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地域資源を活用した売れる商品づくりサポートブック(6.7MB)

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地域資源を活用した売れる商品づくりサポートブック(6.7MB)
小 規 模 事 業 者 支 援 ガイドブックⅢ
支援者のための
地域資源を活用した売れる商品づくり
サポートブック
-地 域 資 源 を活 用 した事 業 の発 掘 ・構 想 ・事 業 化 を伴 走 サポート!-
中小機構・小規模事業者支援ガイドブックⅢ
支 援 者 の ため の
地 域 資 源 を活 用 した売 れる商 品 づくり
サポート ブ ッ ク
目次
Ⅰ.地域資源を活用した事業を支援する際の全体像
1 .ガ イ ド ブ ッ ク 作 成 の 目 的
・・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
1
2 .ガ イ ド ブ ッ ク の 全 体 構 成
・・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
2
3 .地 域 資 源 と は 何 か 、地 域 資 源 法 と の 関 係
・・・・・・・・・・・ ・
4 .市 場 へ の 到 達 プ ロ セ ス と モ ノ が 売 れ な い 要 因
・・・・・・・・・・・・・
3
5
Ⅱ.地域資源を活用した商品づくりと支援のポイント
1.出会い・発掘
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(1)地域資源を活用する事業の掘り起し
(2)事業者の現状の棚卸し
・・・・・・・・・・ ・
7
・・・・・・・・・・・・・・・・
11
( 3 ) 現 状 の ビ ジ ネ ス ス キ ー ム の「 見 え る 化 」
2.商品コンセプトづくり
・・・・・・・・ ・
12
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
13
(1)売れる商品づくりに不可欠な観点
・・・・・・・・・・・
13
・・・・・・・・・・・・・・・・・
19
・・・・・・・・・・・・・・・・
21
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
27
(2)商品アイデアの創出
(3)商品コンセプトの設定
3.商品開発・評価・改良
7
(1)商品開発計画書の作成
・・・・・・・・・・・・・・・・
27
(2)試作品開発
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
29
(3) 評価・改良
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
34
( 4 ) 商 品 化( パ ッ ケ ー ジ デ ザ イ ン 、 ネ ー ミ ン グ 、 価 格 等 )
(5)流通チャネル戦略の検討
・・
37
・・・・・・・・・・・・・・・
42
(6)プロモーション展開手法の検討
4.販路開拓
・・・・・・・・・・・・
45
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
47
(1)販路開拓を計画する
(2)営業ツールの整備
・・・・・・・・・・・・・・・・・
47
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
48
(3)販路に応じたアプローチ
・・・・・・・・・・・・・・・
(4) 展示会、商談会 、販 売 会 の 活 用 方 法
・・・・・・・・・・
55
・・・・・・・・・・・・・・・・
64
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
65
(5)インターネットの活用
(6)海外展開の検討
52
中小機構・小規模事業者支援ガイドブックⅢ
5 .商 品 分 野 別 の ア プ ロ ー チ の ポ イ ン ト
(1)食品
・・・・・・・・・・・・・・・
67
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
67
(2)工芸品等
(3)観光
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
69
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
71
Ⅲ.その他の留意事項
1.着実な事業拡大に向けて不可欠な観点
・・・・・・・・・・・・
74
2.事業計画認定を目指す場合の留意事項
・・・・・・・・・・・・
76
・・・・・・・・・・・・・
80
・・・・・・・・・・・・・・・・・
86
3.グループで取り組む場合の留意事項
(参考)プレスリリースの書き方
【別冊】地域資源活用サポート様式集
ビジネススキーム図
( 様 式 1) [ 本 文 ☞ P 12]
お客様シート
( 様 式 2) [ 本 文 ☞ P 22]
コンセプトシート
( 様 式 3) [ 本 文 ☞ P 23]
商 品 シ ー ト No.1 ( 非 食 品 用 )
( 様 式 4-1)[ 本 文 ☞ P 24]
商 品 シ ー ト No.2 ( 非 食 品 用 )
( 様 式 4-2)[ 本 文 ☞ P 24]
ブランディング整理シート
( 様 式 5) [ 本 文 ☞ P 49]
展示会チェックリスト(事前準備)
( 様 式 6-1)[ 本 文 ☞ P 56]
展示会チェックリスト(終了後)
( 様 式 6-2)[ 本 文 ☞ P 56]
販売会チェックリスト(事前準備)
( 様 式 7-1)[ 本 文 ☞ P 62]
販 売 会 チ ェ ッ ク リ ス ト ( 会 期 中 ~ 終 了 後 ) ( 様 式 7-2)[ 本 文 ☞ P 62]
仲間シート
( 様 式 8) [ 本 文 ☞ P 84]
※ 様 式 集 の Excel フ ァ イ ル を 中 小 機 構 ホ ー ム ペ ー ジ に 掲 載 し て い ま す 。
以下のアドレスよりダウンロードのうえ、ご活用ください。
http://www.smrj.go.jp/keiei/090857.html
中小機構・小規模事業者支援ガイドブックⅢ
Ⅰ.地域資源を活用した事業を支援する際の
全体像
1.ガイドブック作成の目的
我 が 国 の 経 済・社 会 構 造 の 変 化 や 経 営 者 の 高 齢 化 に 伴 い 、中 小・小 規 模 事 業
者 の 数 は 年 々 減 少 を 続 け 、こ れ ら の 事 業 者 を 取 り 巻 く 環 境 は 益 々 厳 し く な っ て
い ま す 。こ う し た 状 況 に お い て 、地 域 経 済 の 確 か な 成 長 を も た ら す 好 循 環 の 鍵
は 、そ れ ぞ れ の 地 域 独 自 の 魅 力 を 持 つ「 地 域 資 源 」の 持 続 的 な 発 展・再 生 産 の
仕 組 み を 構 築 し 、地 域 の 中 小・小 規 模 事 業 者 の 活 力 を 最 大 限 に 発 揮 し て い く こ
とにあると考えられます。
こ う し た 取 り 組 み を 促 進 す る た め に は 、経 営 資 源 に 限 り の あ る 中 小・小 規 模
事 業 者 の 自 助 努 力 の み に 委 ね る の で は な く 、日 頃 か ら そ れ ぞ れ の 地 域 の 事 業 者
と の 接 点 を 多 く 持 ち 、地 域 の こ と を よ く 知 っ て い る 商 工 会 議 所 、商 工 会 、中 央
会、金融機関等の支援機能の発揮に大きく期待されるところです。
そ こ で 、本 ガ イ ド ブ ッ ク は 、支 援 者 の 皆 様 が 地 域 資 源 を 活 用 し た 事 業 を サ ポ
ー ト す る に あ た り 、事 業 の 発 掘 か ら 商 品 開 発 を 経 て 販 路 開 拓 に 至 る 一 連 の プ ロ
セ ス に つ い て 、そ の 進 め 方 の 基 本 的 な 内 容 や ポ イ ン ト を お さ え た 手 引 書 と し て 、
支援現場でご活用いただくことを目的として作成いたしました。
(対象とする読者と活用方法の想定)
□ 対象とする読者
・地域資源活用に関する支援経験の浅い又は初めて携わる支援者
(商工会議所、商工会、中央会の若手の経営指導員等)
□ 想定される活用方法
・地域資源を活用した商品づくりの基本的な流れと知識を理解する
・地域資源を活用した事業の一連の支援プロセスで、事業者との
コミュニケーションの手引きとする
・本編中のノウハウや添付の各種様式等を、実際の支援の現場で
活用する
本 ガ イ ド ブ ッ ク が 、地 域 に お け る 中 小・小 規 模 事 業 者 の 支 援 の 現 場 で 、支 援
者の皆様にご活用いただければ幸いです。
1
中小機構・小規模事業者支援ガイドブックⅢ
2.ガイドブックの全体構成
本ガイドブックは、事業の発掘から商品開発を経て販路開拓に至る一連の
プロセスに沿って説明しています。以下のフロー図を参照しつつ、読み進め
て く だ さ い 。ま た 、現 場 で の 利 用 を 想 定 し 、各 種 支 援 ツ ー ル を 様 式 集 と し て 添
付しましたので、ご活用ください。
2
中小機構・小規模事業者支援ガイドブックⅢ
3.地域資源とは何か、地域資源法との関係
地 域 資 源 と は 、特 定 の 地 域 に 存 在 す る 特 徴 的 な も の で 活 用 可 能 な も の の 総 称
で あ り 、自 然 資 源 だ け で な く 、人 的 な も の や 文 化 的 な も の な ど も 含 ま れ る 幅 広
い概念です。
一 方 、 2007 年 6 月 施 行 の 「 中 小 企 業 に よ る 地 域 産 業 資 源 を 活 用 し た 事 業
活動の促進に関する法律」
( 地 域 資 源 法 )で は 、
「 地 域 産 業 資 源 」と し て 、① 地
域 の 特 産 物 と し て 相 当 程 度 認 識 さ れ て い る 農 林 水 産 物 や 鉱 工 業 品 、② 地 域 の 特
産 物 で あ る 鉱 工 業 品 の 生 産 に 係 る 技 術 、③ 文 化 財 、自 然 の 風 景 地 、温 泉 そ の 他
の地域の観光資源として相当程度認識されているもの、の 3 つを定義してい
ます。
3
中小機構・小規模事業者支援ガイドブックⅢ
地 域 資 源 法 で は 、地 域 資 源 を 活 用 し た 新 た な 商 品・サ ー ビ ス を 開 発 す る こ と
で 、取 引 や 雇 用 を 拡 大 し 、地 域 経 済 を 活 性 化 す る 仕 組 み が 用 意 さ れ ま し た 。具
体的には、まず都道府県が地域の産業資源を 3 類型の中から地域資源として
指 定 し 、そ れ を 活 用 し た 事 業 計 画 を 中 小 企 業 が 策 定 し 、国 の 認 定 を 受 け る こ と
で 、新 ビ ジ ネ ス 創 出 の た め の さ ま ざ ま な 支 援 措 置 が 受 け ら れ る と い う も の で す 。
現 在 ま で に 指 定 さ れ た 地 域 資 源 は 約 15,000 に お よ び 、 国 が 認 定 し た 事 業 は
約 1,400 件 と な っ て い ま す 。
地域資源は地域の事業者が活用できる有効な経営資源であり、それを活用
した事業に取り組むことは決してハードルの高いものではないと考えられま
す 。支 援 者 に は 、地 域 の 中 小・小 規 模 事 業 者 の 地 域 資 源 活 用 事 業 へ の 積 極 的 な
チャレンジを促していく姿勢が必要となります。
さ ら に 、 2015 年 8 月 施 行 の 地 域 資 源 法 の 改 正 に よ り 、 基 本 方 針 に お い て
「 新 た な 活 用 の 視 点 の 提 示 」が 緩 和 さ れ 地 域 資 源 活 用 の 幅 が 拡 大 さ れ る と と も
に 、地 域 資 源 を 活 か し た「 ふ る さ と 名 物 」を テ コ に 市 区 町 村 が 積 極 的 に 関 与 す
る こ と を 法 定 す る な ど 、地 域 ぐ る み の 取 り 組 み に よ る 地 域 活 性 化 を 促 進 す る 方
向性が打ち出されました。これにより、地域をよく知る現場の支援者への期
待と重要性がより一層高まっています。
4
中小機構・小規模事業者支援ガイドブックⅢ
4.市場への到達プロセスとモノが売れない要因
商品が企画されてから実際に消費者の手に渡るまでの過程は、大きく 3 段
階 8 工程に分けることができます。具体的には、商品企画・開発段階の 3 工
程( マ ー ケ テ ィ ン グ 、デ ザ イ ン 、製 造・加 工 )、流 通 段 階 の 2 工 程( 問 屋・ 物
流 帳 合 、 商 品 政 策 ・ マ ー チ ャ ン ダ イ ジ ン グ ( M D ))、 販 売 段 階 の 3 工 程 ( ビ
ジ ュ ア ル マ ー チ ャ ン ダ イ ジ ン グ ( V M D )、 販 売 サ ー ビ ス 、 宣 伝 販 促 ) で す 。
マーケティング
デザイン
製造・加工
問屋・物流帳合
商品政策・MD
VMD
販売サービス
宣伝販促
:何を誰のために作り、売れる仕組みをどう作るか
:どう設計するか
:どうやって作るか
:どういう流通経路を使うか
:いつ、どのくらい、どこから攻めるか
:売場をどう見せていくか
:接客やアフターサービスをどうするか
:商品をどう外に伝えていくか
市場への到達プロセスを眺めると、モノは作っただけでは売れないことが
よ く 分 か り ま す 。商 品 の 品 質 そ の も の の 問 題 も さ る こ と な が ら 、そ れ 以 外 の プ
ロセスで詰まり(課題)が発生するために市場まで到達できていない状況が
散見されます。
市 場 へ の 到 達 プ ロ セ ス に 詰 ま り が 生 じ て い る 大 き な 要 因 は 、お 客 様 が 商 品 を
買う姿を十分にイメージせずにモノを作ってしまったことにあります。商品
を作り上げるときは必ず出口(お客様)から逆算して考える必要があるので
す 。そ う し な い と 商 品 を 作 っ て も 市 場 へ の 到 達 プ ロ セ ス の ど こ か で 詰 ま り が 生
じ て し ま い ま す 。売 れ る 商 品 づ く り を 行 う 前 提 と し て 、こ れ ら の こ と を し っ か
りと押さえておきましょう。
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中小機構・小規模事業者支援ガイドブックⅢ
<事業化に低迷するよくある3つのケース>
【ケース1】市場への伝達能力が不足しているケース
完 成 度 が 高 い 商 品 で 、本 来 は 売 れ る ポ テ ン シ ャ ル が あ る に も 関 わ ら ず 、そ の
価 値 が 市 場 に 伝 わ っ て い な い ケ ー ス で す 。売 る 時 期 や 売 場 を 変 え た り 、販 売 の
手 法 を 変 え る こ と に よ っ て 、比 較 的 簡 単 に 売 れ る よ う に な る 可 能 性 の あ る 状 態
です。
【ケース2】市場のニーズやルールに未到達なケース
商 品 の モ ノ 自 体 は 良 く て も 、そ の ま ま で は 市 場 に 出 せ な い ケ ー ス で す 。例 え
ば 、パ ッ ケ ー ジ が 分 か り に く い 、値 段 が 高 す ぎ る 、量 が 多 い・少 な い 、デ ザ イ
ン が 弱 い と い っ た 問 題 を 抱 え た 商 品 で す 。ケ ー ス 1 の よ う に 見 せ 方 や 売 り 方 を
変 え る だ け で は な く 、マ ー ケ テ ィ ン グ や デ ザ イ ン の 工 程 を 含 め て 見 直 す 必 要 が
ある状態です。
【ケース3】市場と完全にかい離しているケース
市 場 が 全 く 求 め て い な い モ ノ を 作 っ て し ま っ た ケ ー ス で す 。O E M( 委 託 生
産 )に 特 化 し た モ ノ づ く り を し て き た 企 業 が 自 社 商 品 を 作 っ た よ う な 場 合 に 多
く見受けられます。いちから商品づくりをやり直す必要のある状態です。
6
中小機構・小規模事業者支援ガイドブックⅢ
Ⅱ.地域資源を活用した商品づくりと支援の
ポイント
1.出会い・発掘
(1)地域資源を活用する事業の掘り起し
日 頃 の 支 援 の 現 場 に お い て 、事 業 者 自 身 が 地 域 資 源 を 活 用 し た 新 た な 事 業 の
具体的なイメージを明確に持って相談してくるケースは少ないのではないで
しょうか。むしろ、日々の経営支援(窓口相談、巡回指導等)のなかで可能
性を見出し、支援者の方から地域資源の活用をアドバイスする姿勢が必要に
なってくると考えられます。
支 援 者 の 地 域 資 源 を 活 用 す る 事 業 へ の 出 会 い・発 掘 の 場 と し て は 、窓 口 相 談 、
巡 回 指 導 の 現 場 の ほ か 、支 援 施 策 の 説 明 会・相 談 会 、農 商 工 連 携 等 の マ ッ チ ン
グ イ ベ ン ト 、地 域 の 事 業 者 有 志 グ ル ー プ 等 の 会 合 、地 域 金 融 機 関 主 催 の 取 引 先
向 け 展 示 会・商 談 会 等 が 有 力 で す 。ま た 、首 都 圏 等 で 開 催 さ れ る 大 規 模 な 展 示
会 等 を 視 察 す る 機 会 を 作 れ れ ば 、地 域 毎 の 展 示 ブ ー ス 等 で 事 業 拡 大 に 積 極 的 な
地 元 の 事 業 者 を 見 つ け た り 、業 界 等 の 最 先 端 の 情 報 を つ か む こ と が で き 、お 勧
めです。
【出会い・発掘機会の事例】
山梨県農商工連携マッチングフェア
山梨県内の中小企業者や農林漁業者等が互いの経営資源や地域資源を活
用して開発した商品等の商談や販路開拓、取り組みの紹介を中心に開催さ
れているマッチングフェア。山梨県商工会連合会が主催ですが、金融機関
を含む県内すべての支援機関が連携し出展企業の掘り起しを行い、フェア
当日の運営にも参画しています。多数の県内関係者を巻き込み、継続的な
支援体制を構築している事例であり、事業者と支援者の出会い・発掘の場
としても効果的に機能しています。
甲州信玄の会
山 梨 県 内 の 食 品 メ ー カ ー・生 産 者 ら 13 社 が 立 ち 上 げ た 異 業 種 グ ル ー プ 。
山梨県商工会連合会は、月 1 回の定例会に参加し販路開拓、新製品開発等
各種支援施策を情報提供するなど、その活動を支援しています。この活動
を通じて、複数の認定事業の創出につながっています。
7
中小機構・小規模事業者支援ガイドブックⅢ
タ イ ミ ン グ よ く ア ド バ イ ス で き る よ う に 、地 元 の 地 域 資 源 の 把 握 と 他 地 域 で
の 活 用 事 例 を 頭 の 中 に ス ト ッ ク し て お く よ う に 努 め ま し ょ う 。そ れ ら の 情 報 と 、
日頃からアンテナを高くしてつかんでいる地域の事業者の動向を、独自の発
想力でつなぎ合わせて提案するような活動は、地元をよく知る支援者ならで
はの強みを発揮できる分野と考えられます。
ま た 、事 業 者 が 活 用 を 望 ん で い る 地 域 資 源 が あ る に も 関 わ ら ず 、未 だ「 地 域
産業資源」に指定されていないケースでは、都道府県に追加指定を働きかけ
るような役割を担うことも望まれます。
□ 各都道府県の地域資源情報の調べ方
各都道府県の
地域資源情報
はココ
J-Net21「地域資源活用チャンネル」
http://j-net21.smrj.go.jp/expand/shigen/kousou/index.html
⇒「各都道府県の地域資源情報」ページより、都道府県毎に指定されて
いる「地域産業資源」を調べることができます(各都道府県のホーム
ページの該当サイトにリンク)
各 都 道 府 県 の 該 当 サ イ トに リ ン ク
されています
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中小機構・小規模事業者支援ガイドブックⅢ
□ 地域資源を活用した事業の事例情報の調べ方
J-Net21「地域資源活用チャンネル」
http://j-net21.smrj.go.jp/expand/shigen/
⇒地域資源法に基づく認定事業計画の事例情報を網羅的に調べることが
で き ま す 。「 新 事 業 創 出 支 援 事 業 ハ ン ズ オ ン 支 援 事 例 集 」 は 、 支 援 者
の支援内容にも着目した記事となっており、お勧めです。
※本ガイドブックで紹介する事例の一部に関しても、同事例集に詳細が掲載されています。
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中小機構・小規模事業者支援ガイドブックⅢ
J-Net21以外にも、多くのインターネットサイトや各種報告書、
書 籍 等 で 、様 々 な 地 域 資 源 を 活 用 し た 事 業 の 事 例 が 紹 介 さ れ て い ま す 。こ
こ で は 、イ ン タ ー ネ ッ ト 上 で 閲 覧 が 可 能 な 情 報 の 一 部 を 下 表 に ま と め ま し
たので、参考としてください。
地域資源を活用した事業の事例が閲覧できるサイト(例)
●feel
N I P P O N 「 プ ロ ジ ェ ク ト 一 覧 」【 日 本 商 工 会 議 所 】
http://feelnippon.jcci.or.jp/projects/
⇒全国展開支援事業のプロジェクトの概要が紹介されています
プロジェクトで開発された食品、工芸品、観光商品が紹介されています
条 件 設 定 に よ る 検 索 が 可 能 で あ り 、問 い 合 わ せ フ ォ ー ム も 用 意 さ れ て い ま す
●小規模事業者地域力活用新事業全国展開支援事業の取組成果事例集のご紹
介【全国商工会連合会】
http://www.shokokai.or.jp/?post_type=sisakus&p=2493/
⇒全国展開支援事業の取り組み事例が紹介されています
●組合事例検索システム【全国中小企業団体中央会】
http://jirei.chuokai.or.jp/newjirei/
⇒ さ ま ざ ま な 事 業 活 動 を 展 開 し て い る 中 小 企 業 組 合 の 事 例 を 独 自 に 収 集 し 、各
種事例集等に掲載した事例が蓄積され、公開されています
●「地域活性化のための面的支援」調査研究報告書【中小機構】
http://www.smrj.go.jp/keiei/chiikiryoku/095626.html
⇒ 商 工 会 議 所 が「 地 域 力 活 用 新 事 業 ∞ 全 国 展 開 プ ロ ジ ェ ク ト 」を 活 用 し て 行 う
面的支援の優れた事例を取材し、支援ノウハウ、ポイント等を支援事例と
ともに調査報告書として取りまとめたものです
日 頃 か ら 地 域 内 の 資 源 を リ ス ト ア ッ プ し 、地 域 資 源 を 棚 卸・発 掘 し て お く と
よ い で し ょ う 。そ の た め の 一 つ の 様 式 と し て 、上 記 の「 地 域 活 性 化 の た め の 面
的 支 援 」調 査 研 究 報 告 書( 中 小 機 構 )の 附 属 資 料 に「 地 域 資 源 の 棚 卸 」シ ー ト
が 掲 載 さ れ て い ま す 。何 人 か で 集 ま っ て 意 見 を 出 し 合 い な が ら リ ス ト ア ッ プ す
るのもよいでしょう。
10
中小機構・小規模事業者支援ガイドブックⅢ
(2)事業者の現状の棚卸し
地 域 資 源 を 活 用 し た 事 業 を 支 援 す る 場 合 に 限 ら ず 、事 業 者 を サ ポ ー ト す る 支
援 者 に と っ て ま ず 着 手 す べ き こ と 、常 に 意 識 し て 継 続 的 に 取 り 組 む べ き こ と は 、
事業者のことや、事業の現状を正しく把握、理解することでしょう。
特に、新たな商品開発や事業展開を検討していくうえで、事業者自身の魅
力や強みを明確にしておくことが重要です。併せて、個々の事業者に応じた
サ ポ ー ト を 行 っ て い く た め に は 、事 業 者 の 事 業 に 取 り 組 む 意 欲 や 思 い 、経 営 理
念をしっかりと把握しておくことが不可欠となります。
こ の よ う に 事 業 者 の 現 状 の 棚 卸 し を 行 う の に 有 効 な ツ ー ル と し て は 、本 ガ イ
ド ブ ッ ク の 姉 妹 編 の 小 規 模 事 業 者 支 援 ガ イ ド ブ ッ ク Ⅰ「 支 援 者 の た め の 小 規 模
事 業 者 の 事 業 計 画 づ く り サ ポ ー ト ブ ッ ク 」や 経 営 計 画 作 成 ア プ リ「 経 営 計 画 つ
く る く ん 」が あ り ま す 。こ れ ら の ツ ー ル 等 を 活 用 し 、ま ず は 現 状 の 棚 卸 し を し
っかりと行いましょう。
事業者の現状の棚卸しに活用できるツール(例)
●小規模事業者支援ガイドブックⅠ
「支援者のための小規模事業者の事業計画づくりサポートブック」
http://www.smrj.go.jp/keiei/090857.html
⇒本ガイドブックのシリーズ第1号であり、事業者本人や経営
についての聞きどころを基本から抑えつつ、売上・利益・資
金計画にまでカンタンに落とし込めるツールです
事 業 者 の 現 状 の 棚 卸 し に は 、「 Ⅱ . 1 .【 S T E P 0 】 訪 問 準
備 - 事 業 者・事 業・顧 客 を 知 る - 」
( P 8 ~ 2 3 )を 中 心 に 活
用できます
●経営計画作成アプリ「経営計画つくるくん」
http://www.smrj.go.jp/jinzai/063743.html
⇒ Q& A 形 式 で 答 え を 考 え 、 入 力 し て い く こ と で 、 基 本 的 な 経 営 計 画 が 作 成 で き る
アプリです
アプリの流れに沿って、事業者と
コミュニケーションを取りながら
入力することにより、その場で簡
単に経営計画書のベースが作成で
きます。
11
中小機構・小規模事業者支援ガイドブックⅢ
(3)現状のビジネススキームの「見える化」
具 体 的 な 事 業 展 開 を 支 援 し て い く う え で 、現 状 の 事 業 者 の ビ ジ ネ ス ス キ ー ム
を「見える化」しておくことをお勧めします。事業の全体像を俯瞰すること
で、強みや課題を直感的に整理できます。また、今後どのように事業を動か
していけばよいかのヒントを見出すことにも役立ちます。
事業者と支援者とが共通認識をもってコミュニケーションを図っていくツ
ールとしても有効です。いきなり完璧なものを作る必要はなく、まずは大局
的 に 捉 え た う え で 、事 業 者 と コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン を 図 り な が ら ブ ラ ッ シ ュ ア ッ
プしていきましょう。
御社の現状の事業の全体像
を図にしてみましょう!
「誰に、何を、どの様に」
で考えましょう。
まずは大まかに全体を書き
込んでみましょうか。
「ビジネススキーム図」作成シート
【 事 業 者 】【 支 援 者 】
現 状 は 地 元 観 光 客 向 け に 、県 内 の 主 な
土産品売場は確保していますね!
仕入れルートは基本的にはしっかり
確保できていますね!
御社内の業務の流れは大体こんな感
じですか?
現状の事業の姿は大体整理できましたね。
競合が厳しいなか、地元の販路開拓の取り組み
はすばらしいと思います!
ただ地元販路はそろそろ頭打ちなので、次の新
たな展開を検討する必要がありそうですね!?
