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マディヤ・プラデシュ州大豆増産プロジェクト

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マディヤ・プラデシュ州大豆増産プロジェクト
マディヤ・プラデシュ州大豆増産プロジェクト
プロジェクト・ニュース
第 17 号
2015 年 10 月 01 日 発行
【ごあいさつ】
モンスーンの訪れをともに、
いよいよ今年度の播種の季節がやってきました。
とにかくこの時期が肝心。
空模様と圃場から目が離せません。今年はまた新たな試みを圃場に仕込み、今か今かとタイミングを待って
いました。緊張のマディヤ・プラデシュ州【MP 州】インドールよりプロジェクト・ニュース第 17 号をお
送りします。
硬い岩盤のような圃場にサブソ
イラーをかけ用意万端。ひたす
ら雨を待ちます。
降雨後、タイミングを見計
らって播種作業
順調に発芽を見て、安堵す
る協力農家の家長
【2015 年 07 月~ 10 月 プロジェクト活動ダイジェスト】
Jabalpur
JICA MP Soybean project
Jabalpur office
*緑色の地区に今年度の試験圃場はあります。
7 月 3 日~7 月 6 日
谷脇専門家 Sagar Rewa Jabalpur 出張
新たに開発した機械(ロータベータ・シーダ)の完成が予定より大幅に遅れましたが、やっとインド
ールに到着しました。モンスーン後の状態を鑑み、何とか Rewa の播種には間に合いそうということ
で、急遽出発しました。 インドールから 650 キロ、播種機を積んでひた走ります。
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プロジェクト・ニュース
第 17 号
2015 年 10 月 01 日 発行
隣の州(マハラシュトラ州)
Pune から到着した播種機
播種機をトラクターに取り付
けます。
試運転。微調整を重ねます。
播種機を引っ張るためのトラクターが馬力不足だったり、播種機をトラックに積み込むためのクレーン
の調達がなかなかできずついに人力で積みあげることになるなど、とにかく一筋縄ではいかない Rewa
の大地でした。が、なんとか作業完了。あとは発芽を待つばかりです。
Rewa の大地に試作機が走ります。
播種作業を終えた Rewa の試験圃場
7 月 3 日 有原専門家 Ujjain 出張。Ujjain の播種作業をしました。
7 月 4 日~7 日 大畑業務調整員 Jabalpur 出張。JICA 調達機材の設置状況を確認し、今年度後半
のプロジェクトの運営について確認しました。
7 月 10 日 谷脇専門家 デリー出張。JICA インド事務所にて、これからの試験に必要な機材の調
達について、綿密な打ち合わせをおこないました。
7 月 26 日~7 月 30 日 谷脇専門家 Jabalpur、 Rewa 出張。
発芽の知らせの入った Rewa の試験圃場の調査に向かいました。
理想通り、整然と畝がならび、き
れいに発芽しました。
KVK(農業技術普及センター)職員の
説明を聞く協力農家に人々
8 月 10 日~8 月 12 日 大畑業務調整員 Gwalior 出張。
カウンターパート(CP)の一つである RVSKVV(RajmataVijayaraje Scindia 農業大学)の本校
がある Gwalior を訪問し、副大学長、研究部長と面談。今年度後半のプロジェクトの運営について
確認しました。
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マディヤ・プラデシュ州大豆増産プロジェクト
プロジェクト・ニュース
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2015 年 10 月 01 日 発行
8 月 13 日 日本の食品会社の株式会社勝美ジャパン山崎裕康様、ライフフーズ株式会社矢野良一
様、株式会社せき関孝範様、勝美ジャパンのインド側合弁相手 BHANU Farms Mr. Anubhav
Misra ご一行がインドール事務所を訪問されました。冷凍食品に係る野菜に関する視察が主な目的
です。勝美ジャパンはすでにジャバルプルでインド側と合弁で食品加工会社を立ち上げておられ、
大豆の食品としての可能性(えだまめ)など、当大豆プロジェクトにとっても大変興味深いお話を
伺うことができました。
日本の食品会社の皆様。谷脇専門家
(手前)への質疑応答の様子
8 月 17 日~8 月 19 日 増田短期専門家(農業経営)来印。 Indore
増田専門家は農家に聞き取りをした膨大なデータを整理するための新しい解析法をカウンターパー
トに指導しています。これにより大豆増収要因の多元的な原因の究明が可能になります。増田専門家の
スケジュールの都合でインドール滞在はわずか 3 日間。集中力が必要な作業を長時間ぶっ通しで行い
ました。
増田専門家(中央)と CP Dr. Rathi
