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支援事例 ⑨ - 独立行政法人 中小企業基盤整備機構

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支援事例 ⑨ - 独立行政法人 中小企業基盤整備機構
平成23年度
中小企業
支援ネットワーク強化
サポート事業
第1四半期
支援事例
⑨
中小企業支援ネットワーク強化事業における支援事例を紹介します。
フルーツトマトのブランド戦略と
加工・販売に向けた創業支援
支援の
ポイント
①創業に向けた戦略が明確なこと
②支援ニーズにマッチした専門家の選定
③指導員・サポートアドバイザー・専門家の強力な連携と商工会のバックアップ
支援のきっかけは、岡山県の阿哲商工会経営指導員の志田氏が、商工会会員の食品加工会社の部長から、支
援先事業者を紹介されたことから始まった。支援先事業者は平成10年に脱サラし、試行錯誤しながらフルーツ
トマトの栽培を手掛け、これまでに独自のノウハウを有するまでになった。約15度という糖度の高いフルーツ
トマトの品質にこだわりを持ち、個人事業主として既存のJA流通ルートに依存せずに販売していたが、主な
販売先の百貨店の規格基準が厳しく規格外としてはねられる商品が多かった。その結果、高付加価値商品であ
りながら、利益が出にくい構造になっていた。そこで阿哲商工会の志田指導員を紹介された。平成23年1月に
は、本格的な支援が開始された。当時、応援センター事業のコーディネーターであった石井氏に相談し、付加
価値化のために、まずトマトのブランディングを行い、規格外トマトの加工品であるフルーツトマトジュース
の加工工場の創業と法人化に繋げていくことにした。
志田指導員がブランド戦略の企画・実践の専門家派遣を要請したところ、石井コーディネーターは、志田指
導員の要望を汲みながら専門家を選定した。専門家は、デザイナーでありながら、①経営面のアドバイスがで
きること、②支援先の事業規模に応じた提案ができること、③日本一を目指すなど広い視野と大きな発想力が
あること、等がポイントとなって選定された。平成23年3月には、ブランディングに関する基本コンセプトや
ストーリーを、事業者・指導員・コーディネーター・専門家の4者間で徹底的に議論した。こうしてフルーツト
マトの加工・販売の創業に向けての準備に着手した。
6次産業化法が平成23年3月に施行され、その説明会が商工会主催で開催された。志田指導員と事業者が
参加し、事業者は懸案のフルーツトマトジュース開発と加工設備導入に益々意欲が喚起された。こうしてト
マトを利用した商品の加工・販売事業の6次産業化法に基づく計画を3月末に申請した。計画は、事業者と
志田指導員が石井コーディネーターのアドバイスを受けながら作成、5月31日に5年計画の認定を受けた。
専門家派遣は、中小企業支援ネットワーク強化事業のス
キームを活用して継続した。まず、企業ブランドと商品ブ
ランドを変更した。その上で、コンセプトを表現したギフ
トパッケージを開発し、高付加価値商品としてのポジショ
ニングを明確化した。ブランド戦略策定にあたり重視した
点は、コンセプトとストーリー性である。とりわけ、商品
ブランドは、地元の新見市の気候風土がイタリア北部と近
いことから、イタリア語を使ったネーミングとした。
(写真:収穫期の終わったフルーツトマト)
支援ネットワーク強化サポート事業 「第1四半期 支援事例⑨」
発行:中小機構 支援体制サポート室 ※無断転載・複製を禁ず
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支援の役割分担は、志田指導員が現場での実践、平成23年4月からネットワーク事業のサポートアドバイ
ザーとなった石井氏が方向性を決める総合プロデュース、専門家が企画とギフトパッケージ等のデザインを
担当した。3者の相乗効果を発揮した連携が大変良く機能した。とりわけ、志田指導員の行動力と交渉力は、
本事例の成果創出に大きく寄与した。
フルーツトマトジュースの加工工場創業にこだわる理由は、トマトは時期によって味が異なるからである。
トマトの生産時期の6月~9月に合わせて、各月のフルーツトマトジュースのネーミングを変えて売り出そう
と考えている。消費者の好みに対してバリエーションを提供できるメリットにもなる。
販路開拓と知名度向上にも当商工会は強力にバックアップしている。販路は、高級スーパーや、地元の高
級旅館、高級割烹店、高級イタリアンレストランといった高級食材を利用する業態に絞り込んでいる。
当初目論んだブランドイメージの高さが徐々に浸透してきた。フルーツトマトジュースの販売は自社ホー
ムページによる直販を想定していることから、ブランドイメージの高さを活用できる。
商工会は地元メディアや行政を招待し、PRイベント「新発見。夏の収穫祭」開催した。支援先のトマト
も地元メディアの評判となった。こうした仕掛けを、石井サポートアドバイザー、志田指導員、専門家が
タッグを組んで強力に推進している。
トマトの売上は実績ベースとして、平成23年は昨年比倍増を超える売上を達成できた。
法人化と合わせた加工工場創業時期は来年3月末に置いているため、志田指導員のフォローアップとして、
法人化並び工場の立地選定、政策金融公庫による設備資金融資のための支援を現在行っている。今後も、石井
サポートアドバイザーのアドバイスを受けながら、設備導入やトマトジュースの新商品開発・販売戦略に関す
る専門家派遣を考えている。
自律性の高い志田指導員に対して、石井サポートアド
バイザーは支援の主体者として実践させた。その背景と
して、阿哲商工会は独自に「新総合アクションプラン」
を策定し、支援機関のあるべき姿、指導員目標を提示し
ていることがある。志田指導員は、こうした所属機関か
らの役割期待を自覚しているばかりではなく、自らの
ミッションとして内発的に捉えている。行動面でも、意
欲の高い会員企業に対するトコトンやる支援を、持ち前
の行動力と交渉力で実践している。
こうした志田指導員の取り組みサポートとして、タイ
ムリーに石井サポートアドバイザーが的確なアドバイス
を行っていた。志田指導員は、食と農ビジネスに関する
計画づくりに伴うコンセプト設定・ストーリー展開や、
支援手順、技術的な製造原価計算に基づく価格設定の方
法等の支援ノウハウを習得することができた。必要部分
については、石井サポートアドバイザーが独自にフォー
マット作成し、計算方法等をノートに記述して、個別に
密着指導した。その上で実践させ、定着させた。
石井サポートアドバイザーが志田指導員に掛けていた
言葉の「支援先のためにトコトンやること」が、志田指
導員にとって大きな力付けとなった。強い信頼関係にあ
る両者のOJTはこうして実践された。
支援ネットワーク強化サポート事業 「第1四半期 支援事例⑨」
(写真:新しいギフト用パッケージ)
※商品はサンプル
発行:中小機構 支援体制サポート室 ※無断転載・複製を禁ず
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