【事業者】 【支援者】
12
中小機構・小規模事業者支援ガイドブックⅢ
2.商品コンセプトづくり
ここからは具体的な商品づくりの進め方の基本的な事項を解説したうえで、
そ の 後 に 、特 に 支 援 者 と し て そ れ ぞ れ の ス テ ッ プ を 支 援 す る 際 に ポ イ ン ト と な
る点をまとめる形で進めていきます。
新たな商品を作るにあたっては、まずは明確な商品コンセプトを設定する
必 要 が あ り ま す 。こ こ で は 、前 段 と し て 売 れ る 商 品 づ く り に 欠 か せ な い 5 つ の
観 点 を 解 説 し た う え で 、商 品 コ ン セ プ ト づ く り の 基 本 的 な 考 え 方 を 押 さ え て い
きたいと思います。
(1)売れる商品づくりに不可欠な観点
売れる商品には、以下の 5 つの共通点があると考えられます。
①モノを見たらシーンが浮かぶ
②商品の裏に物語がある
③出身地がはっきりしている、その土地ならでは!がある
④売場のイメージができている
⑤販路を意識した営業活動ができている
商 品 づ く り に あ た っ て は 、こ れ ら の 視 点 を 常 に 念 頭 に 置 い て 取 り 組 む こ と が
肝 要 で す 。商 品 コ ン セ プ ト を つ く る 段 階 だ け で な く 、商 品 開 発 を 経 て 販 路 開 拓
に至る一連のプロセスの全般にわたって、これらの視点との整合性を確認し
ながら進めることが、結果的に売れる商品づくりへの近道になると思われま
す。
次 ペ ー ジ 以 降 で 、そ れ ぞ れ の 項 目 に つ い て 、ポ イ ン ト と な る 考 え 方 を 解 説 す
るとともに、参考となる事業者の事例を紹介します。
13
中小機構・小規模事業者支援ガイドブックⅢ
①「モノを見たらシーンが浮かぶ」商品
当 然 な が ら 消 費 者 が 必 要 と し な け れ ば 商 品 は 売 れ ま せ ん し 、消 費 者 は 常 に ど
の よ う な 場 面 で 使 う の か を 想 像 し な が ら 商 品 を 選 ん で い ま す 。ま た 、そ の 視 点
は 、商 品 を 売 っ て く れ る 売 場 の バ イ ヤ ー に も 共 通 し て い ま す 。商 品 を バ イ ヤ ー
の 元 に 持 ち 込 ん だ 時 に 、「 こ の 商 品 な ら う ち の お 客 様 は こ う 使 う だ ろ う な 」 と
瞬 間 的 に イ メ ー ジ が 湧 く よ う な 商 品 で あ れ ば 、そ の 商 品 に 最 適 な 売 り 方 、売 場
で 積 極 的 に 売 っ て く れ ま す 。つ ま り 、モ ノ を 見 た ら 利 用 シ ー ン が 浮 か ぶ よ う な
商 品 で あ れ ば 、そ れ を 必 要 と す る 消 費 者 の 手 に 確 実 に 届 け ら れ 、購 入 に 至 る 可
能性が高くなります。
「 モ ノ を 見 た ら シ ー ン が 浮 か ぶ 商 品 」を つ く る た め に は 、タ ー ゲ ッ ト の 設 定
を 綿 密 に 行 う 必 要 が あ り ま す 。具 体 的 に は 、性 別 、年 代 、人 間 関 係( 身 内 、社
会 )、ラ イ フ ス タ イ ル と い っ た 観 点 か ら お 客 様 像 を イ メ ー ジ し た う え で 、
「誰が、
どのような場面で使うのか」と、お客様の立場になって考えて、想像してみ
ることが重要です。
有限会社ミマツ工芸(佐賀県神崎市千代田町)
日本最大の家具産地である大川・諸富の木工屋で、下請け受注生産のみ
の 家 具 部 品 メ ー カ ー で あ っ た ミ マ ツ 工 芸 は 、木 工 技 術 を 活 か し 、「 木 」に デ
ザイン性やファッション性という付加価値を加えたインテリア・アクセサ
リーを開発し、自社ブランド「M.SCOOP」の展開を始めた。
「M.SCOOP」ブランドでは、日々使っている大切なモノを部屋の
インテリアに変えることをコンセプトに、ターゲット層をモノにこだわる
30 代 ~ 50 代 男 性 と し て 、 眼 鏡 や 腕 時 計 を 置 く ス タ ン ド 等 を 商 品 開 発 し 提
案した。
展示会で出会った自動車メーカーから「高級車オーナー向けのカタログ
に M .S C O O P を 掲 載 し た い 」と い う
依 頼 が あ り 、最 終 的 に は 全 国 の 店 舗 で 販
売 に 至 っ た 。現 在 で は 、全 国 の セ レ ク ト
ショップや百貨店等の他数の店舗で常
設販売されている。
14
中小機構・小規模事業者支援ガイドブックⅢ
②「商品の裏に物語がある」商品
他 の 商 品 と の 差 別 化 を 図 る う え で 、買 っ た 人 が そ の 商 品 を 人 に 自 慢 し て 語 れ
る よ う な ス ト ー リ ー の 存 在 が ア ド バ ン テ ー ジ と な り ま す 。特 に 、地 域 資 源 を 活
用 し た 商 品 の 場 合 、そ も そ も 使 用 す る 資 源 の 量 に 限 り が あ っ た り 、事 業 者 自 身
の 経 営 資 源( 人 員 、設 備 、資 金 等 )の 不 足 か ら 、安 く 大 量 に 販 売 す る と い う よ
り は 、商 品 の 価 値 を 適 正 に 評 価 し て く れ る 消 費 者 に 相 応 の 値 段 で 販 売 す る と い
う傾向となりやすく、そのような消費者の共感を呼ぶようなストーリーの存
在が重要です。
「 商 品 の 裏 に 物 語 が あ る 商 品 」 を つ く る た め に は 、「 企 業 の 物 語 」 と 「 地 域
の物語」を徹底的に棚卸しすることが有効です。歴史、こだわり・思い、自
然 、 文 化 等 様 々 な 角 度 か ら 見 つ め て み ま し ょ う 。 な お 、「 あ れ も こ れ も 」 で は
お 客 様 に は 伝 わ ら な い の で 、情 報 が 出 そ ろ っ た ら 優 先 順 位 を し っ か り と つ け る
ことも重要です。
米富繊維株式会社(山形県東村山郡山辺町)
日 本 有 数 の ニ ッ ト 産 地 に 本 社 を 置 く 米 富 繊 維 は 、30 年 前 よ り オ リ ジ ナ ル
なニット生地の開発に力を入れ、色、形、大きさ、素材や質感の全く違う
糸を織りあわせる「交編(こうへん)技術」を得意としてきた。蓄積した
15,000 種 類 を 超 え る テ キ ス タ イ ル ・ ア ー カ イ ブ や 職 人 の 技 術 は 他 に は 真
似できない強みとなっていた。同社では、この強みを活かしてOEM中心
の事業形態から転換を目指し、オリジナルブランド「Coohem」の事
業化にチャレンジし、多くの苦労を重ねながらも、現在では国内外のセレ
クトショップや百貨店で展開するに至っている。
Coohem事業の責任者の大江健専務(現社長)は、セレクトショッ
プに商品を納めるにあたって、自ら現地に出向きショッ
プスタッフを集めて、Coohemブランドのストーリ
ーから話すこととしている。この草の根活動がCooh
e m ブ ラ ン ド の「 語 り 部( イ ン フ ル
エ ン サ ー )」 を 増 や し 、 ブ ラ ン ド の
真の価値をより多くの消費者に伝
播していくことにつながっている。
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中小機構・小規模事業者支援ガイドブックⅢ
③ 「 出 身 地 が はっ き り し て い る、 そ の 土 地 な らで は ! が あ る 」
商品
「 ブ ラ ン ド は 土 地 に 宿 る 」と い う 見 方 が あ り ま す 。欧 米 の 高 級 ブ ラ ン ド の ロ
ゴ を 見 る と 、多 く の 場 合 ブ ラ ン ド 名 の 下 に 小 さ く 地 名 が 入 っ て い る こ と に 気 付
く で し ょ う 。多 く の 高 級 ブ ラ ン ド は 地 域 ブ ラ ン ド と し て 出 身 地 を 明 示 す る こ と
により、ブランドに対する信頼を得ていると考えられます。
「 出 身 地 が は っ き り し て い る 、そ の 土 地 な ら で は ! が あ る 商 品 」を つ く る た
めには、ブランドに地名を入れることが基本になります。また、地名だけで
はなく、商品のネーミングやキャッチコピーにもこだわりを持つことが重要
で す 。さ ら に 、地 域 ブ ラ ン ド と し て 成 功 す れ ば 必 ず 人 が 集 ま る よ う に な り 、観
光資源としての活用も期待できます。
カワバタプリント(京都府京都市下京区)
染色産地の京都で染色加工業を営むカワバタプリントは、染料に天然色
素を使っていながら、わずかな原料で色あざやかな染色を可能とする「新
万葉染め」という染めの技法を開発し、これを活用してオリジナルのスト
ー ル を 商 品 化 し た 。「 新 万 葉 染 め 」は 、従 来 の 草 木 染 め で は 何 時 間 も か か る
ような染めの作業が短時間でできてしまう画期的な技術で、コストが削減
できるため、市場価格の半分くらいで商品が出せる強みがあるが、技術の
高さの割には商品の売れ行きは伸び悩んでいた。
そのような状況の中、国内最大級のファッション関連展示・商談会で実
施されたバイヤーとのマッチングイベントで、あるバイヤーから「商品は
非常に良いが、ブランドストーリーが欲しい。特に地域(京都)を打ち出
せる要素があれば展開したい」との一言をきっかけに、ブランド名を再検
討することとした。そして、専門家の協力を得ながら検討を進めていたと
ころ、実は3代前が「川端商店」の屋号で呉服屋を営んでいたという歴史
を 発 見 し た 。そ こ で 、ブ ラ ン ド 名 を「 京 都 川 端 商 店 」に 変 更 す る と と も に 、
地 元 京 都 で 小 売 店「 川 端 商 店 」を
開 き 、京 都 ブ ラ ン ド を 前 面 に 押 し
出 し て 展 開 し た と こ ろ 、急 速 に 注
目 を 集 め る よ う に な り 、事 業 が 大
きく進展し始めることとなった。
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中小機構・小規模事業者支援ガイドブックⅢ
④「売場のイメージができている」商品
ど ん な に 良 い 商 品 を つ く っ て も 、そ の 価 値 が き ち ん と お 客 様 に 伝 わ る よ う な
売 り 方 、売 場 で 売 ら れ て い な け れ ば 、実 際 の 購 入 に は つ な が り ま せ ん 。売 れ る
商品は、小売の現場でどうやって商品を見せるのかをあらかじめ設計して、
そ れ を 実 際 の 現 場 で 実 現 し て も ら え て い ま す 。こ の よ う に 自 分 た ち が 提 案 し た
と お り の 売 場 が 実 現 す れ ば 、自 分 た ち が 伝 え た い ス ト ー リ ー を そ の ま ま 消 費 者
へ届けることが可能となります。
「 売 場 の イ メ ー ジ が で き て い る 商 品 」を つ く る た め に は 、商 品 を バ イ ヤ ー に
売り込むときに、あらかじめ商品の見せ方の分かる資料(図面やパース、す
でにある店舗の写真等)を用意しておく必要があります。この場合、商品の
見 せ 方 や 売 場 づ く り に 関 す る 知 識 が 必 要 と な り ま す の で 、専 門 家 の 協 力 を 得 て
取り組んだ方がよい可能性があります。ただし、専門家を活用する場合でも、
商 品 コ ン セ プ ト や ス ト ー リ ー を し っ か り と 伝 え た う え で 、自 分 た ち の 思 い が き
ちんと反映されたものとなるように意識することが重要です。
有限会社幸伸食品(福井県吉田郡永平寺町)
福井県永平寺町で豆腐・ごまどうふ・惣菜等の製造を手掛ける幸伸食品
は、地元で豆腐創作料理を楽しめるレストラン・アンテナショップ「永平
寺禅どうふの郷
幸 家 ( さ ち や )」 も 運 営 し 、「 幸 家 」 の ブ ラ ン ド で 多 く の
オリジナル商品を展開している。
その幸伸食品では、百貨店にお中元ギフト用の商品提案を行うにあたっ
て、実際のお中元売場をイメージした売場什器
を作り、その図面や写真とともに商品をバイヤ
ーに提案を行った。その結果、大手百貨店のお
中元売場で特設コーナーを構えることができ、
目標を大幅に上回る売上を達成した。
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中小機構・小規模事業者支援ガイドブックⅢ
⑤「販路を意識した営業活動ができている」商品
タ ー ゲ ッ ト 設 定 で 綿 密 に お 客 様 を イ メ ー ジ し た と し て も 、そ の お 客 様 が 実 際
に 買 い 物 を す る 売 場 に 商 品 が 置 か れ な い こ と に は 仕 方 が あ り ま せ ん 。し か し な
が ら 、商 品 に コ ン セ プ ト が あ る の と 同 じ く 、販 路 で あ る 小 売 店 等 に も そ れ ぞ れ
の コ ン セ プ ト が あ る た め 、そ の コ ン セ プ ト に 適 合 し た 商 品 で な け れ ば 取 引 に つ
ながらないことも多いでしょう。売れる商品は、最終的なお客様だけでなく、
販 路 と し て タ ー ゲ ッ ト と な る 小 売 店 等 の 視 点 を 踏 ま え た 営 業 活 動 で 、狙 っ た 売
場を確保しています。
「 販 路 を 意 識 し た 営 業 活 動 が で き て い る 商 品 」を つ く る た め に は 、商 品 づ く
りの企画段階から、販路としてターゲットとなる先も想定しておくことが有
効です。また、商品開発では、ターゲットとなる販路先の商品計画や販売計
画を見越したスケジュール設定が重要となります。
株式会社オーラテック(福岡県久留米市津福本町)
超 微 細 気 泡 ( 10~ 20 マ イ ク ロ メ ー ト ル ) を 作 り 出 す 独 自 技 術 を 利 用 し
た環境関連機器やシャワーヘッドを開発・製造するオーラテックは、同技
術の応用によって界面活性剤を使わずに水と油を安定混合させたローショ
ンの開発に成功した。そこで、同社では、地元・久留米市の地域資源で日
本一の苗木生産量を誇るツバキに着目し、久留米産のツバキ油を原料とし
たヘアケアローション等を商品化した。
本商品は、安全・安心を求める自然派志向の顧客や化学成分に敏感な女
性層を想定顧客としていることから、想定顧客との接点が見込まれる旅
館・ホテルを販路としての有望ターゲットの一つと設定した。具体的な営
業活動では、展示会で興味をもってくれた旅館等に対して、大浴場の女性
用パウダールーム向けに試供品を商品説明POPとともに提供し、宿泊客
に実際に使って効果を実感してもらう戦
略 を と っ た 。試 供 品 の 設 置 と と も に 、旅 館
の売店やフロント横で販売してもらった
と こ ろ 、宿 泊 中 に 使 用 し た 顧 客 に よ る 売 れ
行 き が 好 調 で あ り 、事 業 拡 大 に 大 き く 弾 み
がつく状況となっている。
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中小機構・小規模事業者支援ガイドブックⅢ
(2)商品アイデアの創出
売 れ る 商 品 づ く り に 不 可 欠 な 観 点 を 念 頭 に 置 い た う え で 、こ こ か ら は 、具 体
的 な 商 品 コ ン セ プ ト づ く り の 進 め 方 を 理 解 し て い き ま し ょ う 。ま ず は 、商 品 の
アイデアをどのように生み出すのか、ということについて解説します。
①アイデアは組合せから生まれる
ア イ デ ア は 何 も な い と こ ろ か ら 生 み 出 す 必 要 が あ る も の で は な く 、既 存 の 要
素 の 組 合 せ に よ っ て 生 み 出 さ れ る こ と も 多 く 、も の ご と を 関 連 付 け る 能 力 が ア
イデアを生み出すと言われています。
地 域 資 源 は 特 定 の 地 域 に 存 在 す る 特 徴 的 な も の で す の で 、ア イ デ ア を 生 み 出
す た め の 組 合 せ の 素 材 と し て は 非 常 に 有 効 な も の と 言 え ま す 。組 合 せ の 一 つ の
候 補 が 用 意 で き た 状 態 で ア イ デ ア を 考 え ら れ る 訳 で あ り 、む し ろ 積 極 的 に 活 用
しないと宝の持ち腐れになってしまうというように意識すべきでしょう。
②シーズ発想とニーズ発想
ア イ デ ア を 発 想 す る ア プ ロ ー チ に は 、シ ー ズ 発 想 と ニ ー ズ 発 想 の 大 き く 2 つ
の 方 法 が あ り ま す 。 シ ー ズ 発 想 の 要 素 と し て は 、「 企 業 の 物 語 」 や 「 地 域 の 物
語 」を 棚 卸 し し た 結 果 洗 い 出 さ れ た も の が 有 効 と な り ま す 。ニ ー ズ 発 想 の 要 素
と し て は 、消 費 者 や 地 域 の ニ ー ズ を 想 定 し た も の と な り 、そ こ に は す で に 顕 在
化しているものもあれば、潜在的なものもあると考える必要があります。
■ シーズとニーズのヒント
※「売れる商品はこう
し て 創る -6次 産
業化・農商工等連
携というビジネス
モ デ ル -」
(後久博)
を元に作成
19
中小機構・小規模事業者支援ガイドブックⅢ
③シーズとニーズを重ねる
売 れ る 商 品 ア イ デ ア を 発 想 す る た め に は 、ど ち ら か 一 方 の 発 想 に よ る の で は
な く 、両 方 の ア プ ロ ー チ を 何 度 も 行 き 来 し な が ら 練 り 上 げ て い く こ と が 重 要 と
な り ま す 。理 想 的 な の は 、自 社 を 含 め た 地 域 の 物 語( シ ー ズ )と 消 費 者 の 利 用
シーン(ニーズ)の2つの背景を満たすひとつの商品を開発することです。
中 小・小 規 模 事 業 者 で は 、特 定 の 原 材 料 や 素 材 あ り き で あ っ た り 、自 社 の 技
術 で つ く れ る モ ノ は 何 か と い っ た よ う に 、シ ー ズ 発 想 を 元 に し た プ ロ ダ ク ト ア
ウ ト 型 の 商 品 開 発 に な り や す い 傾 向 が あ り ま す 。し か し な が ら 、消 費 者 に 受 け
入れられる売れる商品をつくるためには、ニーズ発想を元にしたマーケット
イン型のアプローチが不可欠です。
支 援 者 と し て は 、「 そ の 商 品 を お 金 を 払 っ て で も 欲 し い と い う 人 が 何 人 思 い
浮 か び ま す か ? 」と い っ た 問 い か け や 、対 象 と な る マ ー ケ ッ ト の 動 向 等 の 情 報
を 提 供 し た り し て 、事 業 者 自 身 に ニ ー ズ の 重 要 性 を 気 づ い て も ら い 、シ ー ズ 発
想をニーズ発想に引き込んでいくような関わり方が望まれます。
20
中小機構・小規模事業者支援ガイドブックⅢ
(3)商品コンセプトの設定
商 品 コ ン セ プ ト と は 、商 品 ア イ デ ア を 発 展 さ せ 、こ の 商 品 は ど の よ う な も の
な の か 、誰 が 使 う の か 、ど の よ う な シ ー ン で 使 用 さ れ る の か 、メ リ ッ ト は 何 か
な ど を 言 葉 や 絵 で 表 現 し た も の で す 。商 品 コ ン セ プ ト は 、商 品 を つ く っ て 実 際
に販売していく流れのなかで、全ての活動の裏付けであり、拠り所となりま
す。
商 品 コ ン セ プ ト が 明 確 に な る こ と に よ っ て 、自 ず と 、タ ー ゲ ッ ト と な る お 客
様 、 つ く る べ き 商 品 ( パ ッ ケ ー ジ ン グ 、 デ ザ イ ン 、 量 、 価 格 な ど )、 販 売 す る
場所やプロモーションの仕方、流通の姿が見えるようになります。
商 品 コ ン セ プ ト を 考 え る 場 合 、5 W 2 H で 考 え る と 分 か り や す く 、最 初 に 考
えておくべき基本的な要素をカバーすることができます。
誰に(Who)
ターゲットとするお客様
・ 性 別 、 年 代 、 人 間 関 係 ( 身 内 、 社 会 )、 ラ イ
フスタイル等の観点から具体的にイメージ
何を(What)
具 体 的 な モ ノ ・ コ ト 〈 体 験 〉・ サ ー ビ ス と 、
それを消費することで満たされる顧客ニーズ
・どのようなニーズや欲求を満たすのか
・どのような便益を与えるのか
いつ(When)
利用シーン
どこで(Where)
・ど の よ う な 場 面 で 、ど ん な 目 的 で 、ど の よ う
なぜ(Why)
に使うのか
どのように(How)
いくら(How much) 引き換えに支払われる対価
■ ターゲット設定のヒント
タ ー ゲ ッ ト を 検 討 し 、 絞 り 込 ん で い く 際 の ツ ー ル と し て 、「 お 客 様 シ ー ト 」
を 掲 載 し ま す 。本 シ ー ト の よ う に 、タ ー ゲ ッ ト 設 定 に あ た っ て は 、対 象 と な る
お客様や利用シーンを合わせて考えていくとイメージしやすいのではないで
しょうか。また、本シートのとおり、商品の購入者と使用者が同じとは限ら
ない(例:贈答品)ということも重要な観点となります。
21
中小機構・小規模事業者支援ガイドブックⅢ
お客様シート
さらに、同じ商品であっても、ターゲットや利用シーンによって、様々な
提案の可能性があるという観点も重要です。そのような観点で参考となる事
例 と し て 、福 井 県 永 平 寺 町 で 豆 腐 創 作 料 理 を 手 掛 け る「 幸 家 」が 永 平 寺 ゴ マ 豆
腐について整理された資料を掲載しますので、是非参考としてみて下さい。
「 顧 客 タ ー ゲ ッ ト の 世 代 ( 及 び 各 々 の 関 心 事 )」 と 「 利 用 シ ー ン 」 の
組 み 合 わ せ で 考 え る こ と で 、 11 象 限 の 提 案 内 容 を 発 想 し て い ま す
22
中小機構・小規模事業者支援ガイドブックⅢ
■ コンセプトシートの作成
商品コンセプトを「見える化」するため、コンセプトシートを作成しまし
ょ う 。5 W 2 H の 観 点 に 加 え 、そ れ に 関 連 し て 見 え て く る「 タ ー ゲ ッ ト と す る
売場」や「想定される流通」等の情報も整理しておくとよいでしょう。
な お 、コ ン セ プ ト シ ー ト 自 体 は ポ イ ン ト の み を 押 さ え た 簡 潔 な 資 料 で 構 い ま
せ ん が 、商 品 開 発 が 完 了 し 販 路 開 拓 に 取 り 組 む 段 階 で は 詳 細 な 商 品 シ ー ト が 必
要となります。そこで、コンセプトシートの作成段階から、将来の商品シー
トの作成を念頭に置きながら商品づくりを進めることをお勧めします。商品
シ ー ト に 落 と し 込 む こ と を 想 定 し た 時 に 、大 き な 障 害 と な る よ う な こ と が な い
かを検討し、事前に手を打っておく必要があると考えます。
商 品 シ ー ト は 、商 品 の 分 野 別 に 記 載 項 目 が 異 な り ま す 。食 品 分 野 で は 、農 林
水 産 省 が 食 品 事 業 者 や 関 連 事 業 者 と 協 働 で 活 動 し て い る フ ー ド・コ ミ ュ ニ ケ ー
シ ョ ン ・ プ ロ ジ ェ ク ト ( F C P ) か ら 、「 F C P 展 示 会 ・ 商 談 会 シ ー ト 」 が 公
表 さ れ て い ま す 。そ の 他 の 分 野 に つ い て は 、様 式 集 に 一 例 を 掲 載 し て お り ま す
ので、ご活用ください。
「コンセプトシート」作成シート
コンセプトシート ◆商品コンセプト
◆基本構想
◆商品のコンセプトを、分かりやすく簡潔な言
葉で表現しましょう
◆「ターゲット・利用シーン」、「得られる便益」、
「その理由」から発想してみましょう
(顧客ターゲット)
(利用シーン)
◆性別、年代、人間関係(身内、社会)、ライフ ◆「どのような場面で、どんな目的で、どのよう
スタイル等の観点から具体的なイメージを明
に使うのか」、利用しているシーンが具体的に
確に記載しましょう
イメージできるように記載しましょう
◆商品イメージ
◆イラストや商品がイメージできる説明文等を
記載しましょう
(商品アイデア)
(メリット、既存商品との違い)
◆具体的な商品の内容や特徴を分かりやすく
記載しましょう
◆アイデアの元となったシーズやニーズと商
品アイデアとの関係性(ストーリー)についても
言語化しておきましょう
◆機能的なメリットと情緒的なメリットの両方を
記載しましょう。お客様の立場で表現されてい
ることが重要です
◆既存商品や競合商品との差別化のポイント
も整理しましょう
(売り方)
◆ターゲットとする販路を明確化します。顧客
ターゲットとの接点をイメージしましょう
◆「商品をどう見せるか」、売場のイメージや
商品の見せ方も具体的にイメージしましょう
◆目標価格も検討しましょう
◆狙い(目的)
◆企画背景
◆見通し(目標)
◆本商品を開発することによっ
て何を目指しているのかを明確
化しておきましょう
◆自社、消費者、社会といった
観点で整理しましょう
◆本企画が生まれた経緯や、裏
付けとなる市場環境、トレンド情
報、調査結果等のバックデータ
を整理しておきましょう
◆どのくらいの売上(販売数量
×目標価格)を目指すのかをイ
メージしておきましょう
◆大まかな開発スケジュールや
発売時期等も想定しましょう
23
◆課題
◆商品開発において課題となる
ポイントも整理しておきましょう
中小機構・小規模事業者支援ガイドブックⅢ
商品シート
<食品用>
<非 食 品 用 >
●様式集に掲載
商品シート№1
20●●年 月 日 時点
企業情報
フリガナ
社名
フリガナ
〒
住所
電話
FAX
E-Mail
HP
フリガナ
フリガナ
代表者名
資本金
設立
損益計算表
(直近3期分)
(役職・氏名)
担当者名
万円
年商
西暦 年 月 日
(役職・氏名)
万円
事業内容
第 期 ( ~ )
売上高
万円
万円
経常利益
万円
万円
消費者対応
その他品質管理・対策
従業員数
(業種)
第 期 ( ~ )
第 期 ( ~ )
万円
万円
検査システム
□自社内 □専門機関委託
対応マニュアル
□あり
□なし
対策システム
□自社管理 □専門機関委託
PL保険加入
□あり
□なし
主な対策内容
製造工程についてのアピールポイント
個別商品情報
フリガナ
JANコード
商品カテゴリー
商品名
希望小売
価格
円(税込)
素材
標準卸
価格
原産地
(原材料)
円(税込)
出荷最小
単位
出荷最大
単位
ターゲット(年齢・
性別等)
納期
日
①商品画像
当該様式への商品画像の添付が
難しい場合は、別紙にて添付願います。
その際、別紙に①と記載下さい。
商品特性
コンセプト
(100字程度)
場所
展開
実績
%
生産地
(最終産地)
カラー
サイズ
ロット
掛け率
店舗・通販
Web・他
店舗・通販
Web・他
店舗・通販
Web・他
期間
年 月 日 ~ 年 月 日
( 日間)
年 月 日 ~ 年 月 日
( 日間)
年 月 日 ~ 年 月 日
( 日間)
売上実績
円(税込)
円(税込)
円(税込)
●FCP展示会・商談会シート
【 フ ー ド ・ コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン ・ プ ロ ジ ェ ク ト ( F C P )】
http://www.food-communication-project.jp/index.html
⇒ 作 成 の 手 引 き や 項 目 別 補 足 シ ー ト も あ り ま す の で 、内 容 を よ く 確 認 し
て記入しましょう。
■ ベ ン チ マ ー ク 商 品 の 設 定 の ス スメ
商品コンセプトが見えてきたら、自社が目指している商品と同じコンセプ
ト・同 じ 価 格 帯 で す で に 市 場 で 売 れ て い る 商 品 を 探 し 出 し 、ベ ン チ マ ー ク 商 品
と し て 徹 底 的 に 研 究 し て 商 品 開 発 に 活 か す こ と を お 勧 め し ま す 。往 々 に し て 、
お ぼ ろ げ な 商 品 イ メ ー ジ は あ っ て も 、具 体 的 に 作 ろ う と す る と 分 か ら な い こ と
ば か り で 進 ま な い と い う こ と が 起 こ り 得 ま す 。お 手 本 と な る 商 品 を 見 つ け て イ
メ ー ジ を 明 確 化 す る と と も に 徹 底 し て 学 び 取 る こ と で 、ぶ れ ず に ス ピ ー ド 感 の
ある商品づくりが可能となります。
ま た 、実 現 可 能 性 は 低 い か も し れ ま せ ん が 、ベ ン チ マ ー ク 商 品 を 作 っ て い る
会 社 に 直 接 指 導 を 仰 ぐ こ と に チ ャ レ ン ジ し て み る の も 一 手 で す 。地 域 が 離 れ て
い て 直 接 競 合 し な い よ う で あ れ ば 可 能 性 は あ る で し ょ う 。実 際 に 、地 元 の 地 域
資 源 の 食 材 を 使 っ た お 菓 子 づ く り に チ ャ レ ン ジ し た 事 業 者 が 、他 地 域 で 同 じ コ
ン セ プ ト 、ビ ジ ネ ス ス キ ー ム で 成 功 し て い る 中 堅 企 業 を 見 つ け 出 し 、指 導 を お
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中小機構・小規模事業者支援ガイドブックⅢ
願 い し た と こ ろ 、先 方 の オ ー ナ ー の 共 感 を 得 ら れ 、基 本 的 な 考 え 方 か ら 商 品 コ
ン セ プ ト 、製 造 工 程 、販 売 の や り 方 ま で 全 て を 教 え て も ら え た 事 例 が あ り ま す 。
このような取り組みだけで売れる商品づくりに成功する訳ではありません
が 、経 営 資 源 が 豊 富 で な い 中 小・小 規 模 事 業 者 に と っ て 非 常 に 有 効 な 手 法 の ひ
とつと考えられます。
■ 商品コンセプトの評価
商 品 コ ン セ プ ト を 設 定 し た 後 は 、環 境 変 化 に よ っ て 変 更 を 余 儀 な く さ れ る 等
の 事 情 が な い 限 り 、基 本 的 に は 変 更 せ ず に 開 発 を 進 め て い く こ と が 重 要 と な り
ま す 。こ の た め 、商 品 コ ン セ プ ト を 確 定 す る 段 階 で 、コ ン セ プ ト の 優 位 性 を 十
分に評価しておくことが必要となります。
□ 評価項目
商品コンセプトの採否を評価するうえでの具体的な評価の視点とし
ては、以下のような評価項目が考えられます。
商品コンセプトの主な評価項目
自社の将来展望・ビジョンと整合性があるか
ターゲット及び利用シーンの設定とコンセプトが明確か
消費者の共感を呼ぶようなストーリー性があるか
地域(資源)の特性を活かした商品となっているか
ターゲットとする売場や想定される流通の確保ができるか
新商品開発の開発課題は明確か
製造・加工に必要な原材料等が確保できるか
自社又は協力企業で製造・加工が実現できるか
ある程度のターゲット数/市場規模(成長性)が見込めるか
新規性のある商品か、競合商品を把握し優位性を説明できるか
事業を継続するだけの経済性・採算性が見込めるか
製品化のための新たな設備投資は重くないか、外部委託可能か
□ 検証調査の実施
商 品 コ ン セ プ ト に 関 し て 、想 定 す る タ ー ゲ ッ ト 層 の 反 応 や 意 識 を 検 証
す る コ ン セ プ ト 調 査 を 実 施 し ま し ょ う 。コ ン セ プ ト 調 査 で は 、グ ル ー プ
イ ン タ ビ ュ ー や 面 接 調 査 な ど で 把 握 す る 方 法 が 有 効 で す 。こ の 段 階 で は 、
商品コンセプトを言葉やイメージで伝えたもので調査することとなり
25
中小機構・小規模事業者支援ガイドブックⅢ
ま す が 、想 定 す る タ ー ゲ ッ ト 層 の 関 心 度 合 や 反 応 を つ か ん だ り 、追 加 す
べき機能や修正点等を把握するには非常に有効な手段となります。
社外モニターの活用やインターネット調査などで実施する方法のほ
か 、簡 易 的 な や り 方 と し て 、想 定 す る タ ー ゲ ッ ト 層 に 近 い 従 業 員 や 従 業
員の家族などに依頼して行う方法があります。
コ ン セ プ ト 調 査 は 、商 品 開 発 の 方 向 性 や 基 本 方 針 を 決 め る た め の も の
で す の で 、目 的 を 明 確 に し た う え で 実 施 し 、必 要 が あ れ ば 何 度 で も 商 品
コンセプトを練り直すことが重要です。
コンセプト調査の調査内容(例)
商品に関心がありそうか、欲しいと思っているか
誰が関心を示しているか、ターゲットとなるのは誰か
どのような使い方、機会を想定しているか
どのような効果、効用を期待しているか
商品に関連して、現状で困っているようなことはありそうか
ま ず は 、支 援 者 と し て 様 々 な 支 援 先 の い ろ い ろ な 商 品 に 接 し て い る 、あ る い
は 自 ら が 一 生 活 者 と し て の 肌 感 覚 を 大 事 に し て 、「 自 分 だ っ た ら そ の 商 品 を 買
い た い と 思 う か ど う か 」と い う 視 点 で 考 え る こ と が 有 効 で す 。事 業 者 は ど う し
て も 自 社 の こ と と な る と 、客 観 的 に 買 い 手 の 立 場 で 考 え る こ と が 難 し く な り ま
す 。「 自 分 は な ぜ 買 い た い と 思 う の か 」、「 自 分 が 買 い た い と 思 わ な い の で あ れ
ば そ れ は な ぜ か 」、「 自 分 が 想 定 さ れ る タ ー ゲ ッ ト で な け れ ば 誰 な ら 買 い そ う
か 」、
「 ど こ で な ら 売 れ そ う か 」、
「 い く ら 位 な ら 売 れ そ う か 」と い う よ う に 掘 り
下げて、それをもとに事業者と意見交換を進めましょう。
ま た 、商 品 コ ン セ プ ト の 検 証 調 査 の 際 、支 援 機 関 の 関 係 者 等 で タ ー ゲ ッ ト 層
に マ ッ チ す る 人 を 評 価 者 と し て 集 め る よ う な 協 力 も 、大 い に 役 立 つ で し ょ う 。
一 方 で 、経 営 資 源 の 豊 富 な 大 手 企 業 の 商 品 開 発 で は 、綿 密 な 市 場 調 査 を 行 っ
た う え で 、市 場 を 細 分 化 し て タ ー ゲ ッ ト と す る 市 場 の 設 定 や 競 合 商 品 と の 位 置
づ け を 明 確 化 し て 取 り 組 ん で い ま す 。こ の よ う な 手 法 は 、中 小・小 規 模 事 業 者
で は 現 実 的 に マ ネ す る の は 難 し く 、多 く は そ の プ ロ セ ス を 経 ず に 商 品 開 発 を 進
めているのが現実でしょう。しかしながら、支援者としては、そのようなマ
ーケティングの視点も持ちつつ、個々の事業者に応じた商品開発のサポート
にあたっていく姿勢が必要と考えられます。
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中小機構・小規模事業者支援ガイドブックⅢ
3.商品開発・評価・改良
商 品 コ ン セ プ ト が 明 確 と な っ た ら 、い よ い よ 具 体 的 な 商 品 を 開 発 す る 段 階 と
なります。ここでは、試作品を開発して具体的なカタチしていくところから、
パ ッ ケ ー ジ デ ザ イ ン や ネ ー ミ ン グ 、価 格 の 設 定 、流 通 チ ャ ネ ル や プ ロ モ ー シ ョ
ン 戦 略 の 検 討 に よ り 、商 品 と し て 販 売 で き る 状 況 に 至 る ま で の 流 れ を 押 さ え て
いきます。
(1)商品開発計画書の作成
具 体 的 に 商 品 開 発 に 着 手 す る 前 に 、コ ン セ プ ト シ ー ト を ベ ー ス と し て 、商 品
開発の全体像を関係者が具体的に認識できるように計画書に落とし込んでお
く こ と が 重 要 で す 。具 体 的 に 計 画 書 と し て 落 と し 込 ん で お く 必 要 が あ る 項 目 と
主な内容は下表のとおりです。
開発基本計画
コンセプトシートの内容をベースとして、商品開発の基本的な
企画内容と実行計画をとりまとめましょう
5W2Hの形式でポイントを整理するとよいでしょう
主要項目を具体化
何を(What)
:目的、目標、商品イメージ、商品の主要条件
なぜ(Why)
:開発の背景(企画の背景にある情報、商品の位置づけ)
誰が(Who)
:開発プロジェクトのリーダー、メンバー
どこで(Where) :開発を手掛ける部署等、協働する事業者等の関係者
いつ(When)
:最終的な開発完了の時期、進捗確認用の開発目標と時期
どのように(How) :開発体制(社内、外部)開発項目、開発課題・対応策
い く ら で ( How much): 開 発 コ ス ト 、 投 資 ・ 回 収 の 見 通 し
実施体制計画
組 織 図 形 式 で 、 リ ー ダ ー ,メ ン バ ー ,役 割 等 を 明 確 化 し ま し ょ う
進捗確認会議等の位置付けも記載し、開発プロジェクト全体の
実施体制が俯瞰できるとよいでしょう
協働する事業者等の関係者があれば、その点も整理しましょう
開発日程計画
商品開発の全体のスケジュール感をつかめる中長期のスケジ
ュールと、具体的な作業と担当者を明示した短期的なスケジュ
ールを用意するとよいでしょう
定期的な開発目標や進捗確認会議等の主要イベントも落とし
込みましょう
商品仕様・
品質計画
商品の開発目標、商品仕様・目標品質、要素技術、開発項目、
開発課題・対応策、目標原価等を整理しましょう
具体的な項目は商品の種類等によって異なります
商品シートの様式も活用するとよいでしょう
開発コスト
計画
調査や商品化の費用を含めて作成するとともに、目標売上・回
収見通しも反映しましょう
推定投入人員の推移など金額根拠も記録しましょう
投資計画・
資金計画
過剰投資や資金面での支障が生じないように、あ わせて投資計
画や資金計画も作成しておきましょう
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中小機構・小規模事業者支援ガイドブックⅢ
な お 、「 地 域 活 性 化 の た め の 面 的 支 援 」 調 査 研 究 報 告 書 ( 中 小 機 構 ) の 附 属
資 料 と し て 、一 部 の 具 体 的 な 記 入 シ ー ト が 掲 載 さ れ て い ま す の で 、併 せ て ご 活
用ください。
●「地域活性化のための面的支援」調査研究報告書【中小機構】
http://www.smrj.go.jp/keiei/chiikiryoku/095626.html
⇒附属資料の「地域活性化計画シート」に一部関係する様式が掲載
ま た 、商 品 開 発 計 画 書 の 作 成 と 併 せ て 、こ の 段 階 で 、
「 Ⅱ .1 .
