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(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 分離軟骨細胞由来のインビトロで基質
JP 3587305 B2 2004.11.10 (57) 【 特 許 請 求 の 範 囲 】 【請求項1】 分離軟骨細胞由来のインビトロで基質上に再形成された軟骨組織を含む生物学的材料であ って、当該軟骨組織が本質的細胞外マトリックスを有し、かつ、軟骨細胞が平らで基質に 平行に配置されている表面領域と軟骨細胞が球状である中部及び深部領域を有しており、 当該表面、中部及び深部領域のマトリックスがコラーゲン線維を含んでいる連続層の軟骨 組織であることを特徴とする、生物学的材料。 【請求項2】 基質が少なくとも一つの付着因子で被覆された多孔性組織培養挿入体を含む、請求項1の 生物学的材料。 10 【請求項3】 挿 入 体 が ミ リ セ ル ( 商 標 ) − CMで あ る 、 請 求 項 2 の 生 物 学 的 材 料 。 【請求項4】 少なくとも一つの付着因子がコラーゲンである、請求項2または3の生物学的材料。 【請求項5】 コ ラ ー ゲ ン が I 又 は II 型 コ ラ ー ゲ ン で あ る 、 請 求 項 4 の 生 物 学 的 材 料 。 【請求項6】 コ ラ ー ゲ ン が 主 に II型 コ ラ ー ゲ ン で あ る 、 請 求 項 4 ま た は 5 の 生 物 学 的 材 料 。 【請求項7】 軟 骨 組 織 が 、 4.5な い し 6.5の ガ ラ ク ト サ ミ ン 対 グ ル コ サ ミ ン の 比 を 有 す る ガ ラ ク ト サ ミ ン 20 (2) JP 3587305 B2 2004.11.10 とグルコサミンを含んでいるプロテオグリカンを含む、請求項1∼6いずれかの生物学的 材料。 【請求項8】 マトリックス内に硫酸プロテオグリカンをさらに含む、請求項1∼7いずれかの生物学的 材料。 【請求項9】 硫酸プロテオグリカンの量が表面領域から中部及び深部領域へ増加する、請求項8の生物 学的材料。 【請求項10】 障害又は欠損軟骨を置換又は修復するのに使用する、請求項1∼9いずれかの生物学的材 10 料。 【請求項11】 骨折の治癒を促進するのに使用する、請求項1∼9いずれかの生物学的材料。 【請求項12】 生体から分離された関節軟骨組織から軟骨細胞を分離すること、 上下に増殖培地を適用するために選択した基質上に、単層の軟骨細胞を形成させること、 および 上下に適用された増殖培地中の基質上で軟骨細胞を培養して、実質的細胞外マトリックス を有し、かつ、軟骨細胞が平らで基質に平行に配置されている表面領域と軟骨細胞が球状 である中部及び深部領域を有しており、当該表面、中部及び深部領域のマトリックスがコ 20 ラーゲン線維を含んでいる連続層の軟骨組織であることにより特徴とする、生物学的材料 を生成すること、 を含む、再形成軟骨組織含有生物学的材料の製造方法。 【請求項13】 軟 骨 細 胞 が ヒ ト 関 節 軟 骨 組 織 か ら 分 離 さ れ る 、 請 求 項 12 の 方 法 。 【請求項14】 軟 骨 細 胞 が ウ シ 関 節 軟 骨 か ら 分 離 さ れ る 、 請 求 項 12の 方 法 。 【請求項15】 軟 骨 細 胞 が 連 続 的 酵 素 分 解 技 術 に よ り 分 離 さ れ る 、 請 求 項 12∼ 14い ず れ か の 方 法 。 【請求項16】 30 分 離 軟 骨 細 胞 が 間 葉 細 胞 で あ る 、 請 求 項 12∼ 15い ず れ か の 方 法 。 【請求項17】 基 質 が 少 な く と も 一 つ の 付 着 因 子 で 被 覆 し た 多 孔 性 組 織 培 養 挿 入 体 で あ る 、 請 求 項 12 ∼ 16 いずれかの方法。 【請求項18】 多 孔 性 組 織 培 養 挿 入 体 が ミ リ セ ル ( 商 標 ) − CMで あ る 、 請 求 項 17の 方 法 。 【請求項19】 付 着 因 子 が I 型 コ ラ ー ゲ ン 、 II型 コ ラ ー ゲ ン 、 IV型 コ ラ ー ゲ ン 、 フ ィ ブ ロ ネ ク チ ン 、 ゼ ラ チン、ラミニン、ポリリシン、ビトロネクチン、シトタクチン、エキノネクチン、エンタ クチン、テナスシン、トロンボスポンジン、ウボモルリン、ビグリカン、コンドロイチン 40 硫酸、デコリン、デルマタン硫酸、ヘパリン及びヒアルロン酸からなる群から選ばれる、 請 求 項 17 ま た は 18の 方 法 。 【請求項20】 少 な く と も 一 つ の 付 着 因 子 が I 型 コ ラ ー ゲ ン で あ る 、 請 求 項 19 の 方 法 。 【請求項21】 6 2 軟 骨 細 胞 を 少 な く と も 0.1× 1 0 / cm の 細 胞 密 度 で 培 養 す る 、 請 求 項 12 ∼ 20い ず れ か の 方 法 。 【請求項22】 6 2 軟 骨 細 胞 を 1.0な い し 7 × 10 /cm の 細 胞 密 度 で 培 養 す る 、 請 求 項 12∼ 20い ず れ か の 方 法 。 【請求項23】 50 (3) JP 3587305 B2 2004.11.10 増 殖 培 地 が ハ ム の F12培 地 で あ る 、 請 求 項 12∼ 22い ず れ か の 方 法 。 【請求項24】 軟 骨 細 胞 を 少 な く と も 14日 間 培 養 す る 、 請 求 項 12∼ 23い ず れ か の 方 法 。 【請求項25】 関節疾患の処置に有効なことが期待される医薬調製品に組織をさらすこと、及び組織に対 す る 医 薬 調 製 品 の 効 果 を 測 定 す る こ と を さ ら に 含 む 、 請 求 項 12 ∼ 24い ず れ か の 方 法 。 