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私たちの日常生活に関する研究 (3)
1 37 私たちの 日常生活に関する研究 (3) 一幼児の睡眠リズムと平衡性能力から検討Res e ar c honOurLi f e s t yl e( 3) -A St udyofRhyt hm ofSl ee pandt heSe ns eofEqui l i br i um i nl nf ant s( 2 0 0 6 年 3月3 1日受理) 谷本 満江 原 田 真澄 Mi c h l eT a n l m o t o M a s u miH a r a d a Ke ywo r ds:睡眠 リズム,平衡性能力,規則正 しい生活 要 ヒ エ 日 本研究は睡眠 リズムを重視 し検討 した。子 どもは睡眠 リズムが狂えば慢性時差ぼけ状態 にな り,発育にも影響す ると 危倶 されている。 さらに休 日の朝寝坊は体内時計を狂わせやすい。 そこで,毎 日規則的な睡眠 リズムを送っている子 ども ( 規則的群) と,週末に睡眠 リズムが崩れ る子 ども ( 週末崩れ 群)において検討 した。併せて,体力テス ト ( 平均台歩き ・開眼片足立ち)を実施 した。 休 日の起床時刻 において,規則的群は週末崩れ群に比 し 1時間2 3 分早 く起床 し,有意に優れていた。体力テス トの開 眼片足立ちは規則的群が週末崩れ群に比 し,1 4 . 6 秒長 くできていたが有意差は認 められなかった。 は じ め に ス トとを併せて検討 したのでここに報告す る。 現代では社会全体が,2 4時間営業の店な どに象徴 され 方 るよ うに, 夜型サイクルの生活 リズムになってきている。 しか し,私たちの身体が夜型サイクルになったわけでは な く,特に子 ども達は昔も今 も十分な睡眠をとることが 紘 1.調査時期 0 0 4 年1 1 -1 2 月上旬,研 究協力者 は岡山 調査時期 は2 成長 にとって必要不可欠である。日本小児保健協会 ( 2 0 0 0 1 施設 の幼稚園 ・保育所の 5歳児計2 6 0 名 ( 内採用 県下 1 年度)の報告に幼児の夜更か し (10時以降就寝)が, 5・ 1 8 3 ) 6歳児において2 0 年前の 4倍 に増加 とあ り,睡眠不足に 2.調査方法 より集 中力の欠如,気力 ・意欲の低下は周知の通 りであ 全員同 日記入で, 祝 日のない 2週間を継続 して指定 し, る。良い睡眠をとるためには早寝早起き,つま り起床時 就寝か ら起床までを夜間睡眠時間 としての記録 ( 保護者 刻 と就寝時刻が大切であると思われ る。また母親の夜型 に依頼)を取った。併せてその期間内に体力テス ト ( 辛 生活は子 どもの生活 リズムも夜型にす ると言われ るほど 均台歩き ・開眼片足立ち) を実施 した。平均台歩きは各 影響がある。 国で使用 されてい る平均台 (2m) の上 を手 を横 に し, そこで,私たちは,5歳児の睡眠 リズム表 (2週間分) バ ランスをとりなが ら足を交互に進 める。 2mの平均台 より,睡眠時間の実態を把握 した。毎 日規則正 しい睡眠 を渡 りきった ところで歩行時間をス トップ ウオ ッチによ リズムをとっている規則的群 と,週末に睡眠 リズムが崩 り0 . 1 秒単位 で測定 した。 開眼片足立ちは支持足 をまっ れ る週末崩れ群 を抽出 し,集 中力が必要 とされ る体力テ す ぐ伸ば し,も う一方の足 を床か ら離 してできるだけ長 1 38 谷本 満江 く平衡 を保 ち立つ。そ して足が床 に着 くまでの時間を0 .1 原田 最澄 3.睡眠 リズムによる分類 睡眠 リズムの分類 として,毎 日規則正 しい睡眠 リズム 秒単位 で測定 した。 をとっている群 を規則的群 ( 時間のずれは30分以内 とす 結 る) とした。また週末に睡眠 リズムが崩れ る群を週末崩 果 れ群 ( 時間のずれは1 . 5 時間以上 とす る) とした。 1. 5歳児における睡眠時間の実態 睡眠 リズムによる分類別平均値は表 3に示す通 りであ 今回の研究において 2週間の睡眠 リズム表の記録結果 る。 