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カンボジアだより

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カンボジアだより
カンボジアだより
JICAカンボジア事務所
Oct 20, 2016
No. 62
上=JICAとプノンペン都とのプロジェクト調印式
左=2014年の実証実験の際の公共路線バス
プノンぺン都「路線バス」、支援に本腰
新車80台投入、2020年までに10路線に
プノンペン都が2014年に運行サービスを開始
した路線バス。企業広告で車体をラッピングし
たバスや、幹線道路沿いに真新しいバス停を見
かけた方も多いでしょう。
でも、車やトゥクトゥクから利用を切り替え
るには、まだ不便ですね。
JICAはこのほど、この路線バスの運営を改善
し、輸送力を上げるためのプロジェクトを開始
します。路線バスを運営するバス公社などに対
し技術支援を行い、運行管理能力の改善を目指
します。
具体的には、2017年1月から2020年の末ま
での間、路線バスの運行、車両の点検・整備、
運転手や乗務員の人材育成、組織の経営管理な
どについて、日本から専門家を派遣。日常の指
導や、セミナー、ワークショップなどを開催し
ます。また、現在50台ほどある中古バスのみで
は路線の拡大が困難なうえ、維持費用がかさむ
ため、供与限度額13億9,600万円の無償資金協
力で、日本のメーカーの新車80台を供給する予
定です。
プノンペン都の路線バスは、JICAも協力して
2014年に策定した「プノンペン都交通マスター
プラン2035」の優先プロジェクトの一部です。
路線バスが都内を隅々まで走れば、年々深刻に
なる渋滞を緩和し、より安全で便利な移動が可
能になります。都は2020年までに現在の3路線
を10路線に拡大することを目指しています。
このマスタープラン策定過程において、プノ
ンペン都はJICAとともに、約1カ月間のバス試
運転(実証実験)を行いました。路線バスの有効性
が確認できたとして、2014年9月にはバス公社
の設立や実際の運行が始まりました。さらに利
用者を増やすために路線を拡大し、サービスを
向上させ、使いやすい路線バスにすることを目
的として、本プロジェクトを実施します。
公共交通の要となる路線バスが「渋滞緩和の
切り札」とされる一方で、JICAは都内100カ所
に及ぶ信号機の整備・設置、車検制度導入の支
援、公共交通マナーの啓発活動など、交通シス
テム全体の改善の支援にも力を入れています。
公共交通マナーの啓発では、若い人たち
に理解してもらうため、アンコールワットや
独立記念塔をモチーフにしたアニメキャラ
クター「ワッティとインディ」が登場する
動画を作りました。https://www.youtube.com/
watch?v=EsQR9lwcX2wで見ることができますの
で、是非ご覧ください。
JICAはこれからも、都市交通インフラの整備
に、プノンペン都と二人三脚で取り組んでいき
ます。
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注目の「南部経済回廊」、電力の安定供給を
タイやベトナムとつながる「南部経済回廊」
として注目されるカンボジア東部と西部で、電
力の安定供給を目指す取り組みが始まります。
JICAはカンボジア政府に協力して、スバイ
リエン州バベット、バンテアイミエンチェイ
州ポイペト、コッコン州コッコンの3地域を
対象に、配電網の整備を始めることになりま
した。これらの地域にはいくつかの共通点が
あります。
まず、いずれも電力の一部は、隣接するベト
ナム、タイからの輸入に頼っています。その供
給は不安定で、電力の「質」の向上が課題とな
っています。また、この地域の村落電化率は、
スバイリエン24%、バンテアイミエンチェイ
18%、コッコン3%と、プノンペンの95%に比
べて圧倒的に低く、電化率の向上も大きな課題
です。
さらに、この地域はいずれもタイやベトナム
の国境と接しています。サプライチェーン形成
などを目的とする企業進出の拠点として注目さ
れ、経済特別区が相次いで建設されている地域
なのです。日系企業も進出しており、本事業実
施を通して配電線及び関連の変電設備が整備さ
れることにより電力の安定供給、ひいては経済
