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JP 2008-35792 A 2008.2.21 (57)【要約】 【課題】 少ない油でも衣形状を
JP 2008-35792 A 2008.2.21 (57)【要約】 【課題】 少ない油でも衣形状を壊すことなく、カリカリとした食感で油っぽさを感じに くいから揚げを得ることの出来るから揚げ粉及びから揚げを提供すること。 【解決手段】 から揚げ粉衣素材中に粒径212μm以下のデュラム小麦粉を含有することを特徴とす るから揚げ粉。さらに粒径が212μm以下でかつNSIが30以下である大豆粉を含有す る上記のから揚げ粉。溶き衣のから揚げ粉である。油ちょう時衣同士が結着することがな いから揚げ粉である。上記のいずれかのから揚げ粉を衣材に用いて調製したから揚げ。 【選択図】 なし (2) JP 2008-35792 A 2008.2.21 【特許請求の範囲】 【請求項1】 から揚げ粉衣材中に粒径212μm以下のデュラム小麦粉を含有することを特徴とするか ら揚げ粉。 【請求項2】 粒径が212μm以下でかつNSIが30以下である大豆粉を含有する請求項1のから揚げ 粉。 【請求項3】 水溶き衣のから揚げ粉である請求項1または2のから揚げ粉。 【請求項4】 10 油ちょう時に衣同士が結着することがないから揚げ粉である請求項1、2または3のから 揚げ粉。 【請求項5】 請求項1∼4のいずれかのから揚げ粉を衣材に用いて調製したから揚げ。 【発明の詳細な説明】 【技術分野】 【0001】 本発明はから揚げ粉及びそれを用いたから揚げに関し、詳しくは衣同士の結着がなく形 態の良いから揚げを得ることができ、衣の食感がカリカリとした食感に揚がるから揚げ粉 及びそれを衣材に用いて調製したから揚げに関する。 20 【背景技術】 【0002】 一般に、から揚は、鶏肉や魚介類などの具材にから揚げ粉をまぶし、油で揚げたものを いう。から揚げ粉は、通常具材の表面の水分を利用して付着させるが、具材によっては外 部からその表面に付けた水や液卵などを利用して付着させる。水水溶き衣のから揚げ粉は 、小麦粉・でん粉を主成分としたもので衣を作り更に食感の改良や外観の向上のために、 卵・膨張剤・乳化剤などを配合するものがある。 また、基本的に「揚げ物」は、具材同士が接触していない状態で調理するもので、接触 する具材同士が結着することになる。から揚げを作る際にも、具材同士が接触していない 状態での調理が前提となり、加えて、から揚げ粉が具材の表面に均一に付着されること、 30 具材の水分が滲み出してその表面がベタ付かないこと、加熱調理中において、から揚げ粉 で形成される衣が容易に離脱することがないことが、製造上、また作業上からも好ましい とされている。 従来、上記のようなから揚げを作る際の作業性に着目してから揚げ粉の検討が種々行わ れている。例えば、膨化処理して粉砕した米粉を用いる方法(特許文献1)、膨化処理し た小麦粉を用いる方法(特許文献2)などを挙げることができる。また溶解度を5∼10 %、膨潤度を6%以上となるように加工した膨化成形アルファー化小麦粉を主成分とした 揚げ物衣用バッターミックス(特許文献3)、あるいは米粉、コーンフラワー、骨粉、卵 殻の粉末、及び食用カルシウム粉末の中から選ばれたもの、ガム類、及びα化澱粉(α化 度30%以上)を含むフライ下地粉(特許文献4)なども提案されている。しかしながら 40 、上記のような膨化処理して粉砕した米粉やα化度30%以上の小麦粉等を用いることに よって、一般に吸湿性が上昇し、衣の付着性は向上するが、特に調理後のから揚げの衣の カラッとした食感や具材のジューシー感においては充分ではなく、さらに検討の必要があ る。 