は,表 1に示す通 りである。幼児の生活 リズムを整 える ためには,午後 9時までに就寝 し,朝 7時までに起床す 表 3 睡眠リズムによる分類別平均値 (2週間の睡眠状態) ることが必要 と言われている。 しか し,今回の調査にお 5歳児 いては 1日の平均夜間睡眠時間は, 5歳児 において 9時 平日 起床時刻 休日 就寝時刻 起床時刻 就寝時刻 睡眠時間 1日平均夜間 間42分だった。また平 日の起床時刻 は 6時59分,就寝時 N 全休 1 8 3 平均値 6 時5 SD 0 . 4 4 9分 2 1 時2 4分 0 . 6 2 7 時 6分 0 . 7 03 2 1 時 2分 0 . 7 14 9 時間 2分 0 . 5 2 4 刻は21時24分であ り,休 日の起床時刻 は 7時36分,就寝 #N 規 則e1 的 0 平均値 SD0 6 . 5 時 24 2分 2 0 . 1 7 9 時 6 0 . 6 時 65 4分H < m 2 0 . 1 8 3 時1 2分 9 0 . 6 時間 7 3 6分 N 週 れ= 4 末 9 群崩 平均値 6時 5 8J j y 2 1時 2 4分 8時 1 7分 9時間 4 5分 時刻は21時42分だった。女児は男児 に比 し, 1日平均夜 間睡眠時間がやや長 く,平 日は早寝早起 きだった。また 2 1時 5 8分 p く0 0 1 ※※※ 休 日の起床時刻はやや遅いが, 就寝時刻は 6分早かった。 今回の研究において, 2週間の睡眠 リズム表の記録結 表 1 5歳児における睡眠時間の実態 果, 5歳児 1 83 名 中,睡眠 リズムの規則正 しい子 どもは ( 規則的群) 5%,週末 に崩れ る子 ども ( 週末崩れ群) 5歳児 睡眠時間 1夜 日平均 間 起床時刻 平就寝時刻 日 起床 時刻休 就寝時刻 日 0. 4 4 0. 7 0 は27%いた。表 4に示す よ うに休 日の起床時刻 において, 規則的群 は週末崩れ群 に比 し, 1時間23分早 く起床 し, SD 0. 5 2 0. 6 2 0. 71 N 男児 去9 2 平均値 SD 0 9 , 4 時間 71 41分 0 7 . 4 時 6 5 6分 N 女児 ⇒1 平均値 9時間 4 4分 6時 5 8分 21時 2 0分 7時 3 9分 21時 3 7分 0 2. 1 6 4 時 02 4分 7 0. 6 時 8 7 3 7分 2 0. 1 7時 1 743分 差の検定により有意に優れていた。規則的群は,平 日に おいて,幼児にとって望ま しい午後 9時前の就寝,午前 7時前の起床 となっていた。平 日と休 日のずれを見ると, 2分遅 く,週末崩れ群は起 規則的群は起床 ・就寝 ともに1 2.5歳児 における体格 ・体力テス ト測定の結果 床で 1時間20分 ・就寝で30分遅 くなっていた。 1日の平 5歳児における体格 ・体力テス ト測定の結果は表 2に 均夜間睡眠時間 ( 平 日 ・休 日を含む 2週間分)は週末崩 示す通 りである。差の検定結果,体格 ( 身長 ・体重)に れ群が 9分長い。 これは休 日の起床時刻が遅いことで睡 れていた。 おいては,男児は女児に比 し有意に優れていた。また体 眠時間が補われていた結果である。 力テス ト測定の平均台歩きは男児が女児 に比 し有意に優 4.睡眠 リズム とバ ランス能力 との関連 れ,開眼片足立ちにおいては女児が男児 に比 し有意に優 睡眠 リズムによる分類 ( 規則的群 ・週末崩れ群)別 に 体力テス ト ( バ ランス能力) との関連 をみた。体力テス 表 2 5歳児における体格 ・体力テス ト測定結果 ト測定は平均台歩 き ( 評価能力は動的平衡性能力) と開 眼片足立ち ( 評価能力は静的平衡性能力)である。測定 5歳 児 体格 体力テス ト 身長 ( c m) 体重 ( kg) 平 均( 秒) 台 歩 き 開眼片足立 ( 秒) ち 全 N= 体 1 8 3 平均 SD 値 4 1 , 1 3 3 3 . 1 20 . 6 . 2 6 2 1 . 6 37 5 6 7 6 0. , 3 97 1 男 N= 9 児 2 平均 SD 値 4 1 . 1 5 3 3 . 