活動の後押しをすることにつながることが期待
されます。
スバイリエン州にあるマンハッタン経済特別区
病院まるごと輸出 「サンライズジャパン病院」が開院
JICAの海外投融資を活用
日本医療の国際展開として、JICAの海外
投融資を初めて活用した民間病院「サンライ
ズジャパンホスピタル・プノンペン」が完成
し、9月20日、フン・セン首相らを迎えて開
院式が開かれました=写真。
同院は、キタハラ・メディカルストラテ
ジーズ・インターナショナル、日揮、産業革
新機構が出資するカンボジア法人が運営。全
50床で、救急救命センターを設置していま
す。また、日本人医師・看護師も常駐し、日
本の技術を生かした高度な医療サービスの提
供を目指します。
急速な経済成長を遂げるカンボジアでは、
国民の生活も変化しています。食生活の変化
に伴う脳卒中などの生活習慣病、交通事故な
どの激増により、救急処置を含む高度な医療
サービスのニーズが高まっています。
JICAは、同院の救急救命医療整備事業を対
象としてプロジェクトファイナンスによる貸
付契約を締結。融資に加え、カンボジア人医
療関係者を対象とした日本での技術研修にも
協力をしました。
日本政府には、「病院まるごと輸出」とし
て同院のような医療拠点を、新興国を中心に
2020年までに10カ所程度設ける計画があり
ます。日本の高度な医療技術や経験を、新興
国の医療水準向上に生かそうというプロジェ
クトで、同院はこの計画の第一弾としても注
目されています。
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広 が れ! JICAプロジェクト
伝えたい、看護師のプロフェッショナリズム
留学で得た経験と絆を現場に
医療の中で大切な役割を持つ看護師・助産
師ですが、カンボジアの病院ではまだ、その
地位は確立されているとはいえません。
「医師の補助」としてではなく、看護師・
助産師という独立した職業として、知識や技
術、それに誇りを持ちたい。そんな願いを持
ったカンボジア人の看護師たちが、国内で自
主的に会を作り、研修や教育活動を続けてい
ます=写真。きっかけはJICAが支援したタイ
への留学でした。
会の名称は「看護助産教育会(Nurse
and
Midwife
Education
Society
for
Cambodia=NMESC)」。JICAは2010年から
の5年間、カンボジアの医療人材育成を目指し
て、教育および人材に関する法制度整備支援
と、教育者の能力強化 を含む「医療技術者育成
システム強化プロジェクト」を実施しました。
その一環として、カンボジアの看護師や看
護教員がタイの看護大学に編入し、学士号を
取得する「看護学士ブリッジコース留学生」
の送り出しを支援しました。この会は、その
元留学生たちが集まって結成されました。カ
ンボジアの看護師は、高校卒業後2年間の看護
学校を卒業して仕事に就くのが主流で、学士
号を得た看護師はまだ多くありません。
「ただの親睦会ではなく、プロフェッシ
ョナルな看護師・助産師の団体として知識や
経験を分かち合うのが目的です」と、語るの
は、同会代表のマニラ・プラクさん(45)。
マニラさんは2011年、タイのセント・ルイス
大学に留学した一期生でした。
「看護師だった母親に言われてこの職業を選
びました」というマニラさんは、1987年から
助産師として仕事を始め、その後、シェムリア
ップの病院に移りました。現場では十分にベテ
ランでしたが、タイの大学で看護を学び、「看
護という仕事の高い専門性と、奥深さに目を見
開かされる思いでした」と、言います。
「留学生たちはタイで学び、看護師として
の誇りや志を高く持つことを知り、互いの絆
を深めました。でも帰国すればみんなバラバ
ラ。それぞれの任地に戻り、現実と格闘しま
す。何とかこのつながりと志を維持し、技術
や知識や経験を私たち以外にも広げることが
できないものか、と考えて立ち上げたのがこ
の会です」
年に2回の会合で開かれるワークショップや
研修では、看護学の理論だけではなく、それ
を現場で実践した報告が重視されます。机上
で学ぶだけではない、カンボジアの現状に即
した、生きた学問にしようという努力です。
看護教育の大切さについて、マニラさんは
こう言います。「看護師・助産師が医療現場
で声を上げられるプロになるために、私たち
は強くならなくてはなりません。そのために
