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事業承継計画書の 作成支援 - 独立行政法人 中小企業基盤整備機構
支援ナビ ④ 事業承継計画書の 作成支援 支援の最前線における前工程支援の進め方 事業承継に関する悩みを抱える中小企業経営者が置かれている立場や状況は さまざまです。支援機関は、窓口相談や電話相談の中で、経営に関する悩みや 事業承継に関する希望を本音で話し合える環境をつくり、信頼される関係を築 く必要があります。 事業承継の課題解決を図る上で、「課題の抽出」「課題の整理」の重要性は 高く、事業承継計画の作成に至る「前工程の専門家」「前さばきの専門家」と しての支援機関の存在は欠かせません。「前工程」では、経営全般に渡る問合 せに対応するとともに、当該企業の事業承継の流れを把握し、案内するような アドバイスが求められます。 長期に及ぶ事業承継支援の指針となる事業承継計画の作成に関して、モデル となる支援手順・手続きを示します。きちんとした手順に基づき、懇切丁寧な 支援を心がけてください。 発行:中小機構 支援機関サポート課 ※無断転載・複製を禁ず 事業承継計画書の作成(事業承継の前工程)支援とは? 事業承継支援は、主に「前工程支援」と「後工程支援」に分類でき、支援機関指導員の支援 業務は「前工程支援」が中心です。前工程支援の成果は、事業承継計画書が作成されること です。その後「後工程」において計画実行支援が展開されます。 業務の定義: 事業承継に関わる課題整理、課題解決策の立案と関係者の合意を通し、事業承継計画を作 成する一連の支援業務。 業務の目的: 事業承継に関わる諸課題解決に関して、関係者の合意を得る計画書を作成すること。 成果目標 : 事業承継計画書が策定されること。 注1)事業承継の「前工程」とは、事業承継問題を抱えている中小企業経営者の掘り起こしから、 課題整理・方向性の検討を通し、事業承継計画が策定されるまでの支援を指します。 注2)事業承継の「後工程」とは、事業承継計画の実行支援を意味し、 具体的には「計画進捗状況の確認」と「次なる支援への橋渡し」を指します。 相談申し込み受付時 ポイント① 事業承継の相談は、当初納税猶予等税制に関する問い合わせが多いようですが、納税の問題 だけではなく、メモを取りながら、取敢えず“幅広に”話(相談、悩み~漠然とした話が少 なくありません~)をお聞きします。確認する内容は、 ① 後継者はいますか? それは誰ですか? 後継者として指名することを伝えていますか? ② 会社の規模はどの程度ですか? 年間売上高は? 従業員規模は? ③ 顧問税理士とは“事業承継”に関わる相談をしていますか? 注3)事事業承継支援マニュアル(中小機構)より“事業承継相談用カルテ”を活用 2回目相談時 ポイント② 2回目の相談対応では、支援機関指導員として、以下の①②③の業務を行います。 ① 支援できること【事業承継計画の立案支援】を先方に伝え了解いただきます。 その後に、経営状況の確認及び親族内承継対策状況の確認を行います。 注4)経営状況の確認は、事業承継支援マニュアル“事業承継関連施策フローチャート”を活用 注5)事業承継対策状況の確認は、同 “事業承継相談対応チェックリスト”を活用 ② 経営者及び面談したすべての方に各々事業承継を行う上での課題を確認しま す。 ・現時点、何を課題と感じているか? ・事業承継の完了までに、どのくらいの年数をかけようと考えているか? ・遺言書を策定する意向があるか? など ③ 2回目の相談は、聞き取りを中心とし、具体的な内容については次回にお話しするようにします。 1か月以内に事業承継計画の提案書を持って再訪したい旨をお伝えします。 ポイント③ 事業承継計画(案)の提案と策定支援 事業承継計画(案)は、支援機関指導員が既定の書式に基づいて作成し提案書とします。そ の後、経営者に対して提案を行います。 ① 先方にアポイントの連絡を入れ、訪問により事業承継計画(案)を提案します。 ② 提案書に沿って内容を説明し、説明が終わったところで、先方の感想をお聞きします。 ③ その後については、先方の家族・顧問税理士等によって計画案に基づいた協議を行っていただ くこととし、この協議の段階で先方から必要な情報提供を求められれば提供します。 ④ 但し、支援機関指導員が家族会議に入ることは「禁止」とします。 ⑤ 家族会議の結果、先方なりの事業承継計画が完成した場合、アドバイスを求められれば対応し ます。 以上が、前工程の支援です。これ以降は、計画の実行段階に入ります。 発行:中小機構 支援機関サポート課 ※無断転載・複製を禁ず 2 事業承継計画書の作成(事業承継の前工程)支援の基本手順 事業承継計画書の作成は、以下の手順で実施します。多くの経営者は日常業務に多忙で、問 題意識は持ち合わせても取り組みが進まないケースが多いです。また、当該テーマは微妙な 人間関係、資金的問題も絡んでいますので、相談相手の立場に立った適切な助言と相談内容 の進展を見据えた慎重な発言が重要です。きちんとした手順を踏んで、丁寧な支援に心がけ てください。 