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JPEC 世界製油所関連最新情報

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JPEC 世界製油所関連最新情報
2011 年 1 月 31 日(月)
JPEC 世界製油所関連最新情報
2011 年 1 月号
(2010 年 12 月以降の情報を集録しています)
(財) 石油産業活性化センター
調査情報部
目 次
概
況
1. 北 米
2 ページ
2. ヨーロッパ
6 ページ
3. ロシア・NIS諸国
8 ページ
4. 中 東
9 ページ
5. アフリカ
12 ページ
6. 中 南 米
12 ページ
7. 東南アジア
14 ページ
8. 東アジア
15 ページ
9. オセアニア
16 ページ
※ この「世界製油所関連最新情報」レポートは、2010 年 12 月以降直近に至る
インターネット情報をまとめたものです。当該レポートは石油産業活性化センター
のホームページから閲覧することができます。
=> http://www.pecj.or.jp/japanese/overseas/refinery/refinery.html
1
概
況
ゆっくりしたペースではあるが世界経済に回復の兆しが見え始め、精製マージンも底
を打ったと報道するメディアが多いが、世界的にはまだ精製能力余剰が続き、原油価格
も高止まりになっている上、先進国をはじめとする各国の環境規制は強まる一方で、精
製事業の基盤はまだ脆弱であると言わざるを得ない。
温室効果ガスの目標設定に積極的な姿勢を見せている米国においては、製油所から排
出される温室効果ガス(GHG)の取締りが本格的になる動きが現れはじめている。
カナダではオイルサンド事業が少しずつ活況を呈し、オイルサンドの生産量を増加す
るプロジェクトが現れはじめ、製油所設備投資面でも積極的とは言えないが、苦慮しな
がらも少しでも付加価値の高い製品製造構成に変えようとする動きが見えている。
ヨーロッパでは、一時下火だった製油所売買交渉が再び活発化し、INEOS の
Grangemouth 製油所や Lavera 製油所のように他社との共同運営形態で運転が継続される
ところがある反面 Shell の Harburg 製油所のように売却先が無くターミナル化を余儀な
くされるところも新たに現れている。そればかりか、未だ多くの製油所が売買交渉の席
にすら就けずに置かれた状態である。
欧米の製油所が置かれている状況とは反対に中東や中国、その他開発途上国における
製油所建設の動きは力強く、今回の最新情報では、特に中東で一時延期されていた新製
油所建設プロジェクトが動き始めている。
1. 北 米
(1) NSPS による製油所 GHG 排出規制情報
米国環境保護庁(EPA)は、製油所から排出される GHG 排出規制を 2008 年 6 月に公表
しているが、見直しを求める国家資源防衛審議会(NRDC:National Resources Defense
Council)や Sierra Club 等の環境団体から請願と同時にこれらの団体による訴訟が米国
連邦巡回控訴裁判所(U.S. Court of Appeals for the D.C. Circuit)に提訴されてい
た。
この度、ニューヨーク州やカリフォルニア州をはじめとする多くの州並びに各種団体
との間で、大気浄化法(Clean Air Act)の第 111 条で決められている新規排出源排出基
準(NSPS: New Source Performance Standards)に GHG の排出規制を盛り込む形で見直
すこと、また、その見直し案を決められた期間内に EPA が提出することで和解が成立し
た(*1)。
2
今回、和解の対象となった業界は電力分野と石油精製分野であるが、EPA の HP に記載
された内容を見ると、発電所と製油所が排出する GHG 量は、米国で排出される量の約 40%
を占めるとされ、かなり大きな数値になっており、この 2 分野から排出される GHG を取
り締まることはそれなりの意義があることが分かる。
もともと NSPS は新規排出源に対しての規制であるが、既存施設に関する NSPS は州政
府が決定し、連邦環境保護庁としての EPA はそれを認可する立場にあり、この手順にお
いて間接的ながら既存排出源も規制できると言える。
今後の検討により EPA がどの程度の排出レベルを義務付けるかウォッチングしていか
なくてはならないが、和解に基づく製油所についての NSPS は、2011 年 12 月 15 日まで
に修正案を提出し、2012 年 11 月 15 日までに最終決定することになっている。
既に NSPS の修正検討が EPA で始められていると報道されているが、石油業界を代表し
ている全米石油協会(API)は、
「EPA は NSPS の見直しに専念すべきで、GHG 排出規制を
NSPS に盛り込むことを主眼にすべきではない。大気浄化法は、固定排出源から排出され
る GHG を規制するために定められたものではない」と批判している。
(*1) http://www.epa.gov/airquality/ghgsettlement.html
(2) 米国ルイジアナ州の 17 製油所で最近 5 年間に発生したアクシデント
米国ルイジアナ州には 17 箇所に製油所があり、国内ではテキサス州の 23 箇所に次い
で 2 番目に製油所の多い州である。同州のこれらの製油所が州の監督機関に 2005 年から
2009 年までの 5 年間に報告した各種違反、汚染物質の放出、事故等のアクシデントは合
計 2,067 件に上っている。
このアクシデント(以下“事故”と記す)に対し、環境保護団体の「Louisiana Bucket