【0003】 また、得られた調理品は、揚げむらがなく、衣がカラッとしていて歯ごたえが良く、一 方具材自体は水分の過剰な流出がなく、柔らかく、ジューシー感のあることが望ましいと されている。上記のような食感の良いから揚げが揚げられるように、従来より種々の検討 がなされている。例えば、特許文献5には、小麦粉50∼70重量部と化工澱粉10∼3 0重量部と、粉末卵白、粉末卵黄、粉末状植物性たん白、粉末油脂、膨張剤及び増粘多糖 50 (3) JP 2008-35792 A 2008.2.21 類のうち3種類以上からなる粉体5∼25重量部とを含む揚げ物用衣材を使用する、油ち ょう後に常温で保存しても、油ちょう後に冷凍もしくは冷蔵した後電子レンジ又はオーブ ン再加熱しても、衣の食感、外観及び風味を維持した揚げ物を提供できる技術が開示され ている。また、特許文献6には、油脂、澱粉、及び植物性たん白を必須成分とし、油脂を バッター原料の15∼60重量%含むことを特徴とする方法が開示されている。さらに、 特許文献7には、化工澱粉、デキストリン及び植物性たん白を必須成分とするフライ食品 用の衣材に関する技術が、特許文献8には未α化澱粉及びα化澱粉からなる澱粉を主成分 にし、これに起泡タイプの植物性たん白及び水を加えて撹拌混合して比重0.35∼0. 6のバッターを調製したものを利用する技術が開示されている。これらの技術はいずれも 、揚げ物表層部においては比較的さくさくとした食感が維持できるとしているが、衣が具 10 材から離脱し難くすることに関してはさらに検討の必要がある。 【0004】 特許文献9には、膨潤度が4∼15で、且つ溶解度が10重量%以下である架橋澱粉を 20重量%以上含有させた衣材に関する技術が開示されており、好ましくは大豆たん白を 3∼20重量%含有するとソフトでサクサクした食感になると記載されている。さらに、 大豆たん白には、加熱処理した全脂大豆粉や脱脂大豆粉、脱脂大豆粉をエクストルーダー で処理した粒状大豆たん白が含まれるとの記載があるが、本発明とは食感も異なることか ら、結着防止効果もないと考えられる。また、特許文献10には、フライ可能な食用粒状 物をから揚げ粉に混合したことを特徴としたから揚げ粉に関する技術開示がある。食用粒 状物には粒状植物性たん白も含まれる。これはから揚げの表面に適度な凹凸感をだすのが 20 目的である。特許文献11には加熱変性し水不溶化した最大粒径2.0mm未満の微粒状植 物性たん白を衣材中に含有することを特徴とする揚げ物用衣材に関する技術が開示されて いる。この発明で微粒状とは比較的大きな粒度(粒径0.85∼4mmの微粒状大豆たん 白が記載されている。)を指している。特許文献12、特許文献13において、脱脂大豆 粉や全脂大豆粉を添加した揚げ物用衣材が明示されている。以上のいずれの発明からも衣 同士の結着防止効果は得ることができないか、もしくは結着防止効果は示唆されていない 。 【0005】 また、特許文献14には、従来衣ミックスを用いて得られる衣は、クリスピー(パリパ リして、しかももろい食感)さに欠け、歯切れも悪く、また穀粉本来の食味が呈されず、 30 未だ充分には満足の行くものが得られなかったという問題点を解決するために、衣ミック ス中に特定粒度の強力系硬質小麦粉砕物を一定量以上添加配合せしめれば、クリスピーな 食感で歯切れも良く、しかも食味が特に優れた揚げ衣が得られることを見い出し、、粒度 が32メッシュスルー80メッシュオーバーの強力系硬質小麦粉砕物を5重量%以上含有する ことを特徴とする衣ミックスを提案している。 