( 3 )現 状 の
ビ ジ ネ ス ス キ ー ム の 「 見 え る 化 」」 で 紹 介 し た 「 ビ ジ ネ ス ス キ ー ム 図 」 を 新 商
品 を 含 め た 形 で 完 成 さ せ て お く こ と で 、事 業 と し て の 全 体 像 や 課 題 等 を 捉 え な
がら取り組むことができます。
【 参 考 】 Ⅱ . 1 .( 3 ) の 記 入 例 で 新 商 品 展 開 を 具 体 化 し た イ メ ー ジ
新商品展開を具体化
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中小機構・小規模事業者支援ガイドブックⅢ
一 般 的 に 、支 援 者 が 商 品 開 発 行 為 そ の も の を 支 援 す る こ と は 困 難 で あ り 、商
品開発の大まかなステップを理解したうえで、商品開発の進捗管理のサポー
トや外部専門機関の紹介・橋渡し、各種専門家の派遣等の側面支援が中心と
な り ま す 。そ の 支 援 活 動 の 前 提 と し て も 、こ の 段 階 で 商 品 開 発 の 全 体 像 を 計 画
書 に 落 と し 込 ん で お い て も ら う 必 要 が あ り ま す 。中 小・小 規 模 事 業 者 で は 計 画
書として書類を作成すること自体に不慣れなケースも多いと考えられますの
で 、事 業 者 の 状 況 を 踏 ま え つ つ も 最 低 限 必 要 な 情 報 は 文 書 化 し て お く よ う サ ポ
ートしましょう。
ま た 、中 小・小 規 模 事 業 者 の 商 品 開 発 は 、特 定 の 個 人 の 能 力 に 頼 る 部 分 が 大
きいと考えられますので、属人的なスキル・ノウハウ・経験を組織として共
有できる仕組みづくりをサポートすることは、支援者として大きな価値のあ
る 支 援 と な り ま す 。こ の 仕 組 み づ く り の サ ポ ー ト は 、決 し て 難 し い も の で あ る
必 要 は な く 、ま ず は 節 目 ご と に 進 捗 報 告 の 会 議 を 設 定 し て も ら い 、① 商 品 開 発
の 目 的 と 目 標 の 再 認 識 、② 計 画 に 対 す る 成 果 と 課 題・対 応 策 の 報 告 、③ 次 回 ま
で の 活 動 と 役 割 分 担 の 明 確 化 が 毎 回 実 施 さ れ る よ う 、オ ブ ザ ー バ ー と し て 側 面
支援するような活動で十分に効果が見込めます。
支援者として同じ事業者を商品開発の度ごとに毎回支援し続けることは難
しく、事業者自身が自立して取り組めるように導いていくことも重要です。
上 記 の よ う な 組 織 と し て の 仕 組 み づ く り の サ ポ ー ト に よ っ て 、い ず れ 支 援 者 の
サポートがなくなっても、経営者の考えが従業員にきちんと伝わるとともに、
従 業 員 の な か で 商 品 開 発 を リ ー ド し て い け る よ う な 人 材 が 育 ち 、組 織 的 に 取 り
組めるような体制に近づけるものと期待できます。
(2)試作品開発
商 品 コ ン セ プ ト に 基 づ い て 試 作 品 を 製 作 し 、モ ノ と し て 見 え る 形 に す る こ と
で 、言 葉・イ メ ー ジ の 状 態 で あ る コ ン セ プ ト の 検 証 を 直 接 行 う こ と が で き ま す 。
開 発 に あ た っ て は 、す べ て を 自 社 で ま か な う こ と に こ だ わ る 必 要 は な く 、協 力
企業など外部との連携も有効に活用しながら開発を進めるような柔軟な姿勢
が 必 要 で す 。ま た 、こ れ ま で 作 れ な か っ た モ ノ を 作 れ る よ う に 克 服 す る こ と と
併せて、作りやすいモノを作るという発想も大事です。
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中小機構・小規模事業者支援ガイドブックⅢ
具体的なモノとして形にしていくなかで、どのくらいの原価がかかるのか、
原材料や素材の調達に支障を来さないかといった点も想定しやすくなります。
お 客 様 に 受 け 入 れ ら れ る 価 格 を 実 現 す る た め に も 、競 合 商 品 と の 競 争 力 を 確 保
するためにもコストを低くすることが不可欠ですが、原価の大部分は開発段
階 で 決 ま る と 言 わ れ て お り 、商 品 化 後 に 原 価 低 減 を 図 る こ と に は 限 界 が あ り ま
す 。こ の 段 階 で 冷 静 に 原 価 低 減 に 取 り 組 ん で お く こ と が 、の ち の 事 業 化 の 成 功
の鍵となる可能性があります。
さ ら に 、原 材 料 や 素 材 の 調 達 に つ い て も 、限 ら れ た 地 域 資 源 を 活 用 す る 場 合
は事業化の支障とならないかどうか十分に気を配る必要があります。
■ 他事業者等との連携
ビ ジ ネ ス ス キ ー ム 図 を 作 成 す る 過 程 で も 見 え て く る 部 分 だ と 思 い ま す が 、商
品 づ く り は 自 社 だ け で す べ て を 完 結 す る こ と は 不 可 能 で あ り 、原 材 料 や 部 品 等
の 生 産・調 達 か ら 、自 社 で は 出 来 な い 開 発 や 加 工 な ど 、協 力 関 係 に あ る 他 の 事
業 者 等 と の 連 携 体 制 を し っ か り と 構 築 す る 必 要 が あ り ま す 。こ の た め 、将 来 の
商 品 化・事 業 化 を 見 越 し て 、試 作 段 階 か ら 他 事 業 者 等 と の 連 携 づ く り を 進 め て
い く 必 要 が あ り ま す 。そ し て 、連 携 で 何 よ り も 大 切 な こ と は 、双 方 に メ リ ッ ト
がある形で「Win-Win」の関係を長期的に築くことです。
他事業者等との連携で留意すべき事項
生産者との連携
原材料や素材としての地域資源の調達が十分に行えない
ために事業化に支障を来すケースはよく見受けられます。
単 な る 仕 入 先 と し て で は な く 、地 域 資 源 を 活 か し た 商 品 開
発 へ の 思 い を 共 有 し 、緊 密 な 協 力 関 係 を 構 築 し て い く 必 要
が あ り ま す 。ま た 、一 方 で 、複 数 の 仕 入 れ ル ー ト を 確 保 す
るなど、調達リスクへの備えも不可欠となります。
加工業者との連携
技術や設備の関係で自社では出来ない加工等の工程を外
部委託する必要がありますが、事業化に向けてはこれらの
加工業者との協力関係をしっかりと構築する必要があり
ます。そもそも該当する加工業者の把握(県内・県外)か
ら始まり、具体的にどのような形で連携するのかを十分に
検討する必要があります。
流 通 業 者・地 元 メ デ ィ
ア等との連携
あらかじめ一定の販路を押さえた形で商品開発に取り組
むことができれば、大きなアドバンテージになりますの
で、小売店や卸問屋、飲食店等とのコラボレーションによ
る商品開発やパートナーとしての連携の可能性を模索す
ることも有効な取り組みと言えます。同様に、地元メディ
アと連携した取り組みなども商品評価やプロモーション
の観点で有効となり得ます。
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中小機構・小規模事業者支援ガイドブックⅢ
■ 外部専門機関の活用
商 品 開 発 に あ た っ て は 、全 国 各 地 の 地 方 自 治 体 が 設 置 し 、技 術 相 談 、依 頼 試
験・分 析 、機 器・設 備 利 用 、受 託・共 同 研 究 な ど の 技 術 的 な 支 援 を 受 け る こ と
が で き る 公 設 試 験 研 究 機 関 ( 略 称 : 公 設 試 [ こ う せ つ し ]) を 活 用 す る こ と が
有 効 で す 。ま た 、食 品 関 連 の 事 業 の 場 合 は 、施 設 を 所 管 す る 保 健 所 の 営 業 許 可
が 必 要 に な る こ と が あ る な ど に 留 意 す る 必 要 が あ る た め 、逆 に 保 健 所 を 積 極 的
に活用して前広に相談するとよいでしょう。
外部専門機関に関して参考となるサイト
●全国公設試験研究機関リンク集【産業技術総合研究所】
https://unit.aist.go.jp/rcpd/ci/wholesgk/link/kousetsushi/kousetsushi.html
⇒工業技術センター等の名称で設置されている全国の公設試験研究機関の一覧が
掲載されています
地域技術の先導的研究機関として、先端的研究や製造業の技術支援を実施して
います。各種機器の利用、官能評価や成分分析の依頼等が可能です
●食品営業はじめてナビ【東京都福祉保健局】
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shokuhin/eigyounavi/
⇒ 新 た に 食 品 に 関 す る 営 業 を 始 め る 事 業 者 向 け に 、知 っ て お き た い ポ イ ン ト 等 を 分
かりやすく解説しています
た だ し 、本 サ イ ト の 情 報 は 、東 京 都 内 で 食 品 を 扱 う 営 業 を 始 め る 事 業 者 を 対 象 に
し た も の で す の で 、あ く ま で も 参 考 と し て の 利 用 に と ど め て く だ さ い 。実 際 の 相
談は、施設を所管する保健所に問い合わせてください
■ 専門家の活用
商 品 開 発 か ら 販 路 開 拓 に 至 る ま で 、商 品 分 野 や 事 業 の 特 性 に 応 じ て 、様 々 な
専門家の助言をもとに取り組みを進めているケースはよくあります。
(地域資源を活用した事業で専門家を活用するケースの例)
・地元の食材を使った食品のレシピ開発に料理研究家やシェフを活用
・ターゲットに合わせた商品のパッケージデザインにデザイナーを活用
・商品化に向けた市場調査や商品評価に民間専門会社を活用
・ブランドを統一し商品をシリーズ化する戦略立案に専門家を活用
・商標登録に関して弁理士のアドバイスを受ける
等
一 口 に 専 門 家 と 言 っ て も 、弁 護 士 、弁 理 士 、中 小 企 業 診 断 士 そ の 他 の 公 的 資
格 を 有 す る 専 門 家 も い れ ば 、業 界 等 で 実 績 を 積 ん で 独 立 し た よ う な 専 門 家 も い
ま す 。専 門 分 野 や 能 力 は 各 人 各 様 な の で 、自 社 の 状 況 に 合 っ た 適 切 な 専 門 家 を
見 出 す 必 要 が あ り ま す 。支 援 機 関 等 の 専 門 家 派 遣 メ ニ ュ ー を 活 用 す る か 、自 社
で探す場合も出来るだけ紹介等により実績が把握できることが望ましいでし
ょう。
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中小機構・小規模事業者支援ガイドブックⅢ
【複数の専門家の支援チームとタッグを組んだ商品開発・販路開拓】
国の特別名勝に指定されている「栗林公園」の程近くで、老舗の鴨料理
専門店「銀波亭」を営んでいる有限会社スエヒロ銀波亭(香川県高松市花
園町)は、四国でも珍しい鴨料理専門店として宴会や会席の場として長年
親しまれているが、女性客を中心とした若い世代や鴨料理を食したことの
ない人たちにも知ってもらい、新たな顧客層を開拓していくことが課題と
なっていた。
そこで同社では、小豆島を中心とした香川県の特産品であるオリーブの
葉を使った高濃縮エキスに漬け込んだ「オリーブ鴨」の開発・販売で地域
資源法の認定を取得し、この鴨肉加工品を使ったギフト商品の開発を進め
ることとした。
実際のギフト商品開発にあたっては、まず中小機構の専門家とともに、
新 規 顧 客 の 開 拓 を 目 的 と し て 、30 代 ~ 40 代 の 女 性 を タ ー ゲ ッ ト と 設 定 し 、
百貨店のギフト市場を想定した洋風ギフトセットを開発し、採用されるこ
とをゴールとして明確化した。そのうえで、担当専門家と機構職員が全体
マ ネ ジ メ ン ト を 行 い な が ら 、百 貨 店 の 食 品 バ イ ヤ ー 出 身 の 販 路 開 拓 専 門 家 、
商品パッケージ等のデザイン分野に強い専門家に加え、最も重要となるギ
フトセットの内容及びレシピ提案の開発では料理研究家をアドバイザーと
する体制で取り組むこととした。
そ の 結 果 、百 貨 店 の お 歳 暮 ギ フ ト カ タ ロ グ
の提案締切まで 1 か月しかない中、従来の
同社の発想では思いつかない洋風レシピの
ギ フ ト セ ッ ト が 完 成 し 、採 用 に 至 っ た 。さ ら
に、お歳暮ギフト売上は前年度の 6 倍に伸
び、地元テレビ、新聞等でも取り上げられ、
知名度向上にもつながった。
<開発されたギフトセット>
■ 各種法規制の遵守
商 品 を 製 造 し て 販 売 し て い く に あ た っ て は 、様 々 な 法 規 制 を 受 け る こ と と な
り ま す 。以 下 に 代 表 的 な 法 令 を 掲 載 し ま す の で 、ま ず は 自 社 の 事 業 に ど の よ う
な 法 規 制 が 関 係 す る の か を き ち ん と 把 握 す る と と も に 、基 本 的 な 内 容 の 理 解 に
努 め ま し ょ う 。ま た 、実 際 の 運 用 に あ た っ て は 、所 管 す る 外 部 専 門 機 関 や 弁 護
士等の専門家に相談しながら進めましょう。
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中小機構・小規模事業者支援ガイドブックⅢ
主な法規制
食品表示法
JAS法
食品衛生法
健康増進法
家庭用品品質表示法
景品表示法
医薬品医療機器等法
PL法
消費者契約法
不正競争防止法
特定商取引法
個人情報保護法
JAS法、食品衛生法、健康増進法の 3 法に分かれていた食品の表示に係る規
定 を 一 元 化 ( H27.4 施 行 )。「 機 能 性 食 品 表 示 」 制 度 も 新 設
飲食料品等が一定の品質や特別な生産方法で作られていることを保証する
「 JAS 規 格 制 度 」( JAS マ ー ク ) を 規 定
飲食によって生ずる危害の発生を防止するため、食品、添加物等の規格基準等
の原則を規定。食器、容器、包装、乳児用おもちゃ等も規制の対象
国民保健の向上を図ることを目的とした法律で、特定保健用食品(トクホ)や
栄養機能食品等についても規定
日常使用する家庭用品について、消費者が商品の品質を正しく認識し、その購
入に際し不測の損失を被ることがないよう、表示事項や表示方法等を規定
消費者が商品・サービスを適切に選択できるよう、商品・サービスの品質、内
容、価格等を偽って表示を行うことや過大な景品類の提供等を規制
旧薬事法。医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器等に関し規定。表示・広告
についても規定。化粧品を製造・販売するためには、本法の許可が必要。
製造物責任法。製造物の欠陥により人の生命、身体又は財産に係る被害が生じ
た場合における製造業者等の損害賠償の責任について規定
消 費者 が事 業者と 結ん だ契 約全 てを 対象 に、契約 に際 し事業 者に 不適 切な行 為
があった場合の取消や消費者の利益を不当に害する条項の無効等を規定
事業者間の公正な競争を阻害する行為を「不正競争」として類型化し、差止請
求 や 損 害 賠 償 、 刑 事 罰 等 を 規 定 。「 不 正 競 争 」 の 十 分 な 認 識 が 不 可 欠
訪問販売や通信販売等、消費者トラブルを生じやすい取引類型を対象に、事業
者が守るべきルールと、クーリング・オフ等の消費者を守るルールを規定
5,000 超 の 個 人 デ ー タ を 事 業 活 動 に 利 用 し て い る 事 業 者 を 対 象 と し て 、 個 人 情
報を取り扱う上でのルールを規定。適用対象外でも対策しておくべき
※ 上 記 の ほ か に も 多 様 な 法 規 制 が 関 係 し ま す の で 、ご 留 意 く だ さ い 。ま た 、知 的 財 産 権
関 連 に つ い て は 、「 Ⅱ .3 .( 4 )商 品 化 」の【 知 的 財 産 権 の 重 要 性 】( ☞ P 38)に 記
載しています。
事 業 者 の 状 況 に 応 じ て 、商 品 開 発 の 進 捗 管 理 の サ ポ ー ト や 外 部 専 門 機 関 の 紹
介・橋渡し、各種専門家の派遣等の側面支援を実施しましょう。
進捗管理のサポートについては、
「 Ⅱ .3 .
( 1 )商 品 開 発 計 画 書 の 作 成 」で
記 載 し た よ う に 、節 目 ご と に 進 捗 報 告 の 会 議 等 へ オ ブ ザ ー バ ー 参 加 し て 、商 品
開 発 の 目 的・目 標・計 画 に 照 ら し た 取 り 組 み 状 況 の 振 り 返 り と 、そ れ を 踏 ま え
た計画の見直しや次の行動の決定がしっかりと行われているかを確認するよ
うな形が望ましいでしょう。
ま た 、ネ ッ ト ワ ー ク を 活 用 し て 外 部 専 門 機 関 や 各 種 専 門 家 等 へ の つ な ぎ 役 と
な る こ と は 、支 援 者 と し て 大 変 重 要 な 活 動 と な り ま す 。そ の 際 、決 し て ひ と り
で す べ て を 把 握 し て お く 必 要 は な く 、周 り の 人 た ち の ノ ウ ハ ウ や ネ ッ ト ワ ー ク
を う ま く 活 用 し な が ら 進 め ま し ょ う 。 特 に 経 験 の 浅 い う ち は 、「 よ く 知 っ て い
る 人 を 知 っ て い れ ば よ い 」と い う 意 識 で 、経 験 豊 富 な 支 援 者 等 に 相 談 し た り 、
確認しながら取り組むとよいでしょう。
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中小機構・小規模事業者支援ガイドブックⅢ
(3)評価・改良
試 作 品 が 完 成 し た ら 、想 定 す る タ ー ゲ ッ ト や 販 路 で 商 品 評 価 を 行 い 、そ こ で
得 ら れ た 評 価 を 踏 ま え て 商 品 化 に 向 け た 改 良 に 取 り 組 み ま す 。こ の サ イ ク ル は 、
商 品 化 ま で に 複 数 回 繰 り 返 す こ と と な り ま す 。重 要 な の は 、商 品 評 価 で 得 ら れ
た評価をもとにその部分だけ改良するのではなく、商品コンセプトとの整合
性を含めて商品全体を見直す姿勢で常に取り組むことです。
想 定 す る タ ー ゲ ッ ト だ け で は な く 、幅 広 く い ろ い ろ な 層 か ら 評 価 を 得 て 、商
品 の 特 性 を 把 握 し て お く こ と が 必 要 で す 。な お 、コ ス ト の か か る 本 格 的 な 商 品
評価ではなく、身近な人でターゲットになりそうな人に使用感や意見を聞く
こ と か ら 始 め て も よ い で し ょ う 。そ の 方 が 率 直 な 意 見 が 聞 け て 有 効 な 可 能 性 も
あり、必ず行うべき取り組みと言えます。
■ 段階に応じた商品評価の実施
商品評価については、大きく 3 つの段階で実施する必要があります。具体
的には、①商品コンセプト段階、②試作品段階、③最終商品段階です。
商品コンセプト段階での評価については、
「 Ⅱ .2 .
