像システムは、ワールドカップというま
たとない機会を捉え、総務省が主催した日韓高速衛星通信実験の「サテライトスタジアム」との
連携、関係省庁・関係諸団体協力の下、表示装置としてシステムが求める仕様を完全に満たすハ
イビジョンフルスペック表示が可能な QXGA プロジェクタを初めて使用し、実証実験として評
価を問うこととなった。
2002 年ワールドカップサッカー大会における本システムの実運用は、実験という形態であった
が、ワールドカップ招致の目玉とされた「バーチャルスタジアム」構想を実現するものであり、
システムの先進性や、
我が国の IT 技術を対外的にアピールする上で大変有意義なものであった。
システムの評価においても 9 割弱の人々が、全体の印象、迫力感や映像サイズで「満足」以上
の評価であり、
「バーチャルスタジアム」実現に向け、システムの目指してきた方向が正しかった
ことを裏付ける結果となった。
会場スペースの制約等からいくつか問題もあったが、階段席の設置、更なる大画面化、つなぎ
目改善等の高画質化、音響効果の向上、専用実況音声の付加など、すぐにも対処可能なこれらの
改善を積み上げれば、
「満足」以上の評価比率をなお一層高めることができると思われる。
また、ビジネス展開の可能性についても、3 年以内の実用化を期待する人が 7 割もあり、シス
テムの実用性が認知されたといえる。コンテンツの権利処理と収益可能なビジネスモデルの構築
という課題をクリアーすれば、ビジネス化に弾みがつくと期待される。
QXGA プロジェクタの有効性評価では、手前のピッチラインから奥行き方向 2/3 のピッチ位置
まで背番号の視認が可能なことが検証でき、本システムには不可欠な機器であることが実証され
た。
また、韓国スタジアムの映像と日本スタジアムの映像を同一の上映場所で短時間に切り替え、
何の不具合もなく上映したことで、多地点中継についても問題なく対応できることを立証した。
超大画面映像システムの撮影システムは、1 本のレンズからハイビジョン 3 画面分の横長シー
ムレス映像を取り出す世界初の単レンズ撮影方式を採用している。そのため、撮影システムを司
る機器類(固定焦点型単レンズシステム、ズーム型単レンズシステム、4CCD 画素ずらしハイビ
ジョンカメラ、シームレスプロセッサ、3 面ビューアー)はすべて開発品である。この 1 式しか
ない開発機器をバックアップなしに使用して、約 1 ヶ月に及ぶワールドカップ期間中、韓国 3 試
合、日本 8 試合、計 11 試合を大過なく中継できたことは、開発当初から実用性・運用性に留意
した成果といえるだろう。
一般的に、新たな技術開発においては、原理試作の生みの苦しみよりも、むしろ実際に運用し
たときに、
当初は予想しなかった種々の問題に遭遇することが多い。
今回の実証実験においても、
長期にわたり日常的に使用することで初めてわかる改善点が開発機器に発見できた。これらを改
良することで、開発機器を真に実用的な機器に高めることができると思われる。
本システムは、サッカーのみに留まらず、様々なスポーツ・コンサート・演劇・イベント等の活用
に幅広く注目を集めている。この実証実験が本システムの素晴らしさとともに、有用性・実用性を広
く知らしめる機会となり、今後の実用化に向けた足がかりとなることを期待したい。
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