【0006】 【特許文献1】特開昭62−228244号公報) 【特許文献2】特開平4−11857号公報 【特許文献3】特開昭58−193666号公報 【特許文献4】特開昭62−228243号公報 40 【特許文献5】特開平7−67565号公報 【特許文献6】特開平7−155127号公報 【特許文献7】特開平9−206016号公報 【特許文献8】特開平9−238656号公報 【特許文献9】特開平9−215478号公報 【特許文献10】特開平11−46712号公報 【特許文献11】特開2000−355001号公報 【特許文献12】特開平2−39865号公報 【特許文献13】特開2005−237350号公報 【特許文献14】特許第2995498号公報 50 (4) JP 2008-35792 A 2008.2.21 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0007】 近年調理の簡便性を求める消費者が多くなり、少量の油でから揚げをしたいとの要望が ある。しかし、少量の油でから揚げを調理すると、衣同士の結着、外観の不良、また吸油 過多により衣の食感が油っぽいから揚げになってしまうという新たな問題点が生じて来て いる。基本的に「揚げ物」は、具材同士が接触していない状態で調理するものであり、少 量の油でから揚げを調理すると具材が物理的に狭い空間に密に存在することになり衣同士 の結着が起こりやすい状態になる。 そこで、本発明は、従来の技術では困難な、少ない油でも衣形状を壊すことなく、カリ 10 カリとした食感で油っぽさを感じにくいから揚げを得ることの出来るから揚げ粉及びから 揚げの製法を提供することを目的とした。 【課題を解決するための手段】 【0008】 本発明者は、前期課題を解決すべく研究する中で、一般的にパスタ類に使用されるデュ ラム小麦に注目し、その中でも特に、パスタ用のセモリナより更に細かく粉砕し粒径が2 12μm以下の小麦粉において、効果が上がることを発見した。また、たんぱく質が高変 性している大豆粉で、粒系212μm以下でかつNSIが30以下の大豆粉と組み合わせて 使用することで、より食感、衣形状が良好なから揚げ粉を得ることを発見した。 【0009】 20 すなわち、本発明は、から揚げ粉衣材中に粒径212μm以下のデュラム小麦粉を含有 することを特徴とするから揚げ粉を要旨とする。 【0010】 粒径が212μm以下でかつNSIが30以下である大豆粉を含有しており、本発明は、 から揚げ粉衣材中に粒径212μm以下のデュラム小麦粉、および粒径が212μm以下 でかつNSIが30以下である大豆粉を含有することを特徴とするから揚げ粉を要旨とする 。 【0011】 水溶き衣のから揚げ粉であり、本発明は、から揚げ粉衣材中に粒径212μm以下のデ ュラム小麦粉を含有する、好ましくはさらに粒径が212μm以下でかつNSIが30以下 30 である大豆粉を含有することを特徴とする水溶き衣のから揚げ粉を要旨とする。 【0012】 油ちょう時に衣同士が結着することがないから揚げ粉であり、本発明は、から揚げ粉衣 材中に粒径212μm以下のデュラム小麦粉を含有する、好ましくはさらに粒径が212 μm以下でかつNSIが30以下である大豆粉を含有することを特徴とする油ちょう時衣同 士が結着することがないから揚げ粉、好ましくは水溶き衣のから揚げ粉を要旨とする。 【0013】 また、本発明は、上記のいずれかのから揚げ粉を衣材に用いて調製したから揚げを要旨 とする。 【発明の効果】 40 【0014】 本発明により、少ない油でも衣形状を壊すことなく、カリカリとした食感で油っぽさを 感じにくいから揚げを得ることのできるから揚げ粉及びから揚げを提供することができる 。本発明のから揚げ用衣材を使用することで、衣同士が接触している状況下、さらには、 密着している状況下でから揚げを調理しても衣同士の結着がなく、衣の食感もカリカリと した油っぽくないから揚げが得られるようになったものである。衣同士が結着した状態と いうのは、複数のから揚げの衣が一体となり分離できない状態、または無理に分離させた 場合に衣が損傷し外観の悪いから揚げになる状態を指す。