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米国環境情報
情報報告
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●米国環境情報
環境保護庁(EPA)、バイオマス利用施設に対して温暖化ガス排出要件の適用判断を 3 年延期
環境保護庁(EPA)は 1 月 12 日、バイオマスの燃焼や生物発生源から生じる CO2 排出量を、
温暖化ガス許可要件の対象に含めるべきかという判断を、3 年間延期することを発表した。3
年の間に、この複雑な問題に対して政府内外の専門家から科学的情報を集めるとともに、投
稿された 7,000 件以上の一般意見を検討し、大気浄化法による排出認可制度の対象とすべき
かを判断する。問題となっているのは、生物を原料とする物質が燃焼または分解する過程で
CO2 を発生するもので、農林製品を燃料として燃やす施設、汚水処理場、畜産管理施設、埋立
処理場、エタノールの発酵工程などがある。発電所や石油精製所といった大規模な温暖化ガ
ス排出源に対しては、既に 2011 年 1 月 2 日から、新規施設や既存施設の大規模改修に際して
温暖化ガス排出許可を取得することが義務付けられている。
テキサス州から EPA へ温暖化ガス排出許可制度の適用中止要求、連邦裁判所は却下
温暖化ガスに対する排出許可制度の適用を中止するようテキサス州が連邦政府の EPA に要
求していた訴えは、連邦控訴裁判所によって 1 月 12 日に却下された。EPA は 1 月 2 日から、
石炭火力発電所や石油精製所といった大規模な温暖化ガス排出源に対して排出許可の取得を
義務付けたが、テキサス州はこの制度の施行を拒否していた。対抗措置としてテキサス州内
の企業に許可証を直接発行する計画を示した EPA に対して、裁判所は活動を一時中断させて
いたが、これも同時に解除した。テキサス州以外のいくつかの州では、EPA に対して訴訟を
起こしながらも、法的な決着が付くまで制度を施行する方針を取っていた。
GE と中国の神華社、石炭ガス化の開発で合弁事業
GE 社と中国の神華(Shenhua)社は、石炭ガス化テクノロジーを開発する合弁事業を中国
に結成することで合意したことを、1 月 18 日に発表した。新会社は、GE 社の工業的ガス化技
術と、神華社の石炭ガス化および石炭火力発電の技能を合体させるもので、この新会社のも
とで両社は、工業石炭ガス化技術ライセンスの販売や、ガス化複合発電(IGCC)施設の開発、
商業規模ガス化技術やガス化複合発電(IGCC)ソリューションのコストと性能を向上させる
研究開発を行う。
米国と中国、気候変動、クリーンエネルギー、環境分野における協力を確認
オバマ大統領と中国の胡国家主席は 1 月 19 日、気候変動、クリーンエネルギー、環境分野
における協力を強化することで合意した。両首脳は、コペンハーゲン協定に基づくカンクー
ン合意の条項を実行する取組みを賞賛し、
国連気候変動枠組み条約、
主要経済国フォーラム、
クリーンエネルギー閣僚会議、米中気候政策対話などを通じて、両国が連携していくことを
確認した。
また、
2009 年 11 月に発足した米中クリーンエネルギー研究センター
(Clean Energy
Research Center:CERC)における、省エネビル、クリーン石炭、クリーン自動車といった共
同研究計画を歓迎した。さらに、北京で開かれる次回の米中エネルギー・環境 10 年協力枠組
み共同作業部会や、ワシントン DC での第 3 回米中戦略経済対話などで、新しいイニシアティ
ブを前進させることでも合意した。
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オバマ大統領、2035 年までにクリーンエネルギー電力 80%、化石燃料への補助金廃止を掲げる
オバマ大統領は 1 月 25 日の一般教書演説において、
クリーンエネルギーと革新的テクノロ
ジー開発への投資が、将来に向けた政権の最優先事項であることを表明した。このために、
