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宗教とジェンダー

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宗教とジェンダー
宗教とジェンダー
1 基礎的議論
2 性的虐待とジェンダー
3 JMSの事例紹介
宗教とは何か?
• 信仰:個人の内面に関わる事柄
• 文化の体系:文化、道徳、規範、慣習、生活
様式
• 社会的制度:宗教組織・制度
• 伝統的制度宗教の発生・形成期は中世以前
であるから、概して家父長制・封建的思考様
式・制度
ジェンダーとは何か?
• 社会的機能:男性/女性の差異を定義し、再
生産する観念、制度の機能
• 社会的実態:性別役割、活動領域・組織の規
定、それに応じた権力の不均衡な配分
• 社会学では社会的構築物とみなすのが普通
であり、ジェンダー論においては、男女に本
質的差を認めず、家父長制社会の脱構築を
目指す
宗教とジェンダー研究
• 第一段階:伝統宗教の家父長制的性格、そ
れに由来する教義、儀礼、宗教組織内部の
男女の不平等を問題にした。世界各国の伝
統宗教に潜む家父長制の告発が主であり、
フェミニズム神学をはじめ、諸宗教に対して批
判的な研究
• 例:女人結界の大峰山登拝問題、女性の出
家
第二段階:宗教研究者自身の視点に潜む
家父長制的な認識を批判する。
• 啓蒙主義以来の普遍主義的人間は、manと
womanを含むがmanとして代表される。
• 表象する人は、様々な属性・状況を通して「経
験」し、「思考」する:男としての経験は普遍的
なものではない。
• フェミニズムにとっても、経験の多様性が問題
になる(女性の経験の発見、しかし、女性は
一元的ではない)←途上国研究者:植民地宗
主国、権力の 欺瞞
第三段階:個々の宗教実践に内在化されたジェ
ンダーによる差異化のメカニズムを解明;ジェン
ダー的差異の構造を日々再生産している宗教
実践の特定と、codeの解読
• 事例:日本の新宗教(通俗道徳を基盤とした
教え、主婦の役割・伝統的な家族制度を補強
する実践 )
• 事例:カルト問題(宗教実践・集団生活の逸
脱性 )
教団のジェンダーに発生するAbuse
• Cult:Master-Disciple relationship (guruが
女性信者の精神的成長を自分との性的関係
や、教団組織への女性役割に基づく奉仕に
結びつける傾向があり、女性信者も又それを
受け入れていた )
• 事例:新宗教、ニューエイジの一部
• 事例:polygamist,かつてのモルモン教団
Polygamist(複婚主義者)
• モルモン教(The Church of Jesus Christ of
Latter-day Saints)が一夫多妻を19世紀末
に禁止
• 原理主義的モルモン教徒の一部と、キングス
トン一族のような親族のカルト(Latter Day
Church of Christ)を含む数万人の複婚主義
者、10人から60人もの妻、百人にも及ぶ子供
達を持つ複婚主義者のリーダー達が多数い
る
モルモン教
• 創始者ジョセフ・スミス(1805-1844) :
• 教え:紀元前600年、ユダヤ人リーハイ と息子ニー
ハイは神のお告げにより、約束の地アメリカ大陸に
船出→ニーハイの子孫:原住民→しかし、教えは廃
れ、預言者モルモンは、数々の記録を黄金の板に
抄録し、その子モロナイがクモラの丘に埋めた
• →復活して天使となったモロナイは、失われた信仰
を再び世界に伝えるためにジョセフ・スミスの前に現
れ、黄金の板に記された文字をウリム・トンミムで読
解:モルモン経
1843年、ジョセフは一夫多妻の流布者という名目で
逮捕・抑留。翌1844年、ジョセフを暴徒が殺害。
• ブリガム・ヤング(1801-1877)
• 1847年、一行はロッキー山脈を越えてつい
に約束の地・ソルトレイク湖畔へ(メキシコ領)
• 1850年、ユタ準州としてアメリカの領土に
(多妻婚をやめさせたい合衆国政府と軋轢 )
• 1857年モルモン教徒による一般開拓民の
大量虐殺事件→ユタ戦争へ
• 1890年になって多妻婚を禁止
• 1896年 ユタ州 自治(モルモン教徒8割)
キングストン一族
• 宗教的指導者でもある二代目のジョン・キングストン
が13人の妻と65人の子供を擁して事業に成功し、
この子供達と孫の間で近親婚(異母兄弟姉妹、叔父
姪)が営まれた(子供達も多数の妻を持つ)。1999
年に、三代目兄弟の2人が実子の虐待と姪への暴
行により有罪判決を受けた。
• 行政は、コミューンの中で教育機会、自活のすべを
奪われた子沢山の女性(シングル・マザー)に社会
保障の手当を支給する。警察も、未成年への性関
係を強要する事実(女性からの被害告訴)がない限
り、取り締まれない。
教祖と女性信者
• メディアがスキャンダラスに描くのが半分、残
り半分は事実に近い
• 事例:統一教会 教祖と初期信者 血分け
• Branch Davidians Koresh House of David:
spiritual wives
• オウム真理教 麻原教祖と幹部、信者女性
• JMS: もっぱらこの点でのスキャンダルのみ
なぜ:社会関係論的説明
• Economy of Love
• Guru:真理・完全・愛→信者:一方的に恩恵
•
信者の操作的利用←信者は献身を望む
• 教祖の稀少な愛は、価値を生む(信者同士での争
い)→それを独占した(教団内権力の源)と錯覚する
信者:超越者への愛が男性への愛へ
• 飽きられ、捨てられ→幻滅から告発へ
• 性・家族の統制・再編→信者を完全に統制
なぜ:心理学(精神分析的)的説明
• スリ・チモイ:ニューエイジ/ヒンドゥー瞑想(世界六〇
カ国に九千から一万三千)
• グルの写真、瞑想で想起、「私は7歳の子供」
• 治療者=グル−患者=弟子(幼児的退行)
• 「私は君が覚醒するまでそばにいる」 ←真理、力の
源であるグルに魂の救済を求める
• 信者:グルに自我の理想像、父親像を投影する(転
移) :グルへの「愛、献身、服従」が、心を癒す
• グルは少なからぬ女性信者と関係を持った(逆転移
の結果?!)
宗教的暴力とジェンダー
• 組織的構造(全体主義)・終末論/千年王国論
的教義(メシア信仰)には暴力化の要素
• 権力を抑制する制度・人物の欠如
• 権力を受け入れる異性愛・性愛(女性)の観
念
• 女性教祖では生じないか?→イラクの捕虜虐
待(軍隊の構造:条件が揃えば誰でも)
• 権力を抑制する装置:民主的発想と制度
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