Brigade」が分析してまとめた結果を「Common Ground II: Why Cooperation to Reduce
Accidents at Louisiana Refineries Is Needed Now」と題する報告書にして公表してい
る(*2)。
この報告書では同州内の 17 箇所の個別製油所の事故実績がまとめられており、個別製
油所の特殊性の存在や、事故の発生原因の解析基準に不明な点はあるが、わが国の製油
所運転においても潜在事故の顕在化を防止する上で参考となる資料ではないだろうか。
(尚、日本国内の製油所所関連の事故事例については当センターのホームページ上にあ
る PEC-SAFER(安全支援システム)にまとめられているので、関心のある人は御参照戴
きたい。
)
5 年間の事故原因を総括すると図 1 の通りで、機器類、計装類、配管類に関連する事
故や運転開始/停止時に事故が多く発生していることは容易に想定される事項であるが、
3
今更ながらに保守・点検の重要性、運転開始/停止時の配慮が問われている様に思われる。
なお、ヒューマン・エラーとして分類されている事故割合が 5%に上っていることにも注
意を要し、これらは作業の習熟、伝承、注意等により回避が可能な事故である。
図 1.アクシデント発生原因(出典:資料 2)
図 2 及び図 3 には、大気汚染や土壌・地下水汚染に至った原因が示されているが、例
年の如く来襲する大型ハリケーンが原因で汚染物質が放出されていることを窺わせてい
る。現在では予測可能な気象条件を如何にリスクとして捉え、実際の運転・操業にどの
様に反映していくかが問われているように思われる。
図 2.大気汚染物質排出原因
図 3.土壌及び水質汚染物質排出原因
4
(図 2 及び図 3 共に出典は資料 2)
本報告書がまとめられた趣旨がどの様なものであれ、製油所事故の未然防止は石油業
界共通の課題として参考にしておきたい資料の一つである。この報告書に関しては、
“保
守点検を充分に行い、チョットした事故に繋がりかねない兆候を見逃さないことや前例
を充分に学習、解析し今後に生かす工夫が必要である。
”と、米国製油所労働者が加入し
ている全米鉄鋼労働組合(USW:United Steelworkers Union)もコメントしている。
(*2) http://labucketbrigade.org./downloads/LABBcommongroundIImap.pdf
(3) 「Sunrise プロジェクト」の進展
Husky Energy Inc.と BP は、50:50 の権益負担でカナダ・アルバータ州での「Sunrise
オイルサンド」開発並びに米国・オハイオ州の Toledo 製油所(15.5 万 BPD)でオイルサ
ンド由来重質原油処理に向けた改造・拡張工事を共同実施することを 2007 年に合意し契
約を締結している。
Toledo 製油所の重質原油処理能力は、現在、処理能力の半分以下となる約 6 万 BPD で
あるが、これを 2015 年までに 17 万 BPD に拡張する計画である。世界情勢をにらみなが
ら時宜を得たタイミングでオイルサンド開発及び製油所拡張計画を進めなくてはならな
いが、この度、両社は従来取り決めた「Sunrise プロジェクト」の開発スケジュールの
Phase 1 に進む決定を行い、2014 年生産開始に向けた 1 歩を踏み出すことになった。
(4) Cenovus のオイルサンド事業と製油所拡張の現状
Encana Corp.は 2009 年 12 月に、それまで行ってきた天然ガス関係事業と石油関連事
業とを分離独立させ、後者の事業を引継ぐ事業体として Cenovus Energy Inc.を設立し
ている。これにより Encana が ConocoPhillips と行ってきたオイルサンド開発事業並び
に製油所運営の共同事業も Cenovus が引継ぎ、製油所運営に関して ConocoPhillips と
Cenovus は折半権益の共同事業体として WRB Refining LLC を設立している。
この WRB Refining は、
それまで ConocoPhillips が所有していた米国イリノイ州の Wood
River 製油所(32.2 万 BPD)並びにテキサス州の Borger 製油所(14.6 万 BPD)を傘下に
置き、オイルサンド由来の重質油原油処理に向けた両製油所のアップグレード及び拡張
工事を行っている(これらの内容に関しては、当レポートで 2010 年 7 月(世界製油所関
連動向 2010 年 6 月度)に報告しているので参照願いたい)
。
この度、Cenovus は 2011 年予算として 2010 年とほぼ同一総額となる 24 億ドルを計上
し、オイルサンド生産量を 6%程度増量する計画を明らかにしている。両製油所の拡張工
事が終了する本年(2011 年)に歩調を合わせた増産である。なお、Wood River 製油所の
拡張工事は、現在では 90%程度完成していると報じられている。
5
(5) KNOC のカナダの製油所、生産体制改善
Korea National Oil Corp.(KNOC)は、2009 年 10 月にカナダの Harvest Energy Trust
社を買収することで合意し、この時、同時に Harvest が所有していたニューファンドラ
ンド州の Come by Chance 製油所(別称、North Atlantic 製油所:11.5 万 BPD)も取得
している。
同製油所で製造されている重質燃料の生産割合は現在約 25%であるが、この生産量を
削減し、
より付加価値の高い製品の生産量を増加させると共に5%程度精製能力を増強
(12
万 BPD)する計画で、実現に向けた展開を進めている。
2. ヨーロッパ
(1) INEOS と PetroChina が「枠組み協定」を締結