米国は 2035 年までに電力の 80%をクリーンエネルギーから賄うという目標を掲げ、その財
源として、
議会に対して年間約 40 億ドルに上る化石燃料会社への補助金を廃止するよう求め
た。大統領の提案したクリーンエネルギー強化案には、エネルギー省高等研究計画局の研究
プログラム拡大、エネルギー革新研究拠点の倍増、太陽エネルギーのコスト競争力を高める
ために『1 ワット 1 ドル』イニシアティブ、24 時間稼動地熱再生可能エネルギー事業への増
資などが盛り込まれている。
NASA、エアロゾルを測定する地球観測衛星『グローリー』の打上げ
NASA は 1 月 20 日、エアロゾルが地球の気候にどのように影響を与えるかを調査するため
に、地球観測衛星『グローリー(Glory)
』を 2 月 23 日にカリフォルニア州バンデンバーグ空
軍基地から打ち上げる計画を発表した。グローリーは、従来の太陽測定の範囲を拡大して、
気候変動に関する主要な不確定要素に対応するために、高度 438 マイルという低地球軌道で
最低 3 年間データを収集する。エアロゾルは、太陽放射線を反射吸収したり雲や降水量を変
化させることで気候に影響を与える大気粒子であり、グローリーには、その測定向上のため
にエアロゾル偏光測定センサー(APS)と総放射照度モニター(TIM)という 2 つの新テクノ
ロジー機器が搭載される。
CO2 地下貯留は小地震を引き起こし CO2 を漏出させる可能性
地球温暖化対策として CO2 を長期にわたり大量に地下に送り込むことは、小さな地震を引
き起こし、貯留システムを破壊して CO2 を再び大気中に逃す可能性があることを、スタンフ
ォード大学の地球物理学者マーク・ゾバック(Mark Zoback)氏が 12 月 14 日に発表した。大
陸の内部に縦横に走る古い断層は、大量の CO2 を注入することによって活発化する懸念があ
り、大規模な断層は事前の選定段階で除外されるとしても、小規模な地震によって地中の岩
盤に小さな亀裂が作られ、そこから CO2 が漏出する可能性があるという。現在ノルウェーと
アルジェリアで 2 つの隔離貯留プロジェクトが実施されているが、同氏は、今後こういった
地質学的問題を議論する必要性を訴えている。
ソーラーパネルのエバーグリーン社、国内工場を閉鎖し中国へ生産拠点移転
エバーグリーン・ソーラー(Evergreen Solar)社は、マサチューセッツ州から 4,300 万ド
ル以上の助成を受けて過去 3 年間で米国第 3 位のソーラーパネルメーカーに成長したが、近
年の中国との熾烈な競争の中で損失を計上し、同州ディベンスの主力工場を第 1 四半期終わ
りまでに閉鎖することを 1 月 11 日に発表した。同工場の 800 人の工員を解雇し、中国での合
弁事業へ生産拠点を移行していく。中国は、政府と財政面の手厚い支援に加えて、安い労働
力によって世界ソーラー業界の価格リーダーとなっている。その他の米国ソーラーパネルメ
ーカーも、中国との競争に喘いでいる。シリコンバレーのソリンドラ(Solyndra)社は、5
月に大統領の訪問と 5 億 3,500 万ドルの連邦融資保障を受けたものの、11 月には 2 つの米国
工場のうち 1 つを閉鎖することを発表した。世界最大のソーラー電力企業であるファース
ト・ソーラー社も、その生産のほとんどは海外を拠点としている。
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ウィスコンシン州、風力タービンに 1,800 フィートものセットバック要件を義務付け
ウィスコンシン州の新知事スコット・ウォーカー氏が提案している包括的規制改正案によ
ると、風力タービンと近隣の敷地との間は 1,800 フィート(約 550m)以上離すよう義務付
けられることが、1 月 15 日に明らかになった。これは、2010 年にウィスコンシン公益事業委
員会に承認された 1,250 フィート(約 382m)のセットバックの約 1.5 倍にあたり、今後 2
年間に建設を開始する予定の 5 億ドルもの風力エネルギープロジェクトが危機に晒されてい