( 3 )商 品 コ ン セ プ ト の
設定」で解説した通りです。
試 作 品 段 階 で の 商 品 評 価 は 、想 定 す る タ ー ゲ ッ ト 層 を モ ニ タ ー と し て 集 め て
実 施 し た り 、想 定 さ れ る 販 路 先 の バ イ ヤ ー に 依 頼 し て 把 握 す る 方 法 が 有 効 で す 。
モ ニ タ ー に 関 し て は 、社 外 モ ニ タ ー の 活 用 や イ ン タ ー ネ ッ ト 調 査 な ど で 実 施 す
る 方 法 の ほ か 、簡 易 的 な や り 方 と し て 、想 定 す る タ ー ゲ ッ ト 層 に 近 い 従 業 員 や
従業員の家族などに社内モニターを依頼して行う方法があります。
試 作 品 と 一 口 に 言 っ て も 、手 作 り レ ベ ル や テ ス ト 製 造 設 備 に よ る も の か ら 実
際 の 量 産 設 備 に よ る も の ま で 幅 広 く あ り ま す 。一 般 的 に 生 産 設 備 が 大 き く な る
に つ れ て 商 品 コ ン セ プ ト と の ズ レ が 生 じ や す く な り ま す の で 、ス ケ ー ル ア ッ プ
に応じて何度も評価を重ね、狙った商品に作り込んでいくことが必要です。
最 終 商 品 段 階 で の 商 品 評 価 は 、実 際 の 生 産 体 制・生 産 設 備 で 作 ら れ た 商 品 を 、
パ ッ ケ ー ジ や 販 売 方 法 等 を 含 め て 評 価 し 、商 品 の 完 成 度 を 高 め ま す 。ま た 、最
終 商 品 段 階 で の 商 品 評 価 後 、新 商 品 販 売 の リ ス ク を 軽 減 す る た め 、地 域 や 期 間
な ど を 限 定 し て 試 験 販 売 し 消 費 者 の 反 応 を テ ス ト す る 、い わ ゆ る「 テ ス ト・マ
ーケティング」の手法がよく活用されます。
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中小機構・小規模事業者支援ガイドブックⅢ
【地元TV局と連携した商品開発・評価・改良】
野菜生産量が全国で最も少ない富山県において、生産者等との連携によ
り地場産野菜の生産と消費を増やすためのカット野菜の開発・販売事業に
取り組んだ株式会社ユーキフーズ(富山県砺波市)は、地産地消を進める
ために県内各地で生産者と消費者をつなげるイベントを実施していた地元
TV局の株式会社チューリップテレビと連携し、消費者ニーズを捉えた商
品開発を進めることを可能とした。
具 体 的 に は 、 食 の 安 心 に 関 心 が 高 い 子 育 て 世 代 ( 30 代 ~ 40 代 の 女 性 )
をターゲットとし、チューリップテレビが運営する「子育て応援ハッピー
くらぶ」の会員を対象に、イベント等での試食や試食会でのモニタリング
によりカップサラダ商品の開発と改良を進
め た 。さ ら に 、発 売 し た 新 商 品 は 、チ ュ ー リ
ッ プ テ レ ビ の 番 組 や イ ベ ン ト で の 紹 介 、会 員
へのメールでの案内により販促につなげる
と と も に 、モ ニ タ リ ン グ に よ る 商 品 評 価 を 行
って更なる商品改良や新アイテムの開発に
も取り組んだ。
<消費者モニタリングの様子>
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中小機構・小規模事業者支援ガイドブックⅢ
実 務 的 に は 、想 定 す る タ ー ゲ ッ ト 層 を モ ニ タ ー と し て 集 め る 際 に 、支 援 機 関
の職員や関係者等から協力者を募るようなサポートを行うとよいでしょう。
また、ネットワークを活用してバイヤー等を集めた商品評価会を行うなど、
商 品 評 価 の 機 会 を ア レ ン ジ で き れ ば 、大 い に 役 立 つ で し ょ う 。こ れ も 経 験 の 浅
い う ち は 、ネ ッ ト ワ ー ク の 豊 富 な 周 り の 支 援 者 等 の 協 力 を 得 な が ら チ ャ レ ン ジ
し て み ま し ょ う 。そ の よ う に し て 経 験 を 積 む 中 で 、徐 々 に 自 身 の ネ ッ ト ワ ー ク
を広げていきましょう。
商品づくりは「行きつ戻りつ」の試行錯誤を何度も繰り返しながら売れる
商品にブラッシュアップしていく長い道のりです。一般的な一連のプロセス
は 想 定 で き ま す が 、必 ず し も 順 番 通 り に 進 む わ け で は あ り ま せ ん し 、作 っ て は
評 価・改 良 を 重 ね る と い っ た よ う に 非 常 に 手 間 の か か る プ ロ セ ス で す 。支 援 者
には、その点を十分に認識し、決してあきらめることなく個々の事業者に寄
り添い、継続的な伴走型支援が求められます。
【商品評価の活用事例】
地元食材を活用したスナックを開発したA社は、中小機構が主催する企
画に参加し、首都圏の流通関係者(小売、卸)に自社商品のプレゼンを行
った。会議上で様々なアドバイスが得られ、商品改良等につながった。
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中小機構・小規模事業者支援ガイドブックⅢ
(4)商品化(パッケージデザイン、ネーミング、価格等)
商 品 本 体 を 開 発 し た ら 、パ ッ ケ ー ジ デ ザ イ ン 、ネ ー ミ ン グ 、価 格 等 を 検 討 し 、
具体的な商品化を図ります。
■ パッケージデザイン
パッケージデザインの主なポイントは、以下の通りです。
□ 商品の利便性、安全性
想定されるターゲットがどのようなシーンでその商品を利用するの
かを前提に、その利用シーンに最適な包装や容器を検討します。また、
流 通 段 階 で は 安 全 に 運 べ 、小 売 店 で の 陳 列 や 消 費 者 の 保 管 に も 適 し た パ
ッケージを検討することが重要です。
□ デザイン性
小 売 店 で の 商 品 陳 列 で は 、い か に し て お 客 様 の 目 を 引 い て 手 に し て も
ら い 、良 い 印 象 を 与 え て 購 入 し て も ら え る か が ポ イ ン ト と な り ま す 。そ
の た め 、商 品 の 顔 と も 言 え る パ ッ ケ ー ジ に は 、効 果 的 な デ ザ イ ン 性 が 求
め ら れ ま す 。想 定 す る 販 売 先 に よ っ て も デ ザ イ ン が 異 な っ て く る 可 能 性
が あ り ま す し 、競 合 商 品 と の 関 係 も 十 分 に 留 意 す る 視 点 が 欠 か せ ま せ ん 。
なお、ギフト需要への対策もしておくことが望ましいでしょう。
デ ザ イ ン の 分 野 は 専 門 性 が 発 揮 で き る 分 野 で す の で 、多 く の デ ザ イ ナ ー が 存
在しており、これらの専門家を活用することも有効な選択肢です。デザイン
の 良 し 悪 し は 売 れ る 商 品 づ く り の 重 要 な 要 素 と な り ま す の で 、相 応 の コ ス ト が
かかりますが、うまく活用すれば大きな効果を発揮する可能性があります。
一方、デザイナーへの丸投げでは決してうまくいきません。デザイナー活
用 の 目 的 や 依 頼 範 囲 を 明 確 に し て お く こ と 、デ ザ イ ナ ー の 中 で も 専 門 分 野 が 異
な る こ と を 認 識 し て 人 選 す る 必 要 が あ る こ と 、一 部 共 同 作 業 を 行 う な ど に よ り
ノウハウを社内に蓄積できるようにすること、といった点に留意が必要です。
また、作ってしまったパッケージは使えなければロスになってしまうので、
段階的に作り上げていく工夫を意識することも重要です。例えば、ラフデザ
イ ン で 試 売 し て 何 度 か 修 正 を 重 ね る よ う に し た り 、パ ー ケ ー ジ は 汎 用 の も の で
商 品 別 に シ ー ル を 作 っ て 対 応 し た り 、最 初 は 少 量 タ イ プ か ら 作 る と い っ た や り
方も検討しましょう。
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中小機構・小規模事業者支援ガイドブックⅢ
公的機関でもデザイン支援を行っている機関(工業技術支援センター、デ
ザインセンター、都道府県等中小企業支援センター等)がありますので、外
部 の 専 門 家 を 活 用 し よ う と す る 場 合 に ま ず は 相 談 し て み る と よ い で し ょ う 。ま
た 、地 元 の デ ザ イ ン 学 校 の 協 力 を 仰 い で コ ラ ボ レ ー シ ョ ン 企 画 の よ う な 形 で 取
り組む方法も考えられます。
な お 、デ ザ イ ン が 意 味 す る 領 域 は 、パ ッ ケ ー ジ デ ザ イ ン だ け で な く 、商 品 そ
の も の の 形 状 や 外 観 、素 材 、機 能 等 の デ ザ イ ン( プ ロ ダ ク ト デ ザ イ ン )を 含 み
ま す 。そ う い っ た デ ザ イ ン の 基 礎 知 識 か ら 、デ ザ イ ナ ー の 活 用 方 法 、料 金 、契
約 、 デ ザ イ ン 支 援 機 関 リ ス ト 等 の 情 報 や ツ ー ル を ま と め た 資 料 と し て 、「 デ ザ
イ ン 活 用 支 援 ・ ガ イ ド ブ ッ ク 」( 中 小 機 構 ) が あ り ま す の で 、 併 せ て ご 活 用 く
ださい。
●支援機関指導員のためのデザイン活用支援・ガイドブック【中小機構】
http://www.smrj.go.jp/keiei/chiikiryoku/079956.html
■ ネーミング
ネ ー ミ ン グ は 、商 品 コ ン セ プ ト が 言 葉 で 的 確 に 表 現 さ れ て い る こ と が 必 要 で
す 。商 品 コ ン セ プ ト を 出 発 点 と し て 想 起 さ れ る キ ー ワ ー ド を 書 き 出 し 、そ の キ
ーワードを組み合わせたり、表現を替えたりしながらネーミングを考えます。
分 か り や す さ 、呼 び や す さ 、覚 え や す さ 、親 し み や す さ と い っ た 観 点 も 大 切 で
す。考えられたネーミング案は、商標調査等を行ったうえで決定します。
ネーミングやキャッチコピーもお客様の購買意欲を呼び起こす重要な要素
ですので、とことんこだわりましょう。
【 知 的 財 産 権 の重 要 性 】
自 社 商 品 を つ く る と 決 め た 時 点 か ら「 知 的 財 産 」と い う キ ー ワ ー ド を 念 頭
に 置 い て お く 必 要 が あ り ま す 。例 え ば 、せ っ か く 良 い ネ ー ミ ン グ を 考 え だ し
て も 他 社 が す で に 商 標 登 録 し て い れ ば 使 用 で き な い こ と も あ り ま す 。生 活 者
の 購 買 行 動 で は 、 商 品 の ブ ラ ン ド 、ネ ー ミ ン グ に よ り 商 品 を 区 別 し 、 外 観 や
使 い 勝 手 と い っ た デ ザ イ ン に よ っ て 選 択 す る 可 能 性 が 高 く 、こ れ ら に 関 わ る
権 利 を 継 続 的 に 確 保 し て お く 対 策 が 重 要 で す 。ま た 、地 域 資 源 を 活 用 し た 商
品 で は 活 用 の 頻 度 は 高 く な い か も し れ ま せ ん が 、特 許 や 実 用 新 案 権 が 関 係 す
る可能性もあります。
専 門 性 の 高 い 分 野 で す の で 自 己 判 断 す る の で は な く 、弁 理 士 等 の 専 門 家 を
活 用 し な が ら 進 め ま し ょ う 。無 料 相 談 窓 口 と し て「 知 財 総 合 支 援 窓 口 」が 設
置されていますので、まずは気軽に相談してみるとよいでしょう。
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中小機構・小規模事業者支援ガイドブックⅢ
<知的財産権の種類>
※特許庁ホームページより引用
【地 域 団 体 商 標 制 度 と地 理 的 表 示 保 護 制 度 】
・商 標 法 では、地 域 ブランドの名 称 (「地 域 名 」+「商 品 名 」等 )を商 標 権 として登 録 し、その
名 称 を独 占 的 に 使 用 する こと ができる 「 地 域 団 体 商 標 制 度 」 が 規 定 さ れ、 平 成 27年 8
月 31日 までに584件 が登 録 されています。
・また、平 成 27年 6月 に地 理 的 表 示 法 が施 行 され、生 産 地 と結 び付 いた特 性 を有 する農
林 水 産 物 等 の名 称 を 品 質 基 準 と ともに登 録 し 、地 域 の共 有 財 産 とし て保 護 する「 地 理
的 表 示 保 護 制 度 」がスタートしています。
・いずれか一 方 または両 制 度 を重 ねて申 請 することも可 能 ですが、それぞれメリットや留 意
点 が違 いますので、それらを踏 まえた検 討 が必 要 です。
・なお、地 域 団 体 商 標 は、 平 成 26年 8月 から、従 来 の組 合 に加 えて、商 工 会 ・商 工 会 議
所 ・NPO法 人 が登 録 主 体 として出 願 できるように拡 充 されています。
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中小機構・小規模事業者支援ガイドブックⅢ
知的財産の相談窓口、情報収集源(例)
●知財総合支援窓口【特許庁、工業所有権情報・研修館】
http://chizai-portal.jp/
⇒知的財産に関する悩みや課題に対するワンストップサービスを提供する窓
口として、都道府県ごとに「知財総合支援窓口」が設置されています
窓 口 担 当 者 に よ る 知 財 制 度 の 基 本 的 な 説 明 か ら 、弁 理 士 等 の 専 門 家 に よ る 訪
問アドバイスまで、無料で活用できます
ま た 、「 窓 口 支 援 事 例 」 で は 、 相 談 の き っ か け か ら 具 体 的 な ア ド バ イ ス の 経
過などのポイントが分かりやすく紹介されています
http://chizai-portal.jp/supportcase/
● 特 許 ・ 意 匠 ・ 商 標 な ん で も 110 番 【 日 本 弁 理 士 会 】
http://www.jpaa.or.jp/
⇒知的財産権全般について弁理士が無料で相談に応じています
弁 理 士 検 索 シ ス テ ム「 弁 理 士 ナ ビ 」の 運 営 、最 大 3 回 ま で 費 用 負 担 な し で 訪
問アドバイスを受けられる「弁理士知財キャラバン」事業も行っています
●ホームページで情報収集する場合
□特許庁ホームページ
http://www.jpo.go.jp/indexj.htm
□産業財産権相談サイト
http://faq.inpit.go.jp/EokpControl?&event=TE0008
□特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/all/top/BTmTopPage
⇒無料で産業財産権情報のデータベースを閲覧・検索できます
●「知的財産権制度入門」の活用【特許庁】
⇒特許庁が実施する初心者向けの知的財産権制度説明会のテキストである
「 知 的 財 産 権 制 度 入 門 」は 、制 度 に 関 し て 詳 細 か つ 分 か り や す く ま と ま っ
ています
上記特許庁のホームページで公表されていますので、活用ください
※最新年度の説明会の該当ページにリンクされているテキストを参照す
る必要がありますので、ご留意ください
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中小機構・小規模事業者支援ガイドブックⅢ
■ 価格
価 格 設 定 も 商 品 化 に あ た っ て 大 変 重 要 な ポ イ ン ト と な り ま す 。特 に 認 識 し て
おくべきポイントは以下の通りです。
□ 商品価値とのバランス
生 産 者 は 自 社 の 利 益 を 確 保 し な が ら も 、消 費 者 が 納 得 す る 商 品 価 値 に
見 合 っ た 価 格 を 設 定 し な け れ ば な り ま せ ん 。こ の 商 品 価 値 と の バ ラ ン ス
は、参照価格の存在等の消費者心理や経済動向等の影響を受けるため、
な か な か 判 断 が 難 し い も の で す 。し か し な が ら 、競 合 商 品 の 価 格 設 定 や
や 販 路 先 の 売 場 の 価 格 帯 等 を 調 べ た り 、試 作 品 の 商 品 評 価 の 際 に 調 査 す
ることにより、適正な価格とする努力は不可欠です。
□ 商品のコストは製造原価だけではない認識
商 品 が 企 画 さ れ 、生 産・流 通・販 売 を 経 て 消 費 者 の 手 に 届 く ま で の 流
れ の 中 で 、そ の す べ て の 段 階 で コ ス ト が 生 じ て い る こ と を 見 逃 し が ち で
す。具体的には、以下のようなコストが生じています。
企画コスト
生産コスト
流通コスト
販売コスト
管理コスト
商品の企画開発に伴うデザインやマーケティングに
要するコスト
原材料費、労務費、パッケージ代など商品の製造に
要するコスト
商品の配送や検品、納品など物流に要するコスト
販促ツールやディスプレイ、販売員経費など商品の
販売の際に要するコスト
在庫の保管や、管理システムなどに要するコスト
商品の原価というと、上記の生産コスト(製造原価)を指しますが、
価格設定に際してはその他のコストもすべて考慮する必要があること
を忘れてはいけません。利益が出なければ、事業を継続できません。
□ 流通経路による生産者売価の変動
商品の流通経路によって生産者売価が変動することも忘れてはいけ
ま せ ん 。直 販 の み で 販 売 す る こ と は 考 え に く い の で 、卸 売 業 者 を 通 す 前
提 で 価 格 設 定 す べ き で し ょ う 。生 産 者 だ け で な く 、各 流 通 機 能( 卸 売 業
者 、小 売 業 者 )の コ ス ト と 利 益 を 確 保 で き る こ と を 前 提 に 価 格 を 設 定 す
る必要があります。
ま た 、商 品 回 転 率 や 人 件 費 、販 促 費 等 が 業 態 毎 に 異 な る た め 、要 求 さ
れ る 納 入 価 格 も 販 路 先 の 業 態 毎 に 違 い が 生 じ ま す 。タ ー ゲ ッ ト と す る 販
路 先 の 業 態 の 標 準 的 な 納 入 価 格 を 想 定 し た う え で 、価 格 設 定 を 検 討 す る
必要があります。
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中小機構・小規模事業者支援ガイドブックⅢ
■ その他
このほか、パッケージにある商品表示については、関連法規をよく理解し、
法律違反にならないよう細心の注意を払う等の対応が必要となります。
デ ザ イ ン や 知 的 財 産 権 、関 連 法 規 へ の 対 応 な ど 、専 門 性 の 高 い 分 野 に つ い て
は 、そ れ ぞ れ の 専 門 家 の ア ド バ イ ス や 支 援 を 必 要 と す る ケ ー ス が 多 い で し ょ う 。
支 援 者 と し て は 事 業 者 と 専 門 家 の 橋 渡 し 役 と な り 、伴 走 者 と し て 事 業 者 に 寄 り
添 い な が ら も 、専 門 家 の 専 門 性 が う ま く 活 か せ る よ う に 両 者 の コ ミ ュ ニ ケ ー シ
ョンの円滑化をサポートしましょう。
円 滑 な コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン を サ ポ ー ト す る た め に は 、信 頼 で き る 専 門 家 と の
ネ ッ ト ワ ー ク を 作 っ て お く 必 要 が あ り ま す 。ま た 、サ ポ ー ト 役 と は い え 、あ る
程 度 の 知 識 は 備 わ っ て い る こ と が 望 ま し い と 考 え ら れ ま す 。経 験 の 浅 い う ち は
周 り の 経 験 豊 富 な 支 援 者 に 相 談 し な が ら チ ャ レ ン ジ し て い き 、そ の 中 で 知 識 の
習得や人脈を広げることを意識して経験を積み重ねていきましょう。
(5)流通チャネル戦略の検討
ターゲットとなるお客様が実際に買い物をする売場に確実に商品が置かれ
て い る 状 態 を 作 る た め に 、商 品 を ど こ で ど の よ う に 売 る の か を 明 確 に す る と と
も に 、そ れ を 実 現 す る た め の 流 通 チ ャ ネ ル を 構 築 す る こ と が 必 要 で す 。流 通 チ
ャネルを大きく分けると、下図のとおり3つのルートに分かれます。
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中小機構・小規模事業者支援ガイドブックⅢ
近 年 で は 、イ ン タ ー ネ ッ ト 通 販 が 普 及 し 、中 小・小 規 模 事 業 者 で も 直 接 販 売
に 取 り 組 み や す い 環 境 が 整 っ て き て い ま す が 、基 本 的 に は 小 売 業 者 の 店 舗 で の
間 接 販 売 が 中 心 と な る で し ょ う 。ま た 、中 小・小 規 模 事 業 者 で は 、小 売 業 者 と
の橋渡し役となる卸売業者を通した販売となる可能性が高いと考えられます。
小 売 業 界 に は 多 種・多 様 な 業 態 が 存 在 し て お り 、商 品 分 野 や 販 路 先 の 業 態 、
店舗コンセプトなど様々な要因によって取引の仕組みや考え方が全く異なる
状 況 と な っ て い ま す 。そ れ ぞ れ の 特 性 を 意 識 し て 流 通 チ ャ ネ ル 戦 略 を 検 討 し な
け れ ば な り ま せ ん の で 、経 営 資 源 に 限 り の あ る 中 小・小 規 模 事 業 者 で は 、販 路
先についても明確にターゲットを定めて効率的に流通チャネルを構築してい
く必要があります。
実際に流通チャネルを構築していくうえでは、展示会、商談会、販売会の
活 用 が 非 常 に 重 要 と な り ま す 。ま た 、こ れ ら は 商 品 評 価 の 機 会 と も な り 、売 れ
る 商 品 へ の ブ ラ ッ シ ュ ア ッ プ に つ な げ る こ と が で き ま す 。展 示 会 等 の 活 用 に 際
し て は 、目 的 を 明 確 に し 、自 社 に 合 っ た も の を 選 択 す る 必 要 が あ る こ と に 留 意
し ま し ょ う 。具 体 的 な 活 用 方 法 等 に つ い て は 、
「 Ⅱ .4 .
( 4 )展 示 会 、商 談 会 、
販売会の活用方法」で詳述します。
■ 既存のお客様を組織化する
中 小・小 規 模 事 業 者 で は 卸 売 業 者 を 通 し た 間 接 販 売 が 中 心 と な る と 述 べ ま し
た が 、決 し て 直 接 販 売 の 選 択 肢 を 重 視 し な く て よ い と い う こ と で は あ り ま せ ん 。
む し ろ 直 接 販 売 は 、商 品 価 値 を よ り 的 確 に 伝 え る こ と が で き 、お 客 様 と の 関 係
性 も 築 い て い き や す い こ と か ら 、こ だ わ り 商 品 が 多 い 地 域 資 源 を 活 用 し た 商 品
では特に重視すべき選択肢だと考えられます。
直 接 販 売 の チ ャ ネ ル を 構 築 す る う え で 、分 か っ て い る よ う で 意 外 と 見 落 と し
が ち な の が 、こ れ ま で に 自 社 の 商 品 を 買 っ て く れ た こ と の あ る お 客 様 情 報 を 活
用 す る 視 点 で す 。す で に 既 存 商 品 で 通 信 販 売 等 の 直 接 販 売 チ ャ ネ ル が あ り 顧 客
名 簿 を 持 っ て い る 場 合 は も ち ろ ん 、正 式 な チ ャ ネ ル は な く て も 何 ら か の 取 引 等
で 郵 送 し た こ と の あ る 顧 客 の リ ス ト 等 が あ れ ば 十 分 に 活 用 で き ま す 。顧 客 名 簿
が な く て も 、集 中 的 に 百 貨 店 の 催 事 等 に 参 加 し て 情 報 収 集 し た 馬 路 村( 高 知 県
安 芸 郡 )の よ う な 例 も あ り ま す の で 、何 か し ら の 工 夫 に よ り チ ャ レ ン ジ す る 価
値はあります。
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中小機構・小規模事業者支援ガイドブックⅢ
すでに自社のことを知っている既存顧客のデータを活用して新商品の販売
促 進 を は か る と と も に 、D M 等 を 利 用 し て リ ピ ー タ ー 等 の 有 力 顧 客 と の 関 係 を
強 化 し 、さ ら に は「 友 の 会 」の よ う な 形 で 組 織 化 を 図 る こ と が で き れ ば 、非 常
に メ リ ッ ト の 大 き い チ ャ ネ ル と な り ま す 。是 非 重 要 な チ ャ ネ ル 戦 略 と し て 検 討
しましょう。
ただ し 、
個 人 情 報 の 取 扱 いに は
留 意 しま し ょ う!