英国の化学会社・INEOS と中国国営石油会社の PetroChina は、INEOS が英国・スコッ
トランドに持つ Grangemouth 製油所(21 万 BPD)の売買交渉をほぼ 1 年間にわたり行っ
てきたが(2009 年 6 月報告内容参照)
、この度、INEOS が持つ Grangemouth 製油所とフラ
ンス南部の Lavera 製油所
(21 万 BPD)
の 2 製油所を共同で運営していくことで決着した。
実際には、
PetroChina の完全子会社である PetroChina International Co. Ltd と INEOS
の 完 全 子 会 社 で あ る INEOS European Holdings Ltd 並 び に INEOS Investments
International Ltd の 3 社間で「枠組み協定」が 2011 年 1 月 10 日に締結され、この協
定の中で製油所運営並びに製油所製品の取引を行うジョイント・ベンチャーを 2011 年 6
月末までに設立することを謳っている。
Grangemouth 製油所は英国・スコットランドの Firth of Forth(湾)にあり、北海油
田地域と直接繋がっており、製油所の製品はスコットランドのほか英国北部並びにアイ
ルランド北部に供給されている。製油所に隣接して INEOS が所有する 2 系列合計 104 万
トンのエチレンプラントがあるが、これらの設備は今回の交渉には含まれていない。
一方、フランスの Lavéra 製油所は、地中海地域での一大原油取扱い場所となっている
Marseille 港の北西部にあり、原油ターミナルに隣接している。製品はパイプラインで
フランス、スイス及びドイツ南部に供給されている。
今回の協定締結とは別に、INEOS と PetroChina の親会社になる China National
Petroleum Corp. (CNPC)は、石油精製分野のみならず石油化学分野においても戦略的協
力関係を構築することで一致し、今後両グループは Grangemouth 製油所並びに Lavéra 製
油所を基盤とする石油精製分野、石油製品の販売分野、INEOS が強みとするアクリロニ
トリルを中心とする石油化学分野の 3 分野で互いに協力していくことになる。
6
PetroChina と INEOS のそれぞれのメリットとしては、
PetroChina は今回の契約で 2009
年の Singapore Refining Co.、2010 年の JX グループ・大阪製油所に続く 3 番目となる
海外での精製拠点ができ、ヨーロッパ地域で初めて石油精製分野のみならず石油化学分
野でも足掛かりを得ることになる。更に、北海油田の開発に参加する糸口も掴めたこと
にもなる。他方、INEOS としては、これまでに同社が負っている多額の負債解消に向け
た資金の導入が図れるほか、スコットランドでの雇用が確保されることになる。
(2) 英国の Stanlow 製油所をインドの Essar が買収か?
インドの大手石油会社・Essar Oil Ltd.グループの Essar Energy が、Royal Dutch Shell
PLC が所有する英国の Stanlow 製油所(24.6 万 BPD)
、ドイツの Heide 製油所(10 万 BPD)
及び Hamburg(Harburg)製油所(10 万 BPD)の 3 製油所の買収に向けて排他的独占交渉
を行っていたのは 2009 年である(2009 年 11 月報告参照)
。
両社の交渉はまとまらず、その後、3 製油所の内 Heide 製油所を個人投資家で Klesch &
Co.のオーナーである Gary Klesch 氏が買収している(2010 年 7 月報告参照)
。今年に入
った 1 月には、Shell は後述するように、売却先が決まらない場合、Hamburg 製油所に関
しては、2012 年第 2 四半期まで運転を継続した後、ターミナル化する方針であることを
表明している。
この様なことから、Essar の関心は専ら Stanlow 製油所の買収に絞られ、精力的な交
渉が現在続けられていると伝えられている。一部のメディアによると、売却交渉が不調
に終わった場合は、ドイツの Hamburg 製油所とは異なり Shell が引続き運転を継続する
とされている。
ごく最近の報道によると、Essar が 3.5 億ドルで買収することで決着したが、公式発
表は 2 月上旬になる旨多くのメディアが報道しているところを見ると、交渉は成立した
ものと思われる。
(3) Lindsey 製油所売却交渉の現況
フランスの Total は、国内 6 箇所に製油所を持つほか、英国では北東イングランドの
Immingham に同国で第 3 位の規模を誇る Lindsey 製油所(22.1 万 BPD)を所有してい
る。当該製油所に関して、欧州の石油精製事業の利益率悪化や需要の低迷、更には原油
価格の上昇が続き、Total では昨年初め以来、売却を模索してきている。
Total では昨年中に売却を完了させる方針で、事実昨年には独立系石油精製会社の
Petroplus など数社から買収の打診を受けたが(2010 年 4 月報告内容参照)
、未だ売却先
が決まっていない。
売却方針の公表以来、最近では下火になっていたと思われる交渉だが、再び多くのメ
ディアから報道されるようになっており、現在では、2011 年夏までには独占的交渉に入
7
るべく特定の 2 社との交渉が続けられていると伝えられている。ただ、交渉相手は明か
されていない。
(4) ドイツの Harburg 製油所のターミナル化情報
Shell は、ドイツの Harburg(Hamburg)製油所(11 万 BPD)の売却先を過去 2 年間に
亘り模索し続けてきているが、未だに売却先を決められずにいる。今後、流通関係施設