【請求項26】 軟骨組織の増殖をもたらすことが期待される基質に組織をさらすこと、及び組織に対する 基 質 の 効 果 を 測 定 す る こ と を さ ら に 含 む 、 請 求 項 12∼ 24 い ず れ か の 方 法 。 【請求項27】 10 請 求 項 12 ∼ 26 い ず れ か の 方 法 に よ り イ ン ビ ト ロ で 再 形 成 し た 軟 骨 組 織 。 【発明の詳細な説明】 発明の分野 本発明は、再形成軟骨組織、再形成軟骨組織の製造法、及び分離軟骨細胞由来のインビト ロで再形成された軟骨組織に関する。 発明の背景 関節軟骨は、関節連結骨の末端に見出される特殊組織である。軟骨は、他の結合組織と異 なり、血管、神経、リンパ管及び基底膜に欠ける。それは、圧縮力に対する負荷耐性の分 布及び関節機能の一部である円滑な滑りに関与する。 軟骨は、水、コラーゲン、プロテオグリカン及び非コラーゲン蛋白並びにリピドから成る 20 、豊富な細胞外マトリックスを合成する軟骨細胞より成る。コラーゲンは、プロテオグリ カ ン を ト ラ ッ プ し 、 組 織 に 引 張 り 強 さ を 与 え る の に 役 立 つ 。 II 型 コ ラ ー ゲ ン は 、 軟 骨 組 織 中の主なコラーゲンである。プロテオグリカンは、可変数のグリコサミノグリカン鎖、ケ ラタン硫酸、コンドロイチン硫酸及び/又はデルマタン硫酸及び蛋白核に共有結合したN −結合及びO−結合オリゴ糖より成る。硫酸グリコサミノグリカンは、負に電荷され、そ の結果、水中に生ずる浸透膨潤圧となる。 組織学的には、関節軟骨は非常に均質に見えるが、マトリックス組織及び組成が表面ない し深部領域と異なる(アイドロット及びキュエットナー、コネクティブ・ティッシュー・ リ サ ー チ 18:205 、 1988;ザ ネ テ ィ 等 、 ジ ャ ー ナ ル ・ オ ブ ・ セ ル ラ ー ・ バ イ オ ロ ジ ィ 101:53 、 1985 並 び に ポ ー ル 等 、 ジ ャ ー ナ ル ・ オ ブ ・ ア ナ ト ミ ィ 138:13 、 1984 ) 。 関 節 軟 骨 は 、 組 30 織の表面から骨に隣接した組織の基底までの特徴の特質移行を示す領域から成るように見 える。表面領域では、例えば軟骨組織は平らであり、接線状に配列したコラーゲンとごく わずかのプロテオグリカンとを含むマトリックスに埋め込まれた表面に平行である。中部 領域では、軟骨細胞は球状で、プロテオグリカン及び斜めに組織されたコラーゲン繊維に 富んだマトリックスに囲まれる。ケラタン硫酸リッチなプロテオグリカンは、軟骨表面か ら離れるにつれて濃度を増す(デネティ等、上掲)。 超微細構造変化は、細胞周囲及びなわ張り間マトリックス領域の間で明らかである。細胞 周 囲 コ ラ ー ゲ ン 繊 維 は ず っ と 薄 く 、 な わ 張 り 間 領 域 で コ ラ ー ゲ ン の 通 常 に 68nm 同 期 性 特 徴 を示さない。どのようにしてこれらの領域が作られ又は維持されるかは知られていない( ポール等、上掲;ウルバン及びベイリス、バイオケミカ・エト・バイオフィジカ・アクタ 40 992,59,1989; ブ ラ ウ ン 等 、 コ ネ ク テ ィ ブ ・ テ ィ ッ シ ュ ・ リ サ ー チ 24:157,1990; シ ュ ナ イ ダ ー マ ン 等 、 ジ ャ ー ナ ル ・ オ ブ ・ オ ー ソ パ エ デ ィ ッ ク ・ リ サ ー チ ・ 4:393,1986 ) 。 軟骨組織及び病理生理学の研究は、軟骨組織の限られた利用可能性とインビボ軟骨組織の 組織をミミックするインビトロ培養システムが無いことにより極めて限られて来た。イン ビボで、軟骨は除去され外植片培養で維持されるが、これらの培養に関連する幾つかの問 題がある(ポール等、上掲;レイン及びブライトン、アースリティス・アンド・リューマ チ ズ ム 17:235,1974 並 び に モ ラ レ ス 等 、 ジ ャ ー ナ ル ・ オ ブ ・ バ イ オ ロ ジ カ ル ・ ケ ミ ス ト リ ィ 259:6720,1984 ) 。 培 養 の 間 に 、 軟 骨 か ら マ ト リ ッ ク ス 分 子 の 損 失 が あ り 、 従 っ て 実 験 作業に利用できる軟骨の量が限られる。軟骨細胞は、軟骨から分離されて、単層培養シス テムで生育されて来た(マニング及びボナー、アースリティス・アンド・リューマチズム 50 (4) JP 3587305 B2 2004.11.10 10 、 235、 1967;ホ ー ウ ィ ツ 及 び ド ー フ マ ン 、 ジ ャ ー ナ ル ・ オ ブ ・ セ ル ラ ー ・ バ イ オ ロ ジ ィ 45,434,1970 並 び に グ リ ー ン 、 ク リ ニ カ ル ・ オ ー ソ パ エ デ ィ ク ス ・ ア ン ド ・ リ レ イ テ ッ ド ・ リ サ ー チ 75,248 、 1971 ) 。 し か し な が ら 、 こ れ ら の 培 養 で 軟 骨 細 胞 表 現 型 は 、 不 安 定 で あり、そしてI型コラーゲン及び小非集合プロテオグリカンの生成から明らかなように、 軟 骨 細 胞 は 繊 維 芽 細 胞 に 脱 分 化 す る ( フ ォ ン ・ デ ア ・ マ ー ク 等 、 ネ イ チ ャ ー 267:531,1977 及 び ソ ラ ー シ ュ 、 ア メ リ カ ン ・ ジ ャ ー ナ ル ・ オ ブ ・ メ デ ィ カ ル ・ ジ ェ ネ テ ィ ク ス 34:30,19 89 ) 。 球状形で軟骨細胞を維持すると、軟骨細胞表現型の脱分化を遅らせるか又は防止すること を 示 し た ( ワ ッ ト 及 び ダ ト ヒ ア 、 デ ィ フ ァ レ ン テ ィ エ イ シ ョ ン 38:140,1988 ) 。 従 っ て 、 培養システムが細胞を球状形に維持するために開発された。