(右)手前研究助手 Dr. Santosh(左)
8 月 20 日~10 月 20 日 和田短期専門家(病虫害管理)来印。Jabalpur
活動の詳細は次号お伝えいたします。
8 月 22 日~9 月 5 日 阿江短期専門家(大豆栽培:土壌管理)来印。Indore
阿江専門家は当初から MP 州の土壌の特殊性に着目をしていました。それまでの MP 州での定説を
覆すものであり、ひいては高額な肥料費を減らす目標へとつながるものです。MP 州の土壌でなにが起
こっているのか、そのメカニズムを解明するため、CP とともに様々な実証試験を繰り返しています。
土壌の様子を絶えず観察する阿江専
門家(右)と谷脇専門家(右)
阿江専門家によって整備された
インドール事務所併設の実験室
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プロジェクト・ニュース
第 17 号
2015 年 10 月 01 日 発行
「タンニン」の効果の実験。
タンニンをまぶしたほうは、
順調に出芽しました。水のみ
の大豆はあっというまにカ
ビてしまいました。このよう
に次々浮かぶ仮説を実証し
てみせる阿江専門家です。
インドール事務所併設の実験
室で。実証試験の担い手、研究
助手の面々。
タンニンを水に加えた大豆
(右)水のみを与えた大豆(左)
8 月 24 日~8 月 28 日 有原専門家 Hoshangabad Jabalpur Tikamgarh Sagar 出張。試験
圃場を視察しました。同じ MP 州内であっても各圃場の天候、土壌が異なり、生育状況もそれぞれ
であることがよくわかりました。
9 月 2 日~9 月 18 日 野田短期専門家(病虫害管理)来印。Jabalpur Indore
野田専門家は CP であるジャバルプルの JNKVV(Jawaharlal Nehru 農業大学)で PCR 実験室
の整備を行い、一つの実験室内でウイルスの検出技法で PCR(Polymerase Chain Reaction)実験
を完結させることが可能になりました。
(それまでは実験器具の設置の問題で、いくつかの実験室をわ
たり歩かなくてはならなかったのです。
)これによりダイズやコナジラミからのウイルス検出が容易に
なるとともに、多くの研究者・学生にも利用できる施設となりました。
PCR 実験の様子。CP の Dr.Marabi と
野田専門家
野田専門家によって整備された
JNKVV ジャバルプルの実験室
すでに JNKVV の Dr.Shrivastava によって大豆の YMV (yellow mosaic virus),ウイルス抵抗性ダ
イズ品種を育成されています。が、抵抗性はだんだんと効力が薄れていくものです。抵抗性遺伝子の追
跡が重要な課題となります。
Dr.Shrivastava(中央)と野田専門家
(右)Dr.Shrivastava の研究室で抵抗
性遺伝子の追跡について打合せ
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2015 年 10 月 01 日 発行
野田専門家はその後 Indore の RVSKVV(RajmataVijayaraje Scindia 農業大学)Indore 校に
移動しました。Indore では MP 州のコナジラミの特徴を明らかにし、取りまとめて論文にするために
こまかなデータのチェックと、再実験部分の検討を行いました。また MP 州の YMV の特徴などを明ら
かにするために、ウイルスのゲノム配列の決定をさらに進めるべく、打ち合わせを行いました。
野田専門家と Dr.RK Singh(専門家の
右) 研究スタッフ(両端)
9 月 6 日~9 月 18 日 服部短期専門家(病虫害管理/昆虫と YM ウイルス抵抗性品種のゲノム解析)
来印。Jabalpur
服部専門家は今回が当プロジェクトへ初参加です。コナジラミを介して感染した YMV が、植物の生
長とともにどのように移動、増殖するかを知ることは、防除対策上で大変重要です。そのための基本的
なウイルス接種試験法を CP に指導しました。これによってウイルスの移動や増殖の様式を明らかする
ことができます。
ウィルス感染した大豆をいれた容器
(右手)に大豆圃場で捕獲したコナジ
ラミを移す操作をしている様子。左か
ら Dr.Bhowmick、服部専門家、
Dr.Marabi
9 月 7 日~9 日
大豆にウィルスを感染させるために、
大豆入り容器に虫を放ち、インキュベ
ーターで保存をします。
有原専門家 Dhar,Ujjain 出張。試験圃場を視察しました。
9 月 9 日~9 月 11 日 谷脇専門家 Jabalpur、Sehore 出張 Jabalpur
では 9 月に着任した JNKVV の新しい DRS
(研究部長)
の Dr. Rao(育種) と
の打ち合わせを行いました。毎年度行われているプロジェクトの進捗会議に
はいつも出席をしてくださる方です。Dr .Rao は新しいプロジェクト・マネ
ージャーでもあります。これからプロジェクト終盤に向かって、がっちりス
クラムを組んで行きます。