9※ ※ 20 . 7 . 7 8 ※※ 2 1 . 4 08 1 ※※ 5 0 6. 4 23 5 N 女 9 1 児 平均 値 1 1 2. 2 1 9. 6 2. 9 4 8 2. 48 ※ ※ 結果は表4に示す通 りである。集 中力 ・ バ ランス・ 持久力 ・ ねぼ り等を必要 とす る開眼片足立ちにおいて,規則的群 が週末崩れ群に比 し,長 くできていたが有意な差は認 め られなかった。 pく 耶 ※ ※ 1 39 私たちの 日常生活に関す る研究 (3) 表 4 睡眠リズムによる分類別体力テス ト平均値 0 c m・幅 1 0 c m・長 さ 意に優れていた。平均台歩きは高 さ3 2mの平均台を素早 く落ちないように渡 りきることとす 5歳児 体力テス ト 平均台歩 き 開眼片足立 ち ( 秒 全体 ( N-1 8 3 ) 平均値 SD ) ( 秒) る。 この能力は,男児の 日常の運動遊びの中で培われ る 瞬発力 ・敏捷性などの要因が影響 していると思われ る。 2. 7 6 6. 4 開眼片足立ちにおいては,女児が男児に比 し有意に優れ 1 . 3 5 7 0. 91 ていた。 この項 目は幼児の場合,筋力 ・筋持久力 ・平衡 性機能に加 えて,精神的な要素が大きく関わっていると SD 規則 的群 ( N- 1 0 ) 平均値 1 7 4 3 . 0 1 0 7 70 . 7 言われている。すなわち,きつい ・苦 しい ・頑張るな ど の意志や意欲など心理的要因の影響を受けやすい。女児 5 6. 1 週末崩れ群 ( N-49 ) 平均値 .2. 7 が男児 より優れているのは,女児のねぼ り ・がんば りの 性格的な面での影響がでていると思われる。 考 察 2週間の睡眠 リズム表の記録結果,毎 日規則的な睡眠 0 分以内とす リズムを送っている子 ども ( 時間のずれは3 本研究では睡眠 リズムを重視 し検討 した。規則的に朝 る)〔 規則的群〕と週末に睡眠 リズムが崩れ る子 ども ( 時 の光を浴びること,人間の生体 リズムは朝の光を浴びて . 5 時間以上 とする) 〔 週末崩れ群〕において 間のずれは1 体内時計をリセ ッ トす ることで整 えられている。また子 検討 した。 1日平均夜間睡眠時間は,週末崩れ群が規則 どもは睡眠 リズムが狂えば慢性時差ぼけ状態にな り,発 的群 より9分長いが,休 日の起床時刻が週末崩れ群は遅 育にも影響すると危倶 されている。 さらには休 日の朝寝 いため,睡眠不足を補っていると思われる。 しか し,過 坊は体内時計を狂わせやすい。そこで,祝 日のない 2遁 末崩れ群は平 日も休 日も就寝時刻が遅 く,休 日の朝寝坊 問を継続 して指定 し,就寝か ら起床までを夜間睡眠時間 で睡眠時間を補っているが実は,休 日の朝寝坊は体内時 として保護者に記録 してもらった。睡眠不足や睡眠 リズ 計を狂わせやすい と言われている。睡眠不足や睡眠 リズ ムの崩れは,集中力の欠如,ぼーっとす る,気力 ・意欲 ムの崩れは,集 中力の欠如,ぼーっとす る,気力 ・意欲 が低下す るなどがあげられる。そこで我々は,睡眠 リズ が低下す るな どがあげられる。表 4に示す ように,休 日 ムの崩れは,集中力を必要 とする平衡性能力に影響する の起床時刻において,規則的群は週末崩れ群に比 し, 1 のではと考え,併せて体力テス トを実施 した。体力テス 時間2 3 分早 く起床 し, 差の検定により有意に優れていた。 ト測定項 目は, 平均台歩き ( 評価能力は動的平衡性能力) と開眼片足立ち ( 評価能力は静的平衡性能力)である。 幼児の生活 リズムを整えるために,午後 9時までに就 そこで我々は,睡眠 リズムの崩れ と,集 中力を必要 と す る平衡性能力 との関連 を検討 した。結果 として,平均 台歩 き ・開眼片足立ちともに有意差は見 られなかった。 0 時間以上の夜間睡眠時間 寝 し,朝 7時までに起床 し,1 平均台歩きにおいては,普段,園で しょうしている長 さ を取ることが必要 と言われている。 しか し, 5歳児にお が 2mの平均台 と短めだったため,差が出にくかった と ける睡眠時間の実態は, 1日の平均夜間睡眠時間は 9時 思われる。