懸濁培養中、コラーゲンゲル 10 中、アガロースゲル中又は上、組成アガロース−コラーゲンゲル中、アルギン酸塩中又は アパタイトビース上、単層又は小滴形で高密度でプレートされた一次細胞培養、或は単層 培養と続くアガロース培養への転移との組合わせを使用して脱分化を遅らせるか又は防止 す る こ と を 試 み た ( ケ ト ナ ー 等 、 ジ ャ ー ナ ル ・ オ ブ ・ セ ル ラ ー ・ バ イ オ ロ ジ ィ 93:743 、 19 82;バ ン ・ カ ン ペ ン 及 び ベ ル ド フ ィ ゼ ン 、 エ ク ス ペ リ メ ン タ ル ・ セ ル ・ リ サ ー チ 140:440,1 982; デ ル ブ ル ッ ク 等 、 コ ネ ク テ ィ ブ ・ テ ィ ッ シ ュ ・ リ サ ー チ 15:155,1986; ト ン プ ソ ン 等 、 エ ク ス ペ リ メ ン タ ル ・ セ ル ・ リ サ ー チ 157:483,1985; バ ス ラ ー 等 、 イ ン ヒ ド ロ 2 2:113,1986 ;チ ュ ン グ 、 イ ン ビ ト ロ ・ セ ル ・ デ ベ ロ ッ プ メ ン タ ル ・ バ イ オ ロ ジ ィ 21:353,1985;グ オ 等 、 コ ネ ク テ ィ ブ ・ テ ィ ッ シ ュ ・ リ サ ー チ 19:277,1989; オ ウ ル ソ ウ ス 等 、 イ ン ビ ト ロ 25:659 ,1989並 び に ソ ル ー シ ュ 、 ジ ャ ー ナ ル ・ オ ブ ・ セ ル ラ ー ・ バ イ オ ケ ミ ス ト リ ィ 4 5:258、 199 20 1) 。 軟 骨 細 胞 表 現 型 を 維 持 す る 別 の 試 み が な さ れ 、 拡 散 チ ャ ン バ ー で 、 又 は 単 層 で 、 ベ ー タ TG F( オ ド リ ス コ ル 等 、 ト ラ ン ス ・ オ ー ソ プ ・ レ ス ( Trans.Orthop.Res. ) 37:125,1991 及 び ナ カ ハ ラ 等 、 ボ ー ン 11:181,1990 ) 又 は 軟 骨 膜 移 植 片 ( ア ミ ー ル 等 、 コ ネ ク テ ィ ブ ・ テ ィ ッ シ ュ ・ リ サ ー チ 18:27,1988 ) の 存 在 で 間 充 織 細 胞 を 生 育 す る こ と に よ り 軟 骨 形 成 を 誘 導 し た 。 II 型 コ ラ ー ゲ ン 及 び 関 節 軟 骨 に 特 異 的 軟 骨 な プ ロ テ オ グ リ カ ン の 合 成 に よ り 示 さ れ るように、上記条件の全てにおいて、軟骨細胞は少なくとも部分軟骨細胞表現型を維持す る。しかしながら、これらの型の培養に伴う多くの問題がある。幾らかの培養で、増殖は 阻害され、そのため限られた数の細胞しか産生しない。これらの培養物から細胞を分離す ることが困難なことも判った。しかしながら、最も重要な限定は、これらの培養システム 30 が上記の細胞及びマトリックス組織を含む、関節軟骨のインビボ形態学をミミックできな いことである。 グ リ ー ン ( ク リ ニ カ ル ・ オ ー ソ パ エ デ ィ ク ス ・ リ レ イ テ ッ ド ・ リ サ ー チ 75:248,1971 ) は 、ミリポアセルロースアセテート挿入体上ペレット集合培養でインビボで軟骨細胞を生育 する方法を教示する。グリーンは、ウサギ軟骨細胞による軟骨粘液様マトリックスのイン ビ ト ロ 生 成 を 記 載 す る 。 ク ェ ト ナ ー 等 ( ジ ャ ー ナ ル ・ オ ブ ・ セ ル ラ ー ・ バ イ オ ロ ジ ィ 93:7 51 ( 1982 ) ) は 、 プ ラ ス チ ッ ク 皿 上 で の ウ シ 軟 骨 細 胞 の 培 養 方 法 を 記 載 す る 。 米 国 特 許 第 4,356,261号 に お い て 、 ク ェ ト ナ ー は 、 回 転 び ん 中 懸 濁 培 養 で 軟 骨 細 胞 を 培 養 す る 方 法 を 記 載 す る 。 II 型 コ ラ ー ゲ ン が 、 イ ン ビ ト ロ で 合 成 さ れ た 主 要 マ ト リ ッ ク ス 会 合 コ ラ ー ゲ ン であるとして報告された。クェトナー等は、 35 Sパ ル ス 標 識 培 養 の ク ロ マ ト グ ラ フ ィ に よ 40 るそれらの培養システムで軟骨細胞により合成されたプロテオグリカンを分析した。合成 さ れ た プ ロ テ オ グ リ カ ン は 、 イ ン ビ ボ ウ シ 関 節 軟 骨 の も の と 比 較 し た 。 バ ス ラ ー 等 ( 1986 )は、分泌マトリックスと軟骨細胞の集合体が旋回振盪機により生成した、ヒト軟骨細胞 の 懸 濁 培 養 を 教 示 す る 。 II型 コ ラ ー ゲ ン 及 び プ ロ テ オ グ リ カ ン が 、 免 疫 蛍 光 法 及 び ラ ジ オ イムノアッセイにより分泌マトリックス中に検出された。 チ ュ ン グ ( イ ン ビ ト ロ ・ セ ル ・ デ ベ ロ ッ プ メ ン タ ル ・ バ イ オ ロ ジ ィ 21:353,1985 ) は 、 多 孔性ヒドロキシアパタイトセラミック顆粒上、イヌ軟骨細胞の培養方法を教示する。報告 に よ れ ば 、 細 胞 は 13ケ 月 ま で 増 殖 し 、 異 染 性 細 胞 外 マ ト リ ッ ク ス を 分 泌 し た 。 ア ガ ロ ー ス ゲルマトリックスも、ヒト軟骨細胞のインビトロ培養に適当であると記載されている(デ ル ブ ル ッ ク 等 、 コ ネ ク テ ィ ブ ・ テ ィ ッ シ ュ ・ リ サ ー チ 15:155,1986 ) 。 デ ル ブ ル ッ ク 等 は 50 (5) JP 3587305 B2 2004.11.10 、アガロースに分布し、なわ張り間様部分により囲まれた細胞周囲部を形成するヒト軟骨 細 胞 を 開 示 し た 。 