一方、衣同士が結着しない状態 とは、接触した状態で油ちょうした場合に衣同士が軽く付着することはあるが、容易に分 離可能で、かつ、分離後のから揚げの衣に表面に付着していた痕跡が残らない状態のこと 50 (5) JP 2008-35792 A 2008.2.21 を指す。 【0015】 すなわち、から揚げを作る際に、少ない油で具材同士が密着している状態での調理が可 能であり、から揚げ粉が具材の表面に均一に付着されること、具材の水分が滲み出してそ の表面がベタ付かないこと、加熱調理中において、から揚げ粉で形成される衣が容易に離 脱することがない、製造上、また作業上から好ましいから揚げ粉を提供することができる 。また、本発明のから揚げ粉を使用することで、カリカリとしたとした歯切れが良く、油 っぽさを感じにくいから揚げ食品を提供することができる。 【発明を実施するための最良の形態】 【0016】 10 一般にから揚げは、小麦粉、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、とうもろこし粉などの穀粉 に、食塩、糖類、脱脂粉乳、調味料、香辛料、乳化剤、膨張剤、卵などを加えたもの、あ るいは予めこれらの材料が混合されてなる専用のミックス粉を、鶏肉や豚肉などの畜肉や 、エビ、カニ、イカ、魚などの水産物、といった具材に直接まぶしたり、又は水に溶いた ものをこれらの具材にからめた後に油で揚げて調理したものである。業務用のから揚げ粉 では、具材にまぶして調理することを目的としたから揚げ粉をまぶし衣タイプ、水、油脂 などの液体に溶いた後に具材にからめて調理することを目的としたものを水溶き衣タイプ と分類して用いられている。 【0017】 本発明のから揚げ粉は、衣材は粉のまま用いることもできるが、加水して溶き衣とした 20 ほうがよい。また、本発明において水溶き衣のから揚げ粉とは、から揚げ粉に水を混合し て使用するから揚げ粉のことをいう。混合する水には、あらかじめ調味料、増粘多糖類等 の物質を溶解、分散して使用することもできる。水溶き衣タイプとすることで、具材は水 分の過剰な流出がなく、衣がカラッとしていて歯ごたえがよく、一方で、具材が柔らかく ジューシー感のある食感の良いから揚げを得ることができる。 【0018】 本発明の衣材を水溶き衣として利用する場合、加水量は典型的には、衣材に対して70 ∼130重量%である。適当な粘度になるように加水するのが好ましい。水溶き衣の粘度 は通常、数百∼数千mPa・sの範囲が一般的であるが、本発明の衣材においては、通常 よりも高めの粘度が好ましい。具体的には、25℃にてB型粘度計で測定した粘度が6, 30 000mPa・s∼18,000mPa・sとなるように加水するのが好ましい。粘度が 高いほうが、油ちょう後のから揚げがジューシーで衣の食感も好ましいものになる。また 、粘度を調節するために増粘剤などを使用することもできる。 【0019】 デュラム小麦粉、大豆粉を除いた衣材の組成は、デュラム小麦粉を除く小麦粉、でん粉 、加工でん粉(併せて以下「その他の穀粉」という)と、食感の改良や外観の向上のため に、卵・膨張剤・乳化剤、などを配合する通常使用される素材に、特定のデュラム小麦粉 、好ましくはさらに大豆粉を配合するものである。味付けのため食塩、糖類、粉末調味料 等の既知の調味料を添加することも可能である。更には、着色料、着香料、乳化剤、その 他の食品添加物を含有することを妨げない。 40 【0020】 その他の穀粉として、小麦粉は強力粉、準強力粉、中力粉、薄力粉などを用いることが できる。でん粉は、小麦、コーン、ワキシーコーン、米などの穀物でん粉、馬鈴薯、タピ オカ等の芋類でん粉、小豆、いんげん豆、ササゲ、そら豆、及びその他の豆類等に由来す るものやいずれにも該当しないサゴでん粉などが列挙できる。