の運営を含めて 2012 年第 2 四半期までは運転を継続するが、その後、売却先が決まらな
い場合には同製油所をターミナル化する計画である。
また、同時に同製油所内にある潤滑油製造設備に関しても、製油所売買と切り離して
売却交渉を数社と継続しているが、思う様な進展は見られていない。Shell は、今後、
同工場の閉鎖も念頭に置いていることを明らかにしている。
この潤滑油工場には、3,300BPD の API Group I 潤滑油製造設備並びに 3,000BPD のナ
フテン基潤滑油製造設備が設置されている。製油所の売却は困難な模様だが、閉鎖も念
頭に置いているとは言え、Shell としては潤滑油設備だけでも売却できないか模索して
いるところである。
3. ロシア・NIS 諸国(New Independent States)
(1) カザフスタンの製油所事情と近代化動向
カザフスタン国営石油会社の KazMunayGas の傘下には Atyrau 製油所(8.6 万 BPD)
、
Shymkent 製油所(10.5 万 BPD)及び Pavlodar 製油所(10 万 BPD)の 3 製油所がある。
Atyrau 製油所は同国西部で産する重質でパラフィン分の多い原油を処理し、Shymkent
製油所では国内原油以外に西シベリア原油が処理されている。後者の製油所は、かつて
PetroKazakhstan が所有していたが、2007 年に KazMunayGas が株式の 50%を買収して傘
下に組み入れている。
Shymkent 製油所では 2009 年から近代化工事が進められており、工事終了年の 2014 年
には処理能力は 12 万 BPD に増強され、ガソリン品質は Euro-4 基準が達成される予定で
ある。
Pavlodar 製油所では西シベリア原油が処理されており、イタリアがカザフスタンの工
業分野のインフラ整備に協力する旨、二国間で取り交わした覚書に基づき、エネルギー
会社 ENI s.p.a が同製油所の近代化工事に協力している。この近代化工事も Shymkent 製
油所と同様に 2014 年完了予定で進められている。完了後は製油所能力が 15 万 BPD にな
り、ガソリン品質は Euro-4 基準が達成される予定である。
8
上記 3 製油所以外に KazMunayGas はルーマニアの石油会社 Rompetrol Group N.V.の株
式の 75%を取得しており、この Rompetrol はルーマニア国内に Petromidia 製油所(約 10
万 BPD)と Vega 製油所(1 万 BPD)の 2 製油所を傘下に持ち、同国需要の 30%強を供給し
ている。このことから、石油精製分野においては、カザフスタンとルーマニアを個別に
検討することは出来ない。
上述の通り、カザフスタン国内では 2014 年をターゲットに Euro-4 基準体制を整える
べく近代化が進められているが、ここに来て、一挙に Euro-5 基準体制を整えられないか
の検討が行われるようになっている。Euro-4 基準に続く Euro-5 基準体制への設備投資
では、達成までに時間と投資額が嵩むとの指摘からであり、近代化終了時点では 3 製油
所合計処理能力が約 35 万 BPD になり、国内需要に充分応えることが出来るとされている
こととの整合性も考慮されているためである。
4. 中 東
(1) サウジアラビアにおける製油所拡張、建設動向
世界経済は弱いながらも回復傾向を示しており、サウジアラビアでは中断していた各
種プロジェクトも復活し、それぞれに進展が見られる。これらのプロジェクトに関する
最近の動きが各メディアで報道されているので、以下に記載する。
サウジアラビアには Jubail 製油所、Yanbu 製油所、Jizan 製油所及び Ras Tanura 製油
所の 4 箇所で製油所建設計画が展開さている。これらに加えて、既存製油所としての
Yanbu 製油所の拡張計画も同時に進行している。
これらのプロジェクト動向に関しては、
これまでも本サイトで報告してきているので、それらを合わせて参考にして頂きたい
(2009 年 12 月、2010 年 2 月及び 2010 年 5 月に報告)
。
① 既存 Yanbu 製油所のアップグレード工事情報
サウジアラビアの Yanbu 製油所(40 万 BPD)は、国営石油会社の Saudi Aramco と Exxon
Mobil の完全子会社である Mobil Yanbu Refining Company Inc.の共同事業体である Saudi
Aramco Mobil Refinery Co.( SAMREF)が操業する製油所である。
同製油所はサウジアラビア西部の Al Madinah 州の紅海に面した港町 Yanbu にあり、建
設当初 26 万 BPD 強の能力でスタートしているが、その後の拡張で現在では 40 万 BPD 強
に増強されている。
この製油所ではガソリン並びにディーゼルの将来規制に備え 10ppmS 製品製造体制を
2013 年までに整える計画で、プロジェクトが動き出した。
② 新製油所建設動向
9
Saudi Aramco が国内で進めている 4 箇所の製油所建設計画は、全て 40 万 BPD の製油
所である。この内、Ras Tanura 製油所に関しては、既存製油所の拡張と報じられる場合
もあるが、実質的には 40 万 BPD の製油所が既存設備に付加されると報じられていること
から、本サイトでは新製油所建設扱いにしている。
輸出型製油所として建設される Yanbu 製油所は、2005 年に計画が始めて公表されて以
来、ConocoPhillips との共同事業として検討されてきたが、2010 年 4 月に同社は正式に
プロジェクトからの撤退を表明している。その後、Saudi Aramco は 2010 年 7 月に製油