II型 コ ラ ー ゲ ン が 、 免 疫 蛍 光 法 に よ り ゲ ル マ ト リ ッ ク ス 培 養 で 検 出 さ れ 、 酸 可 溶 性 コ ラ ー ゲ ン を SDSポ リ ア ク リ ル ア ミ ド ゲ ル 電 気 泳 動 に よ り 試 験 し た 。 ワ ッ ト 及 び ダ ド ヒ ア ( デ ィ フ ァ レ ン テ ィ エ イ シ ョ ン 38:140,1988 ) は 、 ブ タ 軟 骨 細 胞 の 培 養用のコラーゲン及びアガロースの複合ゲルを開示する。複合ゲルは軟骨細胞が拡散する のを防止した。しかしながら、事実上、細胞外マトリックスは低密度培養複合ゲルに分泌 しなかった。 マ ク リ ス 等 ( イ ン ビ ト ロ ・ セ ル ・ デ ベ ロ ッ プ メ ン タ ル ・ バ イ オ ロ ジ ィ 21:180,1985 ) は 、 ポリスチレンプラスチック培養皿に移されたコラーゲンを含む、抹消神経系細胞を培養す るためのコラーゲン表面を教示する。マクリス等は、移転コーチング方法が、吸着技術に 10 より生成されたコラーゲンコーチングに比べ、増強されたコラーゲン接着及び、培養され た神経細胞の増加した長期間生存を生じたことを開示する。 発明の要約 本発明者は、分離軟骨細胞由来の基質にインビトロで軟骨組織を再形成した。再形成軟骨 組織は、動物関節軟骨組織と実質的に同様の生化学的組成並びに細胞及びマトリックス組 織を有する。特に本発明者は、インビボでウシ軟骨に見出されたものと極めて類似の実質 的 細 胞 外 マ ト リ ッ ク ス 及 び 所 有 ( possessing ) 領 域 を 有 す る 連 続 層 の 軟 骨 組 織 に よ り 特 徴 付けられる軟骨を再形成した。表面領域は、平らで基質に平行に配置される軟骨細胞とコ ラーゲン繊維を含むマトリックスにより特徴付けられる。中部及び深部領域は表面軟骨細 胞を有し、マトリックスはコラーゲン繊維を含む。再形成軟骨組織は、超微細構造的にイ 20 ンビボウシ軟骨のそれと類似の細胞周囲及びなわ張り間配置を有する。 本 発 明 の 再 形 成 軟 骨 は 又 、 動 物 関 節 軟 骨 と 実 質 的 に 同 じ 生 化 学 的 組 成 を 有 す る 。 特 に II 型 コラーゲンは再形成軟骨全体に存在し、本発明の再形成軟骨組織のグリコサミノグリカン 中 の ガ ラ ク ト サ ミ ン 対 グ ル コ サ ミ ン ア ミ ノ 糖 の 比 は 、 約 4.5と 6 .5の 間 で あ る 。 本 発 明 の 再 形成軟骨組織のある条件下で、インビボ軟骨組織に対すると同様の方法で、インターロイ キン1βに反応する。 大まかに述べると、本発明は動物関節軟骨組織と実質的に同じ生化学的組成並びに細胞及 びマトリックス組織を有する、インビトロで再形成された軟骨組織に関する。 本発明は、又、関節軟骨組織から軟骨細胞を分離すること、基質の上下で適用されるべき 増殖培地を可能にするために選択される基質上に単層の軟骨細胞を形成させること、増殖 30 培地中、基質上の軟骨細胞の上下で適用される基質上で軟骨細胞を培養し、関節軟骨組織 と事実的に同じ生化学的組成並びに細胞及びマトリックス組織を有する組織を生成するこ とを含む、再形成軟骨組織の製造方法に係る。 本発明の方法の一態様において、関節軟骨組織は、動物の関節から取られ、軟骨組織を分 解して分離軟骨細胞を得、単層の軟骨細胞が基質の上下で適用される増殖培地を可能にす るために選択される基質上で形成され、軟骨細胞は、基質上の軟骨細胞の上下で適用され る増殖培地中、基質上で培養されて、関節軟骨組織と実質的に同じ生化学的組成並びに細 胞及びマトリックス組織を有する組織を生成する。 さらに、本発明は、軟骨組織を分解して分離軟骨細胞を得ること、基質上に単層の軟骨細 胞を形成すること、軟骨細胞と増殖培地を培養して関節軟骨組織と実質的に同じ生化学的 40 組成並びに細胞及びマトリックス組織を有する組織を生成することによるインビトロで再 形成された人工軟骨組織に係る。 その上さらに本発明は、本発明の再形成軟骨組織を用い製薬製品の関節疾患の処置の効力 を試験する方法及び障害又は欠損軟骨を置換又は修復するインプラントとして本発明の再 形成組織を用いる方法に係る。本発明は、又、本発明の再形成組織を患者の骨折部位に挿 入することによる骨折の処置方法並びに軟骨組織の増殖に影響を及ぼすことが期待される 基質に組織をさらすこと及び組織に対する基質の効果を測定することを含む、軟骨組織の 増殖に影響を及ぼす基質の試験方法に係る。 【図面の簡単な説明】 図1は、コラーゲン被覆挿入物(F)上で培養された軟骨細胞により産生され、トルイジ 50 (6) JP 3587305 B2 2004.11.10 ンブルーで染色された軟骨を示す、顕微鏡写真である。 図2は、ウシ関節由来の軟骨を示す顕微鏡写真である。 図3は、関節軟骨(C)の細胞組織特質の欠損を示す胎児軟骨の顕微鏡写真である。 図4は、コラーゲン被覆挿入物上の培養物中に産生した軟骨組織内の細胞周囲マトリック ス(→)及びなわ張り間マトリックスにより囲まれた軟骨細胞の電子顕微鏡写真である。 図5は、特徴的周期バンドによりコラーゲン繊維の存在を示す再形成軟骨組織のなわ張り 間マトリックスの電子顕微鏡写真である。 図 6 は 、 培 養 物 中 に 産 生 し た 軟 骨 組 織 の ペ プ シ ン 抽 出 物 ( E ) 中 の II型 コ ラ ー ゲ ン と コ ラ ーゲン標準(S)の存在を示すウエスタンブロットである。 図 7 は 、 抗 II 型 コ ラ ー ゲ ン 抗 体 、 次 い で リ ン 酸 ア ル カ リ と 接 合 し た 抗 ウ サ ギ IgGと イ ン キ 10 ュベートした再形成軟骨組織のセクションの顕微鏡写真である。 図 8 は 、 第 VIII 因 子 関 連 抗 原 に 向 け ら れ た 抗 体 と イ ン キ ュ ベ ー ト し 、 図 7 の よ う に 反 応 し た再形成軟骨組織のセクションの顕微鏡写真である。 