既存顧客データの活用、組織化の取り組みイメージ
既 存 デ ー タ を 整 理 す る 。一 度 で も 郵 送 し て い れ ば 、少 な く と も「 氏 名 、住 所 、電
話番号、購入商品」は分かるはず
「電話番号」等をキーにしてデータを集計すれば、購入頻度を把握できる
新 商 品 に つ い て 、D M を 送 付 す る 。購 入 頻 度 の 高 い 顧 客 に は 、宛 名 や 署 名 を 手 書
きするなどにより特別感を演出する
追 加 デ ー タ と し て 「 性 別 、 生 年 月 日 」 を 入 手 し た い と こ ろ 。「 性 別 」 は 氏 名 か ら
あ る 程 度 推 測 で き る が 、「 生 年 月 日 」 は 追 加 登 録 し て も ら う 方 法 を 考 え る ( 年 齢
の方が抵抗感が小さいかもしれない)
⇒既存顧客のセグメントが分かり、マーケティングにも活用できる
D M の 内 容 は 、商 品 案 内 に 限 ら ず 、地 域 の イ ベ ン ト 等 の 情 報 提 供 に よ り 、関 係 性
の深化を意識する
⇒ D M が 届 か な か っ た 場 合 は 、電 話 に よ り 追 跡 調 査 を し て デ ー タ を メ ン テ ナ ン ス
新 商 品 を 先 行 案 内 し て 関 係 性 を 強 化 し つ つ 、ア ン ケ ー ト の 実 施 等 に よ り 商 品 評 価
に活かす
一 定 の デ ー タ が 整 備 出 来 た ら 、自 社 商 品 の フ ァ ン ク ラ ブ と し て「 友 の 会 」を 組 織
する。例えば、以下のような活動を行い、ファンの維持・拡大につなげる
◇工場見学、工場作業の体験
◇作り手自らこだわりを説明
◇新商品の発表会(試食会)
◇関係者との交流会
◇参加者同士の交流
商 品 を ど こ で 売 る の か 、ど う や っ て タ ー ゲ ッ ト と な る お 客 様 に 届 け る の か を
常 に 意 識 し な が ら 商 品 開 発 を 進 め る こ と が 重 要 で す が 、そ の 重 要 性 は 理 解 し て
い て も 、い つ の 間 に か 意 識 が 薄 れ て し ま い や す い 観 点 で す 。支 援 者 と し て は 、
まずは折に触れてこの観点を事業者に意識付けすることが大事です。
そ の う え で 、最 適 な 流 通 チ ャ ネ ル を 一 緒 に な っ て 考 え 、ア ド バ イ ス で き る よ
う に な る の が 次 の ス テ ッ プ と な り ま す 。ま た 、流 通 業 者 へ の ア プ ロ ー チ の 橋 渡
し 役 と な っ た り 、展 示 会 、商 談 会 、販 売 会 を 活 用 す る 機 会 を 紹 介・支 援 し た り
と い っ た サ ポ ー ト が で き れ ば 大 い に 役 立 ち ま す 。流 通 に 詳 し い 支 援 者 等 か ら 情
報 収 集 し た り 、多 く の 事 業 者 の 取 り 組 み を 見 聞 き す る こ と 等 を 通 し て 、徐 々 に
知 識 や 経 験 を 積 み 重 ね 、い ず れ は よ り 実 践 的 な 面 で の サ ポ ー ト が で き る よ う に
なることを目指しましょう。
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中小機構・小規模事業者支援ガイドブックⅢ
(6)プロモーション展開手法の検討
い く ら 素 晴 ら し い 商 品 を 開 発 し て も 、消 費 者 が そ の 存 在 を 知 ら な い こ と に は
売 上 は 上 が り ま せ ん の で 、商 品 の 存 在 や メ リ ッ ト 等 を 消 費 者 に 確 実 に 伝 え る た
めのプロモーション展開手法の検討は重要です。
プ ロ モ ー シ ョ ン の た め の 手 法 と し て は 、広 報 、広 告 、販 売 促 進 な ど が 挙 げ ら
れます。プロモーション戦略で重要な点は、想定するターゲット層の状況を
イメージして、購買行動につながるようにプロモーション手法を最適に組み
合わせることです。
提 供 す る 情 報 と し て は 、商 品 の 使 い 方 、機 能 の 説 明 、利 用 シ ー ン の 提 案 、商
品づくりの背景など、ソフト面(理念、ストーリー)とハード面(機能、使
い 勝 手 )両 面 か ら の 商 品 特 性 、使 っ て も ら い た い 点 を 伝 え る こ と が 重 要 と な っ
てきます。
■ 広報(パブリシティ)
広 報 と は 、事 業 者 側 か ら 新 聞 や 雑 誌 な ど の メ デ ィ ア に 対 し て 商 品 情 報 等 を 提
供 し て 、そ れ ら の 媒 体 に 記 事 と し て 取 り 上 げ て も ら う こ と で す 。そ の 一 番 の 特
徴は、事業者がメディアにお金を支払わずに宣伝できることです。ただし、
記事として媒体に取り上げるかどうかはメディア側が決めることになります。
メディアが記事化したくなるようなプレスリリースを作成できるようにな
れ ば 、大 き な ア ド バ ン テ ー ジ と な り ま す 。参 考 と し て 、巻 末 に「 プ レ ス リ リ ー
スの書き方」を掲載していますので、ご活用ください。
■ 広告
広 告 と は 、テ レ ビ や 新 聞 、雑 誌 、イ ン タ ー ネ ッ ト と い っ た 媒 体 の 広 告 枠 を 購
入して、自社の商品情報等を消費者に伝達する方法です。代表的な広告には、
マ ス コ ミ 広 告 、 S P 広 告 ( D M 、 折 込 、 屋 外 広 告 、 交 通 広 告 等 )、 イ ン タ ー ネ
ッ ト 広 告 等 が あ り ま す 。た だ し 、広 告 に は 相 応 の 費 用 が か か り ま す の で 、必 要
性や期待される効果を十分に検討し、適切な媒体を選択することが重要です。
■ 販売促進
販 売 促 進 は 、消 費 者 の 購 買 意 欲 や 販 売 店 の 販 売 意 欲 等 を か き 立 て る た め に 実
施する活動となります。販売促進は、消費者向け(プレミアム、ノベルティ、
サ ン プ リ ン グ 、セ ー ル 等 )、流 通 業 者 向 け( 販 売 店 コ ン テ ス ト 、販 売 員 派 遣 等 )、
社内向け(社内コンテスト、セールスマニュアル作成等)の3つに分類され、
効果的に組み合わせて実施する必要があります。
45
中小機構・小規模事業者支援ガイドブックⅢ
地 域 資 源 を 活 用 し た 商 品 づ く り を 行 う 事 業 者 と し て は 、販 売 促 進 策 の 一 環 と
して、ワークショップ(体験)のカリキュラムを開発しておくことで効果的
に活用できる可能性があります。また、小さくても本店として小売店舗を持
つことがプロモーションに有利に働くケースが見受けられます。
まずは消費者の目線で見た時に効果的なプロモーションになっているかど
うかを検討し、それを踏まえて意見交換やアドバイスを行うとよいでしょう。
ま た 、日 頃 か ら 様 々 な 商 品 や 企 業 の プ ロ モ ー シ ョ ン に 興 味 を 持 っ て 情 報 収 集 し
て お き 、具 体 的 な 事 例 を 示 し な が ら ア ド バ イ ス で き る と よ り 効 果 的 と 考 え ら れ
ます。
ま た 、事 業 者 の プ ロ モ ー シ ョ ン の サ ポ ー ト と し て 、例 え ば 、支 援 機 関 の ネ ッ
トワークを活用してメディアを集めた記者会見の機会を提供するような取り
組みを行うのも有効でしょう。
【支援機関のネットワークを活用したプロモーション支援】
中小機構沖縄事務所では、地元メディアの影響力が大きく、また「県産
品」を重視する沖縄の県民性を踏まえ、地域資源法の認定事業者へのハン
ズオン支援の一環として、国による認定時や新商品発売時など、事業者に
応じた適切なタイミングで地元新聞社等のメディアを集めた記者発表をア
レンジし、認定事業のプロモーション活動をサポートしている。
「子どもとお母さんの笑顔のためにカラダにやさしくキモチにやさしい
商品をつくりたい」という思いを胸に、抗菌作用に優れる沖縄伝統のハー
ブ「 月 桃 」や「 フ ー チ バ ー( よ も ぎ )」、保 湿 に 優 れ る「 ア ロ エ 」、沖 縄 で し
か採れない天然の海底粘土「クチャ」など、沖縄の地域資源がもつ自然の
チ カ ラ を 活 か し て 、赤 ち ゃ ん や デ リ ケ ー ト 肌 の
人 で も 使 え る ス キ ン ケ ア 化 粧 品 等 の 開 発・販 路
開 拓 に 取 り 組 ん だ 沖 縄 子 育 て 良 品 株 式 会 社( 沖
縄 県 島 尻 郡 南 風 原 町 )の ケ ー ス で も 、効 果 的 な
タイミングで記者発表を重ねることで商品や
ブランドの認知度向上につながった。さらに、
県内の薬局チェーンからのアプローチもあり、
かねてより取り組んでいたメディカルルート
<記者発表の様子>
の販路開拓にもつながった。
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中小機構・小規模事業者支援ガイドブックⅢ
4.販路開拓
前項までで商品開発が完了し、ここからは完成した商品を実際に販売して、
販 路 開 拓 を 進 め て い く ス テ ッ プ で す 。「 販 路 開 拓 」 は 重 要 か つ 広 範 な テ ー マ で
す が 、本 ガ イ ド ブ ッ ク で は 、地 域 資 源 を 活 用 し た 商 品 の 販 路 開 拓 段 階 を 支 援 す
る う え で 中 心 と な っ て く る 項 目 に 絞 っ て 、実 務 的 な ノ ウ ハ ウ も 交 え て ポ イ ン ト
をまとめます。
(1)販路開拓を計画する
販 路 を 開 拓 す る 際 に 最 も 重 要 な こ と は 、「 販 路 開 拓 の 計 画 を 立 て る 」 こ と に
他なりません。
「とりあえず展示会に出展してみたい」
「流行っている場所なの
で 販 売 し て み た い 」と い っ た 考 え 方 で は な く 、事 前 に 販 路 開 拓 計 画 を 立 て ら れ
れ ば コ ス ト ( 時 間 ×お 金 ) が 大 幅 に 削 減 で き 、 効 率 的 な 活 動 に つ な が り ま す 。
販路開拓活動は決して簡単ではない息の長い取り組みです。中長期的な目
標 を イ メ ー ジ し な が ら 、自 社 に 合 っ た 販 路 開 拓 ス ト ー リ ー を 設 計 し て お く と と
もに、実行結果を踏まえて絶えず見直しながら進めることが重要です。
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中小機構・小規模事業者支援ガイドブックⅢ
ま ず は 各 ス テ ッ プ に 従 っ て 、販 路 開 拓 計 画 を 策 定 す る と こ ろ か ら サ ポ ー ト し
ましょう。特に、具体性と実現性の観点を重視してアドバイスを行うとよい
で し ょ う 。せ っ か く 計 画 を 作 っ て も 、具 体 的 な ア ク シ ョ ン が イ メ ー ジ で き る と
こ ろ ま で 行 っ て い な け れ ば 、確 実 な 実 行 は 望 め ま せ ん 。ま た 、背 伸 び を す れ ば
達 成 で き る く ら い の 計 画 を 立 て る こ と は 良 い こ と で す が 、事 業 者 の 経 営 資 源 の
状況からして無理がある計画では、進捗を確認する度に「出来ていないこと」
ばかりで嫌になり、そのうち計画を立てること自体をやめてしまうでしょう。
進捗を確認する際に達成感が得られ、長続きするような計画づくりをサポー
トしましょう。
(2)営業ツールの整備
販路開拓を進めるうえで、ターゲットとなる販路先のバイヤー等に対して、
限 ら れ た 機 会・時 間 で 彼 ら が 求 め て い る 情 報 を 的 確 に 提 供 す る と と も に 、商 品
の 背 景 に あ る 地 域・企 業 の 物 語 や 作 り 手 の 思 い・ビ ジ ョ ン を 確 実 に 伝 え る た め 、
自社プレゼン資料や商品シート等の営業ツールをしっかりと作成しておくこ
とが重要です。
■ 自社プレゼン資料
商 品 コ ン セ プ ト づ く り の 冒 頭 で 、売 れ る 商 品 づ く り に 不 可 欠 な 観 点 と し て 売
れる商品の 5 つの共通点を紹介し、これらの視点を念頭に置いて商品づくり
の プ ロ セ ス を 進 め て き ま し た 。商 品 開 発 が 完 了 し 実 際 に 販 路 開 拓 を 進 め て い く
に あ た っ て も 、こ れ ら の 視 点 を し っ か り と 意 識 し て 、タ ー ゲ ッ ト と な る 販 路 先
の バ イ ヤ ー 等 に ア プ ロ ー チ し て い く こ と が 重 要 で す 。そ の た め に 用 意 が 必 要 と
なるのが、自社プレゼン資料です。
自 社 プ レ ゼ ン 資 料 の 作 成 に あ た っ て は 、以 下 の「 ブ ラ ン デ ィ ン グ 整 理 シ ー ト 」
を 活 用 す る の が 有 効 で す 。「 ブ ラ ン デ ィ ン グ 整 理 シ ー ト 」 が 完 成 し た ら 、 項 目
毎に 1 枚のシートを用意し、それぞれの文面と、その文面を一目でイメージ
させる画像を貼り付ければ、自社プレゼン資料の完成です。
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中小機構・小規模事業者支援ガイドブックⅢ
実 際 の 事 例 を 掲載 し ま す の で、是 非 参 考 と
し て く だ さ い。当 社 は 石 垣 島 の ジ ュ エ リー
ブ ラ ン ド で、本 提 案 書 は 大 手 百 貨 店 の 常設
店化のきっかけとなったものです。
ブランディング整理シート
何を提案する
のか
どこの誰に
どう使うのか
どういった
地域の
どういった
企業が
そこにどんなビジョンや、
大義があるのか
地域や産地の
物語
1
49
ブランディング整理シート
「項目2」より
2
中小機構・小規模事業者支援ガイドブックⅢ
企業の物語
活用する
地域資源
ブランディング整理シート
「項目3」より
ブランディング整理シート
「項目4」より
3
商品の特徴
4
ブランディング整理シート
「項目4」より
未来図
ブランディング整理シート
「項目6」より
5
先方の商品計画や販売計画を
見越した提案を織り交ぜている
6
ターゲット、
利用シーン、
商品特性
7
ブランディング整理シート
「項目1、4、5」より
8
なお、プレゼンで真っ先に伝えるべきは、商品の裏にある地域と企業の物
語であり、いきなり商品の説明を行うことは避ける必要があります。このた
め 、シ ー ト の 順 番 は 多 少 前 後 し て も 構 い ま せ ん が 、少 な く と も ブ ラ ン デ ィ ン グ
整理シートの項目4が項目2、3より前にならないように注意してください。
50
中小機構・小規模事業者支援ガイドブックⅢ
■ 商品シート
コ ン セ プ ト シ ー ト の 作 成 の と こ ろ で す で に 紹 介 し ま し た が 、販 路 開 拓 を 行 う
段 階 で は 商 品 シ ー ト を 完 成 さ せ て お く 必 要 が あ り ま す 。主 に 記 載 す べ き 内 容 や
留 意 点 は 以 下 の 通 り で す 。何 よ り も ま ず は バ イ ヤ ー の 立 場 に 立 っ て 、バ イ ヤ ー
が 知 り た い 情 報 は 何 か 、ど う い う 風 に 書 い て ほ し い か と い う 観 点 を 常 に 意 識 し
て記載しましょう。
具 体 的 な 様 式 と し て は 、食 品 に つ い て は「 F C P 商 談 会・展 示 会 シ ー ト 」を 、
食品以外については様式集の「商品シート」を活用ください。
利用シーンと商品画像
が特に重要です。
商品シートに記載すべき内容
商品特性
基本的な商品の情報を記載する
【 食 品 】希 望 小 売 価 格 、希 望 卸 売 価 格 、取 引 形 式 、主 な 原 材 料 、内 容 量 、
商 品 サ イ ズ 、1 ケ ー ス あ た り 入 数 、保 存 方 法 、ア レ ル ギ ー 表 示 、
賞味・消費期限、発注リードタイム等
【 非 食 品 】希 望 小 売 価 格 、希 望 卸 売 価 格 、取 引 形 式 、内 容 量 、商 品 サ イ
ズ 、 カ ラ ー 、 素 材 、 原 産 地 ( 原 材 料 )、 最 終 産 地 、 1 ケ ー ス あ
たり入数、発注リードタイム等
ターゲット
販路先だけでなく、最終消費者であるお客様のターゲットも記載する
利用シーン
商品特徴については、自社のこだわりや他商品との違いを明確化する
商品特徴
商品画像
商品が一番美しく、おいしそうに見える画像を選択する
忙しいバイヤーにとって画像から伝わる情報が非常に重要となる
企業情報
基本的な企業の情報(企業名・代表者名・担当者名・事業規模・従業員
数・連絡先・沿革等)に加え、自社の特徴(経営姿勢・モノづくりへの
こだわり・表彰歴等)や代表者のメッセージ等を記載する
生産・製造工程
工 場 等 は 商 品 か ら だ け で は 分 か ら な い の で 、製 造 工 程 の 説 明 や こ だ わ り
の設備、工場全体像等の画像を記載する
品質管理情報
商品検査体制、消費者クレームの検査システムや対応マニュアルの有
無、PL保険加入状況等を記載する
■ その他の資料
自 社 プ レ ゼ ン 資 料 や 商 品 シ ー ト に 加 え 、個 別 商 談 な ど で は 商 談 先 毎 に 先 方 の
売 場 を 想 定 し た 提 案 書 等 を 用 意 し て お く と 良 い で し ょ う 。ま た 、雑 誌 や 新 聞 、
WEB 等 で 取 り 上 げ ら れ た 記 事 や 今 ま で に 出 展 し た 展 示 会 、展 開 し た 店 舗 や 売 場
等 の 実 績 と い っ た 資 料 を 用 意 し て お く と 、自 社 や 商 品 の 裏 付 け 情 報 と し て 効 果
的です。
51
中小機構・小規模事業者支援ガイドブックⅢ
支援者としては、特に事業者から営業を受ける側の立場をイメージして、
営業ツールのブラッシュアップをサポートしましょう。
商品シートの書き方のアドバイスは、
「 F C P 展 示 会・商 談 会 シ ー ト 作 成 の
手 引 き 」に ポ イ ン ト が 分 か り や す く ま と め ら れ て い ま す の で 、そ れ を 参 照 し な
が ら 進 め れ ば 取 り 組 み や す い で し ょ う 。ま た 、商 工 会 議 所・商 工 会・中 央 会 の
支 援 者 に と っ て は 、商 品 シ ー ト の 記 載 内 容 と し て「 J A N コ ー ド 」や「 P L 保
険加入状況」があるため、これらに関する業務にも展開できるでしょう。
JANコード :商工会議所、商工会が登録窓口となっている
PL保険
:商工3団体(商工会議所、商工会、中央会)により、会員の中小企業者向け
に「中小企業PL保険制度」が整備されている
営 業 ツ ー ル の ア ド バ イ ス は 、経 験 の 浅 い 支 援 者 と し て も 取 り 組 み や す い 内 容
と 思 わ れ ま す し 、知 識 や ノ ウ ハ ウ の 蓄 積 に も つ な が り ま す の で 、積 極 的 に 取 り
組まれるとよいでしょう。
(3)販路に応じたアプローチ
商 品 に コ ン セ プ ト が あ る の と 同 様 に 、販 路 で あ る 小 売 店 等 に も そ れ ぞ れ の コ
ン セ プ ト が あ る た め 、そ の コ ン セ プ ト に 適 合 し た 商 品 で な け れ ば 取 引 に つ な が
ら な い こ と も よ く あ り ま す 。よ っ て 、最 終 的 な お 客 様 だ け で な く 、販 路 と し て
ターゲットとなる小売店等の視点を踏まえた営業活動が重要です。それぞれ
の販路先によってアプローチの仕方を変えるような対応も必要となります。
販 路 に 応 じ た ア プ ロ ー チ を 行 う に は 、 ま ず は 「 ど こ で 売 る の か 」、 販 路 と し
て タ ー ゲ ッ ト と な る 先 を 明 確 に す る 必 要 が あ り ま す 。そ の う え で 、タ ー ゲ ッ ト
となる販路先のことを十分に研究し、誰が仕入れ権限者なのかを調査します。
あ と は 直 接 営 業 か 、様 々 な ネ ッ ト ワ ー ク 等 を 活 用 し て 積 極 的 に ア プ ロ ー チ を か
けることとなりますが、その際も、販路先の商品計画や販売計画を見越した
営業活動が重要です。また、商品シートの書き方やプレゼンテーション能力
も重要なポイントとなります。
■ バイヤーの業務とニーズの理解
狙 っ た 販 路 先 に 自 社 商 品 を 取 り 扱 っ て も ら う た め に は 、商 品 を 仕 入 れ て 品 揃
え を 行 う 責 任 者 で あ る バ イ ヤ ー の 心 を つ か む 必 要 が あ り ま す 。一 般 的 に 、流 通
業 の バ イ ヤ ー は 、業 務 の 多 様 化 に 伴 い 、商 談 時 間 、情 報 収 集 時 間 が 年 々 少 な く
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中小機構・小規模事業者支援ガイドブックⅢ
な っ て き て い る 状 況 で す 。そ の た め 、限 ら れ た 機 会・時 間 で 、効 果 的 な 商 談 や
商 品 の 紹 介 、提 案 を 行 う た め の 調 査 や 準 備 が よ り 重 要 に な っ て い ま す 。バ イ ヤ
ーのニーズ(心)に沿った提案ができるかを、事前によく検討する必要があ
ります。
小 売 業 の 売 場 は「 品 揃 え 」が 重 要 で す の で 、商 品 提 案 す る に あ た っ て も 、単
品 提 案 よ り 面 を 意 識 し た 提 案 を 心 掛 け る と よ い で し ょ う 。商 品 提 案 を す る 時 に 、
売 場 を 事 前 に 視 察 し 、自 社 商 品 の 取 り 扱 い 余 地 を 検 討 す る と 、商 談 成 約 率 が 高
まる可能性があります。
バイヤーの業務
バイヤーのニーズ
商品発掘・品揃え
現定番を超える商品
売価決定・粗利MIX
利益の取れる商品
競合調査・顧客分析
自社(自店)の顧客ニーズ
にマッチした商品
<バイヤーが求 める観 点 >
①商 品 、企 業 、経 営 者 に魅 力 が
ある か
②安 全 性 ・トレサビリティが確 立
してい るか
③消 費 者 との対 応 窓 口 がしっか
りしてい るか ( 危 機 管 理 )
④物 流 システムが確 立 している
か
⑤ 販 売 体 制 で協 力 が 得 ら れ るか
⑥ 適 正 な利 益 が 得 ら れ る か
⑦ 地 元 で認 め ら れ てい る の か
⑧マスコミなどに取 り上 げられ、
話 題 に なっ てい る か
■ ターゲットとなる販路先の売場を知る
ターゲットとなる販路先を選定したら、アプローチする前にしっかりと情
報収集することが不可欠です。特に、実際に商品が置かれる、あるいは置い
て 欲 し い 売 場 の 状 況 は 、あ ら た め て 十 分 に 情 報 収 集 や 研 究 を 行 っ た う え で 、ア
プ ロ ー チ の 方 法 を 検 討 し て お く 必 要 が あ り ま す 。タ ー ゲ ッ ト 先 の 売 場 に 置 か れ
て い る 商 品 は バ イ ヤ ー が 売 り た い と 思 っ た 商 品 で あ る こ と 、売 場 の ス ペ ー ス は
限られるので既に置かれているそれらの商品を押し退けないといけないこと
を 、今 一 度 よ く 認 識 し た う え で 、ど う し た ら バ イ ヤ ー に 自 社 商 品 を 置 き た い と
思ってもらえるかという視点で考えなければなりません。
以 下 に 、タ ー ゲ ッ ト 先 の 売 場 を 知 る 際 の 観 点 を ま と め ま し た の で 、参 考 と し
てください。
53
中小機構・小規模事業者支援ガイドブックⅢ
ターゲット先の売場を知る際の観点
□ 会社を知る
ホ ー ム ペ ー ジ や イ ン タ ー ネ ッ ト の 記 事 、雑 誌 や 書 籍 等 か ら 、会 社 概 要 や 事 業 内
容 を 把 握 し ま し ょ う 。上 場 企 業 で あ れ ば 、有 価 証 券 報 告 書 や 株 主 総 会 時 の 説 明 資
料等もインターネット上で簡単に入手できる可能性が高く、詳細に把握できま
す。入手が難し い場合 は、支援機関や 取引先(卸売業者、他メー カ ー)から情報
収集する方法を探ってみましょう。
□ 顧客を知る
立 地 環 境 や 近 隣 の 世 帯 状 況 等 の 情 報 を 、会 社 や 行 政 機 関 の ホ ー ム ペ ー ジ や 地 図
情 報 等 か ら 把 握 し 、ど の よ う な 客 層 が 顧 客 と な っ て い て 、ど の よ う に 利 用 さ れ て
いるのかをイメージしましょう。
□ ストアコンセプトを知る
ス ト ア コ ン セ プ ト が 明 示 さ れ て い る ケ ー ス は 少 な い と 思 い ま す が 、会 社 の ホ ー
ム ペ ー ジ の 企 業 理 念 や 沿 革 、採 用 情 報 に 記 載 さ れ た 文 章 等 か ら 、そ の 方 向 性 を 推
測できます。店舗展開(店舗数・立地)や価格戦略等も把握しておきましょう。
□ 品揃え・競合を知る
小 売 業 で は 、『 5 適 』(「 適 時 」「 適 品 」「 適 量 」「 適 所 」「 適 価 」) を 意 識 し た 商 品
政 策 に よ り 、ス ト ア コ ン セ プ ト を 実 現 す る た め の 品 揃 え が 行 わ れ て い ま す 。タ ー
ゲットとする販路先がどのような方針で品揃えを行っているのかを把握してお
く 必 要 が あ り ま す 。ま た 、競 合 す る 商 品 の 品 揃 え の 状 況 や そ れ ら が ど の よ う に 取
り 扱 わ れ て い る か を 把 握 す る こ と も 非 常 に 重 要 で す 。実 際 に は 、売 場 を 見 て 把 握
する必要があるでしょう。
□ ストアレイアウトを知る
自 社 商 品 を ど こ に 並 べ て ほ し い の か 、販 売 促 進 を ど の 場 所 で ど の よ う に 行 っ て
ほ し い の か を 提 案 す る た め に も 、ス ト ア レ イ ア ウ ト を 把 握 し て お く 必 要 が あ り ま
す。ホームページの店舗情報である程度は事前に把握できるでしょう。
□ 実際の売場を見る
上 記 の よ う な 情 報 を 収 集 す る た め に も 、や は り 実 際 の 店 舗 を 訪 れ 、視 察 を 行 う
べ き で し ょ う 。事 前 に あ る 程 度 の 情 報 収 集 を し た う え で 、仮 説 を 持 っ て 実 際 の 売
場 を 見 て み ま し ょ う 。遠 隔 地 で 訪 問 す る こ と が で き な い 場 合 で も 、取 引 先 や 近 隣
の知人等を介して情報収集する方法を検討してみましょう。
支 援 者 と し て は 、タ ー ゲ ッ ト と な る 販 路 先 が 明 確 に な っ て い る か 、実 際 の 売
場 を 見 る こ と を 含 め て タ ー ゲ ッ ト 先 を よ く 研 究・調 査 で き て い る か 、と い う 観
点を重視してアドバイスを行うとよいでしょう。
業 態 や 商 品 分 野 、そ れ ぞ れ の 企 業 の 方 針 、店 舗 コ ン セ プ ト な ど 様 々 な 要 因 に
よ っ て 、取 引 の 仕 組 み や バ イ ヤ ー の 考 え 方 が 異 な っ て し ま う た め 、一 般 論 と し
て 販 路 に よ る 違 い を 整 理 す る の は 困 難 で す が 、多 く の 事 業 者 の 実 情 を 見 て い る
支 援 者 だ か ら こ そ 違 い が 見 え や す い 面 も あ る で し ょ う 。経 験 豊 富 な 支 援 者 に 相
談 し た り 、支 援 機 関 内 で 定 期 的 に 情 報 共 有 し た り し て 、販 路 に よ る 特 徴 や 気 を
付 け て お く べ き 点 等 の 最 新 情 報 を 仕 入 れ て お き 、事 業 者 へ の ア ド バ イ ス に 活 か
せるように心がけましょう。
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中小機構・小規模事業者支援ガイドブックⅢ
(4)展示会、商談会、販売会の活用方法
展示会、商談会、販売会は、販路開拓・拡大、ビジネスパートナーの発掘、
今 後 の 商 品 開 発 や 商 品 見 直 し の た め の 絶 好 の 場 で す 。事 業 化 を 促 進 す る た め に
は 、こ れ ら の 場 を 積 極 的 に 活 用 し ま し ょ う 。な お 、そ れ ぞ れ の 特 徴 や 違 い を 理
解 し た う え で 、自 社 の 目 的 や 狙 い に 合 っ た 場 を 選 択 し 、有 効 に 活 用 す る こ と が
重要です。
①展示会の活用方法
■ 展示会の活用目的
展示会の主な活用目的は、概ね以下の 5 つとなります。
□ 商談機会の獲得
新規顧客獲得や業務提携先を見つける重要なチャンスの場となり
ます
□ 来場者のニーズ調査
来 場 者 の ニ ー ズ に 直 接 触 れ る こ と が で き る の で 、今 後 の 商 品 開 発
や商品見直し、販売計画に役立つ情報を効率的に収集できます
□ 情報発信・自社PR
多 く の 来 場 者 に 対 し て 自 社 を P R し 、商 品 情 報 を 発 信 す る 絶 好 の
機会です
□ 情報収集
競 合 企 業 の 動 向 も 貪 欲 に 把 握 し ま し ょ う 。ま た 、異 な る 業 種 の 方 々
と の 交 流 に よ り 、新 た な 視 点 を 得 て 、次 な る ビ ジ ネ ス に つ な が る こ と
も期待できます
□ 人材育成
出 展 を 通 じ て 、従 業 員 の モ チ ベ ー シ ョ ン ア ッ プ や プ レ ゼ ン ス キ ル
の向上も期待できます
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中小機構・小規模事業者支援ガイドブックⅢ
■ 展示会の種類
展 示 会 は 、製 品 分 野 、販 路 に よ り 多 種 多 様 な も の が 開 催 さ れ て い ま す 。展 示
会 の 主 催 者 と そ の 特 徴 、過 去 の 参 加 企 業 や 来 場 者 の 実 績 、出 展 の 条 件 等 を 確 認
し、自社の目的や狙いに合った展示会を選択して有効に活用しましょう。
■ 展示会の攻略法
こ こ で は 、展 示 会 出 展 の 一 連 の 流 れ と 成 果 に つ な げ る た め の ポ イ ン ト を ま と
めました。様式集の「展示会チェックリスト」とあわせてご活用ください。
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中小機構・小規模事業者支援ガイドブックⅢ
【展示会攻略のポイント】
☆ 主催者任せにしない集客と事前準備
集 客 は 主 催 者 と 出 展 者 の 双 方 で 行 う べ き こ と と 認 識 し 、自 社 展 示 予 定 の 会 社 案 内 や 製 品
カタログ等を同封した招待状を、既存顧客や見込み顧客へ忘れずに送付
来 場 予 定 者 が 、 事 前 に 情 報 を 確 認 で き る よ う に 、 自 社 HP な ど で の 出 展 情 報 を 発 信
専 門 媒 体 紙 ( 誌 ) に 本 展 に 出 展 す る 旨 と 展 示 予 定 商 品 の 詳 細 を 掲 載 し PR
話題の店舗等の情報を集め、来場者のニーズを分析
案 内 状 や メ ル マガ で
来 場 促 進 を!
☆ 来訪者の興味を喚起する商品展示・ブース装飾の工夫
展示も見易さ、分かり易さが基本。見せたいモノを前面に!
来 場 者 が 手 に 触 れ た く な る よ う な 陳 列 、照 明 効 果 、カ ラ ー パ ネ ル 、ポ ス タ ー 、の ぼ り 旗
などを用意して、実際の売場イメージをかきたてよう!
売 場 で す ぐ 使 え る POP 、 分 か り 易 い キ ャ ッ チ コ ピ ー 、 注 目 キ ー ワ ー ド ( 安 全 ・ 健 康 )
なども見易く表示
《 例 》「 本 展 示 会 に て 先 行 発 表 の 商 品 を 展 示 中 で す 。」
「 有 機 素 材 の ○ ○ を 試 食 提 供 中 で す 。」
ファ ース ト イン プレ ッ シ ョ ン は
「簡単便利な新提案」
など
大 切 です。
「近 づきやすい雰 囲 気 」で、
好 印 象 を 持 って も らお う !
☆ 限られた時間で説明・商談しやすい空間づくり
「 笑 顔 」「 挨 拶 」「 感 謝 」 を 大 切 に !
商 品 や ツ ー ル 、 商 品 カ ル テ ( 仕 様 書 )、 チ ラ シ 、 パ ン フ レ ッ ト 、 ア ン ケ ー ト 、 名 刺 な ど
の不足がないよう十分に用意
バ イ ヤ ー か ら 想 定 さ れ る 商 品 内 容 Q&A を 用 意
展示会場での限られた商談時間で訴求ポイントを簡潔に伝えられる商談のシナリオを
考 え て お く 【「 1 分 間 プ レ ゼ ン ト ー ク 」 を 事 前 準 備 し 、「 ロ ー プ レ 」 し て お く 】
商品をきちんと説明できる担当者を 1 人でも多く配置
強 引 な ブ ー ス へ の 呼 び 込 み 、営 業 は 逆 効 果 に な り か ね な い 。ゆ っ く り ブ ー ス を 見 る こ と
ができるような環境づくりを心掛ける
必ず名刺をいただくこと
商 談 内 容 、 要 望 等 は 、 そ の 場 で 記 録 が 大 原 則 で す (商 談 メ モ の 用 意 、 名 刺 裏 書 き )
商 談 時 は プ レ ゼ ン だ け で な く 、来 場 者 が 求 め る 商 品 像 を 聞 き 出 す こ と ! 今 後 の 商 品 開 発
や販促計画にいかすチャンス
☆ 来場者だけでなく、出展者同士の交流も大切に
取引や業務提携に発展する可能性あり。交流を大切に
展 示 会 場 内 を 回 る だ け で も 、市 場 動 向 、ト レ ン ド 、競 合 商 品 の 調 査 が で き る 。貪 欲 に 情
報収集を!
☆ 出展後の迅速なフォローが、商談の成否を分けるカギ!
ただ し 、
「取 り込 み詐 欺 」には
要注意!