JNKVV の新 DRS
Dr.SK Rao
9 月 15 日~9 月 19 日 谷脇専門家 Rewa、 Jabalpur、Chhindwara 、Hoshangabad 出
張。東部地区 4 か所の KVK(農業普及センター)を訪問し、試験圃場の生育調査をしました。特に
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Rewa の圃場は草丈、莢のつき具合が良好で期待が持てます。また、この圃場では現在ある YMV
(イエローモザイクウィルス)の抵抗性品種を播種したことで、心配された YMV に罹っている様
子もありません。東部地区のここ Rewa 以外の地区では、YMV 抵抗性品種ではない豆を播種した
ため、YMV の被害が目立ちました。抵抗性品種と言えども抵抗性は数年で失われてしまいますので
(インドでは日本に比べると速い)、絶えず更新していかなくてはなりません。科学的な抵抗性遺伝子
の解明と、正しい知見に基づく育種戦略の立て直しが必要になってきます。
良好な育ち具合の Rewa の試験圃場
JNKVV Jabalpur で抵抗性品種の
研究を続けている Dr.Shrivastava と
の打合せ
9 月 21 日 谷脇専門家 Ujjain 出張。協力農家の圃場を訪問し生育状況の調査をしました。サブ
ソイラーをかけた試験圃場は他の圃場より生育はよいものの、今年は開花期から莢形成期に 3 週間
にわたる干ばつが発生しました。それによって生育の状況は予想を若干下回っています。
9 月 22 日~9/24 日 谷脇専門家 Tikamgarh、Sagar 出張。当地の KVK(農業普及センター)
を訪問し、試験圃場の生育調査を実施しました。両方の地区ともに、生育状態は良好です。両地区
を通じて、播種のタイミングが生育に大きく影響しているのではと考えています。また開花期や登
熟期(莢の中で豆の粒が成長する時期)に適度な灌漑を適切に行うこと、このあたりに良好な収穫の鍵
がありそうです。
9 月 23 日~26 日 有原専門家 Rewa、Sagar 出張。それぞれの試験圃場で大豆の発芽状態を
視察しました。サブソイラーをかけた地区の発育はより旺盛であることを確認しました。
9 月 26 日 谷脇専門家 Ujjain、Dhar 出張。MP 州西部地区の両試験圃場に生育状況の調査に行き
ました。ほぼ例年通りの生育です。
9 月 29 日~10 月 1 日 谷脇専門家バンガロール出張
バンガロールに枝豆の種子があるとの情報を得て、バンガロール農業大学へ訪問。 Dr. Jairam(育種)、
Dr. Chandrappa (栽培) 両教授と面談。枝豆の種子についてお話を伺いました。MP 州の大豆増産
計画の新たなる可能性を求めて、ネットワークを広げて行きます。
【今後の予定】
10 月末まで
短期専門家 ジャバルプルで活動
11 月末~12 月中旬 終了時評価
12 月中旬
第 12 回 JCC 合同調整会議
12 月下旬
マハラシュトラ州プネ 農業機械展示会
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マディヤ・プラデシュ州大豆増産プロジェクト
プロジェクト・ニュース
第 17 号
2015 年 10 月 01 日 発行
【編集後記】
雨が降りだすやいなや、一気に街中は
この状態になります。
地元テレビ局のインタビューを受ける
谷脇専門家。JICA 大豆増産プロジェク
トへの関心の高さが伺えます。
今年の MP 州の雨季は 6 月後半、西側から始まり
ました。その後、東側に本格的に雨が降るまで半月ほ
どの間があきました。ある年は東側から雨が降り始
め、またある年はほぼ同時期に、6 月の始めに降りだ
しました。2011 年に当プロジェクトの活動が始まっ
て以来、毎年降雨の状態が異なります。大豆の播種の
タイミングと降雨には大きな関係があります。いまま
での経験を踏まえた、播種のタイミングに係るマニュ
アル作りがプロジェクトの大きな成果の一つとなる
予定です。
Indore 事務所前の試験圃場で、除草剤
の実験。無害で効率のよい雑草の除去
も大きな課題です。谷脇専門家
本プロジェクトやプロジェクト便りへのご意見・ご感想をお待ちしております。
ニュースレター発行元:マディヤ・プラデシュ州大豆増産プロジェクト
(編集:大畑 真理子
著者:谷脇 憲、有原丈二、大畑 真理子)
JICA Project Office
C/o Salt affected Soil Project building, College of Agriculture, Indore,
Near St. Paul School, Old Sehore road, Indore, 452-001 MP India
電話:+91-731-2903003
ウェブサイト http://www.jica.go.jp/project/india/001/index.html
E メール:[email protected]
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