発明の詳細な説明 これまで述べたように、本発明は、動物関節軟骨組織と実質的に同じ生化学的組成並びに 細胞及びマトリックス組織を有するインビトロで再形成された軟骨組織を提供する。 本発明の再形成軟骨組織は、重要な細胞外マトリックスを有し、且つ軟骨細胞が平らで基 質に平行に配置される表面領域並びに軟骨細胞が球状である中部及び深部領域を含み、そ して表面、中部及び深部領域のマトリックスがコラーゲン線維を含む、連続層の軟骨組織 により特徴付けられる。 20 本発明は、又、再形成軟骨組織を生成する方法に係る。方法は、軟骨組織から軟骨細胞を 分離することを含む。特に関節軟骨は、動物の関節から取り出し得、そしてそれは分解し て分離軟骨細胞を得うる。単層の軟骨細胞が基質上に形成され、軟骨細胞は、増殖培地に 培養されて関節軟骨組織と実質的に同じ生化学的組成並びに細胞及びマトリックス組織を 有する組織を生成する。 本発明の再形成軟骨組織は、動物、好ましくはヒト、ウシ及びウサギ、最も好ましくはヒ ト由来の関節軟骨から分離された軟骨細胞から調造しうる。特に便利なシステムはウシ関 節軟骨から例えば中手指節関節から分離された軟骨細胞から調製しうる。本発明の方法に 用いうる軟骨細胞は、軟骨細胞表現型及び軟骨細胞の前駆体細胞、例えば胎児細胞及び間 充識細胞を有する細胞を含む。 30 軟骨細胞は、連続的酵素分解技術、例えばカンデル等、バイオケミカ・エト・バイオフィ ジ カ ・ ア ク タ 1035:130,1990 に 記 載 さ れ る も の を 含 む 、 当 業 者 に 知 ら れ た 技 術 を 用 い 分 離 し う る 。 例 え ば 、 軟 骨 は 0.5% プ ロ テ ア ー ゼ 、 続 い て 0.04% 細 菌 コ ラ ゲ ナ ー ゼ で 処 理 し う る。 軟骨細胞は、基質の上下で適用される増殖培地を可能にするために選択される基質上にプ レートする。好ましくは、基質は付着因子で被覆された多孔性組織培養挿入体、例えばミ リ セ ル ( 商 標 ) − CM挿 入 体 で あ る 。 付 着 因 子 は 、 当 業 界 で 既 知 で あ り 、 例 え ば ス ト リ ュ ヒ 及 び ビ ッ セ ル 、 ジ ャ ー ナ ル ・ オ ブ ・ セ ル ラ ー ・ バ イ オ ロ ジ ィ 110:1045,1990 及 び ブ ッ ク 及 び ホ ー ウ ィ ッ ツ 、 ア ン ・ レ ブ ・ セ ル ・ バ イ オ ロ ジ ィ 3:179,1987 参 照 。 付 着 因 子 の 例 は 、 I 型 コ ラ ー ゲ ン 、 II型 コ ラ ー ゲ ン 、 IV 型 コ ラ ー ゲ ン 、 コ ラ ー ゲ ン の 切 片 の 合 成 ペ プ チ ド 、 好 ま し く は コ ラ ー ゲ ン の α 1 ( 1 ) 鎖 に 存 在 す る 15ア ミ ノ 酸 配 列 766 GTPGPQGIAGQRGVV 780 40 ( バ ト ナ ガ ー 及 び キ イ ア ン 、 38 ス ・ ア ニ ュ ア ル ・ ミ ー テ ィ ン グ ・ オ ブ ・ ジ ・ オ ー ソ ペ デ ィ ッ ク ・ リ サ ー チ ・ ソ サ エ テ ィ 17:106,1992 ) 、 フ ィ ブ ロ ネ ク チ ン 、 ゼ ラ チ ン 、 ラ ミ ニ ン 、 ポ リリシン、好ましくは、ポリ−L−リシン及びポリ−D−リシン、ビトロネクチン、シト タクチン、エキノネクチン、エンタクチン、テナスシン、スロンボスポンディン、ウボモ ルリン、ビグリカン、コンドロイチン硫酸、デコリン、デルマタン硫酸、ヘパリン及びヒ アルロン酸を含む。好ましくは、本発明の方法に用いられる付着因子は、コラーゲン、最 2 も 好 ま し く は I 型 コ ラ ー ゲ ン で あ る 。 軟 骨 細 胞 は 、 少 な く と も 0.1cm の 、 好 ま し く は 1.0 6 2 − 7 × 10 cm の 高 細 胞 密 度 で プ レ ー ト す る 。 本 発 明 の 好 ま し い 態 様 で は 、 基 質 は 、 細 孔 径 0.4μ m の 発 育 付 着 因 子 、 好 ま し く は コ ラ ー 50 (7) JP 3587305 B2 2004.11.10 ゲ ン 、 最 も 好 ま し く は 酢 酸 に 希 釈 し た I 型 コ ラ ー ゲ ン で 被 覆 し た 、 ミ リ セ ル ( 商 標 ) − CM 組織培養挿入体である。挿入体は、続いて空気乾燥し、例えば紫外線により滅菌する。 被覆基質上にシードされた軟骨細胞は、適当な培養条件で生育しうる。適当な培養培地の 例 は 、 当 業 界 で 既 知 で あ り 、 例 え ば ハ ム の F12培 地 で あ る 。 培 養 培 地 は 、 血 清 、 例 え ば ウ シ 胎 児 血 清 を 約 2 − 15 % の 濃 度 範 囲 で 含 み 得 、 さ ら に 成 育 因 子 及 び ア ス コ ル ビ ン 酸 を 含 み う る 。 培 養 培 地 は 基 質 の 上 下 に 適 用 さ れ る 。 細 胞 は 、 CO 2 を 補 充 し た 加 湿 大 気 中 、 37℃ で 少 な く と も 14 日 間 培 養 し う る 。 細 胞 を 14 日 以 下 培 養 し て 軟 骨 組 織 と 全 く 類 似 し て い な い が 移植に適しうる再形成生成物を得る。 本 発 明 者 は 、 14 日 後 、 培 養 物 中 、 細 胞 が イ ン ビ ボ ウ シ 軟 骨 と 実 質 的 に 同 一 で あ る 本 質 的 細 胞外マトリックスを伴う組織を生成することを見出した。細胞は、重要な細胞外マトリッ 10 クスを生成し、インビボで天然ウシ軟骨に見られるものと極めて類似の連続層の軟骨組織 所有領域を形成する。表面領域は、平らな形態とトルイジンブルーで染まらないかほとん ど染まらないマトリックスを有し、硫酸プロテオグリカンの相対的不存在を示す、軟骨細 胞により特徴付けられる。