これらを原料とする焙焼デ キストリン、酵素変性でん粉、酸分解でん粉、酸化でん粉、エステル化でん粉、エーテル 化でん粉、架橋でん粉、アルファー化でん粉、湿熱処理でん粉などの加工でん粉等を用い ることができる。その他の穀粉の組み合わせについては、特に限定はなく、でん粉等単独 で配合することもできる。 【0021】 50 (6) JP 2008-35792 A 2008.2.21 調味料としては、例えば食塩、糖類(例、単糖類、二糖類、オリゴ糖、糖アルコール) 、粉末醤油、粉末味噌、化学調味料(例、アミノ酸系調味料、核酸系調味料)、コハク酸 ナトリウム、植物蛋白加水分解物(HVP)粉末などから選ばれたものを適宜組み合わせて 用いることができる。 【0022】 本発明のから揚げ粉は、上記例の如く調製した衣素材をベースとし、これに特定のデュ ラム小麦粉、好ましくはさらに特定の大豆粉を配合するものである。 デュラム小麦粉は、デュラム小麦を通常の製粉行程で処理するか、あるいは、一般の粉 砕機と組み合わせて粉砕して得ることができる。また、篩い分け等により分級してするこ とで特定の粒度分布のデュラム小麦粉を得ることができる。デュラム小麦粉の粒度分布は 10 212μm以下で構成されているのがよく、望ましくは、150μm以下である。212 μm以上の粒径の小麦粉が10%以上含まれると、水溶き衣が均一に付着しにくくから揚 げの衣同士が結着する要因となる。デュラム小麦粉の粒径の分布は、50μm∼150μ mが30%以上含まれていればよい。50μm以下の粒径が60%以上含まれると、結着 防止効果は維持されるが、カリカリとした適度な歯ごたえと軽さのバランスをもつ食感を 創出する事が出来ない。 【0023】 本発明において粒径の特定範囲の分布は、レーザ回折式粒度分布測定装置を用いて、フ ラウンホーファー回折法で測定して篩上、篩下の体積基準分布(積算分布または頻度分布 )として測定する。測定値は、装置とプログラムによりばらつきが見られ、以下、未満と 20 いう数学的な概念は意味がない。本発明において、誤差は測定値の±5%と考える。具体 的には本発明で粒径150μm以下の粉体が10重量%であるとは、粒径測定値150μ m以下の体積基準積算分布が10.5%以下であること、粒径50μm以上の粉体が10 重量%であるとは、粒径測定値50μmの篩上の体積基準積算分布が9.5%以上である こと、を指す。デュラム小麦粉の場合、特定の粒径範囲ごとの密度は、一定と考えてよく (小麦粉は約1.4g/cm3)体積基準分布を重量基準分布に読み替えても同等である 。粒径の特定範囲の分布は、粒径を篩により分級し、重量を測定して求めたときの重量基 準分布により求めることもできる。 【0024】 前記デュラム小麦粉の添加量は、衣材の粉体中に20重量%∼50重量%望ましくは3 30 0重量%∼50重量%がよい。20重量%以下では、結着防止効果が出ないし、50重量 %を越えると食感が硬くなる。 【0025】 大豆粉は、粒径が212μm以下でかつNSIが30以下、好ましくは25以下、より 好ましくは25∼10の範囲のものを配合する。大豆粉は、乾燥大豆を粉砕することによ って得ることができる。粉砕前に脱皮、脱脂などの処理を行った後に粉砕してもよい。脱 脂せずに粉砕したものを全脂大豆粉、脱脂後に粉砕したものを脱脂大豆粉と呼ぶ。前記大 豆粉を得る方法としては、乾熱もしくは湿熱加熱、及び間接もしくは直接加熱を問わず、 大豆粉が熱変性してNSIが30以下となる方法を用いれば良い。例えば大豆粉を一軸型 あるいは二軸型のエクストルーダーのような加圧加熱装置を用いて大豆たん白が変性する 40 に十分なほど(例えば100∼200℃)加圧加熱し、押出する方法を用いることもでき る。また、非加熱大豆粉をマイクロウェーブ等で110∼135℃で30秒∼5分間加熱 することによって加熱大豆粉を得ることができる。 