所建設を同社単独のプロジェクトとして進める事を決定し、同時に PJ の推進母体として
Red Sea Refining Co.を設立している。
Jubail 製油所も Yanbu 製油所と同様に輸出型製油所として建設されるもので、Saudi
Aramco と Total SA の共同事業体である Saudi Aramco Total Refinery & Petrochemical
Co.(SATORP)が建設母体となっている。
なお、
SATORP の株式構成は Saudi Aramco が 62.5%、
Total SA が 37.5%である。
両製油所の稼動開始予定時期は、Jubail 製油所の方が Yanbu 製油所より早くスタート
したこともあり、2013 年の稼動開始で、後者は 2014 年の稼動開始が予定されている。
また、サウジアラビア南西部の Jizan(Jazan)に建設する予定の製油所に関しても世
界経済の停滞から建設開始が危ぶまれていたが、昨年 12 月に FEED 業務(基本設計)の
応札に関わる説明会が行われている。
(2) トルコにおける製油所建設計画の背景と現状
トルコの製油所稼働率は 2009 年には世界経済の冷え込みから極端な落ち込みを見せ
たが、2010 年には需要も回復の兆しを見せ、最近、漸く設備投資の動きを見せ始める様
になった。
国営石油会社の Turkish Petroleum Refineries Corp. (TUPRAS)は、傘下に İzmit 製
油所(22 万 BPD)
、İzmir 製油所(22 万 BPD)
、Kırıkkale 製油所(10 万 BPD)及び Batman
製油所(22 万 BPD)の 4 製油所を持ち、合計精製能力は約 56.2 万 BPD となっている。こ
の TUPRAS が Izmit 製油所のアップグレード工事を再検討し始めているほか(2009 年 12
月の報告参照)
、民間企業も新製油所建設計画の展開を考え始めている。
中でもエネルギー関連以外に建設、繊維、通信等の事業を手掛ける複合企業体である
Calik Energy 社が中心となって地中海沿岸の港町Ceyhanで建設を計画している製油所、
アゼルバイジャン国営石油会社の SOCAR とトルコの流通企業・Turcas のコンソーシアム
である Petkim Petrokimya A.S.が Izmir 県 Aliaga で建設を計画している製油所(21.4
万 BPD)が上げられるが、これまで両プロジェクト共に大きな進展は伝えられていなか
った(Petkim のプロジェクトに関しては 2010 年 4 月及び 8 月の報告参照)
。
10
Ceyhan は原油生産地と地中海沿岸、更にはヨーロッパをつなぐ Baku-Tbilisi-Ceyhan
(BTC) パイプラインや Iraq-Turkey パイプライン(ITP)、Bosporus 海峡におけるタンカ
ーの過密通過状態を避けるための Samsun-Ceyhan パイプライン、と大きな 3 パイプライ
ン設置工事の終結地として検討されている場所で、そのどれもが製油所建設計画と密接
な関係を持っている。
Ceyhan における製油所建設計画は原料確保面から、これらの各パイプライン設置計画
と切り離しては考え難く、これまでも各パイプライン設置計画が世界経済・需要動向の
影響を受け、進展が左右される度に連鎖反応的に製油所建設計画も影響を受けてきてい
る。
現実的な需要に対する過大能力の製油所設置計画は、需要が拡大するまでの期間は既
存製油所との市場獲得競争とならざるを得ず、輸出型製油所として建設する大義名分も
立て難い環境にある。長期的観点から、ヨーロッパにおける地中海沿岸域の石油需要が
回復した場合を想定し、Ceyhan に製油所を設置する意義は大きいが、それまでの間に重
点を置いた場合には、建設意義は薄いと言わざるを得ない。つまり、パイプライン設置
工事を優先させ、製油所建設はパイプライン計画がほぼ終了する時期以降にすることが
得策と言える。
この様に客観的に見ると、Ceyhan に製油所を新設する根拠は限定されている様に思わ
れるが、Izmir 県 Aliaga に建設する製油所(通称“エーゲ海石化製油所(Ege
Petro-chemistry Refinery)
”と呼ばれている)の場合は 2010 年 7 月に報告している通
り、異なった見方をすることができる。
つまり、Aliaga には既存の Petkim の石油化学施設が存在し、同じ地区に建設するこ
とで石油精製と石油化学の融合が図れることや、投資額の側面や原料融通面からもシナ
ジー効果が期待できること、現在、多くを輸入に頼っている原料ナフサ類が自給出来る
ようになるなどの利点がある。
当該製油所建設に向けて Petkim の親会社となる SOCAR と Turcas は、建設母体となる
SOCAR & TURCAS Rafineri A.S.(STRAS)を共同事業体として設立している。この STRAS
は既にエネルギー市場規制局(EMRA:Energy Market Regulatory Authority)から製油
所建設許可を 2010 年 6 月に取得し、FEED(基本設計)を Foster Wheeler に発注し、こ
の度は製油所建設に関わるプロジェクト・マネジメント・コンサルタント(PMC)業務を
Fluor Corp.に発注するなど、着々とプロジェクトを進めている。
この様に Izmir 県 Aliaga に建設する製油所に関わる実質的展開は始まっているが、着
工は 2012 年第 1 四半期になると報道されている。なお、Petkim、SOCAR 及び Turcas の
関係 3 社は、
石油化学装置群が設置されている Izmir 県 Aliaga をシンガポールの Jurong
11
島の様な一大石油精製・石油化学基地にする計画であると報じられている。
