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宗教とジェンダー 2005年度
宗教とジェンダー 1 基礎的議論 2 女性聖職者 3 同性愛と宗教 宗教とは何か? • 信仰:個人の内面に関わる事柄 • 文化の体系:文化、道徳、規範、慣習、生活 様式 • 社会的制度:宗教組織・制度 • 伝統的制度宗教の発生・形成期は中世以前 であるから、概して家父長制・封建的思考様 式・制度 ジェンダーとは何か? • 社会的機能:男性/女性の差異を定義し、再 生産する観念、制度の機能 • 社会的実態:性別役割、活動領域・組織の規 定、それに応じた権力の不均衡な配分 • 社会学では社会的構築物とみなすのが普通 であり、ジェンダー論においては、男女に本 質的差を認めず、家父長制社会の脱構築を 目指す 宗教とジェンダー研究 • 第一段階:伝統宗教の家父長制的性格、そ れに由来する教義、儀礼、宗教組織内部の 男女の不平等を問題にした。世界各国の伝 統宗教に潜む家父長制の告発が主であり、 フェミニズム神学をはじめ、諸宗教に対して批 判的な研究 • 例:女人結界の大峰山登拝問題、女性の出 家 第二段階:宗教研究者自身の視点に潜む 家父長制的な認識を批判する。 • 啓蒙主義以来の普遍主義的人間は、manと womanを含むがmanとして代表される。 • 表象する人は、様々な属性・状況を通して「経 験」し、「思考」する:男としての経験は普遍的 なものではない。 • フェミニズムにとっても、経験の多様性が問題 になる(女性の経験の発見、しかし、女性は 一元的ではない)←途上国研究者:植民地宗 主国、権力の 欺瞞 第三段階:個々の宗教実践に内在化されたジェ ンダーによる差異化のメカニズムを解明;ジェン ダー的差異の構造を日々再生産している宗教 実践の特定と、codeの解読 • 事例:日本の新宗教(通俗道徳、家父長制を 補強する実践 )→下がる DVに逆効果 • 事例:カルト問題(宗教実践・集団生活の逸 脱性 )→女性への性的虐待 • 事例:女性、性的マイノリティの聖職者叙任 1 Anglican Church の歴史 • イギリス キリスト教伝道 AC.6 ローマ教会 • 1534 ヘンリー8世 離婚 国王至上法 • 英国王を最高首長とする国民教会 • 特徴:聖職者(主教、司祭、執事)の妻帯、正 餐、聖書、教会再一致、総会(聖職者と信徒) • 英国から伝道 全世界5千万人の信徒 • 日本 1859米国聖公会の伝道 • 2001 信徒数57,401 (内60%女性) 日本聖公会の歴史における女性 • 女子教育 1875照安女学院、1879立教女学 校、1887香蘭女学校、1889松蔭女学校、 1890プール女学校、1895平安女学校 • 現在 神戸国際大学, ●神戸松蔭女子学院 大学. ●香蘭女学校, ●聖公会神学院. ●聖 ステパノ学園, ●聖路加看護大学. ●名古屋 柳城短期大学, ●平安女学院. ●プール学院 大学,●桃山学院大学. ●八代学院, ●立教 英国学院. ●立教女学院 ●立教大学他 • 外国人女性宣教師の来日 500名以上 • 彼女達は助手を必要とした(女子神学校) • →婦人伝道師・女執事(助手、牧師婦人) • 女性の役割 奉仕職 婦人会 Alter Guild 伴 奏・聖歌隊 食事当番 • 女子修道会(ナザレ修女会、神愛修女会) 女性聖職者への世界の動き • • • • • • • • 1944 香港 女性司祭 非常事態 1948 ランベス会議 伝統と秩序に反する 1968 ランベス会議 女執事も執事職相当 1970 香港教区 賛成決議 全聖公会中央 協議会が追認 2名女性司祭の誕生 1975 カナダ 1976 アメリカ で叙任 1989 アメリカで女性主教の叙任 1994 英国で女性司祭叙任(女王の承認と 議会の賛成に手間取る) 