【0026】 上記大豆粉の粒径は212μm以下、より好ましくは106μm以下が適当である。粒 径212μm以下の大豆粉を得る方法としては、一般的に使用されている粉砕方法と分級 方法を組み合わせて使用することが出来る。粉砕は、ピンミル、ジェットミルのような衝 撃式粉砕機、剪断式粉砕機、マスコロイダー、グラインダー、石臼のような磨砕式粉砕機 、または低温凍結粉砕機のような複合型粉砕機等、その他の公知の粉砕機を用いて行って もよい。分級も一般的に行われている方法により行えばよい。例えば、振動篩い、面内篩 50 (7) JP 2008-35792 A 2008.2.21 い、気流による微粒子群の分散作用などによる篩い分け、ハイドロセパレータ、液体サイ クロンなどを用いた湿式分級、重力分級機、慣性分級機、遠心分級機などを用いた乾式分 級、その他公知の分級方法を用いて行えばよい。例えば目開き212μmの篩を通過させ ることにより粒径212μm以下の大豆粉を得ることができる。 【0027】 粉末の粒径の測定方法は、篩で分ける方法、顕微鏡などを用いて寸法を計る方法、沈降 速度から求める方法、慣性力から求める方法、媒体に分散させて回折光や散乱光を利用し て測定する方法など多くの方法が採られているが、測定方法によって、粒径の値が異なる ことが知られている。また、大豆粉の粒子の形状は、完全な球形ではなく、直接的に粒子 径を定義することはできない。なお、JIS規格では、標準フルイ規格(JIS Z−8 10 801)があり、篩の目開きで篩のサイズを規格しており、JIS Z 8901「試験 用粉体及び試験用粒子」の用語の定義の項には、粒径について、「ふるい分け法によって 測定した試験用ふるいの目開きで表したもの、沈降法によるストークス相当径で表したも の、顕微鏡法による円相当径で表したもの及び光散乱法による球相当、並びに電気抵抗試 験方法による球相当値で表したもの。」という記述がある。そこで、本発明で、大豆粉に おける粒径が212μm以下とは、目開き212μmの篩を通過する粒径のことを指す。 【0028】 NSI(Nitrogen Solubility Indexの略)とは、水溶性窒素指数を意味し、総蛋白含 量に対する水溶性蛋白量を示し、蛋白質の変性度を示す指標となる。 NSIは基準油脂分析実験法2003年版(日本油化学会編)1.8.2−1996に 20 記載の方法で測定することができる。 [NSIの測定方法] 大豆粉5gを遠心分離用のガラスチューブに量り取る。20℃±2℃の蒸留水50ml に溶解し、30℃の振とう機で60分間振とうする。チューブを取り出し2000rpm で10分遠心分離した後、上澄みを250mlメスフラスコに移す。チューブ中の残分に は新たな蒸留水50mlを加え、前回同様に60分間の振とうと10分間の遠心を行い、 上清を前記のメスフラスコに移す。この操作を4回繰り返し抽出液を全量フラスコに集め る。少量の蒸留水を用いて器具を洗い、洗液をフラスコに収めた後、250mlにメスア ップする。フラスコの内容物を均一にした後、ろ紙で250mlの三角フラスコにろ過す る。50mlをケルダールフラスコにホールピペットで測りとり、ケルダール法により窒 30 素量を定量し、水溶性窒素量(Ns)を求める。 大豆粉1gを正確に量り取り、ケルダール法により調製試料中の全窒素量(N)を求め 、次式よりNSIを求める。 NSI=Ns/N×100 【0029】 NSI30以下の大豆粉では水溶性蛋白が少なく、油ちょう時に衣から水が速やかに失わ れるため、衣の表面がすばやく乾燥する。一方、粒径が小さい場合にも水を保持しにくい ため、油ちょう時に速やかに乾燥する。その結果、接触している衣同士が結合しにくく、 かつ、からっとし、カリカリと好ましい食感になると考えられる。 