継続的なアフターフォローで商談成立へ
展 示 会 終 了 後 1 カ 月 も た っ て か ら フ ォ ロ ー す る の で は 遅 す ぎ ! す ば や い フ ォ ロ ー で 、な
お か つ 、取 引 先 用 に カ ス タ マ イ ズ し た サ ン プ ル を 作 成 す る な ど 工 夫 を し 、商 談 成 立 に 結
び付ける活動が必要
いただいた名刺を元に御礼及び懸案事項の回答を速やかに行うこと!(メールでも可)
訪 問 の ア ポ イ ン ト を 取 る 。断 ら れ て も“ ツ テ ”を 切 ら さ な い よ う 継 続 的 に 製 品 案 内 を 送
付し、時間を置いて再チャレンジ
消 費 者 向 け の 媒 体 に 広 告 掲 載 や TV・ラ ジ オ 等 の CM 放 映 等 の 予 定 が あ る 場 合 、そ の 旨
を案内
今回の出展成果を速やかに検証し、次回展示商談会出展への準備を進める
☆ 出展後は自社ホームページや自社広報媒体に出展報告を掲載
興 味 を 持 っ た 展 示 会 来 場 者 が 、自 社 ホ ー ム ペ ー ジ を 訪 れ る 可 能 性 は 高 い 。掲 載 情 報 の 整
理、更新を心がけよう!
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中小機構・小規模事業者支援ガイドブックⅢ
◎出展時に、分かっていても起こりがちな失敗の例
事 前 に 注 意 す べ き と 認 識 し て は い て も 、出 展 準 備 の 慌 た だ し さ 等 の 影 響 で 、
分 か っ て い て も 起 こ り が ち な 失 敗 が 意 外 と よ く 見 受 け ら れ ま す 。一 度 失 敗 を 経
験 し て 次 に 活 か す と い う こ と も あ り ま す が 、で き れ ば 折 角 の 出 展 機 会 を ケ ア レ
スミスなく成果につなげるため、よくある失敗の例を列挙しておきます。
(例 )・ 名 刺 を 切 ら し た ・ 商 品 や 商 品 カ タ ロ グ (資 料 )が 不 足 し 、 急 き ょ 会 場 に 発 送 し た
・試食を調理するのに、水回りの手配や器具等の準備が足りなかった
・ 展 示 計 画 ( VMD) を 立 て な か っ た た め 、 必 要 な 什 器 が そ ろ え ら れ な か っ た
・その場で要望をメモするのを忘れて、後の商談機会を逃してしまった
・1名で参加したため、ブース管理が疎かになった(展示商品や頂いた名刺が盗難)
・会 期 中 、商 談 や 主 催 者 企 画 に 多 く 参 加 す る こ と が 事 前 に 分 か っ て い た の に 、1 名 で
参加してしまい、新規顧客の獲得チャンスを逃してしまった
等
◎「取り込み詐欺」には十分に注意しましょう!
展 示 会 等 へ 出 展 し た 際 は 、基 本 的 に は 出 展 後 の 迅 速 な フ ォ ロ ー が 商 談 成 立 に
欠 か せ ま せ ん が 、一 方 で 、出 展 者 の 売 り た い 気 持 ち を 逆 手 に と っ た「 取 り 込 み
詐欺」には十分に注意が必要です。
「取り込み詐欺」の手口にも様々なケースがあり、一概には言えませんが、
例 え ば 、展 示 会 後 に 何 度 か 少 額 の 取 引 を 繰 り 返 し て 支 払 実 績 を 作 り 相 手 側 を 信
用させ、ある時点で注文や取引の規模を大きくして後払いで商品を受け取り、
その後は二度と連絡がつかないようにして商品だけ処分してしまうといった
も の で す 。取 り 込 ま れ た 商 品 の 代 金 は 実 損 と な り ま す の で 、同 額 の 利 益 を 上 げ
よ う と す れ ば そ の 何 倍 も の 売 上 に 相 当 す る こ と と な り ま す 。中 小・小 規 模 事 業
者にとっては、数十万円の規模であっても大きな痛手となります。
対 策 と い っ て も「 こ れ を や れ ば 十 分 」と い う も の を 整 理 す る こ と は で き ま せ
ん が 、少 な く と も 以 下 の よ う な 対 策 を 重 ね て お く 必 要 が あ る と 考 え ら れ ま す の
で、参考としてください。
取り込み詐欺への対策の例
出展後、速やかに名刺を分類し、注意レベルを設定しておく
①知っている企業か、知らない企業か
②知らない企業であれば、ホームページ(HP)はあるか
HPあり⇒おざなりなHPではないか、怪しいところ等はないか
HPなし⇒他の手段で情報収集できないか(慎重に調査)
よく分からない企業は、他の機関等の協力も得て調査する
(例)
・出 展 し た 展 示 会 の 主 催 者 に 、該 当 企 業 に 関 す る 問 い 合 わ せ が 多 数 寄 せ ら
れていないか確認する
・地域の支援機関に情報がないか相談する
・取引金融機関の担当者に相談する
・取引のある流通業者から情報収集する
取 引 を 行 う 場 合 に は 、基 本 的 に は 相 手 先 を 訪 問 し て 、事 務 所 の 確 認 や 雰 囲 気 に 怪
しいところがないか等を確認する
58
中小機構・小規模事業者支援ガイドブックⅢ
②商談会の活用方法
■ 商談会の活用目的
商談会の主な活用目的は、概ね以下の3つとなります。
□ 商談成約
展 示 会 等 で 出 会 っ た バ イ ヤ ー と の 次 の ス テ ッ プ で す 。よ り 具 体 的 な
商談で成約につなげましょう
□ 最新の流通事情についての情報収集
バイヤーから消費者情報や市場のトレンドなどの情報収集ができる
チャンスです。商品の開発・改良につなげましょう
□ 情報網の拡充
バ イ ヤ ー と の 良 好 な 人 間 関 係 構 築 に よ り 、取 引 先 の 紹 介 や 新 た な
コラボレーション、事業展開へつなげましょう
※展示会と商談会の比較
展 示 会 と 商 談 会 の 大 き な 違 い は 、展 示 会 で は 、不 特 定 多 数 が 来 場 さ れ る の に
対 し 、商 談 会 で は 、商 談 相 手 が 特 定 さ れ て い る と い う こ と で す 。そ の た め 、そ
れ ぞ れ 目 的 や 商 談 ス タ イ ル が 異 な り ま す の で 留 意 し ま し ょ う 。以 下 の 展 示 会 と
商談会の比較表を参考にしてください。
展示会
個別商談
目的
商談機会獲得(名刺収集)・
会社PR・マーケティング
商談成約・マーケティング
時間
3分~10分程度
30分程度
場所
ブース形式で出入り自由
原則個室又は商談フロア
説明
ポイントを簡潔に
ポイントを掘り下げて
事後フォロー
初動が重要
中身が重要
商談相手
不特定
特定
商談先調査
不可能
可能
事前準備(サンプル)
旗艦商品を大量に
多品種少量
レイアウト
売り場(使い方)を意識
提案書に反映
商品カルテ
必須
必須
提案書
一般的なもの
企業ごとにカスタマイズ
59
中小機構・小規模事業者支援ガイドブックⅢ
■ 商談会の種類
商談会は、主に以下の4つの形態に大別できます。
■ 商談会の攻略法
こ こ で は 、商 談 会 の 一 連 の 流 れ と 成 果 に つ な げ る た め の ポ イ ン ト を ま と め ま
し た 。商 談 会 に 臨 む に あ た っ て は 、事 前 調 査 と 、商 談 で の 提 案 内 容 が 重 要 に な
ります。
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中小機構・小規模事業者支援ガイドブックⅢ
相 手 を 知 らず に、
いい 提 案 は で きま せ ん!
相 手 に と って の メ リッ トを
ア ピ ール でき るよ う に
リサ ーチ しま し ょ う!
【商談会攻略のポイント】
☆ 事前調査は綿密に
訪問企業の内容や直近の新聞記事、話題等までしっかり仕込んでおこう!
現在、先方の売場にある商品を押しのけなければならないことを認識し、店舗を見て、
客層、品揃え、ストアレイアウト、競合商品を事前に調査分析して臨む
☆ ニ ー ズ に 応 じ た 商 品 の PR と 売 場 提 案
先方のニーズに合わせてカスタマイズした提案を用意する
商品は、定番商品か、スポット商品か、どこの売場で売るのかを想定して売り込む
単に品質が良い、価格が安いだけでは売れない。生活催事、シーンの提案で売る
先方の売場を想定した提案書を必ず持参しよう!
☆ 時間配分と商談シナリオを考えて
商 談 時 間 3 0 分 だっ た ら・ ・ ・
会 社 説 明 3 分 、商 品 説 明 7 分 、
バイヤーからの質 問 10 分 、
取 引 内 容 5 分 、 ク ロー ジ ング 2 分 、
予備時間 3 分
商品説明は優先順位をつけて時間配分を
限 ら れ た 時 間 の 中 で 、 10 分 で 1 品 目 の 売 り 込 み が 妥 当 ( 30 分 で 3 品 ま で )
商 談 シ ナ リ オ を 考 え 、 訴 求 ポ イ ン ト は 簡 潔 に 。 自 社 商 品 の 存 在 価 値 、“ 売 り ” は 何 か ?
を自信をもって説明できるようにしよう!
品質管理に関するデータがあればなおベター
☆ 商 品 の ス ト ー リ ー で 効 果 UP
商品の長所や品質の紹介だけでなく、
「 開 発 に 取 り 組 ん だ 経 緯 」、
「消費者との交流状況」
や、いわゆる「うんちく」話など、人の心に響くような情報を付加することによって、
売込みの効果UPを図ろう
話が下手でも、商品への思い、熱意は伝えられます
あれ もこ れ も 話 を 進 め る
バイヤーが話題を変えようとするのは提案商品に関心のない証拠。
の で は な く 、バ イヤ ーが
い っ た ん そ の 話 題 に の っ て 、 自 分 の 商 品 を 売 り 込 む 糸 口 を 探 そ う ! 関 心 を も った 商 品 を メ イ ンに !
☆ 第一印象が大切
商 談 中 の腕 組 みや、
相 手 に不 快 感 を与 える
姿 勢 は NG!
熱 意 を も って !
明るく、笑顔の対応を!あいさつや感謝を伝えることも忘れずに!
バイヤーは 1 日に何人もの商談をこなし多忙のため、気分良く話を聞いてもらおう!
「 昨 年 買 っ て も ら っ た 」、「 私 の 顔 立 て て 」 は 、 バ イ ヤ ー に 無 関 係 の た め 、 禁 句
☆ 試食は必須(食品の場合)
現 物 が 出 品 可 能 な 商 品 に つ い て は 、試 食・試 飲 を 必 ず 用 意 し 、バ イ ヤ ー に 味 を み て も ら
おう!加えて、配布できるサンプル品があれば、併せて用意しておこう
時期的に現物が出品できない商品については、写真等ビジュアルとして説明できる資
料・資材を用意しておき、現物提供が可能な時期を説明すること。
必 要 に 応 じ て 、 バ イ ヤ ー に 対 し 、「 ○ 月 ○ 旬 頃 に 、 サ ン プ ル の 提 供 が 可 能 で す の で 、 再
度、ご商談させていただきたいのですが」といった提案をしよう
味や香り、食感などの感想は必ず聞く!
必 要 な消 耗 品 ・器 具 も用 意 。
前 の 商 品 の 味 を 消 す ため の
水 の用 意 も忘 れずに・・・
☆ 価格の話
価 格 や 原 材 料 、物 流 費 の 話 に な れ ば 、チ ャ ン ス 到 来 。バ イ ヤ ー は 買 う 気 に な っ て い る ! ?
販路、取引形態で中間コストがかかるという事前想定をしておくこと
ただ し 、
「取 り込 み詐 欺 」には
要注意!
☆ 商談後はこまめな連絡を
一両日中に御礼をしよう!
多忙なバイヤーからの連絡を待っていたら、良い商品でも埋もれてしまうと認識する
商 品 を 小 出 し で 紹 介 し た り 、こ ま め な ア プ ロ ー チ を 心 掛 け 、バ イ ヤ ー と の 良 好 な 関 係 を
築こう
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中小機構・小規模事業者支援ガイドブックⅢ
③販売会の活用方法
■ 販売会の活用目的
販 売 会 は 、一 般 消 費 者 と の 接 点 を 持 ち 、反 応 を 見 る こ と が で き る の が 特 徴 で
す 。よ り 効 果 的 に 活 用 す る た め に は 、事 前 に 客 層 を リ サ ー チ し た う え で 、販 売
目 的 、売 上 目 標 を 定 め て 臨 む こ と が 重 要 で す 。販 売 会 の 主 な 活 用 目 的 と し て は 、
概ね以下の4つがあげられます。
□ 物販での売上獲得
□ 自社商品に対する消費者の反応の確認
□ 新商品のテストマーケティング
□ 開発コンセプトの再確認(ターゲットの嗜好、性別、年齢等)
■ 販売会の攻略法
こ こ で は 、販 売 会 の 一 連 の 流 れ と 成 果 に つ な げ る た め の ポ イ ン ト を ま と め ま
した。様式集の「販売会チェックリスト」とあわせてご活用ください。
【販売会のフロー】
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中小機構・小規模事業者支援ガイドブックⅢ
狙 いの 顧 客 に合 わ せ た
商 品 選 定 と販 売 価 格 設 定 !
【販売会攻略のポイント】
☆ 販売場所の立地と顧客動向を事前に把握
事前に客層や客数、客入りピーク時間、客単価等の情報をリサーチ
☆ 購買行動・顧客心理をキャッチして売れる売場づくり
店ブースのコンセプトと目的を明確に!
回遊しやすい環境、見やすく選びやすい陳列、試せること(触・食)が必要!
ひ と め で わ か る POP や 、 商 品 づ く り の こ だ わ り を 伝 え ら れ る 説 明 を !
☆ 対顧客トーク
参 加 者 全 体 で ひと つ の 販 売 会
とい う 連 帯 感 を も って 、
買 いや すい 雰 囲 気 を 作 ろ う!
まずは元気な挨拶を
顧客の意見は肯定型で聞く
クレームや、特殊要望を受けたら、事務局へ相談し対応する
☆ 再購入へつなぐ
販売場所案内、自社HP紹介等も忘れずに!
支援者としては、事業者が展示会や商談会等に参加する際に、朝の準備
段階から一緒に入って一連の流れをつかむようにすると良いでしょう。事
業者の商品に対して、バイヤー等からどのようなコメントやリクエストが
出ているのかを把握できるとともに、実際の現場での商品の状況や事業者
の対応を観察することができます。また、事業者は商品の売り込みに精一
杯で、バイヤー等からアドバイス等があっても認識できていないケースが
よくありますので、議事録やメモを取ってフィードバックするだけでも大
いに役立つはずです。是非現場を実体験して、まずは現場の雰囲気をつか
んだうえで、その後の支援につなげましょう。
展示会等の開催情報を提供したり、事業者の状況に応じた最適な展示会
等の選択をアドバイスすること等も積極的に行いましょう。
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中小機構・小規模事業者支援ガイドブックⅢ
(5)インターネットの活用
情 報 化 の 進 展 に 伴 い 、ホ ー ム ペ ー ジ や S N S 、ネ ッ ト シ ョ ッ プ を 活 用 す る こ
と で 、地 域 の 中 小・小 規 模 事 業 者 で あ っ て も 、全 国 あ る い は 全 世 界 に 向 け て 情
報 発 信 し 、自 社 の 商 品 を 販 売 す る こ と が 可 能 と な っ て い ま す 。ま た 、生 活 者 も 、
多くの人が日常的にパソコンやスマートフォン等を使って情報収集を行って
お り 、何 か を 調 べ よ う と す れ ば ま ず は イ ン タ ー ネ ッ ト で 検 索 す る こ と が 一 般 的
な行動となっています。
●国民の 5 人に 4 人がインターネットを使う時代
13 歳 ~ 49 歳 の イ ン タ ー ネ ッ ト 利 用 は 100% に 近 い 。 50 代 も 9 割 超
●インターネット利用者の 4 割以上が商品・サービスの購入に利用
20 代 ~ 50 代 で は 5~ 6 割 が 利 用
● 小 規 模 事 業 者 で 5 割 弱 、中 規 模 企 業 で 約 8 割 が 自 社 ホ ー ム ペ ー ジ を 開 設
ホームページの開設が販売先数の増加につながっている
※ 平 成 26 年 通 信 利 用 動 向 調 査 ( 総 務 省 ) 及 び 2013 年 中 小 企 業 白 書 ( 中 小 企 業 庁 ) の デ ー タ 等 を も と に 記 載
こ の よ う な 状 況 を 踏 ま え れ ば 、中 小・小 規 模 事 業 者 で も 、基 本 的 に は 事 業 に
インターネットを活用する方向で考えるべきでしょう。特に、物理的に域外
への進出が容易ではなく、人員や資金的にも限られている事業者にとっては、
それらを克服できる非常に重要なツールであると認識しましょう。
現 在 、自 社 ホ ー ム ペ ー ジ の 開 設 や ネ ッ ト シ ョ ッ プ の 出 店 は 非 常 に 手 軽 に 始 め
られるインフラが整っています。ただし、単に始めただけで顧客が増えたり、
商 品 が 売 れ た り す る わ け で は な く 、計 画 的 か つ 継 続 的 に 情 報 を 更 新・発 信 し た
り 、ア ク セ ス 分 析 や SEO 対 策 を 行 っ た り 、体 制 と 人 員 を 整 え た り す る こ と が
必 要 で す 。例 え ば 、せ っ か く バ イ ヤ ー が 興 味 を も っ て ホ ー ム ペ ー ジ を 閲 覧 し て
も、最新のトピックスやニュースが 1 年以上前のもので更新されていなけれ
ば、かえって印象を悪くしてしまうでしょう。始めたからには、しっかりと
計画や運営方法を定めて、着実に実行していくことが大変重要です。
ホ ー ム ペ ー ジ や S N S 、ネ ッ ト シ ョ ッ プ の 活 用 に つ い て は 、多 く の 支 援 機 関
が ホ ー ム ペ ー ジ や セ ミ ナ ー 等 で 情 報 提 供 し た り 、窓 口 相 談 を 実 施 し た り 、あ る
い は 自 ら ネ ッ ト シ ョ ッ ピ ン グ モ ー ル を 運 営 し た り し て い ま す の で 、ま ず は 支 援
機 関 を 活 用 し て 十 分 に 情 報 収 集 し た う え で 、自 社 な り の 目 的 や 狙 い を 考 え て 進
めましょう。
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中小機構・小規模事業者支援ガイドブックⅢ
インターネット活用の情報収集源(例)
●EC(eコマース)支援【中小機構】
http://www.smrj.go.jp/venture/092993.html
⇒ 中 小 機 構 で は e コ マ ー ス( 電 子 商 取 引 )に 取 り 組 む 中 小・小 規 模 事 業 者 の 支
援 に 注 力 し て お り 、 講 義 形 式 の 動 画 に よ っ て EC を 基 礎 か ら 学 べ る オ ン ラ イ
ン講座の配信や全国各地での実践講座の開催を展開しています
● 商 工 会 議 所 ラ イ ブ ラ リ ー ( I T を 経 営 に 活 か し た い )【 日 本 商 工 会 議 所 】
http://library.jcci.or.jp/category/it/
⇒商工会議所および行政機関等が作成した中小企業の経営者に資する各種資
料 、ガ イ ド ブ ッ ク 、パ ン フ レ ッ ト 等 が 電 子 書 籍 形 式( P D F 形 式 )で 掲 載 さ
れています
支援機関運営のネットショッピングモール(例)
●ニッポンセレクト
http://www.nipponselect.com/shop/
⇒全国商工会連合会公式サイトのショッピングサイト
●おもてなしギフト
http://omotenashi-gift.jp/
⇒ 日 本 商 工 会 議 所 、全 国 の 商 工 会 議 所 と 連 携 し 、横 須 賀 商 工 会 議 所 が 運 営 す る
ショッピングサイト
地 域 の 中 小・小 規 模 事 業 者 に と っ て 、イ ン タ ー ネ ッ ト の 活 用 は 実 践 す べ き 重
要 な テ ー マ と な っ て い ま す の で 、支 援 者 と し て も 積 極 的 に サ ポ ー ト し ま し ょ う 。
ま た 、事 業 者 の ホ ー ム ペ ー ジ 等 に つ い て 、そ の ホ ー ム ペ ー ジ 等 を 見 る 、利 用
する側の目線に立って、客観点なアドバイスを行うことも有効です。
(6)海外展開の検討
少子高齢化による社会構造の変化により国内需要が減少傾向にあるなかで、
中 小・小 規 模 事 業 者 の 開 拓 す べ き 市 場 と し て 海 外 市 場 も 重 要 な 選 択 肢 の 一 つ と
な っ て い ま す 。実 際 に 、地 域 資 源 を 活 用 し た 事 業 の 事 例 の 中 に も 、海 外 展 開 に
積極的にチャレンジしている例は少なくありません。
ま た 、政 府 も 力 を 入 れ て い る 訪 日 外 国 人 旅 行 者 の 増 加 に 伴 う 、い わ ゆ る イ ン
バ ウ ン ド 消 費 を タ ー ゲ ッ ト と し た 事 業 展 開 も 、広 義 で は 海 外 販 路 拡 大 へ の チ ャ
レンジと言えるのではないでしょうか。地域の中小・小規模事業者としても、
検討してみる価値のある取り組みの一つと考えられます。
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中小機構・小規模事業者支援ガイドブックⅢ
一 方 で 、海 外 展 開 に は 国 内 事 業 に も 増 し て 様 々 な リ ス ク が 伴 う こ と か ら 、多
岐 に わ た っ て 十 分 な 検 討 を 重 ね て お く 必 要 が あ り ま す 。代 表 的 な 検 討 項 目 と し
て 、① 政 治・経 済・社 会 情 勢 、② 法 規 制 、③ 労 務・社 内 管 理 、④ ビ ジ ネ ス パ ー
ト ナ ー 、⑤ マ ー ケ テ ィ ン グ 、⑥ 人 材 、⑦ 資 金 、⑧ 知 的 財 産 、と い っ た 項 目 が 考
え ら れ 、そ れ ぞ れ の 中 身 も 国 や 地 域 に よ っ て 異 な っ て く る こ と を 十 分 に 認 識 し
ておきましょう。
ま た 、海 外 展 開 を 成 功 に 導 く た め に は 、以 下 の よ う な 点 が 特 に 重 要 な ポ イ ン
トになると考えられます。
□ 海外展開の目的を明確化して、固い決意を持って全社を挙げて取り組む
□ 事前に入念な調査を行い、それに基づいた事業戦略・計画を策定する
□ 補助金等も活用し、できる限り直接投資金額を低減しておく
□ 海外進出形態やビジネスパートナーの選定は慎重に検討する
□ 海外進出後も、環境変化に常に注意を払い、継続的に事業を見直す
海 外 展 開 に 関 し て は 、多 く の 公 的 機 関 が 力 を 入 れ て 、様 々 な 支 援 メ ニ ュ ー を
提供しています。海外展開の検討にあたっては、初期の段階から最大限公的
な支援を活用し、専門家等のアドバイスを受けながら進めるべきでしょう。
海外展開の相談窓口、情報収集源(例)
● 海 外 ビ ジ ネ ス の 専 門 家 に よ る 個 別 ア ド バ イ ス ( 窓 口 相 談 )【 中 小 機 構 】
http://www.smrj.go.jp/keiei/kokusai/advice/index.html
● 貿 易 投 資 相 談 【 日 本 貿 易 振 興 機 構 ( ジ ェ ト ロ )】
http://www.jetro.go.jp/services/advice/
● 海 外 展 開 に 役 立 つ 情 報 の 収 集 【 ミ ラ サ ポ ( 未 来 の 企 業 ☆ 応 援 サ イ ト )】
https://www.mirasapo.jp/overseas/index.html
https://www.mirasapo.jp/overseas/information/index.html
状況に応じた様々な支援施策
も一覧できて便利です。
中 小・小 規 模 事 業 者 で も 海 外 展 開 を 検 討 す る ケ ー ス は 増 え て お り 、非 常 に 重
要な選択肢の一つとなっています。
支 援 者 と し て は 、早 い 段 階 か ら 事 業 者 の 海 外 展 開 へ の 取 り 組 み の 意 向 を 確 認
し て お く と と も に 、海 外 展 開 支 援 機 関 へ の 橋 渡 し や 連 携 が ス ム ー ズ に 進 む よ う
にサポートしましょう。
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中小機構・小規模事業者支援ガイドブックⅢ
5.商品分野別のアプローチのポイント
Ⅱ .1 ~ 4 で は 、地 域 資 源 を 活 用 し た 商 品 づ く り の 各 段 階 に お け る 基 本 的 な
事 項 と 、そ れ ら を 支 援 す る に あ た っ て の 共 通 的 な ポ イ ン ト を ま と め ま し た 。一
方 、よ り 具 体 的 な 支 援 の 現 場 で は 、事 業 者 の 商 品 分 野 や 事 業 の 特 性 等 に よ っ て
アプローチが異なってくることが十分に考えられます。
こ こ で は 、「 食 品 」、「 工 芸 品 等 」、「 観 光 」 の 分 野 を 取 り 上 げ 、 そ れ ぞ れ の 商
品分野別に補足しておくべき観点を解説します。
(1)食品
< 「 出 会 ・ 発 掘」 段 階 >
□ 展示会や地元金融機関を活用しましょう
各 種 展 示 会 視 察 は 事 業 者 発 掘 の 場 と し て 有 効 で す 。展 示 会 も 地 域 で 行 う も
の か ら 大 規 模 展 示 会 ま で 様 々 で す が 、首 都 圏 等 で 行 わ れ る 大 規 模 展 示 会 に 出
展する企業は域外に販路を求めて積極的に出展している可能性が高いため、
支援後の企業成長の伸びも期待できる傾向があります。
地 元 開 催 の 展 示 会 は 、「 原 石 」 企 業 も 安 定 企 業 も 入 り 混 じ り な が ら の 出 展
の 可 能 性 も あ る た め 、発 掘 方 針 を 決 め て 訪 問 す る こ と が 肝 要 で す 。 ま た 、 地
元 金 融 機 関 が 融 資 先 の 販 路 開 拓 を サ ポ ー ト し て い る 例 も 多 い た め 、金 融 機 関
経由で企業紹介をしてもらうのも効果的です。
< 「 商 品 コ ン セプ ト づ く り 」 段 階 >
□ 実地のニーズ調査から入りましょう
既 存 原 料 の 有 効 活 用 な ど の コ ン セ プ ト か ら 商 品 づ く り に 入 る と「 プ ロ ダ ク
トアウト型」商品になり、市場ニーズのない商品になる恐れがあります。小
売 り の 店 頭 に 行 っ て 、売 れ て い る 商 品 を 調 査 す る と お お よ そ の ニ ー ズ が わ か
り ま す 。価 格 、量 目 、デ ザ イ ン の 比 較 、購 入 可 能 な ら 購 入 し 実 食 し ま し ょ う 。
棚に並んでいる商品はバイヤーがよいと思って導入しているわけですから、
そ れ を 上 回 る 魅 力 の あ る 商 品 し か 導 入 は 見 込 め ま せ ん 。こ れ ら は 基 本 的 な マ
ーケティング活動といえます。
な お 、よ り 日 常 の 生 活 に 近 い 消 費 者 ニ ー ズ に 応 え る 食 品 分 野 で は 、バ イ ヤ
ー の 求 め る ニ ー ズ に も 特 有 の も の が あ り ま す 。こ こ で は 、食 品 ス ー パ ー 系 バ
イヤーが一般的に求めるニーズを列挙しましたので、参考としてください。
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中小機構・小規模事業者支援ガイドブックⅢ
<食品スーパー系バイヤーが一般的に求めるニーズ>
<「商品開発・評価・改良」段階>
□ 評価・改良を重ねて完成品に仕上げる
最 終 商 品 ま で 作 り 込 む の で は な く 、 味 、 デ ザ イ ン 、 量 目 、価 格 な ど に 関 し
て PDCA 計 画 を 作 り 、 修 正 を 加 え ら れ る 開 発 プ ロ セ ス づ く り が 重 要 で す 。
例 え ば 、展 示 会 に 出 展 し て 試 作 品 を バ イ ヤ ー に 提 案 し 、修 正 項 目 な ど を 指 摘
し て も ら う の も よ い で し ょ う 。消 費 者 に 対 し て も 試 食 会 な ど を 設 け 、商 品 を
改良するスキームを入れておくと市場ニーズにマッチした商品に近づける
ことができます。
ま た 、こ の 段 階 で は 、専 門 的 な 知 識 を 有 す る 外 部 機 関 の 活 用 が 必 要 に な る
こ と が 想 定 さ れ ま す 。具 体 的 に は 、弁 理 士 等 の 士 業 の 方 々 、 衛 生 管 理 や 食 品
表 示 な ど を ア ド バ イ ス す る 企 業 、メ ー カ ー で 開 発 経 験 な ど の あ る コ ン サ ル タ
ントなどが考えられます。
<「販路開拓」段階>
□ まずは基本動作を着実に積み重ねましょう
一 番 手 間 の か か る フ ェ ー ズ で す 。開 拓 の タ ー ゲ ッ ト を 明 確 に し て 、粘 り 強
く 繰 り 返 す こ と が 重 要 で す 。例 え ば 、展 示 会 に 出 展 し て バ イ ヤ ー の 名 刺 を も
ら っ た ら 、サ ン プ ル を 送 っ て 訪 問 し て 商 談 を す る 、と い っ た 基 本 が ど れ だ け
できるかが極めて重要です。
ま た 、中 小 ・ 小 規 模 事 業 者 は 、 人 的 資 源 が 限 ら れ て い る ケ ー ス が 多 い こ と
から、業態、エリア等の絞り込みが重要です。例えば近隣の「道の駅」など
は 、小 売 店 と 直 接 取 引 が で き 、物 流 な ど も 自 社 で 完 結 で き る 可 能 性 が あ る た
め 、初 期 の 販 路 開 拓 先 と し て は 取 り 組 み や す い と 考 え ら れ ま す 。ま ず 地 元 の
支持を得るという意識は大切であり、バイヤーも「地域で売れている商品
か ? 」 を 注 目 し て い る 点 か ら も 、「 道 の 駅 」 な ど は 有 望 な 販 路 と な り ま す 。
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中小機構・小規模事業者支援ガイドブックⅢ
(2)工芸品等
< 「 商 品 コ ン セプ ト づ く り 」 段 階 >
□ シーズ発想は用途開発に陥るので注意
シ ー ズ( 新 し い 素 材 、技 術 等 ) 発 想 で モ ノ づ く り を ス タ ー ト す る 際 は 、 よ
り 慎 重 に ニ ー ズ が あ る か ど う か の 判 断 を し な く て は い け ま せ ん 。そ の シ ー ズ
が 新 し く 世 の 中 に 商 品 が な い の は 、そ も そ も 求 め ら れ て い な い か ら 、と い う
可 能 性 も あ る か ら で す 。ニ ー ズ の 掘 り 起 こ し や 用 途 開 発 は 、資 金 や 人 的 資 源
に 限 り が あ る 中 小・小 規 模 事 業 者 に と っ て か な り 時 間 的 な 負 担 が か か り ま す 。
シーズとニーズをしっかり押さえて開発に進むことが重要です。
□ 新しいブランドを立ち上げるのが本当にいいのか?