5. アフリカ
(1) アルジェリアの製油所事情と Algiers 製油所拡張工事の展開
アルジェリア国営石油会社の Sonatrach は、国内地中海沿岸を主体に 5 製油所(内 1
箇所は内陸部の共同事業体)を持っている。Algiers 製油所(5.2 万 BPD)
、Skikda 製油
所(15 万 BPD)
、Arzew 製油所(5 万 BPD)
、Hassi Messaoud 製油所(2.2 万 BPD)それに
一部権益を持つ Adrar 製油所(1.2 万 BPD)である。
これまでに収集した情報では、Tiaret に 30 万 BPD の新製油所を建設する計画が進め
られてきているが、実現に向けた動きは今のところとられていない。
アルジェリアも他のアフリカ諸国と同様に石油製品の輸入を続けているが輸入量は少
なく、例えば、今後需要が拡大していくと見られるディーゼルの輸入量は需要量の 6%程
度である。この様な状況ではあるが、エネルギー・セキュリティの観点から政府はエネル
ギーの自給策を進めており、2013 年までには国内需要を上回る精製能力とする計画を立
てている。この政策の一環として Sonatrach では既存製油所の改修・拡張計画を展開し
ている。
具体的には Skikda 製油所の処理能力を 10%、Arzew 製油所の処理能力を 50%拡張する
ほか、Algiers 製油所能力を 7.2 万 BPD に拡張する計画であるが、Hassi Messaoud 製油
所拡張計画に関してはペンディングとなっている。
これらの拡張工事の内、Sonatrach はフランスの Technip SA に Algiers 製油所の改修・
拡張工事を 9.08 億ドルで発注した。工事は 2013 年中に終了する予定である。同製油所
の原油処理能力を前述の通り、現状の 5.4 万 BPD から 7.2 万 BPD に増強し、且つ欧州規
格を満たすガソリンを生産する装置を新設する。
6. 中 南 米
(1) ブラジルにおける Repsol の動向
ブラジル国営石油会社の Petrobras は、ブラジル最南部の Rio Grande do Sul 州の都
市 Canoas にある国内で 5 番目の規模の製油所(19 万 BPD)を運転している Alberto
Pasqualini Refinery (Refap)を完全に傘下に収めるべく、買収に乗り出した。Refap の
株式の 30%はスペインの Repsol YPF が所有しており、この全株式を 8.5 億ドルで買収す
ることになった。
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同製油所に関しては、もともと 2001 年に両社が資産交換の形で合意し、Petrobras は
Refap の株の 30%を Repsol に 10 億ドルで売却し、換わりに Petrobras は Repsol がアル
ゼンチンに持っていた San Lorenzo 製油所(5 万 BPD)を入手していたものである。
なお余談ながら、Petrobras はこの San Lorenzo 製油所を 2010 年 5 月に 360 箇所の燃
料販売店と共にアルゼンチンの Oil Combustibles SA に 1.1 億ドルで売却している。
今回の売買は、ブラジル側から見れば国内製油所の全てを Petrobras 傘下の製油所と
することで国内精製拠点を統合し、国内燃料販売流通網を整備して Petrobras に一本化
できるメリットがある。
一方の Repsol は、
現在 2014 年までに財務状況を大幅に改善するとした
「Horizon 2014」
と称する戦略策を展開中で、これまでにも 2007 年にはチリの燃料販売店網の売却、2008
年にはブラジルとエクアドルの販売店網売却、
同年の 2008 年にはブラジルの Manguinhos
製油所に持っていた株式の売却と展開してきており、海外石油関連資産の整理をすると
共に財務改善に繋がるメリットを持っている。
今回の動き以外にも Repsol は 2010 年 10 月にはブラジルの子会社 Repsol Brazil の株
式の 40%を中国の Sinopec に 71 億ドルで売却し、Sinopec との間でブラジルでの石油開
発を共同で実施する旨の契約を取り交わすと共に、ラテンアメリカでは最大規模のエネ
ルギー会社を共同で設立している。今回は Refap の持株の売却は、これらの商取引に続
いた動きになっている。
(2) Abreu e Lima 製油所建設現況
ブラジルの Pernambuco 州 Recife 近郊に Petrobras が PDVSA と共同で建設中の Abreu e
Lima 製油所(23 万 BPD)は、投資総額が 130 億ドルと見積られている。同製油所に対す
る PDVSA の権益は 40%で、応分の設備投資額負担が必要であるが、PDVSA が設備投資を本
格的に負担するか否か、未だに不明な点がある。
製油所建設完成時期は当初 2011 年とされていたが、現在では PDVSA の参加、不参加に
関わらずプロジェクトを 2012 年末完成予定で進めている。同製油所は 11.5 万 BPD の能
力設備が 2 系列設置される計画で、一方にはブラジル産原油処理用設備群が、他の一方
にはベネズエラ産重質原油処理用設備群が建設されることになっている。
従って PDVSA の参加がなくなった場合には、サルファー・スクラバー等の不要設備が
出てきて、3 億ドル程度投資額を削減できる仕組みになっていると言う。設備投資総額
に対する削減額としては少ないが、両系列共にブラジル産原油処理用設備として建設す
ることも考慮されていると思われる。
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7. 東南アジア