る。米国の多くの州は、こういったセットバック要件を義務付けておらず、その裁量は市町
村政府に委ねられている。また、今回の改正案のような大きなセットバックを義務付ける州
は他にないという。
米国の風力発電、2010 年に敷設された総発電量は 2009 年の半分
米国で 2010 年に敷設された風力発電所の総発電許容量は、過去最高だった 2009 年のわず
か半分の 5,115MW であったものの、2011 年に入って現在は 5,600MW 以上が建設中であること
が、米国風力エネルギー協会(AWEA)から 1 月 21 日に報告された。新しい風力発電所は、天
然ガス発電に対してもコスト競争力があり、電力会社は比較的安い価格で固定することがで
きるという。過去 2 年間で風力発電のコストは大きく減少し、電力購入契約も最近では1キ
ロワット時当り 5~6 セントで結ばれるようになっている。同協会は、天然ガスに関わる不確
実性に比べて、風力発電の長期的な価格安定性は、経済が回復するにつれて今後さらに価値
が出てくると期待している。
米国空軍、ソーラー電力の利用を 4 年間で 4 倍にする計画
米国空軍は 1 月 26 日、
空軍基地におけるソーラー電力の利用を今後 4 年間で 4 倍に増加す
る計画を明らかにした。エネルギーは、全てのミッションを通じて重要な鍵であり、堅固で
安全なエネルギーを確保することは、ミッション成功に必要不可欠な要素であるという。国
防総省(DOD)は、全ての軍事施設に対して、2025 年までに総使用電力の 25%を再生可能エ
ネルギーで賄うことを命じており、同省の昨年の燃料と電力の支出額は 240 億ドルに上って
いる。
国立アルゴン研究所、先端陰極素材テクノロジーをリチウムイオン電池へライセンス授与
エネルギー省(DOE)の国立アルゴン研究所は 1 月 6 日、同研究所の特許陰極物質テクノロジ
ーをリチウムイオン電池に利用するライセンス契約を、LG ケム(LG Chem)社に与えたことを発
表した。また同日、この技術が GM 社初の量産プラグイン・ハイブリッド車『シボレー・ボルト
(Volt)
』に使われていることも明らかにした。ボルトは、EPA の推定によると、完全充電で 35
マイル走行できる。このアルゴン研究所が開発したテクノロジーは、従来の陰極物質に比べて
エネルギー保存能力を 50~100%も高めるうえ、
リチウムとマンガンが豊富な混合金属酸化物に
よって、1 回の充電による運転時間が延び、電池の寿命と安全性を向上させるという。
EPA、2001 年以降のモデルに対して E15 の利用を承認
EPA は 1 月 21 日、2001~2006 年モデルの自動車、SUV、軽量トラックに対してエタノール
を 15%まで含有する燃料 E15 の利用を承認した。同庁は昨年 10 月に、2007 年以降のモデル
に対しては E15 の利用を認めている。2000 年以前モデルの自動車や軽量トラック、さらに全
てのオートバイ、重量トラック、特定オフロード車に対しては、現在のところ利用根拠とな
るデータがないため、承認されていない。また EPA は、現在 E15 の利用が承認されていない
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車両に対して誤って補給されるのを防ぐため、ガソリンスタンドのポンプに適切に表示され
るよう要件を開発している。
再生可能燃料運輸の分野で、米中はそれぞれ競争の優位性を持つ
輸入原油からの脱却を図る再生可能燃料運輸の覇権争いにおいて、国家を挙げて電気自動
車(EV)生産を後押ししている中国が有利と思われている。しかし、革新的テクノロジーの
開発に重点を置く米国は、先端燃焼機関、バイオ燃料、電気自動車の開発で飛躍的な突破口
を導く可能性があるという報告が、世界最大の経営コンサルティング企業アクセンチュア
(Accenture)社から 1 月 19 日から発表された。中国は、電気自動車への国家支援のほかに、
リチウムの国内供給、現在の電池生産能力において有利である一方、米国は、バイオテクノ
ロジーに基盤を置いた農業革命を世界にもたらし、幅広いバイオ燃料を創造して、既存の燃