近 年 、フ ァ ッ シ ョ ン や 雑 貨 、 工 芸 品 を 展 開 す る 事 業 者 の な か に は 、デ ザ イ
ナーとコラボレーションをして新たなブランドを立ち上げる事例が多く見
受 け ら れ ま す が 、数 年 で 消 え て し ま う 例 も 少 な く な い 状 況 で す 。代 表 的 な 例
は 、デ ザ イ ナ ー と の コ ラ ボ レ ー シ ョ ン で 、ブ ラ ン ド の コ ン セ プ ト か ら ロ ゴ マ
ー ク や 商 品 デ ザ イ ン ま で 、デ ザ イ ナ ー が 全 て 制 作 を し て い る よ う な ケ ー ス で
す 。こ の よ う な ケ ー ス で は 、事 業 者 の そ の ブ ラ ン ド に 対 す る 思 い 入 れ や 責 任
感 が 十 分 で な い 一 方 、新 た な 取 り 組 み の た め カ タ ロ グ 一 つ と っ て も す べ て 作
り 直 す 必 要 が あ り 、多 く の 予 算 を 投 入 し な け れ ば な り ま せ ん 。ブ ラ ン ド を 立
ち 上 げ た か ら 当 然 売 れ る わ け で は な く 、成 功 す る に し て も 時 間 が か か り ま す
が、予算が尽きてフェードアウトとなり得ます。
ま ず は 既 存 の 社 名 や ブ ラ ン ド は そ の ま ま で 、過 去 を 活 か し て 発 展 的 に 考 え
直 す「 リ ブ ラ ン デ ィ ン グ 」 を 検 討 す る こ と を お 勧 め し ま す 。 こ の 方 法 で あ れ
ば コ ス ト は そ れ ほ ど 掛 か ら ず 、過 去 か ら の つ な が り を 活 か せ 、事 業 者 自 身 の
責任感も違います。
□ 異なる業界に飛び込んでみる
工 芸 品 の 素 材 や 技 術 は 、長 年 そ の 業 界 の な か で 展 開 を し て い く と そ の 業 界
な ら で は の 商 慣 習 や 人 的 関 係 性 の し が ら み が 深 ま り 、事 業 展 開 が 閉 鎖 的 な 傾
向 に な っ て し ま い ま す 。そ の 中 で い く ら 新 し い 商 品 や 展 開 を し て も 埋 も れ る
か 潰 さ れ て し ま い ま す 。そ の よ う な 場 合 、異 な る 業 界 に 飛 び 込 ん で み る こ と
を 推 奨 し ま す 。例 え ば 、食 器 メ ー カ ー が 器 を 逆 さ に し て ラ ン プ シ ェ ー ド に 活
用 し た イ ン テ リ ア 用 品 を 手 掛 け た り 、瓦 メ ー カ ー が 素 材 を 活 用 し て 壁 材 や タ
イ ル 、イ ン テ リ ア 雑 貨 等 の 展 開 を 図 る よ う な 取 り 組 み が 当 て は ま り ま す 。従
来 通 り の 商 品 で も 業 界 が 違 え ば 新 し い 素 材 、技 術 と し て 見 ら れ る こ と も あ り 、
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中小機構・小規模事業者支援ガイドブックⅢ
思 い が け ず 伸 び る 可 能 性 が あ り ま す 。さ ら に 、従 来 は 百 貨 店 中 心 だ っ た も の
を セ レ ク ト シ ョ ッ プ に 軸 足 を と る 、と い っ た 販 路 先 を 変 え る こ と も 効 果 的 な
取り組みとなり得ます。
< 「 商 品 開 発 ・評 価 ・ 改 良 」 段 階 >
□ 仲間となるブランド・商品を把握しておく
ラ イ フ ス タ イ ル は 衣 食 住 の さ ま ざ ま な 要 素 で 構 成 さ れ て い ま す 。当 然 な が
ら 1 事 業 者 の 商 品 だ け で 生 活 は で き ま せ ん 。そ の 事 業 者 が 提 供 す る 商 品 の 隣
に は 別 の ブ ラ ン ド の 商 品 が あ り ま す 。こ の こ と を 踏 ま え 、実 際 に 使 わ れ る シ
ーンを想定し、自社商品と似合うブランド・商品を把握しておきましょう。
例 え ば 、 ス ト ー ル の メ ー カ ー で あ れ ば 、 ど ん な 服 装 や バ ッ グ 、ア ク セ サ リ ー
が 似 合 う の か 、コ ー デ ィ ネ ー ト を し て み ま し ょ う 。展 示 会 や 販 売 会 で も そ の
コーディネートは活かされ、見る側のイメージも膨らみます。
な お 、コ ー デ ィ ネ ー ト の 参 考 と し て 、フ ァ ッ シ ョ ン 誌 や 生 活 情 報 誌 を 見 る
こ と を 推 奨 し ま す 。自 社 の 商 品 と 相 性 の い い 雑 誌 を 調 べ ま し ょ う 。そ の 雑 誌
が推奨するライフスタイルや商品は自社商品の仲間になれる可能性が高く、
とても参考になります。
< 「 販 路 開 拓 」段 階 >
□ 地元の名店を目指しましょう
首 都 圏 へ の 販 路 拡 大 で バ イ ヤ ー に 対 す る 一 番 有 効 な 情 報 は 、「 地 元 で 有 名
な 〇 〇 」 と 店 舗 名 で 紹 介 さ れ て い る こ と で す 。 例 え ば 、い く ら 京 都 生 ま れ で
も京都で知られていないブランドは、やはり販路開拓は難しいのです。
その第一歩として、小さくても地元に店舗を持つことはとても有効です。
自社にとって店舗運営をすることは販路開拓をするうえでも役に立つこと
が 非 常 に 多 く 、ま ず 何 が 足 り な い か が 一 目 瞭 然 に 把 握 で き ま す 。お 客 様 と 直
接触れる機会が生まれ、目の前の現場で起きている現実を踏まえた対応は、
社 員 一 丸 と な っ て 取 り 組 み や す く 、商 品 、陳 列 、POP 類 が 自 ず と 飛 躍 的 に 改
善されていきます。
ま た 、工 芸 品 等 の 地 域 産 品 の 場 合 、地 元 観 光 の コ ン テ ン ツ と し て も 認 知 さ
れ 、地 域 内 で の 情 報 発 信 が し や す い と い う 利 点 も 活 か せ ま す 。地 元 で の 販 売
活 動 が 首 都 圏 進 出 に も 活 か さ れ 、バ イ ヤ ー も そ う し た 店 舗 の 看 板 が 持 つ 情 報
が消費者に響くことを知っているため、販路が拡がりやすくなるのです。
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中小機構・小規模事業者支援ガイドブックⅢ
(3)観光
< 「 出 会 ・ 発 掘」 段 階 >
□ 観光協会や業界関係者を活用しましょう
支 援 者 と し て の 出 会 い・発 掘 の 場 と し て は 、観 光 関 連 の 講 演 会 、セ ミ ナ ー 、
勉 強 会 を 開 催 し 、積 極 的 な 事 業 者 と の 接 点 を 作 る よ う な 取 り 組 み が 有 効 で す 。
ま た 、支 援 者 と し て は 、地 域 の 観 光 資 源 を よ く 把 握 し て お く こ と が 求 め ら
れ ま す 。そ の た め 、地 域 内 の 資 源 は 常 に 最 新 の 情 報 を 入 手 し て お く よ う に 努
めるとともに、観光協会等の組織との連携を図っておくことが大切です。
なお、地元では当たり前のことが観光客にとっては新鮮に見える場合も
多 々 あ り ま す の で 、適 宜 外 部 講 師 の 力 を 借 り る な ど し て 外 部 の 目 線 を 踏 ま え
ておくことも有効です。
< 「 商 品 コ ン セプ ト づ く り 」 段 階 >
□ 環境には敏感に
観 光 は 、社 会 情 勢 ・国 際 情 勢 に 大 き く 影 響 を 受 け や す い 点 も 考 慮 し て く だ
さ い 。地 域 の 外 か ら お 客 様 が 訪 れ る と い う 意 味 で 様 々 な 環 境 の 影 響 を 受 け や
す い た め 、外 部 環 境 の 認 識 が 大 変 重 要 で す 。ま た 、 高 速 道 路 や 鉄 道 な ど 交 通
網の整備により大きな効果を享受できる可能性もあります。計画の段階で、
取り巻く環境に応じた対策を検討してください。
一 方 で 、内 部 環 境 も も ち ろ ん 重 要 で す 。一 般 的 に 観 光 商 品 に は 形 が あ り ま
せ ん の で 、違 い を 見 せ る こ と が 難 し い と い う 性 格 が あ り ま す 。う ま く 自 社 の
強 み を 活 か す こ と で 他 に は な い 独 自 性 を 打 ち 出 す こ と が で き ま す の で 、強 み
の洗い出しは是非念入りに行ってください。
□ 独自性を打ち出すための「思い」
事 業 者 に と っ て 、自 社 の 強 み を 生 か し た 企 画 を 打 ち 出 す た め に は 、ま ず 自
ら の 「 思 い 」( 方 針 ) を 明 確 に す る こ と が 大 切 で す 。
支 援 者 に と っ て は 、商 品 コ ン セ プ ト づ く り の 前 に 経 営 者 の 意 向 や 経 営 方 針
の 確 認 を 行 う と と も に 、 顧 客 目 線 と の 整 合 を 図 っ て く だ さ い 。「 経 営 者 の 思
い」と「観光客の視点」の両面の確認が必要です。
□ ターゲットの明確化
観 光 商 品 に お い て も タ ー ゲ ッ ト 設 定 は 重 要 で す 。設 定 が ぼ ん や り と し て い
る と タ ー ゲ ッ ト の 心 に 響 き ま せ ん の で 、で き る か ぎ り 具 体 的 な タ ー ゲ ッ ト 設
定を心がけてください。
71
中小機構・小規模事業者支援ガイドブックⅢ
< 「 商 品 開 発 ・評 価 ・ 改 良 」 段 階 >
□ ニーズを意識しつつ資源を活かす
ニ ー ズ 発 想 で の 商 品 開 発 が 重 要 で す 。常 に 観 光 客 と 触 れ 合 っ て い る 事 業 者
は 、既 に 顧 客 ニ ー ズ に も 敏 感 な 場 合 が 多 く 、自 然 と ニ ー ズ 発 想 で の 商 品 づ く
りが期待できます。
一 方 で 、観 光 で は 地 域 性 を 如 何 に 打 ち 出 す か が 求 め ら れ る 場 合 も 多 く 、地
域資源の活用も重要な命題となります。
□ 継続性をチェック
支援者は、継続性という観点からの確認も行ってください。観光商品は、
ア イ デ ア ひ と つ で 容 易 に 作 る こ と も 可 能 で す が 、逆 に 売 れ な い 商 品 が 多 々 生
まれてしまう危険性もあります。
売 れ な い 商 品 は 長 続 き せ ず 、取 り 組 み そ の も の に 疲 弊 す る 恐 れ も あ り ま す
ので、開発の段階で一定の継続性を意識しておく必要があります。
同 様 に 、一 過 性 の イ ベ ン ト で 終 っ て し ま う と い う ケ ー ス も 見 受 け ら れ ま す
ので、継続可能なものであるかという点に留意ください。
□ 多くの関係者を巻き込む
観 光 商 品 の 開 発 段 階 で は 、よ り 多 く の ア イ デ ア を も と に 検 討 す る こ と も 重
要 な 要 素 と な り ま す 。事 業 者 の ア イ デ ア だ け で は 限 界 が あ り ま す の で 、支 援
者 は 広 く ア イ デ ア を 集 め る た め の 取 り 組 み を 行 っ て く だ さ い 。孤 軍 奮 闘 で は
な く 、で き る だ け 多 く の 関 係 者 を 巻 き 込 み 、社 外 の 目 線 を 加 え て 検 討 す る こ
と が 有 効 で す 。そ の た め に は 、地 域 内 で 周 囲 の 事 業 者 と の 連 携 に よ る グ ル ー
プ化を行い、皆でディスカッションの場を設けることもお勧めです。
□ 商品評価にはコストが必要
観 光 商 品 は 多 数 生 み 出 す こ と も 容 易 で あ る 一 方 で 、商 品 評 価 の た め の モ ニ
タ ー ツ ア ー 実 施 の 際 に は 、一 般 的 に ツ ア ー を 設 定 ・ 運 営 す る た め の コ ス ト が
かかることに注意を払っておく必要があります。
□ 許認可への留意
取 り 扱 う 観 光 商 品 に 関 し 、集 合 か ら 解 散 ま で の 行 程 内 で 貸 切 バ ス や 観 光 タ
ク シ ー な ど の 運 送 手 段 を 利 用 し た 移 動 が 含 ま れ る 場 合 、原 則 と し て 旅 行 業 法
が 規 定 す る 「 旅 行 業 」と な り 、 旅 行 業 の 登 録 が 必 要 と な り ま す 。 ま た 、 観 光
商品の内容によっては、他にも法規制が関係することも考えられますので、
留意しておく必要があります。
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中小機構・小規模事業者支援ガイドブックⅢ
< 「 販 路 開 拓 」段 階 >
□ 販路開拓方法を検討する
販 路 開 拓 に あ た っ て は 、主 に 直 販 に 力 点 を 置 く か 、そ れ と も 主 に エ ー ジ ェ
ント経由に力点を置くかについて予め検討しておくことをお勧めします。
直 販 を 重 視 す る 場 合 は 、自 力 で プ ロ モ ー シ ョ ン を 行 い 集 客 を 手 掛 け る こ と
と な り ま す が 、一 般 的 に は コ ス ト 面 を 考 慮 し 、主 に イ ン タ ー ネ ッ ト メ デ ィ ア
や 口 コ ミ の 活 用 が 有 効 と な り ま す 。そ の 際 、売 り 出 し た い 商 品 に と っ て ふ さ
わ し い タ ー ゲ ッ ト 顧 客 を 意 識 し た 上 で 媒 体 を 選 ぶ な ど し 、周 知 を 進 め て く だ
さい。
一 方 、エ ー ジ ェ ン ト 経 由 を 重 視 す る 場 合 は 、ま ず エ ー ジ ェ ン ト ご と の 特 徴
を よ く 理 解 し て お く 必 要 が あ り ま す 。各 エ ー ジ ェ ン ト が 得 意 と す る 市 場 や 顧
客 層 は 異 な り ま す の で 、予 め 特 徴 を 把 握 し 、自 ら の 商 品 に ふ さ わ し い と 思 う
エージェントに対して優先的にアプローチを進めてください。
□ モニターツアーをうまく活用しましょう
モ ニ タ ー ツ ア ー は 、試 作 商 品 の 評 価 と い う 面 も あ り ま す が 、同 時 に 商 品 の
存 在 を 知 ら せ る こ と で 認 知 を 高 め た り 、参 加 者 の 興 味 を 喚 起 し た り と 、様 々
なメリットにもつながります。
モ ニ タ ー ツ ア ー 実 施 を 機 に 参 加 者 の 関 心 を 高 め る こ と に よ り 、当 該 商 品 に
対 す る フ ァ ン が 生 ま れ た り 、口 コ ミ 効 果 に よ り 宣 伝 に つ な が っ た り 、あ る い
はエージェント等との取引につながる場合も期待することができます。
是 非 、モ ニ タ ー ツ ア ー 実 施 の 機 会 を う ま く 活 用 し 、販 路 開 拓 に つ な げ て く
ださい。
□ 観光協会等との連携を
せっかくの良い商品が地元で知られていないというケースも見受けられ
ま す 。 地 域 内 の 観 光 協 会 な ど 、観 光 商 品 の プ ロ モ ー シ ョ ン を 行 う 組 織 ・ 団 体
がある場合は、ぜひ連携し販路開拓にあたってください。
73
中小機構・小規模事業者支援ガイドブックⅢ
Ⅲ.その他の留意事項
1.着実な事業拡大に向けて不可欠な観点
前章までで新たな商品を開発し販路開拓を実現するにあたっての基本的な
内 容 を 一 通 り 解 説 し て き ま し た が 、持 続 的 な 事 業 展 開 や 成 長 に 向 け て 特 に 忘 れ
てはならないと考えられるポイントを 3 点補足しておきます。
(1)安定供給
商 品 の 販 売 を 開 始 す れ ば 、消 費 者 や 販 路 先 が 必 要 と す る 量 の 商 品 を 安 定 的 に
供 給 す る こ と が で き な け れ ば な り ま せ ん 。し か し な が ら 、経 営 資 源 が 豊 富 で は
な い 中 小・小 規 模 事 業 者 で は 、せ っ か く 引 き 合 い が あ っ て も 十 分 な 生 産 能 力 を
確 保 で き ず 、取 引 が 成 立 し な か っ た り 、受 注 を 諦 め ざ る を 得 な い ケ ー ス が 見 受
け ら れ ま す 。一 方 、大 口 の 取 引 に 対 応 し 設 備 投 資 を 行 っ た の ち 、一 過 性 の 需 要
で終わって過剰投資となるケースもあり得ます。
ま た 、原 材 料 に 地 域 資 源 を 活 用 す る 場 合 、必 要 な 量 を 安 定 的 に 調 達 で き ず に
事 業 の 継 続 や 拡 大 に 苦 戦 す る ケ ー ス も よ く 聞 か れ ま す 。メ デ ィ ア 等 の 影 響 で 地
域 資 源 が 注 目 さ れ る と 、仮 に 調 達 で き て も 原 材 料 価 格 が 高 騰 し 、採 算 が 合 わ な
くなることも考えられます。
外 部 要 因 の 影 響 も 大 き く 判 断 が 難 し い 面 が あ り ま す が 、商 品 を 安 定 的 に 供 給
し 、持 続 的 に 事 業 を 展 開 し て い く た め に は 、上 記 の よ う な 観 点 を 念 頭 に 置 い て
商品開発や販路開拓を進める必要があります。
(2)品質確保
商 品 の 品 質 を 確 保 す る こ と は 、事 業 を 行 う に あ た っ て 当 た り 前 の こ と で あ り 、
最 低 限 実 施 さ れ る べ き レ ベ ル の こ と と 誰 し も が 考 え て い る と 思 わ れ ま す が 、実
際 に こ れ を 実 践 し 続 け る こ と は 様 々 な 要 因 に よ り 難 し さ が 伴 い ま す 。一 般 的 に
品 質 を 左 右 す る 要 因 と し て 、 5 M ( 人 ( Men )、 方 法 ( Method )、 機 械
( Machines)、 材 料 ( Materials)、 計 測 ( Measurement)) が 挙 げ ら れ ま す
が、それぞれの要因の中でも多くの要素の影響が想定されます。
ま た 、最 近 で は 食 品 の 安 全 性 に つ い て の 消 費 者 の 関 心 が 非 常 に 高 く な っ て い
る た め 、一 部 の 小 売 チ ェ ー ン で は 生 産 農 家 の 顔 写 真 や 農 薬 の 使 用 履 歴 を 開 示 し
74
中小機構・小規模事業者支援ガイドブックⅢ
て 、消 費 者 の 不 安 を 取 り 除 く 努 力 を し て い る と い っ た よ う に 、い わ ゆ る ト レ ー
サビリティの確保が重要なテーマとなっています。
品 質 そ の も の に バ ラ つ き が あ る と 、消 費 者 の 信 用 を 損 ね る 原 因 と な っ て し ま
い ま す 。消 費 者 の 信 用 を 得 る た め に は 地 道 な 努 力 と 時 間 が か か り ま す が 、失 う
の は 一 瞬 で す 。こ の た め 、十 分 な 品 質 管 理 に 継 続 し て 取 り 組 む こ と が 不 可 欠 と
な り ま す 。品 質 管 理 の 担 当 者 や 体 制 を 決 定 し 、良 品・不 良 品 の 基 準 の 設 定 、不
良 率 が 把 握 で き る 仕 組 み づ く り 、発 生 し た 不 良 内 容 及 び そ の 原 因 の デ ー タ 化 と
分析、再発防止策の立案と実行といった取り組みが必要となります。
ま た 、問 い 合 わ せ 窓 口 等 を 設 置 し 、消 費 者 の 声 を 把 握 で き る よ う に す る こ と
も 重 要 で す 。な お 、問 い 合 わ せ が あ っ た 時 の 対 応 方 法 に つ い て も あ ら か じ め 検
討 し て お き 、誠 意 を 持 っ て 速 や か に 対 応 で き る よ う に し て お く こ と が 重 要 で す 。
(3)原価と採算性の管理
利 益 が 出 て い な け れ ば 、事 業 を 続 け て い く こ と は で き ま せ ん 。こ の た め 、商
品の原価や採算性をしっかりと把握できる状態をつくることが重要となりま
す。
商 品 の 製 造 原 価 は 、大 き く ① 材 料 費 ② 労 務 費 ③ 経 費 に 分 類 さ れ 、さ ら に そ れ
ぞ れ 直 接 費 と 間 接 費 に 分 け ら れ ま す 。原 価 の 管 理 に あ た っ て は 、目 標 と な る「 標
準 原 価 」を 設 定 し て 、実 際 に か か っ た 費 用 を 積 算 し た「 実 際 原 価 」と の 比 較 分
析 に よ り 、 コ ス ト ダ ウ ン や 生 産 性 の 改 善 を 図 る と と も に 、「 標 準 原 価 」 の 精 度
アップにつなげていく取り組みが必要です。
ま た 、総 原 価 を「 変 動 費 」と「 固 定 費 」に 分 解 し て 限 界 利 益 ベ ー ス で 損 益 を
把 握 す る こ と に よ り 、採 算 性 を 管 理 す る こ と が 必 要 で す 。具 体 的 に は 、総 原 価
を 材 料 費・外 注 費 等 の 生 産 量 や 売 上 高 に 比 例 し て 発 生 す る「 変 動 費 」と 、労 務
費・経 費 等 の 生 産 量 や 売 上 高 の 変 動 に 関 係 な く 一 定 額 発 生 す る「 固 定 費 」に 分
け 、売 上 高 か ら ま ず 変 動 費 を 差 し 引 い て「 限 界 利 益 」を 計 算 し 、さ ら に 限 界 利
益 か ら 固 定 費 を 控 除 し て 営 業 利 益 を 計 算 す る 方 法 で す 。限 界 利 益 を 把 握 で き れ
ば 、損 益 を プ ラ ス に し た り 、目 標 利 益 を 達 成 す る た め に 商 品 を 何 個 売 れ ば よ い
のかといったことがシミュレーションできるようになります。
上 記 の よ う な 取 り 組 み に よ り 、商 品 が 儲 か っ て い る の か ど う か を 把 握 す る こ
と は も ち ろ ん 、具 体 的 な 計 画 設 定 と 実 績 の 把 握・検 証 を 繰 り 返 し て い く こ と が
大変重要となります。
75
中小機構・小規模事業者支援ガイドブックⅢ
2.事業計画認定を目指す場合の留意事項
(1)地域産業資源活用事業計画の策定と経済産業局への申請
地 域 資 源 を 活 用 し た 事 業 の 立 ち 上 げ 等 に 対 し て 、補 助 金 等 の 支 援 措 置 を 活 用
す る 場 合 は 、地 域 資 源 法 第 6 条 第 1 項 に 基 づ く 地 域 産 業 資 源 活 用 事 業 計 画 の 認
定を受ける必要があります。
認 定 の 時 期 は 、 概 ね 6 月 、 10 月 、 2 月 の 年 3 回 で 実 施 さ れ て お り 、 都 道
府 県 経 由 で 該 当 エ リ ア の 経 済 産 業 局 に 申 請 を 出 し 、経 済 産 業 局 の 評 価 委 員 会 を
経て決定されます。
認 定 申 請 書 の 様 式 に つ い て は 、中 小 企 業 庁 及 び 各 経 済 産 業 局 、J-NET21 の
ホームページに具体的な記載例とともに掲載されています。
■ 地域産業資源活用事業計画認定のスキーム
76
中小機構・小規模事業者支援ガイドブックⅢ
■ 認定を受けるメリット
地 域 産 業 資 源 活 用 事 業 計 画 の 認 定 を 受 け る こ と に よ っ て 、大 き く 以 下 の 3 つ
のメリットが得られます。
□ 国の補助金等の支援措置を利用できる
(主な支援措置)
◇補助金(試作開発費、マーケティング調査費、展示会等出展費等)
◇政府系金融機関による低利融資
◇信用保証の特例
等
□ 認定を受けることにより様々な効果が期待できる
(可能性がある効果の例)
◇事業計画を策定することで目標や具体的な行動が明確になる
◇自社や商品の知名度や注目度が向上する
◇取引先や金融機関へのアピールになる
◇従業員のモチベーションや一体感が増す
等
□ 中小機構が行う認定事業者向けの支援メニューを活用できる
◇専門家による事業化のサポート、アドバイザーの派遣
◇ 地 域 活 性 化 パ ー ト ナ ー (大 手 流 通 業 等 )と の 連 携 に よ る 販 路 開 拓
等
(2)認定要件への適合性の確認
事 業 計 画 認 定 を 目 指 す に あ た っ て は 、ま ず は 地 域 産 業 資 源 活 用 事 業 の 認 定 要
件 を 満 た し て い る か 、今 後 の 支 援 を 通 し て 認 定 要 件 を 満 た す こ と が で き る 案 件
かどうかの確認を行いましょう。
主 な 認 定 要 件 に お け る ポ イ ン ト は 、① 都 道 府 県 が 指 定 す る 地 域 産 業 資 源 を 活
用 し た 事 業 で あ る こ と 、② 商 品 の 生 産 又 は サ ー ビ ス の 提 供 は 活 用 す る 地 域 産 業
資 源 の 指 定 地 域 に 限 定 さ れ て い る こ と 、③ 商 品 、サ ー ビ ス に 係 る 品 質 等 の 水 準
を 確 保 す る こ と 、④ 活 用 す る 地 域 産 業 資 源 の ブ ラ ン ド 力 を 高 め 、こ れ を 活 用 す
る 地 域 の 他 の 中 小 企 業 者 等 の 事 業 活 動 の 促 進 等 に 寄 与 す る こ と 、⑤ 新 た な 需 要
開 拓 の 見 通 し が あ る こ と 、⑥「 ふ る さ と 名 物 応 援 宣 言 」の 活 用 と 市 区 町 村 等 関
係 者 と の 連 携 を 促 進 す る も の で あ る こ と 、⑦ 事 業 計 画 に 十 分 な 実 現 可 能 性 が あ
ることなどです。
77
中小機構・小規模事業者支援ガイドブックⅢ
(3)地域産業資源の内容について
地 域 産 業 資 源 の 内 容 に つ い て は 、各 市 区 町 村 等 の 意 見 を 踏 ま え 、都 道 府 県 が
集 約 し 、随 時 公 表 し て い ま す 。認 定 に つ い て は 、都 道 府 県 が 公 表 し た 地 域 産 業
資 源 に 該 当 す る か を チ ェ ッ ク す る こ と が 重 要 で す 。仮 に 、こ の 都 道 府 県 リ ス ト
に 記 載 さ れ て い な い 場 合 は 、市 区 町 村 や 支 援 機 関 と 調 整 し 、リ ス ト 掲 載 に 向 け
た働きかけの手続きを都道府県に対して進めていくことが求められます。
(4)地域を挙げた地域産業資源活用の促進
2015 年 8 月 施 行 の 地 域 資 源 法 改 正 に よ り 、 本 事 業 の 方 向 が 、 地 域 産 業 資
源 を 活 用 し た 個 社 の 事 業 化 だ け で な く 、地 域 活 性 化 を 促 進 す る た め 自 治 体 や 関
係 機 関 を 巻 き 込 ん だ 地 域 に お け る 面 的 な 取 り 組 み( 4 社 以 上 の グ ル ー プ:同 業
者 に よ る 水 平 連 携 や 生 産 、加 工 、販 売 等 の 垂 直 連 携 等 )に よ り 地 域 の ブ ラ ン ド
化を図るという方向性が打ち出されています。
具 体 的 に は 、市 区 町 村 に お い て 、地 域 を 挙 げ て 支 援 を 行 う 地 域 産 業 資 源 を 活
用 し た 商 品 ・ サ ー ビ ス ( 以 下 「 ふ る さ と 名 物 」 と い う ) を 特 定 し 、「 ふ る さ と