開眼片足立ちにおいては,規則的群が週末崩 2 分 と1 0時間には満たなかった。平 日起床時刻は男女 間4 れ群に比 し,平均値は大であったが,有意差は見 られな 0 ともに 7時前後であるが,問題は就寝時刻が,平 日で2 かった。 しか し今回の調査で,体力テス ト測定実施 中, 分,休 日で3 7- 4 3 分程2 1 時を過 ぎていた。朝 は, -2 4 平均台歩きでの歩き方や開眼片足立ちでのバ ランスの取 幼稚園や保育所に登園するために頑張って起きていると り方 ・がんば り方 と, 日常生活での子 どもの活動状況 と 思われるが,就寝は大人の生活 リズムの影響 もあ り遅 く は,かな り一致 しているようだった。 なっていると思われる。 各園の保育者によると, 日頃遊びやお話に集 中できる 5歳児の体格においては,身長 ・体重 ともに男児が女 子 どもは,きちんと平均台を渡ろ うとし,開眼片足立ち 児 に比 し,差の検定結果有意 に優れていた。体力テス でバ ランスを うまくとっていた り,粘 り強 く頑張ってい ト測定の項 目である平均台歩きは,男児が女児に比 し有 たようである。有意差は見 られなかったが傾向は現れて 1 40 谷本 満江 原 田 最澄 7)石渡貴之 :体育の科学 2 0 0 5 V o1 . 5 5N o3 杏 いた よ うである。 幼児の健全成長 を願 う上には, 日常生活 における睡眠 の リズムは重要である。 この時期 の神経機能の発達は, 十分な栄養 ・睡眠 ・運動 によ り,大脳 の本格的機能の準 林書院 8)石渡貴之 :体育の科学 2 0 0 5 V ol . 5 5N o4 杏 林書院 備 が偏 りな く成就 され る。 日常の遊びの中で平衡機能は 9)穐丸武 臣 :体育科教育 2 0 0 4 . 1 0 大修館書店 発達 してお り,運動能力の発達の基本的要因である。 1 0 )江森貴文 :体育科教育 2 0 0 5 . 0 8 大修館書店 しか し,今 回の調査で睡眠 リズムの規則正 しい子 ども が 5%しかいなかった こと。そ して,週末睡眠 リズムが 崩れ る子 どもが27% もいた こ とについて,我々大人は, きちん と対応 しなければな らない と考える。母親 が夜型 の生活 を送 ってい ると,子 どもも夜型 になると言われて いるほ ど影響 は大である。規則正 しい生活習慣 ・早寝早 起 き ・朝食 を摂 ることな ど常 に言 われてい る。 しか し, なかなか実行 しに くいのが現状である。幼児期 にすでに 睡眠 リズムが崩れてい ることは,残念 なことであるが, まだ睡眠 リズムは修正 しやすい年齢である。 ここの とこ ろ睡眠の大切 さが注 目され るよ うにな り,睡眠時間は取 らせ なけれ ば と考 え られ てい るか もしれ ない。 しか し, 質 の良い睡眠 はいつ寝て,いつ起 きるかが問題 である。 規則正 しい睡眠 リズムを身 につ けるためには,まず平 日 と休 日の起床 時刻 の差 をな くす ことである。 そ こには, 体内 リズムが整い,集 中力が生まれ,気力 ・意欲が高ま るポイ ン トがある。 さらには,朝食がおい しく摂れ る時 間 もでき,元気 に活動できるのである。そ して大人達, 特に母親 が子 ども達の規則正 しい生活 リズムの鍵 を握 っ てい ること ・子 ども達が健全成長できるよ う環境 を整 え てや ることを忘れてはな らない。 参 考 文 献 1)上野美代子 :小児保健研究 第6 3 巻 第 4号 2 0 0 4 小児保健協会 2)三池輝久 :小児保健 シ リーズ No5 92 0 0 5 小児 保健協会 3)江 田節子 :小児保健研究 第6 5 巻 第 1号 2 0 0 6 小児保健協会 4)子 どものか らだ と心 白書 2 0 0 4 子 どものか らだ と心 ・連絡会議 5)神 山潤 :体育の科学 2 0 0 4V o l . 5 4 杏林書院 6)菊池秀節 :子 どもと健康 2 0 0 5 萌文書林 ll ) 東京都立大学体育学研究室 :日本人の体力標準値 4 版 不味堂出版 1 9 8 9