必要なのは、知識と技術です。学ぶことが強
さ、つまり自信へとつながるのです」
「看護師・助産師の存在価値はもっと認めら
れるべきです。一人でも多くのカンボジア人看
護師に、学ぶことの大切さを知ってほしい」。
マニラさんは、セント・ルイス大学への留学
後、2014年からはタイの名門・チュラロンコン
大学に入学し、看護学を学びました。今では、
医師たちの集まりに呼ばれ、看護について話す
機会もあるそうです。「教育は、力です」。き
っぱりと言い切るマニラさんには、看護師とし
ての誇りと自信が宿っていました。
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カンボジア援助ニュース
■開発パートナーによるカンボジアへの援助動向や、援
助に関係深い政府の動きを、報道からピックアップ。
■ADB、10億ドルの融資をプレッジ
(プノンペ
ン・ポスト紙、10月6日)
http://www.phnompenhpost.com/business/adb-muscle-itslending-pledge-1b
当地で開催されたアジア開発銀行(ADB)の創
立50周年を記念するイベントで、ADBが今後3年間
(2019年まで)のカンボジアに対する10億ドルの
融資をプレッジ。当記事では、外部評者のコメント
を交え、昨年創設された中国主導のアジア投資銀行
(AIIB)と対比するなどより広い開発援助の文脈に
おける議論をしている。
■日本とカンボジアの関係、新たな地平へ(クメー
ル・タイムズ紙, 10月10日)
http://www.khmertimeskh.com/news/30554/japancambodia-ties-move-on-to-a-new-horizon/ 9月下旬に離任した隈丸優次前カンボジア全権日
本大使のインタビュー記事。1991年のパリ和平協定
<Facebook掲載ニュースハイライト>
☆プルサット川流域の農民水利組合を強化(9月
28日掲載)
☆Home Stay Program in Ueda City, in
Japan(10月12日掲載)
<その他>
11月12日(土)~11月16日(水)水祭り
上記期間中、事務所は休みとなります
発行責任者
JICAカンボジア事務所広報班
P.O. Box 613, 6-8th Floors, #61-64,
Preah Nordom Blvd., Phnom Penh,
Cambodia
Tel: +855-23-211-673 Email: [email protected]
*掲載記事、写真、イラストなどの無断転載
を禁じます。
から現在まで、そして今後の日本とカンボジア関係
に言及し、ODAや投資、人と人との交流など様々な
形で両国の絆が築かれ、今後も深まることを期待。
■カンボジアと中国31合意に調印 (カンボジア
国営通信AKP、10月13日)
記事:http://www.akp.gov.kh/?p=88799
共同声明:http://www.akp.gov.kh/?p=88883
10月13-14日の両日、習近平・中国国家主席がイ
ンドでの会議に向かう途上カンボジアを訪問し、こ
の機会にカンボジア政府や民間企業と中国側のカウ
ンターパートとで31件の合意文書が署名された(
経済協力協定(報道によると合計額約3億4100万ド
ル)、及び伝統的なインフラ以外の様々なセクター
での協力MoUを含む)。両国政府は「歴史的訪問」
として共同声明も発表。なお、習主席がカンボジア
の後訪問したバングラデシュでは240億ドル相当の
借款合意がされている。
■Webサイトでも、最新情報をご覧いただけます!
http://www.jica.go.jp/cambodia/
■Like us on Facebook!
http://www.facebook.com/JICACambodia
■We’re on Youtube!
http://www.youtube.com/user/jicacambodia
JICA PLAZA Cambodia
JICA事業と国際協力の情報窓
口です。興味のある方は是非
お立ちよりください。
JICAカンボジア事務所6階
Tel:023-211-673
開館時間:月~金
8:00-12:00、14:00-17:00
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