1998 ランベス会議 女性主教11/800 日本における女性司祭 • • • • • • • • • • 1973 聖職・信徒調査 賛成53.3% 条件付き賛成24.6% 反対20.3% 分からない1.8% 1978総会 時期尚早 1986総会 女性司祭を考える会 否決 1988総会 女性聖職問題研究委員会 否決 1990総会 女性聖職の実現検討会 可決 男子条項削除の検討は持ち越しに持ち越し 1998総会 法規改正 可決 現在まで8名女性司祭 女性司祭実現がなぜ遅れたか? • 英米 主教会が信徒会をリードして実現 対 して、日本は、主教会が最後まで反対 • 反対派の主張 主教達の宣伝 • 1 イエス・12使徒は男 • 2 婦人達は教会では黙っていなさい(コリ ントⅠ14:34) • しかし、 • 教会刷新の流れ フェミニスト神学 • 聖職者は神と人間の仲介 男女問わない • 但し、牧師婦人の問題等 残る 2 日本基督教団の歴史 • 1941 プロテスタント教派30余派の合同(宗 教団体法による統制下に成立) • 戦後 聖公会、ルーテル教会、バプテスト連 盟、日本基督教会、救世軍が離脱 • 2001 教会数1,731 牧師(男2,580,女650) • 信者135,924 • 参考 ルーテル派(ルッター)、改革派(カル ヴァン)、組合派、福音派 :分派主義が特徴 同性愛者差別事件 • 1998 第30総会期第4回常議会 教師試験 合格者決定の議案 • 常議員「ホモセクシャルなビィヘイビアをもっ ておられる方が受けられるのではないかと聞 き及んでいる。---簡単に承認しないでいただ きたい。」 • 抗議・批判がなされる • 1998 第31回教団総会 • 「同性愛者の教師資格について」文書配布 • 「(同性愛者は)教師としてふさわしくない のであって、教会はそこまで受け入れる必要 はないし、教師として受け入れを拒否しても 人権を損なったことにはならない。」 • 2000 当該男性が正教師試験合格 承認 • 1999-2003 女性達の抗議 • しかし、同性愛者差別問題を解決するため に取り組む件等の議案はこの間、審議未了 で廃案。 • 教団内 • 定議員の発言、東京神学大学教授の署名 文書として引用され、カミングアウトした教会 員、教師等への差別的言辞を喚起する。 • ↑ • 性同一性障害、同性愛:正常ではない、矯正 されるべき、治療されるべきセクシャリティ • ここでは、 • 異性愛は自明の前提 異性愛主義でも・異性 愛志向でもない: なぜ、同性愛は嫌悪されるのか? • • • • • • • • セジウィック ホモ・ソーシャル 男の連帯 女をめぐって争う可能性を排除:女性嫌悪 しかし、 男同士の親密性にはエロス的関係も内在 そこで、 同性愛という汚名をはらすべく:同性愛嫌悪 よって、 女性嫌悪/排除、次いで、同性愛嫌悪/排除 宗教はなぜ女性を嫌うのか? • 聖性:欲望からの距離 性欲:最大の敵 • よって、 • 性欲を喚起させる身体:女性 嫌悪/排除 • いかに? • 宗教的コスモロジー 女性:汚れ、劣位 • オルターナティブ:非歴史宗教の可能性(アニ ミズムか倫理か:社会形成の力になる?) • 性的エネルギーの発散と統制のバランスをい かにとっていくのか? 結論 なし • 宗教とジェンダー/セクシャリティ • 問えば問うほど難しい課題であろう • 宗教 人間の欲求・情動の統制メカニズム (社会構造の再生産) しかし、人間の自由を 抑圧もする このジレンマをどう解消? • 根本的解決なし その時々に考えるのみ 資料等 • 薄井篤子「宗教におけるグローバル/ジェン ダー・ポリティックス」 • 堀江有里「プロテスタント教会とポストフェミニ ズムの可能性」 • 以上 • 伊藤公雄代表 2004 科学研究費報告書「宗 教とジェンダー:その性支配と文化的構造の 研究」