料供給インフラに統合できるプラットホームを作るという点で優位であるという。
DOT、EPA、カリフォルニア州が、次世代のクリーン自動車向け基準案で足並み揃える
運輸省(DOT)
、環境保護庁(EPA)
、およびカリフォルニア大気資源委員会(CARB)は 1 月 24
日、2017~2025 年モデルの自動車と軽量トラックに対する燃費と温暖化ガス排出量基準の提
案日程において、足並みを揃えることを発表した。連邦政府とカリフォルニア州が協力を継
続し、2011 年 9 月 1 日までに新基準案を発表するという同一日程を掲げることで、現行の連
邦クリーン自動車プログラムが延長される可能性もある。効率的でクリーンな新技術へ投資
する自動車メーカーにとって、全国で同じ燃費・排出基準が設定されることは大きな安心材
料となる。
バイオ燃料、2015 年までに 40 億ガロン以上を生産可能
世界の先端バイオ燃料の生産許容量は、2015 年までに 40 億ガロンに達すると予想される
ことが、バイオフューエルズ・ダイジェスト(Biofuels Digest)社から 1 月 14 日に報告さ
れた。この予測は、バイオ燃料企業から発表される新プロジェクトや生産量の変更に基づく
もので、同社が四半期ごとに更新する『先端バイオ燃料追跡データベース』によると、現在
110 件の先端バイオ燃料プロジェクトが開発中であるという。ドロップイン式のバイオ燃料
(再生可能ガソリン、再生可能ディーゼル、バイオブタノール)が、2015 年までに予定され
る先端バイオ燃料の生産可能量のうち 59%に上る。
エンパイア・ステート・ビル、ニューヨーク最大の 100%グリーン電力商業購入者に
ニューヨーク市マンハッタンのエンパイア・ステート・ビルディングは 1 月 6 日、グリー
ン・マウンテン・エネルギー社から 100%風力電力を購入する計画を発表した。285 万平方フ
ィートのオフィスビルは、グリーン・マウンテン社から年間およそ 5,500 万キロワット時
(kWh)の再生可能エネルギー電力を購入する 2 年契約を結んだことで、100%グリーン電力
を購入するニューヨーク市最大の商業事業者となった。これによって、毎年 1 億ポンド(4
万 5,000 トン)の CO2 の排出を抑止でき、これはニューヨーク州のほぼ全家庭が 1 週間照明
を消すのに相当するという。
北米最大の屋上ソーラーシステム、ニュージャージー州のショッピングモールへ建設
不動産投資信託企業のグリムシャー不動産信託(Glimcher Realty Trust)社は、北米最大
の屋上ソーラーシステムを、同社が所有するニュージャージー州エリザベスのジャージー・
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ガーデンズ(Jersey Gardens)ショッピングモールへ建設する計画を発表した。同モールは
130 万平方フィートの賃貸面積を持ち、4.8MW の屋上ソーラーシステムは、モールの消費電力
の 11%相当を発電できる。 T5 ソーラールーフ・タイル技術を利用したシステムを設計、施
工、管理するのは、サンパワー(SunPower)社である。クリーン・フォーカス(Clean Focus)
社が、既に電力購入同意書を結んでおり、同システムへ出資、所有する予定である。
EPA、飲用水中の六価クロムをモニターするための指針を強化
EPA は 1 月 11 日、公共水道システムに対して六価クロムの監視とサンプリングを強化する
ための指針を発表した。この指針は、六価クロムを長期摂取した場合の健康上の懸念が科学
的に証明されたことへの対応であり、サンプルの採取場所や回数、試験検査の分析方法など
が示されている。このモニタリング方法を実施することで、飲用水中の六価クロムの有無に
ついて消費者に適切な情報を提供できるほか、他の形態のクロムが六価クロムに変化する割
合や、現行の水処理方法が飲用水中の六価クロム濃度にどう影響するかなどを評価できると
いう。
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