中部及び深部領域の軟骨細胞は、球状外形を有し、マトリック スは、トルイジンブルーで染色することにより明らかにされるように豊富な硫酸プロテオ グリカンを含む。コラーゲン線維は、マトリックス全体に広がって存在する。 再形成軟骨組織は、超微細構造的にインビボウシ軟骨のものと類似の細胞周囲及びなわ張 り間配置を有する。軟骨細胞は、豊富なラフな小胞体を有し、マトリックスにより囲まれ ている。細胞周囲のマトリックスは、数多くの薄い非バンドコラーゲン線維を含む。なわ 張り間マトリックス中のコラーゲンは、関節軟骨と同様、凝縮されず電子半透明アモルフ 20 ァス物質に包埋されない。マトリックスのなわ張り間部分中のコラーゲン線維は、軟骨組 織のなわ張り間領域中のコラーゲン線維の周期的バンド特徴を示す。 再形成軟骨組織の生化学的組成は、動物関節軟骨組織と実質的に同じである。例えば再形 成 軟 骨 組 織 中 の II型 コ ラ ー ゲ ン の 存 在 は 、 軟 骨 細 胞 の 特 異 表 現 型 を 示 す 。 II型 コ ラ ー ゲ ン の存在は、ポリアクリルアミドゲル電気泳動及びウエスタンブロット分析により、再形成 軟 骨 組 織 に 測 定 さ れ た 。 II型 コ ラ ー ゲ ン は 、 II型 コ ラ ー ゲ ン に 向 け ら れ た ポ リ ク ロ ー ナ ル 抗体を用いる軟骨の免疫組織化学染色により測定されるように再形成軟骨組織全体に存在 する。本発明の再形成軟骨組織中の軟骨に存在するグリコサミノグリカン中に見出される ガ ラ ク ト サ ミ ン 対 グ ル コ サ ミ ン ア ミ ノ 糖 の 比 は 、 約 4.5と 6.5の 間 で あ る 。 幾る条件下での再形成軟骨組織は、インビボ軟骨組織に対する同様の方法でインターロイ 30 キン1βに反応する。インターロイキン1βは、軟骨マトリックス巨大分子を崩壊させる ことができ、プロテオグリカンの合成を阻害することができるマトリックスメタロプロテ アーゼの生成を促進する。ある条件下で、ヒト組換えインターロイキン1βによる再形成 組織の処理は、結果として軟骨及びマトリックス組成の欠失となる。 本発明の再形成軟骨組織は、軟骨構造、機能及び開発のインビトロ研究のためのモデルシ ステムとして用いることができる。特に、本発明の再形成軟骨組織は、関節の疾患、例え ば骨関節炎、炎症関節症、敗血症性関節炎及び結晶性関節症の処置に有用な医薬調製品の 試験に用いうる。本発明の再形成軟骨組織は、又、障害又は欠損軟骨を置換又は修復する ために患者の関節にインプラントしうる。さらに、軟骨は、軟骨が血管浸透に対し通常耐 性であるので、脈管形成因子を試験するのに用いることができる。本発明の再形成軟骨組 40 織は、又、骨折の部位に挿入して、骨骨折の治癒を促進するのに用いることができる。 本発明の再形成軟骨組織は、又、軟骨組織の増殖に影響を及ぼす物質、即ちトロフィック 因子を同定するのに用いうる。即ち、軟骨組織の増殖を阻害又は促進する物質は、軟骨組 織の増殖に影響を及ぼすことが期待される物質を本発明の再形成軟骨組織に付加すること 、及び物質の効果を測定することにより確認しうる。軟骨組織の増殖を促進又は阻害する 物質のアゴニスト又は拮抗物質も、本発明の再形成組織を用いて確認しうる。 以下の非限定実施例は、本発明を示す。 実施例1 インビトロで軟骨組織を再形成すること 軟 骨 細 胞 は 、 カ ン デ ル 等 、 バ イ オ ケ ミ カ ・ エ ト ・ バ イ オ フ ィ ジ カ ・ ア ク タ 1053:130 ( 1990 50 (8) JP 3587305 B2 2004.11.10 )に記載される連続的酵素分解技術を用い中手指節関節から得たウシ関節軟骨から分離し た 。 概 略 述 べ る と 、 軟 骨 は 、 0.5% プ ロ テ ア ー ゼ で 1 時 間 及 び 0 .04% 細 菌 性 コ ラ ゲ ナ ー ゼ 6 2 で 一 晩 処 理 し た 。 分 離 し た 軟 骨 細 胞 は 、 3 回 洗 浄 し 、 約 1.5× 1 0 / cm の 細 胞 密 度 で コ ラ ー ゲ ン 被 覆 ミ リ セ ル ( 商 標 ) − CM多 孔 性 組 織 培 養 挿 入 体 上 に プ レ ー ト し た 。 コ ラ ー ゲ ン 被 覆 挿 入 体 を 調 製 す る た め に 、 ミ リ セ ル ( 商 標 ) − CM、 孔 径 0.4μ m を I 型 コ ラ ー ゲ ン ( ヒ ド ロ ゲ ン 、 I 型 コ ラ ー ゲ ン 、 コ ラ ー ゲ ン ・ コ ー ポ レ イ シ ョ ン ) で 被 覆 し 、 12 mM 酢 酸 で 1mg/ml に 希 釈 し た 。 被 覆 後 、 挿 入 体 は 18時 間 空 気 乾 燥 し 、 紫 外 線 に よ り 15分 間 滅 菌した。 軟骨細胞に接種したコラーゲン被覆挿入体は、滅菌組織培養ウエル中にプレートし、5% ウ シ 胎 児 血 清 を 補 足 し た ハ ム の F12培 地 に 培 養 し た 。 細 胞 は 、 5 % CO 2 を 補 足 し た 湿 潤 大 気 10 中 、 37 ℃ で 培 養 し た 。 培 地 は 、 最 初 の プ レ ー ト 後 2.5− 3 日 後 に 、 そ の 後 各 2 日 で 変 更 し た 。 加 え た 培 地 の 容 量 は 、 用 い た 挿 入 体 の 大 き さ に 依 存 し た 。 大 き な 挿 入 体 ( 3.0mm) に つ い て は 、 1.5mlの 培 地 を 挿 入 体 の 上 に 置 き 、 1.0mlを 下 に 置 い た 。 挿 入 体 は 3 ケ 月 ま で 選 択された時間間隔で集め、固定し、光学又は電子顕微鏡で調べた。 光 学 顕 微 鏡 に つ い て は 、 挿 入 体 は 10 % ホ ル マ リ ン 中 に 固 定 し 、 パ ラ フ ィ ン に 包 埋 し 、 約 5 μm厚さのセクションにカットした。