モデルとなる支援プロセス 活用する仕事道具(支援ツール) STEP0 事業承継について経営者意識付け ・パンフレット<事業承継ガイド> STEP1 事業承継に関する初期相談 ・事業承継相談申込記入用紙 (様式1:相談者記入用) STEP2 事業承継基本情報のヒアリング ・事業承継相談用カルテ(様式4) STEP3 事業承継対策の確認 ・事業承継関連施策等 フローチャート (様式2) STEP4 事業承継に関する課題整理 ・事業承継相談対応 チェックリスト(様式3) ・課題整理シート(兼)提案書 STEP5 経営課題に関する方向性検討 ・知的資産の発掘と分析 ・後継者及び関係の理解 STEP6 事業資産・債務・税務課題に関する 方向性検討 ・(課題が抽出された分野の) 専門家によるアドバイス活用 STEP7 事業承継計画(案)の提案 ・事業承継計画書の書式 STEP8 関係者の合意、 事業承継計画の確定 ・親族会議等の開催 (会議へは原則不参加) STEP9 事業承継の実行に関わる提案 ・経営承継円滑化法の申請支援 ・後継者育成支援 など 継続して 事業承継推進のための環境整備とフォロー ・法務、税務面等の士業と連携 ・後継者育成の実行提案書 *様式は「事業承継支援マニュアル(支援者向け)」掲載のもの 発行:中小機構 支援機関サポート課 ※無断転載・複製を禁ず 3 事 業 承 継 計 画 書 の 作 成 支 援 の ノ ウ ハ ウ( Q & A ) Q1:支援機関指導員として、事業承継支 援は、どのようなスタンスが適しますか? Q2:事業承継と並行して経営革新等に取り 組むのが良いと聞きましたが? A1:支援機関指導員として、計画作成支 援に関わる重要な役割は以下です。 ① 案件の発掘 (全ての企業に潜在ニーズあり) ② 悩みや希望に関する聞き取り ③ 支援フロー(支援計画)の作成と提示 ④ 課題が確認された場合の専門家の活用 ⑤ 計画提案に関わる窓口機能 等 A2:経営革新は企業の永遠の課題です。あ えて後継者に取り組みを要請し、新事業立上 の経験とリーダーシップ養成の場として、制 度を活用するのは良い例です。 Q3:後継者の育成に際し、どのような教 育・育成方法がよいですか? Q4:社内、取引先に対して、後継者をどの ように認知させるようアドバイスをしたらよ いですか? A3:後継者が自ら積極的に知識習得や実 務経験取り組みことが大切です。計画に盛 り込む教育例として、以下があります。 ① 各部門をローテーションさせ、会社全 般の経営と必要な知識を習得させる。 ② 役員等の責任ある地位に付けて権限を 委譲し、リーダーシップを発揮させる。 ③ 現経営者の指導により経営のノウハウ、 業界事情、経営理念を継承させる。等 また、企業の知的資産を明らかにして、経営 に活かす“知的資産経営報告書”の作成も円 滑な事業承継に有効な手法です。 A4:後継者の認知の進め方は重要なポイ ントです。失敗すると信頼関係が崩れ、組 織運営や取引に支障が生じます。 後継者の資質や能力を把握した上で、要求 される条件やレベルを見極め、相応した認 知計画を立てるようアドバイスをしてくだ さい。後継者教育計画と連動したものが望 ましいです。 事 業 承 継 関 連 施 策 の フロ ー チ ャ ー ト A:親族内承継の場合 会社内に後継者候補がいますか? 実施・提案する施策 引き継がせる事業について 魅力や特色、これからのあ り方について整理したいで すか? Y E S N O Y E S これを機に経営全般を見直 したいとお考えですか? Y E S 後継者教育に不安がありま すか? Y E S 後継幹部の教育に不安が ありますか? Y E S 知的資産経営 経営革新 IT活用 国際化支援等 実施・提案する施策 事業承継に関して 資金調達が心配で すか? Y E S 事業承継に関わ る資金調達 相続税、贈与税が 心配ですか? Y E S 税務対策の 実施 事業承継や相続紛 争が心配ですか? Y E S 相続対策の 実施 実施・提案する施策 後継者育成 セミナーへの 参加 B:従業員等への承継の場合 実施・提案する施策 事業の継続を考えていますか? 実施・提案する施策 引き継がせる事業について 魅力や特色、これからのあ り方について整理したいで すか? Y E S N O これを機に経営全般を見直 したいとお考えですか? 廃業の検討 Y E S Y E S 知的資産経営 経営革新 IT活用 国際化支援等 事業承継に関して 資金調達が心配で すか? Y E S 事業承継(事業 譲受)に関わる 資金調達 事業承継に際して の手続きが心配で すか? Y E S 従業員等への承 継に関わる手続 き 「事業承継支援マニュアル(支援者向け)」より引用 制作著作 独立行政法人中小企業基盤整備機構 経営支援部 支援機関サポート課 作成担当 青木 弘一 (平成23~27年度 全国支援ネット統括マネージャー) 地域支援機関等サポート事業 ホームページ http://www.smrj.go.jp/keiei/chiikiryoku/index.html 発行:中小機構 支援機関サポート課 ※無断転載・複製を禁ず 4