(1) シンガポールにおける新製油所建設計画と意義
シンガポールのメディアによると、同国の石油商社大手・Hin Leong Trading Pte.が
新製油所建設の許可申請を政府に提出した。建設場所は Julong 島の Meranti 地区で、Hin
Leong が所有している石油貯蔵基地の Universal Terminal (UT) に隣接した場所と言わ
れている。
メディアの報じるところでは、中国及びヨーロッパの企業と提携して建設に向けたコ
ンソーシアム(企業連合)を形成し、投資額は 60 億ドル~80 億ドル、工事は長くても 3
年半、製油所能力は 30 万~50 万 BPD とする検討を行っている。
Hin Leong の具体的な提携先は、これまで明らかになっていないが、シンガポールと
中国の関係を過去の記事から拾ってみると、2009 年にはシンガポールの政府系企業・
Keppel Oil and Gas Services Pte. Ltd.が保有する Singapore Petroleum Co. Ltd.(SPC)
の株式 45.5%を PetroChina が買収しており、この SPC は Jurong Island 製油所(29 万
BPD)を稼動させている Singapore Refining Co. Ltd(SRC)の株式 50%を所有している。
更に PetroChina は UT に 35%出資しているほか、Sinopec は Jurong 島に石油貯蔵・石
油精製・石油化学設備からなる大規模な石油基地建設を計画していると囁かれている。中
国には PetroChina(CNPC)
、Sinopec のほか Snochem や CNOOC のような国営石油関係企業
もあり、どの企業が提携先と報じられてもおかしく無い状況である。
しかし、シンガポールには SRC の製油所以外に ExxonMobil が 2 設備で 60.5 万 BPD、
Shell が 1 設備で 50 万 BPD の製油所を稼動させており、同国の経済開発委員会(EDB:
Economic Development Board)では、
“新規製油所建設意義は薄く、今回報じられた記事
内容は寝耳に水である”とコメントしている。
本サイトでも 2010 年 6 月に報告している通り、EDB では既存製油所をベースとした長
期戦略として、①既存製油所の近代化、②既存製油所の石油化学との融合、③潤滑油製
造設備の充実、を 3 本の柱として位置づけており、この 3 施策の展開により近隣諸国と
の競争を勝ち抜こうとしている。
精製マージンに好転の兆しが見え始めているとは言え、今後数年間は精製マージンが
低いレベルに留まると見られること、世界的にも精製能力余剰の傾向が強く、シンガポ
ールにとって石油製品輸出面で地理的利点のある近隣諸国には新製油所建設計画は目白
押しで、自国需要を充足させるに充分であり Hin Leong が入り込む余地は無い、と指摘
する専門家は多い。
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8. 東アジア
(1) 中国の石油精製の現状と中期的予測を記した記事内容
中国国家発展改革委員会委員長の発言として中国のメディアが伝えるところでは、
2010 年 1~11 月の中国の原油輸入量は前年同期比 19.8%増の 2.18 億トンになったとし、
海外依存度は約 55%になっているとの見通しを示した。
これに対し中国の精製能力のデータは発表機関により大きな乖離がみられるが、2010
年末時点では 5 億トン/年(1,000 万 BPD)を超えたものと見られ、一昨年からは大幅な増
加が予想されている。また、中国の精製能力が世界に占める割合を OGJ 誌から推定して
みると 13%を超えたものと見られる。
製油所能力と製油所数についてみると、2 万 BPD 以上の製油所数は 130 箇所以上、10
万 BPD 以上の製油所は 50 箇所近くで、20 万 BPD 以上の製油所は 20 箇所程度になってい
る。Sinopec 並びに CNPC(China National Petroleum Corp.)は依然として精製部門の
中核企業ではあるが、それ以外の新規参入企業も力をつけてきている。
国営企業を含む新規参入企業としては、Huajin グループが 2010 年初期から 10 万 BPD
の設備を稼動させており、Sinochem も福建省で製油所建設許可を取得している。CNOOC
(China National Offshore Oil Corp.)が持つ国内精製能力シェアは 6%に達しており、
Yanchang Petroleum Group と China Blue Star のシェアも夫々2.5%と 2.2%になっている。
地方の小規模製油所が占める割合も増加しており、これらの小規模製油所の合計数値は
18.6%になっている。
二次装置の設置も 2010 年は大きく増加しており、常圧蒸留装置能力の増強割合よりも
大きい数値を示している。高硫黄原油の処理には二次装置群が必要となるが、二次装置
の能力増強は、CNPC、Sinopec 及び CNOOC の国営企業 3 社に偏っており、特に Sinopec
が二次装置の装備に熱心であり、東中国、南中国で二次時装置群を設置している。
世界平均と比較してみると、接触分解装置及びコーキング装置の設置が多く、これに
水素化分解装置の設置が続いている。一方、改質装置並びに水素化処理装置の設置は、
装備率として見ると世界平均以下に抑えられていると言う。
今後の中国の状況については 3E 社や C1 Energy が見通しを報道しており、これらの記
事まとめてみると凡そ以下の通りである。
中央政府が定めた「第 12 次 5 ヵ年開発計画(2011-2015)
」では、石油精製能力として