セクションをヘマトキシリンとエオシンのいずれか で染色して細胞を視覚化するか或はカチオン染料トルイジンブルーで硫酸プロテオグリカ ンを染色した。ウシ中手指節関節由来の無傷軟骨のインビボ試料を同様に光学顕微鏡用に 処理した。 電子顕微鏡について、挿入体培養物の代表部分を2%グルタールアルデヒド中室温で1時 20 間固定した。挿入体をリン酸緩衝液で洗浄し、1%四酸化オスミウム中に室温で1時間浸 漬 し た 。 挿 入 体 を リ ン 酸 緩 衝 液 で 洗 浄 し 、 100% エ タ ノ ー ル に 等 級 付 け の エ タ ノ ー ル 中 で 脱 水 し た 。 挿 入 体 を 100% プ ロ ピ レ ン オ キ シ ド に 20分 間 浸 漬 し 、 次 い で プ ラ ス チ ッ ク 樹 脂 ( ス プ ル ( 商 標 ) ) に 包 埋 し 、 70℃ で 一 晩 重 合 し た 。 薄 い セ ク シ ョ ン に カ ッ ト し 、 電 子 顕 微鏡による試験の前に酢酸ウラニルとクエン酸鉛で染色した。 培養2週間後、細胞は、豊富な細胞外マトリックスを伴う組織を生成し、これはウシ軟骨 インビボと実質的に同一であった。図1に示される、インビトロ培養により生成された軟 骨組織と図2に示される、当業界で既知の、ウシ関節由来のインビボ軟骨組織との間で形 態学的比較を行った。図2は、ウシ関節から解剖された軟骨組織における軟骨細胞の組織 を示す。表面部分の軟骨細胞は平らで深部層の軟骨細胞はより球状である。トルイジンブ 30 ルー染色は、硫酸プロテオグリカンの軟骨全体への存在を示す。染色は表面領域で明るく プロテオグリカンが少ないことを示唆する。胎児軟骨は図3に示されるように特異的細胞 組織がない。 インビトロで増殖した、図1に示される軟骨細胞は、インビボウシ関節軟骨と極めて類似 することが判った。光学顕微鏡による4週令培養の試験は、細胞が豊富な細胞外マトリッ クスを生成し、天然ウシ軟骨インビボ中に見られるものと非常に類似する連続層の軟骨組 織所有領域を形成することを示した。表面領域は、平らな形態とトルイジンブルーで染色 しないマトリックスを有し、硫酸プロテオグリカンの相対的不存在を示す軟骨細胞により 特徴付けられた。中部領域の軟骨細胞は少し平らな外見を有し、マトリックスは、トルイ ジンブルー染色により生成する異染性により証明されるように、硫酸プロテオグリカンを 40 含有した。深部領域の軟骨細胞は、外観が球状で、マトリックスは異染性であった。偏光 顕微鏡による試験は、コラーゲン線維を示す複屈折を示した。 電子顕微鏡による試験は、培養組織が図4に示されるように、ウシ軟骨のものに類似の細 胞周囲及びなわ張り間配置を有することを示した。豊富なラフな内質細網を有し、マトリ ックスに囲まれた軟骨細胞が観察された。細胞周囲マトリックスは、数多くの薄い非バン ドコラーゲン線維を含有した。なわ張り間マトリックス中のコラーゲンはあまりまとまっ ておらず、関節軟骨に類似の電子半透明アモルファス物質に包埋されなかった。図5は、 再形成軟骨組織のなわ張り間マトリックス由来のコラーゲン線維を示す。コラーゲン線維 は、インビボ軟骨組織のなわ張り間領域中のコラーゲン線維の周期的バンド特徴を示す。 マトリックス全体に点のように見え、プロテオグリカンの存在を示す数多くの電子密集顆 50 (9) JP 3587305 B2 2004.11.10 粒が存在した。 実施例2 II 型 コ ラ ー ゲ ン の イ ン ビ ト ロ 合 成 イ ン ビ ト ロ で 増 殖 し た 軟 骨 組 織 中 の II型 コ ラ ー ゲ ン の 存 在 を 測 定 し 、 培 養 軟 骨 細 胞 が そ れ らの分化表現型を維持したことを確認した。 軟骨細胞培養は、上記実施例1に概説した方法に従って行い、2−4週間培養液中に維持 し た 。 軟 骨 組 織 は 4 ℃ で 100μ g/mlの ペ プ シ ン に よ り 抽 出 し た 。 24時 間 後 、 付 加 的 100μ g の ペ プ シ ン を 加 え て 抽 出 を さ ら に 24 時 間 続 け た 。 ペ プ シ ン 抽 出 物 を 同 容 量 の レ イ エ ム リ の 緩衝液の添加により中和した。 II 型 コ ラ ー ゲ ン の 存 在 を レ イ エ ム リ の 方 法 ( U.K.,ネ イ チ ャ ー ( ロ ン ド ン ) 227,680( 1974 10 ) ) に 従 っ て ド デ シ ル 硫 酸 ナ ト リ ウ ム ( SDS− PAGE) の 存 在 で ポ リ ア ク リ ル ア ミ ド ゲ ル 電 気泳動により測定した。8%ポリアクリルアミドゲルを用いた。ペプシン抽出物の資料を ゲ ル に 適 用 し 、 100Maで 約 2 時 間 電 気 泳 動 に 付 し た 。 ゲ ル 上 の バ ン ド は ク ー マ シ ィ ブ リ リ アントブルーで染色することにより視覚化した。唯一のバンドがコラーゲン標準と同時移 動 す る の が 観 察 さ れ た 。 バ ン ド の II 型 コ ラ ー ゲ ン と の 同 一 性 は ウ エ ス タ ン ブ ロ ッ ト 分 析 に よ り 確 認 し た 。 ウ エ ス タ ン ブ ロ ッ ト 分 析 と は 、 コ ー デ ィ ン グ ,J.W.、 モ ノ ク ロ ー ナ ル ・ ア ン テ ィ ボ デ ィ ズ : プ リ ン シ プ ル ス ・ ア ン ド ・ プ ラ ク テ ィ ス ,2版 、 ア カ デ ミ ッ ク ・ プ レ ス 、 ロ ン ド ン 195− 1 99頁 1986 に 記 載 さ れ る よ う に 一 般 に 既 知 の 標 準 的 技 術 に よ り 実 施 し た 。 バ ン ド は 、 ゲ ル か ら ニ ト ロ セ ル ロ ー ス シ ー ト に 電 気 泳 動 で 移 動 さ せ 、 II型 コ ラ ー ゲ ン に 向 け られた2つの抗体の1つ或はI型コラーゲンに向けられた抗体(サウザン・バイオテクノ 20 ロ ジ ィ ・ ア ソ シ エ イ シ ョ ン ,U.S.A ) と イ ン キ ュ ベ ー ト し た 。 