大豆粉として、全脂大豆粉および脱脂大豆粉単独でも油ちょう時衣同士が結着すること 40 がない効果を奏するが、これらを併用した場合のほうがより効果があるといえる。粒径が 212μ以下でNSIが30以下の大豆粉は衣材の粉体中2重量%∼20重量%、好ましく は4重量%∼12重量%、より好ましくは5∼10重量%含まれるのが適当である。 【0030】 また、本発明は、上記のから揚げ粉、例えばから揚げ粉衣材中に粒径212μm以下の デュラム小麦粉、および粒径が212μ以下でかつNSIが30以下である大豆粉を含有す るから揚げ粉を衣材に用いて調製したから揚げである。 から揚げに用いる油ちょう用油脂の種類や油ちょうする条件は特に限定されない。油ち ょう用油脂の種類は、油脂の耐熱性、安定性、風味、所望のフライ適性を得る等を考慮し て、動植物油脂や、分別、水素添加、エステル交換油等の加工を施したものを1種あるい 50 (8) JP 2008-35792 A 2008.2.21 は2種以上の組み合わせたものを選択し、加熱調理すればよい。 本発明のから揚げ粉は、なべやフライパンなどの油ちょう器具の表面に結着せず、から 揚げの衣同士が結着し難い特性があることから、底部から1∼2cmの油脂を加えて、衣 をからめた具材を油量の2∼4倍入れて、衣同士が接触する状態で油ちょうしても、衣はが れのないから揚げを製造することができるという特徴がある。少量の油脂で調理できるこ とから、経済的かつ簡便であり、一般家庭においては、直径15cm∼30cmの平底の フライパンでから揚げをつくるのに最適である。 【0031】 本発明の詳細を実施例で説明する。本発明はこれらの実施例によってなんら限定される ものではない。 10 【実施例】 【0032】 [実施例1∼5,比較例1∼2] 〈サンプルの調整〉 デュラム小麦のセモリナ(サンプルNo.1)を目開き212μm(70メッシュ)およ び150μm(100メッシュ)の篩で粗粒を除去し、212μm篩下、および、150 μ篩下のデュラム小麦粉No.2、No.3を調製した。市販のデュラム小麦粉(サンプ ルNo.2)としてシルクロード(昭和産業株式会社製)を用意した。デュラム小麦のセ モリナ(サンプルNo.1)をロールミルとシフターを用いて、粉砕、篩い分けを繰り返 してデュラム小麦粉サンプルNo.5を調製した。デュラム小麦粉サンプルNo.6をハ 20 ンマーミル(パルベライザー:ホソカワミクロン株式会社製)で粉砕し、デュラム小麦粉 サンプルNo.7を調製した。このようにして得られたサンプルNo.1∼7についてレ ーザ回折式粒度分布測定装置(SypatecHEROS(H0348)&RODOS:日本電子株式会社製)を 用いて、計算モードはフラウンホーファー回折法で粒度分布を測定した。デュラム小麦粉 サンプルの体積基準粒度分布(%)を表1に示す。 【0033】 【表1】 30 【0034】 (から揚げの製造) 表2の配合表に示す配合でから揚げ粉を調製した。得られたからそれぞれの揚げ粉に対し て110重量%加水し溶き衣液190g作成し、鶏肉390g(1片あたり30g、13 個カット)と合えた。直径26cmのフライパンに180gの油を入れた。油脂の温度を 160∼170℃で保持されるの火力とし、初発温度165℃で衣を和えた鶏肉を約1秒 間隔で投入後、5分間油ちょうした。溶き衣液の残量は30gであり、油に投入後のフラ イパンの底から、油脂の表面の深さ(油深)は2cmであった。したがって、560gの 衣を和えた鶏肉を油深2cmで調理したことになる。 【0035】 40 (9) JP 2008-35792 A 2008.2.21 【表2】 【0036】 得られたそれぞれのから揚げについて、衣の結着防止効果と衣の食感を以下の基準により 10 評価した。 結着防止効果 ◎:から揚げ同士の結着がなく容易に箸で分離する。 ○:から揚げ同士の結着は弱く箸で分離できる。から揚げ形状に影響はない。 △:から揚げ同士は結着するが分離でき、から揚げとして許容できる。 ×:から揚げ同士の結着が強固で、分離すると衣がはがれから揚げ外観として好ましくな い。 食感 +2:カリカリよりガリッとした食感、または、明らかに硬い食感。 +1:カリカリした食感はあるが、ガリッとした硬さも少し感じる食感。 20 ±0:適度なカリカリ感のある食感(適度な歯ごたえと軽さのバランスをもつ食感)。 −1:カリカリとした食感がやや弱い。ややソフトな食感。 −2:カリカリとした食感が弱い。ソフトな食感。 結果を表3にまとめた。 【0037】 【表3】 30 【0038】 油量に対して、油ちょう前のから揚げ重量で3倍量の側面で密着している状況下で、油 40 ちょうしても、から揚げの衣同士が結着することなく、適度なカリカリ感のある食感のか ら揚げが作製できることが分かった。比較例1と実施例1、2の結果からは、粒度が20 0μm以上のデュラム小麦粉が含まれていると結着防止効果が発揮されないことがわかっ た。また、粒度が150∼200μmであれば、含有していてもよいが、実施例3−6の 結果を考慮すると粒度が150μm未満であることが望ましいことがわかった。衣の食感 では、ガリガリ感を抑えるために200μm未満の粒度であるのがよい。50μm未満の 粒度のものを60%以上添加することでソフト感を出すことができる。粒度が50∼15 0μmのデュラム小麦粉が結着防止効果を発揮し、同時に、カリカリとした適度な歯ごた えの食感となると考えられる。 【0039】 50 (10) JP 2008-35792 A 2008.2.21 [実施例7∼8,比較例2∼3] デュラム小麦粉(サンプルNo.4)を表4の配合でから揚げ粉を調製し、前記実施例と 同様にから揚げを製造し実施例1−6と同様に評価した(表4)。 【0040】 【表4】 10 【0041】 [実施例9−14] (大豆粉との併用) デュラム小麦粉(サンプルNo.4)と表5の基本配合でNSI24.1、35.2の大 豆粉を、目開き710μm、212μm、106μm(150メッシュ)で篩い分けをお こない篩下を集めたものをそれぞれ配合したから揚げ粉を調製し、前記実施例と同様にか ら揚げを製造し評価した(表6)。 20 【0042】 【表5】 30 【0043】 【表6】 40 【0044】 以上の結果から、デュラム小麦粉に、さらに、NSI30以下の大豆粉を添加すると、 より結着防止効果が高まることが強く示唆された。さらに、粒径が212μmの大豆粉を 添加すると衣の食感がより好ましくなると考えられる。 【0045】 [実施例15−18] デュラム小麦粉(サンプルNo.4)とNSI24.1で212μm篩下が99重量%で 50 (11) JP 2008-35792 A 2008.2.21 あった大豆粉(S−55:昭和産業株式会社製)を表5の基本配合で小麦でん粉と大豆粉 の配合のみを置き換えたから揚げ粉を調製し、前記実施例と同様にから揚げを製造し評価 した(表7)。 【0046】 【表7】 10 【0047】 以上の結果から、大豆粉も添加量が少ないと十分な結着防止効果が得られず、添加量が 多いとデュラム小麦粉との併用効果が発揮されすぎて衣が固くなる傾向となることが分か る。したがって、デュラム小麦粉含有するのから揚げ粉に大豆粉を添加する場合は、粉体 中2重量%∼20重量%、好ましくは5∼10重量%含まれるのが適当であると考えられ る。 【産業上の利用可能性】 【0048】 近年多くなった調理の簡便性を求める消費者に向けて、少量の油でから揚げをしても、 衣同士の結着することがなく、外観が良好で、また衣の食感が油っぽくない揚げに仕上が る揚げ粉及びから揚げの製法を提供することが可能となった。 20