40 万 BPD 以上を有する石油精製・石油化学コンプレックスを新たに数箇所設置し、石油
下流部門の業界再編成を進める方針を掲げている。従って、当面、この大方針に則った
動きが出てくると見られる。
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現在、工事中のアップグレード計画は多く、国営企業や地方の新規精製能力追加の計
画は多いが、中核企業である CNPC と Sinopec の両社の 2011 年の増強計画は少なく、今
後 5 年間の中では全国的にも 2011 年と 2012 年の新規精製能力の追加の勢いは弱まると
見られる。しかし、これらの事項を勘案しても 2015 年末には合計精製能力が 6~7 億ト
ン/年(1,200~1,400 万 BPD)になると予測されている。
一方、問題も指摘されている。その一つは、この様な精製能力の急激な伸びに対し需
要が追い付かず、精製能力余剰の状況に追い込まれる危惧があることである。二つ目は、
地理的に近い中東での状況が中国に影響すると見られることである。
中東ではガスを原料とする石油化学センターの建設が進められており、これに伴う安
価な製品が中国に流れ込んでくると見られる。ナフサを原料とする中国での石油化学製
品の価格は、中東に比較し相対的に高くなると想定されることから、国際競争が激しく
なり、中国でのエチレンクラッカー設備の稼動率が低くなる恐れが出てくる。その様な
状況になると、製油所稼動率も低くならざるを得ず、少なからず影響が出てくることが
指摘されている。
9. オセアニア
(1) 燃料エタノール製造設備に関わる情報
米国の自動車メーカーであるジェネラル・モーターズを親会社とするオーストラリア
の GM Holden Ltd は、石油会社の Caltex Australia と共同で生ゴミ等の都市廃棄物や廃
タイヤからエタノールを製造する企業として「Flex Ethanol Australia」を設立した。
製造されるエタノールは、ガソリン中に混合し「E85」として Caltex の小売店経由で
販売するほか、Holden でも「E85」特別仕様車の販売を昨年から開始している(2010 年
8 月報告参照)
。なお、エタノール製造では米国の Coskata Inc.が開発した技術を採用す
る。
今後、擬似廃棄物を Coskata のパイロットプラントが設置されているペンシルバニア
州 Pittsburgh 近郊の Madison に送り、各種データを採取後、来年には Melbourne 付近に
この種のエタノール製造設備としてはオーストラリア初となる設備を、約 4 億ドルの投
資で建設する計画である。
Holden では 100 万トンのゴミから凡そ 20 万 Kℓ の燃料グレードのエタノールが生産で
きると試算し、
“将来は化石燃料ベースのガソリンの 30%を削減し、GHG 削減にも貢献で
きる”と抱負を語っている。
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Flex Ethanol Australia の設立に当たり、これまで関係してきた各機関がどの様な形
で参加しているのか報道されていないので不明だが、2010 年 3 月時点で都市型廃棄物や
廃タイヤからエタノールを製造する計画に関与していたのは、Holden、Caltex や技術を
持つ Coskata 以外にオーストラリアのビクトリア州政府、都市廃棄物管理会社の Veolia
Environmental Services、日本の三井物産である。
なお、別観点になるが、米国ではバイオ燃料製造計画、中でもセルロース基エタノー
ルの製造技術開発が大幅な遅れを見せている。このことはエネルギー自給・安全保障法
(EISA)で規定している「2022 年における再生可能燃料の使用量を 360 億ガロン(約 1.36
億 kL)とする」とした目標の達成にも影響が出ており、政府関係各省はこの遅れを取り
戻し、開発を促進させるために、各種の施策を打ち出している。
農務省(USDA)の『米国のための地方エネルギー・プログラム(REAP:USDA Rural Energy
for America Program』やエネルギー省(DOE)の『融資保証プログラム (DOE - Loan
Guarantee Program)
』もその施策の一つである。
2011 年 1 月に USDA と DOE は、再生可能エネルギー製造設備を設置しようとしている
企業に対し、両省で合わせて 6.46 億ドルの融資保証を与える 4 企業を発表しているが、
石油会社の Valero と Darling International のジョイント・ベンチャーである Diamond
Green Diesel のほか Coskata もこの中の 1 社に選定されている。
今回Coskataが受ける融資保証額は、
過去最大の2.5億ドルで、
同社はアラバマ州Green
County で生産能力 5,500 万ガロン/年(約 21 万 Kℓ/年)のセルロース基エタノール製造
設備を建設するために、この融資保証を利用することになる。同設備は 2008 年の経済シ
ョックで建設が頓挫していたものだが、セルロース基エタノール製造設備として、現状
では米国内最大規模の設備になる。
これまで記してきたように、オーストラリアにおけるバイオ燃料製造の動きは、米国
における動きとも微妙に関連してきており、総合的に情報を集め整理していく必要があ
りそうである。
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編集責任:調査情報部 ( [email protected] )
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