名 物 応 援 宣 言 」と し て 情 報 発 信 を 行 い 、地 域 ブ ラ ン ド の 育 成・強 化 に 向 け た 継
続 的 な 取 り 組 み を 行 う と い う も の で す 。こ の 宣 言 は 大 き く 3 種 類( ⅰ 農 林 水 産
品 活 用 型 、ⅱ 鉱 工 業 品 活 用 型 、ⅲ 観 光 資 源 活 用 型 )が 想 定 さ れ て お り 、事 業 認
定 や 補 助 金 採 択 に お い て 、面 的 な 取 り 組 み や「 ふ る さ と 名 物 応 援 宣 言 」は 加 点
要因となっています。
(5)事業計画策定上の留意事項
認 定 を 受 け る た め に は 、地 域 産 業 資 源 活 用 事 業 に つ い て 中 長 期( 3 年 以 上 5
年 以 内 )の 事 業 計 画 を 策 定 す る 必 要 が あ り ま す 。そ の 際 、認 定 申 請 書 に は 認 定
を 受 け よ う と す る 事 業 に つ い て の み 記 載 す る こ と と な り ま す が 、あ く ま で 自 社
全 体 の 事 業 の な か の 一 部 の 取 り 組 み で す の で 、ま ず は 申 請 事 業 を 含 め た 自 社 全
体 の 事 業 計 画 を 策 定 す る こ と が 基 本 と な り ま す 。そ の う え で 、申 請 事 業 に 係 る
内容を抜き出して認定申請書に落とし込んでいきましょう。
事 業 計 画 の 策 定 に つ い て は 、本 ガ イ ド ブ ッ ク の 姉 妹 編 の 小 規 模 事 業 者 支 援 ガ
イ ド ブ ッ ク Ⅰ「 支 援 者 の た め の 小 規 模 事 業 者 の 事 業 計 画 づ く り サ ポ ー ト ブ ッ ク 」
等をご活用ください。
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中小機構・小規模事業者支援ガイドブックⅢ
な お 、本 ガ イ ド ブ ッ ク は 基 本 的 に 個 別 の 商 品 づ く り を 想 定 し た も の と な っ て
い ま す が 、認 定 申 請 は 新 た な 需 要 開 拓 の 見 通 し が あ る 中 長 期 の 事 業 計 画 と な る
た め 、計 画 期 間 中 に 商 品 の バ リ エ ー シ ョ ン を 増 や し た り 、複 数 の 商 品 開 発 を 予
定することが一般的です。販路開拓上も品揃えの観点は重要となりますので、
事業計画策定にあたってはこの点に留意しておく必要があります。
(6)評価委員会でのプレゼンと準備
認 定 の 審 査 で は 、評 価 委 員 会 で 事 業 者 に よ る プ レ ゼ ン 審 査 の 実 施 が 一 般 的 で
す 。1 件 当 た り の プ レ ゼ ン 審 査 時 間 は 、各 経 済 産 業 局 の 事 情 や 申 込 み 案 件 数 に
よ っ て も 若 干 異 な り ま す が 、概 ね 事 業 概 要 の プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン と 質 疑 応 答 で
30 分 以 内 と 見 込 ま れ ま す 。プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン に つ い て は 、図 な ど を 活 用 す
る な ど 分 か り や す い 表 現 に 努 め 、① 当 該 事 業 に 取 り 組 む に 至 っ た 背 景 、② 従 来
品 と の 違 い 、セ ー ル ス ポ イ ン ト 、③ 試 作 品 の 進 捗 、④ 市 場 の ニ ー ズ 、具 体 的 な
販 売 戦 略 ( タ ー ゲ ッ ト 、 価 格 、 チ ャ ネ ル 等 )、 ⑤ 競 合 分 析 、 ⑥ 売 上 見 込 み 、 ⑦
今後の課題に説明のポイントを絞って、重点的にアピールしましょう。
(7)中小機構との連携
案 件 に よ っ て は 、都 道 府 県 を 超 え る 広 域 案 件 等 各 支 援 機 関 で の 支 援 だ け で は
十 分 に 解 決 で き な い 事 案 が 発 生 す る ケ ー ス も 想 定 さ れ ま す の で 、そ の 際 は 、中
小機構の各地域本部のプロジェクトマネージャーやチーフアドバイザーに適
宜 相 談 し て く だ さ い 。ま た 、中 小 機 構 の 各 地 域 本 部 で は 、認 定 を 目 指 す 事 業 計
画 の ブ ラ ッ シ ュ ア ッ プ 等 に つ い て 、月 に 1 ~ 2 回 定 期 的 な 打 ち 合 わ せ や 情 報 交
換 を 実 施 し て お り ま す 。事 前 調 整 の 上 こ の よ う な 機 会 も ご 活 用 く だ さ い 。な お 、
支 援 者 か ら の 相 談 に 際 し て は 、個 別 企 業 の 情 報 共 有 に な り ま す の で 、事 前 に 情
報共有する旨の承諾を事業者から得ておくことが必要です。
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中小機構・小規模事業者支援ガイドブックⅢ
3.グループで取り組む場合の留意事項
(1)グループ化の3要素
地 域 資 源 法 で は 、地 域 活 性 化 の 面 的 な 取 り 組 み と し て 4 社 以 上 の グ ル ー プ 化
が 要 件 と し て 挙 げ ら れ て い ま す が 、グ ル ー プ で 取 り 組 む 場 合 に は 、最 低 で も 3
つの要素が必要です。
一 つ 目 は 、コ ア 企 業 の 顕 在 化 で す 。中 小 企 業 は お 互 い が ラ イ バ ル と い う 意 識
に な り が ち で す が 、グ ル ー プ で 取 り 組 む 場 合 は 、地 域 活 性 化 で 生 き 残 る た め に
は 連 携 が 大 切 で あ る と い う 意 識 転 換 を 図 り 、そ の 連 携 グ ル ー プ を 引 っ 張 っ て 取
り ま と め て い く リ ー ダ ー 的 企 業 、即 ち コ ア 企 業 の 存 在 が 欠 か せ ま せ ん 。ま ず は 、
コア企業の顕在化を進める必要があります。
二 つ 目 に 、そ の グ ル ー プ を 支 援 す る 支 援 機 関 の 存 在 で す 。グ ル ー プ を 維 持 ・
継 続 し て い く た め に は 、支 援 機 関 の 客 観 的 な 視 点 が 必 要 で す 。コ ア 企 業 を サ ポ
ー ト し つ つ 、地 域 の 実 態 を 踏 ま え た 方 向 付 け 、支 援 施 策 の 活 用 、メ ン バ ー の 参
加 へ の 意 識 づ け 、意 識 の 確 認 、参 加 メ ン バ ー の 見 極 め や 参 加 の 可 否 、メ ン バ ー
の 入 れ 替 え 、参 加 ル ー ル の 見 直 し な ど は 、コ ア 企 業 の リ ー ダ ー シ ッ プ だ け で は
調整しきれません。支援機関の強力な支援機能を必要とします。
三つ目は、市区町村等行政の応援体制です。地域において、地域産業資源
の 活 用 が 中 長 期 的 か つ 継 続 的 に 図 ら れ る た め に は 、当 該 地 域 産 業 資 源 の 活 用 の
促 進 に 関 す る 施 策 が 、都 道 府 県 及 び 市 区 町 村 の 施 策 体 系 の 中 に 明 確 に 位 置 づ け
ら れ る こ と が 重 要 で す 。具 体 的 に は 、都 道 府 県 及 び 市 区 町 村 の 基 本 計 画 や 各 種
施策方針のなかにグループ化の取り組みが関連づけられるような働きかけや
行政の積極的対応姿勢が求められます。
(2)グループ化をビジネスにすること
グループ化は単なる異業種交流の延長的な考えでは継続は困難と思われま
す 。地 域 の 環 境 変 化 へ の 対 応 か ら 生 き 残 る た め の ビ ジ ネ ス 展 開 と し て「 グ ル ー
プ 連 携 」を と ら え る こ と が 重 要 で す 。従 っ て 、
「グループ化をビジネスにする」
と い う 方 向 性 が グ ル ー プ 化 の 前 提 と な り ま す 。そ の た め に は 、グ ル ー プ で 取 り
組 む 地 域 の ブ ラ ン ド 化 を マ ー ケ テ ィ ン グ 戦 略 の 中 に し っ か り と 位 置 づ け 、顧 客 、
流通、売場をイメージした商品・サービス展開が求められます。
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中小機構・小規模事業者支援ガイドブックⅢ
(3)地域ブランドとは
2015 年 8 月 施 行 の 地 域 資 源 法 改 正 の 基 本 指 針 の 中 で 、 自 治 体 や 関 係 機 関
を 巻 き 込 ん だ 地 域 に お け る 面 的 な 取 り 組 み( 4 社 以 上 の グ ル ー プ:同 業 者 に よ
る 水 平 連 携 や 生 産 、加 工 、販 売 等 の 垂 直 連 携 等 )に よ り 地 域 の ブ ラ ン ド 化 を 図
る と い う 方 向 性 が 示 さ れ て い ま す が 、「 地 域 ブ ラ ン ド 」 の 定 義 は 必 ず し も 一 致
し て い ま せ ん 。そ こ で 、
「 地 域 ブ ラ ン ド 」の 定 義 を 決 め て お く 必 要 が あ り ま す 。
下 図 は 経 済 産 業 省 に よ る 地 域 ブ ラ ン ド の 概 念 図 で す 。 こ れ に よ れ ば 、「 地 域 の
ブランド化とは、
( Ⅰ )地 域 発 の 商 品・サ ー ビ ス の ブ ラ ン ド 化 と 、
( Ⅱ )地 域 イ
メ ー ジ の ブ ラ ン ド 化 を 結 び 付 け 、好 循 環 を 生 み 出 し 、地 域 外 の 資 金・人 材 を 呼
び込むという持続的な地域経済の活性化を図ること」としています。
従 っ て 、単 に 地 域 名 を 冠 し た 商 品 だ け が 売 れ て い て も ダ メ で す し 、そ の 地 域
の イ メ ー ジ が 良 い だ け で も い け ま せ ん 。こ の 両 方 が 影 響 し 合 い 、商 品 と 地 域 イ
メ ー ジ が 共 に 評 価 が 高 く な っ て い く 必 要 が あ り ま す 。地 域 ブ ラ ン ド が 高 ま れ ば 、
そ の 地 域 名 を 付 け た 商 品 の 売 れ 行 き が 伸 び 、地 域 の 雇 用 を 促 進 し 、地 域 の イ メ
ー ジ が 良 く な り 、観 光 客 誘 致 な ど へ の 相 乗 効 果 が 生 ま れ 、地 域 を 豊 か に す る と
いった好循環を生み出すことが重要です。
□ 地域ブランドの概念図(経済産業省)
以上から地域ブランドとは、次のように定義することができます。
・地域ブランドとは、「地域に対する消費者からの評価」であり、地域が
有する無形資産のひとつ
・地域ブランドには、地域そのもののブランド(RB)と、地域の特性を
生かした商品のブランド(PB)とから構成される
・地 域 ブ ラ ン ド 戦 略 と は 、こ れ ら 2 つ の ブ ラ ン ド を 同 時 に 高 め る こ と に よ り 、
地域活性化を実現する活動のこと
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中小機構・小規模事業者支援ガイドブックⅢ
(4)ブランドの主体と中小企業グループによるブランド化
ブ ラ ン ド の 主 体 に つ い て は 、メ ー カ ー 主 体 の ブ ラ ン ド と 流 通( 卸・小 売 )主
体のブランドがあります。
ア メ リ カ で は「 ブ ラ ン ド 戦 争 」と 呼 ば れ 、産 業 革 命 後 の 大 量 生 産 、大 量 消 費
時 代 を 背 景 に 、大 手 メ ー カ ー が 生 産 し た 商 品 に 情 報 を 付 加 し て メ ー カ ー ブ ラ ン
ド を 創 造・展 開 す る マ ー ケ テ ィ ン グ を 開 始 し て 流 通 業 を 支 配 す る よ う に な っ た
状 況 に 対 抗 し 、顧 客 に 近 い 流 通 業 が 自 ら の 責 任 で 独 自 の 流 通 ブ ラ ン ド を 展 開 す
るといったブランドの競争が激化しました。
日 本 に お い て も 、バ ブ ル 崩 壊 後 の 平 成 不 況 の 中 で 、消 費 者 の 価 値 観 の 変 化 を
背景に流通を主体とするブランドが急増し、PB流通革命と言われています。
メ ー カ ー サ イ ド の マ ー ケ テ ィ ン グ 展 開 は 4 P( 製 品( product)、価 格 (price)、
流 通 (place)、 プ ロ モ ー シ ョ ン (promotion)) と 言 わ れ て お り ま す が 、 こ れ に
対 し て 、流 通 業 サ イ ド は 、仕 入 れ 、商 品 開 発 、価 格 政 策 、売 場 陳 列 、販 売 促 進
政 策 な ど 一 連 の 業 務 を マ ー チ ャ ン ダ イ ジ ン グ( M D )と 呼 ん で い ま す 。こ れ は
マ ー ケ テ ィ ン グ と 多 分 に オ ー バ ー ラ ッ プ す る 概 念 で す が 、マ ー ケ テ ィ ン グ と マ
ー チ ャ ン ダ イ ジ ン グ の 大 き な 違 い は 、簡 単 に 言 う と 、一 つ の 商 品 に 焦 点 を あ て
るか、品揃え・面としてとらえるかの違いだと言えます。
例えば、店に来る客層や利用シーンの拡大に対応し、品揃えの観点から開
発・提 案 し た 、セ ブ ン プ レ ミ ア ム や 食 品 卸 大 手 の 日 本 ア ク セ ス と「 こ と り っ ぷ
編集部」が連携した売り場・商品提案などがこの事例です。
観 光 も 含 ん だ 地 域 ブ ラ ン ド 化 に あ た り 、複 数 の 中 小 企 業 が 連 携 し て 、そ れ ぞ
れ の 商 品 や サ ー ビ ス を 持 ち 寄 り 地 域 を ブ ラ ン ド 化 し て い く 過 程 は 、タ ー ゲ ッ ト
顧 客 に 対 応 し た 商 品・サ ー ビ ス 群 を 如 何 に 開 発・品 揃 え し 、顧 客 に 近 い 売 場 で
「 利 用 シ ー ン 」を ど う 見 せ て い く か と い う マ ー チ ャ ン ダ イ ジ ン グ( M D )を 展
開 し て い く こ と に な り ま す 。そ の 意 味 で は 、地 域 の ブ ラ ン ド 化 は 流 通 サ イ ド か
ら構築する展開の方がより馴染みやすいと言えます。
現 在 の 地 域 ブ ラ ン ド の 動 き を 見 る と 、両 方 の 流 れ が 見 受 け ら れ ま す 。例 え ば 、
馬 路 村 の ゆ ず 商 品 な ど は メ ー カ ー ブ ラ ン ド に 近 い 対 応 で す 。一 方 、瀬 戸 内 広 島
檸 檬 プ ロ ジ ェ ク ト な ど は 、大 手 流 通 業 と 連 携 し た 、マ ー チ ャ ン ダ イ ジ ン グ( M
D )の 一 環 と し て の ブ ラ ン ド 化 の 動 き と 言 え ま す 。特 に 、後 者 の 事 例 は 、大 手
の 卸 で あ る M 食 品 と 行 政・支 援 機 関 が 連 携 し 、参 加 グ ル ー プ の 檸 檬 関 連 商 品 の
中 か ら セ レ ク ト さ れ た 商 品 を 多 様 な 売 場 で 販 売 し 、広 島 地 域 の 檸 檬 ブ ラ ン ド 化
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中小機構・小規模事業者支援ガイドブックⅢ
を 高 め て い く 展 開 で 、売 り 場 や 顧 客 の 利 用 シ ー ン に 合 わ せ て 、商 品 の 組 み 合 わ
せ を 変 え て い く の が 特 徴 で す 。販 路 開 拓 力 や 広 告 宣 伝 力 の 乏 し い 中 小 企 業 者 が
地域のブランド化を推進していく上で、参考となる展開と言えます。
【瀬戸内広島檸檬プロジェクトの展開例】
M 食品メニュー提案会
rooms30( 展 示 会 )
そ れ ぞ れ の 思 い を 胸 に 、日 頃 か ら 地 域 の た め に 汗 を 流 し て い る 支 援 者 に と っ
て 、地 域 に お け る 面 的 な 取 り 組 み と し て 中 小・小 規 模 事 業 者 の グ ル ー プ 化 を サ
ポ ー ト し 、そ の 活 動 が 地 域 の ブ ラ ン ド 化 に 結 び つ い て 地 域 活 性 化 が 実 現 す る こ
と を 目 指 す 取 り 組 み は 、大 い に チ ャ レ ン ジ す る 価 値 の あ る 支 援 だ と 感 じ ら れ て
いるのでないかと思います。
「グループ化の 3 要素」として挙げたとおり、グループ化の成功のために
は 支 援 機 関 に よ る 強 力 な 支 援 が 不 可 欠 と 言 え ま す 。そ し て 、そ の 支 援 を 力 強 い
も の と す る た め に は 、グ ル ー プ の 取 り 組 み を 様 々 な 形 で 応 援 し 、協 力 し て く れ
る 幅 広 い ネ ッ ト ワ ー ク を 持 っ て い る か 、そ の う え で そ の ネ ッ ト ワ ー ク か ら 適 切
な人材をタイミングよくコーディネートできるかがポイントとなります。
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中小機構・小規模事業者支援ガイドブックⅢ
地 域 資 源 を 活 用 し た 事 業 を サ ポ ー ト す る た め の ネ ッ ト ワ ー ク と し て は 、地 域
内の人や企業、組織等の協力だけでなく、地域外を含めて、マーケティング、
デ ザ イ ン 、V M D 、流 通 な ど 、市 場 へ の 到 達 プ ロ セ ス で の 障 害 を 取 り 除 い て く
れ る 各 分 野 の 専 門 家 と の 連 携 が 必 要 と な り ま す 。ま ず は 現 状 の 自 身 の ネ ッ ト ワ
ークを棚卸ししてみましょう。
ネ ッ ト ワ ー ク の 棚 卸 し を 行 う た め の ひ と つ の ツ ー ル と し て 、「 仲 間 シ ー ト 」
を 様 式 集 に 掲 載 し ま す 。本 シ ー ト の 記 入 に あ た っ て は 、で き る だ け 具 体 的 な 個
人 名 を 書 く こ と が ポ イ ン ト で す 。実 際 に や っ て み る と 、当 初 は 書 き 入 れ る こ と
が で き な い 項 目 が 結 構 あ る の で は な い で し ょ う か 。し か し 、そ の こ と を 悲 観 す
る 必 要 は な く 、ま ず は 仲 間 が 足 り な い と こ ろ を 把 握 す る こ と が 大 事 な 第 一 歩 と
なります。
地 域 の 支 援 者 と し て は 、い ず れ は ほ と ん ど の 項 目 に 地 域 内・地 域 外 と も に 具
体 的 な 仲 間 を 書 き 入 れ る こ と が で き る こ と を 目 指 し て 、日 々 の 支 援 活 動 を 積 み
重ねていくことが期待されます。
仲間シート
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中小機構・小規模事業者支援ガイドブックⅢ
○仲間シートの記入要領
地域を明確に意識して考えましょう
「基本は地域内、不足分は地域外」というスタンスを意識しましょう
カテゴリ
記入イメージ
自分・自
中 心 に く る の は プ ロ ジ ェ ク ト そ の も の で あ り 、そ れ を 推 進 す る
社・自地域
リーダーとなる存在
等
プロジェクトごとに主体となって動く民間の事業者とともに、
中心的役割を果たす支援者自身や主要メンバーが位置付けら
れる
全体コンセ
地 域 資 源 を う ま く 掘 り 起 こ し て 、コ ン セ プ ト・ビ ジ ョ ン・大 義
プト(シナ
を 見 出 し 、タ ー ゲ ッ ト 市 場 の 分 析 を 踏 ま え 、作 り 手 と 一 緒 に 商
リオ)
品企画を進める役割
中心人物が兼務するケースが多いが、地域の自治体や支援機
関、民間の地域プロデューサー等が担うケースもある
広告
PR 活 動 や 広 報 を 担 当 。 プ ロ ジ ェ ク ト の 成 果 だ け で な く 、 プ ロ
セスも含めて発信する役割
地 域 内 外 の 各 種 メ デ ィ ア( 新 聞・テ レ ビ・雑 誌 等 )。WEB も 重
要な役割を果たす
販路
●小売店舗(有店舗販売)
消費者が商品を直接手にし、購買できる「売場」の提供
百 貨 店・ス ー パ ー・専 門 店・ミ ュ ー ジ ア ム・ホ テ ル・駅・空 港 ・
港等、集客施設全般
●小売店舗(無店舗販売)
消 費 者 が 常 時 、情 報 を 入 手 し 、購 買 で き る「 仮 想 売 場 」の 提 供
WEB( PC・ 携 帯 )・ 通 販 ( 雑 誌 ・ テ レ ビ )・ 訪 問 販 売 ( 直 販 ・
外商)等
●問屋
流 通 の ノ ウ ハ ウ と 小 売 店 と の 膨 大 な コ ネ ク シ ョ ン を 持 ち 、販 路
開拓をサポートしてくれるパートナー
地元サポー
地域ブランドに地元の協力は欠かせないため、貴重な存在
ター
地 元 の 企 業 ・ 個 人 ・グ ル ー プ ・支 援 団 体 ・振 興 協 議 会 、地 元 出
身の有名人・企業、地域外にある県人会等
プロダクト
商品開発に係るデザイン(プロダクトデザイン、パッケージ、
デザイン
配布物等)のサポート
デザイン支援機関や地元のデザイン学校等
継承学連携
地 域 ブ ラ ン ド 自 体 を 根 付 か せ 、継 承 さ せ て い く た め に も 、地 域
の教育機関と連携し、若者を巻き込むことが重要
地元の高校・大学・専門学校・職業訓練学校等
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中小機構・小規模事業者支援ガイドブックⅢ
(参考)プレスリリースの書き方
◆プレスリリースとは
プレスリリースは、企業側から発信する情報を新聞や雑誌などの媒体に記事として取り上
げてもらうことを目的として、ニュースを取材・編集する記者に対して、新商品や新サービ
ス、経営や技術などの自ら言いたい企業情報を分かりやすく文章化して伝えるものです。
媒体に記事として取り上げられることにより、大きく2つの効果が期待できます。具体的
に は 、「 信 頼 性 補 完 効 果 」 と 「 販 売 促 進 効 果 」 で す 。 公 平 性 と 客 観 性 を 備 え た 第 三 者 ( 記 者 )
の言葉で語られるため、企業が自ら語る広告よりも、情報を受け取る生活者の信頼度は大幅
に高まり、知名度の向上やイメージアップにつながるでしょう。また、商品や企業の情報が
媒体を通じて多くの生活者に認知されるため、信頼性補完効果と相まって、商品の販売促進
に大いに寄与することが期待できます。
◆記者の立場を理解する
当然ながら、記者が求めているのは「ニュース」です。よって、プレスリリースの中に新
し い こ と や 珍 し い こ と が な い と 扱 い よ う が な く 、さ ら に 、
「 報 道 価 値 が あ る か 」、
「時流に合っ
て い る か 」、「 読 者 の 関 心 領 域 か 」 な ど の 観 点 か ら 取 捨 選 択 し ま す 。
また、記者のもとには毎日膨大な数のプレスリリースが届いています。数が膨大なため、
全文を読み込む暇はなく、タイトルと最初の段落くらいまでで「ニュースがある」と思えな
ければ、読み飛ばしてしまうでしょう。
さらに、事実と要点を簡潔に分かりやすく記載することが必須です。あくまでも報道関係
者に対するものなので、生活者に対する広告・チラシのような過度な表現や宣伝文句であっ
たり、社内向けの内部説明資料のような専門用語や業界用語の使用はなるべく避ける必要が
あります。
◆何を書くか
記 者 は 、 膨 大 な プ レ ス リ リ ー ス の 中 か ら 「 生 活 者 に 有 益 な 情 報 」、「 生 活 者 に 伝 え る 必 要 が
ある情報」を選び出して記事にします。よって、記者が選別する際の視点から逆算して、そ
れに対応した内容を書くのが記事になる近道です。記者の視点としては、以下の項目が特に
重要と考えられます。
□ ニュース(新しいこと、珍しいこと)があるか/報道価値があるか
「 こ れ か ら 発 売 さ れ る モ ノ 」、「 こ れ か ら 起 こ る こ と 」 と い っ た 未 発 表 の 内 容 が 必 須 で
す。すでに知られていることについてのリリースであれば、少なくとも「新しい事実」
があることが不可欠です
□ 裏付けがあるか
ニュース性の裏付けとなる客観的な調査データが必要です。それも自社調査よりも第
三者機関による調査結果が望まれます。商品やサービスであれば、市場環境や業界内で
の位置づけなども重要な要素となります
□ 社会(生活者)との関わりがあるか
自社の商品やサービスが独りよがりのものではなく、社会や暮らし、ビジネス等にど
のような影響や変化をもたらすのか、生活者のどのようなメリットをもたらすのか、と
いった社会背景や開発背景にもしっかりと言及しましょう
□ 時流に合っているか/季節性があるか/読者の関心領域か
季節や旬の話題との結びつきがあるかどうかも、記者にとっては需要な関心事となり
ます。各媒体の読者層にマッチするかも大切な要素です
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中小機構・小規模事業者支援ガイドブックⅢ
◆プレスリリースの書き方
◆タイミングと配信方法
対象とする媒体によって情報提供するタイミングが異なってくるため、概ね以下のような
点に留意しましょう。
新聞
原稿の締切時間に敏感なため、締切時間を考慮して情報提供する必要が
あります
・翌日の朝刊に載せたい場合:午後5時頃までに情報提供
・当日の夕刊の場合
:午前11時頃までに情報提供
雑誌
数か月前に情報提供する必要があるため、新商品発売であれば発売日を
伝えて公表制限するようなケースもあります
・月刊誌の場合:概ね2か月前までに情報提供
テレビ
ターゲットを決め、番組毎(場合によっては特定のコーナーを指定)に
担当者へアプローチが必要です
・情報番組の場合:概ね 3 週間前までに情報提供
配信方法としては、有料となりますが、民間事業者が提供するプレスリリース配信サービ
スを活用する方法もあります。支援機関が民間事業者と提携していて割引を受けられるケー
スもあるようですので、相談してみるのもよいでしょう。
取材を受けたりするなかで、地域内外の報道関係者と良好な関係を築くように心がけ、い
ずれは直接アプローチできて自社を応援してくれるような相手を見出せるとよいでしょう。
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中小機構・小規模事業者支援ガイドブックⅢ
◆具体的なプレスリリースの事例
上記のポイントが押さえられている具体的なプレスリリースの事例として、地域資源を活
用した商品の事例ではありませんが、パナソニック株式会社の新製品発売の文書を掲載しま
す 。( あ く ま で プ レ ス リ リ ー ス の 書 き 方 の 参 考 と し て 、 同 社 の 了 承 を 得 て 掲 載 し て い ま す 。)
最初の1枚でポイントをしっかりまとめ、
詳細は次ページ以降で情報提供
端的で分かりやすい
タイトル
ここに魅力的な写真
を入れるのも一案
5W1Hをおさえた
簡潔なリード文
社会的背景や具体的
な数字データ
(技術的な)裏付け
商品の特長のまとめ
を、見やすく強調し
て表現
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詳細な資料や数字・
図表等は2枚目以降
に集約
写真等を効果的に使
って、見やすく興味
を引くように編集
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