1 つ の 抗 II型 コ ラ ー ゲ ン モ ノ クローナル抗体はデベロップメンタル・スタディス・ハイブリドーマ・バンク,アイオワ か ら 得 、 一 つ は サ ウ ザ ン ・ バ イ オ テ ク ノ ロ ジ ィ ・ ア ソ シ エ イ シ ョ ン ,U.S.A か ら 得 た ポ リ ク ロ ー ナ ル 抗 体 で あ っ た 。 ブ ロ ッ ト を 3 回 洗 浄 に 付 し 、 抗 IgG抗 体 に 接 合 し た ア ル カ リ ホ ス フ ァ タ ー ゼ 中 、 1 時 間 イ ン キ ュ ベ ー ト し た 。 ブ ロ ッ ト を 3 回 洗 浄 し 、 1 − 30分 、 色 が 発 達 す る ま で NBT/BCIP ( プ ロ メ ガ 、 U.S.A) で 分 化 し た 。 II 型 コ ラ ー ゲ ン は 、 図 6 に 示 す よ う に 培 養 物 中 に 検 出 さ れ た 。 図 6 の 矢 印 で 示 す よ う に 、 II 型 コ ラ ー ゲ ン だ け が 再 形 成 軟 骨 組 織 の ペ プ シ ン 抽 出 液 中 に 検 出 さ れ た 。 結 果 は 、 II 型 コ ラーゲンが軟骨細胞培養により生成される主要コラーゲンであることを確認した。 軟 骨 細 胞 培 養 液 中 の II 型 コ ラ ー ゲ ン の 分 布 を 以 下 の よ う に 試 験 し た 。 培 養 コ ラ ー ゲ ン 組 織 30 の 凍 結 切 片 を 300I.U.精 巣 ヒ ア ル ロ ニ ダ ー ゼ に よ り 37℃ で 15分 間 、 前 分 解 し た 。 切 片 を リ ン 酸 緩 衝 食 塩 水 中 で 洗 浄 し 、 ポ リ ク ロ ー ナ ル 抗 II型 コ ラ ー ゲ ン 抗 体 ( サ ザ ン ・ バ イ オ テ ク ノ ロ ジ ィ ・ ア ソ シ エ イ ツ 1:100希 釈 ) と 室 温 で 3 時 間 イ ン キ ュ ベ ー ト し た 。 切 片 を リ ン 酸 緩 衝 食 塩 水 で 洗 浄 し 、 次 い で ア ル カ リ ホ ス フ ァ タ ー ゼ と 接 合 し た 抗 ウ サ ギ IgG抗 体 ( ベ ク タ ー ,U.S.A ) と 45分 間 イ ン キ ュ ベ ー ト し た 。 切 片 を 3 回 洗 浄 し た 。 5 − ブ ロ モ − 4 − ク ロロ−3−インドリルホスフェートニトロブルーテトラゾリウムを基質及び色発達用に加 えた。次いで切片を核ファストレッド染料で対比染色し、カバーグラスを付し、光学顕微 鏡 に よ り 試 験 し た 。 ブ ル ー 染 色 は 、 図 7 に 示 す よ う に 軟 骨 全 体 に II型 コ ラ ー ゲ ン の 存 在 を 示 す 。 コ ン ト ロ ー ル 切 片 は 、 軟 骨 に 存 在 し な い 第 VIII 因 子 指 定 抗 原 に 向 け ら れ た 抗 体 で 染 色した。軟骨マトリックスは、図8に示すようにコントロール切片では染色しなかった。 40 実施例3 インターロイキン1は軟骨細胞培養でのマトリックス損失を促進する 軟 骨 細 胞 培 養 を 上 記 の よ う に 行 い 2 週 間 増 殖 し た 。 培 養 物 を 10ng/mlの ヒ ト 組 換 え イ ン タ ーロイキン1β(チバ−ガイギー、スイス)と7日間インキュベートした。7日後、培養 液を実施例1で上記したように光学顕微鏡用に処理し、トルイジンブルーで染色後形態学 的に評価した。トルイジンブルー染色は硫酸プロテオグリカンの存在の指示として行った 。 ト ル イ ジ ン ブ ル ー 染 色 は 、 未 処 理 の コ ン ト ロ ー ル に 比 べ 、 IL − 1 で 処 理 し た 培 養 液 中 で 大きく減少し、残っている軟骨中の軟骨及びマトリックス組成の損失を示す。 実施例4 ガラクトサミン対グルコサミンの比 50 (10) JP 3587305 B2 2004.11.10 コンドロイチン硫酸及びデルマタン硫酸に存在するガラクトサミン対ヒアルロン酸及びケ ラタン硫酸に存在するグルコサミンの比は、挿入体培養液中で測定し、ウシ関節軟骨での 比と比較した。 ウ シ 関 節 軟 骨 又 は パ パ イ ン 分 解 後 の 培 養 軟 骨 組 織 を 含 む 組 織 試 料 を 、 6N塩 酸 で 加 水 分 解 し 、ウォーターのピコタグアミノ酸分析システム(バイオテクノロジィ・センター、ユニバ ーシティー・オブ・トロント)を用いる高圧液体クロマトグラフィにより試験し、ウシ関 節 軟 骨 中 の ガ ラ ク ト サ ミ ン 対 グ ル コ サ ミ ン の 比 は 5.55 で あ っ た 。 一 方 培 養 軟 骨 で は 、 比 は 5.14 で あ っ た 。 こ れ ら の 比 の 間 に は 有 意 な 差 は な く 、 こ れ ら の グ リ コ サ ミ ノ グ リ カ ン の 比 は、無傷の組織及び培養中に産生した人工組織のいずれでも同様であることを示す。ガラ クトサミン対グルコサミンの比は、ウシ軟骨及び培養軟骨組織の細胞外マトリックスに存 在するグルコサミノグリカンの型を示す。 【図1】 【図2】 10 (11) 【図3】 【図4】 【図5】 【図6】 JP 3587305 B2 2004.11.10 (12) 【図7】 【図8】 JP 3587305 B2 2004.11.10 (13) フロントページの続き 審査官 内田 俊生 (56)参考文献 国際公開第90/012603(WO,A1) 7 (58)調査した分野(Int.Cl. ,DB名) A61L 27/00 - 27/60 A61K 35/32 C12N 5/00 - 5/28 JP 3587305 B2 2004.11.10